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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/188 20170101AFI20231211BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20231211BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20231211BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231211BHJP
【FI】
B29C64/188
B29C64/118
B29C64/295
B33Y30/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022091618
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2018023529の分割
【原出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2022113757
(43)【公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-06-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516262549
【氏名又は名称】エス.ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】伊東 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高井 篤
(72)【発明者】
【氏名】荒生 剛志
(72)【発明者】
【氏名】秋枝 智美
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525967(JP,A)
【文献】特開2016-141142(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198706(WO,A1)
【文献】特開2017-206011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/075801(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形データに基づいて造形材料を積層することにより造形物を造形する造形装置であって、
前記造形データを保持する制御部と、
造形テーブル上に形成された造形材料層に溶融した造形材料を吐出して前記造形材料層を積層させる吐出部と、
前記造形テーブル上に形成された前記造形材料層の積層体の表面の少なくとも一部を切削する切削部と、
を備え、
前記制御部は、目的造形物の造形データに基づいて、前記目的造形物を覆う大きさ及び形状の積層体を積層する補正造形データを作成し、
前記切削部は、前記補正造形データを用いて、前記造形テーブル上に積層された補正積層体の表面を切削することにより、前記目的造形物を切り出し、
前記制御部は、前記目的造形物の造形データ及び前記補正造形データに基づいて、前記補正積層体の造形中、前記造形材料層がその積層後に変形し、前記目的造形物の形状とは異なる変形が生じた領域を含むように切削範囲を特定することにより、前記切削部を制御する、
造形装置。
【請求項2】
形成された造形材料層を加熱する加熱部を更に備え、
前記吐出部は、加熱された造形材料層上に前記溶融した造形材料を吐出する、
請求項に記載の造形装置。
【請求項3】
異なる複数の方向から、形成された前記造形材料層の加熱対象領域を加熱するように、前記加熱部を搬送する搬送部を備える、
請求項に記載の造形装置。
【請求項4】
前記加熱部の加熱対象領域の温度を測定する測定部を備え、
前記加熱部は、前記測定部によって測定された温度に基づいて、加熱対象領域を加熱する、
請求項に記載の造形装置。
【請求項5】
前記加熱部は、レーザ光を照射する、
請求項~請求項のいずれか1項に記載の造形装置。
【請求項6】
前記加熱部は、
加熱した空気を送風する、
請求項~請求項の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項7】
前記加熱部は、
加熱対象領域を接触加熱する、
請求項~請求項の何れか1項に記載の造形装置。
【請求項8】
複数の前記加熱部を備える、
請求項~請求項のいずれか1項に記載の造形装置。
【請求項9】
前記切削部は、前記造形テーブル上に形成された複数の造形材料層の積層体である造形物の任意の箇所及び領域を切削可能である、
請求項1に記載の造形装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記吐出部及び前記切削部を、目標のX軸方向及びY軸方向位置は移動可能である、
請求項1に記載の造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型などを用いずに造形物を作製する装置として、3Dプリンタが普及しつつある。熱溶解積層法(FFF(Fused Filament Fabrication))を用いた3Dプリンタは、コンシューマ向けにも浸透している。また、複数の造形材料層を積層することで形成された造形物の、積層方向の強度向上を図る技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、粗面化された造形材料層上に次の造形材料層を形成することで、造形材料層間の密着力を向上させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来技術では、造形材料を吐出した後にローラを用いて平滑化した後に硬化させ、硬化した造形材料層を粗面化した上で、次の造形材料層を形成していた。このため、従来では、平滑化により造形材料層の端部の形状が崩れ、結果的に、形成される造形物が目的とする形状とは異なるものとなる場合があった。すなわち、従来では、積層方向の強度低下の抑制された、目的とする形状の造形物を作製する事は困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、積層方向の強度低下の抑制された目的とする形状の造形物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、造形装置は、造形データに基づいて造形材料を積層することにより造形物を造形する造形装置であって、前記造形データを保持する制御部と、造形テーブル上に形成された造形材料層に溶融した造形材料を吐出して前記造形材料層を積層させる吐出部と、前記造形テーブル上に形成された前記造形材料層の積層体の表面の少なくとも一部を切削する切削部と、を備え、前記制御部は、目的造形物の造形データに基づいて、前記目的造形物を覆う大きさ及び形状の積層体を積層する補正造形データを作成し、前記切削部は、前記補正造形データを用いて、前記造形テーブル上に積層された補正積層体の表面を切削することにより、前記目的造形物を切り出し、前記制御部は、前記目的造形物の造形データ及び前記補正造形データに基づいて、前記補正積層体の造形中、前記造形材料層がその積層後に変形し、前記目的造形物の形状とは異なる変形が生じた領域を含むように切削範囲を特定することにより、前記切削部を制御する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層方向の強度低下の抑制された目的とする形状の造形物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、造形装置の一例を示す模式図である。
図2図2は、吐出部の断面模式図の一例である。
図3図3は、加熱部および回転ステージを拡大して示した模式図である。
図4図4は、造形装置のハードウェア構成図の一例である。
図5図5は、造形材料層の積層の一例を示す説明図である。
図6図6は、造形材料層の積層の詳細例を示す模式図である。
図7図7は、側面冷却部による冷却の説明図である。
図8図8は、加熱部による再加熱の説明図である。
図9図9は、造形物の切削の一例を示す模式図である。
図10図10は、目的造形物の一例を示す模式図である。
図11図11は、造形処理の手順の一例を示す、フローチャートである。
図12図12は、造形装置の一例を示す模式図である。
図13図13は、造形装置の一例を示す模式図である。
図14図14は、造形装置の一例を示す模式図である。
図15図15は、造形装置の一例を示す模式図である。
図16図16は、制御部のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本実施の形態の造形装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、同じ構成および機能を示す部分には、同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0010】
なお、本実施の形態では、熱溶解積層法(FFF)により造形物を造形する造形装置を、一例として説明する。なお、造形装置は、三次元の造形物を造形する装置であればよく、造形方法は熱溶解積層法(FFF)に限定されない。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の造形装置1の一例を示す模式図である。
【0012】
造形装置1の筐体2の内部には、造形テーブル3が設けられている。造形テーブル3は、造形物Mを保持する。すなわち、造形テーブル3上に、造形物Mが造形される。
【0013】
造形物Mの造形には、造形材料が用いられる。本実施の形態では、造形材料として、フィラメントFを用いる。フィラメントFは、造形材料を細長いワイヤー形状にした固体材料である。造形材料は、熱可塑性樹脂である。
【0014】
フィラメントFは、巻き回された状態で造形装置1における筐体2の外部のリール4にセットされている。リール4は、フィラメントFの駆動手段であるエクストルーダ11の回転に引っ張られることで、大きく抵抗力を働かせることなく自転する。
【0015】
また、筐体2内には、吐出部10が設けられている。吐出部10は、溶融した造形材料を吐出して造形材料層を積層させ、造形材料層の積層体である造形物Mを形成する。
【0016】
図2は、吐出部10の断面模式図の一例である。吐出部10は、エクストルーダ11、冷却ブロック12、フィラメントガイド14、加熱ブロック15、吐出ノズル18、撮像モジュール101、ねじり回転機構102、およびその他の部品によってモジュール化されている。フィラメントFは、エクストルーダ11によって引き込まれることで、吐出部10へ供給される。
【0017】
撮像モジュール101は、吐出部10に引き込まれたフィラメントFの360°像、すなわち、フィラメントFにおけるある部分の全方位の画像を撮影する。図2には、吐出部10が2つの撮像モジュール101を備えた構成を、一例として示した。なお、吐出部10に設けられる撮像モジュール101の数は、2つに限定されない。例えば、反射板を備えた構成とすることで、1つの撮像モジュール101により、フィラメントFの360°像を撮影してもよい。
【0018】
撮像モジュール101は、例えば、レンズなどの結像光学系と、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子と、を備えたカメラである。
【0019】
ねじり回転機構102は、フィラメントFを延伸方向に対して直交する方向に回転させることで、フィラメントFの方向を規制する。径測定部103は、撮像モジュール101によって撮影されたフィラメントFの画像から、X軸、Y軸の2方向におけるフィラメントのエッジ間の幅を、それぞれ径として測定する。X軸およびY軸は、互いに直交する2軸である。また、X軸およびY軸は、Z軸に対して直交する。Z軸は、鉛直方向および造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に一致する。
【0020】
径測定部103は、予め定めた規格外の径を検出した場合、エラー情報を出力する。エラー情報の出力先は、ディスプレイであってもよいし、スピーカであってもよいし、他の装置であってもよい。径測定部103は、回路であってもよいし、CPU(Central Processing Unit)の処理によって実現される機能であってもよい。
【0021】
加熱ブロック15は、ヒータなどの熱源16と、ヒータの温度を制御するための熱電対17と、を有する。加熱ブロック15は、フィラメントFを加熱溶融し、溶融したフィラメントFである溶融フィラメントFMを、吐出ノズル18へ供給する。以下では、なお、溶融とは、加熱ブロック15による加熱前に比べて、固相に対する液相の比率が高くなった状態を意味する。すなわち、溶融には、フィラメントFの溶け始めから溶けて液状となるまでの状態が含まれ、半溶融状態および溶融状態の双方が含まれる。
【0022】
冷却ブロック12は、加熱ブロック15とエクストルーダ11との間に設けられている。冷却ブロック12は、冷却源13を有し、フィラメントFを冷却する。冷却ブロック12は、加熱ブロック15からの溶融フィラメントFMの逆流、フィラメントFの押出抵抗の増大、および溶融フィラメントFMの固化による詰まり、などを防ぐ。エクストルーダ11によって冷却ブロック12側へ押し出されたフィラメントFは、フィラメントガイド14を介して加熱ブロック15へ供給される。
【0023】
加熱ブロック15における、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)の下流側端面には、吐出ノズル18が設けられている。加熱ブロック15へ供給されたフィラメントFは、加熱ブロック15によって溶融される。そして、溶融されたフィラメントFである溶融フィラメントFMは、吐出ノズル18から吐出される。
【0024】
本実施の形態では、吐出ノズル18は、造形テーブル3上に、溶融フィラメントFMを線状に押し出すようにして吐出する。吐出された溶融フィラメントFMが冷却によって固化することで、造形テーブル3上には、造形材料層MLが形成される。また、吐出ノズル18は、形成した造形材料層ML上に、溶融フィラメントFMを、線状に押し出すようにして吐出する操作を繰り返す。この繰返しの吐出により、造形材料層ML上に新たな造形材料層MLが順次積層され、造形材料層MLの積層体である造形物Mが形成される。
【0025】
図1に戻り説明を続ける。本実施の形態では、吐出部10は、2つの吐出ノズルを有していてもよい。2つの吐出ノズルを、第1の吐出ノズル、第2の吐出ノズル、と称して説明する。
【0026】
第1の吐出ノズルは、上述した吐出ノズル18であり、造形物Mを構成する造形材料であるフィラメントFを溶融して吐出する。
【0027】
第2の吐出ノズルは、サポート材のフィラメントを溶融して吐出する。なお、図1に示す例では、第1の吐出ノズルである吐出ノズル18の奥側に、第2の吐出ノズルが配置されている。なお、吐出部10に設けられる吐出ノズルの数は2個に限らず任意である。
【0028】
サポート材は、熱可塑性を有する材料で構成されていればよく、構成材料は限定されない。例えば、サポート材は、造形材料と同じ熱可塑性樹脂で構成されていてもよいし、異なる熱可塑性樹脂で構成されていてもよい。
【0029】
サポート材の吐出によって形成されるサポート部は、最終的には、形成された造形物Mから除去される。
【0030】
サポート材のフィラメント(以下、サポートフィラメントSFと称する場合がある)、および造形材料のフィラメントFは、加熱ブロック15によって各々溶融され、各々に対応する第2の吐出ノズルおよび吐出ノズル18(第1の吐出ノズル)から吐出される。
【0031】
また、造形装置1には、加熱部20Aが設けられている。加熱部20Aは、加熱部20の一例である。なお、造形装置1は、1つの加熱部20Aを備えていてもよいし、複数の加熱部20Aを備えていてもよい。
【0032】
加熱部20Aは、加熱対象領域Rを加熱する。加熱対象領域Rは、加熱部20Aが加熱する対象の領域である。
【0033】
本実施の形態では、加熱対象領域Rは、造形テーブル3上に形成された造形材料層ML上の少なくとも一部の領域である。例えば、加熱対象領域Rは、直前に形成された造形材料層ML上の全領域が、加熱対象領域Rである。全領域とは、直前に形成された1層の造形材料層MLにおける、吐出ノズル18によって次の溶融フィラメントFMの供給される側(すなわち、反鉛直方向側)の端面の全領域を示す。言い換えると、加熱対象領域Rは、直前に形成された1層の造形材料層MLにおける、造形材料層MLの積層体である造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)の両端面の内、吐出ノズル18に対向する側の端面(対向面)を示す。なお、本実施の形態では、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)は、鉛直方向に一致するものとする。
【0034】
加熱部20Aは、回転ステージ19によって支持されている。回転ステージ19は、搬送部の一例である。
【0035】
図3は、加熱部20Aおよび回転ステージ19を拡大して示した模式図である。回転ステージ19は、異なる複数の方向から加熱対象領域Rを加熱するように、加熱部20Aを搬送する。本実施の形態では、加熱部20Aは、吐出ノズル18を中心に回転する。加熱部20Aは、回転ステージRSの回転に伴い回転移動する。
【0036】
これにより、加熱部20Aは、異なる複数の方向から加熱対象領域Rを加熱することができる。
【0037】
また、加熱部20Aは、吐出ノズル18の移動方向に常に追従して、吐出ノズル18によって溶融フィラメントFMの吐出される直前の加熱対象領域Rを加熱することができる。すなわち、加熱部20Aは、吐出ノズル18の移動方向が変わっても、吐出ノズル18による吐出に先回りして、吐出対象領域を加熱対象領域Rとして加熱することが可能である。
【0038】
また、加熱部20Aを、加熱対象領域Rを中心に回転させることで、加熱対象領域Rを連続して加熱することが可能となる。具体的には加熱部20Aを吐出ノズル18を中心に回転させることで、吐出ノズル18による造形物Mの形成時には、溶融フィラメントFMを吐出される直前の造形材料層MLを、常に加熱することが可能となる。
【0039】
図1に戻り説明を続ける。本実施の形態では、加熱部20Aは、加熱源21として、レーザ光源21Aを備える。レーザ光源21Aは、レーザ光を照射する。レーザ光は、例えば、半導体レーザである。レーザ光の照射波長は、例えば、445nmである。
【0040】
すなわち、本実施の形態では、加熱部20Aは、レーザ光の照射によって、加熱対象領域Rを加熱する。例えば、レーザ光源21Aは、造形テーブル3上に形成された造形材料層ML上における、次に溶融フィラメントFMの吐出される加熱対象領域Rに、レーザ光を照射する。このため、本実施の形態では、加熱部20Aは、非接触で且つ局所的に、遠方から加熱対象領域Rを加熱することができる。
【0041】
また、本実施の形態では、造形装置1は、切削部7を備える。切削部7は、造形テーブル3上に形成された、造形材料層MLの積層体である造形物Mの表面の、少なくとも一部を切削する。
【0042】
本実施の形態では、切削部7は、伸縮アーム部7Aと、ドリル7Bと、駆動部7Cと、を備える。ドリル7Bは、造形物Mの表面を切削するための切削工具である。伸縮アーム部7Aは、ドリル7Bの位置を調整可能に支持する。駆動部7Cは、ドリル7Bの回転およびドリル7Bの位置を調整するための駆動機構である。
【0043】
例えば、駆動部7Cの駆動によって、伸縮アーム部7Aによって支持されたドリル7Bは、造形テーブル3上に形成された造形物Mの表面を切削する(詳細後述)。
【0044】
なお、切削部7は、造形テーブル3上に形成された、造形材料層MLの積層体である造形物Mを切削可能な機構および構成であればよく、その機構および構成は、上記形態に限定されない。
【0045】
吐出部10、加熱部20A、および切削部7は、X軸駆動軸31によって、X軸方向(矢印X方向)にスライド移動可能に保持されている。X軸駆動軸31は、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に対して直交する平面における一方向(矢印X軸方向)に長い駆動軸である。X軸駆動軸31には、X軸駆動モータ32が設けられている。吐出部10、加熱部20A、および切削部7は、X軸駆動モータ32の駆動力により、X軸方向へ移動する。
【0046】
X軸駆動モータ32は、Y軸駆動軸33Aに沿ってスライド移動可能に保持されている。Y軸駆動軸33Aは、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に対して直交する平面における、X軸方向に直交する方向(矢印Y方向)に長い駆動軸である。Y軸駆動軸33Aには、Y軸駆動モータ33が設けられている。吐出部10、加熱部20A、切削部7、およびX軸駆動モータ32は、Y軸駆動モータ33の駆動力により、Y軸方向へ移動する。
【0047】
造形テーブル3は、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に長いZ軸駆動軸34、および、ガイド軸35に通され、造形材料層MLの積層方向に沿って移動可能に保持されている。Z軸駆動軸34には、Z軸駆動モータ36が設けられている。造形テーブル3は、Z軸駆動モータ36の駆動力により、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)へ移動する。造形テーブル3には、積載された造形物Mを加熱するための加熱機構が設けられていてもよい。
【0048】
このため、造形装置1は、造形テーブル3上に形成された造形材料層ML上の任意の領域を、加熱部20Aによって加熱可能な構成となっている。また、造形装置1は、造形テーブル3上の任意の領域に、溶融フィラメントFMや溶融サポート材を吐出可能な構成となっている。また、造形装置1は、造形テーブル3上に形成された複数の造形材料層MLの積層体である造形物Mの任意の箇所および領域を、切削部7によって切削可能な構成となっている。
【0049】
また、造形装置1は、クリーニングブラシ37およびダストボックス38を備える。クリーニングブラシ37は、吐出ノズル18の先端周辺をクリーニングする。例えば、クリーニングブラシ37は、吐出ノズル18の周辺に飛散した造形材料などによる粉塵を、ダストボックス38へ集積させる。
【0050】
図4は、造形装置1のハードウェア構成図の一例である。造形装置1は、制御部100を有する。制御部100は、CPUあるいは回路などによって構築されている。制御部100は、造形装置1に設けられた各部と電気的に接続されている。
【0051】
造形装置1は、X軸座標検知機構105Aと、Y軸座標検知機構105Bと、Z軸座標検知機構K105Cと、を備える。
【0052】
X軸座標検知機構105Aは、吐出部10、加熱部20A、および切削部7のX軸方向位置を検知する。X軸座標検知機構105Aは、X軸方向検知結果を制御部100へ送信する。制御部100は、X軸方向検知結果に基づいてX軸駆動モータ32の駆動を制御することで、吐出部10、加熱部20A、および切削部7を目標のX軸方向位置へ移動させる。
【0053】
Y軸座標検知機構105Bは、吐出部10、加熱部20A、および切削部7のY軸方向位置を検知する。Y軸座標検知機構105Bは、Y軸方向検知結果を、制御部100へ送信する。制御部100は、Y軸方向検知結果に基づいてY軸駆動モータ33の駆動を制御することで、吐出部10、加熱部20A、および切削部7を目標のY軸方向位置へ移動させる。
【0054】
Z軸座標検知機構105Cは、造形テーブル3のZ軸方向位置を検知する。Z軸座標検知機構105Cは、Z軸方向検知結果を、制御部100へ送信する。制御部100は、Z軸方向検知結果に基づいてZ軸駆動モータ36の駆動を制御することで、造形テーブル3を目標のZ軸方向位置へ移動させる。
【0055】
このように、制御部100は、吐出部10、加熱部20A、切削部7、および造形テーブル3の移動を制御することにより、吐出部10、加熱部20A、切削部7、および造形テーブル3の相対的な三次元位置を、目標の三次元位置に移動させる。
【0056】
さらに、制御部100は、エクストルーダ11、冷却ブロック12、加熱ブロック15、吐出ノズル18、レーザ光源21A、クリーニングブラシ37、回転ステージRS、撮像モジュール101、ねじり回転機構102、径測定部103、温度センサ104、および切削部7の駆動部7Cに制御信号を送信することで、これらの駆動を制御する。
【0057】
温度センサ104は、加熱対象領域Rの温度を測定する(詳細後述)。側面冷却部39は、造形物Mの側面を冷却する(詳細後述)。
【0058】
次に、造形装置1による造形材料層MLの積層の一例を説明する。図5は、造形材料層MLの積層の一例を示す説明図である。
【0059】
本実施の形態では、加熱部20Aは、レーザ光源21Aから照射されるレーザ光Lを用いて、造形材料層MLにおける加熱対象領域Rを加熱する。吐出部10は、加熱された造形材料層ML上に溶融フィラメントFMを吐出する。
【0060】
詳細には、加熱部20Aのレーザ光源21Aは、形成された造形3材料層ML上における、溶融フィラメントFMが次に吐出される加熱対象領域Rにレーザ光Lを照射する。この照射により、加熱部20Aは、造形材料層ML上における加熱対象領域Rを、再加熱する。再加熱とは、溶融フィラメントFMが冷却されて固化した後に、再度加熱することを表す。再加熱の温度は特に限定されないが、形成済の造形材料層MLの融点以上の温度であることが好ましい。
【0061】
加熱対象領域Rの温度は、温度センサ104によって測定される(図4参照)。温度センサ104は、測定部の一例である。本実施形態では、温度センサ104は、レーザ光源21Aの近傍に配置されている。温度センサ104は、温度測定結果を、制御部100へ出力する。制御部100は、温度測定結果に基づいてレーザ光源21Aのレーザ出力を制御することで、加熱対象領域Rに加える熱の温度を調整する。
【0062】
すなわち、加熱部20Aは、温度センサ104によって測定された温度に基づいて、加熱対象領域Rを加熱する。このため、加熱部20Aは、目標温度となるように、加熱対象領域Rを安定して加熱することができる。
【0063】
形成済の造形材料層MLの表面を再加熱することで、造形材料層MLにおける、再加熱された加熱対象領域Rと、該加熱対象領域Rに次に吐出された溶融フィラメントFMと、の温度差が小さくなり、これらの構成材料が混ざり合うことで、これらの層間の接着性が向上する。すなわち、複数の造形材料層MLの、積層方向(矢印Z方向)の強度が向上する。
【0064】
図6は、造形材料層MLの積層の詳細例を示す模式図である。以下では、吐出部10による造形中の造形材料層MLを、上層Lnと表す。また、上層Lnの一つ下の層を下層Ln-1、下層Ln-1の一つ下の層を下層Ln-2と表す。また、図6中の矢印Wは、吐出部10の移動経路(ツールパス)を示す。なお、図6には、吐出部10のツールパスが分かるように、吐出された溶融フィラメントFMを、楕円柱で模式的に示した。このため、吐出された溶融フィラメントFMの間に空隙が形成されているが、実際には、空隙が形成されないように造形することが好ましい。
【0065】
下層Ln-1を再加熱しながら上層Lnを形成すると、下層Ln-1の造形材料層MLが溶融した状態で、上層Lnの造形材料層MLを形成できる。このように、積層された複数の造形材料層MLの間で、溶融したこれらの造形材料が混ざり合うことで、積層方向に隣接する造形材料層MLと造形材料層MLの間の接着性が向上する。このため、複数の造形材料層MLの積層体である造形物Mの、積層方向(矢印Z方向)の強度が向上する。
【0066】
次に、側面冷却部39について説明する。図7は、側面冷却部39による冷却の説明図である。側面冷却部39は、造形物Mの側面、すなわち延長方向(図1中、矢印Z方向)に対して平行な面を冷却する。側面冷却部39は、造形物Mの側面を冷却可能な冷却源であればよい。側面冷却部39は、例えば、ファンである。
【0067】
側面冷却部39は、吐出部10による造形材料層MLの形成時に、造形物Mの側面に冷却風を送る。造形材料層MLの形成時に、造形物Mの側面に冷却風を送ることで、造形材料層MLの形成時に、造形材料層MLの側面の外形が崩れて造形精度が劣化することを抑制することができる。
【0068】
図1に戻り説明を続ける。次に、切削部7による、造形物Mの切削について説明する。
【0069】
上述したように、本実施の形態では、造形装置1は、形成済の造形材料層MLの表面を再加熱し、加熱された該造形材料層ML上に、溶融した造形材料である溶融フィラメントFMを吐出することで、造形材料層MLを積層させる。そして、この造形材料層MLの加熱と溶融フィラメントFMの吐出を繰返すことで、複数の造形材料層MLの積層体である造形物Mを作製する。
【0070】
ここで、加熱部20Aによる加熱時に造形材料層MLの端部の形状が崩れる場合がある(図6参照)。図6に示すように、造形物Mの外形面OSが変形する場合がある。
【0071】
吐出部10による造形材料層MLの形成時に、側面冷却部39が造形物Mの側面に冷却風を送った場合であっても、造形物Mの外形面OSの変形を十分に抑制出来ない場合もある。
【0072】
図8を用いて説明する。図8は、加熱部20Aによる再加熱の説明図である。
【0073】
図8(A)は、造形材料層MLの加熱と溶融フィラメントFMの吐出を繰返すことで形成された造形物Mの一例を示す立体模式図である。図8(B)は、図8(A)に示す造形物Mを、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に対して直交する方向(例えば、Y方向)から視認したときの形状の一例を示す模式図である。
【0074】
図8に示すように、加熱された造形材料層ML上への溶融フィラメントFMの形成を繰返すことで造形物Mを作製すると、造形物Mの形状が、目的とする形状とは異なるものとなる場合がある。具体的には、例えば、造形物Mの端部(領域B参照)が再加熱により崩れ、目的とする形状に対して、外形が変形する場合がある。
【0075】
そこで、本実施の形態の造形装置1は、切削部7を備える。切削部7は、造形テーブル3上に形成された、造形材料層MLの積層体である造形物Mの表面の、少なくとも一部を切削する。
【0076】
図9は、切削部7による造形物Mの切削の一例を示す模式図である。図9(A)は、造形材料層MLの加熱と溶融フィラメントFMの吐出を繰返すことで形成された造形物Mの一例を示す立体模式図である。図9(B)は、図8(A)に示す造形物Mを、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に対して直交する方向(例えば、Y方向)から視認したときの形状の一例を示す模式図である。
【0077】
本実施の形態では、造形装置1の制御部100は、造形物Mの造形データを受付ける。造形データは、造形物Mを構成する造形材料層MLごとの画像データによって構成されている。以下では、造形データによって示される造形物Mを、目的造形物MBと称して説明する。
【0078】
制御部100は、目的造形物MBに対してひとまわり大きい形状の積層体MAを造形するように、造形データを補正する。目的造形物MBに対してひとまわり大きい形状の積層体MAとは、目的造形物MBを覆う大きさおよび形状の積層体MAであればよい。
【0079】
そして、制御部100は、補正後の造形データ(以下、補正造形データと称する)を用いて、加熱された造形材料層ML上に溶融フィラメントFMを吐出する処理を繰返すことで、積層体MAを造形する。
【0080】
そして、制御部100は、積層体MAを切削して目的造形物MBを作製するように、切削部7を制御する。この切削により、切削部7は、積層体MAにおける、変形した領域(領域B)を取り除き、目的造形物MBを作製する。
【0081】
図10は、切削部7による切削後の目的造形物MBの一例を示す模式図である。図10(A)は、切削部7によって切削されることで形成された、目的造形物MBの一例を示す立体模式図である。図10(B)は、図10(A)に示す目的造形物MBを、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)に対して直交する方向(例えば、Y方向)から視認したときの形状の一例を示す模式図である。
【0082】
図10に示すように、切削部7によって積層体MAを切削することで、変形した領域(領域B)が取り除かれ、造形データによって示される造形物Mである目的造形物MBが得られる。
【0083】
また、切削部7が切削する積層体MAは、複数の造形材料層MLの、積層方向(矢印Z方向)の強度が向上した状態の積層体MAである。このため、切削部7が積層体MAを切削することで得られる目的造形物MBは、積層方向(矢印Z方向)の強度が高く、且つ、造形データによって示される形状(すなわち目的とする形状)を示すものとなる。
【0084】
このため、造形装置1は、積層方向の強度低下の抑制された、目的とする形状の目的造形物MBを提供することができる。
【0085】
また、本実施の形態では、造形装置1は、切削部7を備える。このため、加熱部20Aによる加熱対象領域Rの範囲は、造形材料層MLの表面の全領域とすることができる。全領域とは、上述したように、形成された造形材料層MLにおける、吐出ノズル18に対向する対向面の全領域である。すなわち、切削部7によって積層体MAを切削して目的造形物MBを切出すため、加熱対象領域Rの範囲を、造形材料層MLの表面の全領域とすることができる。このため、加熱部20Aによる加熱時範囲の精密な制御の必要性が低くなり、積層方向の強度低下の抑制された、目的とする形状の目的造形物MBを、容易に作製することができる。
【0086】
なお、造形装置1は、側面冷却部39を備えた形態に限定されない。しかし、より精度良く目的の形状の目的造形物MBを得る観点から、造形装置1は、側面冷却部39を備えた構成であることが好ましい。この場合、切削部7および側面冷却部39によって、より精度良く、目的の形状の目的造形物MBを得ることができる。
【0087】
次に、本実施の形態の造形装置1が実行する造形処理の手順を説明する。図11は、本実施の形態の造形装置1が実行する、造形処理の手順の一例を示す、フローチャートである。
【0088】
まず、造形装置1の制御部100は、目的造形物MBの造形データを受付けると、目的造形物MBに対してひとまわり大きい形状の積層体MAを造形するように、造形データを補正する。そして、制御部100は、補正造形データを用いて、図11に示す処理ルーチンを実行する。補正造形データは、積層体MAを構成する造形材料層MLごとの画像データによって構成されている。
【0089】
造形装置1の制御部100は、X軸駆動モータ32またはY軸駆動モータ33を駆動して、吐出部10をX軸またはY軸方向に移動させる。吐出部10が移動している間に、制御部100は、補正造形データのうち、最下層の画像データに基づいて、吐出ノズル18から溶融フィラメントFMを吐出する。これによって、造形装置1は、造形テーブル3上に、画像データに応じた造形材料層MLを形成する(ステップS11)。
【0090】
次に、加熱部20Aが、造形テーブル3上に直前に形成された造形材料層ML上の加熱対象領域Rへレーザ光Lを照射し、該加熱対象領域Rを加熱する(ステップS12)。ステップS12の処理によって、直前に形成された造形材料層MLにおける加熱対象領域Rが再溶融する。
【0091】
次に、制御部100は、補正造形データにおける、直前に形成した造形材料層MLの上に積層する造形材料層MLの画像データを読取る。そして、制御部100は、該画像データに基づいて、吐出ノズル18から溶融フィラメントFMを吐出する。これによって、造形装置1は、直前に形成され、加熱部20Aによって加熱された造形材料層MLに、画像データに応じた造形材料層MLを形成する(ステップS13)。
【0092】
なお、制御部100は、ステップS12の処理と、ステップS13の処理と、の一部が並列で実行されるように制御してもよい。この場合、吐出部10は、例えば、直前に形成した造形材料層MLにレーザ光Lを照射する処理を開始してから、加熱対象領域Rの範囲全体へのレーザの照射が完了する前に、次の造形材料層ML用の溶融フィラメントFMの吐出を開始する。
【0093】
次に、側面冷却部39が、ステップS13の処理によって形成された造形材料層MLの側面を冷却する(ステップS14)。
【0094】
次に、制御部100は、補正造形データにおける、最表層の造形材料層MLを形成したか否かを判断する(ステップS15)。ステップS15で否定判断すると(ステップS15:No)、上記ステップS12へ戻る。ステップS15で肯定判断すると(ステップS15:Yes)、ステップS16へ進む。
【0095】
次に、制御部100は、造形テーブル3上に形成された積層体MAが目的造形物MBとなるまで、積層体MAを切削するように、切削部7を制御する(ステップS16)。例えば、制御部100は、補正造形データと、補正前の造形データと、を用いて、切削範囲を特定し、該切削範囲を切削するように切削部7を制御することで、ステップS16の処理を行う。そして、本ルーチンを終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態の造形装置1は、加熱部20Aと、吐出部10と、切削部7と、を備える。加熱部20Aは、形成された造形材料層MLを加熱する。吐出部10は、加熱された造形材料層MLに溶融フィラメントFM(溶融した造形材料)を吐出して造形材料層MLを積層させる。切削部7は、造形材料層MLの積層体MA(造形物M)の表面の少なくとも一部を切削する。
【0097】
このように、本実施の形態の造形装置1は、吐出された溶融フィラメントFMによって形成された造形材料層MLを加熱部20Aによって加熱し、加熱された造形材料層ML上に、溶融フィラメントFMを吐出して造形材料層MLを形成する。
【0098】
このように、形成済の造形材料層MLを再加熱することで、造形材料層MLにおける、再加熱された加熱対象領域Rと、該加熱対象領域Rに次に吐出された溶融フィラメントFMによる造形材料層MLと、の温度差が小さくなり、これらの構成材料が混ざり合うことで、これらの積層方向(矢印Z方向)に隣接する造形材料層MLの各層間の接着性が向上する。すなわち、複数の造形材料層MLの、積層方向(矢印Z方向)の強度が向上する。
【0099】
このため、積層方向(矢印Z方向)の強度低下の抑制された積層体MA(造形物M)が得られる。
【0100】
また、本実施の形態の造形装置1では、切削部7が、積層体MA(造形物M)の表面の少なくとも一部を切削する。すなわち、切削部7は、積層方向の強度が向上された状態の積層体MAの表面の少なくとも一部を切削する。
【0101】
このため、切削部7が、目的とする目的造形物MBの形状となるように積層体MAを切削することで、積層方向の強度低下の抑制された、目的とする形状の目的造形物MB(造形物M)を作製することができる。
【0102】
従って、本実施の形態の造形装置1は、積層方向(矢印Z方向)の強度低下の抑制された、目的とする形状の目的造形物MB(造形物M)を提供することができる。
【0103】
また、搬送部(回転ステージRS)は、異なる複数の方向から加熱対象領域Rを加熱するように、加熱部20Aを搬送する。
【0104】
温度センサ104(測定部)は、加熱部20Aの加熱対象領域Rの温度を測定する。加熱部20Aは、温度センサ104によって測定された温度に基づいて、加熱対象領域Rを加熱する。加熱部20Aは、レーザ光Lを照射する。
【0105】
また、本実施の形態の造形装置1は、複数の加熱部20Aを備えていてもよい。複数の加熱部20Aを備えることで、加熱部20Aによる加熱時間が短縮され、造形物Mの造形時間の短縮を図ることができる。
【0106】
(変形例1)
上記実施の形態では、加熱部20として、レーザ光を照射する加熱部20Aを用いた形態を説明した。しかし、加熱部20は、レーザ光を照射することで加熱対象領域Rを加熱する形態に限定されない。
【0107】
例えば、加熱部20は、加熱した空気を送風する機構であってもよい。図12は、造形装置1Bの一例を示す模式図である。造形装置1Bは、加熱部20Aに代えて加熱部20Bを備えた点以外は、上記実施の形態の造形装置1と同様である(図1も参照)。
【0108】
加熱部20Bは、温風源21Bを備える。温風源21Bは、温風を加熱対象領域Rに向かって送風する。温風源21Bは、加熱対象領域Rの構成材料の融点以上の温度の風を送風可能な機構であればよい。温風源21Bは、例えば、ヒータやファンである。
【0109】
このため、本実施の形態では、加熱部20Bは、非接触で遠方から加熱対象領域Rを加熱することができる。
【0110】
このように、加熱部20は、加熱した空気を送風する加熱部20Bであってもよい。
【0111】
(変形例2)
上記実施の形態および上記変形例1では、加熱部20が、加熱対象領域Rに対して非接触で該加熱対象領域Rを加熱する形態を説明した。しかし、加熱部20は、加熱対象領域Rを接触加熱する形態であってもよい。
【0112】
図13は、本変形例2の造形装置1Cの一例を示す模式図である。造形装置1Cは、加熱部20Aに代えて加熱部20Cを備えた点以外は、上記実施の形態の造形装置1と同様である(図1も参照)。
【0113】
加熱部20Cは、冷却ブロック22と、ガイド24と、接触加熱源21Cと、を備える。接触加熱源21Cは、加熱対象領域Rを接触加熱する。
【0114】
接触加熱源21Cは、加熱ブロック25と、加熱プレート28と、を備える。加熱プレート28は、造形材料層MLに接触することで、造形材料層MLの加熱対象領域Rを加熱および加圧する。
【0115】
加熱ブロック25は、加熱プレート28を加熱する。加熱ブロック25は、ヒータなどの熱源26と、加熱プレート28の温度を制御するための熱電対27と、を備える。
【0116】
冷却ブロック22は、加熱ブロック25からの熱伝導を防ぐための機構である。冷却ブロック22は、冷却源23を備える。加熱ブロック25と冷却ブロック22との間には、ガイド24が設けられている。
【0117】
加熱部20Cは、X軸駆動軸31(図1参照)に対し、連結部材を介して、スライド移動可能に保持されている。加熱部20Cは、加熱ブロック25によって加熱されて高温になる。その熱がX軸駆動モータ32に伝わるのを低減するため、フィラメントガイド14等を含めた移送路およびガイド24は、低熱伝導性であることが好ましい。
【0118】
加熱プレート28における、造形材料層MLの積層方向(矢印Z方向)下流側端部は、吐出ノズル18の下端より、造形材料層MLの1層分、低い位置(積層方向のより下流側)に配置されている。吐出部10および加熱部20Cを、図13に示すXA方向に走査しながら、溶融フィラメントFMを吐出すると同時に、加熱プレート28は、造形中の造形材料層MLの一つ下の造形材料層MLを接触加熱により再加熱する。これにより、造形中の造形材料層MLと、一つ下の造形材料層MLとの温度差が小さくなり、層間で材料が混ざり合う。このため、造形物Mの層間強度が向上する。
【0119】
このように、加熱部20は、加熱対象領域Rを接触加熱する加熱部20Cであってもよい。
【0120】
(変形例3)
加熱対象領域Rを接触加熱する形態は、変形例2に示す形態に限定されない。
【0121】
図14は、本変形例3の造形装置1Dの一例を示す模式図である。造形装置1Dは、加熱部20Aに代えて加熱部20Dを備えた点以外は、上記実施の形態の造形装置1と同様である。
【0122】
加熱部20Dは、冷却ブロック22と、ガイド24と、接触加熱源21Dと、を備える。接触加熱源21Dは、加熱対象領域Rを接触加熱する。冷却ブロック22およびガイド24は、変形例2と同様である。
【0123】
接触加熱源21Dは、タップノズル28Dと、加熱ブロック25と、を備える。加熱ブロック25は、上記変形例2と同様である。すなわち、接触加熱源21Dは、加熱プレート28に替えてタップノズル28Dを備える点以外は、変形例2の接触加熱源21Cと同様である。
【0124】
タップノズル28Dは、加熱ブロック25によって加熱される。タップノズル28Dは、モータ等の動力により、造形物Mを、該造形材料層MLの積層方向に繰り返しタップする。このタップ動作により、タップノズル28Dは、造形材料層MLの加熱対象領域Rを加熱および加圧する。これにより、造形中の造形材料層MLと、一つ下の造形材料層MLとの温度差が小さくなり、層間で材料が混ざり合う。このため、造形物Mの層間強度が向上する。
【0125】
また、吐出部10は、造形材料層MLにおける、タップ動作によって凹んだ加熱対象領域Rを埋めるように、溶融フィラメントFMを吐出する。このため、造形材料層MLの最表面の形状を平滑にすることができる。
【0126】
このように、加熱部20は、加熱対象領域Rを接触加熱する加熱部20Dであってもよい。
【0127】
(変形例4)
加熱対象領域Rを接触加熱する形態は、変形例2および変形例3に示す形態に限定されない。
【0128】
図15は、本変形例4の造形装置1Eの一例を示す模式図である。造形装置1Eは、加熱部20Aに代えて加熱部20Eを備えた点以外は、上記実施の形態の造形装置1と同様である。
【0129】
加熱部20Eは、加熱対象領域Rを溶融および加圧する接触加熱源21Eを備える。接触加熱源21Eは、加熱源21の一例である。接触加熱源21Eには、超音波振動機構が搭載されている。接触加熱源21Eは、超音波振動機構によって発生された超音波の振動を造形材料層MLへ伝達することで、加熱対象領域Rを溶融する。造形物Mに超音波の振動が伝達されると、造形物Mにおける各造形材料層MLが溶着して接合する。
【0130】
なお、接触加熱源21Eの数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数の接触加熱源21Eを備えた構成の場合には、各々のホーンの形状は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0131】
―ハードウェア構成―
図16は、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの各々に設けられた制御部100の、ハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0132】
造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの各々は、CPU250と、ROM(Read Only Memory)260と、RAM(Random Access Memory)270と、HDD(Hard Disk Drive)280と、通信I/F(インターフェース)240と、を備え、バス210を介して相互に接続されている。
【0133】
CPU250は、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの動作を統括的に制御する。CPU250は、RAM270をワークエリアとし、ROM260またはHDD280などに格納されたプログラムを実行することで、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの動作を制御する。
【0134】
HDD280は、プログラムやデータなどを格納する。通信I/F240は、ネットワーク200を介して他の装置や機器と通信するためのインターフェースである。
【0135】
なお、上述した実施の形態および変形例における、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの各々で実行する上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよいし、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、各種プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0136】
また、上述した実施の形態および変形例における、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの各々で実行されるプログラムは、上記各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしては、例えば、CPU250(プロセッサ回路)がROM260またはHDD280からプログラムを読み出して実行することにより、上述した各機能部がRAM270(主記憶)上にロードされ、上述した各機能部がRAM270(主記憶)上に生成されるようになっている。なお、造形装置1、造形装置1B、造形装置1C、造形装置1D、および造形装置1Eの一部または全部の機能を、ASIC(Application SpecI/Fic Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアを用いて実現することも可能である。
【0137】
なお、上記には、実施の形態および変形例を説明したが、上記実施の形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記新規な実施の形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1、1B、1C、1D、1E 造形装置
7 切削部
10 吐出部
19 回転ステージ
20、20A、20B、20C、20D、20E 加熱部
104 温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【文献】特開2015-74164号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16