(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】群管理制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B66B1/18 N
(21)【出願番号】P 2022098592
(22)【出願日】2022-06-20
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】松江 清高
(72)【発明者】
【氏名】会津 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】大堀 良介
(72)【発明者】
【氏名】杉原 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/234938(WO,A1)
【文献】特開2018-158793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のかごの中から何れかを割当かごとして設定し、利用者と自律移動ロボットとの同乗を許容するエレベータ制御システムにおける群管理制御装置であって、
自律移動ロボットによる乗場呼びをロボット呼びとして受信するロボット情報受信部と、
前記ロボット呼びに応答する複数の割当候補かごを決定する割当候補かご評価部と、
ロボット乗車に対するかご割当の優先度を
項目ごとに定めた優先度テーブルと、
複数の割当て候補かごの中から、前記優先度テーブルに設定された優先度に基づいて割当かごを決定する割当かご決定部と、
決定された割当てかご指令を前記自律移動ロボットおよび各かごを制御するエレベータ制御装置に出力する割当かご出力部と、を備える群管理制御装置。
【請求項2】
前記自律移動ロボットからロボット呼びがあった場合に、当該自律移動ロボットが乗車する乗場の混雑状況を検出し、検出結果に基づき前記自律移動ロボットを一時的に待機させるか否かを指示するロボット呼び待機判断処理を実行するロボット呼び判断部を有する、請求項1に記載の群管理制御装置。
【請求項3】
前記ロボット呼び判断部で実行されるロボット呼び待機判断処理では、ロボット呼び待機場所の優先度が設定されており、優先度に基づいて前記自律移動ロボットに対して待機場所を指示する、請求項2に記載の群管理制御装置。
【請求項4】
前記割当かご決定部は、優先度テーブルに記載の優先度に従ってかごを割り当てる際、同一
優先度のかごが複数抽出された場合は、次に優先度の高い
項目が適用される割当かごを割当てる、請求項1に記載の群管理制御装置。
【請求項5】
前記自律移動ロボットに対する割当かごが無い場合、空きかご作成テーブルに設定されている条件に基づき、空きかごを作成する空きかご作成部を有する、請求項1に記載の群管理制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、群管理制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内の清掃や荷物の運搬、建物利用者への道案内などの業務を行う自律移動体(「自律移動ロボット」と称する)が実用化されている。ビルのように複数の階床が存在する建物において、上記の業務を行わせるには、自律移動ロボットのエレベータ利用が不可欠となる。
【0003】
従来、ロボットと利用者は同時に乗車しないという仮定の下、様々なかご割当方法が提案されている。しかしながら、例えばビル案内ロボットのような利用者がロボットに案内されてビル内を移動するケースを考えると、ロボットと利用者は同時にかごへ乗車する可能性がある。そのような場合、ロボットの乗車の優先度を下げると結果的に利用者の利便性の低下につながる可能性がある。また、もしロボットによるホール呼びと利用者によるホール呼びを対等に扱うと、今度は利用者の利便性が低下する可能性も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6989051号
【文献】特許第6819767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、1台のかごをロボット専用かごに割り当ててしまうと、そのかごに人は乗車できず、他のかごの中からかごを割り当てる必要があり、利用者の利便性の低下につながる可能性がある。また、エレベータの利用状況に応じてロボット単独で乗車させる場合と人と共存させる場合を判断することができないケースが発生すると、輸送効率と安全性を両立することができなくなる可能性もある。
【0006】
本発明の実施形態は、利用者の利便性を損ねることなく、自律移動ロボットが提供するサービスに合わせて柔軟なかご割当を可能とし自律移動ロボットと利用者との共存を可能にする群管理制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、複数のかごの中から何れかを割当かごとして設定し、利用者と自律移動ロボットとの同乗を許容するエレベータ制御システムにおける群管理制御装置であって、自律移動ロボットによる乗場呼びをロボット呼びとして受信するロボット情報受信部と、前記ロボット呼びに応答する複数の割当候補かごを決定する割当候補かご評価部と、
ロボット乗車に対するかご割当の優先度を定めた優先度テーブルと、複数の割当て候補かごの中から、前記優先度テーブルに設定された優先度に基づいて割当かごを決定する割当かご決定部と、決定された割当てかご指令を前記自律移動ロボットおよび各かごを制御するエレベータ制御装置に出力する割当かご出力部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態におけるエレベータ制御システムの全体構成を示すブロック図。
【
図2】第1実施形態に係る群管理制御装置が適用されるエレベータ制御システムの構成を示すブロック図。
【
図5】第1実施形態のかご割当処理を示すフローチャート。
【
図6】ロボット呼び待機判断処理を示すフローチャート。
【
図7】ロボット呼び待機の優先度の一例を示す説明図。
【
図8】割当候補かごの決定条件の一例を示す説明図。
【
図9】かご割当の優先度テーブルを一例を示す説明図。
【
図10】第2実施形態に係る群管理制御装置が適用されるエレベータ制御システムの構成を示すブロック図。
【
図11】第2実施形態で利用される空きかご作成テーブルの一例を示す説明図。
【
図12】第2実施形態のかご割当処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、実施形態のエレベータ制御システム1は、2台のかご(A号機、B号機)10A,10Bと、各かご10A,10Bを個別に制御するエレベータ制御装置20A,20Bと、群管理制御装置30とを備えている。
【0010】
各かご10A,10Bは、かご内から行先階を登録する等の処理を行うかご内操作盤11A,11Bと、かご内荷重を検出する荷重センサ12A,12Bとを備えている。
【0011】
また、乗場(エレベータホール)40は乗場行先階登録装置41と、上下呼びボタン42と、通信装置43と、乗場カメラ44とを備えている。また、乗場40には、自律移動ロボット50と利用者60とがかご10A,10Bの到着を待機している。
【0012】
乗場行先階登録装置41は利用者の操作により、利用者の行先階を登録して、群管理制御装置30に出力する、上下呼びボタン42は利用者の操作により上下方向の乗場呼びを登録して群管理制御装置30に出力する。
【0013】
通信装置43は、無線LANのアクセスポイントとして機能し、自律移動ロボット50からのロボット呼びやロボット情報を群管理制御装置30に出力する処理や群管理制御装置30からのかご割当指令を自律移動ロボット50に出力する処理等を実行する。なお、自律移動ロボット50とのロボット情報等のやり取りは通信キャリア(3G,4G,5G,6G等)を用いてもよい。
【0014】
乗場カメラ44は、乗場40を撮像して乗場の混雑状態や自律移動ロボット50の到着状況や待機状態等を示す乗場画像を群管理制御装置30に出力する。
【0015】
<第1実施形態>
図2は第1実施形態に係るエレベータ制御システムを構成する群管理制御装置30と自律移動ロボット50の機能ブロック図である。
【0016】
群管理制御装置30は、乗場呼び受付部301と、かご情報入力部302と、カメラ画像入力部303とを備える。また、ロボット情報受信部304と、ロボット呼び判断部305と、割当候補かご評価部306と、割当かご決定部307と、優先度テーブル308と、割当かご出力部309と、指令出力部310とを備える。
【0017】
乗場呼び受付部301は、乗場行先階登録装置41および上下呼びボタン42から登録された乗場呼びを受け付ける。
【0018】
かご情報入力部302は、各かご10A,10Bのかご情報を各エレベータ制御装置20A,20Bから入力する。具体的には、かごID、行先階呼び(かご呼び)、荷重センサ12A,12Bで検出されたかご荷重、現在乗車中の人数(かご内カメラの画像やかご荷重から推察)、ロボット乗車有無、ロボット乗車可否等の情報を含む。具体的なかご情報については、
図4を参照して後述する。
【0019】
カメラ画像入力部303は、乗場カメラ44で撮像された乗場40の画像を入力して乗場の利用者人数、自律移動ロボット50の到着状況や待機状況等の乗場状況を把握する。
【0020】
ロボット情報受信部304は、自律移動ロボット50からのロボット呼びの受信、および自律移動ロボット50に関するロボット情報を受信する。なお、以下の説明では、広義の「ロボット情報」として「ロボット呼び」も含まれるものとする。
【0021】
ロボット呼び判断部305は、自律移動ロボット50からのロボット呼びの内容を判断する。
【0022】
割当候補かご評価部306は、乗場呼び受付部301から乗場呼び登録状態を取得する。また、ロボット呼び判断部305からロボット呼びの登録状態を取得する。さらに、かご情報入力部302から各乗りかご10A,10Bに対する自律移動ロボット50の乗車可否情報を取得する。さらに、エレベータ制御装置20A,20Bから出力されるかご位置やかご内の荷重等をかご情報入力部302を介して取得する。加えて、カメラ画像入力部303から乗場40の状況を示すカメラ画像を取得する。そして、取得した情報に基づき、割当てが可能な乗りかごであるかを算出し、割当ての候補かごを求める。
【0023】
割当かご決定部307は、割当候補かご評価部306で決定された割当候補かごに対して優先度テーブル308に設定された条件に基づき、適切な割当かごを決定する。
【0024】
優先度テーブル308は、割当かご決定部307で割当かごを決定する際の条件を優先度を付して設定したものである。優先度テーブル308について
図9で後述する。
【0025】
割当かご出力部309は、割当かご決定部307で決定された割当かごをエレベータ制御装置20A,20Bに出力するとともに、指令出力部310に出力する。
【0026】
指令出力部310は、割当かご出力部309の割当かご指令を自律移動ロボット50へ出力する。
【0027】
なお、群管理制御装置30は、クラウドシステム70と有線LANを経由して接続されている。群管理制御装置30の一部の機能、例えば、計算コストの高い処理機能はクラウドシステム70側で実施することも可能である。
【0028】
自律移動ロボット50は、自律して移動可能なサービスロボットであり、ロボット情報送信部501と、ロボット情報記憶部502と、指令入力部503と、駆動制御部504とを備えている。
【0029】
ロボット情報送信部501は、ロボット呼びを群管理制御装置30に送信するとともに、ロボット情報記憶部502に記憶されたロボット情報を群管理制御装置30に送信する。
【0030】
ロボット情報記憶部502は、自律移動ロボット50に関する種々の情報が記憶されている。ロボット情報については
図3を参照して後述する。
【0031】
指令入力部503は、割当かご指令を通信装置43を介して受信し、駆動制御部504に割当指令を出力する。
【0032】
駆動制御部504は、走行用モータや各種のセンサを備え、指令入力部503からの割当指令があると、割当指令に応答するよう自律移動ロボット50の走行駆動を制御する。
【0033】
《ロボット情報》
図3には、ロボット情報の一例が示されている。ロボット情報としては、以下のNo.1~No.10がロボット情報記憶部502に設定されている。
【0034】
No.1 ホール到着予定時刻:例えば、8:00:00に到着する。
No.2 ホール到着位置:例えば、3階バンクA-1番に到着する。
No.3 乗場階:3階から乗車する。
No.4 行先階:11階で降車する。
No.5 優先度:5(優先度レベルは事前に定義しておく)
No.6 占有スペース:ロボットは3人分、3m2のスペースを占有する。
No.7 重量:このロボットは100kgの重量を有する。
No.8 人との共存可否:可能である。
No.9 目的階到達最遅時刻:目的階(行先階)には遅くとも8:05:00には到着する。
No.10 友連れ人数:5人:これは5人のビル訪問者を目的階まで案内する案内ロボットを想定したもの。
【0035】
《かご情報》
図4はかご情報の一例を示している。具体的には、以下のNo.1~No.8に示す項目が設定される。
【0036】
No.1 かごID:0001:各かごを識別するための固有番号
No.2 定員:10人:かご内の乗車定員
No.3 面積:10m2
No.4 乗車人数:3人:現在乗車中の人数
No.5 重量(荷重):120kg:かご荷重であり、人を含む乗車物の荷重
No.6 ロボット乗車有無:現在、ロボットが乗車中か否か
No.7 ロボット乗車可否:乗車可能か否か
No.8 空きかご作成可否:可能:かごに乗車中の人を強制的に降ろしてロボット乗車のための空きかごを作成する。
【0037】
《第1実施形態の処理手順》
次に、第1実施形態の処理手順を
図5、
図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
群管理制御装置30のロボット情報受信部304は、ロボット呼びが有るか否かを監視し、ロボット呼びが有ると(ステップS1YES)、ロボット呼びをロボット呼び判断部305に出力する。ロボット呼び判断部は、ロボット呼びに対して自律移動ロボット50が待機すべきか否かの判断を示すロボット呼び待機判断処理(ステップS2)を実行する。また、ロボット呼び判断部305は、ロボット呼びを割当候補かご評価部306に出力する。
【0039】
図6は、ロボット呼び判断部305のロボット待機判断処理の手順を示している。
【0040】
ここで、ロボット呼び待機判断とは、例えばホールに多数のかご待ち利用者がいるときに一時的にロボット呼びを待機させる機能である。例えばビルメンテナンスロボットのようなビル管理者が当該ロボットのかご割当優先度を利用者より低くしたいと考えた場合に、ロボットへのかご割当を一時的に保留させるための機能である。
【0041】
この処理では、ホール待ち人数がしきい値以上であるか否かが判定される(ステップS21)。しきい値以上であれば、自律移動ロボット50に対してロボット呼び待機指示を出力する(ステップS21YES,S22)。
【0042】
《ロボット呼び待機>
上述のロボット呼び待機判断処理でロボット呼びを待機させる場合、自律移動ロボット50に対して待機場所を通知する機能である。
図7にその一例を示す。
【0043】
図7は、ロボット呼び待機場所の優先度を示しており、エレベータ制御システムからロボットへの通知内容を示す。具体的には、ホール待機場所を指示する場合(No.1~No.3)と、移動時間を指示する場合(No.4)とがあり、それぞれについて以下のような優先度が設定されている。どれを通知するかは事前決定した優先度に従う。
【0044】
No.1 ホール待機場所を制御:事前に決められた場所で待つよう指示:優先度3
No.2 ホール待機場所を制御:ホール内の人が少ない場所で待つよう指示:優先度2
No.3 ホール待機場所を制御:かごから降りる人が少ない場所、いない場所で待つよう指示:優先度1
No.4 移動時間を制御:人流情報から混雑具合を割り出して推奨移動時刻をロボットに通知して適切なタイミングで移動させるよう指示
【0045】
また、ホール到着前にロボット呼びを行っている場合はホールへの推奨移動時刻を通知することなども考えられる。これらの情報の各項目に設定された優先度に従って自律移動ロボット50への指示を行う。例えば、
図7の場合、「事前に決められた場所で待つよう指示」が優先度3で最高優先度になっているため、先ずは事前に決められた場所で待機するようにロボットへ指示する。もし、その待機場所が他のロボットや利用者等で占有されており当該場所への移動が困難な場合は、次に優先度の高い「ホール内の人が少ない場所で待つよう指示」を実行して人が少ない場所で待つようにしてもらう。
【0046】
図6のフローチャートに戻り、ホール待ち人数がしきい値以上でなければ、次に、自律移動ロボット50のかご割当優先度はしきい値レベルL以上か否かが判定される(ステップS21NO,S23)。自律移動ロボット50が保有しているかご割当の優先度が高い場合にも、自律移動ロボット50に対してロボット呼び待機指示を出力する(ステップS23YES,S22)。
【0047】
ロボット呼びの待機待ち時間が上限を超えるまで自律移動ロボット50は所定場所で待機する(ステップS24)。ロボット呼びの待機待ち時間が上限を超えた場合(ステップS24YES)には、ロボット待機指示を解除する(ステップS25)
以上の判断処理は複数条件のAND(論理積)やOR(論理和)で決定することも可能である。つまり、ホール待ち人数(条件1)とロボット優先度(条件2)のANDを満たすときにのみロボット呼びを待機させるということも可能である。また待機時間は事前決定した固定値や状況に応じて可変とするなど複数のやり方が考えられる。
【0048】
一方、ロボット呼びが発生すると、上述したロボット呼び待機判断処理と並行して、
図5のステップS3に示すように、割当候補かご評価部306では、割当候補かごを決定する処理が実行される。割当候補かごの決定は
図8に示す条件に基づいて実施する。
【0049】
《割当て候補かごの決定》
図8に示すように、割当候補かごの決定は以下の条件による。対象となっている条件を満たしているかごを割当候補にする。
【0050】
No.1 ロボット乗車を許可しているかごが対象
No.2 人が乗車していないかご:乗車人数:利用者(ホール呼び)へ割当済みのかごであるが、現時点で乗車人数がゼロ人のかごであれば対象
No.3 人が乗車していないかご:待機中のかご(乗車人数ゼロ人)であれば対象
No.4 人が乗車中のかご:乗車比率:単位時間あたりの乗車率がしきい値以上(しきい値の決め方によっては、しきい値以下)のかごであれば対象
No.5 人の乗車有無によらない:人の乗車有無に関わらずあらかじめ決定しておいたかご
No.6 人の乗車有無によらない:人の乗車有無に関わらず全てのかご
【0051】
以上の処理では、ロボット乗車を許可しているかごはある意味必須の要件になるが、それ以外にも、利用者(ホール呼び)へ割り当て済みだが現時点で誰も乗車していないかご、ホール呼びに割り当てられておらず、かつ利用者が誰も乗車していないかご、単位時間あたりの乗車率がしきい値以上(しきい値の決め方によってはしきい値以下のかご)、利用者の乗車有無に関わらずあらかじめ決定しているかご、利用者の乗車有無に関わらずすべてのかご、などが割当候補かごとして考えられる。このような評価基準に基づき割当候補を決定する。実際のかご割当は、割当てかご決定部307で決定される。
【0052】
《割当かごの決定》
かごの割当方法は、
図9に示す優先度テーブル308に設定された様々な手法により設定される。
【0053】
《優先度テーブル》
図9は、かご割当方法の優先度テーブル308の一例を示している。
図9の例では、優先度10が一番高い高優先度、優先度1が最も低い低優先度として設定されている。
【0054】
割当対象かごの中からこの優先度テーブル308に記載の優先度に従ってかごを割り当てる。但し、同一のかごが複数抽出された場合は、次に優先度の高い割当方法で割当てる。例えば、以下のNo.1~No.6に示す優先度が割り当てられた場合、かご内空きスペース優先でかごを探索する。もし同一スペースのかごが複数抽出された場合、次に優先度の高いロボットホール到着位置に最も近いかごで判断して割り当てる。
【0055】
No.1 ロボット非対応の群管理制御アルゴリズム:既存のアルゴリズムを適用:優先度1
No.2 かご内空きスペース優先(人数優先、面積優先、等):かご内の空きスペースが最も広いかごを割り当てる:優先度10
No.3 ロボットホール到着位置優先:ロボットが待機している位置に最も近いかごを割り当てる:優先度8
No.4 乗場階へのかご到着時刻優先:ロボット乗場階に最も早く到着するかごを優先的に割り当てる:優先度6
No.5 固定割当:管理者等が事前に決定したかごを割り当てる:優先度1
No.6 ランダム割当:ランダムにかごを割り当てる:優先度1
【0056】
上述のNo.1のように、ロボットの乗車を想定していない既存の群管理制御アルゴリズムに基づく割当方法が考えられる。また、No.2のように、かご内の空きスペースや空き重量が最大のかごを割り当てる方法が考えられる。また、No.3のように、ロボットのホール待機位置に最も近いかごを割り当てる方法がある。また、No.4のように、ロボット乗車階に最も早く到着するかごを割り当てる方法がある。さらに、No.5のように、エレベータ管理者などが事前に決定したかごを割り当てる方法や、No.6のように、ランダムにかごを割り当てる方法、などが考えられる。これについても、従前と同様に各割当方法に優先度を設定しておき、その優先度に基づいてかご割当を実施する。
図9の場合、「かご内空きスペース優先」が最高優先になっているため、これに従ってかごを決定する。その際、かご内空きスペースが同一のかごが複数存在した場合は次に優先度の高い「ロボットホール到着位置優先」に基づいてかごを決定する(ステップS4)。
【0057】
決定された割当かご情報は割当かご出力部309からエレベータ制御装置20A,20Bに出力されるとともに、指令出力部310を介して自律移動ロボット50に出力される(ステップS5)。
【0058】
このように、第1実施形態によれば、自律移動ロボット50と利用者60が、同じ群管理下のエレベータかご10A,10B)を利用する際に、利用者60が多いときは自律移動ロボット50を待機させ呼び登録を抑制したり、自律移動ロボット50からの呼び登録時に、自律移動ロボット50に応じて適切なかご10A,10Bを割当てたりすることができる。そのため、サービスを低下させることなく、効率的に割当かごを決定して自律移動ロボット50と利用者60との共存が可能になる。
【0059】
<第2実施形態>
図10は第1実施形態に係るエレベータ制御システムを構成する群管理制御装置と自律移動ロボット50の機能ブロック図である。
【0060】
第2実施形態の群管理制御装置30は、第1実施形態の構成に加えて空きかご作成部311と空きかご作成テーブル312を備える構成である。その他の構成は第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0061】
第1実施形態の処理において、割当かごを見つけられないケースというのが生じる可能性がある。例えば、自律移動ロボット50と利用者60の同時かご乗車(共存)を禁止し、かつ、すべてのかご10A,10Bが利用者60により常時利用されているような状況を考えた場合、自律移動ロボット50は空きかごが出るまでずっと待たされることになる。この場合の対策の一つとして、第2実施形態では、空きかご(一時的にロボットが乗車可能なロボット専用かご)を作成する処理を実行する。
【0062】
空きかご作成部311は、自律移動ロボット50に対する割当かごが無い場合、空きかご作成テーブル312に設定されている条件に基づき、空きかごを作成する。
【0063】
空きかご作成テーブル312は、
図11に示すように、空きかごを作成するための条件が設定されている。具体的には、以下のNo.1~No.3の条件が設定されている。
【0064】
No.1 強制作成:無条件に強制作成する:現在乗車中の利用者は目的階到達前であっても停車階で降車してもらう。
【0065】
No.2 追加乗車禁止(あらゆる追加乗車禁止):かごに乗車中の利用者がすべて降車した時点で空きかごとする。方向転換前であっても追加の利用者の乗車は禁止する。
【0066】
No.3 追加乗車禁止:かごに乗車中の利用者がすべて降車した時点で空きかごとする。行先方向が転換されるまでは利用者の乗車を許可する。
【0067】
《第2実施形態の処理手順》
図12は、第2実施形態の空きかご作成処理の手順を示すフローチャートである。なお、
図12に示すフローチャートは、
図5のフローチャートのステップS3とS4との間にステップS31,S32の処理を加えたものである。他の処理は第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0068】
割当かご決定部307は、割当候補かご評価部306の評価結果により、割当対象となるかごが無いと評価された場合(ステップS31NO)、空きかご作成部311に対して空きかごの作成を指示する。空きかご作成部311は、空きかご作成テーブル312を参照して空きかごを作成する(ステップS32)。
【0069】
割当かご決定部307は、作成された空きかごを割当かごとして決定する(ステップS4)。
【0070】
このように、第2実施形態によれば、空きかごが無い場合であっても空きかごを作成することができ、自律移動ロボット50は、空きかごが生じるまで待たされることがない。そのため、サービスを低下させることなく、効率的に割当かごを決定して自律移動ロボット50と利用者60との共存が可能になる。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…エレベータ制御システム、10A…A号機かご、10B…B号機かご、11A,11B…かご内操作盤、12A,12B…荷重センサ、20A,20B…エレベータ制御装置、30…群管理制御装置、40…乗場、41…乗場行先階登録装置、42…上下呼びボタン、43…通信装置、44…乗場カメラ、50…自律移動ロボット、70…クラウドシステム、301…乗場呼び受付部、302…かご情報入力部、303…カメラ画像入力部、304…ロボット情報受信部、305…ロボット呼び判断部、306…割当候補かご評価部、307…割当かご決定部、308…優先度テーブル、309…割当かご出力部、310…指令出力部、311…空きかご作成部、312…空きかご作成テーブル、501…ロボット情報送信部、502…ロボット情報記憶部、503…指令入力部、504…駆動制御部
【要約】
【課題】自律移動ロボットが提供するサービスに合わせて柔軟なかご割当を可能とし自律移動ロボットと利用者との共存を可能にする群管理制御装置を提供する。
【解決手段】複数のかごの中から何れかを割当かごとして設定し、利用者と自律移動ロボット50との同乗を許容するエレベータ制御システムにおける群管理制御装置30であって、自律移動ロボット50による乗場呼びをロボット呼びとして受信するロボット情報受信部304と、ロボット呼びに応答する複数の割当候補かごを決定する割当候補かご評価部306と、ロボット乗車に対するかご割当の優先度を定めた優先度テーブル308と、複数の割当て候補かごの中から、優先度テーブル308に設定された優先度に基づいて割当かごを決定する割当かご決定部307と、決定された割当てかご指令を自律移動ロボットおよび各かごを制御するエレベータ制御装置に出力する割当かご出力部309と、を備える。
【選択図】
図2