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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】エレベータ群管理システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/18 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B66B1/18 D
B66B1/18 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022107097
(22)【出願日】2022-07-01
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇岡 良祐
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に連結された2つの乗りかごを有する複数のエレベータの運転を制御するエレベータ群管理システムであって、
各階の乗場において、利用者の行先階と出発階とを含む呼びを登録する登録手段と、
前記登録された呼びを割り当てる割当かごを決定する割当制御手段と、
前記決定された割当かごを有するエレベータの情報を前記利用者に通知する通知手段と、
を具備し、
前記割当制御手段は、
前記登録された呼びの出発階で戸開中の乗りかごがある場合、この乗りかごの戸開からの経過時間と、前記戸開中の乗りかごを有するエレベータの他方の乗りかごが当該出発階に到着するのにかかる到着時間と、当該呼びを登録した利用者が前記他方の乗りかごが到着する乗場まで移動するのにかかる移動時間とに基づいて、前記他方の乗りかごを前記割当かごにするか否かを決定することを特徴とする、
エレベータ群管理システム。
【請求項2】
前記割当制御手段は、
前記経過時間が一定時間以上であり、前記移動時間から前記到着時間を減算した値が所定値より小さい場合、前記他方の乗りかごを前記割当かごに決定することを特徴とする、請求項1に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項3】
前記割当制御手段は、
前記経過時間が一定時間未満であった場合、前記戸開中の乗りかごを前記割当かごに決定することを特徴とする、請求項2に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項4】
前記割当制御手段は、
前記他方の乗りかごが前記登録された呼びの出発階に応答可能な乗りかごであり、かつ、当該呼びを割当可能な状態の乗りかごであるか否かにさらに基づいて、前記他方の乗りかごを前記割当かごにするか否かを決定することを特徴とする、請求項3に記載のエレベータ群管理システム。
【請求項5】
前記割当制御手段は、
前記他方の乗りかごが前記戸開中の乗りかごを有するエレベータを現在の進行方向に1階床移動させることで前記登録された呼びの出発階に到着する乗りかごであるか否かにさらに基づいて、前記他方の乗りかごを前記割当かごにするか否かを決定することを特徴とする、請求項4に記載のエレベータ群管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、上下に連結された乗りかごを有するエレベータ(ダブルデッキエレベータ)の運転を制御するエレベータ群管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗場にて行先階を登録可能な乗場行先階登録装置(HDC: Hall Destination Controller)を備えたエレベータシステムが実用化されている。このようなエレベータシステムは「行先階制御システム(DCS: Destination Control System)」と称される。
【0003】
1つの乗りかごを有するエレベータ(シングルデッキエレベータ)のDCSにおいては、HDCの操作により利用者の行先階と出発階とを含む呼びが登録された時に、当該出発階で戸開中のエレベータがあったとしても、戸開からの経過時間が一定時間以上であった場合には、当該戸開中のエレベータには当該呼びを割り当てずに、別のエレベータに当該呼びを割り当て、当該別のエレベータの情報を利用者に通知する制御を行う。これによれば、戸開中のエレベータに既に乗車している利用者のかご内での待ち時間が長くなることを防ぐことができる。
【0004】
しかしながら、例えばHDCと乗場との距離が近い場合など、HDCの設置場所から乗場を目視できるような環境において上記した制御が行われる場合、HDCを操作して呼びを登録した利用者には乗車できそうに見えるエレベータとは別のエレベータの情報を当該利用者に通知するため、当該利用者に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0005】
ところで、超高層ビルなどでは、ビルのスペース効率を向上させるために、乗りかごを上下2段に構成したダブルデッキエレベータが用いられる。このようなダブルデッキエレベータのDCSにおいて上記した制御が行われる場合、シングルデッキエレベータのDCSの場合と同様に、HDCを操作して呼びを登録する利用者に、上記した違和感を与えてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第7036052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、ダブルデッキエレベータのDCSにおける割当制御に関し、利用者に与える違和感を軽減することが可能なエレベータ群管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るエレベータ群管理システムは、上下に連結された2つの乗りかごを有する複数のエレベータの運転を制御するシステムである。前記エレベータ群管理システムは、登録手段と、割当制御手段と、通知手段と、を具備する。前記登録手段は、各階の乗場において、利用者の行先階と出発階とを含む呼びを登録する。前記割当制御手段は、前記登録された呼びを割り当てる割当かごを決定する。前記通知手段は、前記決定された割当かごを有するエレベータの情報を前記利用者に通知する。前記割当制御手段は、前記登録された呼びの出発階で戸開中の乗りかごがある場合、この乗りかごの戸開からの経過時間と、前記戸開中の乗りかごを有するエレベータの他方の乗りかごが当該出発階に到着するのにかかる到着時間と、当該呼びを登録した利用者が前記他方の乗りかごが到着する乗場まで移動するのにかかる移動時間とに基づいて、前記他方の乗りかごを前記割当かごにするか否かを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータ群管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同実施形態における乗場行先階登録装置のハードウェア構成を説明するための図である。
図3図3は、同実施形態における群管理制御装置による割当制御処理を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、同実施形態における群管理制御装置による割当制御処理を補足的に説明するための図である。
図5図5は、同実施形態における群管理制御装置による割当制御処理を補足的に説明するための別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0011】
図1は、一実施形態に係るエレベータ群管理システムの構成を示すブロック図であり、複数台のエレベータ12a,12b,…,12xが群管理された構成が示されている。なお、エレベータの台数は任意であり、少なくとも2台以上あればよい。
【0012】
エレベータ12a,12b,…,12xは、上下に2つの乗りかごが連結されたダブルデッキエレベータである。A号機のエレベータ12aは、1つのかご枠内に上下に配置された上かご13aと下かご14aを有する。上かご13aと下かご14aは、1台のエレベータとして昇降路内を同一方向に昇降動作する。この場合、例えば下かご14aが1階に停止したときに、上かご13aは2階に停止する。B号機のエレベータ12bは上かご13bと下かご14bを有し、X号機のエレベータ12xは上かご13xと下かご14xを有する。
【0013】
各号機の制御装置11a,11b,…,11xは、エレベータ12a,12b,…,12xに対応して設けられている。A号機制御装置11aは、A号機のエレベータ12aの運転制御を行う。具体的には、A号機制御装置11aは、上かご13aと下かご14aを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。B号機制御装置11b、X号機制御装置11xについても同様である。各号機の制御装置11a,11b,…,11xは、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータによって構成される。
【0014】
各号機のかご情報送信装置15a,15b,…,15xは、エレベータ12a,12b,…,12xに対応して設けられている。A号機かご情報送信装置15aは、A号機のエレベータ12aの上かご13aと下かご14aから、各かご13a,14aの現在の状態を示すかご情報を取得し、当該かご情報を後述する群管理制御装置30に送信する。B号機かご情報送信装置15b、X号機かご情報送信装置15xについても同様である。各号機のかご情報送信装置15a,15b,…,15xは、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータによって構成される。なお、各号機のかご情報は、各号機の制御装置11a,11b,…,11xによって各かごから取得され、各号機の制御装置11a,11b,…,11xによって群管理制御装置30に送信されてもよい。この場合、各号機のかご情報送信装置15a,15b,…,15xを省略することができる。
【0015】
各階の乗場には、行先階制御システム(DCS: Destination Control System)に用いられる乗場行先階登録装置(HDC: Hall Destination Controller)20が設置されている。各階の乗場にHDC20が設置されているDCSをフルDCSと呼ぶ。DCSは、利用者が乗場で登録した行先階を有する呼び(以下、「行先階ホール呼び」と表記する)に基づいて、複数台のエレベータの中から最適なエレベータを応答させる方式である。
【0016】
HDC20は、行先階ホール呼び生成部21と、割当号機表示部22とを備えている。行先階ホール呼び生成部21は、利用者により登録された行先階と、当該利用者の出発階(換言すると、当該利用者により操作されたHDC20の設置階床であり、当該利用者により行先階の登録操作が行われた登録階)とを対応づけた行先階ホール呼びを生成する。生成された行先階ホール呼びは、群管理制御装置30に送信される。割当号機表示部22は、群管理制御装置30からの割当号機情報により示される割当号機を、HDC20のディスプレイ20b(図2参照)に表示させる。
【0017】
ここで、図2を参照して、HDC20のハードウェア構成について説明する。
図2に示すように、HDC20は、行先階を入力するための入力インタフェース20aと、入力インタフェース20aによって入力された行先階に向かうエレベータを利用者に知らせるためのディスプレイ20bとを有する。なお、行先階の入力方法としては、テンキーの操作によるものが一般的であるが、例えばICカードなどを用いた方法であってもよい。図2の例では、利用者が入力した行先階が8階であり、A号機のエレベータが割当号機として応答することが表示されている。
【0018】
再度図1の説明に戻る。
群管理制御装置30は、エレベータ12a,12b,…,12xの運転を統括的に制御する装置である。群管理制御装置30は、例えば、CPU、ROM、RAMなどを備えたコンピュータによって構成される。群管理制御装置30は、かご情報取得部31と、割当号機決定部32と、割当指令出力部33とを備えている。なお、これら各部は、ソフトウェアによって実現されてもよいし、IC等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0019】
かご情報取得部31は、各号機のかご情報送信装置15a,15b,…,15xから、各号機の上かご13a,13b,…,13xと下かご14a,14b,…,14xの現在の状態を示すかご情報を取得する。かご情報には、各かごの現在の位置を示す情報や、各かごの戸開閉に関する情報、などが含まれる。取得された各号機のかご情報は、割当号機決定部32に送られる。
【0020】
割当号機決定部32は、HDC20からの行先階ホール呼びと、かご情報取得部31からの各号機のかご情報とに基づいて、当該行先階ホール呼びを割り当てる割当号機および割当かごを決定する。割当号機決定部32は、決定した割当号機および割当かごの情報を割当指令出力部33に出力する。割当号機決定部32は、決定した割当号機を示す割当号機情報をHDC20に送信する。
【0021】
割当指令出力部33は、割当号機決定部32から割当号機および割当かごの情報を受けると、各号機の制御装置11a,11b,…,11xの中の割当号機に対応したエレベータ制御装置に割当指令を出力して、その割当号機のうちの割当かごを行先階ホール呼びの出発階に応答させる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る群管理制御装置30により実行される割当制御処理を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明中では、各号機を特に区別しない場合は、符号の末尾に付した「a」,「b」,「x」を省略して説明することがある。
【0023】
HDC20の操作により行先階ホール呼びが登録されると(ステップS1のYes)、群管理制御装置30は当該行先階ホール呼び(行先階と出発階)を受信する。これに伴い、群管理制御装置30は、運転動作を管理しているエレベータ12a,12b,…,12xのうちの1つを割当候補号機として選択し、後述するステップS2~S11のループ処理を実行する。ステップS2~S11のループ処理は、群管理制御装置30により管理されている号機数分だけ繰り返し実行される、あるいは、割当号機が決定するまで繰り返し実行される。
【0024】
まず、群管理制御装置30のかご情報取得部31は、割当候補号機に対応するかご情報送信装置15からかご情報を取得し、当該かご情報を割当号機決定部32に出力する。割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された割当候補号機のかご情報と、受信した行先階ホール呼びとに基づいて、割当候補号機の上かご13または下かご14のどちらか一方が、当該行先階ホール呼びにより示される出発階で戸開中か否かを確認する(ステップS2)。なお、ステップS2の処理の結果、上かご13および下かご14の両方が行先階ホール呼びの出発階で戸開中でないことが確認された場合(ステップS2のNo)、群管理制御装置30は、割当候補号機としてまだ選択していない号機を次の割当候補号機として選択し、当該次の割当候補号機についてステップS2~S11のループ処理を実行する。
【0025】
ステップS2の処理の結果、上かご13または下かご14の一方が行先階ホール呼びの出発階で戸開中であることが確認された場合(ステップS2のYes)、割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された割当候補号機のかご情報に基づいて、戸開中の一方のかごの戸開からの経過時間が一定時間以上であるか否かを確認する(ステップS3)。
【0026】
ステップS3の処理の結果、一方のかごの戸開からの経過時間が一定時間以上でない、つまり、一定時間未満であることが確認された場合(ステップS3のNo)、割当号機決定部32は、戸開中の一方のかごに行先階ホール呼びを割り当てることを決定する(ステップS4)。群管理制御装置30は、ステップS4の処理により、現在の割当候補号機を割当号機に決定し、戸開中の一方のかごに行先階ホール呼びを割り当てることを決定した(つまり、戸開中の一方のかごを割当かごに決定した)場合、ステップS2~S11のループ処理を終了させて、後述するステップS12の処理を実行する。
【0027】
一方、ステップS3の処理の結果、一方のかごの戸開からの経過時間が一定時間以上であることが確認された場合(ステップS3のYes)、割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された割当候補号機のかご情報に基づいて、割当候補号機の他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に応答可能なかごであり、かつ、行先階ホール呼びを割当可能な状態のかごであるか否かを確認する(ステップS5)。なお、ステップS5の処理の結果、他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に応答できないかごである、または、行先階ホール呼びを割り当てることができない状態のかごであることが確認された場合(ステップS5のNo)、群管理制御装置30は、割当候補号機としてまだ選択していない号機を次の割当候補号機として選択し、当該次の割当候補号機についてステップS2~S11のループ処理を実行する。
【0028】
ステップS5の処理の結果、他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に応答可能なかごであり、かつ、行先階ホール呼びを割当可能な状態のかごであることが確認された場合(ステップS5のYes)、割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された割当候補号機のかご情報に基づいて、割当候補号機の進行方向が上方向であり、かつ、戸開中の一方のかごが上かご13であるか否かを確認する(ステップS6)。なお、ステップS6の処理の結果、割当候補号機の進行方向が上方向であり、かつ、戸開中の一方のかごが上かご13であることが確認された場合(ステップS6のYes)、割当号機決定部32は、後述するステップS8の処理を実行する。
【0029】
一方、ステップS6の処理の結果、割当候補号機の進行方向が上方向でない、または、戸開中の一方のかごが上かご13でないことが確認された場合(ステップS6のNo)、割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された割当候補号機のかご情報に基づいて、割当候補号機の進行方向が下方向であり、かつ、戸開中の一方のかごが下かご14であるか否かを確認する(ステップS7)。なお、ステップS7の処理の結果、割当候補号機の進行方向が下方向でない、または、戸開中の一方のかごが下かご14でないことが確認された場合(ステップS7のNo)、割当号機決定部32は、割当候補号機の他方のかごを1階床だけ移動させて、行先階ホール呼びの出発階に応答させることはできない(つまり、他方のかごを行先階ホール呼びの出発階に応答させるためには、割当候補号機を二度Uターンさせる必要があり、応答までに時間を要する)と判断する。これに伴い、群管理制御装置30は、割当候補号機としてまだ選択していない号機を次の割当候補号機として選択し、当該次の割当候補号機についてステップS2~S11のループ処理を実行する。
【0030】
一方、ステップS7の処理の結果、割当候補号機の進行方向が下方向であり、かつ、戸開中の一方のかごが下かご14であることが確認された場合(ステップS7のYes)、割当号機決定部32は、割当候補号機の1階床分の移動距離(より詳しくは、割当候補号機の他方のかごが現在停車中の階床から行先階ホール呼びの出発階に移動する距離)と、割当候補号機の移動速度とに基づいて、他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に到着するまでにかかる時間(以下、「到着時間T1」と表記する)を算出する(ステップS8)。群管理制御装置30は、階床間毎の各号機の移動距離を示す情報や、各号機の移動速度を示す情報を設定情報として予め保持しているものとする。
【0031】
続いて、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びが登録されたHDC20の設置場所から割当候補号機が到着する乗場までの距離と、行先階ホール呼びを登録した利用者の移動速度とに基づいて、行先階ホール呼びを登録した利用者が当該乗場まで移動するのにかかる時間(以下、「移動時間T2」と表記する)を算出する(ステップS9)。群管理制御装置30は、各階のHDC20の設置場所から各号機が到着する各階の乗場までの距離を示す情報や、各種利用者の移動速度を示す情報を設定情報として予め保持しているものとする。なお、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びの種類(例えば、通常呼び、車椅子呼び、など)に応じて利用者の移動速度を選択することが可能である。また、HDC20に利用者を撮影可能なカメラが設置されている場合、割当号機決定部32は、当該カメラで撮影された画像を用いて利用者の年齢(例えば、大人、子供、高齢者、など)を推定し、推定した利用者の年齢に応じた利用者の移動速度を選択することも可能である。
【0032】
次に、割当号機決定部32は、ステップS8,S9の処理結果に基づいて、移動時間T2から到着時間T1を減算した値が所定値αより小さいか否かを確認する。換言すると、割当号機決定部32は、到着時間T1と移動時間T2との間において、「T2<T1+α」の関係式が成立するか否かを確認する(ステップS10)。所定値αは、利用者の移動速度の誤差や、かごの戸開閉にかかる時間を考慮した任意の値に設定される。
【0033】
ステップS10の処理の結果、移動時間T2から到着時間T1を減算した値が所定値α以上である、つまり、上記した関係式が成立しないことが確認された場合(例えば、到着時間T1が7秒であり、移動時間T2が15秒であり、所定時間αが5秒の場合など)(ステップS10のNo)、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びを登録した利用者が乗場に到着する前に、割当候補号機の他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に到着してしまい出発する恐れがある、つまり、当該利用者が他方のかごに乗車できない恐れがあると判断する。これに伴い、群管理制御装置30は、割当候補号機としてまだ選択していない号機を次の割当候補号機として選択し、当該次の割当候補号機についてステップS2~S11のループ処理を実行する。
【0034】
一方、ステップS10の処理の結果、移動時間T2から到着時間T1を減算した値が所定値αより小さい、つまり、上記した関係式が成立することが確認された場合(例えば、到着時間T1が7秒であり、移動時間T2が3秒であり、所定時間αが5秒の場合など)(ステップS10のYes)、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びを登録した利用者が乗場に到着した後に、割当候補号機の他方のかごが行先階ホール呼びの出発階に到着し、当該利用者は他方のかごに乗車できるものと判断し、当該他方のかごに行先階ホール呼びを割り当てることを決定する(ステップS11)。群管理制御装置30は、ステップS11の処理により、現在の割当候補号機を割当号機に決定し、他方のかごに行先階ホール呼びを割り当てることを決定した(つまり、他方のかごを割当かごに決定した)場合、ステップS2~S11のループ処理を終了させて、後述するステップS12の処理を実行する。
【0035】
ステップS2~S11のループ処理が終了すると、割当号機決定部32は、割当号機がまだ未決定であるか否かを確認する(ステップS12)。ステップS12の処理の結果、割当号機が未決定でない、つまり、ステップS2~S11のループ処理において割当号機が決定した場合(ステップS12のNo)、割当号機決定部32は、割当指令出力部33に割当号機および割当かごの情報を出力し、かつ、HDC20に割当号機情報を出力して、ここでの一連の処理を終了させる。
【0036】
一方、ステップS12の処理の結果、割当号機が未決定である、つまり、ステップS2~S11のループ処理において割当号機が決定しなかった場合(ステップS12のYes)、割当号機決定部32は、かご情報取得部31により取得された各号機のかご情報と、受信した行先階ホール呼びとに基づいて、各号機の評価を実施し、どの号機のどのかごに行先階ホール呼びを割り当てるかを決定する(ステップS13)。その後、割当号機決定部32は、割当指令出力部33に割当号機および割当かごの情報を出力し、かつ、HDC20に割当号機情報を出力して、ここでの一連の処理を終了させる。
【0037】
上記したステップS3の処理によれば、一方のかごに既に乗車している利用者(かご内利用者)のかご内での待ち時間の増加を抑制することが可能であり、かご内利用者に不快感を与えることのない割当制御を行うことが可能である。例えば、一方のかごが戸開してから一定時間以上経過しているにも関わらず、当該一方のかごに行先階ホール呼びが割り当てられてしまうと、戸開時間が延長され、かご内利用者は行先階ホール呼びを登録した利用者が乗車するまでかご内で待たされることになる。しかしながら、上記したステップS3の処理が実行されることにより、戸開からの経過時間が一定時間以上のかごには行先階ホール呼びが割り当てられないため、かご内利用者のかご内での待ち時間の増加を抑制することが可能であり、かご内利用者に不快感を与えることのない割当制御を行うことが可能である。
【0038】
上記したステップS4の処理によれば、行先階ホール呼びを登録した利用者は戸開中の一方のかごにそのまま乗車することができるため、当該利用者の乗場での待ち時間をゼロにすることが可能である。また、上記したステップS4の処理は、一方のかごの戸開からの経過時間が一定時間未満の場合にのみ実行されるため、かご内利用者が長時間にわたってかご内で待たされることもなく(つまり、かご内利用者に不快感を与えることもなく)、行先階ホール呼びを登録した利用者とかご内利用者の双方にとって望ましい割当制御を行うことが可能である。
【0039】
上記したステップS5の処理によれば、ダブルデッキエレベータの一方のかごを奇数階にのみ応答させ、他方のかごを偶数階にのみ応答させるダブル運転が割当候補号機において行われていたとしても、行先階ホール呼びの出発階に応答することができないかごを割当候補から除外することが可能である。また、上記したステップS5の処理によれば、既に満員状態で行先階ホール呼びを割り当てたとしても乗車することができないかごを割当候補から除外することが可能である。
【0040】
上記したステップS6の処理によれば、図4(a),(b)に示すように、行先階ホール呼びの出発階(HDC20の設置階)で戸開中の上かご13を含むエレベータ12を1階床だけ上方向に移動させることで、当該行先階ホール呼びを登録した利用者を乗車させることが可能な下かご14以外のかごを割当候補から除外することが可能である。
【0041】
上記したステップS7の処理によれば、図5(a),(b)に示すように、行先階ホール呼びの出発階(HDC20の設置階)で戸開中の下かご14を含むエレベータ12を1階床だけ下方向に移動させることで、当該行先階ホール呼びを登録した利用者を乗車させることが可能な上かご13以外のかごを割当候補から除外することが可能である。
【0042】
上記したステップS8~S10の処理によれば、行先階ホール呼びを登録した利用者が乗場に到着する前に、当該行先階ホール呼びの出発階に到着してしまう他方のかごであって、当該利用者が乗車できない恐れがある他方のかごを割当候補から除外することが可能である。
【0043】
上記したステップS11の処理によれば、図4に示した下かご14や、図5に示した上かご13のように、行先階ホール呼びの出発階で戸開中の一方のかごを含むエレベータ12の他方のかごに行先階ホール呼びを割り当てることができる。つまり、行先階ホール呼びの出発階で戸開中のかごと同じ号機を割当号機にすることができるため、HDC20のディスプレイ20bには当該戸開中のかごの号機を表示させることが可能であり、利用者に与える違和感を軽減することが可能である。また、上記したステップS11の処理によれば、行先階ホール呼びの出発階で戸開中の一方のかごに当該行先階ホール呼びを割り当てるわけではないため、当該戸開中のかごの戸開時間が延長されることもなく、かご内利用者に不快感を与えることのない割当制御を行うことが可能である。
【0044】
なお、図3に示したステップS10の処理とステップS11の処理との間において、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びの出発階で戸開中の一方のかごが戸閉し終わるまでにかかる時間(以下、「戸閉時間T3」と表記する)を算出し、移動時間T2から戸閉時間T3を減算した値が所定値αより小さいか否かを確認する処理、つまり、移動時間T2と戸閉時間T3との間において、「T2<T3+α」の関係式が成立するか否かを確認する処理をさらに実行してもよい。この処理の結果、移動時間T2から戸閉時間T3を減算した値が所定値α以上である、つまり、上記した関係式が成立しないことが確認された場合、割当号機決定部32は上記したステップS11の処理を実行する。一方、移動時間T2から戸閉時間T3を減算した値が所定値αより小さい、つまり、上記した関係式が成立することが確認された場合、割当号機決定部32は上記したステップS4の処理を実行する。これによれば、一方のかごの戸開からの経過時間が一定時間以上であるにも関わらず、当該戸開中の一方のかごが戸閉し終わるまでに乗場に到着可能な利用者を、当該戸開中の一方のかごに乗車させることが可能であり、輸送効率の向上を図ることが可能である。
【0045】
本実施形態においては、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びの行先階がどのような階床であったとしても、上かご13および下かご14の両方の現在の状態を確認した上で、当該行先階ホール呼びを割り当てる乗りかごを決定するとしたが、行先階ホール呼びの行先階が、例えば最下階や最上階など、一方の乗りかごしか応答できないような階床であった場合には、割当号機決定部32は、他方の乗りかごの現在の状態を確認することなく、一方の乗りかごに行先階ホール呼びを割り当てることを決定してもよい。
【0046】
以上説明した一実施形態に係るエレベータ群管理システムは、各階の乗場において、利用者の行先階と出発階とを含む行先階ホール呼びを登録する行先階ホール呼び生成部21と、登録された行先階ホール呼びを割り当てる割当かごを決定する割当号機決定部32と、決定された割当かごを有するエレベータ12の情報(割当号機情報)を利用者に通知する割当号機表示部22と、を備えており、割当号機決定部32は、行先階ホール呼びの出発階で戸開中の乗りかごがある場合、この乗りかごの戸開からの経過時間と、戸開中の乗りかごを有するエレベータ12の他方の乗りかごが当該出発階に到着するのにかかる到着時間T1と、行先階ホール呼びを登録した利用者が他方の乗りかごが到着する乗場まで移動するのにかかる移動時間T2とに基づいて、他方の乗りかごを割当かごにするか否かを決定する機能を有している。つまり、本実施形態によれば、行先階ホール呼びの出発階で戸開中の乗りかごを有するエレベータ12の他方の乗りかごを割当かごにするか否かを決定し、他方の乗りかごを割当かごに決定した際には、当該戸開中の乗りかごを有するエレベータ12の情報を利用者に通知することができるため、利用者に与える違和感を軽減することが可能なエレベータ群管理システムを提供することができる。
【0047】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
11a,11b,11x…各号機の制御装置、12a,12b,12x…エレベータ、13a,13b,13x…上かご、14a,14b,14x…下かご、15a,15b,15x…各号機のかご情報送信装置、20…乗場行先階登録装置、21…行先階ホール呼び生成部、22…割当号機表示部、30…群管理制御装置、31…かご情報取得部、32…割当号機決定部、33…割当指令出力部。
【要約】
【課題】ダブルデッキエレベータのDCSにおける割当制御に関し、利用者に与える違和感を軽減すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータ群管理システムは、上下に連結された2つの乗りかごを有する複数のエレベータの運転を制御するシステムである。エレベータ群管理システムは、利用者により登録された呼びの出発階で戸開中の乗りかごがある場合、この乗りかごの戸開からの経過時間と、戸開中の乗りかごを有するエレベータの他方の乗りかごが当該出発階に到着するのにかかる到着時間と、当該呼びを登録した利用者が当該他方の乗りかごが到着する乗場まで移動するのにかかる移動時間とに基づいて、当該他方の乗りかごを割当かごにするか否かを決定する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5