(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20231211BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231211BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20231211BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231211BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20231211BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231211BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20231211BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20231211BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G09F9/30 338
H01L29/78 618B
H01L29/78 612Z
H01L27/06 102A
H01L27/04 C
G09F9/30 348A
G02F1/1368
G02F1/1343
(21)【出願番号】P 2022126930
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021016770の分割
【原出願日】2014-01-24
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2013016257
(32)【優先日】2013-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2013054014
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大介
(72)【発明者】
【氏名】初見 亮
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】重信 匠
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚人
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0141203(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0022472(KR,A)
【文献】特開2000-323698(JP,A)
【文献】特開2010-230744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0138932(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0105612(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/1343-1/1345
1/135-1/1368
G09F9/30-9/46
H01L21/336
29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、容量素子と、表示素子と、を画素に有し、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記表示素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記容量素子の一方の電極と電気的に接続される表示装置であって、
絶縁表面上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのチャネル領域を有する酸化物半導体膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記容量素子の他方の電極としての機能を有する第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された第2の絶縁膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第3の導電膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第4の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、かつ、前記第2の導電膜に電位を供給する第1の配線としての機能を有する第5の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、前記第3の導電膜上に配置され、かつ、前記第4の導電膜上に配置される第3の絶縁膜と、
前記第1の電極上に配置された、前記表示素子の第2の電極と、
を有し、
前記第3の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第1の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第2の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記酸化物半導体膜の周縁と重なりを有し、
前記第1の電極は、前記第3の絶縁膜上に配置され、かつ、前記第3の導電膜と電気的に接続され、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜と重なりを有し、かつ、前記第1の導電膜と重なりを有さない、
表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、容量素子と、表示素子と、を画素に有し、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記表示素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記容量素子の一方の電極と電気的に接続される表示装置であって、
絶縁表面上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのチャネル領域を有する酸化物半導体膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記容量素子の他方の電極としての機能を有する第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された第2の絶縁膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第3の導電膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第4の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、かつ、前記第2の導電膜に電位を供給する第1の配線としての機能を有する第5の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、前記第3の導電膜上に配置され、かつ、前記第4の導電膜上に配置される第3の絶縁膜と、
前記第1の電極上に配置された、前記表示素子の第2の電極と、
を有し、
前記第3の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第1の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第2の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記酸化物半導体膜の周縁と重なりを有し、
かつ、前記第2の導電膜の周縁と重なりを有し、
前記第1の電極は、前記第3の絶縁膜上に配置され、かつ、前記第3の導電膜と電気的に接続され、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜と重なりを有し、かつ、前記第1の導電膜と重なりを有さない、
表示装置。
【請求項3】
トランジスタと、容量素子と、表示素子と、を画素に有し、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記表示素子の第1の電極と電気的に接続され、
前記トランジスタのソースまたはドレインの一方は、前記容量素子の一方の電極と電気的に接続される表示装置であって、
絶縁表面上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート電極としての機能を有する第1の導電膜と、
前記第1の導電膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのゲート絶縁膜としての機能を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記トランジスタのチャネル領域を有する酸化物半導体膜と、
前記第1の絶縁膜上に配置され、かつ、前記容量素子の他方の電極としての機能を有する第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜上に配置された第2の絶縁膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第3の導電膜と、
前記酸化物半導体膜と重なりを有するように前記第2の絶縁膜上に配置され、かつ、前記酸化物半導体膜と電気的に接続される第4の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、かつ、前記第2の導電膜に電位を供給する第1の配線としての機能を有する第5の導電膜と、
前記第2の導電膜上に配置され、前記第3の導電膜上に配置され、かつ、前記第4の導電膜上に配置される第3の絶縁膜と、
前記第1の電極上に配置された、前記表示素子の第2の電極と、
を有し、
前記第3の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第1の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第4の導電膜は、前記第2の絶縁膜が有する第2の開口部において前記酸化物半導体膜と接する領域を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有し、
前記第2の絶縁膜は、前記酸化物半導体膜の周縁と重なりを有し、
かつ、前記第2の導電膜の周縁と重なりを有し、
前記第1の電極は、前記第3の絶縁膜上に配置され、かつ、前記第3の導電膜と電気的に接続され、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜と重なりを有し、かつ、前記第1の導電膜と重なりを有さない、
表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一において、
前記第5の導電膜と前記第2の導電膜とが重なる領域は、前記第1の電極に重なる領域と、前記第1の電極に重ならない領域と、を有する、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を有する半導体装置、または表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や発光表示装置に代表されるフラットパネルディスプレイの多くに用いら
れているトランジスタは、ガラス基板上に形成されたアモルファスシリコン、単結晶シリ
コンまたは多結晶シリコンなどのシリコン半導体によって構成されている。また、該シリ
コン半導体を用いたトランジスタは、集積回路(IC)などにも利用されている。
【0003】
近年、シリコン半導体に代わって、半導体特性を示す金属酸化物をトランジスタに用い
る技術が注目されている。なお、本明細書中では、半導体特性を示す金属酸化物を酸化物
半導体とよぶことにする。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛、またはIn-Ga-Zn系酸化物を用いたト
ランジスタを作製し、該トランジスタを表示装置の画素のスイッチング素子などに用いる
技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-123861号公報
【文献】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量素子は一対の電極の間に誘電体膜が設けられており、一対の電極のうち、少なくと
も一方の電極は、トランジスタを構成するゲート電極、ソース電極又はドレイン電極など
遮光性を有する導電膜で形成されていることが多い。
【0007】
また、液晶表示装置において、容量素子の電荷容量を大きくするほど、電界を加えた状
況において、液晶素子の液晶分子の配向を一定に保つことができる期間を長くすることが
できる。静止画を表示させる場合、当該期間を長くできることは、画像データを書き換え
る回数を低減することができ、消費電力の低減が望める。
【0008】
容量素子の電荷容量を大きくするためには、容量素子の占有面積を大きくする、具体的
には一対の電極が重畳している面積を大きくするという手段がある。しかしながら、液晶
表示装置において、一対の電極が重畳している面積を大きくするために遮光性を有する導
電膜の面積を大きくすると、画素の開口率が低減し、画像の表示品位が低下する。このよ
うな問題は、解像度の高い液晶表示装置において、特に顕著である。
【0009】
一方、液晶表示装置において、液晶分子の配向乱れが原因となり、表示不良が発生する
。液晶分子の配向乱れとしては、ディスクリネーション、光漏れ等がある。
【0010】
配向膜近傍において、液晶分子の一端が配向膜から浮き上がって配向する。液晶分子に
おいて、配向膜に最も近い端部から浮き上がった端部へ向かう方向を基板面に正投影した
方向を「プレチルトの方向」という。また、液晶分子の長軸と、配向膜とでなす角度を「
プレチルト角」という。
【0011】
隣接する液晶分子のプレチルト角はほぼ同じであるが、プレチルトの方向が異なること
から生じる液晶分子の配向不良を「ディスクリネーション」という。ディスクリネーショ
ンにより、液晶表示装置の白表示の時に、画素に線状の欠陥が生じる。
【0012】
また、配向膜が形成される領域(以下、被形成領域という。)の凹凸が原因で、液晶分
子のプレチルト角が異なることから生じる液晶分子の配向不良を「光漏れ」という。光漏
れにより、液晶表示装置の黒表示の時に、コントラストが低下する。
【0013】
そこで、本発明の一態様は、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させることが可能な容
量素子を有する半導体装置を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は
、コントラストの高い半導体装置を提供することを課題の一とする。または、本発明の一
態様は、透光性を有する電極を用いた半導体装置を提供することを課題とする。
【0014】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、基板上のトランジスタと、基板上の第1の透光性を有する導電膜と
、トランジスタを覆い、且つ第1の透光性を有する導電膜上に開口部が設けられた酸化物
絶縁膜と、酸化物絶縁膜上であって、且つ開口部において第1の透光性を有する導電膜に
接する窒化絶縁膜と、トランジスタに接続し、且つ開口部において凹部が形成される第2
の透光性を有する導電膜と、第2の透光性を有する導電膜の凹部を充填する有機樹脂膜と
、を有する半導体装置である。
【0016】
また、本発明の一態様は、基板上のトランジスタと、基板上の第1の透光性を有する導
電膜と、トランジスタを覆い、且つ第1の透光性を有する導電膜上に開口部が設けられた
酸化物絶縁膜と、酸化物絶縁膜上であって、且つ開口部において第1の透光性を有する導
電膜に接する窒化絶縁膜と、トランジスタに接続し、且つ開口部において凹部が形成され
る第2の透光性を有する導電膜と、を有し、開口部が設けられた酸化物絶縁膜において、
第1の透光性を有する導電膜の表面と、酸化物絶縁膜の側面とのなす角度は、5°以上4
5°以下、好ましくは5°以上30°以下、さらに好ましくは10°以上20°以下であ
る半導体装置である。なお、第2の透光性を有する導電膜の凹部を充填する有機樹脂膜を
有してもよい。
【0017】
なお、トランジスタは、基板上に形成されるゲート電極と、ゲート電極に接するゲート
絶縁膜と、ゲート絶縁膜に接する酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜に接する一対の導電
膜と、を有し、第1の透光性を有する導電膜は、ゲート絶縁膜に接する。
【0018】
また、酸化物半導体膜は、第1の透光性を有する導電膜と同時に形成される。
【0019】
また、第1の透光性を有する導電膜、及び酸化物半導体膜は、In、Ga若しくはZn
のうち、少なくともいずれか一つを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様により、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させることが可能な容量素
子を有する半導体装置を作製することができる。または、本発明の一態様により、コント
ラストの高い半導体装置を作製することができる。または、本発明の一態様により、透光
性を有する電極を用いた半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
【
図2】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図3】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図4】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図5】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図6】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図7】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図8】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図9】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図10】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図11】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図12】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図13】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図14】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図15】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図16】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図17】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図18】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図19】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図20】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図21】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図22】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図23】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図24】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図25】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図26】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図27】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図28】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図29】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図30】トランジスタの一形態を説明する断面図である。
【
図31】酸化物半導体の極微電子線回折パターンを示す図である。
【
図32】酸化物半導体の極微電子線回折パターンを示す図である。
【
図33】実施の形態に係るタッチセンサを説明する図である。
【
図34】実施の形態に係るタッチパネル及び電子機器の構成例を説明する図である。
【
図35】実施の形態に係るタッチセンサを備える画素を説明する図である。
【
図36】実施の形態に係るタッチセンサ及び画素の動作を説明する図である。
【
図37】半導体装置の構成例を示すブロック図である。
【
図38】半導体装置の駆動方法の一例を説明するタイミングチャートである。
【
図39】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図40】本発明の一態様である半導体装置を用いた電子機器を説明する図である。
【
図54】InGaZnO
4結晶のバルクモデルを説明する図。
【
図55】VoHの形成エネルギー及び熱力学的遷移レベルを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分または同様の機能を有する部
分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰
り返しの説明は省略する。
【0023】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0024】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0025】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0026】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0027】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、エッチング工程の後にフォトリソグラフィ工程で形成したマスクを除去するものとする
。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。
【0029】
図1(A)に、半導体装置の一例として液晶表示装置を示す。
図1(A)に示す液晶表
示装置は、画素部101と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が
平行または略平行に配設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本
の走査線107と、各々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によ
って電位が制御されるn本の信号線109と、を有する。さらに、画素部101はマトリ
クス状に配設された複数の画素301を有する。また、信号線109に沿って、各々が平
行または略平行に配設された容量線115を有する。なお、容量線115は、走査線10
7に沿って、各々が平行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路1
04及び信号線駆動回路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0030】
各走査線107は、画素部101においてm行n列に配設された画素301のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素301と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素30
1に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素30
1と電気的に接続される。なお、容量線115が、走査線107に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素301のうち、いずれか
の行に配設されたn個の画素301に電気的と接続される。
【0031】
図1(B)は、
図1(A)に示す液晶表示装置の画素301に用いることができる回路
構成を示している。
【0032】
図1(B)に示す画素301は、液晶素子132と、トランジスタ103と、容量素子
105と、を有する。
【0033】
液晶素子132の一対の電極の一方の電位は、画素301の仕様に応じて適宜設定され
る。液晶素子132は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の
画素回路111のそれぞれが有する液晶素子132の一対の電極の一方に共通の電位(コ
モン電位)を与えてもよい。また、各行の画素301毎の液晶素子132の一対の電極の
一方に異なる電位を与えてもよい。または、IPSモードやFFSモードの場合には、液
晶素子132の一対の電極の一方を、容量線CLに接続することも可能である。
【0034】
例えば、液晶素子132を備える液晶表示装置の駆動方法としては、TNモード、ST
Nモード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensate
d Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Li
quid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric
Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned
Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、または
TBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いても
よい。また、液晶表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Ele
ctrically Controlled Birefringence)モード、P
DLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード
、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード
、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方
式として様々なものを用いることができる。
【0035】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0036】
m行n列目の画素301において、トランジスタ103のソース電極及びドレイン電極
の一方は、信号線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子132の一対の電極の他
方に電気的に接続される。また、トランジスタ103のゲート電極は、走査線GL_mに
電気的に接続される。トランジスタ103は、オン状態またはオフ状態になることにより
、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0037】
容量素子105の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、容量線CL)に
電気的に接続され、他方は、液晶素子132の一対の電極の他方に電気的に接続される。
なお、容量線CLの電位の値は、画素301の仕様に応じて適宜設定される。容量素子1
05は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。なお、容量素子
105の一対の電極の一方は、IPSモードやFFSモードの場合には、液晶素子132
の一対の電極の一方に電気的に接続されることも可能である。
【0038】
例えば、
図1(B)の画素301を有する液晶表示装置では、走査線駆動回路104に
より各行の画素301を順次選択し、トランジスタ103をオン状態にしてデータ信号の
データを書き込む。
【0039】
データが書き込まれた画素301は、トランジスタ103がオフ状態になることで保持
状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0040】
なお、本明細書等において、液晶素子を用いた液晶表示装置の一例としては、透過型液
晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置、投射型
液晶表示装置などがある。液晶素子の一例としては、液晶の光学的変調作用によって光の
透過または非透過を制御する素子がある。その素子は一対の電極と液晶層により構造され
ることが可能である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界
、縦方向の電界または斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、具体的には、
液晶素子の一例としては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、デ
ィスコチック液晶、サーモトロピック液晶、リオトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶(PDLC)、強誘電液晶、反強誘電液晶、主鎖型液晶、側鎖型高
分子液晶、バナナ型液晶などを挙げることができる。
【0041】
次いで、画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。
ここでは、
図1(B)に示す画素301の上面図を
図2に示す。なお、
図2においては、
対向電極及び液晶素子を省略する。
【0042】
図2において、走査線として機能する導電膜304cは、信号線に略直交する方向(図
中左右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜310dは、走査
線に略直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能する
導電膜310fは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線として機
能する導電膜304cは、走査線駆動回路104(
図1(A)を参照。)と電気的に接続
されており、信号線として機能する導電膜310d及び容量線として機能する導電膜31
0fは、信号線駆動回路106(
図1(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0043】
トランジスタ103は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ103は、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜(
図2に図示せ
ず。)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜308b
、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310d、310eにより構成され
る。なお、導電膜304cは、走査線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳す
る領域がトランジスタ103のゲート電極として機能する。また、導電膜310dは、信
号線としても機能し、酸化物半導体膜308bと重畳する領域がトランジスタ103のソ
ース電極またはドレイン電極として機能する。また、
図2において、走査線は、上面形状
において端部が酸化物半導体膜308bの端部より外側に位置する。このため、走査線は
バックライトなどの光源からの光を遮る遮光膜として機能する。この結果、トランジスタ
に含まれる酸化物半導体膜308bに光が照射されず、トランジスタの電気特性の変動を
抑制することができる。
【0044】
また、導電膜310eは、開口部362cにおいて、画素電極として機能する透光性を
有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0045】
容量素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される透光性を有する導電膜308cと、ト
ランジスタ103上に設けられる窒化物絶縁膜で形成される誘電体膜と、画素電極として
機能する透光性を有する導電膜316bとで構成されている。即ち、容量素子105は透
光性を有する。また、容量素子105は、開口部362において容量線として機能する導
電膜310fと接続されている。
【0046】
ここで、導電膜316bは、
図2に示すように、矩形状であることが望ましい。ただし
、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、導電膜316bは、FFSモード、
IPSモード、MVAモードなどの液晶表示装置に設けられる画素電極のように、スリッ
トを有する構造、櫛歯状とすることが可能である。
【0047】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素301内に容量素子105を大
きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には50%
以上、好ましくは55%以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電
荷容量を増大させた液晶表示装置を得ることができる。例えば、解像度の高い液晶表示装
置においては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解像
度の高い液晶表示装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしな
がら、本実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に
設けることで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。
代表的には、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上である高解像度の
液晶表示装置に好適に用いることができる。
【0048】
また、
図2に示す画素301は、走査線として機能する導電膜304cと平行な辺と比
較して信号線として機能する導電膜310dと平行な辺の方が短い形状であり、且つ容量
線として機能する導電膜310fが、信号線として機能する導電膜310dと平行な方向
に延伸して設けられている。この結果、画素301に占める導電膜310fの面積を低減
することが可能であるため、開口率を高めることができる。また、容量線として機能する
導電膜310fが接続電極を用いず、直接透光性を有する導電膜308cと接するため、
さらに開口率を高めることができる。
【0049】
また、本発明の一態様は、高解像度の液晶表示装置においても、開口率を高めることが
できるため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、液晶表示装置
の消費電力を低減することができる。
【0050】
次いで、
図2の一点鎖線C-D間における断面図を
図3に示す。なお、
図3において、
走査線駆動回路104及び信号線駆動回路106を含む駆動回路部(上面図を省略する。
)の断面図をA-Bに示す。本実施の形態においては、半導体装置として、縦電界方式の
液晶表示装置について説明する。
【0051】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、一対の基板(基板302と基板342)間に液晶
素子322が挟持されている。
【0052】
液晶素子322は、基板302の上方の透光性を有する導電膜316bと、配向性を制
御する膜(以下、配向膜318、352という)と、液晶層320と、導電膜350と、
を有する。なお、透光性を有する導電膜316bは、液晶素子322の一方の電極として
機能し、導電膜350は、液晶素子322の他方の電極として機能する。また、本実施の
形態においては、透光性を有する導電膜316bと配向膜318の間に平坦化膜317を
有する。平坦化膜317とは、少なくとも画素電極として機能する透光性を有する導電膜
316bの凹部に充填される有機樹脂膜のことである。透光性を有する導電膜316bの
凹部であって、且つ液晶表示装置のバックライトが透過する領域、即ち透光性を有する導
電膜308c上且つ絶縁膜312の開口部を平坦化膜317で充填することで、配向膜の
被形成領域の凹凸を低減することができる。即ち、透光性を有する導電膜316b上に設
けられる配向膜318の凹凸を低減することができる。なお、凹部の深さは、絶縁膜31
2の厚さに相当する。
【0053】
平坦化膜317は、透光性を有することが望ましい。ただし、本発明の一態様は、これ
に限定されない。例えば、平坦化膜317は、カラーフィルタや、ブラックマトリックス
の機能を有することも可能である。例えば、平坦化膜317が、カラーフィルタの機能を
有する場合には、例えば、赤色の画素、青色の画素、緑色の画素に合わせて、各色ごとに
、有色性を有する平坦化膜317を形成すればよい。
【0054】
このように、液晶表示装置とは、液晶素子を有する装置のことをいう。なお、液晶表示
装置は、複数の画素を駆動させる駆動回路等を含む。また、液晶表示装置は、別の基板上
に配置された制御回路、電源回路、信号生成回路及びバックライトモジュール等を含み、
液晶モジュールとよぶこともある。
【0055】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bによりトラ
ンジスタ102を構成する。酸化物半導体膜308aは、ゲート絶縁膜上に設けられる。
また、導電膜310a、310b上には、絶縁膜312、絶縁膜314が保護膜として設
けられている。
【0056】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310
d、310eによりトランジスタ103を構成する。酸化物半導体膜308bは、ゲート
絶縁膜上に設けられる。また、導電膜310d、310e上には、絶縁膜312、絶縁膜
314が保護膜として設けられている。
【0057】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜312及び絶
縁膜314に設けられた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0058】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量
素子105を構成する。透光性を有する導電膜308cは、ゲート絶縁膜上に設けられる
。
【0059】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0060】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aは、絶縁膜305、絶縁膜306、
絶縁膜312及び絶縁膜314に設けられた開口部において接続する。また、導電膜31
0cと透光性を有する導電膜316aは、絶縁膜312及び絶縁膜314に設けられた開
口部において接続する。
【0061】
本実施の形態において、容量素子105の一方の電極である透光性を有する導電膜30
8cの導電性を高めるために、絶縁膜312に開口部を設けている。該開口部において、
窒化絶縁膜で形成される絶縁膜314と接することで、透光性を有する導電膜308cは
導電性が高くなる。しかしながら、当該開口部において、画素電極として機能する透光性
を有する導電膜316bには凹部が形成される。ここで、本実施の形態に示す液晶表示装
置は、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316b上に平坦化膜317を有す
るため、透光性を有する導電膜316bの凹部に平坦化膜317が充填され、さらには、
平坦化膜317の表面の段差が少ない。この結果、平坦化膜317上に設けられる配向膜
318の表面の凹凸が緩和され、液晶の配向ムラを低減することが可能である。この結果
、液晶表示装置の表示不良を低減することができる。
【0062】
ここで、
図3に示す表示装置の構成要素について、以下に説明する。
【0063】
基板302の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度
の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サ
ファイア基板等を、基板302として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなど
の単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、
SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けられたも
のを、基板302として用いてもよい。なお、基板302として、ガラス基板を用いる場
合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm
)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm
)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、大型の
液晶表示装置を作製することができる。
【0064】
また、基板302として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形
成してもよい。または、基板302とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層
は、その上に素子部を一部あるいは全部完成させた後、基板302より分離し、他の基板
に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可撓性
の基板にも転載できる。
【0065】
導電膜304a、304b、304cとしては、アルミニウム、クロム、銅、タンタル
、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を
成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができ
る。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用
いてもよい。また、導電膜304a、304b、304cは、単層構造でも、二層以上の
積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウ
ム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、
窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タング
ステン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミ
ニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミ
ニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジ
ウムから選ばれた元素の一または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよ
い。
【0066】
また、導電膜304a、304b、304cは、インジウム錫酸化物、酸化タングステ
ンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタン
を含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物
、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用する
こともできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とする
こともできる。
【0067】
また、導電膜304a、304b、304cとゲート絶縁膜の一部として機能する絶縁
膜305との間に、In-Ga-Zn系酸化窒化物膜、In-Sn系酸化窒化物膜、In
-Ga系酸化窒化物膜、In-Zn系酸化窒化物膜、Sn系酸化窒化物膜、In系酸化窒
化物膜、金属窒化膜(InN、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、
好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値
であるため、酸化物半導体を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトするこ
とができ、所謂ノーマリーオフ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-G
a-Zn系酸化窒化物膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜308a、308bよ
り高い窒素濃度、具体的には7原子%以上のIn-Ga-Zn系酸化窒化物膜を用いる。
【0068】
基板302、及び導電膜304a、304c、304b上には、絶縁膜305、絶縁膜
306が形成されている。絶縁膜305、絶縁膜306は、駆動回路部のトランジスタ1
02のゲート絶縁膜、及び画素部101のトランジスタ103のゲート絶縁膜としての機
能を有する。
【0069】
絶縁膜305としては、例えば窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、
窒化酸化アルミニウム等の窒化物絶縁膜を用いて形成することが好ましい。
【0070】
絶縁膜306としては、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、
窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金
属酸化物などを用いればよく、積層または単層で設ける。また、絶縁膜306としては、
ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(Hf
SixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、
酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-k材料を用いることでトランジスタ
のゲートリークを低減できる。
【0071】
絶縁膜305及び絶縁膜306の合計の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ま
しくは10nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とする
とよい。
【0072】
絶縁膜306上には、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜30
8cが形成されている。酸化物半導体膜308aは、導電膜304aと重畳する位置に形
成され、駆動回路部のトランジスタ102のチャネル領域として機能する。また、酸化物
半導体膜308bは、導電膜304cと重畳する位置に形成され、画素部のトランジスタ
103のチャネル領域として機能する。透光性を有する導電膜308cは、容量素子10
5の一方の電極として機能する。
【0073】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、代表的に
は、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、In-M-Zn酸化物膜(MはAl、T
i、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、またはHf)がある。
【0074】
なお、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cがIn
-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、
InとMの原子数比率は、好ましくはInが25atomic%以上、Mが75atom
ic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%以上、Mが66atomic%
未満とする。
【0075】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、エネルギ
ーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である
。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタの
オフ電流を低減することができる。
【0076】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cの厚さは、3
nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3n
m以上50nm以下とする。
【0077】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cとしてIn:
Ga:Zn=1:1:1または3:1:2の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いる
ことができる。なお、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜3
08cの原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動
を含む。
【0078】
酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは共に、ゲー
ト絶縁膜上(ここでは、絶縁膜306上)に形成されるが、不純物濃度が異なる。具体的
には、酸化物半導体膜308a、308bと比較して、透光性を有する導電膜308cの
不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜308a、308bに含まれる水素濃度は、
5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3未満
、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017ato
ms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下であり、透光
性を有する導電膜308cに含まれる水素濃度は、8×1019atoms/cm3以上
、好ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×1020ato
ms/cm3以上である。また、酸化物半導体膜308a、308bと比較して、透光性
を有する導電膜308cに含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0079】
また、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308a、308bより抵抗
率が低い。透光性を有する導電膜308cの抵抗率が、酸化物半導体膜308a、308
bの抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1倍以下で有ることが好ましく、代表的には
1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-
3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であるとよい。
【0080】
酸化物半導体膜308a、308bにおいて、第14族元素の一つであるシリコンや炭
素が含まれると、酸化物半導体膜308a、308bにおいて酸素欠損が増加し、n型化
してしまう。このため、酸化物半導体膜308a、308bにおけるシリコンや炭素の濃
度(二次イオン質量分析法により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以
下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
【0081】
また、酸化物半導体膜308a、308bにおいて、二次イオン質量分析法により得ら
れるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以
下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ
土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタの
オフ電流が増大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜308a、308bの
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0082】
また、酸化物半導体膜308a、308bに窒素が含まれていると、キャリアである電
子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化
物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物
半導体膜において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、二次イオ
ン質量分析法により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にするこ
とが好ましい。
【0083】
酸化物半導体膜308a、308bとしては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用
いる。例えば、酸化物半導体膜308a、308bは、キャリア密度が1×1017個/
cm3以下、好ましくは1×1015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個
/cm3以下、より好ましくは1×1011個/cm3以下の酸化物半導体膜を用いる。
【0084】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜308a、308bのキャリ
ア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切
なものとすることが好ましい。
【0085】
酸化物半導体膜308a、308bは、絶縁膜306及び絶縁膜312等の、酸化物半
導体膜との界面特性を向上させることが可能な材料で形成される膜と接しているため、酸
化物半導体膜308a、308bは、半導体として機能し、酸化物半導体膜308a、3
08bを有するトランジスタは、優れた電気特性を有する。
【0086】
なお、酸化物半導体膜308a、308bとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の
低い酸化物半導体膜を用いることで、優れた電気特性を有するトランジスタを作製するこ
とができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少な
い)ことを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くするこ
とができる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトラン
ジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になる
ことが少ない場合がある。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導
体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純
度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チ
ャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とド
レイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半
導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を
得ることができる。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジス
タは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸
化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あ
たかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物
半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合があ
る。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
【0087】
一方、透光性を有する導電膜308cは、開口部362(
図6(A)参照。)において
絶縁膜314と接する。絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属
、アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ膜であり、更に絶縁膜31
4は水素を含む。このため、絶縁膜314の水素が酸化物半導体膜308a、308bと
同時に形成された酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸素と
結合し、キャリアである電子が生成される。この結果、酸化物半導体膜は、導電性が高く
なり導体として機能する。即ち、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。ここでは、酸
化物半導体膜308a、308bと同様の材料を主成分とし、且つ水素濃度が酸化物半導
体膜308a、308bより高いことにより、導電性が高められた金属酸化物を、透光性
を有する導電膜308cとよぶ。
【0088】
また、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、例
えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C A
xis Aligned Crystalline Oxide Semiconduc
tor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造に
おいて、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低
い。なお、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cは、
結晶性が同じである。
【0089】
なお、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cが、非
晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶
構造の領域のいずれか二種以上を有する混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶
質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構
造の領域のいずれか二種以上の領域の単層構造を有する場合がある。また、混合膜は、例
えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域
、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合がある。
【0090】
ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜30
8cは、場合によっては、絶縁膜314と接していないことも可能である。
【0091】
また、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されず、透光性を有する導電膜308
cは、場合によっては、酸化物半導体膜308a、または、308bと別々の工程で形成
されてもよい。その場合には、透光性を有する導電膜308cは、酸化物半導体膜308
a、308bと、異なる材質を有していても良い。例えば、透光性を有する導電膜308
cは、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、または、インジウム亜鉛酸化物等
を用いて形成してもよい。
【0092】
本実施の形態に示す液晶表示装置は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素
子の一方の電極を形成する。また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜を容量
素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導電
膜を形成する工程が不要であり、液晶表示装置の作製工程を削減できる。また、容量素子
は、一対の電極が透光性を有する導電膜で形成されているため、透光性を有する。この結
果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、画素の開口率を高めることができる。
【0093】
導電膜310a、310b、310c、310d、310eは、導電材料として、アル
ミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、
銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を
単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構
造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積
層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、
チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウ
ム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構
造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜
上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化
モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜
鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0094】
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜308c、
及び導電膜310a、310b、310c、310d、310e上には、絶縁膜312、
絶縁膜314が形成されている。絶縁膜312は、絶縁膜306と同様に、酸化物半導体
膜との界面特性を向上させることが可能な材料を用いることが好ましく、酸化物絶縁膜を
用いて形成することができる。ここでは、絶縁膜312としては、絶縁膜312a、31
2bを積層して形成する。
【0095】
絶縁膜312aは、酸素を透過する酸化物絶縁膜である。なお、絶縁膜312aは、後
に形成する絶縁膜312bを形成する際の、酸化物半導体膜308a、308b、及び透
光性を有する導電膜308cへのダメージ緩和膜としても機能する。
【0096】
絶縁膜312aとしては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上5
0nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。なお、本明
細書中において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が
多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多
い膜を指す。
【0097】
また、絶縁膜312aは、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定に
より、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密
度が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜312
aに含まれる欠陥密度が多いと、当該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜312aにお
ける酸素の透過量が減少してしまうためである。
【0098】
また、絶縁膜312aと酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電
膜308cとの界面における欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定に
より、酸化物半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cの欠陥に
由来するg=1.93に現れる信号のスピン密度が1×1017spins/cm3以下
、さらには検出下限以下であることが好ましい。
【0099】
なお、絶縁膜312aにおいては、外部から絶縁膜312aに入った酸素が全て絶縁膜
312aの外部に移動せず、絶縁膜312aにとどまる酸素もある。また、絶縁膜312
aに酸素が入ると共に、絶縁膜312aに含まれる酸素が絶縁膜312aの外部へ移動す
ることで絶縁膜312aにおいて酸素の移動が生じる場合もある。
【0100】
絶縁膜312aとして酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜312a上に
設けられる、絶縁膜312bから脱離する酸素を、絶縁膜312aを介して酸化物半導体
膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cに移動させることができる。
【0101】
絶縁膜312aに接するように絶縁膜312bが形成されている。絶縁膜312bは、
化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成するとよ
い。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱により酸
素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜
は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms
/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物絶縁膜
である。
【0102】
絶縁膜312bとしては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以
上400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0103】
また、絶縁膜312bは、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定に
より、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密
度が1.5×1018spins/cm3未満、更には1×1018spins/cm3
以下であることが好ましい。なお、絶縁膜312bは、絶縁膜312aと比較して酸化物
半導体膜308a、308b、及び透光性を有する導電膜308cから離れているため、
絶縁膜312aより、欠陥密度が多くともよい。
【0104】
絶縁膜314として、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキ
ング効果を有する窒化物絶縁膜を設けることで、酸化物半導体膜308a、308b、及
び透光性を有する導電膜308cからの酸素の外部への拡散を防ぐことができる。窒化物
絶縁膜としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミ
ニウム等がある。
【0105】
なお、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のブロッキング効果を有す
る窒化物絶縁膜上に、酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜を設け
てもよい。酸素、水素、水等のブロッキング効果を有する酸化物絶縁膜としては、酸化ア
ルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウ
ム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等がある。また、容量
素子の電荷容量を制御するため、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の
ブロッキング効果を有する窒化物絶縁膜上に窒化物絶縁膜または酸化絶縁膜を適宜設けて
もよい。
【0106】
また、絶縁膜314上には透光性を有する導電膜316a、316bが形成されている
。透光性を有する導電膜316aは、開口部364a(
図6(C)参照。)において導電
膜304bと電気的に接続され、開口部364b(
図6(C)参照。)において導電膜3
10cと電気的に接続される。即ち、導電膜304b及び導電膜310cを接続する接続
電極として機能する。透光性を有する導電膜316bは、開口部364c(
図6(C)参
照。)において導電膜310eと電気的に接続され、画素の画素電極としての機能を有す
る。また、透光性を有する導電膜316bは、容量素子の一対の電極の一方として機能す
ることができる。
【0107】
なお、導電膜304b及び導電膜310cが直接接するような接続構造とするには、導
電膜310cを形成する前に、絶縁膜305、絶縁膜306に開口部を形成するためにパ
ターニングを行い、マスクを形成する必要がある。しかしながら、
図3のように、透光性
を有する導電膜316aにより、導電膜304b及び導電膜310cを接続することで、
導電膜304b及び導電膜310cが直接接する接続部を作製する必要が無くなり、フォ
トマスクを1枚少なくすることができる。即ち、液晶表示装置の作製工程を削減すること
が可能である。
【0108】
透光性を有する導電膜316a、316bとしては、酸化タングステンを含むインジウ
ム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム
酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、ITO、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケ
イ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができ
る。
【0109】
平坦化膜317としては、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂等の有機樹脂を用
いることができる。なお、平坦化膜317は、絶縁膜312の膜厚以上1500nm以下
、好ましくは絶縁膜312の膜厚以上1000nm以下とする。平坦化膜317の厚さを
絶縁膜312の厚さ以上とすることで、透光性を有する導電膜316bの凹部に平坦化膜
317を充填させることが可能であり、配向膜318が形成される領域の凹凸を低減する
ことができる。なお、平坦化膜317の厚さが厚いと、液晶層320に含まれる液晶分子
の配向を制御する際に、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bに印加す
る電圧が大きくなり、消費電力が高くなってしまうため、平坦化膜317の厚さは150
0nm以下が好ましい。
【0110】
有機樹脂を用いて平坦化膜317を形成することで、少なくとも画素電極として機能す
る透光性を有する導電膜316bの凹部を平坦化膜317で充填することが可能であり、
液晶層320を構成する液晶分子の配向ムラを低減することが可能である。
【0111】
配向膜318としては、ポリイミド等の有機樹脂を用いることができる。配向膜318
の膜厚は、40nm以上100nm以下、さらには50nm以上90nm以下とすること
が好ましい。このような膜厚とすることで、液晶分子のプレチルト角を大きくすることが
可能である。液晶分子のプレチルト角を大きくすることで、ディスクリネーションを低減
することが可能である。
【0112】
また、基板342上には、有色性を有する膜(以下、有色膜346という。)が形成さ
れている。有色膜346は、カラーフィルタとしての機能を有する。また、有色膜346
に隣接する遮光膜344が基板342上に形成される。遮光膜344は、ブラックマトリ
クスとして機能する。また、有色膜346は、必ずしも設ける必要はなく、例えば、液晶
表示装置が白黒の場合等によって、有色膜346を設けない構成としてもよい。
【0113】
有色膜346としては、特定の波長帯域の光を透過する有色膜であればよく、例えば、
赤色の波長帯域の光を透過する赤色(R)のカラーフィルタ、緑色の波長帯域の光を透過
する緑色(G)のカラーフィルタ、青色の波長帯域の光を透過する青色(B)のカラーフ
ィルタなどを用いることができる。
【0114】
遮光膜344としては、特定の波長帯域の光を遮光する機能を有していればよく、金属
膜または黒色顔料等を含んだ有機絶縁膜などを用いることができる。
【0115】
また、有色膜346上には、絶縁膜348が形成されている。絶縁膜348は、平坦化
層としての機能、または有色膜346が含有しうる不純物を液晶素子側へ拡散するのを抑
制する機能を有する。
【0116】
また、絶縁膜348上には、導電膜350が形成されている。導電膜350は、画素部
の液晶素子が有する一対の電極の他方としての機能を有する。なお、透光性を有する導電
膜316a、316b、及び導電膜350上には、配向膜352が形成されている。
【0117】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間には、液晶層3
20が形成されている。また液晶層320は、シール材(図示しない)を用いて、基板3
02と基板342の間に封止されている。なお、シール材は、外部からの水分等の入り込
みを抑制するために、無機材料と接触する構成が好ましい。
【0118】
また、透光性を有する導電膜316a、316bと導電膜350との間に液晶層320
の厚さ(セルギャップともいう)を維持するスペーサを設けてもよい。
【0119】
図3に示す液晶表示装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について、
図4乃至
図7を用いて説明する。なお、ここでは、基板302上に設けられた素子部とし
ては、基板302と配向膜318に挟まれた領域のことをさす。
【0120】
まず、基板302を準備する。ここでは、基板302としてガラス基板を用いる。
【0121】
次に、基板302上に導電膜を形成し、該導電膜を所望の領域に加工することで、導電
膜304a、304b、304cを形成する。なお、導電膜304a、304b、304
cの形成は、所望の領域に第1のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆
われていない領域をエッチングすることで形成することができる。(
図4(A)参照)。
【0122】
また、導電膜304a、304b、304cとしては、代表的には、蒸着法、CVD法
、スパッタリング法、スピンコート法等を用いて形成することができる。
【0123】
次に、基板302、及び導電膜304a、304b、304c上に、絶縁膜305を形
成し、絶縁膜305上に絶縁膜306を形成する(
図4(A)参照)。
【0124】
絶縁膜305及び絶縁膜306は、スパッタリング法、CVD法等により形成すること
ができる。なお、絶縁膜305及び絶縁膜306は、真空中で連続して形成すると不純物
の混入が抑制され好ましい。
【0125】
次に、絶縁膜306上に酸化物半導体膜307を形成する(
図4(B)参照)。
【0126】
酸化物半導体膜307は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザ
ーアブレーション法などを用いて形成することができる。
【0127】
次に、酸化物半導体膜307を所望の領域に加工することで、島状の酸化物半導体膜3
08a、308b、308dを形成する。なお、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dの形成は、所望の領域に第2のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる。エッチングとして
は、ドライエッチング、ウエットエッチング、または双方を組み合わせたエッチングを用
いることができる(
図4(C)参照)。
【0128】
なお、この後、加熱処理を行って、酸化物半導体膜308a、308b、308dに含
まれる水素、水等を脱離させ、少なくとも酸化物半導体膜308a、308b、308d
に含まれる水素濃度を低減してもよい。この結果、高純度化された酸化物半導体膜308
a、308b、308dを形成することができる。該加熱処理の温度は、代表的には、2
50℃以上650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下とする。なお、該加熱処
理の温度を、代表的には、300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃
以下とすることで、大面積基板においても基板の反りやシュリンクを低減することが可能
であり、歩留まりが向上する。
【0129】
当該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いるこ
とで、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加
熱処理時間を短縮することが可能であり、加熱処理中の基板の反りを低減することが可能
であり、大面積基板において特に好ましい。
【0130】
また、加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましく
は1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウ
ム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水
素、水等が含まれないことが好ましい。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後
、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれ
る水素、水等を脱離させると共に、酸化物半導体膜中に酸素を供給することができる。こ
の結果、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0131】
なお、後に形成される絶縁膜311aの成膜温度を280℃以上400℃以下とする場
合、酸化物半導体膜308a、308b、308dに含まれる水素、水等を脱離させるこ
とが可能であるため、当該加熱処理は不要である。
【0132】
次に、絶縁膜306、及び酸化物半導体膜308a、308b、308d上に導電膜3
09を形成する(
図5(A)参照)。
【0133】
導電膜309としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0134】
次に、導電膜309を所望の領域に加工することで、導電膜310a、310b、31
0c、310d、310eを形成する。なお、導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eの形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる(
図5
(B)参照)。
【0135】
次に、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、及び導電膜31
0a、310b、310c、310d、310e上を覆うように、絶縁膜311a、31
1bが積層された絶縁膜311を形成する(
図5(C)参照)。
【0136】
なお、絶縁膜311aを形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜311bを
形成することが好ましい。絶縁膜311aを形成した後、大気開放せず、原料ガスの流量
、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜311bを連続的に形成す
ることで、絶縁膜311a、311bにおける界面の大気成分由来の不純物濃度を低減す
ることができると共に、絶縁膜311bに含まれる酸素を酸化物半導体膜308a、30
8b、308dに移動させることが可能であり、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dの酸素欠損量を低減することができる。
【0137】
絶縁膜311aとしては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された
基板を180℃以上400℃以下、好ましくは200℃以上370℃以下に保持し、処理
室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好
ましくは100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を
供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる
。
【0138】
絶縁膜311aの原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用い
ることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、ト
リシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、
二酸化窒素等がある。
【0139】
上記条件を用いることで、絶縁膜311aとして酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成す
ることができる。また、絶縁膜311aを設けることで、後に形成する絶縁膜311bの
形成工程において、酸化物半導体膜308a、308b、308dへのダメージ低減が可
能である。
【0140】
なお、絶縁膜311aは、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された
基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内におけ
る圧力を100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を
供給する条件により、絶縁膜311aとして、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜
を形成することができる。
【0141】
当該成膜条件において、基板温度を絶縁膜311aの成膜温度とすることで、シリコン
及び酸素の結合力が強くなる。この結果、絶縁膜311aとして、酸素が透過し、緻密で
あり、且つ硬い酸化物絶縁膜、代表的には、25℃において0.5重量%のフッ酸を用い
た場合のエッチング速度が10nm/分以下、好ましくは8nm/分以下である酸化シリ
コン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0142】
また、当該工程において、加熱をしながら絶縁膜311aを形成するため、当該工程に
おいて酸化物半導体膜308a、308b、308dに含まれる水素、水等を脱離させる
ことができる。
【0143】
また、絶縁膜311aを形成する工程において加熱するため、酸化物半導体膜308a
、308b、308dが露出された状態での加熱時間が少なく、加熱処理による酸化物半
導体膜からの酸素の脱離量を低減することができる。即ち、酸化物半導体膜中に含まれる
酸素欠損量を低減することができる。
【0144】
さらには、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、絶縁膜311
aに含まれる水の含有量が少なくなるため、トランジスタの電気特性のばらつきを低減す
ると共に、しきい値電圧の変動を抑制することができる。
【0145】
また、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とすることで、絶縁膜311aを
成膜する際に、酸化物半導体膜308a、308b、308dへのダメージを低減するこ
とが可能であり、酸化物半導体膜308a、308b、308dに含まれる酸素欠損量を
低減することができる。特に、絶縁膜311aまたは後に形成される絶縁膜311bの成
膜温度を高くする、代表的には220℃より高い温度とすることで、酸化物半導体膜30
8a、308b、308dに含まれる酸素の一部が脱離し、酸素欠損が形成されやすい。
また、トランジスタの信頼性を高めるため、後に形成する絶縁膜311bの欠陥量を低減
するための成膜条件を用いると、酸素脱離量が低減しやすい。これらの結果、酸化物半導
体膜308a、308b、308dの酸素欠損を低減することが困難な場合がある。しか
しながら、処理室の圧力を100Pa以上250Pa以下とし、絶縁膜311aの成膜時
における酸化物半導体膜308a、308b、308dへのダメージを低減することで、
絶縁膜311bからの少ない酸素脱離量でも酸化物半導体膜308a、308b、308
d中の酸素欠損を低減することが可能である。
【0146】
なお、シリコンを含む堆積性気体に対する酸化性気体量を100倍以上とすることで、
絶縁膜311aに含まれる水素含有量を低減することが可能である。この結果、酸化物半
導体膜308a、308b、308dに混入する水素量を低減できるため、トランジスタ
のしきい値電圧のマイナスシフトを抑制することができる。
【0147】
絶縁膜311bとしては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置された
基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持し
、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下、
さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0.
17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上0
.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒
化シリコン膜を形成する。
【0148】
絶縁膜311bの原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用い
ることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、ト
リシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素、
二酸化窒素等がある。
【0149】
絶縁膜311bの成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周波
電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加
し、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜311b中における酸素含有量が化学量論的組成
よりも多くなる。しかしながら、基板温度が、上記絶縁膜311bの成膜温度であると、
シリコンと酸素の結合力が弱いため、加熱により酸素の一部が脱離する。この結果、化学
量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化
物絶縁膜を形成することができる。また、酸化物半導体膜308a、308b、308d
上に絶縁膜311aが設けられている。このため、絶縁膜311bの形成工程において、
絶縁膜311aが酸化物半導体膜308a、308b、308dの保護膜となる。この結
果、酸化物半導体膜308a、308b、308dへのダメージを低減しつつ、高いパワ
ー密度の高周波電力を用いて絶縁膜311bを形成することができる。
【0150】
なお、絶縁膜311bの成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性
気体の流量を増加することで、絶縁膜311bの欠陥量を低減することが可能である。代
表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001
に現れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×10
17spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下であ
る欠陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果トランジスタの信頼性
を高めることができる。
【0151】
次に、加熱処理を行う。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上基板歪み点未
満、好ましくは200℃以上450℃以下、更に好ましくは300℃以上450℃以下と
する。なお、該加熱処理の温度を、代表的には、300℃以上400℃以下、好ましくは
320℃以上370℃以下とすることで、大面積基板においても基板の反りやシュリンク
を低減することが可能であり、歩留まりが向上する。
【0152】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0153】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1p
pm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)
の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水
等が含まれないことが好ましい。
【0154】
当該加熱処理により、絶縁膜311bに含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜308a
、308b、308dに移動させ、酸化物半導体膜308a、308b、308dに含ま
れる酸素欠損を低減することが可能である。この結果、酸化物半導体膜308a、308
b、308dに含まれる酸素欠損量をさらに低減することができる。
【0155】
また、絶縁膜311a、311bに水、水素等が含まれる場合、水、水素等をブロッキ
ングする機能を有する絶縁膜313を後に形成し、加熱処理を行うと、絶縁膜311a、
311bに含まれる水、水素等が、酸化物半導体膜308a、308b、308dに移動
し、酸化物半導体膜308a、308b、308dに欠陥が生じてしまう。しかしながら
、当該加熱により、絶縁膜311a、311bに含まれる水、水素等を脱離させることが
可能であり、トランジスタの電気特性のばらつきを低減すると共に、しきい値電圧の変動
を抑制することができる。
【0156】
なお、加熱しながら絶縁膜311bを絶縁膜311a上に形成することで、酸化物半導
体膜308a、308b、308dに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、308
b、308dに含まれる酸素欠損を低減することが可能であるため、当該加熱処理を行わ
なくともよい。
【0157】
また、導電膜310a、310b、310c、310d、310eを形成する際、導電
膜のエッチングによって、酸化物半導体膜308a、308b、308dはダメージを受
け、酸化物半導体膜308a、308bのバックチャネル(酸化物半導体膜308a、3
08bにおいて、ゲート電極として機能する導電膜304a、304cと対向する面と反
対側の面)側に酸素欠損が生じる。しかし、絶縁膜311bに化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を適用することで、加熱処理によって当該バック
チャネル側に生じた酸素欠損を修復することができる。これにより、酸化物半導体膜30
8a、308bに含まれる欠陥を低減することができるため、トランジスタの信頼性を向
上させることができる。
【0158】
なお、当該加熱処理は、後に形成される開口部362を形成した後に行ってもよい。
【0159】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁膜312、及び開口部362
を形成する。なお、絶縁膜312、及び開口部362の形成は、所望の領域に第4のパタ
ーニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングするこ
とで、形成することができる(
図6(A)参照)。
【0160】
なお、開口部362は、酸化物半導体膜308dの表面が露出するように形成する。開
口部362の形成方法としては、例えば、ドライエッチング法を用いることができる。た
だし、開口部362の形成方法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、ま
たはドライエッチング法とウエットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0161】
次に、絶縁膜312及び酸化物半導体膜308d上に絶縁膜313を形成する(
図6(
B)参照)。
【0162】
絶縁膜313としては、外部からの不純物、例えば、酸素、水素、水、アルカリ金属、
アルカリ土類金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料を用いることが好ましく
、更には水素を含むことが好ましく、代表的には窒素を含む無機絶縁材料、例えば窒化物
絶縁膜を用いることができる。絶縁膜313としては、例えば、CVD法、スパッタリン
グ法を用いて形成することができる。
【0163】
絶縁膜313をプラズマCVD法またはスパッタリング法で成膜すると、酸化物半導体
膜がプラズマに曝され、酸化物半導体膜に酸素欠損が生成される。または、絶縁膜313
は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が、酸化物半導
体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される膜であり、更には水素を含む。このため、絶縁
膜313の水素が酸化物半導体膜308dに拡散すると、該酸化物半導体膜308dにお
いて水素は酸素と結合し、キャリアである電子が生成される。または、酸化物半導体膜に
含まれる酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。これらの結果
、酸化物半導体膜308dは、導電性が高くなり、透光性を有する導電膜308cとなる
。
【0164】
また、絶縁膜313は、ブロック性を高めるために、高温で成膜されることが好ましく
、例えば基板温度100℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上400℃以下
の温度で加熱して成膜することが好ましい。また高温で成膜する場合は、酸化物半導体膜
308a、308bとして用いる酸化物半導体から酸素が脱離し、キャリア濃度が上昇す
る現象が発生することがあるため、このような現象が発生しない温度とする。
【0165】
次に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜314、及び開口部364
a、364b、364cを形成する。なお、絶縁膜314、及び開口部364a、364
b、364cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスク
に覆われていない領域をエッチングすることで形成することができる(
図6(C)参照)
。
【0166】
また、開口部364aは、導電膜304aの表面が露出するように形成する。また、開
口部364bは、導電膜310cが露出するように形成する。また、開口部364cは、
導電膜310eが露出するように形成する。
【0167】
なお、開口部364a、364b、364cの形成方法としては、例えば、ドライエッ
チング法を用いることができる。ただし、開口部364a、364b、364cの形成方
法としては、これに限定されず、ウエットエッチング法、またはドライエッチング法とウ
エットエッチング法を組み合わせた形成方法としてもよい。
【0168】
次に、開口部364a、364b、364cを覆うように絶縁膜314上に導電膜31
5を形成する(
図7(A)参照)。
【0169】
導電膜315としては、例えば、スパッタリング法を用いて形成することができる。
【0170】
次に、導電膜315を所望の領域に加工することで、透光性を有する導電膜316a、
316bを形成する。なお、透光性を有する導電膜316a、316bの形成は、所望の
領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域を
エッチングすることで形成することができる(
図7(B)参照)。
【0171】
次に、絶縁膜314、導電膜316a、316bを覆うように平坦化膜317を形成す
る(
図7(C)参照。)
【0172】
平坦化膜317としては、スピンコート法、ディップコート法、スリットコート法、イ
ンクジェット法、印刷法等の湿式法を用いて形成することで、平坦化膜317の被形成領
域の凹凸の影響を受けず、表面が平坦な平坦化膜317を形成することができる。なお、
平坦化膜317として、スピンコート法、ディップコート法、スリットコート法、を用い
る場合、組成物を塗布した後、所望の領域に第7のパターニングによるマスクの形成を行
い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、平坦化膜317を形成する
ことができる。
【0173】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6、または第
1乃至第7のパターニング、すなわち6枚または7枚のマスクで、トランジスタ及び容量
素子を同時に形成することができる。
【0174】
なお、本実施の形態では、絶縁膜314に含まれる水素を酸化物半導体膜308dに拡
散させて、酸化物半導体膜308dの導電性を高めたが、酸化物半導体膜308a、30
8bをマスクで覆い、酸化物半導体膜308dに不純物、代表的には、水素、ホウ素、リ
ン、スズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を添加して、酸
化物半導体膜308dの導電性を高めてもよい。酸化物半導体膜308dに水素、ホウ素
、リン、スズ、アンチモン、希ガス元素等を添加する方法としては、イオンドーピング法
、イオン注入法等がある。一方、酸化物半導体膜308dにアルカリ金属、アルカリ土類
金属等を添加する方法としては、該不純物を含む溶液を酸化物半導体膜308dに曝す方
法がある。
【0175】
上記実施の形態で開示された、酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜はスパッタ法
やプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形
成することができるが、他の方法、例えば、熱CVD法により形成してもよい。熱CVD
法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor
Deposition)法やALD(Atomic Layer Depositio
n)法を使っても良い。
【0176】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0177】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0178】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次にチャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい
。例えば、それぞれのスイッチングバルブ(高速バルブとも呼ぶ)を切り替えて2種類以
上の原料ガスを順番にチャンバーに供給し、複数種の原料ガスが混ざらないように第1の
原料ガスと同時またはその後に不活性ガス(アルゴン、或いは窒素など)などを導入し、
第2の原料ガスを導入する。なお、同時に不活性ガスを導入する場合には、不活性ガスは
キャリアガスとなり、また、第2の原料ガスの導入時にも同時に不活性ガスを導入しても
よい。また、不活性ガスを導入する代わりに真空排気によって第1の原料ガスを排出した
後、第2の原料ガスを導入してもよい。第1の原料ガスが基板の表面に吸着して第1の層
を成膜し、後から導入される第2の原料ガスと反応して、第2の層が第1の層上に積層さ
れて薄膜が形成される。このガス導入順序を制御しつつ所望の厚さになるまで複数回繰り
返すことで、段差被覆性に優れた薄膜を形成することができる。薄膜の厚さは、ガス導入
順序を繰り返す回数によって調節することができるため、精密な膜厚調節が可能であり、
微細なFETを作製する場合に適している。
【0179】
MOCVD法やALD法などの熱CVD法は、これまでに記載した実施形態に開示され
た酸化物半導体膜、無機絶縁膜など様々な膜を形成することができ、例えば、In-Ga
-Zn-O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジ
メチル亜鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3である
。また、トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜鉛
の化学式は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメ
チルガリウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いることも
でき、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いることも
できる。
【0180】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシド溶液、代表的にはテトラ
キスジメチルアミドハフニウム(TDMAH))を気化させた原料ガスと、酸化剤として
オゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハフニウムの
化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テトラキス(エ
チルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0181】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を
気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチル
アルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(
ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2
,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などがある。
【0182】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0183】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-Zn-
O膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn
-O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスを同時に導入してGaO層を
形成し、更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスを同時に導入してZnO層を形成す
る。なお、これらの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn-G
a-O層やIn-Zn-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。
なお、O3ガスに変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用い
ても良いが、Hを含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガス
にかえて、In(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスにかえ
て、Ga(C2H5)3ガスを用いても良い。また、In(CH3)3ガスにかえて、I
n(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Zn(CH3)2ガスを用いても良い。
【0184】
次に、基板302に対向して設けられる基板342上に設けられた素子部について、以
下説明を行う。なお、ここでは、基板342上に設けられた素子部としては、基板342
と配向膜352に挟まれた領域のことをさす。
【0185】
まず、基板342を準備する。基板342としては、基板302に示す材料を援用する
ことができる。次に、基板342上に遮光膜344、有色膜346を形成する(
図8(A
)参照)。
【0186】
遮光膜344及び有色膜346は、様々な材料を用いて、印刷法、インクジェット法、
フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング方法などでそれぞれ所望の位置に形成する。
【0187】
次に、遮光膜344、及び有色膜346上に絶縁膜348を形成する(
図8(B)参照
)。
【0188】
絶縁膜348としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等の有機絶
縁膜を用いることができる。絶縁膜348を形成することによって、例えば、有色膜34
6中に含まれる不純物等を液晶層320側に拡散することを抑制することができる。ただ
し、絶縁膜348は、必ずしも設ける必要はなく、絶縁膜348を形成しない構造として
もよい。
【0189】
次に、絶縁膜348上に導電膜350を形成する(
図8(C)参照)。導電膜350と
しては、導電膜316a及び316bに示す材料を援用することができる。
【0190】
以上の工程で基板342上に形成される構造を形成することができる。
【0191】
次に、基板302と基板342上、より詳しくは基板302上に形成された絶縁膜31
4、透光性を有する導電膜316a、316bと、基板342上に形成された導電膜35
0上に、それぞれ配向膜318と配向膜352を形成する。配向膜318、配向膜352
は、ラビング法、光配向法等を用いて形成することができる。その後、基板302と、基
板342との間に液晶層320を形成する。液晶層320の形成方法としては、ディスペ
ンサ法(滴下法)や、基板302と基板342とを貼り合わせてから毛細管現象を用いて
液晶を注入する注入法を用いることができる。
【0192】
以上の工程で、
図3に示す液晶表示装置を作製することができる。
【0193】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができ
る。
【0194】
<変形例1>
実施の形態1において平坦化膜317の変形例について、
図9を用いて説明する。
図9
は
図3と同様に、A-Bは駆動回路部の断面図であり、C-Dは画素部の断面図である。
【0195】
図9は、平坦化膜317aが基板302全体上に設けられず、透光性を有する導電膜3
16a、316b上に設けられる点が
図3に示す断面図と異なる。即ち、配向膜318は
、平坦化膜317aと接する領域と、絶縁膜314と接する領域とを有する。
【0196】
画素部において、表示領域は、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316b
が形成される領域である。このため、透光性を有する導電膜316b上に少なくとも平坦
化膜317aが形成されることで、配向膜318の被形成領域の凹凸を低減することが可
能である。この結果、液晶分子の配向不良に伴う表示不良を低減することが可能である。
【0197】
ここで、
図9に示す液晶表示装置の作製方法について、
図4乃至
図7、及び
図10を用
いて説明する。
【0198】
実施の形態1と同様に、
図4乃至
図7(A)の工程を経て、
図10(A)に示すように
、基板302上に、ゲート電極として機能する導電膜304a、304b、304c、ゲ
ート絶縁膜として機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、3
08b、308d、導電膜310a、310b、310c、310d、310e、絶縁膜
312、絶縁膜314、導電膜315、及び平坦化膜317を形成する。なお、当該工程
において、第1のパターニング乃至第5のパターニングを行い、それぞれ導電膜304a
、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜310a
、310b、310c、310d、310e、開口部362、及び開口部364a、36
4b、364cを形成している。
【0199】
次に、平坦化膜317を所望の領域に加工することで、
図10(B)に示すように、平
坦化膜317aを形成する。なお、平坦化膜317aの形成は、平坦化膜317aが非感
光性樹脂で形成される場合、所望の領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い
、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる。また
、平坦化膜317aが感光性樹脂で形成される場合、所望の領域を第6のパターニングに
より露光及び現像することで、平坦化膜317aを形成することができる。
【0200】
次に、平坦化膜317aをマスクとし、マスクに覆われていない領域の導電膜315を
エッチングすることで、透光性を有する導電膜316a、316bを形成することができ
る。ここでは、透光性を有する導電膜316a、316b、及び平坦化膜317aそれぞ
れを形成するためのパターニングを別々に行わず、平坦化膜317aを形成するためのパ
ターニングで、透光性を有する導電膜316a、316bも形成することが可能であるた
め、パターニング工程を削減することが可能である。即ち、第1乃至第6のパターニング
、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、容量素子、及び平坦化膜317aを同時に形成
することができる。
【0201】
なお、
図10(C)の後、加熱処理を行うことで、
図11に示すように、端部が湾曲し
ている平坦化膜317bを形成することができる。この結果、配向膜318の被形成領域
の凹凸をさらに緩和することができる。なお、当該加熱処理の温度は、平坦化膜317b
の焼成温度以下で行えばよい。当該加熱処理により、透光性を有する導電膜316a、3
16b上に端部が位置する平坦化膜317aを形成することができる。または、
図11に
示すように、透光性を有する導電膜316a、316bの外側に端部が位置する平坦化膜
317bを形成することができる。
【0202】
<変形例2>
画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の変形例について説明する。ここでは、図
1(B)に示す画素301の上面図を
図12に示す。なお、
図12においては、対向電極
及び液晶素子を省略する。なお、実施の形態1及び変形例1と同様の構成については、説
明を省略する。ここでは、実施の形態1に示す変形例1を用いて画素電極として機能する
導電膜及び平坦化膜を形成するが、適宜実施の形態1に本変形例を適用することができる
。
【0203】
図12において、開口部372cの内側に開口部374cが設けられる点が
図2に示す
画素301と異なる。また、開口部362の代わりに開口部372が設けられる点が
図2
に示す画素と異なる。導電膜310eは、開口部374cにおいて、画素電極として機能
する透光性を有する導電膜316bと電気的に接続されている。
【0204】
次に、
図12の一点鎖線C-D間における断面図を
図13に示す。なお、
図13におい
て、駆動回路部(上面図を省略する。)の断面図をA-Bに示す。
【0205】
図13に示すように、導電膜304b上には、絶縁膜306及び絶縁膜312に設けら
れた開口部372a(
図14(A)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374
a(
図14(C)参照。)とを有する。開口部374a(
図14(C)参照。)は、開口
部372a(
図14(A)参照。)の内側に位置する。開口部374a(
図14(C)参
照。)において、導電膜304bと透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0206】
また、導電膜310c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372b(
図14(A
)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374b(
図14(C)参照。)とを有
する。開口部374b(
図14(C)参照。)は、開口部372b(
図14(A)参照。
)の内側に位置する。開口部374b(
図14(C)参照。)において、導電膜310c
と透光性を有する導電膜316aが接続される。
【0207】
また、導電膜310e上には、絶縁膜312に設けられた開口部372c(
図14(A
)参照。)と、絶縁膜314に設けられた開口部374c(
図14(C)参照。)とを有
する。開口部374c(
図14(C)参照。)は、開口部372c(
図14(A)参照。
)の内側に位置する。開口部374c(
図14(C)参照。)において、導電膜310e
と透光性を有する導電膜316bが接続される。
【0208】
また、透光性を有する導電膜308c上には、絶縁膜312に設けられた開口部372
(
図14(A)参照。)を有する。開口部372において、透光性を有する導電膜308
cは絶縁膜314と接する。
【0209】
導電膜304b及び透光性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310c及び透光
性を有する導電膜316aの接続部、導電膜310e及び透光性を有する導電膜316b
の接続部はそれぞれ、絶縁膜305または/及び絶縁膜314で覆われている。絶縁膜3
05及び絶縁膜314は、外部からの不純物、例えば、水、アルカリ金属、アルカリ土類
金属等が、酸化物半導体膜へ拡散するのを防ぐ材料で形成される絶縁膜で形成される。ま
た、開口部372a、372b、372c、372(
図14(A)参照。)の側面が絶縁
膜305または/及び絶縁膜314で覆われている。絶縁膜305及び絶縁膜314の内
側には酸化物半導体膜が設けられているため、外部からの不純物、例えば水、アルカリ金
属、アルカリ土類金属等が、導電膜304b、導電膜310c、310e、及び透光性を
有する導電膜316a、316bの接続部から、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜
へ拡散することを防ぐことができる。このため、トランジスタの電気特性の変動を防ぐこ
とが可能であり、液晶表示装置の信頼性を高めることができる。
【0210】
図13に示す液晶表示装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について
、
図4、
図5、
図14、及び
図15を用いて説明する。
【0211】
実施の形態1と同様に、
図4及び
図5の工程を経て、基板302上に、ゲート電極とし
て機能する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜3
05及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜310a
、310b、310c、310d、310e、絶縁膜311を形成する。なお、当該工程
において、第1のパターニング乃至第3のパターニングを行い、それぞれ導電膜304a
、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜310a
、310b、310c、310d、310eを形成している。
【0212】
この後、実施の形態1と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311bに含まれる酸素の
一部を酸化物半導体膜308a、308bに移動させ、酸化物半導体膜308a、308
bに含まれる酸化物半導体膜中の酸素欠損量を低減することができる。
【0213】
次に、
図14(A)に示すように、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、絶縁
膜312、及び開口部372、372b、372cを形成する。さらに、ゲート絶縁膜の
一部である絶縁膜306を所望の領域に加工することで、開口部372aを形成する。な
お、絶縁膜305、絶縁膜312、及び開口部372、372a、372b、372cの
形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われ
ていない領域をエッチングすることで、形成することができる。開口部372、372a
、372b、372cの形成方法としては、適宜実施の形態1に示す開口部362の形成
方法を用いることができる。
【0214】
当該エッチング工程において、少なくとも開口部372aを形成することで、後に行わ
れる第5のパターニングで形成されたマスクを用いたエッチング工程の際に、エッチング
量を削減することが可能である。
【0215】
次に、絶縁膜305、導電膜310c、310e、絶縁膜312、及び酸化物半導体膜
308d上に絶縁膜313を形成する(
図14(B)参照)。
【0216】
次に、実施の形態1と同様に、絶縁膜313を所望の領域に加工することで、絶縁膜3
14、及び開口部374a、374b、374cを形成する。なお、絶縁膜314、及び
開口部374a、374b、374cは、所望の領域に第5のパターニングによるマスク
の形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形成することがで
きる(
図14(C)参照)。
【0217】
次に、実施の形態1と同様に、開口部374a、374b、374cを覆うように絶縁
膜314上に導電膜315を形成する。また、導電膜315上に実施の形態1の変形例1
と同様に平坦化膜317aを形成する(
図15(A)参照)。なお、平坦化膜317aの
形成は、平坦化膜317aが非感光性樹脂で形成される場合、所望の領域に第6のパター
ニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすること
で、形成することができる。また、平坦化膜317aが感光性樹脂で形成される場合、所
望の領域を第6のパターニングにより露光及び現像することで、平坦化膜317aを形成
することができる。
【0218】
次に、平坦化膜317aをマスクとし、マスクに覆われていない領域の導電膜315を
エッチングすることで、透光性を有する導電膜316a、316bを形成する(
図15(
B)参照)。
【0219】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0220】
図14(A)において、開口部372aを形成しない工程の場合、
図14(C)に示す
エッチング工程において、絶縁膜305、絶縁膜306、絶縁膜312、及び絶縁膜31
4をエッチングしなければならず、他の開口部と比べてエッチング量が増えてしまう。こ
のため、当該エッチング工程においてばらつきが生じてしまい、一部の領域においては、
開口部374aが形成されず、後に形成される透光性を有する導電膜316aと導電膜3
04bのコンタクト不良が生じてしまう。しかしながら、本実施の形態においては、2回
のエッチング工程により開口部372a及び開口部374aを形成するため、当該開口部
の形成工程においてエッチング不良が生じにくい。この結果、液晶表示装置の歩留まりを
向上させることが可能である。なお、ここでは、開口部372aを用いて説明したが、開
口部374b及び開口部374cにおいても同様の効果を有する。
【0221】
なお、本変形例では、
図14(A)で行うエッチング工程において、開口部372aを
形成するために絶縁膜306及び絶縁膜312をエッチングしたが、この代わりに絶縁膜
305、絶縁膜306、及び絶縁膜312をエッチングしてもよい。この結果、
図14(
C)で行うエッチング工程において、全ての開口部において絶縁膜314のみのエッチン
グを行うこととなり、エッチング量が同じであるため、さらにエッチング不良を低減する
ことが可能である。
【0222】
<変形例3>
画素301に液晶素子を用いた液晶表示装置の変形例について説明する。
図3、
図9及
び
図13に示す液晶表示装置において、透光性を有する導電膜308cは、絶縁膜314
と接しているが、絶縁膜305と接する構造とすることができる。この場合、
図6に示す
ような開口部362を設ける必要が無いため、透光性を有する導電膜316a、316b
表面の段差を低減することが可能である。このため、液晶層320に含まれる液晶分子の
配向乱れを低減することが可能である。また、コントラストの高い液晶表示装置を作製す
ることができる。
【0223】
このような構造は、
図4(B)において、酸化物半導体膜307を形成する前に、絶縁
膜306を選択的にエッチングして、絶縁膜305の一部を露出させればよい。
【0224】
<変形例4>
ここでは、実施の形態1に示す液晶表示装置の変形例について、
図16乃至
図18を用
いて説明する。
図16において、A-Bに駆動回路部の断面図を示し、C-Dに画素部の
断面図を示す。なお、ここでは、実施の形態1に示す変形例1を用いて画素電極として機
能する導電膜及び平坦化膜を形成するが、適宜実施の形態1、変形例2、及び変形例3に
、本変形例を適用することができる。
【0225】
図16に示す液晶表示装置は、実施の形態1に示す液晶表示装置と比較して、チャネル
保護型のトランジスタを用いている点が異なる。
【0226】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a、310bによりトラ
ンジスタ102を構成する。酸化物半導体膜308aと導電膜310a、310bの間に
、チャネル保護膜として機能する絶縁膜312が設けられる。また、導電膜310a、3
10b、310c上には、絶縁膜314が保護膜として設けられている。
【0227】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310
d、310eによりトランジスタ103を構成する。酸化物半導体膜308bと導電膜3
10d、310eの間に、チャネル保護膜として機能する絶縁膜312が設けられる。ま
た、導電膜310d、310e、透光性を有する導電膜308c上には、絶縁膜314が
保護膜として設けられている。
【0228】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜314に設け
られた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0229】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜316bにより容量
素子105を構成する。
【0230】
また、駆動回路部において、導電膜304a、304cと同時に形成された導電膜30
4bと、導電膜310a、310b、310d、310eと同時に形成された導電膜31
0cとは、透光性を有する導電膜316bと同時に形成された透光性を有する導電膜31
6aで接続される。
【0231】
本変形例においては、導電膜310a、310b、310d、310eをエッチングす
る際、酸化物半導体膜308a、308bにおいてチャネル領域となる領域が絶縁膜31
2に覆われているため、導電膜310a、310b、310d、310eを形成するエッ
チングによって、酸化物半導体膜308a、308bにおいてチャネル領域となる領域は
ダメージを受けない。さらに、絶縁膜312は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多く
の酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される。このため、絶縁膜312に含まれる酸素の一部
を酸化物半導体膜308a、308bに移動させ、酸化物半導体膜308a、308bに
含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0232】
図16に示す液晶表示装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について
、
図4、
図17、及び
図18を用いて説明する。
【0233】
実施の形態1と同様に、
図4の工程を経て、基板302上に、ゲート電極として機能す
る導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305及び
絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308dを形成する。なお、当該工
程において、第1のパターニング及び第2のパターニングを行い、それぞれ導電膜304
a、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308dを形成している
。
【0234】
次に、
図17(A)に示すように、実施の形態1と同様に絶縁膜311a及び絶縁膜3
11bが積層された絶縁膜311を形成する。
【0235】
この後、実施の形態1と同様に、加熱処理を行って、絶縁膜311に含まれる酸素の一
部を酸化物半導体膜308a、308bに酸素を移動させ、酸化物半導体膜308a、3
08bに含まれる酸化物半導体膜中の酸素欠損量を低減することができる。
【0236】
次に、
図17(B)に示すように、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、酸化
物半導体膜308a、308b上に絶縁膜312を形成する。当該工程において、絶縁膜
312と同様の材料で絶縁膜306が形成される場合、絶縁膜306の一部がエッチング
され、酸化物半導体膜308a、308bに覆われている領域のみ残存する。なお、絶縁
膜306及び絶縁膜312の形成は、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形
成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができ
る。
【0237】
次に、絶縁膜305、絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b上に導電膜を
形成した後、実施の形態1と同様の工程を経て導電膜310a、310b、310c、3
10d、310eを形成する(
図17(C)参照。)。なお、導電膜310a、310b
、310c、310d、310eの形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマス
クの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成すること
ができる。
【0238】
次に、絶縁膜305、絶縁膜312、酸化物半導体膜308d、導電膜310a、31
0b、310c、310d、310e上に絶縁膜313を形成する(
図18(A)参照)
。
【0239】
次に、実施の形態1と同様に、絶縁膜305及び絶縁膜313を所望の領域に加工する
ことで、絶縁膜314、及び開口部384a、384b、384cを形成する。なお、絶
縁膜314、及び開口部384a、384b、384cは、所望の領域に第5のパターニ
ングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで
形成することができる(
図18(B)参照)。
【0240】
次に、実施の形態1と同様に、開口部384a、384b、384cを覆うように絶縁
膜314上に導電膜を形成する。また、導電膜上に実施の形態1の変形例1と同様に平坦
化膜317aを形成する。なお、平坦化膜317aの形成は、平坦化膜317aが非感光
性樹脂で形成される場合、所望の領域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、
該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる。また、
平坦化膜317aが感光性樹脂で形成される場合、所望の領域を第6のパターニングによ
り露光及び現像することで、平坦化膜317aを形成することができる。次に、平坦化膜
317aをマスクとし、マスクに覆われていない領域の導電膜をエッチングすることで、
透光性を有する導電膜316a、316bを形成する(
図18(C)参照)。
【0241】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0242】
<変形例5>
ここでは、実施の形態1に示す液晶表示装置の変形例について、
図19、
図20乃至図
22を用いて説明する。
図19において、A-Bに駆動回路部の断面図を示し、C-Dに
画素部の断面図を示す。なお、ここでは、実施の形態1を用いて画素電極として機能する
透光性を有する導電膜及び平坦化膜を形成するが、適宜実施の形態1の変形例1を用いて
、画素電極として機能する透光性を有する導電膜及び平坦化膜を形成することができる。
【0243】
図19に示す液晶表示装置は、実施の形態1に示す液晶表示装置と比較して、絶縁膜3
92の開口部において、酸化物半導体膜308aと、導電膜310a、310bとが接続
し、酸化物半導体膜308bと導電膜310d、310eとが接続している点が異なる。
また、絶縁膜314及び透光性を有する導電膜316bの間に、絶縁膜394を有する点
が異なる。
【0244】
駆動回路部において、ゲート電極として機能する導電膜304a、ゲート絶縁膜として
機能する絶縁膜305及び絶縁膜306、チャネル領域が形成される酸化物半導体膜30
8a、酸化物半導体膜308aを覆う絶縁膜392、絶縁膜392の開口部において酸化
物半導体膜308aに接し、ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜310a
、310bによりトランジスタ102を構成する。また、導電膜310a、310b、3
10c上には、絶縁膜312、絶縁膜314、及び絶縁膜394が保護膜として設けられ
ている。
【0245】
画素部において、ゲート電極として機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成さ
れる酸化物半導体膜308b、酸化物半導体膜308bを覆う絶縁膜392、絶縁膜39
2の開口部において酸化物半導体膜308bに接し、ソース電極及びドレイン電極として
機能する導電膜310d、310eによりトランジスタ103を構成する。また、導電膜
310d、310e上には、絶縁膜312、絶縁膜314、及び絶縁膜394が保護膜と
して設けられている。
【0246】
また、画素電極として機能する透光性を有する導電膜316bが、絶縁膜312、絶縁
膜314、及び絶縁膜394に設けられた開口部において、導電膜310eと接続する。
【0247】
また、一方の電極として機能する透光性を有する導電膜308c、誘電体膜として機能
する絶縁膜314及び絶縁膜394、他方の電極として機能する透光性を有する導電膜3
16bにより容量素子105を構成する。
【0248】
絶縁膜392は、酸化物半導体膜308a、308bと接するため、酸化物絶縁膜で形
成することが好ましい。絶縁膜392は、絶縁膜306と同様の材料を用いて形成するこ
とができる。また、絶縁膜392は、絶縁膜312aと同様に酸素を透過する酸化物絶縁
膜であり、欠陥量が少ないことが好ましい。この結果、絶縁膜312bに含まれる酸素を
酸化物半導体膜308a、308bに移動させることが可能であり、酸化物半導体膜30
8a、308bに含まれる酸素欠損を低減することが可能である。また、酸化物半導体膜
308a、308bと絶縁膜392との界面における欠陥量が少ないことが好ましい。
【0249】
絶縁膜394は、容量素子105の電荷容量を制御するために設ける。このため、絶縁
膜394は、適宜酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を用いて形成することができる。また
、絶縁膜394として、有機シランガスを用いたCVD法(化学気相成長法)により形成
した酸化絶縁膜、代表的には酸化シリコン膜を用いることで、平坦性を高めることが可能
となるため好ましい。なお、絶縁膜314により容量素子105が所定の電荷容量を得る
ことが可能な場合は、絶縁膜394を設けなくともよい。
【0250】
本変形例においては、導電膜310a、310b、310d、310eをエッチングす
る際、酸化物半導体膜308a、308bが絶縁膜392に覆われているため、導電膜3
10a、310b、310d、310eを形成するエッチングによって、酸化物半導体膜
308a、308bはダメージを受けない。さらに、絶縁膜312は、化学量論的組成を
満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される。このため、絶縁膜312
に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜308a、308bに移動させ、酸化物半導体膜
308a、308bに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0251】
図19に示す液晶表示装置に示す基板302上に設けられた素子部の作製方法について
、
図4、
図20乃至
図22を用いて説明する。
【0252】
実施の形態1と同様に、
図4(A)乃至
図4(C)の工程を経て、基板302上に、ゲ
ート電極として機能する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能
する絶縁膜305及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308dを形
成する。なお、当該工程において、第1のパターニング及び第2のパターニングを行い、
それぞれ導電膜304a、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、3
08dを形成している。
【0253】
次に、
図20(A)に示すように、絶縁膜390を形成する。絶縁膜390は、絶縁膜
305または絶縁膜311aと同様の条件を用いて形成する。
【0254】
次に、絶縁膜390を所望の領域に加工することで、開口部391、391a、391
b、391c、391dを有する絶縁膜392を形成する。なお、絶縁膜392の形成は
、所望の領域に第3のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていな
い領域をエッチングすることで、形成することができる。
【0255】
次に、酸化物半導体膜308a、308b、及び絶縁膜392上に導電膜を形成した後
、実施の形態1と同様の工程を経て導電膜310a、310b、310c、310d、3
10eを形成する(
図20(C)参照。)。なお、導電膜310a、310b、310c
、310d、310eの形成は、所望の領域に第4のパターニングによるマスクの形成を
行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで、形成することができる。
【0256】
次に、絶縁膜392、及び導電膜310a、310b、310c、310d、310e
上に絶縁膜311を形成する(
図21(A)参照)。
【0257】
次に、絶縁膜311を所望の領域に加工することで、開口部393を有する絶縁膜31
2を形成する。なお、絶縁膜312及び開口部393は、所望の領域に第5のパターニン
グによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで形
成することができる(
図21(B)参照)。
【0258】
次に、
図21(C)に示すように、酸化物半導体膜308d、絶縁膜392及び開口部
393を覆うように絶縁膜313及び絶縁膜394を形成する。
【0259】
絶縁膜394は、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成する。
【0260】
次に、実施の形態1と同様に、絶縁膜305、絶縁膜306、絶縁膜392、絶縁膜3
12、絶縁膜314、絶縁膜394を所望の領域に加工することで、開口部365a、3
65b、365cを形成する。なお、開口部365a、365b、365cは、所望の領
域に第6のパターニングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエ
ッチングすることで形成することができる(
図22(A)参照)。
【0261】
次に、導電膜304b、導電膜310c、310e、絶縁膜394上に導電膜を形成し
た後、実施の形態1と同様の工程を経て導電膜316a、316bを形成する(
図22(
B)参照。)。なお、導電膜316a、316bの形成は、所望の領域に第7のパターニ
ングによるマスクの形成を行い、該マスクに覆われていない領域をエッチングすることで
、形成することができる。
【0262】
次に、
図22(C)に示すように、実施の形態1と同様に平坦化膜317を形成する。
【0263】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第7のパターニ
ング、すなわち7枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0264】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1とは異なる構造により、表示不良の原因となる光漏れ
を低減することが可能な液晶表示装置について、
図23及び
図24を用いて説明する。
【0265】
図23において、開口部362(
図24(C)参照。)を有する絶縁膜312において
、透光性を有する導電膜308cの表面と絶縁膜312の側面とのなす角度(以下、テー
パ角度という。)が小さい点が実施の形態1と異なる。また、絶縁膜314及び導電膜3
16a、316b上に平坦化膜を有さない点が実施の形態1と異なる。
【0266】
透光性を有する導電膜308c上において、透光性を有する導電膜308cと絶縁膜3
12の側面のテーパ角度を5°以上45°以下、好ましくは5°以上30°以下、さらに
好ましくは10°以上20°以下とすることで、絶縁膜312上に絶縁膜314を介して
設けられる、透光性を有する導電膜316bの凹凸が緩和される。即ち、配向膜318の
被形成領域の凹凸が低減するため、液晶層320に含まれる液晶分子の配向乱れを低減す
ることが可能である。
【0267】
また、配向膜318の被形成領域の凹凸を低減することで、配向膜318における膜厚
の均一性を高めることができる。配向膜318の膜厚が液晶分子のプレチルト角に影響す
るため、配向膜318の膜厚の均一性を高めることで、液晶分子のプレチルト角を制御す
ることができ、代表的には、液晶分子のプレチルト角を6°以上とすると、ディスクリネ
ーションが生じにくい。
【0268】
以上のことから、配向膜318の被形成領域の凹凸を低減するため、透光性を有する導
電膜308cと絶縁膜312の側面のテーパ角度を5°以上45°以下、好ましくは5°
以上30°以下、さらに好ましくは10°以上20°以下とすることで、液晶分子のプレ
チルト角においてディスクリネーションが発生しにくいような角度となるように配向膜3
18に形成することが可能であり、液晶層320に含まれる液晶分子の配向乱れを低減す
ることが可能である。また、配向膜318の被形成領域の段差を低減することで、光漏れ
を低減することが可能である。
【0269】
【0270】
実施の形態1と同様に、
図4乃至
図5(C)の工程を経て、基板302上に、ゲート電
極として機能する導電膜304a、304b、304c、ゲート絶縁膜として機能する絶
縁膜305及び絶縁膜306、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜3
10a、310b、310c、310d、310e、絶縁膜311を形成する。なお、当
該工程において、第1のパターニング乃至第3のパターニングを行い、それぞれ導電膜3
04a、304b、304c、酸化物半導体膜308a、308b、308d、導電膜3
10a、310b、310c、310d、310eを形成している。
【0271】
次に、
図24(A)に示すように、所望の領域に第4のパターニングによりマスク33
0を形成する。
【0272】
次に、加熱処理を行うことで、
図24(B)に示すように、マスク330の側面と絶縁
膜311の表面のなす角度が縮小し、且つ側面が湾曲したマスク332を形成する。
【0273】
次に、マスク332に覆われていない領域の絶縁膜311をエッチングすることで、図
24(C)に示すように、側面のテーパ角度が5°以上45°以下、好ましくは5°以上
30°以下、さらに好ましくは10°以上20°以下である絶縁膜312を形成すること
ができる。当該エッチング工程はドライエッチングを用いることが好ましい。また、当該
エッチング工程において、マスク332の膜厚を徐々に薄くし、且つマスク332の面積
を徐々に縮小させることが好ましい。この結果、絶縁膜311を徐々に露出しながらエッ
チングすることが可能であり、形成される絶縁膜312の側面のテーパ角度を小さくする
ことができる。
【0274】
この後、実施の形態1と同様に、絶縁膜314、透光性を有する導電膜316a、31
6b、及び配向膜318を形成する。
【0275】
以上の工程で基板302上に、トランジスタを有する画素部及び駆動回路部を形成する
ことができる。なお、本実施の形態に示す作製工程においては、第1乃至第6のパターニ
ング、すなわち6枚のマスクでトランジスタ、及び容量素子を同時に形成することができ
る。
【0276】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2の構造を有する液晶表示装置につい
て、
図25を用いて説明する。
【0277】
図25において、基板302上に設けられる素子部において、透光性を有する導電膜3
08cの表面と絶縁膜312の側面とのなす角度(以下、テーパ角度という。)が小さい
点が実施の形態1と異なる。なお、このような絶縁膜312は実施の形態2に示す絶縁膜
312の構造及び形成方法を適宜用いることができる。
【0278】
透光性を有する導電膜308cの表面と絶縁膜312の側面とのテーパ角度が小さい絶
縁膜312を素子部に設けることで、導電膜316bにおいて、表示領域となる領域の凹
凸を低減することができる。この結果、表示領域近傍における平坦化膜317において、
絶縁膜312の凹凸の影響が緩和されるため、実施の形態1と比較して、平坦化膜317
の表面の凹凸をさらに低減することが可能である。この結果、液晶層320に含まれる液
晶分子の配向乱れをさらに低減することが可能である。また、配向膜318の被形成領域
の段差を低減することで、光漏れをさらに低減することが可能である。
【0279】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタに適用可能な変
形例について、説明する。
【0280】
<変形例1、下地絶縁膜について>
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ102、103において、必要に応
じて、基板302及び導電膜304a、304b、304cの間に下地絶縁膜を設けるこ
とができる。下地絶縁膜の材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコ
ン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミ
ニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。なお、下地絶縁膜の材料として、窒化シリコン
、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム等を用いること
で、基板302から不純物、代表的にはアルカリ金属、水、水素等の酸化物半導体膜30
8a、308bへの拡散を抑制することができる。
【0281】
下地絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成することができる。
【0282】
<変形例2、ゲート絶縁膜について>
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ102、103において、必要に応
じて、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜の積層構造を変形することができる。ここでは
、トランジスタ103を用いて説明する。
【0283】
図26(A)に示すように、ゲート絶縁膜は、絶縁膜305及び絶縁膜306がゲート
電極として機能する導電膜304c側から順に積層される。
【0284】
導電膜304c側に窒化物絶縁膜で形成される絶縁膜305を設けることで、導電膜3
04cからの不純物、代表的には、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属
等が酸化物半導体膜308bに移動することを防ぐことができる。
【0285】
また、酸化物半導体膜308b側に酸化物絶縁膜で形成される絶縁膜306を設けるこ
とで、絶縁膜306及び酸化物半導体膜308b界面における欠陥準位密度を低減するこ
とが可能である。この結果、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
なお、絶縁膜306として、絶縁膜312bと同様に、化学量論的組成を満たす酸素より
も多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成すると、絶縁膜306及び酸化物半導体膜
308b界面における欠陥準位密度をさらに低減することが可能であるため、さらに好ま
しい。
【0286】
また、
図26(A)に示すように、絶縁膜305は、欠陥の少ない窒化物絶縁膜305
aと、水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜305bとが、導電膜304c側から順に
積層される積層構造とすることができる。絶縁膜305として、欠陥の少ない窒化物絶縁
膜305aを設けることで、ゲート絶縁膜の絶縁耐圧を向上させることができる。また、
水素ブロッキング性の高い窒化物絶縁膜305bを設けることで、導電膜304c及び窒
化物絶縁膜305aからの水素が酸化物半導体膜308bに移動することを防ぐことがで
きる。
【0287】
図26(A)に示す窒化物絶縁膜305a、305bの作製方法の一例を以下に示す。
はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いたプラズマC
VD法により、欠陥の少ない窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜305aとして形成する。次
に、原料ガスを、シラン及び窒素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素
をブロッキングすることが可能な窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜305bとして成膜する
。このような形成方法により、欠陥が少なく、且つ水素のブロッキング性を有する窒化物
絶縁膜が積層されたゲート絶縁膜を形成することができる。
【0288】
または、
図26(B)に示すように、絶縁膜305は、不純物のブロッキング性が高い
窒化物絶縁膜305cと、欠陥の少ない窒化物絶縁膜305aと、水素ブロッキング性の
高い窒化物絶縁膜305bとが、導電膜304c側から順に積層される積層構造とするこ
とができる。絶縁膜305として、不純物のブロッキング性が高い窒化物絶縁膜305c
を設けることで、導電膜304cからの不純物、代表的には、水素、窒素、アルカリ金属
、またはアルカリ土類金属等が酸化物半導体膜308bに移動することを防ぐことができ
る。
【0289】
図26(B)に示す窒化物絶縁膜305a、305b、305cの作製方法の一例を以
下に示す。はじめに、シラン、窒素、及びアンモニアの混合ガスを原料ガスとして用いた
プラズマCVD法により、不純物のブロッキング性が高い窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜
305cとして形成する。次に、アンモニアの流量の増加させることで、欠陥の少ない窒
化シリコン膜を窒化物絶縁膜305aとして形成する。次に、原料ガスを、シラン及び窒
素の混合ガスに切り替えて、水素濃度が少なく、且つ水素をブロッキングすることが可能
な窒化シリコン膜を窒化物絶縁膜305bとして成膜する。このような形成方法により、
欠陥が少なく、且つ不純物のブロッキング性を有する窒化物絶縁膜が積層された絶縁膜3
05を形成することができる。
【0290】
<変形例3、一対の電極について>
実施の形態1及び実施の形態2に示す液晶表示装置において、導電膜310a、310
b、310c、310d、310eに用いることが可能な材料について、説明する。ここ
では、トランジスタ103を用いて説明する。
【0291】
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ103に設けられる導電膜310d
、310eとして、タングステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、ま
たはタンタル単体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いることが好ましい
。この結果、酸化物半導体膜308bに含まれる酸素と導電膜310d、310eに含ま
れる導電材料とが結合し、酸化物半導体膜308bにおいて、酸素欠損の多い領域が形成
される。また、酸化物半導体膜308bに導電膜310d、310eを形成する導電材料
の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結果、
図27に示すように、酸化物半
導体膜308bにおいて、導電膜310d、310eと接する領域近傍に、低抵抗領域3
34a、334bが形成される。低抵抗領域334a、334bは、導電膜310d、3
10eに接し、且つ絶縁膜306と、導電膜310d、310eの間に形成される。低抵
抗領域334a、334bは、導電性が高いため、酸化物半導体膜308bと導電膜31
0d、310eとの接触抵抗を低減することが可能であり、トランジスタのオン電流を増
大させることが可能である。
【0292】
また、導電膜310d、310eを、上記酸素と結合しやすい導電材料と、窒化チタン
、窒化タンタル、ルテニウム等の酸素と結合しにくい導電材料との積層構造としてもよい
。このような積層構造とすることで、導電膜310d、310eと絶縁膜312aとの界
面において、導電膜310d、310eの酸化を防ぐことが可能であり、導電膜310d
、310eの高抵抗化を抑制することが可能である。
【0293】
<変形例4、酸化物半導体膜について>
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ102、103の作製方法において
、導電膜310a、310b、310d、310eを形成した後、酸化物半導体膜308
a、308bを酸化雰囲気で発生させたプラズマに曝し、酸化物半導体膜308a、30
8bに酸素を供給することができる。酸化雰囲気としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等の雰囲気がある。さらに、当該プラズマ処理において、基板302側にバ
イアスを印加しない状態で発生したプラズマに酸化物半導体膜308a、308bを曝す
ことが好ましい。この結果、酸化物半導体膜308a、308bにダメージを与えず、且
つ酸素を供給することが可能であり、酸化物半導体膜308a、308bに含まれる酸素
欠損量を低減することができる。また、エッチング処理により酸化物半導体膜308a、
308bの表面に残存する不純物、例えば、フッ素、塩素等のハロゲン等を除去すること
ができる。
【0294】
<変形例5、酸化物半導体膜について>
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ102、103において、必要に応
じて、酸化物半導体膜を積層構造とすることができる。ここでは、トランジスタ103を
用いて説明する。
【0295】
図28に示すトランジスタは、絶縁膜306及び導電膜310d、310eの間に、酸
化物半導体膜を含む多層膜336が形成されている。
【0296】
多層膜336は、酸化物半導体膜336a及び酸化物膜336bを有する。即ち、多層
膜336は2層構造である。また、酸化物半導体膜336aの一部がチャネル領域として
機能する。また、多層膜336に接するように、絶縁膜312aが形成されており、絶縁
膜312aに接するように酸化物膜336bが形成されている。即ち、酸化物半導体膜3
36aと絶縁膜312aとの間に、酸化物膜336bが設けられている。
【0297】
酸化物膜336bは、酸化物半導体膜336aを構成する元素の一種以上から構成され
る酸化物膜である。酸化物膜336bは、酸化物半導体膜336aを構成する元素の一種
以上から構成されるため、酸化物半導体膜336aと酸化物膜336bとの界面において
、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害されないた
め、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0298】
酸化物膜336bは、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-M-
Zn酸化物(MはAl、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)であり、
且つ酸化物半導体膜336aよりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的
には、酸化物膜336bの伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体膜336aの伝導
帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上
、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.
4eV以下である。即ち、酸化物膜336bの電子親和力と、酸化物半導体膜336aの
電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または0
.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以下
である。
【0299】
酸化物膜336bは、Inを含むことで、キャリア移動度(電子移動度)が高くなるた
め好ましい。
【0300】
酸化物膜336bとして、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf
をInより高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物
膜336bのエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物膜336bの電子親和力を
小さくする。(3)外部からの不純物を遮蔽する。(4)酸化物半導体膜336aと比較
して、絶縁性が高くなる。(5)Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Ndまたは
Hfは酸素との結合力が強い金属元素であるため、Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、
Ce、NdまたはHfをInより高い原子数比で有することで、酸素欠損が生じにくくな
る。
【0301】
酸化物膜336bがIn-M-Zn酸化物であるとき、InとMの原子数比率は、In
およびMの和を100atomic%としたとき、好ましくは、Inが50atomic
%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomic%未
満、Mが75atomic%以上とする。
【0302】
また、酸化物半導体膜336a、及び酸化物膜336bがIn-M-Zn酸化物(Mは
Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、酸化物半導体膜3
36aと比較して、酸化物膜336bに含まれるM(Al、Ti、Ga、Y、Zr、La
、Ce、Nd、またはHf)の原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体膜336a
に含まれる上記原子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは
3倍以上高い原子数比である。
【0303】
また、酸化物半導体膜336a、及び酸化物膜336bがIn-M-Zn酸化物(Mは
Al、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、NdまたはHf)の場合、酸化物膜336b
をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜336aをIn:M
:Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きく
、好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、
y1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きく、より好ましくは、y1/x1がy2/x
2よりも3倍以上大きい。このとき、酸化物膜336bにおいて、y1がx1以上である
と、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタに安定した電気特性を付与できるため好ま
しい。ただし、y1がx1の3倍以上になると、酸化物半導体膜を用いたトランジスタの
電界効果移動度が低下してしまうため、y1はx1の3倍未満であると好ましい。
【0304】
例えば、酸化物半導体膜336aとしてIn:Ga:Zn=1:1:1または3:1:
2の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物膜336b
としてIn:Ga:Zn=1:3:n(nは2以上8以下の整数)、1:6:m(mは2
以上10以下の整数)、または1:9:6の原子数比のIn-Ga-Zn酸化物を用いる
ことができる。なお、酸化物半導体膜336a、及び酸化物膜336bの原子数比はそれ
ぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の変動を含む。なお、酸化物半
導体膜336aにおいて、Znの割合がGa以上であるとCAAC-OSが形成されやす
く好ましい。
【0305】
酸化物膜336bは、後に形成される絶縁膜312bを形成する際の、酸化物半導体膜
336aへのダメージ緩和膜としても機能する。
【0306】
酸化物膜336bの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上50n
m以下とする。
【0307】
また、酸化物膜336bは、酸化物半導体膜336aと同様に、例えば非単結晶構造で
もよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Align
ed Crystalline Oxide Semiconductor)、多結晶構
造、後述する微結晶構造、または非晶質構造を含む。
【0308】
なお、酸化物半導体膜336a及び酸化物膜336bによって、非晶質構造の領域、微
結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の二種以上を有
する混合膜を構成してもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域
、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領
域を有する場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域
、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領
域の積層構造を有する場合がある。
【0309】
ここでは、酸化物半導体膜336a及び絶縁膜312aの間に、酸化物膜336bが設
けられている。このため、酸化物膜336bと絶縁膜312aの間において、不純物及び
欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラップ準位と酸化物半導体膜336aと
の間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜336aを流れる電子がトラップ準位
に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させることが可能であると共に、電界
効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位に電子が捕獲されると、該電子が
マイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トランジスタのしきい値電圧が変動して
しまう。しかしながら、酸化物半導体膜336aとトラップ準位との間に隔たりがあるた
め、トラップ準位における電子の捕獲を低減することが可能であり、しきい値電圧の変動
を低減することができる。
【0310】
また、酸化物膜336bは、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、外部
から酸化物半導体膜336aへ移動する不純物量を低減することが可能である。また、酸
化物膜336bは、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜336aに
おける不純物濃度及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0311】
なお、酸化物半導体膜336a及び酸化物膜336bは、各膜を単に積層するのではな
く連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構造
)が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面において、トラップ中心や再結合
中心のような欠陥準位を形成するような不純物が存在しないような積層構造とする。仮に
、積層された酸化物半導体膜336a及び酸化物膜336bの間に不純物が混在している
と、エネルギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結
合して、消滅してしまう。
【0312】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(5×10-7Pa乃至1×10-4Pa程度まで)することが好
ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャン
バー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好まし
い。
【0313】
なお、
図28において、多層膜336を酸化物半導体膜336a及び酸化物膜336b
の2層構造としたが、絶縁膜306と酸化物半導体膜336aの間に、さらに酸化物膜3
36bと同様の膜を設ける3層構造としてもよい。この場合、絶縁膜306及び酸化物半
導体膜336aの間に設ける酸化物膜の膜厚は、酸化物半導体膜336aより小さいと好
ましい。酸化物膜の厚さを1nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上3nm以下とす
ることで、トランジスタのしきい値電圧の変動量を低減することが可能である。
【0314】
<変形例6、酸化物半導体膜について>
変形例5において、酸化物半導体膜を含む多層膜の構造を適宜変形することができる。
ここでは、トランジスタ103を用いて説明する。
【0315】
図29に示すように、絶縁膜306及び絶縁膜312aの間に、酸化物半導体膜を含む
多層膜336が形成されている。
【0316】
多層膜336は、絶縁膜306及び導電膜310d、310eの間に形成される酸化物
半導体膜336aと、酸化物半導体膜336a、及び導電膜310d、310e上に形成
される酸化物膜336bとを有する。また、酸化物半導体膜336aの一部がチャネル領
域として機能する。また、多層膜336に接するように、絶縁膜312aが形成されてお
り、絶縁膜312aに接するように酸化物膜336bが形成されている。即ち、酸化物半
導体膜336aと絶縁膜312aとの間に、酸化物膜336bが設けられている。
【0317】
本変形例に示すトランジスタ103は、導電膜310d、310eが酸化物半導体膜3
36aと接していることから、変形例5に示すトランジスタと比較して、酸化物半導体膜
336aと導電膜310d、310eとの接触抵抗が低く、オン電流が向上したトランジ
スタである。
【0318】
また、本変形例に示すトランジスタ103は、導電膜310d、310eが酸化物半導
体膜336aと接していることから、酸化物半導体膜336aと導電膜310d、310
eとの接触抵抗を増大させずに、酸化物膜336bを厚くすることができる。このように
することで、絶縁膜312bを形成する際のプラズマダメージまたは絶縁膜312a、3
12bの構成元素の混入などで生じるトラップ準位が、酸化物半導体膜336aと酸化物
膜336bとの界面近傍に形成されることを抑制できる。つまり、本変形例に示すトラン
ジスタはオン電流の向上、及びしきい値電圧の変動量の低減を両立することができる。
【0319】
<変形例7、トランジスタの構造について>
実施の形態1及び実施の形態2に示すトランジスタ102、103において、必要に応
じて、酸化物半導体膜を介して対向する複数のゲート電極を設けることができる。ここで
は、トランジスタ103を用いて説明する。
【0320】
図30に示すトランジスタ103は、基板302上に設けられる導電膜304cを有す
る。また、基板302及び導電膜304c上に形成される絶縁膜305及び絶縁膜306
と、絶縁膜305及び絶縁膜306を介して、導電膜304cと重なる酸化物半導体膜3
08bと、酸化物半導体膜308bに接する導電膜310d、310eと、を有する。ま
た、絶縁膜306、酸化物半導体膜308b、及び導電膜310d、310e上には、絶
縁膜312a及び絶縁膜312bが積層された絶縁膜312、及び絶縁膜314が形成さ
れる。また、絶縁膜312、及び絶縁膜314を介して酸化物半導体膜308bと重畳す
る導電膜316cを有する。
【0321】
導電膜304c及び導電膜316cは、酸化物半導体膜308bを介して対向する。な
お、導電膜304c及び導電膜316cは、ゲート電極として機能する。導電膜316c
は、透光性を有する導電膜316bと同時に形成することで、工程数を削減することが可
能であるため好ましい。
【0322】
本変形例に示すトランジスタ103は、酸化物半導体膜308bを介して対向する導電
膜304c及び導電膜316cを有する。導電膜304cと導電膜316cに異なる電位
を印加することで、トランジスタ103のしきい値電圧を制御することができる。
【0323】
また、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0324】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、酸化物半導体膜308a、308b、透光性を有する導電膜308c、及び多
層膜336に適用可能な一態様について説明する。なお、ここでは、酸化物半導体膜を一
例に用いて説明するが、多層膜に含まれる酸化物膜も同様の構造とすることができる。
【0325】
酸化物半導体膜は、単結晶構造の酸化物半導体(以下、単結晶酸化物半導体という。)
、多結晶構造の酸化物半導体(以下、多結晶酸化物半導体という。)、微結晶構造の酸化
物半導体(以下、微結晶酸化物半導体という。)、及び非晶質構造の酸化物半導体(以下
、非晶質酸化物半導体という。)の一以上で構成されてもよい。また、酸化物半導体膜は
、CAAC-OSで構成されていてもよい。また、酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導
体及び結晶粒を有する酸化物半導体で構成されていてもよい。以下に、単結晶酸化物半導
体、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体に
ついて説明する。
【0326】
<単結晶酸化物半導体>
単結晶酸化物半導体は、例えば、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が
少ない)ため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単結晶酸化物半導体をチ
ャネル領域に用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少ない場合
がある。また、単結晶酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低
くなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは
、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。
【0327】
<CAAC-OS>
CAAC-OSは、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結
晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-O
Sに含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満又は3nm未満の立方体内に収
まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OSは、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位
密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OSについて詳細な説明を行う。
【0328】
CAAC-OSを透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することが困難である。そのため、C
AAC-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0329】
CAAC-OSを、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子
の各層は、CAAC-OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)又は上面の凹凸を反
映した形状であり、CAAC-OSの被形成面又は上面と平行に配列する。
【0330】
一方、CAAC-OSを、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状又は六角形状に配列していること
を確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない
。
【0331】
断面TEM観察及び平面TEM観察より、CAAC-OSの結晶部は配向性を有してい
ることがわかる。
【0332】
CAAC-OSに対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OSの
out-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現
れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されるこ
とから、CAAC-OSの結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面又は上面に概略垂直
な方向を向いていることが確認できる。
【0333】
一方、CAAC-OSに対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化
物半導体であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)とし
て試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰
属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OSの場合は、2θを56°
近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0334】
以上のことから、CAAC-OSでは、異なる結晶部間ではa軸及びb軸の配向は不規
則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面又は上面の法線ベクトルに平行な方
向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列し
た金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0335】
なお、結晶部は、CAAC-OSを成膜した際、又は加熱処理などの結晶化処理を行っ
た際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OSの被形成面又は上面
の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OSの形状をエッ
チングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OSの被形成面又は上面の
法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0336】
また、CAAC-OS中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OSの
結晶部が、CAAC-OSの上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍
の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC-
OSに不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結
晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0337】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OSのout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS中の一部に、c軸配向性を
有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OSは、2θが31°近傍にピー
クを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0338】
また、CAAC-OSは、例えば、電子線回折パターンで、スポット(輝点)が観測さ
れる場合がある。なお、特に、ビーム径が10nmφ以下、または5nmφ以下の電子線
を用いて得られる電子線回折パターンを、極微電子線回折パターンと呼ぶ。
図31は、C
AAC-OSを有する試料の極微電子線回折パターンの一例である。ここでは、試料を、
CAAC-OSの被形成面に垂直な方向に切断し、厚さが40nm程度となるように薄片
化する。また、ここでは、ビーム径が1nmφの電子線を、試料の切断面に垂直な方向か
ら入射させる。
図31より、CAAC-OSの極微電子線回折パターンは、スポットが観
測されることがわかる。
【0339】
CAAC-OSは、例えば、不純物濃度を低減することで形成することができる場合が
ある。ここで、不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体の主
成分以外の元素である。特に、シリコンなどの元素は、酸化物半導体を構成する金属元素
よりも酸素との結合力が強い。従って、当該元素が酸化物半導体から酸素を奪う場合、酸
化物半導体の原子配列を乱し、結晶性を低下させることがある。また、鉄やニッケルなど
の重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸
化物半導体の原子配列を乱し、酸化物半導体の結晶性を低下させることがある。従って、
CAAC-OSは、不純物濃度の低い酸化物半導体である。また、酸化物半導体に含まれ
る不純物は、キャリア発生源となる場合がある。
【0340】
なお、CAAC-OSにおいて、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAA
C-OSの形成過程において、酸化物半導体の表面側から結晶成長させる場合、被形成面
の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC
-OSに不純物が混入することにより、当該不純物混入領域において結晶部の結晶性が低
下することがある。
【0341】
また、CAAC-OSは、例えば、欠陥準位密度を低減することで形成することができ
る。酸化物半導体において、例えば、酸素欠損があると欠陥準位密度が増加する。酸素欠
損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源とな
ることがある。CAAC-OSを形成するためには、例えば、酸化物半導体に酸素欠損を
生じさせないことが重要となる。従って、CAAC-OSは、欠陥準位密度の低い酸化物
半導体である。または、CAAC-OSは、酸素欠損の少ない酸化物半導体である。
【0342】
CAAC-OSにおいて、一定光電流測定法(CPM:Constant Photo
current Method)で導出される吸収係数は、1×10-3/cm未満、好
ましくは1×10-4/cm未満、さらに好ましくは5×10-5/cm未満となる。吸
収係数は、酸素欠損及び不純物の混入に由来する局在準位に応じたエネルギー(波長によ
り換算)と正の相関があるため、CAAC-OSにおける欠陥準位密度が極めて低い。
【0343】
なお、CPM測定によって得られた吸収係数のカーブからバンドの裾に起因するアーバ
ックテールと呼ばれる吸収係数分を除くことにより、欠陥準位による吸収係数を以下の式
から算出することができる。なお、アーバックテールとは、CPM測定によって得られた
吸収係数のカーブにおいて一定の傾きを有する領域をいい、当該傾きをアーバックエネル
ギーという。
【0344】
【0345】
ここで、α(E)は、各エネルギーにおける吸収係数を表し、αuは、アーバックテー
ルによる吸収係数を表す。
【0346】
また、高純度真性または実質的に高純度真性であるCAAC-OSを用いたトランジス
タは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
【0347】
<CAAC-OSの作製方法>
CAAC-OSに含まれる結晶部のc軸は、CAAC-OSの被形成面の法線ベクトル
または表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC-OSの形状(被形成面の
断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、
結晶部のc軸の方向は、CAAC-OSが形成されたときの被形成面の法線ベクトルまた
は表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜
後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0348】
CAAC-OSの形成方法としては、三つ挙げられる。
【0349】
第1の方法は、成膜温度を100℃以上450℃以下として酸化物半導体膜を成膜する
ことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面
の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0350】
第2の方法は、酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700℃以下の
加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベク
トルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0351】
第3の方法は、一層目の酸化物半導体膜を薄い厚さで成膜した後、200℃以上700
℃以下の加熱処理を行い、さらに二層目の酸化物半導体膜の成膜を行うことで、酸化物半
導体膜に含まれる結晶部のc軸が、被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに
平行な方向に揃った結晶部を形成する方法である。
【0352】
ここで、第1の方法を用いて、CAAC-OSを形成する方法について説明する。
【0353】
<ターゲット、及びターゲットの作製方法>
また、CAAC-OSは、例えば多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲッ
トを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオ
ンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し
、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離
することがある。この場合、当該平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が、結晶
状態を維持したまま被形成面に到達することで、CAAC-OSを成膜することができる
。
【0354】
また、CAAC-OSを成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0355】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下、さらに好ましくは-120℃以下である成膜
ガスを用いる。
【0356】
また、成膜時の被形成面の加熱温度(例えば基板加熱温度)を高めることで、被形成面
に到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、被形成面の温
度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。
成膜時の被形成面の温度を高めることで、平板状またはペレット状のスパッタリング粒子
が被形成面に到達した場合、当該被形成面上でマイグレーションが起こり、スパッタリン
グ粒子の平らな面が被形成面に付着する。なお、酸化物の種類によっても異なるが、スパ
ッタリング粒子は、a-b面と平行な面の直径(円相当径)が1nm以上30nm以下、
または1nm以上10nm以下程度となる。なお、平板状またはペレット状のスパッタリ
ング粒子は、六角形の面がa-b面と平行な面である六角柱状であってもよい。その場合
、六角形の面と垂直な方向がc軸方向である。
【0357】
なお、スパッタリング用ターゲットを酸素の陽イオンを用いてスパッタリングすること
で、成膜時のプラズマダメージを軽減することができる。したがって、イオンがスパッタ
リング用ターゲットの表面に衝突した際に、スパッタリング用ターゲットの結晶性が低下
すること、または非晶質化することを抑制できる。
【0358】
また、スパッタリング用ターゲットを酸素またはアルゴンの陽イオンを用いてスパッタ
リングすることで、平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が六角柱状の場合、六
角形状の面における角部に正の電荷を帯電させることができる。六角形状の面の角部に正
の電荷を有することで、一つのスパッタリング粒子において正の電荷同士が反発し合い、
平板状またはペレット状の形状を維持することができる。
【0359】
平板状またはペレット状のスパッタリング粒子の面における角部が、正の電荷を有する
ためには、直流(DC)電源を用いることが好ましい。なお、高周波(RF)電源、交流
(AC)電源を用いることもできる。ただし、RF電源は、大面積の基板へ成膜可能なス
パッタリング装置への適用が困難である。また、以下に示す観点からAC電源よりもDC
電源が好ましいと考えられる。
【0360】
AC電源を用いた場合、隣接するターゲットが互いにカソード電位とアノード電位を繰
り返す。平板状またはペレット状のスパッタリング粒子が、正に帯電している場合、互い
に反発し合うことにより、平板状またはペレット状の形状を維持することができる。ただ
し、AC電源を用いた場合、瞬間的に電界がかからない時間が生じるため、平板状または
ペレット状のスパッタリング粒子に帯電していた電荷が消失して、スパッタリング粒子の
構造が崩れてしまうことがある。したがって、AC電源を用いるよりも、DC電源を用い
る方が好ましいことがわかる。
【0361】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0362】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn系化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0363】
InOX粉末、GaOY粉末、及びZnOZ粉末を所定のmol比で混合し、加圧処理
後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-G
a-Zn系化合物ターゲットとする。なお、当該加圧処理は、冷却(または放冷)しなが
ら行ってもよいし、加熱しながら行ってもよい。なお、X、Y及びZは任意の正数である
。ここで、所定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末及びZnOZ粉末
が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3、3:1:2、1:
3:2、1:6:4、または1:9:6である。なお、粉末の種類、及びその混合するm
ol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0364】
以上のような方法でスパッタリング用ターゲットを使用することで、厚さが均一であり
、結晶の配向の揃った酸化物半導体膜を成膜することができる。
【0365】
<多結晶酸化物半導体>
多結晶酸化物半導体は複数の結晶粒を含む。多結晶酸化物半導体は、例えば、非晶質部
を有している場合がある。
【0366】
多結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができ
る場合がある。多結晶酸化物半導体に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で
、2nm以上300nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下
の粒径であることが多い。また、多結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で
、非晶質部と結晶粒との境界、結晶粒と結晶粒との境界を確認できる場合がある。また、
多結晶酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で、粒界を確認できる場合がある。
【0367】
多結晶酸化物半導体は、例えば、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒において方位
が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体は、例えば、XRD装置を用い、
out-of-plane法による分析を行うと、配向を示す2θが31°近傍のピーク
、または複数種の配向を示すピークが現れる場合がある。また、多結晶酸化物半導体は、
例えば、電子線回折パターンで、スポットが観測される場合がある。
【0368】
多結晶酸化物半導体は、例えば、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場
合がある。従って、多結晶酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、高い電
界効果移動度を有する。ただし、多結晶酸化物半導体は、粒界に不純物が偏析する場合が
ある。また、多結晶酸化物半導体の粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体は、粒界
がキャリア発生源、トラップ準位となる場合があるため、多結晶酸化物半導体をチャネル
領域に用いたトランジスタは、CAAC-OSをチャネル領域に用いたトランジスタと比
べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
【0369】
多結晶酸化物半導体は、高温での加熱処理、またはレーザ光処理によって形成すること
ができる。
【0370】
<微結晶酸化物半導体>
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することが困
難である場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm
以下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10
nm以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocry
stal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline
Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、
TEMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認することが困難である場合がある。
【0371】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きいプローブ径
(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)
を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対
し、結晶部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以
下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポッ
トが観測される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くよ
うに(リング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対し
ナノビーム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合が
ある。
【0372】
図32は、nc-OS膜を有する試料に対し、測定箇所を変えてナノビーム電子線回折
を行った例である。ここでは、試料を、nc-OS膜の被形成面に垂直な方向に切断し、
厚さが10nm以下となるように薄片化する。また、ここでは、プローブ径が1nmの電
子線を、試料の切断面に垂直な方向から入射させる。
図32より、nc-OS膜を有する
試料に対しナノビーム電子線回折を行うと、結晶面を示す回折パターンが得られるが、特
定方向の結晶面への配向性は見られないことがわかった。
【0373】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0374】
従って、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合が
ある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って
、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また
、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラ
ップが多くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、CAAC-
OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジ
スタとなる。ただし、nc-OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成すること
ができるため、CAAC-OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いる
ことができる場合がある。そのため、nc-OS膜を用いたトランジスタを有する半導体
装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
【0375】
<微結晶酸化物半導体膜の作製方法>
次に、微結晶酸化物半導体膜の成膜方法について以下に説明する。微結晶酸化物半導体
膜は、室温以上75℃以下、好ましくは室温以上50℃以下であって、酸素を含む雰囲気
下にて、スパッタリング法によって成膜される。成膜雰囲気を酸素を含む雰囲気とするこ
とで、微結晶酸化物半導体膜中における酸素欠損を低減し、微結晶領域を含む膜とするこ
とができる。
【0376】
微結晶酸化物半導体膜において、酸素欠損を低減することで、物性の安定した膜とする
ことができる。特に、微結晶酸化物半導体膜を適用して半導体装置を作製する場合、微結
晶酸化物半導体膜における酸素欠損はドナーとなり、微結晶酸化物半導体膜中にキャリア
である電子を生成してしまい、半導体装置の電気的特性の変動要因となる。よって、酸素
欠損を低減された微結晶酸化物半導体膜を用いて半導体装置を作製することで、信頼性の
高い半導体装置とすることができる。
【0377】
なお、微結晶酸化物半導体膜において、成膜雰囲気の酸素分圧を高めると、酸素欠損が
より低減されうるため好ましい。より具体的には、成膜雰囲気における酸素分圧を33%
以上とすることが好ましい。
【0378】
なお、スパッタリング法により微結晶酸化物半導体膜を形成する際に用いるターゲット
は、CAAC-OSと同様のターゲット及びその作製方法を用いることができる。
【0379】
また、nc-OSは、比較的不純物が多く含まれていても形成することができるため、
CAAC-OSよりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いることができる場合
がある。例えば、AC電源を用いたスパッタリング法などの成膜方法によってnc-OS
を形成してもよい。AC電源を用いたスパッタリング法は、大型基板へ均一性高く成膜す
ることが可能であるため、nc-OSをチャネル領域に用いたトランジスタを有する半導
体装置は生産性高く作製することができる。
【0380】
<非晶質酸化物半導体>
非晶質酸化物半導体は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶部を有さない。または
、非晶質酸化物半導体は、例えば、石英のような無定形状態を有し、原子配列に規則性が
見られない。
【0381】
非晶質酸化物半導体は、例えば、TEMによる観察像で、結晶部を確認することが困難
である場合がある。
【0382】
非晶質酸化物半導体は、XRD装置を用い、out-of-plane法による分析を
行うと、配向を示すピークが検出されない場合がある。また、非晶質酸化物半導体膜は、
例えば、電子線回折パターンでハローパターンが観測される場合がある。また、非晶質酸
化物半導体膜は、例えば、極微電子線回折パターンでスポットを観測することができず、
ハローパターンが観測される場合がある。
【0383】
非晶質酸化物半導体は、例えば、水素などの不純物を高い濃度で含ませることにより形
成することができる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体は、例えば、不純物を高い
濃度で含む酸化物半導体である。
【0384】
酸化物半導体に不純物が高い濃度で含まれると、酸化物半導体に酸素欠損などの欠陥準
位を形成する場合がある。従って、不純物濃度の高い非晶質酸化物半導体は、欠陥準位密
度が高い。また、非晶質酸化物半導体は、結晶性が低いためCAAC-OSやnc-OS
と比べて欠陥準位密度が高い。
【0385】
従って、非晶質酸化物半導体は、nc-OSと比べて、さらにキャリア密度が高くなる
場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、ノ
ーマリーオンの電気特性になる場合がある。従って、ノーマリーオンの電気特性が求めら
れるトランジスタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体は、欠陥
準位密度が高いため、トラップ準位密度も高くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半
導体をチャネル領域に用いたトランジスタは、CAAC-OSやnc-OSをチャネル領
域に用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタ
となる場合がある。ただし、非晶質酸化物半導体は、比較的不純物が多く含まれる成膜方
法によっても形成することができるため、形成が容易となり、用途によっては好適に用い
ることができる場合がある。例えば、スピンコート法、ゾル-ゲル法、浸漬法、スプレー
法、スクリーン印刷法、コンタクトプリント法、インクジェット印刷法、ロールコート法
、ミストCVD法などの成膜方法によって非晶質酸化物半導体を形成してもよい。従って
、非晶質酸化物半導体をチャネル領域に用いたトランジスタを有する半導体装置は生産性
高く作製することができる。
【0386】
なお、酸化物半導体は、例えば、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体
は、例えば、水素などの結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体は、例えば
、水素などの不純物濃度が低いと密度が高くなる。例えば、単結晶酸化物半導体は、CA
AC-OSよりも密度が高い場合がある。また、例えば、CAAC-OSは、微結晶酸化
物半導体よりも密度が高い場合がある。また、例えば、多結晶酸化物半導体は、微結晶酸
化物半導体よりも密度が高い場合がある。また、例えば、微結晶酸化物半導体は、非晶質
酸化物半導体よりも密度が高い場合がある。
【0387】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用することのできる、ヒューマン
インターフェースについて説明する。特に、被検知体の近接または接触を検知可能なセン
サ(以降、タッチセンサと呼ぶ)の構成例について説明する。
【0388】
タッチセンサとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性方式、赤外線方式、光学
方式など、様々な方式を用いることができる。
【0389】
静電容量方式のタッチセンサとしては、代表的には表面型静電容量方式、投影型静電容
量方式などがある。また、投影型静電容量方式としては、主に駆動方法の違いから、自己
容量方式、相互容量方式などがある。ここで、相互容量方式を用いると、同時に多点を検
出すること(多点検出(マルチタッチ)ともいう)が可能となるため好ましい。
【0390】
ここではタッチセンサについて詳細に説明するが、このほかに、カメラ(赤外線カメラ
を含む)等により、被検知体(例えば指や手など)の動作(ジェスチャ)や、使用者の視
点動作などを検知することのできるセンサを、ヒューマンインターフェースとして用いる
こともできる。
【0391】
<センサの検知方法の例>
図33(A)、(B)は、相互容量方式のタッチセンサの構成を示す模式図と、入出力
波形の模式図である。タッチセンサは一対の電極を備え、これらの間に容量が形成されて
いる。一対の電極のうち一方の電極に入力電圧が入力される。また、他方の電極に流れる
電流(または、他方の電極の電位)を検出する検出回路を備える。
【0392】
例えば
図33(A)に示すように、入力電圧の波形として矩形波を用いた場合、出力電
流波形として鋭いピークを有する波形が検出される。
【0393】
また
図33(B)に示すように、伝導性を有する被検知体が容量に近接または接触した
場合、電極間の電荷容量が減少するため、これに応じて出力の電流値が減少する。
【0394】
このように、入力電圧に対する出力電流(または電位)の変化を用いて、容量の変化を
検出することにより、被検知体の近接、または接触を検知することができる。
【0395】
<タッチセンサの構成例>
図33(C)は、マトリクス状に配置された複数の容量を備えるタッチセンサの構成例
を示す。
【0396】
タッチセンサは、X方向(紙面横方向)に延在する複数の配線と、これら複数の配線と
交差し、Y方向(紙面縦方向)に延在する複数の配線とを有する。交差する2つの配線間
には容量が形成される。
【0397】
また、X方向に延在する配線には、入力電圧または共通電位(接地電位、基準電位を含
む)のいずれか一方が入力される。また、Y方向に延在する配線には、検出回路(例えば
、ソースメータ、センスアンプなど)が電気的に接続され、当該配線に流れる電流(また
は電位)を検出することができる。
【0398】
タッチセンサは、X方向に延在する複数の配線に対して順に入力電圧が入力されるよう
に走査し、Y方向に延在する配線に流れる電流(または電位)の変化を検出することで、
被検知体の2次元的なセンシングが可能となる。
【0399】
<タッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部とタッチセンサを備えるタッチパネルの構成例と
、該タッチパネルを電子機器に組み込む場合の例について説明する。
【0400】
図34(A)は、タッチパネルを備える電子機器の断面概略図である。
【0401】
電子機器3530は、筐体3531と、該筐体3531内に少なくともタッチパネル3
532、バッテリ3533、制御部3534を有する。またタッチパネル3532は制御
部3534と配線3535を介して電気的に接続される。制御部3534により表示部へ
の画像の表示やタッチセンサのセンシングの動作が制御される。またバッテリ3533は
制御部3534と配線3536を介して電気的に接続され、制御部3534に電力を供給
することができる。
【0402】
タッチパネル3532はその表示面側が筐体3531よりも外側に露出するように設け
られる。タッチパネル3532の露出した面に画像を表示すると共に、接触または近接す
る被検知体を検知することができる。
【0403】
図34(B)乃至(D)に、タッチパネルの構成例を示す。
【0404】
図34(B)に示すタッチパネル3532は、第1の基板3541と第2の基板354
3の間に表示部3542を備える表示パネル3540と、タッチセンサ3544を備える
第3の基板3545と、保護基板3546と、を備える。
【0405】
表示パネル3540としては、液晶素子が適用された液晶表示装置や、電子ペーパ等、
様々な表示装置を適用できる。なおタッチパネル3532は、表示パネル3540の構成
に応じて、バックライトや偏光板等を別途備えていてもよい。
【0406】
保護基板3546の一方の面に被検知体が接触または近接するため、少なくともその表
面は、機械的強度が高められていることが好ましい。例えばイオン交換法や風冷強化法等
により物理的、または化学的な処理が施され、その表面に圧縮応力を加えた強化ガラスを
保護基板3546に用いることができる。または、表面がコーティングされたプラスチッ
ク等の可撓性基板を用いることもできる。なお、保護基板3546上に保護フィルムや光
学フィルムを設けてもよい。
【0407】
タッチセンサ3544は、第3の基板3545の少なくとも一方の面に設けられる。ま
たは、タッチセンサ3544を構成する一対の電極を第3の基板3545の両面に形成し
てもよい。また、タッチパネルの薄型化のため、第3の基板3545として可撓性のフィ
ルムを用いてもよい。また、タッチセンサ3544は、一対の基板(フィルムを含む)に
挟持された構成としてもよい。
【0408】
図34(B)では、保護基板3546とタッチセンサ3544を備える第3の基板とが
接着層3547で接着されている構成を示しているが、必ずしもこれらは接着されていな
くてもよい。また、第3の基板3545と表示パネル3540とを接着層により接着する
構成としてもよい。
【0409】
図34(B)に示すタッチパネル3532は、表示パネルと、タッチセンサを備える基
板とが独立して設けられている。このような構成を有するタッチパネルを外付け型のタッ
チパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチセンサを備
える基板とをそれぞれ別途作製し、これらを重ねることで表示パネルにタッチセンサの機
能を付加することができるため、特別な作製工程を経ることなく容易にタッチパネルを作
製することができる。
【0410】
図34(C)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が第2の基板35
43の保護基板3546側の面に設けられている。このような構成を有するタッチパネル
をオンセル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板
の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。
【0411】
図34(D)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が保護基板354
6の一方の面に設けられている。このような構成とすることにより、表示パネルとタッチ
センサをそれぞれ別途作製することができるため、容易にタッチパネルを作製することが
できる。さらに、必要な基板の枚数を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化
を実現できる。
【0412】
図34(E)に示すタッチパネル3532は、タッチセンサ3544が表示パネル35
40の一対の基板の内側に設けられている。このような構成を有するタッチパネルをイン
セル型のタッチパネルとも呼べる。このような構成とすることにより、必要な基板の枚数
を低減できるため、タッチパネルの薄型化及び軽量化を実現できる。このようなタッチパ
ネルは、例えば、表示部3542が備えるトランジスタや配線、電極などにより第1の基
板3541上または第2の基板3543上にタッチセンサとして機能する回路を作り込む
ことにより実現できる。また、光学式のタッチセンサを用いる場合には、光電変換素子を
備える構成としてもよい。
【0413】
<インセル型のタッチパネルの構成例>
以下では、複数の画素を有する表示部にタッチセンサを組み込んだタッチパネルの構成
例について説明する。ここでは、画素に設けられる表示素子として、液晶素子を適用した
例を示す。
【0414】
図35(A)は、本構成例で例示するタッチパネルの表示部に設けられる画素回路の一
部における等価回路図である。
【0415】
一つの画素は少なくともトランジスタ3503と液晶素子3504を有する。またトラ
ンジスタ3503のゲートに配線3501が、ソースまたはドレインの一方には配線35
02が、それぞれ電気的に接続されている。
【0416】
画素回路は、X方向に延在する複数の配線(例えば、配線3510_1、配線3510
_2)と、Y方向に延在する複数の配線(例えば、配線3511)を有し、これらは互い
に交差して設けられ、その間に容量が形成される。
【0417】
また、画素回路に設けられる画素のうち、一部の隣接する複数の画素は、それぞれに設
けられる液晶素子の一方の電極が電気的に接続され、一つのブロックを形成する。当該ブ
ロックは、島状のブロック(例えば、ブロック3515_1、ブロック3515_2)と
、Y方向に延在するライン状のブロック(例えば、ブロック3516)の、2種類に分類
される。なお、
図35では、画素回路の一部のみを示しているが、実際にはこれら2種類
のブロックがX方向及びY方向に繰り返し配置される。
【0418】
X方向に延在する配線3510_1(または3510_2)は、島状のブロック351
5_1(またはブロック3515_2)と電気的に接続される。なお、図示しないが、X
方向に延在する配線3510_1は、ライン状のブロックを介してX方向に沿って不連続
に配置される複数の島状のブロック3515_1を電気的に接続する。また、Y方向に延
在する配線3511は、ライン状のブロック3516と電気的に接続される。
【0419】
図35(B)は、X方向に延在する複数の配線3510と、Y方向に延在する複数の配
線3511の接続構成を示した等価回路図である。X方向に延在する配線3510の各々
には、入力電圧または共通電位を入力することができる。また、Y方向に延在する配線3
511の各々には接地電位を入力する、または配線3511と検出回路と電気的に接続す
ることができる。
【0420】
<タッチパネルの動作例>
以下、
図36を用いて、上述したタッチパネルの動作について説明する。
【0421】
図36(A)に示すように1フレーム期間を、書き込み期間と検知期間とに分ける。書
き込み期間は画素への画像データの書き込みを行う期間であり、配線3510(ゲート線
ともいう)が順次選択される。一方、検知期間は、タッチセンサによるセンシングを行う
期間であり、X方向に延在する配線3510が順次選択され、入力電圧が入力される。
【0422】
図36(B)は、書き込み期間における等価回路図である。書き込み期間では、X方向
に延在する配線3510と、Y方向に延在する配線3511の両方に、共通電位が入力さ
れる。
【0423】
図36(C)は、検知期間のある時点における等価回路図である。検知期間では、Y方
向に延在する配線3511の各々は、検出回路と電気的に接続する。また、X方向に延在
する配線3510のうち、選択されたものには入力電圧が入力され、それ以外のものには
共通電位が入力される。
【0424】
このように、画像の書き込み期間とタッチセンサによるセンシングを行う期間とを、独
立して設けることが好ましい。これにより、画素の書き込み時のノイズに起因するタッチ
センサの感度の低下を抑制することができる。
【0425】
(実施の形態7)
本実施の形態では、表示装置の消費電力を低減するための駆動方法について説明する。
本実施の形態の駆動方法により、画素に酸化物半導体トランジスタを適用した表示装置の
更なる低消費電力化を図ることができる。以下、
図37及び
図38を用いて、表示装置の
一例である液晶表示装置の低消費電力化について説明する。
【0426】
図37は、本実施の形態の液晶表示装置の構成例を示すブロック図である。
図37に示
すように、液晶表示装置500は、表示モジュールとして液晶パネル501を有し、更に
、制御回路510及びカウンタ回路を有する。
【0427】
液晶表示装置500には、デジタルデータである画像信号(Video)、及び液晶パ
ネル501の画面の書き換えを制御するための同期信号(SYNC)が入力される。同期
信号としては、例えば水平同期信号(Hsync)、垂直同期信号(Vsync)、及び
基準クロック信号(CLK)等がある。
【0428】
液晶パネル501は、表示部530、走査線駆動回路540、及びデータ線駆動回路5
50を有する。表示部530は、複数の画素531を有する。同じ行の画素531は、共
通の走査線541により走査線駆動回路540に接続され、同じ列の画素531は共通の
データ線551によりデータ線駆動回路550に接続されている。
【0429】
液晶パネル501には、コモン電圧(Vcom)、並びに電源電圧として高電源電圧(
VDD)及び低電源電圧(VSS)が供給される。コモン電圧(Vcom)は、表示部5
30の各画素531に供給される。
【0430】
データ線駆動回路550は、入力された画像信号を処理し、データ信号を生成し、デー
タ線551にデータ信号を出力する。走査線駆動回路540は、データ信号が書き込まれ
る画素531を選択する走査信号を走査線541に出力する。
【0431】
画素531は、走査信号により、データ線551との電気的接続が制御されるスイッチ
ング素子を有する。スイッチング素子がオンとなると、データ線551から画素531に
データ信号が書き込まれる。
【0432】
Vcomが印加される電極が共通電極に相当する。
【0433】
制御回路510は、液晶表示装置500全体を制御する回路であり、液晶表示装置50
0を構成する回路の制御信号を生成する回路を備える。
【0434】
制御回路510は、同期信号(SYNC)から、走査線駆動回路540及びデータ線駆
動回路550の制御信号を生成する制御信号生成回路を有する。走査線駆動回路540の
制御信号として、スタートパルス(GSP)、クロック信号(GCLK)等があり、デー
タ線駆動回路550の制御信号として、スタートパルス(SSP)、クロック信号(SC
LK)等がある。例えば、制御回路510は、クロック信号(GCLK、SCLK)とし
て、周期が同じで位相がシフトされた複数のクロック信号を生成する。
【0435】
また、制御回路510は、液晶表示装置500外部から入力される画像信号(Vide
o)のデータ線駆動回路550への出力を制御する。
【0436】
データ線駆動回路550は、デジタル/アナログ変換回路(以下、D-A変換回路55
2と呼ぶ。)を有する。D-A変換回路552は、画像信号をアナログ変換し、データ信
号を生成する。
【0437】
なお、液晶表示装置500に入力される画像信号がアナログ信号である場合は、制御回
路510でデジタル信号に変換し、液晶パネル501へ出力する。
【0438】
画像信号は、フレーム毎の画像データでなる。制御回路510は、画像信号を画像処理
し、その処理で得られた情報を元に、データ線駆動回路550への画像信号の出力を制御
する機能を有する。そのため、制御回路510は、フレーム毎の画像データから動きを検
出する動き検出部511を備える。動き検出部511おいて、動きが無いと判定されると
、制御回路510はデータ線駆動回路550への画像信号の出力を停止し、また動きが有
ると判定すると画像信号の出力を再開する。
【0439】
動き検出部511で行う動き検出のための画像処理としては、特段の制約は無い。例え
ば、動き検出方法としては、例えば、連続する2つフレーム間の画像データから差分デー
タを得る方法がある。得られた差分データから動きの有無を判断することができる。また
、動きベクトルを検出する方法等もある。
【0440】
また、液晶表示装置500は、入力された画像信号を補正する画像信号補正回路を設け
ることができる。例えば、画像信号の階調に対応する電圧よりも高い電圧が画素531に
書き込まれるように、画像信号を補正する。このような補正を行うことで液晶素子の応答
時間を短くすることができる。このように画像信号を補正処理して制御回路510を駆動
する方法は、オーバードライブ駆動と呼ばれている。また、画像信号のフレーム周波数の
整数倍で液晶表示装置500を駆動する倍速駆動を行う場合には、制御回路510で2つ
のフレーム間を補間する画像データを作製する、或いは2つのフレーム間で黒表示を行う
ための画像データを生成すればよい。
【0441】
以下、
図38に示すタイミングチャートを用いて、動画像のように動きのある画像と、
静止画のように動きの無い画像を表示するための液晶表示装置500の動作を説明する。
図38には、垂直同期信号(Vsync)、及びデータ線駆動回路550からデータ線5
51に出力されるデータ信号(Vdata)の信号波形を示す。
【0442】
図38は、3mフレーム期間の液晶表示装置500のタイミングチャートである。ここ
では、はじめのkフレーム期間及び終わりのjフレーム期間の画像データには動きがあり
、その他のフレーム期間の画像データには動きが無いとする。なお、k、jはそれぞれ1
以上m-2以下の整数である。
【0443】
最初のkフレーム期間は、動き検出部511において、各フレームの画像データに動き
があると判定される。制御回路510では、動き検出部511の判定結果に基づき、デー
タ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。
【0444】
そして、動き検出部511では、動き検出のための画像処理を行い、第k+1フレーム
の画像データに動きが無いと判定すると、制御回路510では、動き検出部511の判定
結果に基づき、第k+1フレーム期間に、データ線駆動回路550への画像信号(Vid
eo)の出力を停止する。よって、データ線駆動回路550からデータ線551へのデー
タ信号(Vdata)の出力が停止される。さらに、表示部530の書換えを停止するた
め、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号(スタートパルス信
号、クロック信号等)の供給を停止する。そして、制御回路510では、動き検出部51
1で、画像データに動きがあるとの判定結果が得られるまで、データ線駆動回路550へ
の画像信号の出力、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550への制御信号の出
力を停止し、表示部530の書換えを停止する。
【0445】
なお、本明細書において、液晶パネルに信号を「供給しない」とは、当該信号を供給す
る配線へ回路を動作させるための所定の電圧とは異なる電圧を印加すること、または当該
配線を電気的に浮遊状態にすることを指すこととする。
【0446】
表示部530の書換えを停止すると、液晶素子に同じ方向の電界が印加され続けること
になり、液晶素子の液晶が劣化するおそれがある。このような問題が顕在化する場合は、
動き検出部511の判定結果に関わらず、所定のタイミングで、制御回路510から走査
線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ信号を供給し、極性を反転させたデータ
信号をデータ線551に書き込み、液晶素子に印加される電界の向きを反転させるとよい
。
【0447】
なお、データ線551に入力されるデータ信号の極性はVcomを基準に決定される。
その極性は、データ信号の電圧がVcomより高い場合は正の極性であり、低い場合は負
の極性である。
【0448】
具体的には、
図38に示すように、第m+1フレーム期間になると、制御回路510は
、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550へ制御信号を出力し、データ線駆動
回路550へ画像信号Videoを出力する。データ線駆動回路550は、第kフレーム
期間においてデータ線551に出力されたデータ信号(Vdata)に対して極性が反転
したデータ信号(Vdata)をデータ線551に出力する。よって、画像データに動き
が検出されない期間である第m+1フレーム期間、及び第2m+1フレーム期間に、極性
が反転されたデータ信号(Vdata)がデータ線551に書き込まれる。画像データに
変化が無い期間は、表示部530の書換えが間欠的に行われるため、書換えによる電力消
費を削減しつつ、液晶素子の劣化を防止することができる。
【0449】
そして、動き検出部511において、第2m+1フレーム以降の画像データに動きがあ
ると判定すると、制御回路510は、走査線駆動回路540及びデータ線駆動回路550
を制御し、表示部530の書換えを行う。
【0450】
以上述べたように、
図38の駆動方法によると、画像データ(Video)の動きの有
無に関わらず、データ信号(Vdata)は、mフレーム期間毎に極性が反転される。他
方、表示部530の書換えについては、動きを含む画像の表示期間は、1フレーム毎に表
示部530が書き換えられ、動きがない画像の表示期間は、mフレーム毎に表示部530
が書き換えられることになる。その結果、表示部の書換えに伴う電力消費を削減すること
ができる。よって、駆動周波数及び画素数の増加による電力消費の増加の抑えることがで
きる。
【0451】
上述したように、液晶表示装置500では、動画を表示するモードと、静止画を表示す
るモードで、液晶表示装置の駆動方法を異ならせることで、液晶の劣化を抑制して表示品
位を維持しつつ、省電力な液晶表示装置を提供することが可能になる。
【0452】
また、静止画を表示する場合、1フレーム毎に画素を書換えると、人の目は画素の書換
えをちらつきとして感じることがあり、それが疲れ目の原因となる。本実施の形態の液晶
表示装置は、静止画の表示期間では画素の書換え頻度が少ないので、疲れ目の軽減に有効
である。
【0453】
従って、酸化物半導体トランジスタでバックプレーンを形成した液晶パネルを用いるこ
とで、携帯用電子機器に非常に適した、高精細、低消費電力の中小型液晶表示装置を提供
することが可能である。
【0454】
なお、液晶の劣化を防ぐため、データ信号の極性反転の間隔(ここでは、mフレーム期
間)は2秒以下とし、好ましくは1秒以下とするとよい。
【0455】
また、画像データの動き検出を制御回路510の動き検出部511で行ったが、動き検
出は動き検出部511のみで行う必要は無い。動きの有無のデータを液晶表示装置500
の外部から制御回路510へ入力するようにしてもよい。
【0456】
また、画像データに動きが無いと判定する条件は連続する2つのフレーム間の画像デー
タによるものではなく、判定に必要なフレーム数は、液晶表示装置500の使用形態によ
り、適宜決定することができる。例えば、連続するmフレームの画像データに動きが無い
場合に、表示部530の書換えを停止させてもよい。
【0457】
なお、本実施の形態では、表示装置として、液晶表示装置を用いて説明したが、本実施
の形態の駆動方法を他の表示装置、例えば発光表示装置等に用いることができる。
【0458】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態及び実施例に示す構成
及び方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0459】
(実施の形態8)
本発明の一態様である半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む。)に適用す
ることができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受
信機ともいう。)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメ
ラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装
置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子
機器の一例を
図39に示す。
【0460】
図39(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は
、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示
することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を
示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0461】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能で
ある。それゆえ、表示部9003の表示品位を高くすることができる。
【0462】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003
に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力する
ことができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、
画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。
【0463】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して
垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、
大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブル
に表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0464】
図39(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100
は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表
示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持し
た構成を示している。
【0465】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリ
モコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キ
ー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示さ
れる映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作
機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0466】
図39(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。
テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、
さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一
方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など
)の情報通信を行うことも可能である。
【0467】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いるこ
とが可能である。それゆえ、テレビジョン装置の表示品位を向上させることができる。
【0468】
図39(C)はコンピュータ9200であり、本体9201、筐体9202、表示部9
203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス920
6などを含む。
【0469】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能で
ある。それゆえ、コンピュータ9200の表示品位を向上させることができる。
【0470】
表示部9203は、タッチ入力機能を有しており、コンピュータ9200の表示部92
03に表示された表示ボタンを指などで触れることで、画面操作や、情報を入力すること
ができ、また他の家電製品との通信を可能とする、または制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、イメージセ
ンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9203にタッチ入力機能を持たせるこ
とができる。
【0471】
図40(A)及び
図40(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図40(A
)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示
部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モ
ード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0472】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631b
に用いることが可能である。それゆえ、タブレット端末の表示品位を向上させることがで
きる。
【0473】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部96
31aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領
域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部96
31aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9
631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表
示画面として用いることができる。
【0474】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0475】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0476】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示または横表示などの表示の向き
を切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替え
スイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外
光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光セ
ンサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置
を内蔵させてもよい。
【0477】
また、
図40(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0478】
図40(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、充放電制御回路9634を有する。なお、
図40(B)では充放電制御回路96
34の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成につい
て示している。
【0479】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態
にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、
耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0480】
また、この他にも
図40(A)及び
図40(B)に示したタブレット型端末は、様々な
情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付または時刻
などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作または編集するタ
ッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有
することができる。
【0481】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は
、筐体9630の片面または両面に設けることができ、効率的なバッテリー9635の充
電を行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リ
チウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0482】
また、
図40(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図40(
C)にブロック図を示し説明する。
図40(C)には、太陽電池9633、バッテリー9
635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3
、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ963
6、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図40(B)に示す充放電制御
回路9634に対応する箇所となる。
【0483】
まず、外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明す
る。太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようD
CDCコンバータ9636で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部9631の動作
に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバー
タ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表
示部9631での表示を行わない際には、スイッチSW1をオフにし、スイッチSW2を
オンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0484】
なお、太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず
、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による
バッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を
送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う
構成としてもよい。
【0485】
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【実施例1】
【0486】
本実施例では、実施の形態1を用いて、液晶表示装置を作製した。作製した液晶表示装
置の構造及び液晶分子の配向評価について説明する。
【0487】
はじめに、試料1の作製工程について説明する。本実施例では
図4乃至
図7に示される
画素部(C-D)を用いて説明する。
【0488】
まず、
図4(A)に示すように、基板302としてガラス基板を用い、基板302上に
導電膜304cを形成した。
【0489】
スパッタリング法で厚さ200nmのタングステン膜を形成し、第1のフォトリソグラ
フィ工程により該タングステン膜上にマスクを形成し、該マスクを用いて該タングステン
膜の一部をドライエッチング法を用いてエッチングし、導電膜304cを形成した。
【0490】
次に、導電膜304c上に、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305及び絶縁膜30
6を形成した。
【0491】
絶縁膜305として、厚さ50nmの第1の窒化シリコン膜、厚さ300nmの第2の
窒化シリコン膜、厚さ50nmの第3の窒化シリコン膜をプラズマCVD法により積層し
て形成した。
【0492】
絶縁膜306として、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により形
成した。
【0493】
次に、
図4(B)に示すように、絶縁膜306上に酸化物半導体膜307を形成した。
【0494】
酸化物半導体膜307として、厚さ35nmのIn-Ga-Zn酸化物膜をスパッタリ
ング法により成膜した。なお、In-Ga-Zn酸化物膜を形成するために用いたターゲ
ットの組成は、In:Ga:Zn=1:1:1であった。
【0495】
次に、第2のフォトリソグラフィ工程により酸化物半導体膜307上にマスクを形成し
、該マスクを用いて酸化物半導体膜307の一部をウエットエッチング法を用いてエッチ
ングし、
図4(C)に示すように、酸化物半導体膜308b、308dを形成した。
【0496】
次に、
図5(A)に示すように、絶縁膜306及び酸化物半導体膜308b上に導電膜
309を形成した。
【0497】
導電膜309として、厚さ50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム
膜、及び厚さ200nmのチタン膜を、スパッタリング法により積層して形成した。
【0498】
次に、第3のフォトリソグラフィ工程により導電膜309上にマスクを形成し、該マス
クを用いて導電膜309の一部をドライエッチング法を用いてエッチングし、
図5(B)
に示すように、導電膜310d、310eを形成した。
【0499】
次に、
図5(C)に示すように、絶縁膜306、酸化物半導体膜308b、308d、
導電膜310d、310e上に絶縁膜311a及び絶縁膜311bを形成した。
【0500】
絶縁膜311aとして、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により
形成した。なお、絶縁膜311aは酸素を透過する絶縁膜である。
【0501】
絶縁膜311bとして、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法によ
り形成した。なお、絶縁膜311bは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を
含み、加熱により酸素の一部が脱離する絶縁膜である。
【0502】
次に、第4のフォトリソグラフィ工程により絶縁膜311b上にマスクを形成し、該マ
スクを用いて絶縁膜311a、絶縁膜311bの一部をドライエッチング法を用いてエッ
チングし、
図6(A)に示すように、開口部362を有する絶縁膜312を形成した。
【0503】
次に、加熱処理を行い、絶縁膜312から水、窒素、水素等を脱離させると共に、絶縁
膜312に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜308bへ供給した。ここでは、窒素及
び酸素雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行った。
【0504】
次に、
図6(B)に示すように、絶縁膜312及び酸化物半導体膜308d上に絶縁膜
313を形成した。
【0505】
絶縁膜313として、厚さ100nmの酸化窒化シリコン膜をプラズマCVD法により
形成した後、厚さ200nmの酸化シリコン膜を有機シランガスを用いたプラズマCVD
法により積層して形成した。
【0506】
次に、第5のフォトリソグラフィ工程により絶縁膜313上にマスクを形成し、該マス
クを用いて、絶縁膜312、絶縁膜313の一部をドライエッチング法を用いてエッチン
グし、
図6(C)に示すように、開口部364cを形成した。
【0507】
次に、
図7(A)に示すように、導電膜315を形成した。
【0508】
導電膜315として、厚さ100nmの酸化シリコンを含むITO膜をスパッタリング
法により形成した。この後、窒素雰囲気で、250℃、1時間の加熱処理を行った。
【0509】
次に、第6のフォトリソグラフィ工程により導電膜315上にマスクを形成し、該マス
クを用いて、導電膜315の一部をウエットエッチング法を用いてエッチングし、
図7(
B)に示すように、導電膜316bを形成した。
【0510】
次に、
図7(C)に示すように、絶縁膜314及び導電膜316b上に平坦化膜317
を形成した。
【0511】
組成物を絶縁膜314及び導電膜316b上に塗布し焼成して、厚さ400nmのアク
リル樹脂膜を平坦化膜317として形成した。
【0512】
次に、平坦化膜317上に配向膜318(
図3参照)を形成した。
【0513】
以上の工程により、基板302上に素子部を作製した。また、当該試料を試料1とする
。
【0514】
また、試料1において、平坦化膜を形成しない素子部を作製した。当該試料を試料2と
する。
【0515】
試料1及び試料2を走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Trans
mission Electron Microscopy)で観察した結果を
図41に
示す。
【0516】
図41(A)は、試料2において、絶縁膜312の開口部近傍の断面を観察したSTE
M像である。
図41(B)は、試料1において、絶縁膜312の開口部近傍の断面を観察
したSTEM像である。
【0517】
図41(B)より、平坦化膜317は、透光性を有する導電膜316bの凹部において
、厚さが絶縁膜312の厚さより厚い。即ち、平坦化膜317は透光性を有する導電膜3
16bの凹部に充填されていることがわかる。また、絶縁膜312上の透光性を有する導
電膜316b上にも平坦化膜317が形成されており、平坦化膜317上に形成された配
向膜318の凹凸が少ないことが分かる。
【0518】
一方、
図41(A)より、平坦化膜317が形成されていない試料2においては、配向
膜318には段差が形成されている。さらには、透光性を有する導電膜316bにおいて
、凹部では、配向膜318の膜厚が厚く、絶縁膜312上の透光性を有する導電膜316
b上では配向膜318の膜厚が薄い。即ち、配向膜318の膜厚の均一性が低いことが分
かる。
【0519】
次に、実施の形態1と同様に、遮光膜344、有色膜346、絶縁膜348、導電膜3
50、及び配向膜352が形成された基板342を形成した。次に、基板342上にシー
ル材を設けた後、基板342及びシール材の間に、液晶材料をディスペンサ法により滴下
した。次に、シール材を用いて、基板302及び基板342を固着させ、液晶表示装置を
作製した。
【0520】
ここでは、試料1を用いて作製した液晶表示装置を試料3とする。また、試料2を用い
て作製した液晶表示装置を試料4とする。
【0521】
次に、試料3及び試料4の液晶分子の配向を評価した。ここでは、偏光顕微鏡を用いて
画素部を観察した。
図42(A)は、試料4において、バックライトの透過率を100%
としたときの画素部の観察像であり、
図42(B)は、試料3において、バックライトの
透過率を100%としたときの画素部の観察像である。また、
図42(C)は、試料4に
おいて、バックライトの透過率を0%としたときの画素部の観察像であり、
図42(D)
は、試料3において、バックライトの透過率を0%としたときの画素部の観察像である。
【0522】
図42(A)において、ディスクリネーションが原因の線欠陥401が観察されるが、
図42(B)において、表示不良が観察されない。また、
図42(C)においては、光漏
れ403が観察されるが、
図42(D)においては、表示不良が観察されない。以上のこ
とから、透光性を有する導電膜の凹部を平坦化膜で充填することで、液晶表示装置の表示
不良を低減できることがわかる。
【0523】
ここで、平坦化膜の膜厚と、液晶表示装置の駆動電圧との関係を計算した結果を
図43
に示す。
【0524】
図43(A)は計算に用いたモデル図である。基板410上に、厚さ500nmの絶縁
膜411を設けた。なお、絶縁膜411は複数設けられており、絶縁膜411の間隔を1
0μmとした。また、基板410及び絶縁膜411上に、厚さ100nmの画素電極41
3を設けた。また、画素電極413上に、画素電極413の凹部を充填するように、平坦
化膜415を設けた。平坦化膜415はアクリル樹脂を用いた。また、基板420上に厚
さ100nmの画素電極419を設けた。また、平坦化膜415及び画素電極419の間
に液晶層417を設けた。画素電極413と画素電極419の間隔(セルギャップ)を4
μmとした。
【0525】
ここで、平坦化膜415において、絶縁膜411上に設けられる平坦化膜415の厚さ
tを変化させて、液晶表示装置の駆動電圧を計算した結果を
図43(B)に示す。ここで
は、厚さtを0nm、100nm、400nm、700nm、900nmとして計算を行
った。また、比較例として、平坦化膜415を設けない液晶表示装置の駆動電圧を計算し
た。駆動電圧と透過率の関係を
図43(B)に示す。
図43(B)において、横軸は、液
晶表示装置の駆動電圧を表し、縦軸は規格化された透過率を表す。
【0526】
図43(B)より、画素電極上に平坦化膜を設けると、駆動電圧が上昇する。また、平
坦化膜の膜厚が厚くなるに従って、駆動電圧が上昇する。しかしながら、画素電極上に平
坦化膜を設けても、画素電極上に平坦化膜を設けない場合と同等の電圧であるため、画素
電極上に平坦化膜を設けることができる。
【実施例2】
【0527】
本実施例では、実施の形態2を用いて、液晶表示装置を作製した。作製した液晶表示装
置の構造及び液晶分子の配向評価について説明する。
【0528】
はじめに、試料5の作製工程について説明する。本実施例では
図4乃至
図5、及び
図2
4に示される画素部(C-D)を用いて説明する。なお、試料1と同様の作製工程は説明
の詳細を省略する。
【0529】
実施例1と同様に、
図4乃至
図5(C)の工程を経て、基板302上に、ゲート電極と
して機能する導電膜304c、ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜305及び絶縁膜30
6、酸化物半導体膜308b、308d、導電膜310d、310e、絶縁膜311を形
成した。なお、当該工程において、第1のパターニング乃至第3のパターニングを行い、
それぞれ導電膜304c、酸化物半導体膜308b、308d、導電膜310d、310
eを形成している。
【0530】
次に、
図24(A)に示すように、絶縁膜311上の所望の領域に第4のパターニング
によりマスク330を形成した。
【0531】
次に、加熱処理を行うことで、
図24(B)に示すように、マスク330の側面と絶縁
膜311の表面のなす角度が縮小し、且つ側面が湾曲したマスク332を形成した。
【0532】
ここでは、窒素雰囲気で170℃、15分の加熱処理を行って、マスク332を形成し
た。
【0533】
次に、マスク332を用いて絶縁膜311をドライエッチング法を用いてエッチングし
、
図24(C)に示すように開口部362を有する絶縁膜312を形成した。
【0534】
次に、
図7(A)に示すように、実施例1と同様に、導電膜315を形成した。
【0535】
次に、第6のフォトリソグラフィ工程により導電膜315上にマスクを形成し、該マス
クを用いて、導電膜315の一部をウエットエッチング法を用いてエッチングし、
図7(
B)に示すように、導電膜316bを形成した。
【0536】
次に、導電膜316b上に配向膜318(
図3参照)を形成した。
【0537】
以上の工程により、基板302上に素子部を作製した。また、当該試料を試料5とする
。
【0538】
また、試料5において、
図24(B)に示すマスク332を形成する加熱処理を行わず
、マスク330を用いて絶縁膜311をエッチングして、開口部362を有する絶縁膜3
12を形成した素子部を作製した。当該試料を試料6とする。
【0539】
試料5及び試料6の表面を走査電子顕微鏡(SEM;scanning electr
on microscope)で観察した結果を
図44に示す。
【0540】
図44(A)は、試料6の表面を配向膜318側から観察したSEM像である。また、
図44(A)において、破線Aで囲まれる領域を高倍率で観察したSEM像を
図44(B
)に示し、破線Bで囲まれる領域を高倍率で観察したSEM像を
図44(C)に示す。
【0541】
また、試料5において、
図44(B)及び
図44(C)と同様の領域を高倍率で観察し
たSEM像をそれぞれ
図44(D)及び
図44(E)に示す。
【0542】
なお、
図44(A)は倍率を1000倍としたSEM像であり、
図44(B)乃至
図4
4(E)は倍率を10000倍としたSEM像である。
【0543】
図44(B)及び
図44(C)と比較して、
図44(D)及び
図44(E)に示す開口
部362の端部のテーパ角度が小さいことが分かる。
【0544】
次に、試料5及び試料6の絶縁膜312において、透光性を有する導電膜308cと、
絶縁膜312の側面のテーパ角を観察するため、試料5及び試料6それぞれの断面を観察
した結果を
図45に示す。
図45は倍率を40000倍としたSTEM像である。
【0545】
図45(A)は、試料6において、絶縁膜312の開口部近傍の断面を観察したSTE
M像である。
図45(B)は、試料5において、絶縁膜312の開口部近傍の断面を観察
したSTEM像である。
【0546】
図45(B)より、試料5において、透光性を有する導電膜308cの表面と、絶縁膜
312の側面とがなすテーパ角は16°である。一方、
図45(A)より、試料6におい
て、透光性を有する導電膜308cの表面と、絶縁膜312の側面とがなすテーパ角は段
階的であり、透光性を有する導電膜308c側ではテーパ角が45°であり、絶縁膜31
4側ではテーパ角が85°である。
【0547】
以上のことから、実施の形態2を用いて開口部362を有する絶縁膜312を形成する
ことで、絶縁膜312上に形成される透光性を有する導電膜316bの凹凸を低減するこ
とが可能である。
【0548】
次に、実施の形態1と同様に、遮光膜344、有色膜346、絶縁膜348、導電膜3
50、及び配向膜352が形成された基板342を形成した。次に、基板342上にシー
ル材を設けた後、基板342及びシール材の間に、液晶材料をディスペンサ法により滴下
した。次に、シール材を用いて、基板302及び基板342を固着させ、液晶表示装置を
作製した。
【0549】
ここでは、試料5を用いて作製した液晶表示装置を試料7とする。また、試料6を用い
て作製した液晶表示装置を試料8とする。
【0550】
次に、試料7及び試料8の液晶分子の配向を評価した。ここでは、偏光顕微鏡を用いて
画素部を観察した。
図46(A)は、試料8において、バックライトの透過率を100%
としたときの画素部の観察像であり、
図46(B)は、試料7において、バックライトの
透過率を100%としたときの画素部の観察像である。また、
図46(C)は、試料8に
おいて、バックライトの透過率を0%としたときの画素部の観察像であり、
図46(D)
は、試料7において、バックライトの透過率を0%としたときの画素部の観察像である。
【0551】
図46(A)において、ディスクリネーションが原因の線欠陥431が観察される。ま
た、
図46(B)において、ディスクリネーションが原因の欠陥433が観察される。し
かしながら、
図46(B)に示す欠陥433の方が小さい欠陥である。また、
図46(C
)においては、光漏れ403が観察されるが、
図46(D)においては、表示不良が観察
されない。以上のことから、開口部を有する絶縁膜のテーパ角を小さくすることで、液晶
表示装置の表示不良を低減できることがわかる。
【実施例3】
【0552】
本実施例では、酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗について、
図47及び
図48を用い
て説明する。
【0553】
はじめに、試料の構造について
図47を用いて説明する。
【0554】
図47(A)は、試料9乃至試料12の上面図であり、一点破線A1-A2の断面図を
図47(B)、(C)、(D)に示す。なお、試料9至試料12は、上面図が同一であり
、断面の積層構造が異なるため、断面図が異なる。試料9の断面図を
図47(B)に、試
料10の断面図を
図47(C)に、試料11及び試料12の断面図を
図47(D)に、そ
れぞれ示す。
【0555】
試料9は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に絶
縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。ま
た、酸化物半導体膜1905の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が覆
い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1910、1911
が覆う。なお、絶縁膜1910、1911には、開口部1913、1915が設けられて
おり、それぞれ当該開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0556】
試料10は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜1903上に
絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に酸化物半導体膜1905が形成される。
また、酸化物半導体膜1905の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が
覆い、酸化物半導体膜1905及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。
なお、絶縁膜1911には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該
開口部において、導電膜1907、1909が露出している。
【0557】
試料11及び試料12は、ガラス基板1901上に絶縁膜1903が形成され、絶縁膜
1903上に絶縁膜1904が形成され、絶縁膜1904上に多層膜1906が形成され
る。また、多層膜1906の両端を電極として機能する導電膜1907、1909が覆い
、多層膜1906及び導電膜1907、1909を絶縁膜1911が覆う。なお、絶縁膜
1911には、開口部1917、1919が設けられており、それぞれ当該開口部におい
て、導電膜1907、1909が露出している。
【0558】
このように、試料9乃至試料12は、酸化物半導体膜1905、または多層膜1906
上に接する絶縁膜の構造が異なる。試料9は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1910
が接しており、試料10は、酸化物半導体膜1905と絶縁膜1911が接しており、試
料11及び試料12は、多層膜1906と絶縁膜1911が接している。
【0559】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0560】
はじめに、試料9の作製方法について説明する。
【0561】
ガラス基板1901上に、絶縁膜1903として、プラズマCVD法により厚さ400
nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0562】
次に、絶縁膜1903上に、絶縁膜1904として、プラズマCVD法により厚さ50
nmの酸化窒化シリコン膜を成膜した。
【0563】
次に、絶縁膜1904上に、酸化物半導体膜1905として、金属酸化物ターゲット(
In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ35nmのIGZ
O膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチ
ング処理を行い、酸化物半導体膜1905を形成した。
【0564】
次に、絶縁膜1903及び酸化物半導体膜1905上に、スパッタリング法により厚さ
50nmのタングステン膜、厚さ400nmのアルミニウム膜、及び厚さ100nmのチ
タン膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチ
ング処理を行い、導電膜1907及び導電膜1909を形成した。
【0565】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリ
コン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った
。
【0566】
次に、絶縁膜1910上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50
nmの窒化シリコン膜を成膜した。
【0567】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後
、エッチング処理を行い、絶縁膜1910、及び絶縁膜1911に開口部1913、19
15を形成した。
【0568】
以上の工程により試料9を作製した。
【0569】
次に、試料10の作製方法について説明する。
【0570】
試料9の絶縁膜1903、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜19
09上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シ
リコン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行っ
た。その後、絶縁膜1910の除去を行った。
【0571】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜
を成膜した。
【0572】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後
、エッチング処理を行い、絶縁膜1911に開口部1917、1919を形成した。
【0573】
以上の工程により試料10を作製した。
【0574】
次に、試料11の作製方法について、説明する。
【0575】
試料11は、試料10の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた
。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:Ga:
Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し
、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリン
グ法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:G
a:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成
膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処理
を行い、多層膜1906を形成した。
【0576】
以上の工程により試料11を作製した。
【0577】
次に、試料12の作製方法について、説明する。
【0578】
試料12は、試料10の酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用いた
。また、試料12は試料11と比較して、多層膜1906を構成するIGZO膜の膜厚が
異なる。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:
Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ20nmのIGZO膜を
成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッ
タリング法により厚さ15nmのIGZO膜を成膜し、続けて金属酸化物ターゲット(I
n:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO
膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチン
グ処理を行い、多層膜1906を形成した。
【0579】
以上の工程により試料12を作製した。
【0580】
次に、試料9乃至試料12に設けられた酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906
のシート抵抗を測定した。試料9においては、開口部1913及び開口部1915にプロ
ーブを接触させ、酸化物半導体膜1905のシート抵抗を測定した。また、試料10乃至
試料12においては、開口部1917及び開口部1919にプローブを接触させ、酸化物
半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗を測定した。なお、試料9乃至試料
12の酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906において、導電膜1907及び導電
膜1909が対向する幅を1mm、導電膜1907と導電膜1909との間の距離を10
μmとした。また、試料9乃至試料12において、導電膜1907を接地電位とし、導電
膜1909に1Vを印加した。
【0581】
【0582】
試料9のシート抵抗は、約1×1011Ω/sq.であった。また、試料10のシート
抵抗は、2620Ω/sq.であった。また、試料11のシート抵抗は、4410Ω/s
q.であった。また、試料12のシート抵抗は、2930Ω/sq.であった。
【0583】
このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906に接する絶縁膜の違いによ
り、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906のシート抵抗は、異なる値を示す。
【0584】
なお、上述した試料9乃至試料12のシート抵抗を抵抗率に換算した場合、試料9は、
3.9×105Ωcm、試料10は、9.3×10-3Ωcm、試料11は、1.3×1
0-2Ωcm、試料12は、1.3×10-2Ωcmであった。
【0585】
試料9は、酸化物半導体膜1905上に接して絶縁膜1910として用いる酸化窒化シ
リコン膜が形成されている。酸化物半導体膜1905は絶縁膜1911として用いる窒化
シリコン膜と接していない。一方、試料10乃至試料12は、酸化物半導体膜1905、
及び多層膜1906上に接して絶縁膜1911として用いる窒化シリコン膜が形成されて
いる。このように、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906は、絶縁膜1911と
して用いる窒化シリコン膜に接して設けると、酸化物半導体膜1905、及び多層膜19
06に欠陥、代表的には酸素欠損が形成されると共に、該窒化シリコン膜に含まれる水素
が、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906へ移動または拡散する。これらの結果
、酸化物半導体膜1905、及び多層膜1906の導電性が向上する。
【0586】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に酸化物半導体膜を用いる場合、試料9に示
すように酸化物半導体膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、容
量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料10乃至試料12に示すよう
に酸化物半導体膜または多層膜に接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このよ
うな構成を用いることによって、トランジスタのチャネル形成領域に用いる酸化物半導体
膜または多層膜と、容量素子の電極に用いる酸化物半導体膜または多層膜と、を同一工程
で作製しても酸化物半導体膜、及び多層膜の抵抗率を変えることができる。
【0587】
次に、試料10及び試料11において、高温高湿環境で保存した試料のシート抵抗値に
ついて測定した。ここで用いた各試料の条件について、以下に説明する。なお、ここでは
、一部の条件において、試料10及び試料11と異なる条件を用いている。このため、試
料10及び試料11と構造が同じであり、作製条件が異なる試料をそれぞれ試料10a及
び試料11aとする。
【0588】
はじめに、試料10aの作製方法について説明する。
【0589】
ガラス基板1901上に、絶縁膜1903及び絶縁膜1904を成膜した。
【0590】
絶縁膜1904上に、酸化物半導体膜1905として、金属酸化物ターゲット(In:
Ga:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ35nmのIGZO膜を
成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを用いてエッチング処
理を行った後、350℃または450℃で加熱処理を行い、酸化物半導体膜1905を形
成した。
【0591】
絶縁膜1903及び酸化物半導体膜1905上に、スパッタリング法により厚さ50n
mのチタン膜、及び厚さ400nmの銅膜を順に積層した後、フォトリソグラフィ工程に
より形成したマスクを用いてエッチング処理を行い、導電膜1907及び導電膜1909
を形成した。
【0592】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1910として、プラズマCVD法により厚さ450nmの酸化窒化シリ
コン膜を成膜した後、350℃の窒素及び酸素の混合雰囲気で1時間の加熱処理を行った
。
【0593】
次に、絶縁膜1904、酸化物半導体膜1905、導電膜1907、及び導電膜190
9上に、絶縁膜1911として、プラズマCVD法により厚さ50nmの窒化シリコン膜
を成膜した。なお、窒化シリコン膜の成膜温度を220℃または350℃とした。
【0594】
次に、絶縁膜1911上に、フォトリソグラフィ工程により形成したマスクを設けた後
、エッチング処理を行い、絶縁膜1910、及び絶縁膜1911に開口部1913、19
15を形成した。
【0595】
以上の工程により試料10aを作製した。
【0596】
次に、試料11aの作製方法について、説明する。
【0597】
試料11aは、試料10aの酸化物半導体膜1905の代わりに、多層膜1906を用
いた。多層膜1906としては、絶縁膜1904上に、金属酸化物ターゲット(In:G
a:Zn=1:1:1)を用い、スパッタリング法により厚さ10nmのIGZO膜を成
膜し、続けて金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=1:3:2)を用い、スパッタ
リング法により厚さ10nmのIGZO膜を成膜した。その後、フォトリソグラフィ工程
により形成したマスクを用いてエッチング処理を行った後、350℃または450℃で加
熱処理を行い、多層膜1906を形成した。
【0598】
以上の工程により試料11aを作製した。
【0599】
次に、試料10a及び試料11aに設けられた酸化物半導体膜1905、及び多層膜1
906のシート抵抗を測定した。試料10a及び試料11aにおいては、開口部1917
及び開口部1919にプローブを接触させ、酸化物半導体膜1905、及び多層膜190
6のシート抵抗を測定した。なお、試料10a及び試料11aの酸化物半導体膜1905
、及び多層膜1906において、導電膜1907及び導電膜1909が対向する幅を1.
5mm、導電膜1907と導電膜1909との間の距離を10μmとした。また、試料1
0a及び試料11aにおいて、導電膜1907を接地電位とし、導電膜1909に1Vを
印加した。また、温度60℃、湿度95%の雰囲気において、試料10a及び試料11a
を、60時間及び130時間保管した後、各試料のシート抵抗値を測定した。
【0600】
試料10a及び試料11aのシート抵抗値を
図49に示す。なお、
図49において、実
線は、各試料において絶縁膜1911として形成した窒化シリコン膜の成膜温度が220
℃であり、破線は350℃であることを示す。また、黒塗りマーカは、各試料において、
酸化物半導体膜1905を形成した後、350℃で加熱処理を行ったことを示し、白塗り
マーカは、酸化物半導体膜1905または多層膜1906を形成した後、450℃で加熱
処理を行ったことを示す。丸角マーカは、各試料が酸化物半導体膜1905を有する、即
ち、試料10aであることを示す。三角マーカは、各試料が多層膜1906を有する、即
ち試料11aであることを示す。なお、
図49において、多層膜1906を形成した後、
350℃で加熱した試料11aの測定結果、すなわち黒塗り三角マーカはプロットしてい
ない。
【0601】
図49より、試料10a及び試料11aは、シート抵抗値が低く、容量素子の電極とし
て好ましいシート抵抗値、0.2Ω/sq.以下を満たしていることが分かる。また、試
料10a及び試料11aは、シート抵抗値の時間変動量が少ないことがわかる。以上のこ
とから、窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜または多層膜は、高温高湿環境において
、シート抵抗値の変動量が少ないため、容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜と
して用いることができる。
【0602】
次に、試料10a及び試料11aにおいて、基板温度を25℃、60℃、及び150℃
として、それぞれのシート抵抗値を測定した結果を
図50に示す。なお、ここでは、試料
10a及び試料11aとして、絶縁膜1911として形成した窒化シリコン膜の成膜温度
が220℃であり、酸化物半導体膜1905または多層膜1906を形成した後、350
℃で加熱処理を行った試料を用いた。黒塗り丸マーカは試料10aの測定結果を示し、黒
塗り三角マーカは、試料11aの測定結果を示す。
【0603】
図50より、基板温度を高くしても、酸化物半導体膜1905及び多層膜1906のシ
ート抵抗値は変動しないことが分かる。即ち、窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜ま
たは多層膜は、縮退半導体ともいえる。窒化シリコン膜に接する酸化物半導体膜または多
層膜は、基板温度が変化してもシート抵抗値の変動量が少ないため、容量素子の電極に用
いる透光性を有する導電膜として用いることができる。
【0604】
本実施例に示す構成は、他の実施の形態、または実施例に示す構成と適宜組み合わせて
用いることができる。
【実施例4】
【0605】
本実施例は、酸化物半導体膜と、酸化物半導体膜上に形成された絶縁膜との不純物分析
について、
図51を用いて説明する。
【0606】
本実施例においては、不純物分析用のサンプルとして、2種類のサンプル(以下、試料
13、及び試料14)を作製した。
【0607】
まず、はじめに試料13の作製方法を以下に示す。
【0608】
試料13は、ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後窒化シリコン膜を成膜した。
その後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒素と酸素の混合ガス
雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処理を行った。
【0609】
なお、IGZO膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット
(In:Ga:Zn=1:1:1)を用い、Ar/O2=100/100sccm(O2
=50%)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で1
00nmの厚さIGZO膜を成膜した。
【0610】
また、窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて、SiH4/N2/N
H3=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基
板温度=220℃の条件で100nmの厚さの窒化シリコン膜を成膜した。
【0611】
次に、試料14の作製方法を以下に示す。
【0612】
ガラス基板上にIGZO膜を成膜し、その後酸化窒化シリコン膜及び窒化シリコン膜を
積層して成膜した。その後、窒素雰囲気下で450℃、1時間の熱処理を行い、続けて窒
素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)下で450℃×1時間の熱処
理を行った。
【0613】
なお、IGZO膜の成膜条件、及び窒化シリコン膜の成膜条件としては、試料13と同
様の条件を用いた。また、酸化窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて
、SiH4/N2O=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=150W、
基板温度=220℃の条件で50nmの厚さの酸化窒化シリコン膜を成膜し、その後、P
E-CVD法にて、SiH4/N2O=160/4000sccm、圧力=200Pa、
成膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で400nmの厚さの酸化窒化シリコ
ン膜を成膜した。
【0614】
試料13及び試料14の不純物分析結果を
図51に示す。
【0615】
なお、不純物分析としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary
Ion Mass Spectrometry)を用い、
図51に示す矢印の方向から分
析を行った。すなわち、ガラス基板側からの測定である。
【0616】
また、
図51(A)は、試料13の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイル
である。
図51(B)は、試料14の測定により得られた水素(H)の濃度プロファイル
である。
【0617】
図51(A)よりIGZO膜中の水素(H)濃度は、1.0×10
20atoms/c
m
3であることがわかる。また、窒化シリコン膜中の水素(H)濃度は、1.0×10
2
3atoms/cm
3であることがわかる。また、
図51(B)よりIGZO膜中の水素
(H)濃度は、5.0×10
19atoms/cm
3であることがわかる。また、酸化窒
化シリコン膜中の水素(H)濃度は、3.0×10
21atoms/cm
3であることが
わかる。
【0618】
なお、SIMS分析は、その測定原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界
面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。そこで、膜中におけ
る水素(H)の厚さ方向の分布を、SIMSで分析する場合、対象となる膜の存在する範
囲において、極端な変動が無く、ほぼ一定の強度が得られる領域における平均値を採用す
る。
【0619】
このように、IGZO膜に接する絶縁膜の構成を変えることにより、IGZO膜中の水
素(H)濃度に差が確認された。
【0620】
例えば、トランジスタのチャネル形成領域に上述したIGZO膜を用いる場合、試料1
4に示すようにIGZO膜に接して酸化窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。また、
容量素子の電極に用いる透光性を有する導電膜としては、試料13に示すようにIGZO
膜に接して窒化シリコン膜を設ける構成が好ましい。このような構成を用いることによっ
て、トランジスタのチャネル形成領域に用いるIGZO膜と、容量素子の電極に用いるI
GZO膜と、を同一工程で作製してもIGZO膜中の水素濃度を変えることができる。
【実施例5】
【0621】
本実施例では、酸化物半導体膜及び多層膜の欠陥量について、
図52及び
図53を用い
て説明する。
【0622】
はじめに、試料の構造について説明する。
【0623】
試料15は、石英基板上に形成された厚さ35nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導体
膜上に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。
【0624】
試料16及び試料17は、石英基板上に形成された厚さ30nmの多層膜と、多層膜上
に形成された厚さ100nmの窒化絶縁膜とを有する。なお、試料16の多層膜は、厚さ
10nmの第1のIGZO膜、厚さ10nmの第2のIGZO膜、及び厚さ10nmの第
3のIGZO膜が順に積層されている。また、試料17は、厚さ20nmの第1のIGZ
O膜、厚さ15nmの第2のIGZO膜、及び厚さ10nmの第3のIGZO膜が順に積
層されている。試料16及び試料17は、試料15と比較して、酸化物半導体膜の代わり
に多層膜を有する点が異なる。
【0625】
試料18は、石英基板上に形成された厚さ100nmの酸化物半導体膜と、酸化物半導
体膜上に形成された厚さ250nmの酸化絶縁膜と、酸化絶縁膜上に形成された厚さ10
0nmの窒化絶縁膜とを有する。試料18は、試料15乃至試料17と比較して酸化物半
導体膜が窒化絶縁膜と接しておらず、酸化絶縁膜と接している点が異なる。
【0626】
次に、各試料の作製方法について説明する。
【0627】
はじめに、試料15の作製方法について説明する。
【0628】
石英基板上に、酸化物半導体膜として厚さ35nmのIGZO膜を成膜した。IGZO
膜の成膜条件としては、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Z
n=1:1:1)を用い、Ar/O2=100sccm/100sccm(O2=50%
)、圧力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件を用いた。
【0629】
次に、第1の加熱処理として、450℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った後、
450℃の窒素と酸素の混合ガス雰囲気(窒素=80%、酸素=20%)で1時間の加熱
処理を行った。
【0630】
次に、酸化物半導体膜上に、窒化絶縁膜として厚さ100nmの窒化シリコン膜を成膜
した。窒化シリコン膜の成膜条件としては、PE-CVD法にて、SiH4/N2/NH
3=50/5000/100sccm、圧力=100Pa、成膜電力=1000W、基板
温度=350℃の条件を用いた。
【0631】
次に、第2の加熱処理として、250℃の窒素雰囲気で1時間の加熱処理を行った。
【0632】
以上の工程により試料15を作製した。
【0633】
次に、試料16の作製方法について説明する。
【0634】
試料16は、試料15の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜として
は、石英基板上に、スパッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=
1:3:2)を用い、Ar/O2=180/20sccm(O2=10%)、圧力=0.
6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第1のIGZ
O膜を成膜した。次に、パッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn
=1:1:1)を用い、Ar/O2=100/100sccm(O2=50%)、圧力=
0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=170℃の条件で厚さ10nmの第2の
IGZO膜を成膜した。次に、パッタリング法にて、金属酸化物ターゲット(In:Ga
:Zn=1:3:2)を用い、Ar/O2=180/20sccm(O2=10%)、圧
力=0.6Pa、成膜電力=5000W、基板温度=25℃の条件で厚さ10nmの第3
のIGZO膜を成膜した。
【0635】
その他の工程は、試料15と同様である。以上の工程により試料16を形成した。
【0636】
次に、試料17の作製方法について説明する。
【0637】
試料17は、試料15の酸化物半導体膜の代わりに、多層膜を形成した。多層膜として
は、石英基板上に、試料16に示す第1のIGZO膜と同じ条件を用いて、厚さ20nm
の第1のIGZO膜を成膜した。次に、スパッタリング法にて、試料16に示す第2のI
GZO膜と同じ条件を用いて、厚さ15nmの第2のIGZO膜を成膜した。次に、試料
16に示す第3のIGZO膜と同じ条件を用いて、厚さ10nmの第3のIGZO膜を成
膜した。
【0638】
その他の工程は、試料15と同様である。以上の工程により試料17を形成した。
【0639】
次に、試料18の作製方法について説明する。
【0640】
試料18は、試料15と同じ条件を用いて石英基板上に厚さ100nmの酸化物半導体
膜を形成した。
【0641】
次に、試料15と同様の条件を用いて、第1の加熱処理を行った。
【0642】
次に、酸化物半導体膜上に、酸化絶縁膜として、厚さ50nmの第1の酸化窒化シリコ
ン膜及び厚さ200nmの第2の酸化窒化シリコン膜を形成した。ここでは、PE-CV
D法にて、SiH4/N2O=30/4000sccm、圧力=40Pa、成膜電力=1
50W、基板温度=220℃の条件で50nmの厚さの第1の酸化窒化シリコン膜を成膜
し、その後、PE-CVD法にて、SiH4/N2O=160/4000sccm、圧力
=200Pa、成膜電力=1500W、基板温度=220℃の条件で200nmの厚さの
第2の酸化窒化シリコン膜を成膜した。なお、第2の酸化窒化シリコン膜は、化学量論的
組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む膜である。
【0643】
次に、試料15と同じ条件を用いて、酸化絶縁膜上に厚さ100nmの窒化シリコン膜
を形成した。
【0644】
次に、試料15と同様の条件を用いて、第2の加熱処理を行った。
【0645】
以上の工程により試料18を形成した。
【0646】
次に、試料15乃至試料18についてESR測定を行った。ESR測定は、所定の温度
で、マイクロ波の吸収の起こる磁場の値(H0)から、式g=hν/βH0、を用いてg
値というパラメータが得られる。なお、νはマイクロ波の周波数である。hはプランク定
数であり、βはボーア磁子であり、どちらも定数である。
【0647】
ここでは、下記の条件でESR測定を行った。測定温度を室温(25℃)とし、8.9
2GHzの高周波電力(マイクロ波パワー)を20mWとし、磁場の向きは作製した試料
の膜表面と平行とした。
【0648】
試料15乃至試料17に含まれる酸化物半導体膜及び多層膜をESR測定して得られた
一次微分曲線を
図52に示す。
図52(A)は、試料15の測定結果であり、
図52(B
)は、試料16の測定結果であり、
図52(C)は、試料17の測定結果である。
【0649】
試料18に含まれる酸化物半導体膜をESR測定して得られた一次微分曲線を
図53に
示す。
【0650】
図52(A)乃至
図52(C)において、試料15は、g値が1.93において、酸化
物半導体膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出されている。試料16及び試料
17は、g値が1.95において、多層膜中の欠陥に起因する対称性を有する信号が検出
されている。試料15におけるg値が1.93のスピン密度は、2.5×10
19spi
ns/cm
3であり、試料16におけるg値が1.93及び1.95のスピン密度の総和
は、1.6×10
19spins/cm
3であり、試料17におけるg値が1.93及び
1.95のスピン密度の総和は、2.3×10
19spins/cm
3であった。即ち、
酸化物半導体膜及び多層膜には、欠陥が含まれることが分かる。なお、酸化物半導体膜及
び多層膜の欠陥の一例としては酸素欠損がある。
【0651】
図53において、試料18は、試料15の酸化物半導体膜、試料16及び試料17の多
層膜と比較して、酸化物半導体膜の厚さが厚いにも関わらず、欠陥に起因する対称性を有
する信号が検出されず、即ち、検出下限以下(ここでは、検出下限を3.7×10
16s
pins/cm
3とする。)であった。このことから、酸化物半導体膜に含まれる欠陥量
が検出することが困難であることが分かる。
【0652】
酸化物半導体膜または多層膜に窒化絶縁膜、ここではPE-CVDで形成された窒化シ
リコン膜が接すると、酸化物半導体膜または多層膜に欠陥、代表的には酸素欠損が形成さ
れることが分かる。一方、酸化物半導体膜に酸化絶縁膜、ここでは、酸化窒化シリコン膜
を設けると、酸化窒化シリコン膜に含まれる過剰酸素、即ち化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素が酸化物半導体膜に拡散し、酸化物半導体膜中の欠陥が増加しない。
【0653】
以上のことから、試料15乃至試料17に示すように、窒化絶縁膜に接する酸化物半導
体膜または多層膜は欠陥、代表的には酸素欠損量が多く、導電性が高いため、容量素子の
電極として用いることができる。一方、試料18に示すように、酸化絶縁膜に接する酸化
物半導体膜または多層膜は、酸素欠損量が少なく、導電性が低いため、トランジスタのチ
ャネル形成領域として用いることができる。
【0654】
ここで、窒化物絶縁膜と接する酸化物半導体膜及び多層膜の抵抗率が低減する原因につ
いて、以下に説明する。
【0655】
<Hの存在形態間のエネルギーと安定性>
はじめに、酸化物半導体膜に存在するHの形態のエネルギーと安定性について、計算し
た結果を説明する。ここでは、酸化物半導体膜としてInGaZnO4を用いた。
【0656】
計算に用いた構造は、InGaZnO4の六方晶の単位格子をa軸及びb軸方向に2倍
ずつにした84原子バルクモデルを基本とした。
【0657】
バルクモデルにおいて、3個のIn原子及び1個のZn原子と結合したO原子1個をH
原子に置換したモデルを用意した(
図54(A)参照)。また、
図54(A)において、
InO層におけるab面をc軸から見た図を
図54(B)に示す。3個のIn原子及び1
個のZn原子と結合したO原子1個を取り除いた領域を、酸素欠損Voと示し、
図54(
A)及び
図54(B)において破線で示す。また、酸素欠損Vo中に位置するH原子をV
oHと表記する。
【0658】
また、バルクモデルにおいて、3個のIn原子及び1個のZn原子と結合したO原子1
個を取り除き、酸素欠損(Vo)を形成する。該Vo近傍で、ab面に対して1個のGa
原子及び2個のZn原子と結合したO原子にH原子が結合したモデルを用意した(
図54
(C)参照)。また、
図54(C)において、InO層におけるab面をc軸から見た図
を
図54(D)に示す。
図54(C)及び
図54(D)において、酸素欠損Voを破線で
示す。また、Voを有し、且つ酸素欠損Vo近傍で、ab面に対して1個のGa原子及び
2個のZn原子と結合したO原子に結合したH原子を有するモデルをVo+Hと表記する
。
【0659】
上記2つのモデルに対して、格子定数を固定しての最適化計算を行い、全エネルギーを
算出した。なお、全エネルギーの値が小さいほどその構造はより安定といえる。
【0660】
計算には、第一原理計算ソフトウェアVASP(The Vienna Ab ini
tio simulation package)を用いた。計算条件を表1に示す。
【0661】
【表1】
電子状態擬ポテンシャルにはProjector Augmented Wave(P
AW)法により生成されたポテンシャルを、汎関数にはGGA/PBE(General
ized-Gradient-Approximation/Perdew-Burke
-Ernzerhof)を用いた。
【0662】
また、計算により算出された2つのモデルの全エネルギーを表2に示す。
【0663】
【0664】
表2より、VoHの方がVo+Hよりも全エネルギーが0.78eV小さい。よって、
VoHの方がVo+Hよりも安定であるといえる。したがって、酸素欠損(Vo)にH原
子が近づくと、H原子はO原子と結合するよりも、酸素欠損(Vo)中に取り込まれやす
いと考えられる。
【0665】
<VoHの熱力学的状態>
次に、酸素欠損(Vo)中にH原子が取り込まれたVoHの形成エネルギーと荷電状態
について、計算した結果を説明する。VoHは荷電状態によって形成エネルギーが異なり
、フェルミエネルギーにも依存する。よって、VoHはフェルミエネルギーに依存して安
定な荷電状態が異なる。ここでは、VoHが電子を1つ放出した状態を(VoH)+と示
し、電子を1つ捕獲した状態を(VoH)-と示し、電子の移動のない状態を、(VoH
)0と示す。(VoH)+、(VoH)-、(VoH)0それぞれの形成エネルギーを計
算した。
【0666】
計算には、第一原理計算ソフトウェアVASPを用いた。計算条件を表3に示す。
【0667】
【表3】
電子状態擬ポテンシャル計算にはProjector Augmented Wave
(PAW)法により生成されたポテンシャルを、汎関数にはHeyd-Scuseria
-Ernzerhof(HSE) DFTハイブリッド汎関数(HSE06)を用いた。
【0668】
なお、酸素欠損の形成エネルギーの算出では酸素欠損濃度の希薄極限を仮定し、電子お
よび正孔の伝導帯、価電子帯への過剰な広がりを補正してエネルギーを算出した。また、
完全結晶の価電子帯上端をエネルギー原点とし、欠陥構造に由来する価電子帯のズレは、
平均静電ポテンシャルを用いて補正した。
【0669】
図55(A)に、(VoH)
+、(VoH)
-、(VoH)
0それぞれの形成エネルギ
ーを示す。横軸はフェルミレベルであり、縦軸は形成エネルギーである。実線は(VoH
)
+の形成エネルギーを示し、一点鎖線は(VoH)
0の形成エネルギーを示し、破線は
(VoH)
-の形成エネルギーを示す。また、VoHの電荷が、(VoH)
+から(Vo
H)
0を経て(VoH)
-に変わる遷移レベルをε(+/-)と示す。
【0670】
図55(B)に、VoHの熱力学的遷移レベルを示す。計算結果から、InGaZnO
4のエネルギーギャップは2.739eVであった。また、価電子帯のエネルギーを0e
Vとすると、遷移レベル(ε(+/-))は2.62eVであり、伝導帯の直下に存在す
る。このことから、酸素欠損(Vo)中にH原子が取り込まれることにより、InGaZ
nO
4がn型になることが分かる。
【0671】
酸化物半導体膜がプラズマに曝されると、酸化物半導体膜はダメージを受け、酸化物半
導体膜に、欠陥、代表的には酸素欠損が生成される。また、酸化物半導体膜に窒化絶縁膜
が接すると、窒化絶縁膜に含まれる水素が酸化物半導体膜に移動する。これらの結果、酸
化物半導体膜に含まれる酸素欠損に水素が入ることで、酸化物半導体膜中にVoHが形成
され、酸化物半導体膜がn型となり、抵抗率が低下する。以上のことから、窒化絶縁膜に
接する酸化物半導体膜を容量素子の電極として用いることができる。