IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

特許7400067エレベータ制御装置およびエレベータシステム
<>
  • 特許-エレベータ制御装置およびエレベータシステム 図1
  • 特許-エレベータ制御装置およびエレベータシステム 図2
  • 特許-エレベータ制御装置およびエレベータシステム 図3
  • 特許-エレベータ制御装置およびエレベータシステム 図4
  • 特許-エレベータ制御装置およびエレベータシステム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20231211BHJP
【FI】
B66B1/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022196110
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 貴子
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-106866(JP,A)
【文献】特開2020-125198(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された行先階までエレベータを利用して移動する、自律走行可能な移動体に通信可能に接続され、
前記移動体の位置情報を取得する移動体位置情報取得部と、
前記エレベータの乗りかご内の利用者の位置情報を取得する利用者位置情報取得部と、
前記エレベータが管制運転を開始したときに、前記移動体の位置情報と前記乗りかご内の利用者の位置情報とに基づいて、前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する同乗判定部と、
前記同乗判定部で前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗していると判定されると、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する間隙判定部と、
前記間隙判定部で、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値未満であると判定されると、前記移動体の行先階を所定の階床に変更する移動体情報管理部と、を備えるエレベータ制御装置。
【請求項2】
エレベータを利用する、自律走行可能な移動体に通信可能に接続され、
前記移動体の位置情報を取得する移動体位置情報取得部と、
前記エレベータの乗りかご内の利用者の位置情報を取得する利用者位置情報取得部と、
前記移動体の位置情報と前記乗りかご内の利用者の位置情報とに基づいて、前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する同乗判定部と、
前記同乗判定部で前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗していると判定されると、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する間隙判定部と、
前記間隙判定部で、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値未満であると判定されると、前記移動体に対し、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値以上になるように移動させる移動指示を送信する移動体動作管理部と、を備えるエレベータ制御装置。
【請求項3】
前記同乗判定部は、前記エレベータが管制運転を開始したときに、前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する、請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
前記移動体動作管理部は、前記間隙判定部で、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値未満であると判定されたときに、前記乗りかご内の利用者の位置情報に基づいて、前記移動体の移動先の位置を決定する、請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記移動体動作管理部は、前記移動体の移動先の位置を決定すると、決定した前記移動体の移動先の位置の情報および前記移動体が移動することを報知する情報を前記乗りかご内に出力させる、請求項4に記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記移動体動作管理部は、前記移動体の移動先の位置の情報および前記移動体が移動することを報知する情報を前記乗りかご内に出力させときに、前記乗りかご内の利用者の状況に基づいて前記移動体の移動を開始して問題ないと判断すると、前記移動体に対し、前記移動指示を送信する、請求項5に記載のエレベータ制御装置。
【請求項7】
前記乗りかごの内の利用者ごとのかご床の占有面積を算出する占有面積算出部と、
前記占有面積算出部で算出された利用者ごとのかご床の占有面積に基づいて、前記閾値を調整する閾値調整部と、をさらに備える請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項8】
予め設定された行先階までエレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と、前記エレベータの乗りかご内を撮影する撮像装置と、前記移動体および前記撮像装置に通信可能に接続されたエレベータ制御装置とを備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記撮像装置で撮影された撮像情報に基づいて、前記移動体の位置情報を取得する移動体位置情報取得部と、
前記エレベータの乗りかご内の利用者の位置情報を取得する利用者位置情報取得部と、
前記エレベータが管制運転を開始したときに、前記移動体の位置情報と前記乗りかご内の利用者の位置情報とに基づいて、前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する同乗判定部と、
前記同乗判定部で前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗していると判定されると、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する間隙判定部と、
前記間隙判定部で、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値未満であると判定されると、前記移動体の行先階を所定の階床に変更する移動体情報管理部と、を備えるエレベータシステム。
【請求項9】
予め設定された行先階までエレベータを利用して移動する自律走行可能な移動体と、前記エレベータの乗りかご内を撮影する撮像装置と、前記移動体および前記撮像装置に通信可能に接続されたエレベータ制御装置とを備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記撮像装置で撮影された撮像情報に基づいて、前記移動体の位置情報を取得する移動体位置情報取得部と、
前記エレベータの乗りかご内の利用者の位置情報を取得する利用者位置情報取得部と、
前記エレベータが管制運転を開始したときに、前記移動体の位置情報と前記乗りかご内の利用者の位置情報とに基づいて、前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する同乗判定部と、
前記同乗判定部で前記乗りかご内に前記移動体と利用者とが同乗していると判定されると、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する間隙判定部と、
前記間隙判定部で、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値未満であると判定されると、前記移動体に対し、前記移動体と前記乗りかごのかごドアとの間の距離が前記閾値以上になるように移動させる移動指示を送信する移動体動作管理部と、を備えるエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自律走行可能な移動体がエレベータを利用するために、当該移動体の動作とエレベータの動作とを連動させる技術が開発されている。移動体は、周囲の所定距離間に障害物を検知すると停止するため、従来は移動体がエレベータを利用する際には乗りかご内に利用者がいないことが前提となっていた。しかし、移動体の性能向上により、今後は移動体と利用者とが乗りかごに同乗することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-125198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動体と利用者とが乗りかごに同乗した際に、移動体が乗りかご内のかごドア近くに停止していると、乗りかごが戸開しても、利用者がスムーズに乗りかごの乗降を行うことができない場合がある。
【0005】
特に、建物内で何らかの災害が発生してエレベータが管制運転を開始したときには、移動体が乗りかご内のかごドア近くに停止していると、管制運転により乗りかごが避難階に着床し戸開しても利用者が降車できず、適切に避難行動をとることができないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、エレベータの利用者と自律走行可能な移動体とが乗りかごに同乗しているときにも、利用者が乗りかごの乗降をスムーズに行うことができるようにする、エレベータ制御装置およびエレベータシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための実施形態によればエレベータ制御装置は、自律走行可能な移動体に通信可能に接続され、同乗判定部と間隙判定部と移動体情報管理部とを備える。同乗判定部は、エレベータが管制運転を開始したときに、乗りかご内に移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する。間隙判定部は、同乗判定部で乗りかご内に移動体と利用者とが同乗していると判定されると、移動体と乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する。移動体情報管理部は、間隙判定部で、移動体と乗りかごのかごドアとの間の距離が閾値未満であると判定されると、移動体の行先階を所定の階床に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図2】第1および第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータの乗りかごに移動体が乗車している状態を上から見た図である。
図3】第1実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成を示す全体図である。
図5】第2実施形態によるエレベータ制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1実施形態》
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
本発明の第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成について、図1を参照して説明する。本実施形態によるエレベータシステム1Aは、建物内に設置されたエレベータ10Aと、エレベータ10Aを利用する、自律走行可能な移動体20とを備える。
【0010】
エレベータ10Aは、建物内の昇降路(図示せず)の上部に設置された巻き上げ機11と、巻き上げ機11にかけ渡されたメインロープ12と、メインロープ12の一端に吊り下げられた乗りかご13Aと、昇降路の上部に設置されたエレベータ制御装置14Aと、乗りかご13Aとエレベータ制御装置14Aとを接続するテールコード15とを有する。
【0011】
乗りかご13Aは、乗場側の壁面に設置されたかごドア131と、上部に設置された撮像装置であるサーモカメラ装置132とを有する。サーモカメラ装置132は、乗りかご13A内を撮影する。
【0012】
エレベータ制御装置14Aは、エレベータ無線通信部141と、CPU142Aとを有する。エレベータ無線通信部141は、移動体20との無線通信を行う。
【0013】
CPU142Aは、かご内情報取得部142aと、移動体位置情報取得部142bと、利用者位置情報取得部142cと、呼び登録部142dと、エレベータ動作制御部142eと、同乗判定部142f、間隙判定部142g、移動体情報管理部142hとを有する。
【0014】
かご内情報取得部142aは、サーモカメラ装置132で撮影された撮像情報を取得する。移動体位置情報取得部142bは、かご内情報取得部142aで取得した撮像情報を解析することで、移動体20の位置情報を取得する。利用者位置情報取得部142cは、かご内情報取得部142aで取得した撮像情報を解析することで、乗りかご13A内の利用者の位置情報を取得する。
【0015】
具体的には、移動体位置情報取得部142bおよび利用者位置情報取得部142cは、サーモカメラ装置132で撮影した撮像情報内で移動する物体を検知したときに、当該物体の温度が人間の体温に対応する範囲内であれば当該物体は利用者であると判定し、人間の体温よりも低い温度であれば、当該物体は移動体20であると判定して、それぞれの位置情報を取得する。
【0016】
呼び登録部142dは、乗りかご13A内に設置された操作盤(図示せず)における利用者の操作情報に基づいて登録されたかご呼びの情報、および各階の乗場に設置された操作盤(図示せず)における利用者操作情報に基づいて登録された乗場呼びの情報を記憶する。また呼び登録部142dは、乗りかご13Aに乗車した移動体20の行先階の情報を取得し、かご呼びの情報として記憶する。
【0017】
エレベータ動作制御部142eは、エレベータ10A内の機器、例えば、巻き上げ機11、かごドア131、サーモカメラ装置132等を制御する。またエレベータ動作制御部142eは、エレベータ10Aが設置された建物で火災や地震等の災害が発生したとき、またはエレベータ10A内で異常が発生したときに、管制運転を行う。管制運転は、乗りかご13A内の利用者を避難させるために乗りかご13Aを所定階に移動させ、着床および戸開させる運転である。
【0018】
同乗判定部142fは、エレベータ動作制御部142eにより管制運転が開始されたときに、移動体20の位置情報と乗りかご13A内の利用者の位置情報とに基づいて、乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗しているか否かを判定する。
【0019】
間隙判定部142gは、同乗判定部142fにより乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗していると判定されると、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。この「移動体20とかごドア131との間の距離D」とは、図2に示すように、移動体20と、かごドア131面から垂直方向のかごドア131との間の距離D1、または、移動体20と、かごドア131の開口口の左端部または右端部との間の距離D2のいずれでもよい。
【0020】
移動体情報管理部142hは、間隙判定部142gで、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが閾値未満であると判定されると、移動体20の行先階を所定の階床に変更する。
【0021】
移動体20は、移動体無線通信部21、移動機構22、および移動体制御装置23を有する。移動体無線通信部21は、エレベータ制御装置14Aとの無線通信を行う。移動機構22は、移動体20を移動させる。移動体制御装置23は、移動機構22を制御する。また移動体制御装置23は、移動体20の行先階の情報を保持し、移動体20が乗りかご13Aに乗車したときに、保持している行先階の情報を、移動体無線通信部21を介してエレベータ制御装置14Aに送信する。
【0022】
〈第1実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Aの動作について説明する。図3は、エレベータシステム1Aの稼動中に、エレベータ制御装置14Aが実行する処理を示すフローチャートである。
【0023】
エレベータシステム1Aの稼動中、サーモカメラ装置132は乗りかご13A内を撮影し、撮影した撮像情報を、テールコード15を介してエレベータ制御装置14Aに送信する。エレベータ制御装置14Aのかご内情報取得部142aは、サーモカメラ装置132から撮像情報を取得すると、移動体位置情報取得部142bおよび利用者位置情報取得部142cに送出する。
【0024】
移動体位置情報取得部142bは、かご内情報取得部142aで取得した撮像情報を解析することで、移動体20の位置情報を所定時間間隔で取得する。また利用者位置情報取得部142cは、かご内情報取得部142aで取得した撮像情報を解析することで、乗りかご13A内の利用者の位置情報を所定時間間隔で取得する。
【0025】
また、エレベータシステム1Aの稼動中に、移動体20が乗りかご13Aに乗車すると、移動体制御装置23が移動体20の行先階の情報を、移動体無線通信部21を介してエレベータ制御装置14Aに送信する。エレベータ制御装置14Aでは、移動体20から送信された行先階の情報を、エレベータ無線通信部141を介して呼び登録部142dが取得し、取得した行先階の情報をかご呼びとして登録する。移動体20の行先階の登録方法はこれには限定されず、移動体20が乗りかご13Aに乗車したときに、乗りかご13Aに設置された読み取り装置(図示せず)が移動体20から近距離無線通信により行先階の情報を読み取り、エレベータ制御装置14Aに送信するようにしてもよい。
【0026】
またエレベータシステム1Aの稼動中に、建物内で災害が発生し、エレベータ動作制御部142eにより管制運転が開始されると(S1の「YES」)、同乗判定部142fが、移動体位置情報取得部142bで取得された移動体20の位置情報と、利用者位置情報取得部142cで取得された乗りかご13A内の利用者の位置情報とに基づいて、乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗しているか否かを判定する(S2)。
【0027】
ここで、同乗判定部142fが、乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗していると判定すると(S2の「YES」)、間隙判定部142gが、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値以上あるか否かを判定する(S3)。この閾値は、人間が1人通ることが可能な距離以上で予め設定される。
【0028】
間隙判定部142gが、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値未満であると判定すると(S3の「NO」)、移動体情報管理部142hが、移動体20の行先階を所定の階床に変更する移動体情報変更処理を行う。この所定の階床は、例えば管制運転で乗りかご13Aを着床させる避難階、あるいは、管理室または受付があり建物の管理サービスを行う管理者等が常駐する階である。
【0029】
移動体情報管理部142hは、移動体情報変更処理として、呼び登録部142dに登録された移動体20の行先階の情報を変更するとともに、エレベータ無線通信部141を介して移動体に変更後の行先階の情報を送信する処理を行う。移動体20の移動体制御装置23は、エレベータ制御装置14Aから送信された情報で、保持している行先階の情報を変更する。変更後の移動体20の行先階に乗りかご13Aが着床すると、移動体20は速やかに乗りかご13Aから降車する。
【0030】
エレベータ動作制御部142eは、移動体20の行先階として登録された階床が避難階以外の階床、例えば管理室または受付があり建物の管理サービスを行う管理者等が常駐する階であるときには、管制運転中であっても、避難階よりも移動体20の行先階を優先して先に着床させるようにしてもよい。
【0031】
ステップS2において、同乗判定部142fが、乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗していないと判定したとき(S2の「NO」)、またはステップS3において、間隙判定部142gが、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値以上であると判定したとき(S3の「YES」)には、ステップS1に戻る。
【0032】
以上の第1実施形態によれば、エレベータ制御装置14Aは、管制運転が開始したときに、乗りかご13A内に移動体20と利用者とが同乗し、移動体20と乗りかご13Aのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値未満であり、この状態で戸開しても避難階で利用者が降車できない場合には、移動体20の行先階を避難階に変更する。このように制御することにより、避難階で乗りかご13Aが戸開したときに移動体20が速やかに降車し、乗りかご13A内の利用者が適切に避難行動をとることが可能になる。または、エレベータ制御装置14Aは、上述したように避難階で利用者が降車できない状態である場合に、移動体20の行先階を、管理室または受付があり建物の管理サービスを行う管理者等が常駐する階に変更することで、管理者が移動体20の降車作業を行い、利用者の避難行動を可能にすることができる。
【0033】
《第2実施形態》
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成〉
本発明の第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの構成について、図4を参照して説明する。本実施形態によるエレベータシステム1Bは、建物内に設置されたエレベータ10Bと、エレベータ10Bを利用する移動体20とを備える。
【0034】
エレベータ10Bは、昇降路の上部に設置された巻き上げ機11と、巻き上げ機11にかけ渡されたメインロープ12と、メインロープ12の一端に吊り下げられた乗りかご13Bと、昇降路の上部に設置されたエレベータ制御装置14Bと、乗りかご13Bとエレベータ制御装置14Bとを接続するテールコード15とを有する。
【0035】
乗りかご13Bは、乗場側の壁面に設置されたかごドア131と、上部に設置された撮像装置であるサーモカメラ装置132、照射装置133、およびスピーカ装置134とを有する。照射装置133は、後述するようにエレベータ制御装置14Bで決定される、移動体20の移動先の床面位置に可視光を照射する。スピーカ装置134は、エレベータ制御装置14Bからの指示に基づいて、乗りかご13B内の利用者に報知する情報を出力する。
【0036】
エレベータ制御装置14Bは、移動体情報管理部142hに替えて移動体動作管理部142iを有し、さらに占有面積算出部142jおよび閾値調整部142kを有する他は、第1実施形態で説明したエレベータ制御装置14Aの構成と同様であるため、同一機能を有する機能部の説明は省略する。
【0037】
移動体動作管理部142iは、間隙判定部142gで、移動体20と乗りかご13Bのかごドア131との間の距離Dが閾値未満であると判定されると、移動体20に対し、移動体20とかごドア131との間の距離Dが閾値以上になるように移動させる移動指示を送信する。
【0038】
占有面積算出部142jは、乗りかご13Bの内の利用者ごとのかご床の占有面積を算出する。閾値調整部142kは、占有面積算出部142jで算出された利用者ごとのかご床の占有面積に基づいて、間隙判定部142gが判定処理で用いる閾値を調整する。
【0039】
〈第2実施形態によるエレベータ制御装置を用いたエレベータシステムの動作〉
次に、本実施形態によるエレベータシステム1Bの動作について説明する。図5は、エレベータシステム1Bの稼動中に、エレベータ制御装置14Bが実行する処理を示すフローチャートである。ステップS11~S13は、第1実施形態で説明したステップS1~S3と同様の処理であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
ステップS13において、間隙判定部142gが、移動体20と乗りかご13Bのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値未満であると判定すると(S13の「NO」)、移動体動作管理部142iがかご内情報取得部142aで取得した撮像情報を解析することで、乗りかご13B内に、移動体20とかごドア131との距離Dが閾値以上になるように移動体20を移動させる場所があるか否かを判定する(S14)。
【0041】
移動体動作管理部142iは、乗りかご13B内に、移動体20とかごドア131との距離Dが閾値以上になるように移動体20を移動させる場所がないと判定したときには(S14の「NO」)、移動体20と利用者とが乗りかご13Bに同乗しており、移動体20がかごドア131の近くに停止している状態で管制運転が行われていることを示す通知情報および乗りかご13Bの停止予定階床の情報を、報知情報として建物内の管理者の端末等に送信する(S15)。管理者は、端末で取得した報知情報を認識することで迅速に停止予定階に移動し、乗りかご13Bが着床して戸開したときに移動体20を降車させる作業を行うことができる。これにより、乗りかご13B内の利用者が降車して避難行動をとることができる。
【0042】
ステップS14において移動体動作管理部142iが、乗りかご13B内に、移動体20とかごドア131との距離Dが閾値以上になるように移動体20を移動させる場所があると判定すると(S14の「YES」)、さらに撮像情報を解析することで移動体20の移動先の位置を決定し、移動体20が移動することを報知する情報を乗りかご13B内に出力させる(S16)。移動体の移動先の位置は、例えば、乗りかご13Bの側壁の近くの空き空間等である。
【0043】
具体的には、移動体動作管理部142iは、エレベータ動作制御部142eの制御により、乗りかご13B内の照射装置133から移動体20の移動先の床面位置に可視光を照射することで、利用者に移動体20の移動を報知する。また移動体動作管理部142iは、エレベータ動作制御部142eの制御により、乗りかご13B内のスピーカ装置134から移動体20が移動することを報知する情報を出力させる。
【0044】
次に移動体動作管理部142iは、さらに撮像情報を解析することで、乗りかご13B内の利用者の状況に基づいて移動体20の移動を開始して問題ないか否かを判定する(S17)。
【0045】
移動体動作管理部142iは例えば、乗りかご13B内の利用者の動作が大きく、動揺していると判断したとき、または乗りかご13B内の利用者が高齢者等の弱者であると判断したときには、移動体20が移動した際に利用者に接触して利用者が転倒する等のおそれがあり、移動体20の移動を開始することに問題があると判定する(S17の「NO」)。
【0046】
移動体20の移動を開始することに問題があると判定した場合は、移動体動作管理部142iは、乗りかご13B内のスピーカ装置134から移動体20の移動を中止したことを報知する情報を出力させ、照射装置133を消灯させ(S18)、ステップS15に移行する。
【0047】
ステップS17において、移動体20の移動を開始することに問題がないと判定した場合には(S17の「YES」)、移動体動作管理部142iは、エレベータ無線通信部141を介して移動体20に、決定した位置への移動指示を送信する(S19)。移動体20は、エレベータ制御装置14Bから送信された指示に基づいて、移動体制御装置23が移動機構22を制御して該当する位置に移動する。このとき移動体制御装置23は、照射装置133により可視光が照射された床面位置を検知し、検知した情報に基づいて移動先の位置を認識して移動するように制御してもよい。移動体20が移動することで、乗りかご13B内の利用者は、乗りかご13Bから降車して避難行動をとることができるようになる。
【0048】
ステップS13において、間隙判定部142gが移動体20と乗りかご13Bのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値以上であるか否かを判定する際に、この判定処理で用いる閾値を、占有面積算出部142jで算出された利用者ごとのかご床の占有面積の情報に基づいて閾値調整部142kが調整するようにしてもよい。
【0049】
具体的には、閾値調整部142kは、かご内情報取得部142aで取得した撮像情報に基づいて乗りかご13B内に車椅子利用者やベビーカー保持者のように占有面積が大きい利用者がいることを検知したときには、閾値を大きくするように変更する。間隙判定部142gは、変更後の閾値を用いて、移動体20とかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値以上あるか否かを判定する。上述したように閾値調整部142kが閾値を調整することにより、ステップS18の処理により移動体20を移動させた後に、乗りかご13B内の利用者が確実に乗りかご13Bから降車することができる。
【0050】
以上の第2実施形態によれば、エレベータ制御装置14Bは、管制運転が開始したときに、乗りかご13B内に移動体20と利用者とが同乗し、移動体20と乗りかご13Bのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値未満であり、この状態で戸開しても避難階で利用者が降車できない場合には、移動体20に対し、移動体20とかごドア131との間の距離Dが閾値以上になるように移動させる移動指示を送信する。このように制御することにより、避難階で乗りかご13Bが戸開したときに、乗りかご13B内の利用者が適切に避難行動をとることが可能になる。
【0051】
上述した第2実施形態では、管制運転が開始したときに実行する処理について説明したが、通常運転時にも、乗りかご13B内に移動体20と利用者とが同乗し、移動体20と乗りかご13Bのかごドア131との間の距離Dが予め設定された閾値未満である場合に、移動体20に対し、移動体20とかごドア131との間の距離Dが閾値以上になるように移動させる移動指示を送信するようにしてもよい。このように制御することにより、通常運転時に移動体が乗りかご13Bに乗車していても、利用者がスムーズに乗りかご13Bの乗降を行うことができる。
【0052】
上述した第1実施形態および第2実施形態においては、移動体位置情報取得部142bおよび利用者位置情報取得部142cは、乗りかご13A、13Bに設置したサーモカメラ装置132で撮影した撮像情報内で移動する物体を検知したときに、当該物体の温度が人間の体温に対応する範囲内であれば当該物体は利用者であると判定し、人間の体温よりも低い温度であれば、当該物体は移動体20であると判定する場合について説明した。
【0053】
しかしこれには限定されず、移動体位置情報取得部142bが予め移動体20の形状情報を記憶しておき、撮像情報の中から該当する形状の移動物体を検出したときに、当該物体を移動体20であると判定してもよい。また、利用者位置情報取得部142cが予め人間の形状情報を記憶しておき、撮像情報の中から該当する形状の移動物体を検出したときに、当該物体を利用者であると判定してもよい。この場合、乗りかご13Aに設置するカメラ装置はサーモカメラ装置である必要はなく、一般的な撮像機能を有するカメラ装置を適用可能である。また、移動体位置情報取得部142bは、移動体20から無線通信により送信される位置情報を取得することにより、移動体20の位置を認識してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態においては、移動体20の内部に移動体制御装置23が設けられている場合について説明したが、これには限定されず、移動体20と別媒体の移動体制御装置(図示せず)から移動体20の動作を制御するように構成してもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1A,1B…エレベータシステム、10A,10B…エレベータ、11…巻き上げ機、12…メインロープ、13A,13B…乗りかご、14A,14B…エレベータ制御装置、15…テールコード、20…移動体、21…移動体無線通信部、22…移動機構、23…移動体制御装置、131…かごドア、132…サーモカメラ装置、133…照射装置、134…スピーカ装置、141…エレベータ無線通信部、142A,142B…CPU、142a…かご内情報取得部、142b…移動体位置情報取得部、142c…利用者位置情報取得部、142d…呼び登録部、142e…エレベータ動作制御部、142f…同乗判定部、142g…間隙判定部、142h…移動体情報管理部、142i…移動体動作管理部、142j…占有面積算出部、142k…閾値調整部
【要約】
【課題】 自律走行可能な移動体と利用者とがエレベータの乗りかごに同乗しているときにも、利用者が乗りかごへの乗り込みおよび乗りかごからの降車をスムーズに行うことができるようにする、エレベータ制御装置を提供する。
【解決手段】 実施形態によればエレベータ制御装置は、自律走行可能な移動体に通信可能に接続され、同乗判定部と間隙判定部と移動体情報管理部とを備える。同乗判定部は、エレベータが管制運転を開始したときに、乗りかご内に移動体と利用者とが同乗しているか否かを判定する。間隙判定部は、同乗判定部で乗りかご内に移動体と利用者とが同乗していると判定されると、移動体と乗りかごのかごドアとの間の距離が予め設定された閾値以上あるか否かを判定する。移動体情報管理部は、間隙判定部で、移動体と乗りかごのかごドアとの間の距離が閾値未満であると判定されると、移動体の行先階を所定の階床に変更する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5