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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】識別して吐出する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/38 20060101AFI20231211BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231211BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20231211BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
G01N1/38
G01N33/48 S
G01N33/48 M
G01N33/49 X
G01N33/72 A
G01N33/49 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022505393
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 IB2019000795
(87)【国際公開番号】W WO2021019267
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】522033852
【氏名又は名称】ビット グループ フランス
【氏名又は名称原語表記】BIT GROUP FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボストン,フローレン
(72)【発明者】
【氏名】レボー,マキシム
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-369461(JP,A)
【文献】特開2003-075458(JP,A)
【文献】実開平01-091255(JP,U)
【文献】特表2010-508514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109959549(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 33/48
G01N 33/49
G01N 33/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析のために血液試料を希釈する方法であって、前記方法は、
a)前記試料の単一の収集を、分取装置を用いて行う工程、
b)前記試料を第1の室(2)に注入する工程、
c)希釈試薬を用いて前記室で前記試料を希釈して第1の希釈液を構成する工程、
d)前記分取装置を用いて前記第1の希釈液の一部を収集する工程、
e)第2の希釈液及び第3の希釈液を得るために少なくとも2つの他の希釈を実行し、前記第2の希釈液及び第3の希釈液のそれぞれが、前記分取装置に入っている前記第1の希釈液から直接得られる工程、ならびに
f)工程a)~工程e)で、前記第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液の少なくとも1つを分析する工程を含み、
前記分取装置はさらに、
- 試料収集領域と前記少なくとも1つの室(2)との間を移動できる針(6)、
- 希釈試薬吐出装置(4)、ならびに
- 少なくとも2つの液体通路及び1つの分量較正経路(8)を有する試料採取弁(5)であって、第1の液体通路(C2、8、C3)は前記吐出装置(4)を前記針(6)に連結し、第2の液体通路(C1、8、C4)は前記吐出装置(4)を前記第2の室(7)に連結し、前記分量較正経路(8)は前記第1の液体通路又は前記第2の液体通路を有効にする、試料採取弁(5)を備えており、かつ、
工程d)は、前記第1の希釈液を収集し、前記針(6)の内部及び前記試料採取弁(5)の前記分量較正経路(8)に保持することによって実行され、また、前記第1の希釈液を室に注入して前記第2の希釈を実行するために、前記第1の量の前記第1の希釈液が入っている前記分量較正経路を前記第1の液体通路から前記第2の液体通路に切り替え、続いて前記第2の液体通路を介して前記第2の室に注入し、前記第1の量は、前記試料採取弁(5)の前記分量較正経路(8)で正確に較正され、
前記第3の希釈液は、前記針に入っている前記第1の希釈液から直接得られる、方法。
【請求項2】
前記分析は、第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液を、前記液に含まれる粒子を計数する及び/又は識別するための光学測定によって特徴づけることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析は、抵抗性センサを用いて第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液の粒子を計数することを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析は、第3の希釈液を、前記液に含まれる粒子を計数する及び/又は識別するための光学測定によって特徴づけることを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程e)は、
e1)前記分取装置に入っている第1の量の前記第1の希釈液、前記分取装置に残っている第2の量の前記第1の希釈液を第2の室に注入する工程、
e2)第2の希釈液を構成するために、前記第2の室に入っている前記第1の希釈液を、希釈試薬を用いて希釈する工程、
e3)赤血球を破壊するために前記第1の室に溶解液を注入する工程、
e4)前記第1の室に入っている前記第1の希釈液中の白血球を、前記第1の室で直接、又は前記第1の希釈液の一部を光学台に移した後に前記光学台で光学測定することによって識別する工程、
e5)(好ましくは前記第2の室内又は前記光学台上で)前記第2の希釈液中の前記赤血球及び/又は血小板を計数する工程、
e6)(好ましくは前記第1の室内又は前記光学台上で)前記第1の希釈液中の前記白血球を計数する及び/又はヘモグロビンを測定する工程、
e7)少なくとも1つの室を濯ぐ工程、
e8)前記濯いだ室に、前記分取装置にまだ入っている前記第2の量の前記第1の希釈液の一部を注入する工程、
e9)前記濯いだ室に入っている前記液を希釈試薬を用いて希釈して第3の希釈液を構成する工程、
e10)前記第3の希釈液を分析する工程
を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程e10)で、前記第3の希釈液の一部は、網状赤血球を識別するために前記光学台に移されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の希釈及び前記第2の希釈の前記工程は、前記分取装置を介して希釈試薬を注入することによって実行されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記希釈工程の全体又は一部は、前記分取装置とは独立した液体通路(24、74)から希釈試薬を前記1つ又は複数の室に直接注入することによって実行されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の室に連結している単一の光学台を使用することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の希釈の割合は1/200であり、前記第2の希釈の割合は1/10,000であり、前記第3の希釈の割合は1/10,000であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
分析は、落射蛍光光学台を使用して実行されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析のために試料を希釈する方法、及びそのような方法を実施するための血液装置に関する。この試料は、血液又はその他の生物学的液体であってよく、例えば白血球又は赤血球を含む脳脊髄液(CSF)などの穿刺液などであってよい。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液装置は、血液中に存在する様々な種類の細胞を計数し、特徴づけることを可能にする。
【0003】
米国特許第7,661,326号(Beckman Coulter)が知られており、複数の血液の分量を3つ以上の室に分割して吐出する吐出弁を有する血液装置が記載されている。この装置は、大量の血液を収集して多数の室に同時に吐出することを必要とする。その結果、試料採取弁の入口及び出口での流体網が複雑になり、吐出弁に全血が流れることが原因で試料採取弁が詰まる危険性がある。
【0004】
米国特許第6,333,197号(ABX)も知られており、均一な希釈を生み出すために血液を収集してそれを試薬として様々な室に同時に注入するための針が記載されている。この米国特許第6,333,197号に記載されているシステムでは、大量の全血を収集する必要があるが、全血は設計上、全部は使用されない。さらに、様々な室内の針の位置付けは、試薬の到着と針の位置を合わせる必要があるために、複雑である。最後に、室は、血液を試薬と均質化させるために特別に設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第7,661,326号
【文献】米国特許第6,333,197号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、実施するのが迅速かつ容易な新規の吐出方法である。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、少量の全血を使用して、例えば白血球及び網状赤血球などの血球を特徴づけるための新規の方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つの上記目的は、分析のために血液試料を希釈する方法であって、前記方法は、
a)前記試料の単一の収集を、分取装置(aliquoting device)を用いて行う工程、
b)前記試料を少なくとも1つの室(chamber)に注入する工程、
c)希釈試薬を用いて前記室で前記試料を希釈して第1の希釈液を構成する工程、
d)前記分取装置を用いて前記第1の希釈液の一部を収集する工程、
e)第2の希釈液及び第3の希釈液を得るために少なくとも2つの他の希釈を実行し、前記第1の希釈液及び第2の希釈液のそれぞれが、前記分取装置に入っている前記第1の希釈液から直接得られる工程、ならびに
f)工程a)~工程e)で、前記第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液の少なくとも1つを分析する工程
を含む、方法によって達成される。
【0009】
本発明による方法では、単一の試料収集で、3つの希釈を実行し、試料の完全な分析を実行することを可能にする。この単一の収集は、例えば20μlの量の全血又は希釈血液としてよいが、先行技術ではこの収集は一般には約120μlかそれ以上である。本方法では、第1の希釈液を第2の希釈液及び第3の希釈液のために分取装置に保持することをうまく利用するため、実施が容易であるという利点を有する。
【0010】
さらに、本発明による方法は、高速分析を可能にする。
【0011】
第2の希釈液及び第3の希釈液は、互いに独立して得られる。すなわち第3の希釈液は、第2の希釈液から得られるのではなく、分取装置に保持されている第1の希釈液から直接得られることが理解される。希釈は、単一の室又は複数の室で連続して行うことができる。
【0012】
分析の全体又は一部を、1つの室又は複数の室を含む選択した構成に応じて連続して、又は同時に(並行して)行うことができる。
【0013】
一実施形態によれば、前記分析は、第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液を、前記液に含まれる粒子を計数する及び/又は識別するための光学測定によって特徴づけることを含むことができる。
【0014】
一実施形態によれば、前記分析は、抵抗性センサを用いて第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液の粒子を計数することを含むことができる。
【0015】
光学測定は、光学台(optical bench)又は希釈に使用する室で行うことができ、その際この室には、光学装置が装備されている。
【0016】
本発明によれば、少なくとも1つの室又は光学台に1つ以上の抵抗センサを接続するか組み込むことができる。
【0017】
「光学台」とは、
- 光学手段を用いて粒子を計数すること、
- 光学手段を用いて粒子の特徴を調べること、
- 1つ以上の抵抗センサを組み込むことによって粒子を計数すること、及び
- 抵抗手段から生じる情報によって強化された光学手段を用いて粒子の特徴を調べること
を可能にする装置のことである。
【0018】
一実施形態によれば、工程e)は、
e1)前記分取装置に入っている第1の量の前記第1の希釈液、前記分取装置に残っている第2の量の前記第1の希釈液を室、好ましくは第2の室に注入する工程、
e2)第2の希釈液を構成するために、前記第2の室に入っている前記第1の希釈液を、希釈試薬を用いて希釈する工程、
e3)赤血球を破壊するために前記第1の室に溶解液(lysis solution)を注入する工程、
e4)前記第1の室に入っている前記第1の希釈液中の白血球を、前記第1の室で直接、又は前記第1の希釈液の一部を光学台に移した後に前記光学台で光学測定することによって識別する工程、
e5)好ましくは前記第1の室内で、前記第2の希釈液中の前記赤血球及び/又は血小板を計数する工程(前記光学台上でも行うことができる)、
e6)好ましくは前記第1の室内で、前記第1の希釈液中の前記白血球を計数し、及び/又はヘモグロビンを測定する工程(前記光学台上でも行うことができる)、
e7)少なくとも1つの室を濯ぐ工程、
e8)前記濯いだ室に、前記分取装置にまだ入っている前記第2の量の前記第1の希釈液の一部を注入する工程、
e9)前記濯いだ室に入っている前記液を希釈試薬を用いて希釈して第3の希釈液を構成する工程、
e10)前記第3の希釈液を分析する工程
を含むことができる。
【0019】
1回のみの試料収集で、少なくとも1つの室、好ましくは2つの室で、かつ1つの光学台で、一連の計数及び/又は識別測定を実行することが可能である。
【0020】
このような方法では、分析速度は極めて高い。例として、1時間に最低60回の試験を実行することが可能で、1回の試験には、赤血球の計数、白血球の計数、及び白血球の識別が含まれる。
【0021】
本発明の有利な特徴によれば、工程e10)で、前記第3の希釈液の一部は、赤血球、特に未成熟赤血球、網状赤血球を識別するために前記光学台に移されることが可能である。
【0022】
本発明による方法では、単一の試料収集で白血球の識別及び赤血球の識別が可能になる。特に、例えば、20μlの単一の試料収集で、1つ又は2つの室で、かつ単一の光学台で、2つの計数及び2つの識別を実行することが可能である。
【0023】
本発明の有利な特徴によれば、分取装置であって、
- 試料収集領域と前記少なくとも1つの室との間を移動できる針、
- 希釈試薬吐出装置、ならびに
- 少なくとも2つの液体通路及び1つの分量較正経路を有する試料採取弁であって、第1の液体通路は前記吐出装置を前記針に連結し、第2の液体通路は前記吐出装置を前記第2の室に連結し、前記分量較正経路は前記第1の液体通路又は前記第2の液体通路を有効にする、試料採取弁
を備えている分取装置を使用することが可能である。
【0024】
試料採取弁は、2つのセラミックディスクを有するように設計でき、セラミックディスクの1つは、分量較正経路(calibrated-volume channel)を含む。この経路は、2つの位置の間を移動でき、第1の位置では経路は第1の液体通路内に含まれ、第2の位置では経路は第2の液体通路内に含まれる。
【0025】
本発明は、針の中にある第1の希釈液を試料採取弁まで再利用する点が特に顕著である。
【0026】
先行技術のシステムでは、弁の流体経路に全血が流れることにより弁が詰まる危険性があるおそれがある。本発明では、弁の経路に流れているのは希釈した血液であるため、この危険性は著しく少ない。
【0027】
工程d)は、好ましくは、試料を収集し、針の内部及び試料採取弁の分量較正経路に保持することによって実行できる。第1の希釈液を室に注入して第2の希釈を実行するために、前記第1の量の第1の希釈液が入っている分量較正経路を第2の液体通路の上に移動させ、続いて第2の液体通路を介して第1の室又は第2の室に注入することが可能であり、前記第1の量は、試料採取弁の分量較正経路で正確に較正される。
【0028】
試料採取弁は、第1の希釈液を収集するための流体回路の一部を形成する。
【0029】
試料採取弁は、速度を上げることを可能にし、針の汚染を回避し、針は、開始試料の単一の収集のみを実行し、その後、一実施形態では、第1の希釈液を収集するためだけに機能する。実際、針は、第1の希釈液を第1の室で収集することを可能にするが、第2の室への注入は、第2の液体通路を介して直接実行される。さらに正確には、1つの管で試料採取弁を第2の室に連結することが可能になる。この特徴は、例えば、針に第1の希釈液の一部が保持されている間に第2の希釈を実行することを可能にし、これによってその後、試料の新たな収集を実行する必要なしに、第3の希釈のためにその一部を第1の室に吐出することが可能になる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、工程d)は、第1の希釈液を収集し、針の内部及び試料採取弁に保持することによって実行できる。第1の希釈液は、好ましくは試料採取弁の中に吸引され、この弁を超えて試料採取弁と吐出装置との間の管の中に吸引される。この実施形態では、分量較正経路を確実に完全に満たし、分量較正経路の容積が正確に較正されることによって正確な第2の希釈を可能にする。そのため、第2の室に注入される分量が正確にわかる。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、試料及び様々な希釈液を様々な室から収集、注入し、かつ様々な室へ収集、注入するために、精密なピストン/スポイトのセットを1つ以上含む分取装置を使用することが可能である。第1の希釈及び第3の希釈を実行するために注入された分量は、ピストン/スポイトを正確に制御することによって決定される。
【0032】
第1の希釈の工程及び第2の希釈の工程は、好ましくは、分取装置を介して希釈の試薬を注入することによって実行できる。分取装置が針及び試料採取弁を備えている場合、2つの液体通路は管を有し、その管内で、希釈試薬の吐出装置から来る希釈試薬は、試料及び/又は希釈試薬を吐出するための液体として機能する。
【0033】
本発明の特徴によれば、希釈工程の全体又は一部は、分取装置とは独立した液体通路から希釈試薬を1つ又は複数の室に直接注入することによって実行できる。
【0034】
有利には、第1の室に連結している単一の光学台を使用できる。
【0035】
本発明の有利な特徴によれば、計数の全体又は一部を、第1の室及び/又は第2の室及び/又は室が3つ以上ある場合は他の室に接続している抵抗センサを用いて実行する。
【0036】
実施例によれば、前記第1の希釈の割合は1/200であり、前記第2の希釈の割合は1/10,000であり、前記第3の希釈の割合は1/10,000であるとすることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、工程e3)での溶解液の注入は、分取装置とは独立した液体通路を介して第1の室に直接実行できる。
【0038】
この溶解液は、赤血球を破壊し、白血球を分離する機能を有する。これによって、ヘモグロビンを安定した複合体の形で安定化させることも可能になる。
【0039】
本発明の有利な特徴によれば、本方法は、毎回の光学識別測定の前に第1の室に蛍光色素を添加する工程を含むことができる。蛍光性を検知することを可能にする光学台を使用できることが好ましい。そのため、蛍光色素が存在することにより網状赤血球、未成熟赤血球を検知することが可能である。
【0040】
実際、何らかの光学測定の前に第1の希釈液及び/又は第2の希釈液及び/又は第3の希釈液に蛍光色素を添加して、蛍光性を利用して血球、例えば白血球の識別又は/及び網状赤血球の特徴調査を改善することが可能である。
【0041】
有利には、分取装置とは独立した液体通路であって、濯ぎ工程の室に直接接続されている液体通路を使用することが可能である。
【0042】
分取装置とは独立した液体通路であって、希釈工程e9)の室に直接接続されている液体通路を使用することも可能である。これは、濯ぎ用と同じ液体通路又は異なる液体通路であってよい。
【0043】
本発明によれば、工程e5)及びe6)は、並行して、又は連続して実行できる。
【0044】
並行して行う計数は、単一の吸引システムを用いて実行され、両方の室から様々な経路へ同時に吸引することが可能になる。単一又は複数の別個の吸引システムを使用して別々の(同時ではない)計数を検討することは完全に可能である。
【0045】
本発明のもう1つの態様によれば、血液試料中の細胞を自動で計数し、識別するための血液装置が提案され、該血液装置は、
- 少なくとも1つの室と、
- 少なくとも1つの室に連結している少なくとも1つの光学台と、
- 分取装置であって、
- 試料収集領域と少なくとも1つの室との間を移動できる針、
- 希釈試薬吐出装置、ならびに
- 少なくとも2つの液体通路及び1つの分量較正経路を有する試料採取弁であって、第1の液体通路は前記吐出装置を前記針に連結し、第2の液体通路は前記吐出装置を少なくとも1つの室に連結し、前記分量較正経路は前記第1の液体通路又は前記第2の液体通路を有効にする、試料採取弁
を備えている分取装置、を備えている。
【0046】
様々な工程を実施し、様々な構成要素を制御するための処理部も設けられる。
【0047】
本発明による試料採取弁は、分量較正経路を含むことができ、この分量較正経路は、第1の液体通路の一部か第2の液体通路の一部のいずれかを構成することができる。言い換えると、分量較正経路は、一方の液体通路から他方の液体通路へ切り替わる。試料採取弁が第1の液体通路にあるとき、吐出装置は、第1の液体通路に入っている液体の一部の吸引又は排出を制御でき、第2の液体通路は作動不能になる。試料採取弁が第2の液体通路にあるとき、吐出装置は、第2の液体通路に入っている液体の一部の排出を制御でき、その場合の第1の液体通路は作動不能になる。
【0048】
本発明のその他の利点及び特徴は、何ら限定的ではない実施形態の詳細な説明及び添付の図面を吟味することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】使用する準備が整った自動血液分析器を構成するいくつかの構成要素を示す概略図である。
図2】全血収集の予備工程を示す概略図である。
図3】第1の希釈を構成する工程1を示す概略図である。
図4】第1の希釈の一部を収集する工程2を示す概略図である。
図5】第2の希釈を構成する工程3を示す概略図である。
図6】白血球を識別するために光学台に移動させる工程4を示す概略図である。
図7】室を空にして濯ぐ工程5を示す概略図である。
図8】第3の希釈を構成する工程7を示す概略図である。
図9】赤血球を識別するために光学台に移動させる工程8を示す概略図である。
図10】空にして最後に濯ぐ工程9を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に記載する実施形態は、何ら限定的なものではなく、特に、記載した他の特徴とは別個に、以下に記載する特徴の抜粋のみを含んでいる本発明の変形例は、この特徴の抜粋が技術上の利点を与えるのに十分であるか、本発明を先行技術に対して差別化するのに十分であれば実施することができる。この抜粋は、少なくとも1つの好ましくは機能的な特徴を含み、この特徴は、構造の詳細がないか構造の詳細の一部を含むが、この部分単独で技術上の利点を与えるのに十分であるか、本発明を先行技術に対して差別化するのに十分である場合に限る。
【0051】
特に、記載されるすべての変形例及び実施形態は、技術的観点から見て問題がない互いのあらゆる組み合わせが提供される。
【0052】
図面においては、いくつかの図面に共通する要素に対し同じ参照番号が付与される。
【0053】
図1は、使用する準備が整って分析周期を待っている自動血液分析器を構成する構成要素を示している。
【0054】
血液中に存在する細胞の様々な種類の特徴を調べるための光学台1が見える。光学台1には、第1の室2に入っている流体を遮断したり光学台1に通したりできる電磁弁3を介して第1の室2が連結されている。第1の室2は、ソレノイド3に接続している出口21、及び抵抗率を測定するための電子手段、特に少なくとも1つのセンサ22を有する。これらの測定は、例えば細胞を計数する間に実施される。
【0055】
図を明瞭にするために、光学台1のみを示している。この光学台の中に流通セル(図示せず)を用意することは自明であり、特徴を調べる対象の流体は光学台を流れることができる。
【0056】
希釈試薬の吐出装置4も見えており、2つの並列導管C1及びC2を介して試料採取弁5に連結している。試料採取弁5は、一方側が導管C3を介して針6に連結し、他方の側が導管C4を介して第2の室7に連結している。
【0057】
試料採取弁5は、2つの液体通路及び1つの分量較正経路8を有する弁である。第1の液体通路は、導管C1とC3を分量較正経路8を介して連結することを可能にする。第2の液体通路は、導管C2とC4を分量較正経路8を介して連結することを可能にする。この分量較正経路は、このように第1の液体通路の一部か第2の液体通路の一部を形成し得るが、同時に両方は形成し得ない。有利には、この分量較正経路8は、一方の液体通路を他方の液体通路に切り替えるのに適している導管であり、流体の貯蔵部を形成し、その容積は極めて正確に事前に規定される。そのため、事前に規定した量の液体を一方の液体通路から他方の液体通路へ送ることができる。
【0058】
導管C4は、入口71を介して第2の室7に接続している。
【0059】
この第2の室7も同じく、抵抗率を測定するための電子手段、特に少なくとも1つのセンサ72を有する。これらの測定は、例えば細胞を計数する間に実施される。希釈試薬を注入するために独立した液体通路74を設けることもできる。
【0060】
様々な構成要素を制御することが可能な処理部9も見える。
【0061】
図1では、針6、第1の液体通路及び第2の液体通路、分量較正経路8ならびに室は、清潔な希釈試薬で満たされている。機械は、使用する準備が整った状態である。
【0062】
図2の予備工程では、血液は、全血10の管から針6へ収集される。その際、特定量の血液が針の一部のみに位置している。導管C1及びC3を有する第1の液体通路は、主に希釈試薬で満たされているが、針6の血液が入っている部分を除く。針が血液を収集するのは、希釈試薬の吐出装置を介した吸引機能によるものである。
【0063】
それと同時に、第1の室2は空になる。
【0064】
図3の工程1では、針6は、第1の室2まで移動して、収集された血液をすべてその中に注入する。そして、その注入は、第1の液体通路に入っていて吐出装置を介して送達される希釈試薬を充填するように継続される。このようにして沈積した血液と、収集された血液の量よりも遥かに多い量の希釈試薬との混合物は、例えば血液の量1に対して希釈試薬の量200という割合の第1の希釈液となる。
【0065】
図4の工程2では、第1の希釈液の一部が第1の室2から導管C1の一部まで収集される。その結果、針6、導管C3及び試料採取弁、特に分量較正経路8は、第1の希釈液で完全に満たされる。
【0066】
図5の工程3では、第1の希釈液で満たされた分量較正経路8は、第1の液体通路から第2の液体通路に切り替えられ、第2の液体通路はその際に作動する。工程2で第1の希釈液を導管C1の一部まで吸入したことで、分量較正経路8を完全に満たすことが可能になった。
【0067】
次に、第2の液体通路に入っている液体は、分量較正経路8に入っている量及び大部分の希釈試薬を入口71及び導管C4を介して第2の室7に注入するように押し出される。このようにして第2の希釈液が、例えば清潔な血液の量1に対して希釈試薬の量10000の割合で形成される。
【0068】
第1の室では、所望の分量の第1の希釈液が収集された時点で、針6は、第1の室2の液体と接触したままにならないように再び引き上げられ、この第1の室2に入口23を介して溶解液が注入される。溶解液は、赤血球を破壊する機能を有する。
【0069】
この段階で、第1の希釈液は、針6の中、ならびに導管C1及び導管C3を有する第1の液体通路の一部の中に残ったままであることに注意されたい。
【0070】
図6の工程4では、溶液を、白血球の個体群を識別するために第1の室2から光学台に移す。それと並行して、又は別個に、白血球は、抵抗率を測定することによって第1の室2で計数され、ヘモグロビン測定が分光光度計(図示せず)を用いて実行される。
【0071】
第2の室7では、赤血球及び血小板を、抵抗率を測定することによって計数する。第2の室7での計数は、第1の室での計数と同時に実行できる。これは特に、計数過程で両方の室に対して単一の吸引システム(図示せず)を使用する場合の事例である。実際、一連の計数には、真空を発生させることによって、室に入っている液体をインピーダンス測定原理に基づいて較正された孔を通して吸引することが必要である。
【0072】
図7の工程5では、2つの室を濯いで完全に空にし、第1の室2と光学台1との間の流体回路も同様に行う。室を濯ぐのに希釈試薬を使用して、希釈試薬を流体回路で光学台まで送り、そのようにしてこの回路を濯いで再充填することが可能である。その後、希釈試薬で満たされた分量較正経路8は、第1の液体通路に切り替えられる。
【0073】
図8の工程7では、本発明に従って第3の希釈を実行する。これを行うために、針6の中にまだ存在する量の第1の希釈液を第1の室2に注入する。特定の分量が押し出される。この工程の終わりに、残留している第1の希釈の分量が針6の中にまだある可能性がある。希釈は、第1の室2の入口24を介して希釈試薬を注入することによって実行される。吐出装置4からこの入口24への供給回路は図示していない。蛍光色素を加えることもできる。
【0074】
図9の工程8では、溶液を第1の室2から光学台1に移し、その後、赤血球と網状赤血球の識別を実行する。
【0075】
図10の工程9では、識別が完了すると、針6から残留する血液を排出する。室を濯ぎ、その後、希釈試薬を再度充填し、後続の分析を待つ。
【0076】
このように、本発明は、第1の希釈液と希釈試薬とを分けることができる分取装置をうまく使用して、単一の収集に基づいて複数の識別測定を実施することを可能にする。
【0077】
このように、本発明は、分析のために血液試料を希釈する方法、及びそのような方法を実施するための装置に関する。
【0078】
本方法では、分取装置を使用して、単一の収集を実行すること、室に第1の希釈を形成すること、第1の希釈液の一部を収集して別の室に第2の希釈を形成すること、第1の室及び第2の室にある血球を計数すること、第1の希釈に基づいて識別を実行すること、第1の室を濯ぐこと、分取装置に残っている第1の希釈液の量から開始して第3の希釈を形成すること、その後、この第3の希釈に基づいて網状赤血球の識別を実行することを可能にする。
【0079】
当然のことながら、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を超えない限り、それらの実施例に対して多くの調整をなすことができる。
図1
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図10