IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝キヤリア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図1
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図2
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図3
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図4
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図5
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図6
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図7
  • 特許-回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 27/00 20060101AFI20231211BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20231211BHJP
   F04C 23/02 20060101ALI20231211BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
F04C27/00 321
F04C23/00 F
F04C23/02 J
F04C29/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022507998
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012444
(87)【国際公開番号】W WO2021186713
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】志田 勝吾
(72)【発明者】
【氏名】長畑 大志
(72)【発明者】
【氏名】戸田 隼
(72)【発明者】
【氏名】栗田 知明
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-165502(JP,A)
【文献】特開2019-002497(JP,A)
【文献】特開2006-207532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00 - 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心部を有する回転軸と、
前記回転軸における軸方向の第1側に配置され、前記回転軸を回転させる電動機と、
前記回転軸における前記軸方向の第2側に配置され、シリンダと、前記シリンダに対して前記軸方向の第1側に設けられた主軸受と、前記シリンダに対して前記軸方向の第2側に設けられた副軸受と、を有する圧縮機構と、
前記副軸受の前記軸方向の第2側で前記回転軸に設けられたバランサと、
前記バランサを覆うバランサカバーと、を備え、
前記回転軸には、前記軸方向の第2側端面で開口する潤滑油の供給路が形成され、
前記バランサカバーにおいて、前記供給路と前記軸方向で対向する位置には、前記供給路と前記バランサカバーの外部とを連通させる供給孔が形成され、
前記バランサカバーと前記回転軸との間には、前記バランサカバー及び前記回転軸の前記軸方向での相対移動を許容した状態で、前記バランサカバーと前記回転軸との間をシールするシール機構が設けられ
前記バランサカバーは、
前記回転軸における前記軸方向の第2側端部が進入する進入孔を有するカバー本体と、
前記進入孔に対して前記軸方向で対向する位置に前記供給孔を有し、前記カバー本体に対して前記軸方向の第2側から取り付けられた蓋部材と、を備え、
前記シール機構は、前記回転軸に対して前記軸方向の第2側であって、前記回転軸と前記蓋部材との間に介在して、前記軸方向に移動可能に配置されている、
回転式圧縮機。
【請求項2】
前記シール機構は、
前記回転軸と前記蓋部材との間に介在して前記軸方向に移動可能に支持された中間部材と、
前記中間部材に設けられ、前記カバー本体及び前記蓋部材の何れか一方に密接するシール部材と、を備え、
前記シール機構は、前記軸方向の前記第1側に向けて付勢された状態で、前記回転軸の第2側端面に当接している、
請求項に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記シール部材は、断面がV字状の部材であって、V字状の開口側が前記バランサカバー内に連通し、閉塞側が供給孔に連通していることを特徴とする請求項に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記中間部材は、前記カバー本体との間に前記軸方向の隙間を有した状態で、前記回転軸における前記軸方向の第2側端面に当接し、
前記隙間は、前記中間部材と前記蓋部材とにより画成された空間に連通している、
請求項又は請求項に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
前記シール機構は、前記バランサカバーに対する前記中間部材の回転を規制する回り止め部を備えている、
請求項から請求項の何れか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項6】
前記シール部材は、弾性変形可能な材料により構成されるとともに、前記中間部材と前記蓋部材とに前記軸方向で密接し、
前記シール機構は、前記シール部材を介して前記中間部材と前記蓋部材とを前記軸方向に離間させる方向に付勢する付勢部材を備えている、
請求項から請求項の何れか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項7】
前記シール部材は、前記中間部材の外周と前記カバー本体との間に介在して、前記中間部材の前記軸方向の移動に伴い、前記カバー本体に摺動可能に構成され、
前記シール機構は、前記中間部材と前記蓋部材とを前記軸方向に離間させる方向に付勢する付勢部材を備えている、
請求項から請求項の何れか1項に記載の回転式圧縮機。
【請求項8】
請求項1から請求項の何れか1項に記載の回転式圧縮機と、
前記回転式圧縮機に接続された放熱器と、
前記放熱器に接続された膨張装置と、
前記膨張装置と前記回転式圧縮機との間に接続された蒸発器と、を備えていることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置等の冷凍サイクル装置には、回転式圧縮機が利用されている。回転式圧縮機では、回転軸の偏心部が圧縮機構で偏心回転することで、冷媒が圧縮される。
【0003】
この種の回転式圧縮機では、偏心部で発生する遠心力に伴う回転軸の振れ回りを抑制するために、例えば回転軸のうち圧縮機構よりも下方に位置する部分に、バランサを設ける場合がある。バランサは、バランサカバーにより下方から覆われている。しかしながら、従来の回転式圧縮機では、バランサカバー内からの冷媒の漏れを抑制する点で未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-165502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、バランサカバーと回転軸との間のシール性を確保できる回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転式圧縮機は、回転軸と、電動機と、圧縮機構と、バランサと、バランサカバーと、を持つ。回転軸は、偏心部を有する。電動機は、回転軸における軸方向の第1側に配置され、回転軸を回転させる。圧縮機構は、回転軸における軸方向の第2側に配置される。圧縮機構は、シリンダと、主軸受と、副軸部と、を持つ。主軸受は、シリンダに対して軸方向の第1側に設けられる。副軸受は、シリンダに対して軸方向の第2側に設けられる。バランサは、副軸受の軸方向の第2側で回転軸に設けられる。バランサカバーは、バランサを覆う。回転軸には、軸方向の第2側端面で開口する潤滑油の供給路が形成される。バランサカバーにおいて、供給路と軸方向で対向する位置には、供給路とバランサカバーの外部とを連通させる供給孔が形成される。バランサカバーと回転軸との間には、バランサカバー及び回転軸の軸方向での相対移動を許容した状態で、バランサカバーと回転軸との間をシールするシール機構が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態における回転式圧縮機の断面図を含む、冷凍サイクル装置の概略構成図。
図2】第1の実施形態における回転式圧縮機の部分断面図。
図3図1のIII-III線に相当する圧縮機構の断面図。
図4】第2の実施形態における回転式圧縮機の部分断面図。
図5】第3の実施形態における回転式圧縮機の部分断面図。
図6】第3の実施形態の変形例に係る回転式圧縮機の部分断面図。
図7】第3の実施形態の変形例に係る回転式圧縮機において、図5のVII-VII線に対応する断面図。
図8】第4の実施形態の他の構成に係る回転式圧縮機の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の回転式圧縮機及び冷凍サイクル装置を、図面を参照して説明する。以下の説明では、上述した各実施形態において、同一又は対応する構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
(第1の実施形態)
始めに、冷凍サイクル装置1について簡単に説明する。図1は、第1の実施形態における回転式圧縮機2の断面図を含む、冷凍サイクル装置1の概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態の冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、回転式圧縮機2に接続された放熱器である凝縮器3と、凝縮器3に接続された膨張装置4と、膨張装置4と回転式圧縮機2との間に接続された吸熱器としての蒸発器5と、を備えている。
【0009】
回転式圧縮機2は、いわゆるロータリ式の圧縮機である。回転式圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒とする。なお、回転式圧縮機2の具体的な構成については後述する。
凝縮器3は、回転式圧縮機2から送り込まれる高温・高圧の気体冷媒から熱を放熱させ、高圧の液体冷媒にする。
【0010】
膨張装置4は、凝縮器3から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、低温・低圧の液体冷媒にする。
蒸発器5は、膨張装置4から送り込まれる低温・低圧の液体冷媒を気化させ、低温・低圧の液体冷媒を低圧の気体冷媒にする。そして、蒸発器5において、低圧の液体冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪い、周囲が冷却される。なお、蒸発器5を通過した低圧の気体冷媒は、上述した回転式圧縮機2内に取り込まれる。
【0011】
このように、本実施形態の冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体冷媒と液体冷媒とに相変化しながら循環する。なお、本実施形態の冷凍サイクル装置1において、冷媒はR410AやR32等のHFC系冷媒、R1234yfやR1234ze等のHFO系冷媒、CO等の自然冷媒等を用いることが可能である。
【0012】
次に、上述した回転式圧縮機2について説明する。
本実施形態の回転式圧縮機2は、圧縮機本体11と、アキュムレータ12と、を備えている。
アキュムレータ12は、いわゆる気液分離器である。アキュムレータ12は、上述した蒸発器5と圧縮機本体11との間に設けられている。アキュムレータ12は、吸い込みパイプ10を通して圧縮機本体11に接続されている。アキュムレータ12は、蒸発器5で気化された気体冷媒、及び蒸発器5で気化されなかった液体冷媒のうち、気体冷媒のみを圧縮機本体11に供給する。
【0013】
圧縮機本体11は、回転軸15と、電動機16と、圧縮機構17と、これら回転軸15、電動機16及び圧縮機構17を収納する密閉容器19と、を備えている。
密閉容器19は筒状に形成されるとともに、その軸線O方向の両端部が閉塞されている。密閉容器19内には、潤滑油が収容されている。潤滑油内には、圧縮機構17の一部が浸漬されている。
【0014】
回転軸15は、密閉容器19の軸線Oに沿って同軸上に配置されている。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向を単に軸方向といい、軸方向に直交する方向を径方向といい、軸線O周りの方向を周方向という。
【0015】
電動機16は、密閉容器19内における軸方向の第1側に配置されている。圧縮機構17は、密閉容器19内における軸方向の第2側に配置されている。以下の説明では、軸方向に沿う電動機16側(第1側)を上側、圧縮機構17側(第2側)を下側とする。
【0016】
電動機16は、いわゆるインナーロータ型のDCブラシレスモータである。具体的に、電動機16は、固定子16aと、回転子16bと、を備えている。
固定子16aは、密閉容器19の内壁面に焼嵌め等により固定されている。
回転子16bは、固定子16aの内側に径方向に間隔をあけた状態で、回転軸15の上部に固定されている。
【0017】
回転子16bの上面には、バランサ20が設けられている。バランサ20は、軸方向から見た平面視で例えば円弧状に形成されている。バランサ20は、回転子16bの上面において、周方向の一部に設けられている。なお、バランサ20は、回転子16bの下面に設けてもよい。
【0018】
圧縮機構17は、密閉容器19の内周面に固定されたフレーム19aを介して密閉容器19内で固定されている。圧縮機構17は、例えば3個のシリンダ21,22,23を有する3気筒の圧縮機構である。圧縮機構17は、上述したシリンダ21~23と、複数の仕切板31,32と、主軸受33と、マフラ34と、副軸受35と、バランサカバー36と、シール機構37と、を備えている。
【0019】
本実施形態において、シリンダ21~23は、第1シリンダ21、第2シリンダ22及び第3シリンダ23である。第1シリンダ21、第2シリンダ22及び第3シリンダ23は、下方から上方にかけてこの順に並んで配置される。各シリンダ21~23は、軸方向に開口した筒状に形成されている。各シリンダ21~23は、回転軸15と同軸に配置される。
【0020】
各仕切板31,32のうち、下側仕切板31は、第1シリンダ21と第2シリンダ22との間に配置され、第1シリンダ21の上端開口部及び第2シリンダ22の下端開口部を閉塞する。上側仕切板32は、第2シリンダ22と第3シリンダ23との間に配置され、第2シリンダ22の上端開口部及び第3シリンダ23の下端開口部を閉塞する。下側仕切板31及び上側仕切板32は、軸方向から見た平面視で環状に形成されている。各仕切板31,32の内側には、回転軸15が貫通している。
【0021】
主軸受33は、第3シリンダ23の上方に配置され、第3シリンダ23の上端開口部を閉塞する。主軸受33は、回転軸15のうち、第3シリンダ23よりも上方に位置する部分(後述する主軸部71)を回転可能に支持している。具体的に、主軸受33は、回転軸15が挿通された筒部41と、筒部41の下端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部42と、を備えている。
【0022】
フランジ部42の周方向の一部には、フランジ部42を軸方向に貫通する主軸受吐出孔44が形成されている。主軸受吐出孔44は、第3シリンダ23内に連通している。なお、フランジ部42には、吐出弁機構45が配設されている。
【0023】
マフラ34は、主軸受33を上方から覆っている。マフラ34における径方向の中央部には、マフラ34の内外を連通する吐出口47が形成されている。上述した主軸受吐出孔44を通して吐出される高温・高圧の気体冷媒は、吐出口47を通して密閉容器19内に吐出される。
【0024】
図2は、第1の実施形態における回転式圧縮機2の部分断面図である。
図2に示すように、副軸受35は、第1シリンダ21の下端開口部を閉塞している。副軸受35は、回転軸15のうち、第1シリンダ21よりも下方に位置する部分(後述する副軸部73)を回転可能に支持している。具体的に、副軸受35は、回転軸15が挿通される筒部50と、筒部50の上端部から径方向の外側に向けて突設されたフランジ部51と、を備えている。
【0025】
フランジ部51の周方向の一部には、フランジ部51を軸方向に貫通する副軸受吐出孔55が形成されている。副軸受吐出孔55は、第1シリンダ21内に連通している。なお、フランジ部51には、吐出弁機構56が配設されている。
【0026】
バランサカバー36は、副軸受35を下方から覆っている。なお、バランサカバー36及びバランサカバー36の周辺構造の詳細については、後述する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の圧縮機構17には、バランサカバー36内とマフラ34内とを連通させる連通路58が形成されている。連通路58は、各シリンダ21~23、仕切板31,32及び軸受33,35を軸方向に貫通している。
【0028】
本実施形態において、副軸受35、第1シリンダ21及び下側仕切板31で囲まれた空間は、第1シリンダ室を構成する。第1シリンダ室内の冷媒は、第1シリンダ室内の圧力上昇に伴い副軸受吐出孔55が開放されることで、第1シリンダ室の外部(バランサカバー36内)に吐出される。第1シリンダ室の外部に吐出された冷媒は、連通路58を通じてマフラ34内に流入する。
下側仕切板31、第2シリンダ22及び上側仕切板32で囲まれた空間は、第2シリンダ室を構成する。第2シリンダ室内の冷媒は、第2シリンダ室内の圧力上昇に伴い、例えば下側仕切板31に形成された不図示の吐出孔が開放されることで、第2シリンダ室の外部に吐出される。第2シリンダ室の外部に吐出された冷媒は、下側仕切板31に形成された不図示の連絡路を通じて連通路58内に流入した後、マフラ34内に流入する。
主軸受33、第3シリンダ23及び上側仕切板32で囲まれた空間は、第3シリンダ室を構成する。第3シリンダ室内の冷媒は、第3シリンダ室内の圧力上昇に伴い主軸受吐出孔44が開放されることで、第3シリンダ室の外部(マフラ34内)に吐出される。なお、マフラ34内の冷媒は、吐出口47を通じて密閉容器19内に吐出される。
【0029】
次に、シリンダ室の内部構成及び動作について説明する。図3は、図1のIII-III線に相当する圧縮機構17の断面図である。以下では、代表として第2シリンダ室の内部構成を説明する。第1シリンダ室及び第3シリンダ室の内部構成は、偏心部61の偏心方向を除いて、第2シリンダ室の内部構成と同様である。
【0030】
図3に示すように、第2シリンダ室内には、偏心部61と、ローラ62と、ベーン63と、が設けられている。
偏心部61は、回転軸15に一体で形成されている。偏心部61は、回転軸15の軸線Oに対して径方向に偏心している。各シリンダ室の偏心部61の偏心方向は、周方向において120°ずつ異なっている。
ローラ62は、円筒状に形成されている。ローラ62には、偏心部61が挿入されている。
【0031】
ベーン63は、第2シリンダ22に形成されたベーン溝64に収容される。ベーン溝64は、第2シリンダ22における周方向の一部において、第2シリンダ22の内周面上で開口している。ベーン63は、径方向にスライド移動可能に構成されて、第2シリンダ室の内部に対して進退する。ベーン63は、不図示の付勢部材によって径方向の内側に向けて付勢されることで、ローラ62の外周面に当接する。ベーン63は、第2シリンダ室の内部を周方向において吸込室65と圧縮室66とに仕切る。
【0032】
第2シリンダ22には、吸込室65内と吸い込みパイプ10内とを連通させる吸込孔67が形成されている。第2シリンダ室内において、ローラ62は、回転軸15の回転に伴い、外周面が第2シリンダ22の内周面に摺接しながら、軸線Oに対して偏心回転する。ローラ62の偏心回転に伴って、吸込室65に気体冷媒を吸い込む吸込動作が行われる。また、ローラ62の偏心回転に伴って、圧縮室66で気体冷媒を圧縮する圧縮動作が行われる。圧縮された気体冷媒は、上述したように第2シリンダ室の外部に吐出される。
【0033】
図1に示すように、回転軸15は、主軸部71、駆動部72及び副軸部73を備えている。
主軸部71は、回転軸15のうち、第3シリンダ23よりも上方に位置する部分である。主軸部71は、軸線Oと同軸に配置されている。主軸部71の上端部(主軸受33の上方に位置する部分)には、上述した回転子16bが固定されている。
駆動部72は、各シリンダ21~23を軸方向に貫通している。駆動部72は、上述した偏心部61を備えている。偏心部61は、各シリンダ21~23に対応して軸方向に間隔をあけて複数(例えば、3つ)設けられている。
【0034】
図2に示すように、副軸部73は、回転軸15のうち、第1シリンダ21よりも下方に位置する部分である。副軸部73は、軸線Oと同軸に配置されている。副軸部73の下端部は、副軸受35から下方に突出している。副軸部73の下端部には、バランサ76が設けられている。
【0035】
バランサ76は、軸線Oに対して径方向に偏心した状態で、副軸部73の下端部に固定されている。バランサ20,76同士は、各偏心部61に作用する遠心力に基づいて回転軸15に作用するモーメントと、各バランサ20,76に作用する遠心力に基づいて回転軸15に作用するモーメントと、の和が0になるように、位置や重量が設定されている。これにより、回転軸15の振れ回りが抑制される。
【0036】
回転軸15には、圧縮機構17における各摺動部分(例えば偏心部61とローラ62との間等)に潤滑油を供給するための供給路90が形成されている。供給路90は、軸線Oと同軸で延在している。供給路90の下端部は、回転軸15の下端面で開口している。なお、回転軸15には、回転に伴う振動や圧力変動等によって圧縮機構17に対して上下方向に変位可能ながたが設定されている。
【0037】
供給路90の上端部は、主軸部71の下端部で終端している。但し、供給路90の軸方向での長さは、少なくともシリンダ21~23に到達している構成であれば、適宜変更が可能である。例えば、供給路90は、回転軸15を軸方向に貫通していてもよい。また、供給路90の内周面には、回転軸15の回転に伴い、潤滑油の上昇を促すねじり板等を設けてもよい。
【0038】
供給路90には、分岐流路(不図示)が接続されている。分岐流路は、回転軸15内を径方向に延在している。分岐流路は、回転軸15の外周面のうち、偏心部61とローラ62との接続部分や、主軸部71と主軸受33との摺動部分、副軸部73と副軸受35との摺動部分で開口している。なお、分岐流路の位置や形状等は、供給路90内を流れる潤滑油が潤滑対象となる摺動部分に供給される構成であれば、適宜変更が可能である。
【0039】
次に、バランサカバー36及びシール機構37について説明する。
バランサカバー36は、カバー本体100と、蓋部材101と、を備えている。
カバー本体100は、上方に開口する有底筒状に形成されている。カバー本体100は、外周部分が例えばボルト等によって副軸受35に締結されることで、副軸受35を下方から覆っている。カバー本体100の底壁103において、軸線Oと平面視で重なり合う位置には、底壁103を貫通する貫通孔105が形成されている。貫通孔105は、上方に位置するほど内径が縮小する段付き形状に形成されている。すなわち、貫通孔105は、下方に位置する大径部105aと、大径部105aの上方に連なる小径部(進入孔)105bと、を備えている。
【0040】
本実施形態において、回転軸15の下端部は、小径部105bを貫通している。具体的に、回転軸15は、圧縮機構17に対する回転軸15の上下方向の変位のうち上方への最大変位時においても、貫通孔105の内面のうち大径部105aと小径部105bとがなす段差面105cよりも下方に、回転軸15の下端面が位置するように設定されている。
【0041】
蓋部材101は、貫通孔105を覆うように、カバー本体100に下方から取り付けられている。蓋部材101は、ベースプレート110と、ベースプレート110から上方に突出する突出部111と、を備えている。
ベースプレート110は、大径部105aよりも大きい円板状をなしている。ベースプレート110は、外周部分がボルト等によってカバー本体100の底壁103に締結されることで、カバー本体100に固定されている。
【0042】
突出部111は、軸線Oと同軸に配置されている。突出部111は、大径部105a内に収容されている。図示の例において、突出部111の上端面は、小径部105bよりも下方に位置している。
蓋部材101において、軸線O上に位置する部分には、ベースプレート110及び突出部111を軸方向に貫通する供給孔115が形成されている。供給孔115は、上述した供給路90と同等の内径を有し、供給路90と軸方向で対向している。
【0043】
シール機構37は、カバー本体100と蓋部材101との間において、貫通孔105(小径部105b)を通じたバランサカバー36の内外の連通を遮断している。具体的に、シール機構37は、スラストプレート(中間部材)130と、回り止め部131と、シール部材132と、付勢部材133と、を備えている。
【0044】
スラストプレート130は、大径部105a内に収容されている。具体的に、スラストプレート130は、外径が大径部105aの内径よりも小さい円板形状に形成されている。スラストプレート130において、軸線O上に位置する部分には、スラストプレート130を軸方向に貫通する連絡孔137が形成されている。連絡孔137は、供給路90内と供給孔115内とを連通させている。すなわち、供給路90は、連絡孔137及び供給孔115を通じてバランサカバー36の外部に連通している。これにより、供給路90には、連絡孔137及び供給孔115を通じて密閉容器19内の潤滑油が流入可能になっている。
【0045】
スラストプレート130の上面のうち、連絡孔137よりも外側に位置する部分は、回転軸15の下端面に下方から当接している。これにより、回転軸15とスラストプレート130との間がシールされている。なお、供給路90や連絡孔137、供給孔115の内径は、回転軸15の下端面とスラストプレート130とが当接し、かつ供給路90がバランサカバー36の外部に連通する構成であれば適宜変更が可能である。
【0046】
スラストプレート130の厚さは、段差面105cと、突出部111の上面と、の間の軸方向の距離よりも薄くなっている。したがって、スラストプレート130は、貫通孔105内において、段差面105cと突出部111との間で軸方向に移動可能に構成されている。なお、スラストプレート130の平面視形状は、大径部105a内で軸方向に移動可能な構成であれば、適宜変更が可能である。
【0047】
本実施形態では、回転軸15の下端面が段差面105cよりも下方に位置しているため、スラストプレート130と段差面105cとの間には、隙間S1が形成されている。隙間S1は、スラストプレート130の外周面と大径部105aの内周面との間を通じてスラストプレート130の下方空間S2に連通している。したがって、下方空間S2は、隙間S1を通じてバランサカバー36内に連通している。そのため、下方空間S2内の圧力は、バランサカバー36内と同等(冷媒の吐出圧)になっている。なお、スラストプレート130は、大径部105a内に位置して、回転軸15の下端面に当接する構成であれば、適宜設計変更が可能である。
【0048】
回り止め部131は、バランサカバー36から突出するビス136が、スラストプレート130に形成された挿入孔138内で係合された構成である。
ビス136は、底壁103に形成された貫通孔135内に挿入されている。具体的に、貫通孔135は、底壁103のうち、大径部105aの上方に位置する部分を軸方向に貫通している。貫通孔135は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。ビス136は、下端部が貫通孔135よりも下方に突出した状態で、貫通孔135の内面に螺着されている。したがって、ビス136の下端部は、大径部105a内に突出している。
【0049】
挿入孔138は、スラストプレート130の外周部分に形成されている。挿入孔138は、ビス136に対応して、周方向に間隔をあけて複数形成されている。ビス136の下端部(貫通孔135よりも下方に突出した部分)は、挿入孔138内に各別に挿入されている。ビス136は、挿入孔138の内面に周方向で係合する。これにより、スラストプレート130は、ビス136によって軸方向の移動が案内された状態で、ビス136(バランサカバー36)に対する周方向の移動が規制されている。なお、回り止め部131は、スラストプレート130が軸方向に移動可能な状態で、バランサカバー36に対して回転不能に構成されていればよい。この場合、回り止め部131は、ビス136に限らず、ピン等であってもよい。また、本実施形態では、カバー本体100に突部となるビス136が設けられ、スラストプレート130に凹部となる挿入孔138が形成された構成について説明したが、この構成に限られない。カバー本体100に凹部が設けられ、スラストプレート130に凹部内で係合する突部が設けられた構成であってもよい。
【0050】
シール部材132は、例えばVパッキン等である。具体的に、シール部材132は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。シール部材132は、軸方向に沿う断面視で径方向の外側に向けて開口し径方向内側に向けて閉塞するV字状に形成されている。なお、V字状と表記するが、U字状やコ字状と同義である。シール部材132は、平面視において、軸線Oと同軸に配置されたリング状に形成されている。シール部材132の内側には、上述した突出部111が圧入等によって嵌め込まれている。シール部材132は、第1片の先端縁がスラストプレート130の下面に下方から当接している。一方、シール部材132は、第2片の先端縁がベースプレート110の上面に上方から当接している。すなわち、シール部材132は、蓋部材101とスラストプレート130との間を軸方向にシールしている。よって、シール部材132は、大径部105a内において、蓋部材101及びスラストプレート130の間を通じたバランサカバー36の内外の連通を遮断している。
【0051】
シール部材132のV字状断面の開口側(径方向の外側)は、バランサカバー36内に連通している(面している)。具体的に、シール部材132のV字状断面の開口側は、回転軸15(副軸部73)の外周面とバランサカバー36の小径部105bとの隙間、及び段差面105cとスラストプレート130との隙間等により副軸受吐出孔55から吐出される冷媒雰囲気と連通しており、吐出ガスと同等の圧力雰囲気となっている。一方、シール部材132のV字状断面の閉塞側(径方向の内側)は、供給孔115に連通している(面している)。具体的に、シール部材132のV字状断面の閉塞側は、スラストプレート130と蓋部材101との隙間及び供給孔115を介して密閉容器19内雰囲気に連通している。密閉容器19内雰囲気は、圧縮機構17から吐出された冷媒が連通路58やマフラ34を介して導通するため、圧力損失等の影響により、副軸受吐出孔55から吐出した直後の冷媒雰囲気と比較して圧力が低くなる傾向にある。そのため、シール部材132のV字状断面の閉塞側よりも開口側の圧力が高い傾向となり、V字状断面を押し広げる力が加わることで、シール性を向上させることができる。
【0052】
付勢部材133は、軸方向に沿う断面視及び平面視でリング状に形成されている。付勢部材133は、シール部材132を外側から取り囲んでいる。具体的に、付勢部材133は、シール部材132における第1片及び第2片の間に外側から嵌め込まれることで、第1片及び第2片を軸方向で互いに離間させる方向に付勢している。したがって、付勢部材133は、シール部材132を介してスラストプレート130を上方に付勢している。これにより、スラストプレート130は、回転軸15の下端面に密接した状態で、回転軸15の上下方向の変位に追従して上下方向に移動可能に構成されている。すなわち、本実施形態のシール機構37は、バランサカバー36に対する回転軸15の上下方向の変位を許容した状態で、バランサカバー36と回転軸15との間をシールしている。
換言すると、シール機構37は、バランサカバー36の供給孔115と、バランサカバー36、副軸受35及び回転軸15の外周面で囲まれる空間と、の間をシールしている。なお、バランサカバー36、副軸受35及び回転軸15の外周面で囲まれる空間は、隔壁板等で仕切られた複数の空間であっても良い。これにより副軸受吐出孔55から吐出される冷媒による騒音を低減することができる。
【0053】
次に、上述した回転式圧縮機2の作用について説明する。
図1に示すように電動機16の固定子16aに電力が供給されると、回転軸15が回転子16bとともに軸線O回りに回転する。そして、回転軸15の回転に伴い、偏心部61及びローラ62が各シリンダ21~23内で偏心回転する。このとき、ローラ62がシリンダ21~23の内周面にそれぞれ摺接する。これにより、吸込みパイプ10を通してシリンダ室内に気体冷媒が取り込まれるとともに、シリンダ室内に取り込まれた気体冷媒が圧縮される。
【0054】
圧縮された気体冷媒は、シリンダ室から吐出された後、直接的又は連通路58を通じて間接的にマフラ34内に流入した後、マフラ34の吐出口47を通して密閉容器19内に吐出される密閉容器19内に吐出された気体冷媒は、上述したように凝縮器3に送り込まれる。
【0055】
ところで、潤滑油には、密閉容器19内において冷媒の吐出圧力と同等の圧力が作用している。そのため、潤滑油は、供給孔115及び連絡孔137を通じて供給路90内に流入する。供給路90内に流入した潤滑油は、回転軸15の回転に伴う遠心力によって供給路90内を上昇した後、分岐流路に分配される。分配流路に97分配された潤滑油は、回転軸15の外周面上で排出され、各摺動部分に供給される。これにより、潤滑油は、各摺動部分の潤滑に供される。なお、各摺動部分に供給された潤滑油は、主軸部71と主軸受33との間や、シリンダ室等を通して圧縮機構17から排出される。
【0056】
ここで、本実施形態では、回転軸15とバランサカバー36との間に、回転軸15及びバランサカバー36の軸方向での相対移動に対して追従可能に、回転軸15とバランサカバー36との間をシールするシール機構37が設けられている構成とした。
この構成によれば、回転軸15とバランサカバー36との間がシール機構37によってシールされていることで、バランサカバー36内の冷媒が密閉容器19内に漏れたり、密閉容器19内に収容された潤滑油がバランサカバー36内に進入したりするのを抑制できる。
特に、本実施形態では、シール機構37がバランサカバー36及び回転軸15の軸方向での相対移動に対して追従可能であるため、振動や圧力変動等に伴う回転軸15の変位に関わらず、安定したシール性能を確保できる。
【0057】
本実施形態では、シール機構37がカバー本体100と蓋部材101との間で軸方向に移動可能に介在している構成とした。
この構成によれば、カバー本体100と蓋部材101との間にシール機構37の移動スペース(下方空間S2)を確保できる。これにより、回転軸15の変位に対してシール機構37をスムーズに追従させ易くなる。
【0058】
本実施形態では、シール機構37が上方に向けて付勢された状態で回転軸15の下端面に当接する構成とした。
この構成によれば、回転軸15の上下方向の位置に関わらず、回転軸15とシール機構37との密接状態を維持し易くなる。そのため、回転軸15とバランサカバー36との間のシール性を確保し易くなる。
【0059】
本実施形態では、段差面105cとスラストプレート130との間の隙間S1が、スラストプレート130と蓋部材101との間に画成された下方空間S2に連通する構成とした。
この構成によれば、バランサカバー36内の冷媒は、小径部105bと回転軸15との間の隙間を通じて、隙間S1及び下方空間S2に満たされる。したがって、下方空間S2の圧力をバランサカバー36内の圧力と同等に保持できる。これによって、冷媒の圧力によってもスラストプレート130を回転軸15に押し付けることができる。また、本実施形態では、シール部材132にVパッキンを用いることで、上述した冷媒の圧力が第1片及び第2片が軸方向に離間させるように作用する。そのため、スラストプレート130と回転軸15との間のシール性を確保し易くなる。
【0060】
本実施形態では、シール機構37がカバー本体100に対するスラストプレート130の回転を規制する回り止め部131を備える構成とした。
この構成によれば、スラストプレート130と回転軸15との不要な摩耗を抑制できるので、耐久性を向上させることができる。
【0061】
本実施形態では、シール部材132が弾性変形可能な材料によってスラストプレート130と蓋部材101との間に介在するとともに、付勢部材133がスラストプレート130と蓋部材101との間に介在する構成とした。
この構成によれば、シール部材132及び付勢部材133双方の付勢力によってスラストプレート130を回転軸15に押し付けることができる。これにより、スラストプレート130と回転軸15との間のシール性を向上させることができる。
【0062】
本実施形態では、シール部材132がスラストプレート130と蓋部材101との間を軸方向でシールしているため、回転軸15の上下方向の変位に伴うシール部材132の摩耗等を抑制できる。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態の冷凍サイクル装置1においては、上述した回転式圧縮機2を備えているため、長期に亘って動作信頼性及び圧縮性能の向上を図ることができる冷凍サイクル装置1を提供できる。
【0064】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る回転式圧縮機200の部分断面図である。
図4に示す回転式圧縮機200において、シール機構201のスラストプレート130には、径方向の外側に向けて開口する溝202が形成されている。溝202は、スラストプレート130の全周に亘って形成されている。
【0065】
シール部材205は、例えばOリングである。すなわち、シール部材205は、弾性変形可能な材料により形成されたリング状の部材であって、初期状態(自然長)において軸方向に沿う断面視が円形状に形成されている。シール部材205は、上述した溝202内に嵌め込まれている。シール部材205は、径方向に押し潰された状態で、スラストプレート130の外周と、大径部105aの内周面と、の間に介在している。これにより、シール部材205は、スラストプレート130とカバー本体100との間を径方向にシールしている。シール部材205は、スラストプレート130の上下方向の移動に伴い、大径部105aの内周面上を摺動する。
【0066】
付勢部材206は、例えばコイルスプリングである。付勢部材206は、スラストプレート130とベースプレート110との間に介在している。付勢部材206は、スラストプレート130を上方に向けて付勢している。なお、本実施形態において、付勢部材206は、突出部111の周囲に周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0067】
本実施形態では、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、例えば以下の作用効果を奏する。
すなわち、シール部材205と付勢部材206とを別々の位置に設けることで、シール部材205及び付勢部材206それぞれの設計自由度を向上させることができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図5は、第3の実施形態における回転式圧縮機300の部分断面図である。
図5に示す回転式圧縮機300のシール機構301において、回り止め部302は、カバー本体100の底壁103に設けられたピン303を備えている。ピン303は、底壁103に形成された貫通孔135に圧入等により固定されている。ピン303の下端部は、大径部105a内に突出している。ピン303の下端部は、スラストプレート130の挿入孔138内に挿入されることで、カバー本体100に対するスラストプレート130の周方向の移動が規制されている。なお、ピン303は、スラストプレート130及びカバー本体100の何れか一方の部材に固定され、他方の部材に挿入(係合)される構成であればよい。
【0069】
付勢部材305は、金属材料等によって形成されたリング状の板バネである。具体的に、付勢部材305は、可動片310と、規制片311と、屈曲片312と、を備えている。
可動片310は、平面視において軸線Oと同軸に配置されたリング状に形成されている。可動片310は、径方向の内側に向かうに従い上方に向けて延在している。可動片310の外周縁は、蓋部材101の上面に当接している。一方、可動片310の内周部分は、スラストプレート130の下面のうち、連絡孔137の周囲に位置する部分に当接している。可動片310は、外周縁を起点に上下方向に弾性変形可能に構成されている。
【0070】
規制片311は、可動片310の外周縁から上方に延在している。規制片311の上端部は、大径部105aの内周面と、スラストプレート130の外周面と、の間に進入している。規制片311は、大径部105aの内周面又はスラストプレート130の外周面に接触することで、スラストプレート130及びバランサカバー36に対する付勢部材305の径方向の移動を規制する。なお、規制片311は、可動片310における周方向の一部に設けられていればよい。
【0071】
屈曲片312は、可動片310の内側において、平面視でリング状に形成されている。具体的に、屈曲片312は、可動片310の内周縁(スラストプレート130との接触部分)から下方に屈曲された後、径方向の内側に延在している。屈曲片312の内側開口部は、供給路90内と供給孔115内とを連絡する連絡孔315を構成している。
【0072】
本実施形態では、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、例えば以下の作用効果を奏する。
すなわち、付勢部材305が蓋部材101及びスラストプレート130それぞれに軸方向で接触することで、バランサカバー36と回転軸15との間をシールすることができる。これにより、シール部材と付勢部材とを別々に設ける場合に比べ、部品点数の削減を図ることができる。
また、付勢部材305に金属材料を用いることで、樹脂材料等を介在させる場合に比べ、耐熱性等を向上させることができ、シール機構301の耐久性を向上させることができる。
【0073】
上述した実施形態では、蓋部材101が平板状に形成された構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図6に示すように、蓋部材101のうち、屈曲片312と平面視で重なり合う部分に、上方に向けて膨出する膨出部350を形成してもよい。この場合には、屈曲片312が膨出部350に接触することで、可動片310の下方への変位が規制される。すなわち、膨出部350の軸方向の位置によって可動片310の変位量を調整することができる。
【0074】
上述した実施形態では、回り止め部として、軸方向に突出又は窪む構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図7に示すように、例えばスラストプレート130から径方向に突出する突部320が、大径部105aの内周面に形成された凹部321内に収容される構成であってもよい。
【0075】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施形態における回転式圧縮機400の部分断面図である。
図8に示す回転式圧縮機400において、カバー本体100の底壁103には、進入孔401が形成されている。進入孔401内には、回転軸15の下端部が挿入されている。進入孔401の内周面には、径方向の外側に向けて窪む凹溝402が形成されている。凹溝402は、進入孔401の全周に亘って延びるとともに、進入孔401の内周面上で開口している。
【0076】
蓋部材101は、カバー本体100の進入孔401を下方から覆うように、底壁103に取り付けられている。蓋部材101の上面には、回転軸15の下端面が上方から当接している。蓋部材101のうち、供給路90と軸方向で対向する部分には、供給路90をバランサカバー36の外部に開放するための供給孔410が形成されている。
【0077】
本実施形態のシール機構411は、例えばVパッキンである。シール機構411は、上方に向けて開口した状態で、凹溝402内に嵌め込まれている。シール機構411のうち、第1片は凹溝402の底面に当接し、第2片は回転軸15の外周面に当接している。これにより、シール機構411は、バランサカバー36と回転軸15との間を径方向にシールしている。
【0078】
本実施形態においては、上述した実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、以下の作用効果を奏する。
すなわち、回転軸15の変位に伴い、シール機構411の第2片が回転軸15の外周面上を摺動する。これにより、バランサカバー36に対する回転軸15の変位を許容した上で、バランサカバー36と回転軸15との間をシールできる。
特に、シール機構411がVパッキンのみで構成されているため、部品点数の削減も図ることができる。
【0079】
しかも、本実施形態では、シール機構411として上方に開口するVパッキンを用いることで、バランサカバー36内の冷媒圧力が第1片及び第2片を離間させる方向に作用する。これにより、バランサカバー36と回転軸15との間のシール性を向上させることができる。
【0080】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、回転軸と、電動機と、圧縮機構と、バランサと、バランサカバーと、を持つ。回転軸は、偏心部を有する。電動機は、回転軸における軸方向の第1側に配置され、回転軸を回転させる。圧縮機構は、回転軸における軸方向の第2側に配置される。圧縮機構は、シリンダと、主軸受と、副軸部と、を持つ。主軸受は、シリンダに対して軸方向の第1側に設けられる。副軸受は、シリンダに対して軸方向の第2側に設けられる。バランサは、副軸受の軸方向の第2側で回転軸に設けられる。
バランサカバーは、バランサを覆う。回転軸には、軸方向の第2側端面で開口する潤滑油の供給路が形成される。バランサカバーにおいて、供給路と軸方向で対向する位置には、供給路とバランサカバーの外部とを連通させる供給孔が形成される。バランサカバーと回転軸との間には、バランサカバー及び回転軸の軸方向での相対移動を許容した状態で、バランサカバーと回転軸との間をシールするシール機構が設けられている。
この構成によれば、バランサカバーと回転軸との間のシール性を確保できる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、ローラ62とベーン63ブレードとが別体である構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、ローラとベーンとが一体となったスイングタイプであっても構わない。
上述した実施形態では、3気筒の圧縮機構17を例にして説明したが、この構成に限られない。3気筒以外の圧縮機構であってもよい。
また、上述した複数の実施形態において、カバー本体100にはスラストプレート130の動作を規制するための回り止め部131(又はピン303)と、回り止め部131等を固定する段差部と、を有しているが、段差部を設けなくともよい。すなわち、段差面105c、小径部105b及び回り止め部131等を設けることなく、大径部105aがカバー本体100を貫通している形態としても良い。この場合、スラストプレート130の上面全体が大径部105aを通じてカバー本体100内に露呈する。
【符号の説明】
【0083】
1…冷凍サイクル装置、2,200…回転式圧縮機、3…凝縮器、4…膨張装置、5…蒸発器、15…回転軸、16…電動機、17…圧縮機構、21…第1シリンダ(シリンダ)、22…第2シリンダ(シリンダ)、23…第3シリンダ(シリンダ)、33…主軸受、35…副軸受、36…バランサカバー、37…シール機構、76…バランサ、90…供給路、100…カバー本体、101…蓋部材、105b…小径部(進入孔)、115…供給孔、130…スラストプレート(中間部材)、131…回り止め部、132…シール部材、133…付勢部材、135…貫通孔、136…ビス、137…連絡孔、138…挿入孔、200…回転式圧縮機、201…シール機構、202…溝、205…シール部材、206…付勢部材、300…回転式圧縮機、301…シール機構、302…回り止め部、305…付勢部材、400…回転式圧縮機、401…進入孔、410…供給孔、411…シール機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8