(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】シリコーンによって処理された組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C04B 7/52 20060101AFI20231211BHJP
C04B 24/40 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C04B7/52
C04B24/40
(21)【出願番号】P 2022535550
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 RU2019000936
(87)【国際公開番号】W WO2021118392
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィドフ,ドミトリー・アレクサンドロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ファンホワ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジェン
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108424012(CN,A)
【文献】特開2002-160959(JP,A)
【文献】特表2002-533297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン含有粉砕助剤で処理された、鉱物混合物又はクリンカーの粉砕結果であるセメントを含み、
前記セメント中の石灰石は、前記セメントの100重量%を基準として、3重量%以
上であり、
前記シリコーン含有粉砕助剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサンである式1におけるシリコーンを含有し、
【化1】
式中、各Rは、同一であるか、又は異なり、C1-C40一価炭化水素基、ヘテロ原子を有するC1-C40一価炭化水素
基を表し、
R
1は、1~40の炭素原子を有する二価炭化水素
基を表し、
R
2は、CH
2CH
3、COH(CH
3)
2、COCH
3、CH
3又はHを表し、
EOはCH
2CH
2Oを表し、POはCH
2(CH
3)CH
2Oを表し、
aは0~12から選択され
る整数であり、bは0~3から選択される整数であり、a+b≧1であり、xは0~3の整数であり、yは1~3の整数であり、x+y≧1である、
組成物。
【請求項2】
式1におけるシリコーンが、100重量%としての組成物の総重量を基準として、15~1000pp
mで存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
シリコーン含有粉砕助剤が水性系である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式1におけるシリコーンの用量が、100重量%としてのシリコーン含有粉砕助剤の総重量を基準として、0.1~50重量
%である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
クリンカー又はセメント粉砕の効率を改善するための方法であって、ボールミル中に、式1におけるシリコーン又は請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコーン含有粉砕助剤によってクリンカー又は鉱物混合物を処理する工程を含み、前記クリンカー又は前記鉱物混合物中の石灰石は、前記クリンカー又はセメントの100重量%を基準として、3重量%以
上である、方法。
【請求項6】
式1におけるシリコーンが、100重量%としてのセメントの総重量を基準として、15~1000pp
mの量で存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
粉砕効率が向上
する、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
セメントの圧縮強度を改善する、セメント製造における粉砕助剤としての請求項1に記載の式1におけるシリコーンの使用であって、前記セメント中の石灰石は、前記セメントの100重量%を基準として、3重量%以
上である、使用。
【請求項9】
セメントペースト、モルタル又はコンクリートの圧縮強度を改善する、セメントペースト、モルタル又はコンクリート調製物中の後添加剤としての請求項1に記載の式1におけるシリコーンの使用であって、
前記セメントペースト、モルタル又はコンクリートはすべてセメントを含有し、前記セメント中の石灰石は、前記セメントの100重量%を基準として、3重量%以
上である、使用。
【請求項10】
式1におけるシリコーンが、100重量%としてのセメントの総重量を基準として、15~1000pp
mの量で存在する、請求項8又は9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリンカーを粉砕することにおけるシリコーンの新規使用及び該使用から得られるセメント型製品に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、材料を互いに結合するのに有用な多くの異なる種類の作用物質を表すために使用される。本発明は、道路、橋梁、建物などの構造要素を形成するのに有用な水硬性セメントに関する。水硬性セメントは、単独で又は骨材とともに、水と混合されると、セメントペースト、モルタル又はコンクリートなどの岩のように硬い製品を形成する粉末材料である。セメントペーストは、水を水硬性セメントと混合することによって形成される。モルタルは、水硬性セメントを小骨材(例えば、砂)及び水と混合することによって形成される。コンクリートは、水硬性セメントを小骨材、大骨材(例えば、0.5~2.5cmの石)及び水を混合することによって形成される。例えば、ポルトランドセメントは、一般的に使用される水硬性セメント材料である。
【0003】
一般に、水硬性セメントは、炭酸カルシウム(石灰石として)、ケイ酸アルミニウム(粘土又は頁岩として)、二酸化ケイ素(砂として)及び少量の酸化鉄を含む成分の混合物を焼結することによって調製される。これらの成分は、焼結工程中に、個別の独自性を失い、化学的に変換される。焼結工程中に、一般にクリンカーと呼ばれる硬化した団塊が形成される化学反応が起こる。
【0004】
クリンカーは冷却した後、次いで、セメント粉砕ミル中の少量の石膏(硫酸カルシウム)(約5~20重量%)とともにボールミルに移動して、微細で均質な粉末状生成物を与える。ある特定の事例においては、特定の種類の水硬性セメントを提供するために、他の材料がクリンカーとともに粉砕され、又はクリンカーと混合され得る。しばしば添加される成分は、高価なクリンカー材料の一部の代用となる石灰石、高炉水砕スラグ、ポゾラン又はフライアッシュである。
【0005】
石灰石及びクリンカーは、一緒に粉砕され得、又は別々に粉砕された後、一緒に混合され得る。
【0006】
スラグ及びフライアッシュは、クリンカーと比較して、一般に活性がより低い。石灰石成分は、完全に不活性な増量剤であり、単独では一切の結合活性を保有しない。これらの成分は、コストの節約が最も重視され、強度のいくらかの低下は許容されるセメントにおいて使用される。
【0007】
「混合セメント」という用語は、その組成の一部として、5~80重量%(より慣用的には、5~60重量%)のスラグ、フライアッシュ、石灰石又はそれらの組み合わせを有する水硬性セメントを指す。
【0008】
水硬性セメント製品には、ポルトランドセメント、高炉スラグセメント、スラグ改質ポルトランドセメント、複合セメントなどが含まれる。
【0009】
クリンカーの硬度故に、クリンカーを適切な粉末形態に適切に粉砕するためには大量のエネルギーが必要とされる。仕上げ粉砕のために必要とされるエネルギーは、クリンカー又は鉱物混合物の性質に応じて変化し得る。
【0010】
グリコール、アルカノールアミン、芳香族アセテートなどのいくつかの材料は、必要とされるエネルギーの量を低減し、それにより、セメントを得るためのクリンカー又は鉱物混合物の粉砕の効率を改善することが示されている。粉砕助剤として一般に知られているこれらの材料は、少量でミルの中に導入され、均一な粉末状混合物を得るためにクリンカー又は鉱物混合物と一緒に粉砕される加工添加剤である。
【0011】
今日使用されている粉砕助剤の主要なクラスの1つは、30~40重量%固形分の水性系の形態でのジエチレングリコールなどの低級アルキレングリコールのオリゴマーである。低級アルキレングリコールのオリゴマーは、入手可能性及び低コストのために使用されている。
【0012】
CN108424012Aは、鉄鋼スラグ粉砕効率を改善することができる液体粉砕助剤を開示している。このような粉砕助剤は、混合物であり、粉砕補助分散剤(シリコーン界面活性剤)、可溶化剤、無機塩、ポリエチレングリコール及び水を含有する。シリコーン界面活性剤は、ポリオキシエチレン変性トリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性ヘプタメチルトリシロキサン又はポリエーテルホスフェート変性シリコーンである。
【0013】
CN108239243Aは、ポリエーテル側鎖で変性された有機シリコーンを調製する方法及びセメント製品調製における粉砕助剤としてのこのシリコーンの使用を開示している。
【0014】
CN1332705A又はEP1144331A1は、スラグ及びスラグ/クリンカー混合物のための粉砕助剤を開示している。トリメチルで末端を封鎖されたポリジオルガノシロキサン又はアルコキシシラン又はヒドロキシルで終端するポリジオルガノシロキサンを含有するこのような粉砕助剤。この粉砕助剤は、スラグ1メートルトン当たり10グラム~2万グラムの量で使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】中国特許出願公開第108424012号明細書
【文献】中国特許出願公開第108239243号明細書
【文献】中国特許出願公開第1332705号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1144331号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明のシリコーンは、仕上げ粉砕中のクリンカー又は鉱物混合物の粉砕効率を改善し、その結果、仕上げ粉砕過程中に消費されるエネルギーの量を低減する。さらに、粉砕助剤を含有する、上記から得られたセメントから製造されたコンクリート又はモルタルは、そのような粉砕助剤なしに製造されたコンクリート又はモルタルよりも優れた短期及び長期圧縮強度を示す。
【0017】
本発明の目標を達成するための技術プロトコルは、以下のように結論付けることができる:
シリコーン含有粉砕助剤で処理されたセメントを含み、
前記セメント中の石灰石は、前記セメントの100重量%を基準として、3重量%以上、好ましくは3~45重量%、より好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~25重量%、より好ましくは12~20重量%であり、
前記シリコーン含有粉砕助剤は、ポリエーテル変性ポリシロキサンである式1におけるシリコーンを含有し、
【0018】
【化1】
式中、各Rは、同一であるか、又は異なり、C1-C40一価炭化水素基、ヘテロ原子を有するC1-C40一価炭化水素基、好ましくはメチル、エチル、OH、アミノエチル アミノプロピル、より好ましくはメチル、エチルを表し、
R
1は、1~40の炭素原子を有する二価炭化水素基、好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、より好ましくはプロピレンを表し、
R
2は、CH
2CH
3、COH(CH
3)
2、COCH
3、CH
3又はHを表し、
EOはCH
2CH
2Oを表し、POはCH
2(CH
3)CH
2Oを表し、
aは0~12から選択される、好ましくは6~8から選択される整数であり、bは0~3から選択される整数であり、a+b≧1であり、xは0~3の整数であり、yは1~3の整数であり、x+y≧1である、
組成物。
【0019】
上記シリコーン含有粉砕助剤で処理された鉱物混合物を含み、鉱物混合物中の石灰石は、鉱物混合物の100重量%を基準として、5重量%以上、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~20重量%、より好ましくは12~20重量%である、組成物。
【0020】
本発明において、鉱物混合物は、焼結クリンカー、任意選択の石膏、任意選択の粉砕された石灰石、任意選択のスラグ、任意選択のポゾラン及び任意選択のフライアッシュを含有する混合物である。鉱物混合物は、ボールミルにおける粉砕工程の前の混合物である。鉱物混合物粒子の直径は、通常、3~50mm、好ましくは3~10mmである。鉱物混合物において、クリンカーは、鉱物混合物の100重量%を基準として、鉱物混合物の最大70重量%、好ましくは80重量%超、より好ましくは90重量%超を占める。
【0021】
ボールミルでの粉砕工程の後、鉱物混合物はセメントに変えられる。鉱物混合物の重量はセメントの重量とほぼ同じままであるが、結合活性は大きく変化する。
【0022】
本発明において、ボールミル又は仕上げミル又はセメント粉砕ミルは、鉱物混合物に対する最後の粉砕工程を意味する。
【0023】
上記組成物によれば、クリンカーは、0~90%の石灰石、0~90%の珪砂、0~90%の粘土又は頁岩を含有する混合物を焼結することによって作製された。
【0024】
上記組成物によれば、上記シリコーン含有粉砕助剤で処理されたセメントの含有量は、100重量%としての組成物の総重量を基準として、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは85重量%以上、より好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0025】
上記組成物によれば、含水量は、100重量%としての組成物の総重量を基準として、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。
【0026】
上記組成物によれば、式1におけるシリコーンは、100重量%としての組成物の総重量を基準として、15~1000ppm、好ましくは15~500ppm、より好ましくは50~300ppmで存在する。
【0027】
上記組成物によれば、シリコーン含有粉砕助剤は水性系である。
【0028】
上記組成物によれば、式1におけるシリコーンの用量が、100重量%としてのシリコーン含有粉砕助剤の総重量を基準として、0.1~50重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1~10重量%である。
【0029】
上記組成物によれば、油の用量は、100重量%としてのシリコーン含有粉砕助剤の総重量を基準として、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である。
【0030】
本発明において、油は、室温(23±2℃)温度で粘性の液体であり、疎水性かつ親油性である任意の非極性化学物質であり、ポリジメチルシロキサン、鉱油又は植物油から選択される。
【0031】
上記組成物によれば、シリコーン含有粉砕助剤は、式1におけるシリコーンと第2の物質との混合物を含み、第2の物質は、一置換、二置換又は三置換されたエタノールアミン;一置換、二置換又は三置換されたオキシエタノールアミン;一置換、二置換又は三置換されたプロパノールアミン;一置換、二置換又は三置換されたイソプロパノールアミン;グリセリンを含む多原子アルコール;異なる分子量のポリオキシエテレングリコール;異なる分子量のポリプロピレングリコールからなる群から選択される1つ以上である。
【0032】
上記組成物によれば、第2の物質の用量は、100重量%としてのシリコーン含有粉砕助剤の総重量を基準として、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。
【0033】
上記組成物によれば、100重量%としての組成物の総重量を基準として、組成物の重量に対して0.1~90重量%の量で、好ましくは、1~50重量%の量で、より好ましくは1~30重量%の量で、好ましくは1~10重量%の量で、処理されていないクリンカーをさらに含む。
【0034】
上記組成物によれば、100重量%としての組成物の総重量を基準として、組成物の重量に対して0.1~90重量%の量で、好ましくは、1~50重量%の量で、より好ましくは1~30重量%の量で、好ましくは1~10重量%の量で、処理されていない鉱物混合物をさらに含む。
【0035】
上記組成物によれば、100重量%としての組成物の総重量を基準として、組成物の重量に対して0.1~90重量%の量で、好ましくは、1~50重量%の量で、より好ましくは1~30重量%の量で、好ましくは1~10重量%の量で、処理されていないセメントをさらに含む。
【0036】
本発明において、「処理されていない」クリンカー、鉱物混合物又はセメントは、式(1)におけるシリコーンによっても、他の有機粉砕助剤によっても処理されていないことを意味する。
【0037】
本発明において、「処理された」クリンカー、鉱物混合物又はセメントは、好ましくはボールミルにおける粉砕過程の前、最中又は後に、より好ましくはボールミルにおける粉砕過程の最中に、式1におけるシリコーン又はシリコーン含有粉砕助剤によって処理されたことを意味する。
【0038】
上記組成物によれば、処理されていないセメントは、ボールミルにおける粉砕過程後には、処理されたセメントと混合されている。
【0039】
上記方法によれば、処理されていないセメントは、ボールミルによって粉砕されている。
【0040】
上記組成物によれば、組成物の圧縮強度は改善されている。
【0041】
シリコーン含有粉砕助剤は、50~99.9重量%、好ましくは80~99.5重量%、より好ましくは85~99重量%の水と、
0.1~50重量%、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%の、式1におけるシリコーンと、
0~10重量%の第2の物質と、
を含有する水性系であり、
水性系は、粒子、球、層又は液晶構造、より好ましくは球又は層から選択される自己組織化構造を含有する。
【0042】
上記シリコーン含有粉砕助剤によれば、水性系はミセルである。水性系はエマルジョンではない。
【0043】
本発明において、ミセルは、液体コロイド中に分散された界面活性剤分子の強凝集体である。水溶液中の典型的なミセルは、周囲の溶媒と接触している親水性「頭部」領域を有する強凝集体を形成し、ミセル中心内に疎水性尾部領域を閉じ込める。式1におけるシリコーンは、本発明において界面活性剤分子のように作用する。
【0044】
クリンカー又はセメント粉砕の効率を改善するための方法であって、ボールミル中に、式1における上記シリコーン又はシリコーン含有粉砕助剤によってクリンカー又は鉱物混合物を処理する工程を含み、前記クリンカー又は前記鉱物混合物中の石灰石は、前記クリンカー又はセメントの100重量%を基準として、3重量%以上、好ましくは3~45重量%、より好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~25重量%、より好ましくは12~20重量%である、方法。
【0045】
上記方法によれば、式1におけるシリコーンは、100重量%としてのセメントの総重量を基準として、15~1000ppm、好ましくは15~500ppm、より好ましくは50~300ppmの量で存在する。
【0046】
上記方法によれば、粉砕効率が向上し、好ましくはボールミル内の温度が低下される。
【0047】
セメントは、上記処理されたクリンカー又は処理された鉱物混合物から作製される。
【0048】
セメントは、上記組成で作製される。
【0049】
上記セメントによれば、セメントの圧縮強度が改善されている。
【0050】
セメントの圧縮強度を改善する、セメント製造における粉砕助剤としての式1におけるシリコーンの使用であって、前記セメント中の石灰石は、前記セメントの100重量%を基準として、3重量%以上、好ましくは3~45重量%、より好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~25重量%、より好ましくは12~20重量%である、使用。
【0051】
上記使用によれば、粉砕効率を増大させ、好ましくはボールミル中の温度を低下させる。
【0052】
セメントペースト、モルタル又はコンクリートの圧縮強度を改善する、セメントペースト、モルタル又はコンクリート調製物中の後添加剤としての式1におけるシリコーンの使用であって、
前記セメントペースト、モルタル又はコンクリートはすべてセメントを含有し、前記セメント中の石灰石は、セメントの100重量%を基準として、3重量%以上、好ましくは3~45重量%、より好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~25重量%、より好ましくは12~20重量%である、使用。
【0053】
セメントペースト、モルタル又はコンクリートの圧縮強度を改善する、セメントペースト、モルタル又はコンクリート調製物中の後添加剤としてのシリコーン含有粉砕助剤の使用であって、
前記セメントペースト、モルタル又はコンクリートはすべてセメントを含有し、前記セメント中の石灰石は、セメントの100重量%を基準として、3重量%以上、好ましくは3~45重量%、より好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~25重量%、より好ましくは12~20重量%である、使用。
【0054】
上記使用によれば、式1におけるシリコーンは、100重量%としてのセメントの総重量を基準として、15~1000ppm、好ましくは15~500ppm、より好ましくは50~300ppmの量で存在する。
【0055】
本発明において、後添加剤とは、水と混合する過程の前又は後又は間に、好ましくはセメントペースト、モルタル又はコンクリートの製造過程の間に、セメント、任意選択の小骨材、任意選択の大骨材、任意選択の大きな石灰石を水と混合する過程の間に、式1におけるシリコーン又はシリコーン含有粉砕助剤を添加することを意味する。
【0056】
上記使用によれば、セメントペースト、モルタル又はコンクリートの圧縮強度が改善される。
【発明を実施するための形態】
【0057】
すべての百分率、比、部及び割合は、特に明記しない限り重量による。
【0058】
ポリエトキシレートによって変性されたトリシロキサンであるシリコーン1は、上記式1に属し、100重量%純度で、WACKER Chemie AGによって提供される。このようなものから作られた粉砕されたクリンカー(又は粉砕された鉱物混合物)の、m2/Kgで表され、ブレーンと呼ばれる比表面積を、EN196-6を使用して測定した。3つの異なる試料の平均値を取得し、EN196-6によって定義され、セメント生産者によっても受容されている基準に従って、平均から5%を超える変動を有する値は破棄した。ブレーンは、得られるセメントの強度と直接相関する。
【実施例】
【0059】
[実施例1]
モルタルの強度の実験室試験
混合物1(すなわち、シリコーン含有粉砕助剤の一種)は、シリコーン1を水と混合することによって調製される水性系であり、シリコーン1の含有量は、100重量%としての混合物1の総重量を基準として1重量%である。
【0060】
混合物1は、シリコーン1が水に添加された後、シリコーン1の分子によって形成された自己組織化構造を含有する。
【0061】
モルタル調製の手順は以下の通りであった。
【0062】
混合物1及び水をミキサーに添加し、140rpmでの混合中に450gの量でセメントを添加する。30秒以内に混合し、次いで、285rpmでのミキサーの回転中に、砂(ISO EN196-1に準拠)を1350gの量で添加する。砂の添加後、60秒以内に285rpmで混合し続ける。その後、混合せずに90秒間静置した後、140rpmの速度で60秒間混合する。モルタルを調製した後、鋼の鋳型にモルタルを詰めて40×40×160mmの角柱を得た。
【0063】
90%相対湿度(RH)及び(20±2)℃の温度で24時間、鋳型内にモルタルを保持する。その後、試料を鋳型から取り出し、(20±2)℃の水に7日間置いた。7日後、試料をRH90%及び(20±3)℃のチャンバーに戻し、さらに21日間チャンバーに保持する。
【0064】
28日後、圧縮強度及び曲げ強度の測定を行う。
【0065】
得られた結果は、表1-2中に表されるいくつかのセメントタイプに対して実証した。
【0066】
【0067】
【0068】
結果は、混合物1の添加が、ブランクモルタル混合物と比較して+5~20%で圧縮強度を増加させることを示している。この効果は、石灰石含有量が高いセメントでより高く、石灰石を含有しないセメントでは効果がない。
【0069】
[実施例2]
実験室ボールミル試験
ボールミルは100Lの内容積を有した。ボールミルに粉砕体を40容積%充填した。(直径で測定された)粉砕体の割合は以下の通りであった:
20mm-25%、30mm-35%、40mm-15%、50mm-15%、70mm-10%。
【0070】
鉱物混合物2の量は以下の通りであった:クリンカー95重量%、石膏5重量%、5265gの総重量。
【0071】
混合物2(すなわち、シリコーン含有粉砕助剤の一種)は、シリコーン1を水と混合することによって調製され、シリコーン1の含有量は、100重量%としての混合物2の総重量を基準として10重量%である。
【0072】
鉱物混合物2中のシリコーン1の用量は、100重量%としての鉱物混合物2の総重量を基準として、約200ppmである。
【0073】
粉砕前の鉱物混合物2の直径は3~10mmの範囲であった。粉砕時間は40分に固定した。速度は最大の50%であった。粉砕過程の後、セメント1又はセメント2を調製する。
【0074】
モルタル2-1及びモルタル2-2は、実施例1のもの及びEN196-1に従って調製される。
【0075】
【0076】
【0077】
表2-2において、混合物2の効果は、温度-蒸気処理で見られる:相対湿度90%及び温度80℃のチャンバー内に24時間曝露した後のモルタル2-1の試料の圧縮強度は、従来の混合物で処理された試料の圧縮強度より4%高い。
【0078】
モルタル及びコンクリート生産者にとって極めて重要なパラメータの1つは、初期及び最終凝結時間である。モルタル2-1の初期凝結時間は、モルタル2-2の初期凝結時間より26分長い。最終凝結時間も、モルタル2-1の方が23分長い。
【0079】
クリンカー-石膏鉱物混合物の粉砕過程中に混合物2を使用すると、従来の混合物と比較して20~15%、初期及び最終凝結時間の両方が延長され、さらに圧縮強度が保持されることを実証する。この技術的効果は、混合物2を従来の粉砕助剤及び従来の凝結遅延剤とは異ならせる。従来の酸系凝結遅延剤の使用は、通例、モルタル及びコンクリートの圧縮強度を減少させる。
【0080】
[実施例3]
工業試験結果
試験はセメント製造工場のラインで1シフト以内に行われた。鋼球を備えた横型ボールミルを用いた。
【0081】
表3-2の数字は、混合物2を添加することによるより高い効率を示す。ボールミル中で粉砕した後、CEM II A-L 42.5N型(EN197-1)のセメントが得られる。
【0082】
【0083】