(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20231211BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20231211BHJP
【FI】
H02J9/06
H02M7/48 N
(21)【出願番号】P 2022561428
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2022022191
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百地 伸行
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/178969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0256422(US,A1)
【文献】米国特許第6295215(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0278931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J9/00-11/00
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源と三相交流負荷との間に接続され、前記三相交流電源の停電時に前記三相交流負荷に電力を供給する補償給電回路と、
前記三相交流電源と前記三相交流負荷との間で前記補償給電回路と電気的に並列に設けられたバイパス回路とを備え、
前記バイパス回路は、
前記三相交流負荷の第1から第3の相にそれぞれ接続された第1から第3スイッチと、
前記第1から第3スイッチにそれぞれ電気的に並列に設けられた第1から第3回路とを含み、
前記第1から前記第3回路の各々は、
第1スナバ回路と、
前記第1スナバ回路と前記三相交流電源との間に設けられる第2スナバ回路と、
前記第1スナバ回路と前記第2スナバ回路との間の電力線とを含み、
前記第1から前記第3回路の各々の前記電力線は、互いに電気的に接続される、無停電電源装置。
【請求項2】
前記第1および第2スナバ回路の各々は、
キャパシタと、
前記キャパシタに電気的に並列に接続された電気抵抗とを含む、請求項1に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2020/021591号は、無停電電源装置を開示する。この無停電電源装置は、インバータ回路と、バイパス回路とを備える。これらの回路は、三相交流電源と三相交流負荷との間に設けられる。インバータ回路は、三相交流電源の停電中に三相交流負荷に電力を供給するように構成される。バイパス回路は、インバータ回路に電気的に並列に接続され、スイッチを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のスイッチの切り替え時には、サージが発生することがある。そのようなサージの低減の観点から、バイパス回路は、スナバ回路を含むことが好ましい。この場合、停電中に、インバータ回路(給電補償回路)の出力端子からスナバ回路を通じてバイパス回路の入力端子に電圧が印加されることがある。そのような電圧は、バックフィード電圧と呼ばれ、低減されることが好ましい。
【0005】
本開示は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、三相交流電源の停電中のバックフィード電圧を低減するための無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の無停電電源装置は、補償給電回路と、バイパス回路とを備える。補償給電回路は、三相交流電源と三相交流負荷との間に接続され、三相交流電源の停電時に三相交流負荷に電力を供給する。バイパス回路は、三相交流電源と三相交流負荷との間で補償給電回路と電気的に並列に設けられる。バイパス回路は、第1から第3スイッチと、第1から第3回路とを含む。第1から第3スイッチは、三相交流負荷の第1から第3の相にそれぞれ接続される。第1から第3回路は、第1から第3スイッチにそれぞれ電気的に並列に設けられる。第1から第3回路の各々は、第1スナバ回路と、第2スナバ回路と、電力線とを含む。第2スナバ回路は、第1スナバ回路と三相交流電源との間に設けられる。電力線は、第1スナバ回路と第2スナバ回路との間に設けられる。第1から第3回路の各々の電力線は、互いに電気的に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、三相交流電源の停電中のバックフィード電圧を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態に従う無停電電源装置の構成を示す図である。
【
図2】電源が正常状態にある場合の電力の流れを説明するための図である。
【
図3】この実施の形態において停電時の電力の流れを説明するための図である。
【
図4】第1比較例における無停電電源装置の構成を示す図である。
【
図5】第1比較例においてバックフィード電圧が発生する様子を示す図である。
【
図6】第1比較例におけるバイパス回路の入力端子の電圧の推移を説明するためのタイミングチャートである。
【
図7】第2比較例における無停電電源装置の構成を示す図である。
【
図8】本実施の形態におけるバイパス回路の入力端子の電圧の推移を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0010】
図1は、実施の形態に従う無停電電源装置100の構成を示す図である。
図1を参照して、無停電電源装置100は、電源21と負荷22との間に接続されている。
【0011】
電源21は、三相交流電源であり、電力線PLU,PLV,PLWと、中性線PLNとを通じて無停電電源装置100に接続されている(三相四線方式)。中性線PLNは、電位が0であるグランド(アース)に接続されている。
【0012】
負荷22は、三相交流電力を受けて作動する三相交流負荷であり、U相の入力端子23U、V相の入力端子23V、およびW相の入力端子23Wを有する。負荷22は、3つの電力線と、1つの中性線とを通じて無停電電源装置100に接続されている。中性線は、グランドに接続されている。
【0013】
無停電電源装置100は、補償給電回路(ダブルコンバージョン回路)1と、電圧センサ3U,3V,3Wと、電圧センサ13U,13V,13Wと、バイパス回路20と、制御装置50とを備える。
【0014】
補償給電回路1は、電源21と負荷22との間に接続され、電源21の停電時に負荷22に三相交流電力を供給する。補償給電回路1は、リレー2,8,14と、整流器6と、蓄電装置4と、電力変換器7と、インバータ10と、電流センサ11U,11V,11Wとを含む。
【0015】
リレー2は、整流器6と電源21との間に設けられ、整流器6の入力端子に接続されている。
【0016】
整流器6は、リレー2を通じて電源21に接続されており、電源21の正常時に電源21から供給される三相交流電力を直流電力に変換するように構成されている。電源21の正常時とは、電源21の停電が起こっていない時をいう。
【0017】
蓄電装置4は、充電可能に構成された二次電池であり、停電時に負荷22に供給されるための電力を蓄える。
【0018】
電力変換器7は、整流器6とインバータ10との間の直流電力線対と、蓄電装置4との間の電路に設けられた昇降圧チョッパ回路であり、双方向の電力変換を実行可能に構成される。電源21の停電時には、電力変換器7は、蓄電装置4の直流電力を、その電圧レベルとは異なる電圧レベルの直流電力に変換してインバータ10に供給する。電源21の正常時には、電力変換器7は、整流器6からの直流電力を、その電圧レベルとは異なる電圧レベルの直流電力に変換して、変換後の電力をリレー8を通じて蓄電装置4に供給することによって蓄電装置4を充電するように構成されていてもよい。リレー8は、蓄電装置4と電力変換器7との間に設けられている。
【0019】
インバータ10は、整流器6および電力変換器7に接続されている。インバータ10は、電源21の正常時には整流器6からの直流電力を三相交流電力に変換し、負荷22に供給する。インバータ10は、電源21の停電時には電力変換器7からの直流電力を三相交流電力に変換し、負荷22に供給する。
【0020】
リレー14は、インバータ10と、補償給電回路1の出力端子9U,9V,9Wとの間に設けられている。出力端子9U,9V,9Wは、それぞれ、負荷22のU相(入力端子23U)、V相(入力端子23V)およびW相(入力端子23W)に接続されている。
【0021】
電流センサ11U,11V,11Wは、それぞれ、電源21のU相、V相、およびW相から整流器6への入力電流を検出する。
【0022】
電圧センサ3U,3V,3Wは、それぞれ、バイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wの電圧を検出する。電源21の正常時、電圧センサ3U,3V,3Wの検出値は、それぞれ、電源21のU相(電力線PLU)、V相(電力線PLV)、W相(電力線PLW)の電圧値に相当する。
【0023】
電圧センサ13U,13V,13Wは、それぞれ、無停電電源装置150の出力端子9U、出力端子9V、および出力端子9Wの電圧を検出する。出力端子9U,9V,9Wは、それぞれ、負荷22の入力端子23U、入力端子23V、および入力端子23Wに接続されている。
【0024】
バイパス回路20は、電源21と負荷22との間で補償給電回路1と電気的に並列に設けられる。補償給電回路1の故障時には、電源21からの電力は、バイパス回路20を通じて負荷22に供給される。バイパス回路20は、スイッチ15U,15V,15Wと、回路ユニット17,18,19とを含む。
【0025】
スイッチ15U,15V,15Wは、それぞれ、負荷22のU相(入力端子23U)、V相(入力端子23V)、およびW相(入力端子23W)に接続されている。スイッチ15U,15V,15Wは、それぞれ、バイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wにも接続されている。スイッチ15U,15V,15Wの各々は、一対のサイリスタを含む半導体スイッチである。スイッチ15U,15V,15Wは、例えば、補償給電回路1の故障時にオンされる。スイッチ15U,15V,15Wの全体をスイッチ群15と表す。
【0026】
回路ユニット17,18,19は、それぞれ、スイッチ15U,15V,15Wに電気的に並列に設けられる。回路ユニット17,18,19は、それぞれ、スイッチ15U,15V,15Wの切り替え時に発生するサージを低減するために設けられる。
【0027】
回路ユニット17は、スナバ回路17A,17Bと、電力線PL11とを含む。スナバ回路17Aは、キャパシタCA1と、抵抗RA1,RA2とを含む。抵抗RA1は、キャパシタCA1と直列に接続されている。抵抗RA2は、キャパシタCA1と電気的に並列に接続されている。
【0028】
スナバ回路17Bは、スナバ回路17Aに直列に接続され、スナバ回路17Aと電源21との間に設けられる。スナバ回路17Bは、キャパシタCB1と、抵抗RB1,RB2とを含む。抵抗RB1は、キャパシタCB1と直列に接続されている。抵抗RB2は、キャパシタCB1と電気的に並列に接続されている。電力線PL11は、スナバ回路17Aとスナバ回路17Bとの間に設けられる。
【0029】
回路ユニット18,19の各々も、回路ユニット17と同様の構成を有している。したがって、回路ユニット18,19の詳細な説明を繰り返さない。
【0030】
スナバ回路17A,18A,19Aの各々は、本開示の「第1スナバ回路」の一例である。スナバ回路17B,18B,19Bの各々は、本開示の「第2スナバ回路」の一例である。
【0031】
本実施の形態では、回路ユニット17,18,19において、抵抗RA1,RA11,RA21の抵抗値が等しいものとする。RA2,RA12,RA22の抵抗値も等しいものとする。抵抗RB1,RB11,RB21の抵抗値も等しいものとする。RB2,RB12,RB22の抵抗値も等しいものとする。キャパシタCA1,CA11,CA21の容量も等しいものとする。キャパシタCB1,CB11,CB21の容量も等しいものとする。抵抗RA1,RB1,RA11,RB11,RA21,RB21を「第1抵抗群」とも表す。抵抗RA2,RB2,RA12,RB12,RA22,RB22を「第2抵抗群」とも表す。
【0032】
電力線PL11は、電力線PL1を通じて電力線PL12に接続される。電力線PL12は、電力線PL2を通じて電力線PL13に接続される。このように、電力線PL11、電力線PL12、電力線PL13は、互いに電気的に接続されている。
【0033】
負荷22が三相交流負荷であるため、各相の電位の合計(入力端子23U,23V,23Wの電圧の合計)が実質的に0である。よって、電力線PL11,PL12,PL13の電位の合計は実質的に0である。上記の構成では、電力線PL11,PL12,PL13が互いに接続されているため、電力線PL11の電位と、電力線PL12の電位と、電力線PL13の電位とが等しい。よって、電力線PL11,PL12,PL13の電位の各々は、実質的に0である。
【0034】
制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)51と、メモリ52とを含む。CPU51は、プロセッサの一例であり、各種の演算処理を実行する。メモリ52は、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54とを含む。ROM53は、CPU51により実行されるプログラムを格納する。RAM54は、ワーキングメモリとして機能する。
【0035】
制御装置50は、補償給電回路1(より詳細には、リレー2,8,14、整流器6、電力変換器7、およびインバータ10)を制御したり、スイッチ群15を制御したりする。
【0036】
図2は、電源21が正常状態にある場合の電力の流れを説明するための図である。
図2を参照して、制御装置50は、スイッチ15U,15V,15Wをオフ状態に制御するとともにリレー2,14を閉状態に制御する。これにより、電源21からの交流電力が整流器6およびインバータ10を通じて負荷22に供給される(
図2の太矢印)。電源21が正常状態にある場合の電源21から負荷22への給電を「通常給電」とも表す。
【0037】
図3は、この実施の形態において停電時の電力の流れを説明するための図である。
図3を参照して、制御装置50は、電源21の停電時には、スイッチ15U,15V,15Wをオフ状態かつリレー2を開状態に制御するとともにリレー8,14を閉状態に制御する。加えて、制御装置50は、蓄電装置4の電力が電力変換器7およびインバータ10を通じて負荷22に供給されるように電力変換器7およびインバータ10を制御する。その結果、電源21の停電時に補償給電回路1から負荷22への給電が実行される。この給電を「補償給電」とも表す。補償給電の実行時の電力の流れは、
図3の太矢印により表される。
【0038】
以下、無停電電源装置100の利点を説明する前に、第1比較例および第2比較例における無停電電源装置の構成を説明する。まず、第1比較例を説明する。
【0039】
図4は、第1比較例における無停電電源装置の構成を示す図である。以下の説明において、
図1を適宜参照する。
【0040】
図4を参照して、この比較例の無停電電源装置150は、バイパス回路20に代えてバイパス回路200を備える点において無停電電源装置100とは異なる。その他の点について、無停電電源装置150の構成は、無停電電源装置100の構成と基本的に同様である。
【0041】
バイパス回路200は、回路ユニット17,18,19に代えてスナバ回路170,180,190を備える点においてバイパス回路20とは異なる。
【0042】
スナバ回路170は、キャパシタCA10と、抵抗RA10とを含む。スナバ回路180は、キャパシタCA110と、抵抗RA110とを含む。スナバ回路190は、キャパシタCA210と、抵抗RA210とを含む。
【0043】
この比較例では、本実施の形態(
図1~
図3)とは異なり、単一のスナバ回路が各スイッチに並列に設けられており、互いに直列に接続される2つのスナバ回路が各スイッチに並列に設けられてはいない。そのため、バイパス回路200は、電力線PL11,PL12,PL13に相当する電力線を含まない。
【0044】
図5は、第1比較例においてバックフィード電圧が発生する様子を示す図である。
図5を参照して、電源21の停電が発生すると、制御装置50は、補償給電が開始するように補償給電回路1を制御する。その結果、補償給電回路1の出力端子(例えば、出力端子9U)からスナバ回路(例えば、スナバ回路170)を通じてバイパス回路200の入力端子(例えば、入力端子25U)にバックフィード電圧が印加される(
図5の太い破線)。
【0045】
バックフィード電圧は、停電時のバイパス回路の各入力端子とグランドとの間の電位差に相当する。バックフィード電圧は、その発生が防止されること、または、発生した場合であっても可能な限り早期に低減されることが好ましい。バックフィード電圧は、出力端子9W,9V,9Uの電圧に依存して入力端子25V,25Wにも印加され得る。
【0046】
図6は、第1比較例におけるバイパス回路200の入力端子25U,25V,25Wの電圧の推移を説明するためのタイミングチャートである。以下の説明において、
図5を適宜参照する。
【0047】
図6を参照して、横軸は時刻を表す。時刻t0において、電源21が正常であり、通常給電が実行されているものとする。縦軸は、上から順番に、電源21から整流器6への入力電流Iin、無停電電源装置150の出力電圧Vout、バイパス回路200の入力端子25U,25V,25Wの電圧Vin1を表す。電圧Vin1は、対応する入力端子とグランドとの間の電位差である。
【0048】
線205,210,215は、それぞれ、電源21のU相、V相、W相から整流器6に与えられる電流(入力電流Iin)の推移を示す。線205,210,215は、それぞれ、電流センサ11U,11V,11Wの検出値に基づいている。入力電流Iinの振幅は、IAである。
【0049】
線305,310,315は、それぞれ、無停電電源装置150の出力端子9U,9V,9Wの電圧(出力電圧Vout)の推移を示す。線305,310,315は、それぞれ、電圧センサ13U,13V,13Wの検出値に基づいている。出力電圧Voutの振幅は、VAである。
【0050】
線405,410,415は、それぞれ、バイパス回路200の入力端子25U,25V,25Wの電圧Vin1の推移を示す。線405,410,415は、それぞれ、電圧センサ3U,3V,3Wの検出値に基づいている。電圧Vin1の振幅は、VinAである。
【0051】
時刻t1において電源21の停電が起こると、制御装置50は、リレー2を開く。これにより、電源21の各相からの入力電流Iinが遮断される(線205,210,215)。加えて、制御装置50は、通常給電に代えて補償給電が実行されるように補償給電回路1を制御する。これにより、時刻t1後、無停電電源装置150の出力端子9U,9V,9Wから、それぞれ、負荷22の入力端子23U,23V,23Wに、時刻t1前と同様の出力電圧Voutが与えられる(線305,310,315)。
【0052】
その結果、無停電電源装置150の出力端子9U,9V,9Wから、それぞれ、スナバ回路170,180,190を通じてバイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wにバックフィード電圧が印加される(線405,410,415)。そのため、第1比較例では、時刻t1後に、補償給電が実行される限りバックフィード電圧が発生してしまう可能性がある。
【0053】
なお、時刻t1前には停電が発生していないため、入力端子25U,25V,25Wの電圧は、それぞれ、電源21のU相、V相およびW相の電圧に等しい。そのため、バックフィード電圧は発生しない。
【0054】
次に、第2比較例を説明する。第2比較例では、無停電電源装置は、停電後のバックフィード電圧の発生を防止するための構成を有する。
【0055】
図7は、第2比較例における無停電電源装置の構成を示す図である。以下の説明において、
図4を適宜参照する。
【0056】
図7を参照して、この比較例の無停電電源装置160は、バイパス回路200に代えてバイパス回路250を含む点において第1比較例での無停電電源装置150(
図4および
図5)とは異なる。その他の点について、無停電電源装置160の構成は、無停電電源装置150の構成と基本的に同様である。
【0057】
バイパス回路250は、スイッチ16をさらに内蔵する点において第1比較例でのバイパス回路200とは異なる。スイッチ16のオン/オフは、制御装置50により制御される。
【0058】
この比較例では、制御装置50は、停電に起因して補償給電を開始するとスイッチ16をオフする。これにより、入力端子25U,25V,25Wへのバックフィード電圧の印加が防止される。スイッチ16は、補償給電が継続する限りオフ状態に保たれる。
【0059】
このように、第2比較例では、停電時にスイッチ16がオフされるとバックフィード電圧の発生を防止することができる。しかしながら、無停電電源装置は、バックフィード電圧の発生を防止するためにスイッチ16を内蔵する必要がある。無停電電源装置がスイッチ16を内蔵しない場合においても、バックフィード電圧は低減されることが好ましい。
【0060】
本実施の形態に従う無停電電源装置100(
図1~
図3)は、第1比較例の無停電電源装置150とは異なり、バックフィード電圧を低減することができるという利点を有する。さらに、無停電電源装置100は、第2比較例の無停電電源装置160とは異なり、バックフィード電圧を低減するためにスイッチ16を内蔵することを必ずしも要しないという利点を有する。以下、バックフィード電圧が低減される理由を説明する。
【0061】
図8は、本実施の形態におけるバイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wの電圧の推移を説明するためのタイミングチャートである。以下の説明において、
図3を適宜参照する。
【0062】
図8を参照して、横軸は時刻を表す。時刻t0,t1は、それぞれ、
図6において示されるものと同じである。縦軸は、上から順番に、電源21から整流器6への入力電流Iin、無停電電源装置100の出力電圧Vout、バイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wの電圧Vin2を表す。
【0063】
線205~215、および、線305~315は、それぞれ、
図6において示されるものと同じである。
【0064】
線505,510,515は、それぞれ、バイパス回路20の入力端子25U,25V,25Wに印加される電圧Vin2の推移を示す。電圧Vin2は、対応する入力端子とグランドとの間の電位差である。
【0065】
時刻t1において電源21の停電が起こると、スナバ回路17B,18B,19Bと電源21との間で電流が流れなくなる。これにより、スナバ回路17B,18B,19Bの両端の電圧は、時間の経過とともに0に近づき、最終的に電圧0になる。
【0066】
その結果、入力端子25U,25V,25Wの電位は、それぞれ、電力線PL11,PL12,PL13の電位に時間の経過とともに近づく。前述のように、各電力線の電位が実質的に0であるため、各入力端子の電位は、最終的に実質的に0になる。その結果、各入力端子の電圧Vin2は、時間の経過とともに0に近づき、最終的に0になる(線505,510,515)。したがって、本実施の形態では、停電時のバックフィード電圧を、第1比較例の場合(
図6の線405,410,415)よりも低減することができる。
【0067】
前述のように、無停電電源装置100は、抵抗RA2,RB2,RA12,RB12,RA22,RB22(第2抵抗群)を含む。無停電電源装置100は、バックフィード電圧を最終的に電圧0まで低減するという観点から第2抵抗群の抵抗を必ずしも含むことを要しないが、バックフィード電圧をより早期に電圧0まで低減するという観点からこれらの抵抗を含むことが好ましい。
【0068】
具体的には、時刻t1においてキャパシタCB1,CB11,CB21に蓄えられていた電荷は、停電後に第1抵抗群の抵抗(抵抗RA1,RB1,RA11,RB11,RA21,RB21)に加えて第2抵抗群の抵抗により消費される。これにより、無停電電源装置100が第2抵抗群の抵抗を含まない場合よりもこれらのキャパシタの電荷が放電されやすい。その結果、これらのキャパシタの放電に要する時間が短縮される。
【0069】
よって、これらのキャパシタの電圧が早期に0に達するため、スナバ回路17B,18B,19Bの両端の電圧も早期に電圧0になる。その結果、入力端子25U,25V,25Wの電位も早期に0になる。したがって、各入力端子の電圧Vin2(その入力端子とグランドとの電位差)が早期に0になるため、バックフィード電圧を早期に低減することができる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 補償給電回路、2,8,14 リレー、4 蓄電装置、6 整流器、7 電力変換器、10 インバータ、15U,15V,15W,16 スイッチ、17,18,19 回路ユニット、17A,17B,18A,18B,19A,19B,170,180,190 スナバ回路、20,200,250 バイパス回路、21 電源、22 負荷、100,150,160 無停電電源装置、PL1,PL2,PL11,PL12,PL13,PLU,PLV,PLW 電力線。
【要約】
無停電電源装置(100)は、補償給電回路(1)と、バイパス回路(20)とを備える。バイパス回路は、補償給電回路と電気的に並列に設けられる。バイパス回路は、第1から第3スイッチ(15U~15W)と、第1から第3回路(17~19)とを含む。第1から第3スイッチは、三相交流負荷の第1から第3の相にそれぞれ接続される。第1から第3回路は、第1から第3スイッチにそれぞれ電気的に並列に設けられる。第1回路は、第1スナバ回路(17A)と、第2スナバ回路(17B)と、電力線(PL11)とを含む。第2回路は、第1スナバ回路(18A)と、第2スナバ回路(18B)と、電力線(PL12)とを含む。第3回路は、第1スナバ回路(19A)と、第2スナバ回路(19B)と、電力線(PL13)とを含む。第1から第3回路の各々の電力線(PL11,PL12,PL13)は、互いに電気的に接続される。