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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】MPSダイオードデバイス及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/872 20060101AFI20231211BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20231211BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20231211BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20231211BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/91 K
H01L29/86 301P
H01L29/86 301D
H01L29/86 301M
H01L29/06 601D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022570212
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2020140006
(87)【国際公開番号】W WO2021248879
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】202010528815.2
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516164151
【氏名又は名称】珠海格力▲電▼器股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 苡任
(72)【発明者】
【氏名】陳 道坤
(72)【発明者】
【氏名】曽 丹
(72)【発明者】
【氏名】史 波
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188066(JP,A)
【文献】特開2018-186160(JP,A)
【文献】特開2014-187115(JP,A)
【文献】特開2016-171324(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190997(WO,A1)
【文献】特開2007-184382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/861
H01L 21/329
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPSダイオードデバイスであって、
並列に配置された複数のセルを含み、
各セルは、カソード電極と、前記カソード電極上に順次形成された基板、エピタキシャル層、バッファ層及びアノード電極と、を備え、
前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側には2つのアクティブ領域が形成され、
前記バッファ層の禁制帯幅は前記エピタキシャル層の禁制帯幅より大きく、
前記バッファ層の材質と前記エピタキシャル層の材質は同素体であり、
前記バッファ層において前記アクティブ領域に対向する位置には第1開口が形成され、
前記第1開口の内部にはオーミック金属層が形成される
MPSダイオードデバイス。
【請求項2】
前記バッファ層はナノ構造層である
請求項1に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項3】
前記バッファ層は量子ドット層である
請求項2に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項4】
前記量子ドット層における量子ドットの形状は円柱状、球状又は突起状であり、
前記量子ドットが円柱状である場合、前記円柱状の量子ドットの底面は前記エピタキシャル層と接触し、
前記量子ドットが突起状である場合、前記量子ドットの、前記エピタキシャル層に垂直な方向に沿った断面において前記エピタキシャル層から離れる側の輪郭線が放物線状である
請求項3に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項5】
前記基板の材質はn型の3C-SiCであり、
前記エピタキシャル層の材質はn型の3C-SiCであり、
前記基板のドーピング濃度は前記エピタキシャル層のドーピング濃度より高く、
前記バッファ層の材質は4H-SiCである
請求項1に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項6】
前記オーミック金属層の材質はチタンである
請求項1に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項7】
前記オーミック金属層の厚さは1μmである
請求項1に記載のMPSダイオードデバイス。
【請求項8】
MPSダイオードデバイスの作製方法であって、
基板上にエピタキシャル層を形成するステップであって、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側は、アクティブ領域を形成するためのアクティブ領域形成領域を有するステップと、
前記アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成するステップと、
アニール処理を行うステップと、
前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において前記エピタキシャル層より禁制帯幅が大きいバッファ層を形成し、前記バッファ層において前記アクティブ領域に対向する部分をパターニングすることにより、前記バッファ層を貫通する第1開口を形成するステップと、
前記第1開口の内部においてオーミック金属層を形成し、前記基板の、前記エピタキシャル層から離れた側においてカソード電極を形成するステップと、
前記バッファ層及び前記オーミック金属層の、前記エピタキシャル層から離れた側において、アノード電極を形成するステップとを含む
MPSダイオードデバイスの作製方法。
【請求項9】
前記アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成する前記ステップは、
前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において犠牲酸化層を形成するステップと、
前記犠牲酸化層の、前記エピタキシャル層から離れた側においてバリア層を形成し、前記バリア層において前記アクティブ領域形成領域に対向する部分をパターニングすることにより、前記バリア層を貫通する第2開口を形成するステップと、
前記第2開口内にイオンを注入することにより、前記エピタキシャル層のアクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成するステップと、
前記犠牲酸化層及び前記バリア層を除去して前記エピタキシャル層を露出させるステップとを含む
請求項8に記載の作製方法。
【請求項10】
前記イオンはアルミニウムイオンである
請求項9に記載の作製方法。
【請求項11】
前記基板の材質はn型の3C-SiCであり、
前記エピタキシャル層の材質はn型の3C-SiCであり、
前記基板のドーピング濃度は前記エピタキシャル層のドーピング濃度より高く、
前記バッファ層の材質は4H-SiCである
請求項10に記載の作製方法。
【請求項12】
アニール処理を行う前記ステップは、
前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において炭素膜を形成するステップと、
高温アニール処理を行うステップと、
前記炭素膜を除去して前記エピタキシャル層を露出させるステップとを含む
請求項8に記載の作製方法。
【請求項13】
前記バッファ層は量子ドット層である
請求項8に記載の作製方法。
【請求項14】
前記量子ドット層を形成する方法は、
前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において、昇華法により2000℃以上の条件でバッファフィルム層を成長することと、
前記バッファフィルム層に対してアニール処理を行うことにより前記量子ドット層を形成することとを含む
請求項13に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年6月11日に中国特許庁に出願された、出願番号が202010528815.2であって発明の名称が「MPSダイオードデバイスとその作製方法」である中国特許出願に対する優先権を主張し、その内容全体を参照により本開示に組み込む。
【0002】
本開示は、電子デバイスの技術分野に関し、特にMPSダイオードデバイス及びその作製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
SiCは第3世代の新型半導体として、広い禁制帯幅、高い臨界破壊電界、高い熱伝導率などの特性を有して、高温、高電圧、高周波数、高出力の分野において従来のシリコン系デバイスに比べて明らかな優位性を持っている。
【0004】
SiC SBD(炭化ケイ素ショットキーバリアダイオード)は、順方向導通の電圧降下が小さくて逆回復時間が短いが、逆ブロッキングの動作条件下でリーク電流が過大になるというデメリットがある。SiC SBDの逆電流リークの問題を改善するために、JBS(junction barrier schottky)又はMPS(merge pin schottky)構造が開発された。ここで、p型リドープ領域において形成される空乏領域が高い逆電圧に耐えることができるとともに、空乏領域が互いに連結してショットキー接合を包むため、デバイスの逆方向作動時にショットキーバリアが低下して逆電流リークが増加する問題を防止することができる。一般に、逆電流リークと順方向動作電圧は両立しなければならない2つの性能パラメータである。しかしながら、リーク電流を減らすためにはショットキーバリアの高さを高める必要がある一方、それによって順方向動作電圧は上昇してしまう。そのため、従来技術では、デバイスの順方向導通損失の低減と逆電流リークの低減を同時に実現できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、MPS(merge pin schottky)ダイオードデバイス及びその作製方法を提供する。当該MPSダイオードデバイスは、逆電流リークによる損失を低減するとともに順方向導通損失を低減することができ、逆電流リーク及び順方向動作電圧の2つの性能パラメータを同時に向上させて、より高い性能を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本開示は、並列に配置された複数のセルを含む、MPSダイオードデバイスを提供する。ここで、各セルは、カソード電極と、前記カソード電極上に順次形成された基板、エピタキシャル層、バッファ層及びアノード電極と、を備え、エピタキシャル層の、基板から離れた側には2つのアクティブ領域が形成され、前記バッファ層の禁制帯幅は前記エピタキシャル層の禁制帯幅より大きく、且つ前記バッファ層の材質と前記エピタキシャル層の材質は同素体であり、前記バッファ層において前記アクティブ領域に対向する位置には第1開口が形成され、前記第1開口の内部にはオーミック金属層が形成される。
【0007】
前記MPSダイオードデバイスにおいて、エピタキシャル層とアノード電極の間にはバッファ層が設けられており、該バッファ層の禁制帯幅はエピタキシャル層の禁制帯幅より大きく設けられるため、該MPSダイオードデバイスにおけるショットキーバリア高さに対する調節が可能であって、ショットキーバリア高さが下げられることができ、それにより該MPSダイオードデバイスの順方向導通損失が低下する。また、バッファ層の材質とエピタキシャル層の材質は同素体であることにより、バッファ層とエピタキシャル層の間の界面における応力不整合がうまく改善されて界面準位が大幅に低下され、それにより該MPSダイオードデバイスの逆電流リークが緩和される。前記MPSダイオードデバイスは、逆電流リークによる損失を低減しつつ順方向導通損失を低減して、逆電流リーク及び順方向動作電圧の2つの性能パラメータを同時に改善することができ、該MPSダイオードデバイスの高性能化を達成する。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記バッフル層はナノ構造層である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記バッファ層は量子ドット層である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記量子ドット層における量子ドットの形状は円柱状、球状又は突起状である。前記量子ドットが円柱状である場合、前記円柱状の量子ドットの底面は前記エピタキシャル層と接触する。前記量子ドットが突起状である場合、前記量子ドットの、エピタキシャル層に垂直な方向に沿った断面においてエピタキシャル層から離れる側の輪郭線が放物線状である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記基板の材質はn型の3C-SiCであり、前記エピタキシャル層の材質はn型の3C-SiCである。且つ、前記基板のドーピング濃度は前記エピタキシャル層のドーピング濃度より高い。前記バッファ層の材質は4H-SiCである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記オーミック金属層の材質はチタンである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記オーミック金属層の厚さは1μmである。
【0014】
本開示はさらに、MPSダイオードデバイスの作製方法を提供する。該作製方法は、基板上にエピタキシャル層を形成するステップであって、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側は、アクティブ領域を形成するためのアクティブ領域形成領域を有するステップと、前記アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成するステップと、アニール処理を行うステップと、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において前記エピタキシャル層の禁制帯幅より大きい禁制帯幅を有するバッファ層を形成し、前記バッファ層において前記アクティブ領域に対向する部分をパターニングして、前記バッファ層を貫通する第1開口を形成するステップと、前記第1開口の内部においてオーミック金属層を形成し、前記基板の、前記エピタキシャル層から離れた側においてカソード電極を形成するステップと、前記バッファ層及び前記オーミック金属層の、前記エピタキシャル層から離れた側においてアノード電極を形成するステップとを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成する前記ステップは、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた表面において犠牲酸化層を形成するステップと、前記犠牲酸化層の、前記エピタキシャル層から離れた側においてバリア層を形成し、前記バリア層において前記アクティブ領域形成領域に対向する部分をパターニングすることで、前記バリア層を貫通する第2開口を形成するステップと、前記第2開口内にイオンを注入することで前記エピタキシャル層のアクティブ領域形成領域においてアクティブ領域を形成するステップと、前記犠牲酸化層及び前記バリア層を除去して前記エピタキシャル層を露出させるステップとを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記イオンはアルミニウムイオンである。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記基板の材質はn型の3C-SiCであり、前記エピタキシャル層の材質はn型の3C-SiCであり、前記基板のドーピング濃度は前記エピタキシャル層のドーピング濃度より高く、前記バッファ層の材質は4H-SiCである。
【0018】
いくつかの実施形態において、アニール処理を行う前記ステップは、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において炭素膜を形成するステップと、高温アニール処理を行うステップと、前記炭素膜を除去して前記エピタキシャル層を露出させるステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記バッファ層は量子ドット層である。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記量子ドット層の形成方法は、前記エピタキシャル層の、前記基板から離れた側において、2000℃を超える条件で昇華法によりバッファフィルム層を成長するステップと、前記バッファフィルム層に対してアニール処理を行って前記量子ドット層を形成するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1-5】本開示の実施例に係るMPSダイオードの作製方法の過程を示す模式図である。
図6】本開示の実施例に係る第1の量子ドート構造の断面を示す模式図である。
図7】本開示の実施例に係る第2の量子ドート構造の断面を示す模式図である。
図8】本開示の実施例に係る第3の量子ドート構造の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施例による図面を参照しながら、本開示の実施例に係る技術案を明確かつ完全に説明する。なお、記載される実施例は本開示の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。当業者が本開示の実施例に基づいて創造的労働を行わずに得た他の実施形態はすべて本開示の保護範囲に属する。
【0023】
図5を参照すると、本開示はMPSダイオードデバイスを提供し、該MPSダイオードデバイスは、並列に配置された複数のセルを含む。各セルは、カソード電極1と、カソード電極1上に順次形成された基板2、エピタキシャル層3、バッファ層4及びアノード電極5と、を備える。エピタキシャル層3の、基板2から離れた側には2つのアクティブ領域6が形成される。バッファ層4の禁制帯幅は、エピタキシャル層3の禁制帯幅より大きい。且つ、バッファ層4の材質とエピタキシャル層3の材質は同素体である。バッファ層4においてアクティブ領域6に対向する位置には第1開口8が形成されており、第1開口8の内部にはオーミック金属層7が形成されている。
【0024】
前記MPSダイオードデバイスにおいて、エピタキシャル層3とアノード電極5の間にはバッファ層4が設けられている。該バッファ層4の禁制帯幅をエピタキシャル層3の禁制帯幅より大きく設定することにより、該MPSダイオードデバイスにおけるショットキーバリア高さを調節可能にして、ショットキーバリア高さが下げられることができ、それにより該MPSダイオードデバイスの順方向導通損失を低減することができる。それとともに、バッファ層4の材質とエピタキシャル層3の材質は同素体であることにより、バッファ層4とエピタキシャル層3の間の界面に発生する応力不整合問題がうまく改善されて界面準位が大幅に低下され、それにより該MPSダイオードデバイスの逆電流リークが低減される。上述のMPSダイオードデバイスは、逆電流リークによる損失を低減するとともに順方向導通損失を低減することにより、逆電流リーク及び順方向動作電圧の両方の性能パラメータを改善して、該MPSダイオードデバイスの性能を向上させることができる。
【0025】
具体的に、バッファ層4はナノ構造層である。
【0026】
バッファ層4はフィルム層であってもよく、又はナノ構造層であってもよい。ナノ構造層を採用することにより、バッファ層4のエネルギーバンド幅をより一層調節することができ、したがってショットキーバリア高さはさらに調節されることができる。それにより、デバイスの順方向導通損失を低減することができる。
【0027】
具体的に、バッファ層4は量子ドット層である。図6図7及び図8に示すように、量子ドット層における量子ドットの形状は円柱状、球状又は突起状である。量子ドットが円柱状である場合、円柱状の量子ドットの底面はエピタキシャル層3と接触する。量子ドットが突起状である場合、量子ドットの、エピタキシャル層3に垂直な方向に沿った断面は、エピタキシャル層3から離れる側の輪郭線が放物線状である。
【0028】
バッファ層4としては、ナノスケールの量子ドットを採用することができる。作製が容易になるとともに、作製時にはアニール温度を制御することにより量子ドット層における量子ドットの形状やサイズを制御してバッファ層4の禁制帯幅に対する調整を実現することができ、それによりショットキーバリア高さをより一層調節してMPSダイオードデバイスの性能を更に向上させることができる。
【0029】
具体的に、基板2の材質はn型の3C-SiCである。エピタキシャル層3の材質はn型の3C-SiCであり、且つ、基板2のドーピング濃度はエピタキシャル層3のドーピング濃度より高い。バッファ層4の材質は4H-SiCである。
【0030】
バッファ層4の材質は4H-SiCであり、エピタキシャル層3の材質はn型の3C-SiCである。ここで、4H-SiCの禁制帯幅は3C-SiCの禁制帯幅より大きいので、ショットキーバリア高さに対する調節が可能になる。また、4H-SiCと3C-SiCは同素体であるので、バッファ層4として4H-SiCを用いた場合、他の禁制帯幅が広い半導体材料からなるバッファ層4に比べて、4H-SiCからなるバッファ層は、3C-SiCからなるエピタキシャル層との間の界面における結晶格子に発生する応力不整合問題がよく改善される。それにより、界面準位が大幅に低下され、界面準位に起因する逆電流リークが過大になる問題は緩和されることができる。
【0031】
具体的に、オーミック金属層7の材質はチタンである。
【0032】
具体的に、オーミック金属層7の厚さは1μmである。
【0033】
本開示は、MPSダイオードデバイスの作製方法を更に提供する。図1ないし図5に示すように、該作製方法は以下の内容を含む。
ステップS101において、基板2上にエピタキシャル層3を形成する。図1に示すように、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側は、アクティブ領域6を形成するためのアクティブ領域形成領域を有する。
ステップS102において、アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域6を形成する。図2a、図2b、図2c及び図2dに合わせて、図2eに示す通りである。
ステップS103において、アニール処理を行う。図3に示す通りである。
ステップS104において、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において、エピタキシャル層3の禁制帯幅より大きい禁制帯幅を有するバッファ層4を形成し、バッファ層4においてアクティブ領域6に対向する部分をパターニングすることで、バッファ層4を貫通する第1開口8を形成する。図4aに合わせて、図4b及び図4cに示す通りである。
ステップS105において、第1開口8の内部にオーミック金属層7を形成し、基板2の、エピタキシャル層3から離れた側においてカソード電極1を形成する。図4cに示す通りである。
ステップS106において、バッファ層4及びオーミック金属層7の、エピタキシャル層3から離れた側においてアノード電極5を形成する。図5に示す通りである。
【0034】
上述のMPSダイオードデバイスの作製方法によれば、エピタキシャル層3上に、エピタキシャル層3とアノード電極5の間にバッファ層4を形成する。バッファ層4の禁制帯幅をエピタキシャル層3の禁制帯幅より大きく設け且つバッファ層4の材質としてエピタキシャル層3の材質の同素体を採用することにより、ショットキーバリア高さを下げて順方向導通損失を低減するとともに、該MPSダイオードデバイスの逆電流リークを低減することができ、それにより逆電流リーク及び順方向動作電圧の両方の性能パラメータを改善して、該MPSダイオードデバイスの性能を向上させることができる。
【0035】
具体的に、図2a、図2b、図2c及び図2eに示すように、アクティブ領域形成領域においてアクティブ領域6を形成するステップは以下の内容を含む。
ステップS201において、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において犠牲酸化層9を形成する。図2aに示す通りである。
ステップS202において、犠牲酸化層9の、エピタキシャル層3から離れた側においてバリア層10を形成し、バリア層10においてアクティブ領域形成領域に対向する部分をパターニングすることで、バリア層10を貫通する第2開口11を形成する。図2bと図2cに示す通りである。
ステップS203において、第2開口11内にイオンを注入することによりエピタキシャル層3のアクティブ領域形成領域においてアクティブ領域6を形成する。図2dに示す通りである。
ステップS204において、犠牲酸化層9及びバリア層10を除去してエピタキシャル層3を露出させる。図2eに示す通りである。
【0036】
上述のアクティブ領域6を形成するステップにおいて、S201では、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において犠牲酸化層9を形成する。犠牲酸化層9は、後の工程でアクティブ領域6形成時にイオンがアクティブ領域形成領域に注入されるときにバッファ機能を果たして、イオン注入時に高エネルギー粒子が直接注入されてエピタキシャル層3の表面が非晶質化されてしまってリークが過大になることを防止できる。ここで、犠牲酸化層9は、厚さが0.1μmであり、材質がシリカ(SiO)である。S202では、犠牲酸化層9の、エピタキシャル層3から離れた側においてバリア層10を形成し、バリア層10においてアクティブ領域形成領域に対向する部分をパターニングすることで、バリア層10を貫通する第2開口11を形成する。バリア層10は、イオンがアクティブ領域形成領域以外の部分に注入されることを防止するために設けられる。バリア層10の材質は多結晶シリコン又は炭化したフォトレジストなどであってもよい。バリア層10の厚さは2μmであってもよい。S203では、第2開口11の内部にイオンを注入することにより、エピタキシャル層3のアクティブ領域形成領域においてアクティブ領域6を形成する。イオン注入のエネルギー及び注入量は、MPSダイオードデバイスに必要な順方向動作電圧によって決定される。S204では、犠牲酸化層9及びバリア層10を除去してエピタキシャル層3を露出させる。犠牲酸化層9及びバリア層10を形成したのはイオン注入を容易にするためであるため、アクティブ領域6が形成された後には犠牲酸化層9とバリア層10を除去してその後の作製工程を進めばよい。
【0037】
具体的に、イオンはアルミニウムイオンである。
【0038】
具体的に、上述のMPSダイオードデバイスの作製方法によって作成されたMPSダイオードデバイスにおいて、基板2の材質はn型の3C-SiCであり、エピタキシャル層3の材質はn型の3C-SiCであり、基板2のドーピング濃度はエピタキシャル層3のドーピング濃度より高く、バッファ層4の材質は4H-SiCである。
【0039】
バッファ層4の材質として4H-SiCを採用し且つエピタキシャル層3の材質としてn型の3C-SiCを採用すると、4H-SiCの禁制帯幅は3C-SiCの禁制帯幅より大きいため、ショットキーバリア高さに対する調節が可能になる。また、4H-SiCと3C-SiCは同素体であるので、バッファ層4として4H-SiCを用いた場合、他の禁制帯幅が広い半導体材料からなるバッファ層4に比べて、4H-SiCからなるバッファ層は、3C-SiCからなるエピタキシャル層との間の界面における結晶格子に発生する応力不整合の問題がよく改善される。それにより、界面準位が大幅に低下され、界面準位に起因する逆電流リークが過大になる問題は緩和されることができる。
【0040】
具体的に、アニール処理を行うステップは以下の内容を含む。
ステップS301において、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において炭素膜12を形成する。図3に示す通りである。
ステップS302において、高温アニール処理を行う。
ステップS303において、炭素膜12を除去してエピタキシャル層3を露出させる。
【0041】
アクティブ領域6の作製が完了後にはアニール処理を行う必要である。それにより、アクティブ領域6にドープされたイオンの電気的活性を高めるとともに、イオン注入による格子損傷を修復することができる。S301では、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において炭素膜12を形成する。具体的には、フォトレジストを1μm~1.5μm蒸着してから炭化処理を行うことにより炭素膜12を形成することができる。炭素膜1により、アニール時にSiが昇華してエピタキシャル層3の表面が粗くなる問題は緩和される。S302では、高温アニール処理を行い、具体的には800℃~1000℃の温度でアニール処理を30分間行う。S303では、後続の作製工程が行われるように、炭素膜12を除去してエピタキシャル層3を露出させる。炭素膜12は熱酸化法により除去されることができ、すなわち600℃~800℃の条件で炭素膜12に対してトライ除去を行う。
【0042】
具体的に、バッファ層4は量子ドット層である。
【0043】
量子ドット層を用いることで、ショットキーバリア高さをより効果的に調節してMPSダイオードデバイスの性能を向上させることができる。
【0044】
具体的に、図4a、図4b及び図4cに示すように、量子ドット層の形成方法は以下の内容を含む。
ステップS401において、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において、2000℃以上の条件で昇華法によりバッファフィルム層13を成長する。図4aに示す通りである。
ステップS402において、バッファフィルム層13においてアクティブ領域6に対向する部分をパターニングすることにより、バッファ層4を貫通する第1開口8を形成する。図4bに示す通りである。
ステップS403において、バッファフィルム層13に対してアニール処理を行うことにより量子ドット層を形成する。図4cに示す通りである。
【0045】
量子ドット層を作製するためには、まず、エピタキシャル層3の、基板2から離れた側において、2000℃以上の条件で昇華法によりバッファフィルム層13を成長する。エピタキシャル層3の材質はn型の3C-SiCであるため、バッファフィルム層13の材質としては、3C-SiCの同素体であり且つ3C-SiCより禁制帯幅が大きい4H-SiCを採用することができる。それにより、ショットキーバリア高さを調節するとともに界面準位を低下させて、逆電流リークと順方向動作電圧の2つの性能パラメータが同時に改善されることを達成する。S403では、バッファフィルム層13に対してアニール処理を行うことによって量子ドット層を形成する。アニール処理により、バッファフィルム層13の構造を量子ドット層に変化させる。さらに、アニール温度を制御することによって量子ドット層における量子ドットの形状やサイズを調節して、ショットキーバリア高さに対する変調をより効果的に実現することができる。
【0046】
量子ドット層を形成するときには、バッファフィルム層13を形成した後にアニール処理を行う必要があり、一方、バッファ層4の第1開口8内でオーミック金属層7を形成するためにもアニール処理を行う必要がある。そのため、2回のアニール処理工程を1回にまとめてもよい。さらに、カソード電極1とオーミック金属層7は同時に形成されてもよい。つまり、量子ドット層、カソード電極1及びオーミック金属層7は、同じ工程で形成されることができる。具体的には、図4aに示すようにバッファフィルム層13を形成した後、図4bに示すようにバッファフィルム層13において第1開口8を形成し、次に図4cに示すように第1開口8の内部においてオーミック金属層7を形成し、基板2の、エピタキシャル層3から離れた側においてカソード電極1を形成し、さらに、800℃~1000℃の条件でアニール処理を行うことにより、オーミック接触を形成するとともにバッファフィルム層13を量子ドット層になるように処理する。2回のアニール処理を合併することで、作製工程を簡略化して作製時間を短縮することができる。
【0047】
オーミック金属層7は、電子ビーム蒸着技術により堆積された1μmのチタンであってもよい。カソード電極1も、電子ビーム蒸着技術により1μmのチタンを堆積することによって作製されてもよい。カソード電極1の材料はニッケルやアルミニウムなどの金属であってもよい。図5に示すように、アノード電極5は、アルミニウムを蒸着して300℃~500℃の条件でアニールを行ってショットキー接触を形成することによって作製されてもよい。
【0048】
当業者は本開示の思想及び範囲から逸脱せずに本開示の実施形態に様々な修正及び変形を加えることができることは明らかである。つまり、本開示に対する行われるこのような修正や変形が本開示の特許請求の範囲及びその技術的同等物の範囲内にある場合、本開示はこれらの修正及び変形も含むことを意図する。
【符号の説明】
【0049】
1:カソード電極
2:基板
3:エピタキシャル層
4:バッファ層
5:アノード電極
6:アクティブ領域
7:オーミック金属層
8:第1開口
9:犠牲酸化層
10:バリア層
11:第2開口
12:炭素膜
13:バッファフィルム層
14:量子ドット
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8