(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-08
(45)【発行日】2023-12-18
(54)【発明の名称】自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 7/10 20060101AFI20231211BHJP
C11D 7/22 20060101ALI20231211BHJP
【FI】
C11D7/10
C11D7/22
(21)【出願番号】P 2023136643
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591225132
【氏名又は名称】株式会社アルボース
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】三輪 真之
(72)【発明者】
【氏名】立岩 雅大
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164729(JP,A)
【文献】特開2006-199723(JP,A)
【文献】特開2006-335908(JP,A)
【文献】特表2000-502750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム並びに(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含有し、
(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量が4質量%以上、かつ水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの含有量が5質量%以下であり、
(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量が5質量%以上である、
自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
pHが11.0以上である、請求項1に記載の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、高分子分散剤及び/又はキレート剤を含有する、請求項1に記載の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いて食器を洗浄する、自動食器洗浄機による食器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物およびそれを用いた自動食器洗浄機による食器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動食器洗浄機は、専用の洗浄剤を希釈した洗浄剤希釈液を、汚れの付着した洗浄すべき食器類の表面に高圧水流で噴射することで、食器類に付着した汚れを落としている。このとき、業務用の自動食器洗浄機では、噴射洗浄による食器類の汚れの除去を効果的なものとするために、通常、アルカリ剤を含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤が使用されている。これは、アルカリ剤のもつタンパク質汚れ等に対する分解作用や可溶化作用により、スピーディで効率的な食器類の洗浄を可能とするためである。アルカリ剤を主成分とする自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物として、例えば、特許文献1に、アルカリ剤、アミノカルボン酸型キレート剤、有機リン酸又はその塩を含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
【0003】
このようななか、近年、業務用の自動食器洗浄機では、保管時にスペースをとらないコンパクト(濃縮タイプ)液体洗浄剤のニーズが高まっており、このため、より高倍率で希釈して使用することが可能な自動食器洗浄機用液体洗浄剤の処方の開発が求められている。一方で、保管時の取り扱いが容易なように、液体洗浄剤の保存安定性(低温保存安定性も含む)を高く維持することも必要である。
【0004】
ところで、自動食器洗浄機用液体洗浄剤に含有されるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム等の炭酸塩などがあるが、この中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、一般的にまず配合が検討されることが多い。一方、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、いずれかでも5質量%超含有してしまうと、その洗浄剤は劇物扱いとなり、取り扱いに規制がかかってしまうという事情があり、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを配合する場合、それらの合計含有量を10質量%以下(すなわち、それぞれの含有量が5質量%以下)とすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、アルカリ剤として水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤であって、コンパクト(濃縮タイプ)であり、かつ保存安定性にも優れる液体洗浄剤の新たな処方を開発すべく検討を行ったところ、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの合計含有量が10質量%以下(すなわち、それぞれの含有量が5質量%以下)であっても、一定量以上(例えば合計含有量が4質量%以上)の水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有していれば、高倍率の希釈(例えば、2000倍希釈)によってもアルカリ剤としての分解作用や可溶化作用は確保されることを確認することができた。一方で、本発明者らは、自動食器洗浄機による実際の洗浄試験において、このような高倍率の希釈での使用においては、被洗浄物によって、自動食器洗浄機に投入される洗浄剤の量が安定しないことに気が付いた。そして、本発明者らは、この問題についてさらなる検討を行ったところ、これは洗浄時の洗浄剤希釈液の導電率が十分でないことに原因があることを見出した。
【0007】
すなわち、現在、多くの業務用の自動食器洗浄機では、省力化のために、洗浄剤の洗浄剤供給装置(自動投入機構)が備わっている。このとき洗浄剤の投入量は、希釈液の導電率を指標として、所定の洗浄剤濃度となるように制御される仕組みであることが一般的である。このため、希釈液の導電率が低い場合、被洗浄物に付着した汚れの種類や量によっては、希釈液の導電率に影響を与えてしまう。一方、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、上記アルカリ剤としての洗浄作用の他、洗浄剤希釈液に導電率を付与する役割も有しているが、合計含有量が10質量%以下としたときには、高倍率の希釈により十分な導電率が得られない場合もあり、このため、安定的に洗浄剤の投入量を適切に制御することができなくなっていた。これらのことから、コンパクト(濃縮タイプ)液体洗浄剤の処方の開発においては、使用時、安定的に適切な洗浄剤の自動投入が実行されるという観点も考慮すれば、希釈時において、被洗浄物由来の汚れによる影響を受けないように、十分高い導電率を付与可能な成分を配合することが有効であると考えられた。また、そのような導電率を付与する成分は、その配合によっても、液体洗浄剤の配合安定性への影響が小さいものであることが必要であるとも考えられた。
【0008】
以上のように、本発明者らは、アルカリ剤として、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤においては、コンパクト(濃縮タイプ)であり、かつ保存安定性にも優れる液体洗浄剤の新たな処方を開発しようとすると、場合によっては、使用時、希釈液の導電率が十分でない場合があることを見出した。本発明は、そのような新たに見出した観点を踏まえてなされたものである。したがって、本発明の目的は、高倍率で希釈しても十分高い導電率を有しており、かつ保存安定性も高い、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤の処方の開発に有用な配合(配合成分)を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、高倍率で希釈しても十分高い導電率を有しており、かつ保存安定性も高い、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤の処方の開発に有用な配合(配合成分)を見出すべく鋭意検討を行ったところ、意外にも、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムが、当該自動食器洗浄機用液体洗浄剤に配合することに適していることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0010】
[1] (A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム並びに(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含有し、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量が4質量%以上、かつ水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの含有量が5質量%以下であり、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量が5質量%以上である、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
[2] pHが11.0以上である、[1]の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
[3] さらに、高分子分散剤及び/又はキレート剤を含有する、[1]又は[2]の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかの自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いて食器を洗浄する、自動食器洗浄機による食器の洗浄方法。
【0011】
なお、前記[1]から[4]の各構成は、任意に2つ以上を選択して組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを配合することで、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する洗浄剤の保存安定性には大きな影響を与えず、高い導電率を付与できる。このため、高倍率で希釈しても十分高い導電率が得られ、かつ濃縮時の保存安定性も高い、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤を容易に設計することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書中で使用される用語は、特に言及しない限り、当該技術分野で通常用いられる意味で解釈される。
【0014】
<自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物>
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(以下、単に液体洗浄剤組成物ということがある)は、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム並びに(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含有し、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量が4質量%以上、かつ水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの含有量が5質量%以下であり、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量が5質量%以上である。
【0015】
本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物においては、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの含有量を、取り扱いが容易となるように低く制限しつつも、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを合計5質量%以上含有させる。このように、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを配合することで、高倍率で希釈しても十分に高い導電率が得られ、かつ濃縮時の保存安定性も高く維持することができる自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の処方の開発を容易にすることができる。
【0016】
[(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム]
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(A)として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくともいずれか一方を含有しており、かつ成分(A)の合計含有量は4質量%以上に調整されている。本発明の液体洗浄剤組成物においては、高倍率の希釈(例えば、2000倍希釈)によっても、アルカリ剤として十分な分解作用や可溶化作用を示すことができる濃度として、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを合計4質量%以上含有させている。このように、本発明の液体洗浄剤組成物における(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量は、上記のように4質量%以上であれば特に制限なく適量配合することができ、合計含有量の下限としては、5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。
【0017】
他方、本発明の液体洗浄剤組成物において、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの含有量は、5質量%以下になるように制限されている。このように、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの含有量を制限するのは、毒物及び劇物取締法により、いずれかでも5質量%超配合された試薬は劇物扱いとなることから、これを回避し取り扱いを容易とするためである。したがって、本発明の液体洗浄剤組成物における(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量の上限は10質量%以下である。
【0018】
[(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウム]
本発明の液体洗浄剤組成物は、成分(B)として、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの少なくともいずれか一方を含有しており、かつ成分(B)の合計含有量は5質量%以上に調整される。本発明の液体洗浄剤組成物においては、高い導電率を与えるべく、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを合計5質量%以上含有させる。また、後述するように、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する液体洗浄剤組成物においては、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの配合は安定的であり、保存安定性(低温保存安定性も含む)も高いことが示されている。
【0019】
本発明の液体洗浄剤組成物における(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量は、上記のように5質量%以上であり、かつ本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく適量配合することができる。(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量の下限は、導電率の観点から、例えば、7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量の上限としては、保存安定性の観点から、30質量%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量の数値範囲としては、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0020】
[高分子分散剤及び/又はキレート剤]
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分にくわえ、さらに高分子分散剤及び/又はキレート剤を含有することが好ましい。
【0021】
(高分子分散剤)
本発明の液体洗浄剤組成物において、高分子分散剤は、例えば、スケール発生防止、スケール付着防止等の観点から含有させることができる。高分子分散剤は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、アクリル酸/マレイン酸共重合体、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体、オレフィン/マレイン酸共重合体、無水マレイン酸/スチレン共重合体、無水マレイン酸/エチレン共重合体、無水マレイン酸/酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸/アクリル酸エステル共重合体、糖類/アクリル酸共重合体、リグニンスルホン酸、ポリアスパラギン酸、ポリエチレンイミン、アルコキシル化ポリエチレンイミンおよびそれらの塩等を使用することができる。中でも、ポリアクリル酸、アクリル酸/スルホン酸系モノマー共重合体およびそれらの塩を好適に使用でき、特にポリアクリル酸およびその塩が好ましい。これらの平均分子量は、当該技術分野において一般的に使用される範囲であればよく、例えば、1000~100000である。なお、本発明の液体洗浄剤組成物において、高分子分散剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明の液体洗浄剤組成物における高分子分散剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。高分子分散剤の含有量の下限としては、スケール付着防止の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、1.5質量%以上が特に好ましい。また、高分子分散剤の含有量の上限としては、液体洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。高分子分散剤の含有量の数値範囲としては、0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上15質量%以下であることが更に好ましく、1.5質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
(キレート剤)
本発明の液体洗浄剤組成物において、キレート剤は、例えば、洗浄力の向上、スケール発生防止等の観点から含有させることができる。キレート剤は、当該技術分野において公知のものを、特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA-OH)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、3-ヒドロキシ-2,2-イミノジコハク酸(HIDS)、アラニン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、グルタミン酸二酢酸(GLDA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)、アスパラギン酸二酢酸(ASDA)、トリポリリン酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、ジエチルグルタル酸、フィチン酸およびそれらの塩等を使用することができる。中でも、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、メチルグリシン二酢酸(MGDA)およびそれらの塩を好適に使用でき、特にメチルグリシン二酢酸(MGDA)およびその塩が好ましい。なお、本発明の液体洗浄剤組成物において、キレート剤は、1種単独で使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の液体洗浄剤組成物におけるキレート剤の含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。キレート剤の含有量の下限としては、洗浄力の観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、6質量%以上が更に好ましい。また、キレート剤の含有量の上限としては、液体洗浄剤組成物の配合安定性の観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。キレート剤の含有量の数値範囲としては、2質量%以上20質量%以下であることが好ましく、4質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0025】
本発明の液体洗浄剤組成物における、高分子分散剤及び/又はキレート剤の合計含有量は、本発明の効果が奏される範囲であれば特に制限なく、適量配合できる。下限としては、2質量%以上が好ましく、4.5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましい。また、上限としては、45質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。合計含有量の数値範囲としては、2質量%以上45質量%以下であることが好ましく、4.5質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上25質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
[その他の成分]
本発明の液体洗浄剤組成物には、上記成分の他、必要に応じて界面活性剤、酵素、色素、殺菌剤、水溶性溶剤、消泡剤、漂白剤、漂白活性化剤、酸化防止剤、香料、金属腐食防止剤、防腐剤等を含有させることができる。また、本発明の液体洗浄剤組成物には、本発明の効果が奏される範囲であれば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム以外の任意のアルカリ剤も含有させることができる。なお、本発明は、アルカリ剤を含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物であることから、例えば、酵素を含有しないことが好ましく、より具体的に、例えば、アミラーゼ、プロテアーゼおよびセルラーゼを含有しないことも好ましく、特にアミラーゼを含有しないことが好ましい。
【0027】
本発明の液体洗浄剤組成物において、溶剤は水である。本発明の液体洗浄剤組成物が含有する水としては、特に限定されず、例えば水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水、軟水、硬水等が挙げられる。
【0028】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上述の各成分を常法により混合することで製造することができる。
【0029】
[pH]
本発明の液体洗浄剤組成物のpHは、特に制限されるものではないが、例えば、11.0以上であり、好ましくは11.5以上であり、より好ましくは12.0以上、更に好ましくは12.5以上であり、特に好ましくは13.0以上である。このような高いpHが洗浄力の観点から好ましい。なお、本発明の液体洗浄剤組成物は水溶液であることから、そのpHの上限は14.0となる。
【0030】
[自動食器洗浄機用用途]
本発明の液体洗浄剤組成物は、自動食器洗浄機にて用いられる。典型的には、本発明の液体洗浄剤組成物は、各種自動食器洗浄機に一体的に内蔵もしくは付設される洗浄剤供給装置を介して所定濃度に希釈され、その洗浄剤希釈液が、自動食器洗浄機において、被洗浄物を洗浄するのに用いられる。このとき、洗浄剤供給装置は、希釈液の導電率を指標として、希釈液の洗浄剤濃度を所定の濃度に保つように洗浄剤を自動投入する。なお、本発明の洗浄剤組成物を使用することができる自動食器洗浄機に、特に制限はなく、洗浄剤供給装置を有する自動食器洗浄機に好適に使用でき、例えば、ラックコンベアタイプ、フライトコンベアタイプ等のコンベア型自動食器洗浄機など、一般的に流通している家庭用または業務用各種自動食器洗浄機において使用することができる。
【0031】
上記被洗浄物としては、自動食器洗浄機により洗浄され得るものであれば、特に制限はないが、例えば、飲食器、調理器具、トレイ、瓶、缶等が挙げられる。
【0032】
なお、本発明の液体洗浄剤組成物は、曝気洗浄、浸漬洗浄、減圧沸騰式洗浄等にも使用できる。
【0033】
<自動食器洗浄機による食器の洗浄方法>
本発明の自動食器洗浄機による食器の洗浄方法(以下、単に洗浄方法ということがある)は、本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いることを特徴とし、その他の工程、条件等は制限されない。なお、この洗浄方法の説明には、前述の本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の説明を援用することができ、また、この洗浄方法の説明を、本発明の自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の説明に援用することもできる。
【0034】
本発明の洗浄方法は、例えば、本発明の液体洗浄剤組成物の希釈液を、自動食器洗浄機庫内に収容された食器に対し噴射する噴射洗浄工程を含む。
【0035】
本発明の洗浄方法において、本発明の液体洗浄剤組成物は、通常、水(例えば水道水)で希釈されて、洗浄剤希釈液として使用される。
【0036】
本発明の洗浄方法において、使用時の液体洗浄剤組成物の希釈倍率は、例えば、2~100000倍であり、好ましくは100~10000倍であり、より好ましくは500~3000倍であり、さらに好ましくは1000~2500倍である。また、洗浄剤希釈液中の本発明の液体洗浄剤組成物の濃度は、例えば、0.001質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下であり、さらに好ましくは0.04質量%以上0.1質量%以下である。
【0037】
本発明の洗浄方法において、使用時に液体洗浄剤組成物が希釈されたときの洗浄剤希釈液の導電率は、例えば、被洗浄物に付着した汚れによって大きな影響を受けないように十分高ければ特に制限はないが、一例として、200μS/cm~4000μS/cmが挙げられる。また、250μS/cm~3000μS/cmがさらに好ましく、300μS/cm~2500μS/cmが特に好ましい。なお、ここでの導電率は、後記「導電率試験」の項に記載の方法と同様に測定され、希釈水との導電率の差である。
【0038】
本発明の洗浄方法において、噴射洗浄時の温度は、適宜設定可能であるが、例えば、1~100℃である。
【0039】
本発明の洗浄方法において、噴射洗浄による洗浄時間は、適宜設定可能であるが、例えば、1秒~24時間である。
【0040】
本発明の洗浄方法は、例えば、液体洗浄剤組成物を希釈する洗浄剤希釈工程を含む。ここでは、例えば、希釈液の導電率(電気伝導率)を希釈液中の液体洗浄剤組成物の濃度の指標とし、この指標に基づき、洗浄剤の濃度が所定の範囲になるように洗浄剤が希釈される。なお、この洗浄剤希釈工程には、例えば、既存の希釈液に追加で洗浄剤を混合し、当該希釈液中の洗浄剤の濃度を所定の範囲となるよう調整することも含まれる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0042】
下記表1~5に示す組成の液体洗浄剤組成物を調製し、以下の試験を行った。配合に用いた各成分を以下に示す。なお、以下において「%」は特に記載がない限り質量%を表す。また、表1~5における括弧内の数値は純分換算値である。
【0043】
[配合成分]
<アルカリ剤>
・水酸化ナトリウム:東ソー社製
・48%水酸化カリウム溶液:東亞合成社製
【0044】
<キレート剤>
・40%メチルグリシン二酢酸三ナトリウム液:商品名「Trilon M biobased liquid」、BASF社製
【0045】
<高分子分散剤>
・45%ポリアクリル酸ナトリウム液:商品名「Sokalan CP10」、BASF社製
【0046】
<塩成分>
・塩化ナトリウム:富士フィルム和光純薬社製
・塩化カリウム:富士フィルム和光純薬社製
・塩化アンモニウム:富士フィルム和光純薬社製
・メタ珪酸ソーダ9水塩(純分39%):長井製薬所社製
・1号ケイ酸カリウム(純分81%):富士化学社製
・炭酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬社製
・炭酸カリウム:富士フィルム和光純薬社製
・硫酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬社製
・クエン酸ナトリウム:富士フィルム和光純薬社製
【0047】
[pH]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、液温を25℃にした。LAQUA pH METER F-71(HORIBA社製)を用いて液体洗浄剤組成物のpHを測定した。
【0048】
[配合安定性試験]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、液温を25℃にした。外観を目視で観察し、配合安定性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:透明である。
×:少なくとも、白濁、分離、析出、沈殿のいずれかが生じている。
【0049】
[低温保存安定性試験]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、マイナス5℃で24時間保存した。その後外観を目視で観察し、低温保存安定性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:透明である。
×:少なくとも、白濁、分離、析出、沈殿のいずれかが生じている。
【0050】
[種晶試験]
各液体洗浄剤組成物を、前述のとおり調製した後、それぞれの塩成分(例えば、塩化ナトリウム配合であれば塩化ナトリウムの塩、塩化カリウム配合であれば塩化カリウムの塩;ただし、1号ケイ酸カリウム配合についてはメタ珪酸ソーダ9水塩)1g(固体)を液体洗浄剤組成物100gに添加し、マイナス5℃で一日保存した。その後外観を目視で観察し、液体洗浄剤組成物由来の塩の結晶が発生するかを評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:結晶の発生が見られない。
×:結晶の発生が見られる。
【0051】
[導電率試験]
各液体洗浄剤組成物の2000倍希釈時の導電率について、水道水の導電率と比較することにより評価した。具体的には、まず、25℃での水道水の導電率を測定した。つぎに、各液体洗浄剤組成物を水道水で2000倍希釈し(0.05%洗浄剤希釈液)、その希釈液の25℃での導電率を測定した。0.05%洗浄剤希釈液の導電率と水道水の導電率との差を計算し、以下の評価基準で評価した。なお、導電率計は、CyberScan CON400(アズワン社製)を使用した。
○:導電率差が300μS/cm以上である
×:導電率差が300μS/cm未満である
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
配合安定性試験、低温保存安定性試験、種晶試験、及び導電率試験に関する結果を表1~5に示す。表1~5に示されるとおり、実施例1~6は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを合計10質量%弱含有する液体洗浄剤組成物であるが、塩化ナトリウム又は塩化カリウムを5、7又は10質量%含有しており、配合安定性、低温保存安定性(種晶試験含む)、導電率の全てにおいて優れていた。これに対し、他の組成は同じとしつつも、塩化ナトリウム及び塩化カリウムに代えて他の塩、具体的には、塩化アンモニウム、メタ珪酸ソーダ、1号ケイ酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸ナトリウム、又はクエン酸ナトリウムを配合した場合、どのような含有量であっても、配合安定性、低温保存安定性(種晶試験含む)、導電率の全てに優れる洗浄液組成物を得ることはできなかった(比較例2~20)。
【0058】
以上より、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する液体洗浄剤組成物において、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを配合することで、洗浄剤の保存安定性を維持したまま、希釈時における高い導電率を付与できることがわかった。これにより、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを配合することで、高倍率で希釈しても十分高い導電率が得られ、かつ濃縮時の保存安定性も高い、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤の処方の開発を容易にすることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、高倍率で希釈しても十分高い導電率が得られ、かつ濃縮時の保存安定性も高い自動食器洗浄機用液体洗浄剤を容易に設計できる。このため、高倍率で希釈しても十分高い導電率が得られ、かつ濃縮時の保存安定性も高い自動食器洗浄機用液体洗浄剤を提供することができる。
【要約】
【課題】本発明は、高倍率で希釈しても十分高い導電率を有しており、かつ保存安定性も高い、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを含有する自動食器洗浄機用液体洗浄剤の処方の開発に有用な配合(配合成分)を見出すことを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム並びに(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを含有し、(A)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムの合計含有量が4質量%以上、かつ水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのそれぞれの含有量が5質量%以下であり、(B)塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムの合計含有量が5質量%以上である、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物である。
【選択図】なし