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▶ ユーストラリス ファーマシューティカルズ リミテッド (トレーディング アズ プレススラ ニューロ)の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】非経口製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20231212BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231212BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231212BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231212BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/10
A61K47/26
A61P25/00
A61P43/00 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020541497
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 AU2019050075
(87)【国際公開番号】W WO2019148246
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】2018900325
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515340682
【氏名又は名称】ユーストラリス ファーマシューティカルズ リミテッド (トレーディング アズ プレススラ ニューロ)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンカン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ササーマン,アンドレーア
(72)【発明者】
【氏名】ウィルムブリンク,グラシエラ ブールスシャイト
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00~31/80
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I)
【化1】
(式中、RはH又はC1~4アルキルである)の化合物又はその医薬として許容される塩、又は溶媒和物;
(ii)プロピレングリコールである溶解剤;及び
(iii)5%のグルコース(デキストロース)溶液である注入流体、を含
528~1023mOsm/kgの浸透圧を有し、式(I)の化合物は、2HCl塩の形態である、
非経口医薬組成物。
【請求項2】
前記2HCl塩形態の式(I)の化合物の溶解剤に対するwt/wt比が、1:40~1:250である、請求項に記載の非経口医薬組成物。
【請求項3】
前記溶解剤である前記プロピレングリコールが、前記組成物の総重量に基づいて50%~99.8%wt/wtの量で前記組成物中に存在する、請求項2に記載の非経口的医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物は、3~7のpHで維持される、請求項3に記載の非経口的医薬組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の溶解剤の前記注入流体に対するwt/wt比が、1:10~1:2000であり、
前記組成物が3~7のpHで維持される請求項に記載の非経口医薬組成物。
【請求項6】
前記式(I)の化合物の塩が、
【化2】
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
それを必要とする対象において上昇した頭蓋内圧を治療するための請求項1~6のいずれかに記載の非経口医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、限定されないが、脳震盪、脳震盪後(post-concussive)(又は脳震盪後(post-concussion))症候群(PCS)、慢性外傷性脳症(CTE)、外傷性脳損傷(TBI)及び脳卒中などの兆候のための特定の置換ピリジン系化合物を含む治療用非経口製剤、それらの製造、並びに頭蓋内圧の上昇又は脳内の(高)リン酸化タウタンパク質(τ)の発現の変更などの脳内の物質P介在経路を治療する際の前記製剤の方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
頭蓋内損傷としても知られる外傷性脳損傷(TBI)は、外部力が脳を損傷するときに発生する。TBIは、重篤度、機構(閉じた又は浸透した頭部損傷)、又は他の特徴(例えば、特定の位置又は広範囲にわたって生じている)に基づいて分類することができる。TBIは、物理的、認知的、社会的、感情的、及び行動的症状をもたらす可能性があり、結果は、完全な回復から永久的な障害又は死に至る可能性がある。
【0003】
脳の外傷は、頭蓋内の急な加速又は減速の結果として、又は動きと突然の衝突の両方の複雑な組み合わせによって生じる。損傷の瞬間に引き起こされる被害に加えて、損傷後の数分から数日の間に様々な事象が二次的損傷をもたらし得る。これらのプロセスは、脳血流及び頭蓋内の圧力の変化を含む。
【0004】
TBIの最も一般的な原因には、暴力、輸送事故、建設、及びスポーツが含まれる。発展途上国で重要性が増しているバイクは、他の原因が減少するので、主要原因となっている。米国では毎年160万~380万の外傷性脳損傷が、スポーツ及びレクリエーション活動の結果であると推定されている。2~4歳の子供では、落下がTBIの最も一般的な原因であるが、より年齢の高い子供では、この位置で交通事故が落下と競合する。TBIは、児童虐待に起因する第3の最も一般的な損傷である。虐待は、小児科の脳外傷の症例の19%を引き起こし、これらの症例の中では死亡率がより高い。
【0005】
TBI又は脳卒中で上昇した頭蓋内圧(ICP)を低下させることができる効果的な薬剤が欠如しており、TBIだけでなくアルツハイマー病などの兆候の臨床転帰不良に関連している高リン酸化タウタンパク質の過剰発現を防止することができる薬剤も存在しない。したがって、TBI又は脳卒中で上昇したICPを治癒若しくは改善するか、又は高リン酸化タウタンパク質の過剰発現を防止することができる薬物が必要とされている。
【0006】
有効な薬物の欠如の問題は、TBIを有する患者がおそらく嚥下困難を意識していないか、又は嚥下困難である可能性があるという事実によってさらに悪化する。したがって、薬物がどのように投与され得るかについての制限が存在する。
【0007】
活性医薬成分(API)が特定されても、薬物の製剤化で克服すべき多くの障害が依然として存在する。ヒト投与に適する薬物を製剤化する際に、当業者は、製剤技術が予測可能でないことを知っている。様々な要因を注意深く調査し、APIの薬物動態学的特性を少なくとも維持し(増強しないならば)、かつ/又は許容可能な貯蔵寿命を有することができるように薬物に安定性を付与するように調整する必要がある。この意味において、APIの物理的特性、送達の様式、組成物の流動性、賦形剤の適合性、生成の均一性、及び放出プロファイルが注意深く研究され、調査される必要がある。
【0008】
適切に製剤化されていない場合には、APIは、患者に生物学的利用能を効率的に提供しない可能性がある。例えば、カルシウム塩を充填剤として利用することができるが、胃腸管からのテトラサイクリン(APIの例)の吸収にも干渉することが判明した。理解されるように、製剤に添加される成分は必ずしも不活性でなくてもよく、APIと相互作用することができることをこの一例は強調している。
【0009】
さらに、製剤への希釈剤の添加は、製剤の物理化学的特性を変える可能性があり、生成物を不安定にさせ、製造中に問題を引き起こす可能性がある。これは、薬物として使用するための医薬製剤において、既存の基準及び規制との各成分の特定のコンプライアンスが満たされなければならないことから、適正製造基準(GMP)の基準の必要性によってさらに折り合いがつけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特定の化合物の製剤化に関して、当技術分野の欠点の少なくとも1つを克服又は改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、有効量の特定の置換ピリジン系化合物及び他の賦形剤を含む治療用非経口医薬製剤を提供する。該非経口製剤は、対象が嚥下を意識していないか、又は嚥下できない場合に、それを必要とする対象に、例えば、高リン酸化タウタンパク質の過剰発現などの物質P媒介プロセス又は頭蓋内圧(ICP)の上昇の即時軽減を提供し、それに応じて、限定されないが、PCS、CTE、TBI及び脳卒中などの病態及び/又は兆候の症状を直ちに軽減することにより、それを必要とする対象にAPIの投与を都合よく可能にする。本明細書に記載の製剤は、再構成形態の場合、少なくとも良好なAPI溶解性を特徴とする。該製剤はまた、良好な安定性を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様において、本発明は、
(i)式(I)
【化1】
(式中、RはH又はC1~4アルキルである)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ;及び
(ii)グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォール(Kolliphor)HS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、ポリソルベート80(Tween80)、ヒマシ油、綿実油、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、又はベニバナ油を含む群から選択される少なくとも1種の溶解剤であって、該組成物の全重量に基づいて約10%~約99.8%wt/wtの量で該組成物中に存在する少なくとも1種の溶解剤、
を含む再構成可能な非経口医薬組成物を提供する。
【0013】
一実施形態において、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグは、該組成物の全重量に基づいて約0.2%~約1.8%wt/wtの量で該組成物中に存在する。
【0014】
別の実施形態において、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグの溶解剤に対するwt/wt比は、約1:40~約1:250である。
【0015】
別の実施形態において、再構成可能な非経口医薬組成物は、再構成可能な静脈内医薬組成物であり、溶解剤はプロピレングリコールである。
【0016】
第2の態様において、本発明は、
(i)式(I)
【化2】
(式中、RはH又はC1~4アルキルである)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ;
(ii)グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、ポリソルベート80(Tween80)、ヒマシ油、綿実油、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、又はベニバナ油を含む群から選択される少なくとも1種の溶解剤;及び
(iii)水、生理食塩水、カリウム溶液、グルコース溶液、グルコース生理食塩水、デキストロース溶液、デキストロース生理食塩水、平衡化クリスタロイド溶液、ハルトマン溶液、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、酢酸リンゲル溶液、ノルモゾルR、ノルモゾルM、プラズマライト、血漿、ヒトアルブミン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、全血、オキシグロビン又はそれらの組み合わせを含む群から選択される注入流体、
を含む非経口医薬組成物を提供する。
【0017】
一実施形態では、非経口医薬組成物を参照して、該組成物は、約200mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。
【0018】
一実施形態では、少なくとも1種の溶解剤の注入流体に対するwt/wt比は、約1:10~約1:2000である。
【0019】
別の実施形態では、注入流体は5%のグルコース溶液である。
【0020】
第3の態様において、本発明は、それを必要とする対象において上昇した頭蓋内圧を治療する方法であって、
a)水、生理食塩水、カリウム溶液、グルコース溶液、グルコース生理食塩水、デキストロース溶液、デキストロース生理食塩水、平衡化クリスタロイド溶液、ハルトマンの溶液、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、酢酸リンゲル溶液、ノルモゾルR、ノルモゾルM、プラズマライト、血漿、ヒトアルブミン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、全血、オキシグロビン又はそれらの組み合わせを含む群から選択される注入流体で、本明細書に開示される再構成可能な非経口医薬組成物を再構成すること;及び
b)再構成された非経口医薬組成物を該対象に投与すること、
を含む方法を提供する。
【0021】
第4の態様において、本発明は、それを必要とする対象において上昇した頭蓋内圧を治療する方法であって、本明細書に開示される非経口医薬組成物を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0022】
別の実施形態では、上昇した頭蓋内圧を治療する方法は、外傷性脳損傷を治療する方法である。
【0023】
別の実施形態では、上昇した頭蓋内圧を治療する方法は、脳卒中を治療する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書及び以下の特許請求の範囲の全体を通して、文脈が特に必要でない限り、用語「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などの変形は、規定された整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループの包含を意味し、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程のグループを除外しないことを意味することが理解される。
【0025】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内であることを意味し、値が測定又は決定される方法、すなわち測定システムの限界に部分的に依存する。
【0026】
この明細書において、いずれかの従来の刊行物(若しくはそれから導かれる情報)、又は既知であるいずれかの事項への言及は、その従来の出版物(若しくはそれから導かれる情報)又は既知の事項が、この明細書が関係する技術分野での共通の一般的知識の一部を形成することを肯定又は承認するものではないか又は任意の形で示唆するものではなく、かつ肯定又は承認又は示唆の任意の形として解釈されるべきではない。
【0027】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的のために、次の用語を以下に定義する。
【0028】
「アルキル」は、直鎖状又は分岐状であってもよく、1~4個の炭素原子又はより好ましくは1~3個の炭素原子を有する一価のアルキル基を指す。本明細書で使用する場合、C1~4アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルからなる群から選択されるアルキルを指す。
【0029】
「溶解剤」は、APIの溶解を補助するのに役立つ物質である。それらはまた、APIの溶解性を改善し、生物学的利用能を増大させるために使用され得る。それらはまた、懸濁液を安定化させ、コロイド及びゲルを調製するために使用され得る。注射可能な投与形態における溶解剤の例には、pH調整剤、水溶性有機溶媒、界面活性剤、水不溶性有機溶媒、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、シクロデキストリン、及びリン脂質などが含まれる。
【0030】
「再構成可能」は、元の状態に戻るか、又は別の状態若しくは外観に再構築される能力を指す。これは、液体の添加、例えば、濃縮物への水の添加によって生じ得る。また、固体又は粉末は、固体又は粉末を液体中に溶解して、溶液を形成することにより再構成され得る。したがって、濃縮物、溶液、分散体、固体、粉末又は組成物は、その好ましい使用可能な形態を得るために再構成され得る。
【0031】
「非経口」は、口及び消化管以外の体内のどこかで起こる投与の様式を意味する。したがって、非経口投与は、胃腸管以外の経路を介した送達による投与である。本明細書で使用される「非経口」は、筋肉内、静脈内(ボーラス及び/又は注入)、皮下、膀胱内、又は歯肉下などの投与の様式を指す。一実施形態では、投与の様式は静脈内である。
【0032】
第1の態様において、本発明は、再構成可能な非経口医薬組成物を提供する。一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、濃縮物、溶液、分散体、固体、又は粉末の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、濃縮物の形態である。この点において、該濃縮物は、大量の溶質(API及び/又は前述の溶解剤の少なくとも1つ)を含む。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、溶液の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、分散体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、水性分散体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、油分散体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、固体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、凍結乾燥固体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、超臨界乾燥固体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、粉末の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、凍結乾燥粉末の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、超臨界乾燥粉末の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、凍結乾燥された固体の形態である。別の実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、凍結乾燥された粉末の形態である。
【0033】
再構成可能な非経口医薬組成物は、式(I)
【化3】
(式中、RはH又はC1~4アルキルである)
の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む。
【0034】
一実施形態では、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル又はtert-ブチルである。別の実施形態では、Rは、H、メチル、エチル、n-プロピル又はイソプロピルである。別の実施形態では、RはHである。別の実施形態では、Rはメチルである。別の実施形態では、Rはエチルである。別の実施形態では、Rはn-プロピルである。別の実施形態では、Rはイソプロピルである。別の実施形態では、Rはn-ブチルである。別の実施形態では、Rはsec-ブチルである。別の実施形態では、Rはイソ-ブチルである。別の実施形態では、Rはtert-ブチルである。
【0035】
したがって、いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、以下のものから選択される式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む:
【化4】
【0036】
特に、いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、
【化5】
である式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む。
【0037】
一実施形態では、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグは、塩として提供される。別の実施形態では、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグは、HCl塩である。別の実施形態では、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグは、2HCl塩である。したがって、いくつかの実施形態では、該医薬組成物は、以下のものから選択される式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む:
【化6】
【0038】
非経口製剤の1つの重要なパラメータは、APIの溶解性である。APIは、保存のために長期間、又は少なくとも投与期間にわたってその溶解性を維持することが望ましい。APIの溶解不良の製剤は、生物学的利用能がより低くなり、同じ治療効果を送達するのにより多くの用量が必要とされるので、API毒性を潜在的に増加させ得る。溶解性は、APIの物理化学的特性(塩形態、HLB、サイズ及び立体配座、電荷、錯化など)、温度及び圧力、pH、使用される賦形剤の種類及び量、賦形剤とAPIの錯化などの様々な要因の組み合わせに依存する。本発明者らは、再構成可能な形態及び再構成された形態で式(I)の化合物を維持するために賦形剤、特に、溶解剤が重要であることを見出した。さらにより好ましくは、非イオン性溶解剤が好ましい。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、沈殿物のイオンの1種を含有する溶解性化合物が沈殿物と平衡して溶液に添加されたときに、一般的なイオン効果がイオン性沈殿物の溶解性の低下に関与すると考えている。いずれか1種のイオンの濃度が増加すると、ルシャトリエの原理に従って、過剰なイオンの一部は、反対電荷イオンと組み合わされることによって溶液から除去されるはずである。イオン生成物が溶解性生成物に等しくなるまで、塩の一部が沈殿する。
【0039】
したがって、再構成可能な非経口医薬組成物は、グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、ポリソルベート80(Tween80)、ヒマシ油、綿実油、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、又はベニバナ油を含む群から選択される少なくとも1種の溶解剤を含む。
【0040】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物に関して、少なくとも1種の溶解剤は、グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種の溶解剤は、ヒマシ油、綿実油、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、又はベニバナ油を含む群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種の溶解剤は、グリセロール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種の溶解剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、溶解剤はプロピレングリコールである。別の実施形態では、溶解剤はポリエチレングリコール300である。別の実施形態では、溶解剤は、ポリエチレングリコール400である。別の実施形態では、溶解剤は、コリフォールHS15(ソルトールHS15)である。別の実施形態では、溶解剤は、コリフォールEL(クレモフォールEL)である。別の実施形態では、溶解剤は、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)である。別の実施形態では、溶解剤はポリソルベート80(Tween80)である。
【0041】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物に関して、少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量に基づいて約5%~約99.8%wt/wtの量で該組成物中に存在する。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約10%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約15%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約20%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約25%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約30%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約35%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約40%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約45%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約50%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約55%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約60%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約65%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約70%~約99.8%wt/wtである。
【0042】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物に関して、式(I)の化合物は、該組成物の全重量に基づいて約0.2%~約1.8%wt/wtの量で該組成物中に存在する。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.25%~約1.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.25%~約1.7%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.3%~約1.7%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.3%~約1.6%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.35%~約1.6%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.35%~約1.5%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.4%~約1.5%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.4%~約1.4%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.45%~約1.4%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.45%~約1.3%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.5%~約1.3%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約0.5%~約1.2%wt/wtである。
【0043】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物に関して、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグの溶解剤に対するwt/wtの比は、約1:40~約1:250である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:50~約1:250である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:50~約1:240である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:60~約1:240である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:60~約1:230である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:70~約1:230である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:70~約1:220である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:80~約1:220である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:80~約1:210である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:90~約1:210である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:90~約1:200である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:100~約1:200である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:100~約1:190である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:110~約1:190である。別の実施形態では、wt/wtの比は約1:110~約1:180である。
【0044】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は濃縮物の形態であり、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の100%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約99.8%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約99.5%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約99%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約98%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約97%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約96%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約95%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約90%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約85%を含む。別の実施形態では、式(I)の化合物及び少なくとも1種の溶解剤は、該組成物の全重量の約80%を含む。
【0045】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物は、再構成可能な静脈内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な静脈内ボーラス医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な静脈内注入医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な筋肉内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な皮下医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な膀胱内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、再構成可能な歯肉縁下医薬組成物である。
【0046】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物が再構成可能な静脈内医薬組成物である場合、少なくとも1種の溶解剤は、グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種の溶解剤は、グリセロール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1種の溶解剤は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、又はポリソルベート80(Tween80)を含む群から選択される。別の実施形態では、該溶解剤はプロピレングリコールである。別の実施形態では、該溶解剤はポリエチレングリコール300である。別の実施形態では、該溶解剤はポリエチレングリコール400である。別の実施形態では、該溶解剤はコリフォールHS15(ソルトールHS15)である。別の実施形態では、該溶解剤はコリフォールEL(クレモフォールEL)である。別の実施形態では、該溶解剤はコリフォールRH60(クレモフォールRH60)である。別の実施形態では、該溶解剤はポリソルベート80(Tween80)である。
【0047】
一実施形態では、再構成可能な静脈内医薬組成物に関して、プロピレングリコールは、該組成物の全重量に基づいて約40%~約99.8%wt/wtの量で該組成物中に存在する。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約45%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約50%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約55%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約60%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約65%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約70%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約75%~約99.8%wt/wtである。別の実施形態では、該量は、該組成物の全重量に基づいて約80%~約99.8%wt/wtである。
【0048】
一実施形態では、再構成可能な静脈内医薬組成物に関して、該組成物は、約3~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約3.5~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約3.5~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約4.5~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約4.5~約6のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約4.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約5.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約6のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は約6.5のpHで維持される。
【0049】
当業者なら、本明細書に記載の別の溶解剤を、再構成可能な非経口医薬組成物に添加して、第2の再構成可能な非経口医薬組成物を形成することができることが理解されよう。例えば、凍結乾燥粉末(再構成可能な非経口医薬組成物)は、プロピレングリコールで再構成して、濃縮物又は溶液(第2の再構成可能な非経口医薬組成物)を形成することができる。次いで、第2の再構成可能な非経口医薬組成物を、さらに、注入流体で再構成又は希釈して、非経口医薬組成物を得ることができる。そのようなものは、本発明の範囲内である。
【0050】
したがって、第2の態様では、本発明は、
(i)式(I)
【化7】
(式中、RはH又はC1~4アルキルである)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ;
(ii)グリセロール、グリセリン、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、リシノレートベースの溶解剤、シクロデキストリン、コリフォールHS15(ソルトールHS15)、コリフォールEL(クレモフォールEL)、コリフォールRH60(クレモフォールRH60)、ポリソルベート80(Tween80)、ヒマシ油、綿実油、トリグリセリド、ゴマ油、大豆油、又はベニバナ油を含む群から選択される少なくとも1種の溶解剤;及び
(iii)水、生理食塩水、カリウム溶液、グルコース溶液、グルコース生理食塩水、デキストロース溶液、デキストロース生理食塩水、平衡化クリスタロイド溶液、ハルトマン溶液、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、酢酸リンゲル溶液、ノルモゾルR、ノルモゾルM、プラズマライト、血漿、ヒトアルブミン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、全血、オキシグロビン又はそれらの組み合わせを含む群から選択される注入流体、
を含む非経口医薬組成物を提供する。
【0051】
この点において、再構成可能な非経口医薬組成物は、注入流体内で再構成され、非経口医薬組成物を形成することができる。
【0052】
浸透圧モル濃度として以前に知られている浸透圧濃度は、溶液1リットル(L)あたりの溶質のオスモル(Osm)の数として定義される溶質濃度(オスモル/L又はOsm/L)の評価基準である。血液/血清の正常な浸透圧モル濃度は、約300~310mOsm/Lである。静脈内流体の張度は、溶液が末梢静脈又は中枢静脈経路を介して送達されるべきかどうかを決定し得る。希釈及び分散が迅速である低張性溶液並びに高張性溶液を少量で大血管に注入することができる。通常の範囲とは大きく異なる溶液は、組織の刺激、注射の痛み、及び電解質の移動を引き起こす可能性がある。極端な張性の溶液が注入されると、流体は、カテーテル先端及び血液細胞の近くで内膜の内皮細胞を含む細胞内又は細胞外へ移動する。得られた静脈壁の細胞サイズの変化は、炎症及び凝固プロセスを生じさせ、静脈炎及び血栓炎をもたらす。したがって、非経口医薬組成物の浸透圧モル濃度が適切に調節されることが重要である。本発明者らは、一定の注入流体の、安定剤に対する一定の比率での使用が、望ましい非経口医薬組成物の浸透圧モル濃度範囲をもたらし得ることを見出した。
【0053】
一実施形態では、非経口医薬組成物に関して、注入流体は、水、生理食塩水、カリウム溶液、グルコース(デキストロース)溶液、グルコース生理食塩水、ハルトマン溶液、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、酢酸リンゲル溶液、ノルモゾルR、ノルモゾルM、又はそれらの組み合わせを含む群から選択される。別の実施形態では、注入流体は水である。別の実施形態では、注入流体は生理食塩水である。別の実施形態では、注入流体はカリウム溶液である。別の実施形態では、注入流体はグルコース(デキストロース)溶液である。別の実施形態では、注入流体はグルコース生理食塩水である。別の実施形態では、注入流体はハルトマンの溶液である。別の実施形態では、注入流体は、リンゲル溶液である。別の実施形態では、注入流体は、乳酸リンゲル溶液である。別の実施形態では、注入流体は、酢酸リンゲル溶液である。別の実施形態では、注入流体は、ノルモゾルRである。別の実施形態では、注入流体は、ノルモゾルMである。別の実施形態では、注入流体は5%グルコース(デキストロース)溶液である。
【0054】
一実施形態では、非経口医薬組成物に関して、該組成物は、約100mOsm/kg~約700mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約200mOsm/kg~約600mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約200mOsm/kg~約550mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約200mOsm/kg~約500mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約200mOsm/kg~約450mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約200mOsm/kg~約400mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約250mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約300mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約350mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約400mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。別の実施形態では、該組成物は、約450mOsm/kg~約650mOsm/kgの浸透圧モル濃度を有する。
【0055】
浸透圧モル濃度を制御する必要性があるにもかかわらず、本発明者らは、注入中の一時的な溶血のリスクにより、全ての注入流体が投与に適しているわけではないことを発見した。例えば、5%グルコースからなる注入液を用いることにより、望ましくない効果を防止することができる。したがって、化合物の特異的な浸透圧モル濃度及び注入中の一時的な溶血を防止する必要性により、最適な注入溶液は、ストック溶液を5%グルコースで希釈することによって達成される。より低いグルコース濃度は、溶血のリスクを増加させることができるが、一方ではるかに高い濃度のグルコース溶液は、高すぎる浸透圧モル濃度を生じさせ得る。
【0056】
一実施形態では、非経口医薬組成物に関して、式(I)の化合物又はその医薬として許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグの溶解剤に対するwt/wt比は、約1:40~約1:250である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:50~約1:250である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:50~約1:240である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:60~約1:240である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:60~約1:230である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:70~約1:230である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:70~約1:220である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:80~約1:220である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:80~約1:210である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:90~約1:210である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:90~約1:200である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:100~約1:200である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:100~約1:190である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:110~約1:190である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:110~約1:180である。
【0057】
一実施形態では、非経口医薬組成物に関して、少なくとも1種の溶解剤の注入流体に対するwt/wt比は、約1:5~約1:2100である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:10~約1:2000である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:10~約1:1900である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:20~約1:1900である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:20~約1:1800である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:30~約1:1800である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:30~約1:1700である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:40~約1:1700である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:40~約1:1600である。別の実施形態では、wt/wt比は約1:50~約1:1600である。
【0058】
一実施形態では、非経口医薬組成物に関して、該組成物は約3~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約3.5~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約3.5~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4~約7のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4.5~約6.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4.5~約6のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約4.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約5.5のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約6のpHで維持される。別の実施形態では、該組成物は、約6.5のpHで維持される。
【0059】
一実施形態では、非経口医薬組成物は、静脈内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、静脈内ボーラス医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、静脈内注入医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、筋肉内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、皮下医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、膀胱内医薬組成物である。別の実施形態では、該組成物は、歯肉医薬組成物である。
【0060】
一実施形態では、再構成可能な非経口医薬組成物又は非経口医薬組成物は、滅菌される。別の実施形態では、該組成物はガンマ線にさらされる。別の実施形態では、該組成物は熱処理される。別の実施形態では、該組成物は湿潤熱処理される。例えば、該組成物は、約140℃、約130℃、約120℃、約110℃、約100℃、又は約90℃で熱処理され得る。該組成物は、約5分間、約10分間、約15分間、約20分間、約30分間、約40分間、約50分間、約60分間又は約120分間熱処理され得る。
【0061】
第3の態様において、本発明は、それを必要とする対象において上昇した頭蓋内圧を治療する方法であって、
a)水、生理食塩水、カリウム溶液、グルコース(デキストロース)溶液、グルコース生理食塩水、平衡化クリスタロイド溶液、ハルトマン溶液、リンゲル溶液、乳酸リンゲル溶液、酢酸リンゲル溶液、ノルモゾルR、ノルモゾルM、プラズマライト、血漿、ヒトアルブミン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、全血、オキシグロビン又はそれらの組み合わせを含む群から選択される注入流体中で本明細書に記載の再構成可能な非経口医薬組成物を再構成すること;及び
b)再構成された非経口医薬組成物を該対象に投与すること、
を含む方法を提供する。
【0062】
第4の態様では、本発明は、それを必要とする対象において上昇した頭蓋内圧を治療する方法であって、本明細書に記載の非経口医薬組成物を該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0063】
一実施形態では、本発明の様々な実施形態において対象に投与される医薬組成物の投薬は、式(I)の化合物が0.1mg/kg~100mg/kgの範囲で投与されるようなものである。一実施形態では、本発明の様々な実施形態では対象に投与される医薬組成物の投薬は、式(I)の化合物が0.1mg/kg~100mg/kgの範囲で投与されるようなものである。例えば、投薬量は、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、21.0mg/kg、22.0mg/kg、23.0mg/kg、24.0mg/kg、25.0mg/kg、26.0mg/kg、27.0mg/kg、28.0mg/kg、29.0mg/kg、30.0mg/kg、31.0mg/kg、32.0mg/kg、33.0mg/kg、34.0mg/kg、35.0mg/kg、36.0mg/kg、37.0mg/kg、38.0mg/kg、39.0mg/kg、40.0mg/kg、41.0mg/kg、42.0mg/kg、43.0mg/kg、44.0mg/kg、45.0mg/kg、46.0mg/kg、47.0mg/kg、48.0mg/kg、49.0mg/kg、50.0mg/kg、51.0mg/kg、52.0mg/kg、53.0mg/kg、54.0mg/kg、55.0mg/kg、56.0mg/kg、57.0mg/kg、58.0mg/kg、59.0mg/kg、60.0mg/kg、61.0mg/kg、62.0mg/kg、63.0mg/kg、64.0mg/kg、65.0mg/kg、66.0mg/kg、67.0mg/kg、68.0mg/kg、69.0mg/kg、70.0mg/kg、71.0mg/kg、72.0mg/kg、73.0mg/kg、74.0mg/kg、75.0mg/kg、76.0mg/kg、77.0mg/kg、78.0mg/kg、79.0mg/kg、80.0mg/kg、81.0mg/kg、82.0mg/kg、83.0mg/kg、84.0mg/kg、85.0mg/kg、86.0mg/kg、87.0mg/kg、88.0mg/kg、89.0mg/kg、90.0mg/kg、91.0mg/kg、92.0mg/kg、93.0mg/kg、94.0mg/kg、95.0mg/kg、96.0mg/kg、97.0mg/kg、98.0mg/kg、又は99.0mg/kgであってよい。
【0064】
一実施形態では、上昇した頭蓋内圧を治療する方法は、外傷性脳損傷を治療する方法である。
【0065】
別の実施形態では、上昇した頭蓋内圧を治療する方法は、脳卒中を治療する方法である。
【0066】
一実施形態では、該医薬組成物は、損傷事象後の脳振盪に関連する損傷の治療として投与される。
【0067】
一実施形態では、有効量は、少なくとも1日間、例えば、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも15日間、少なくとも16日間、少なくとも17日間、少なくとも18日間、少なくとも19日間、又は少なくとも20日間の治療範囲で、式(I)の化合物、又はその医薬として許容される塩、溶媒和物、又はプロドラッグの血液濃度を維持することができる量である。
【0068】
一実施形態では、有効量は、単回用量又は複数回用量として投与される。一実施形態では、有効量は、単回又は複数回の経口用量として投与される。
【0069】
「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、以下のもののうちの1以上を指す:
(a)例えば、TBI患者における頭蓋内圧の低下を含む、対象における障害の少なくとも1種の症状を軽減又は緩和すること;
(b)所与の刺激(例えば、圧力、組織損傷、冷温など)に応答するものを含むが、これに限定されない、対象が経験する障害の発現の強度及び/若しくは持続時間を軽減又は緩和すること;並びに
(c)発症を停止、遅延すること(すなわち、障害の臨床症状の前の期間)及び/又は障害を発症若しくは悪化させるリスクを低減すること。
【0070】
治療用化合物の投与が疾患又は障害に有効な治療計画である対象又は患者は、好ましくはヒトである。
【0071】
医薬として許容される塩には、塩基として機能する主化合物を無機酸又は有機酸と反応させて塩を形成することにより得られる塩、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、臭化水素酸塩、安息香酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、サリチル酸塩、マンデル酸塩、及び炭酸塩が含まれる。医薬として許容される塩には、主化合物が酸として機能し、適切な塩基と反応して、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、及びコリン塩を形成するものも含まれる。当業者は、酸付加塩が、いくつかの既知の方法のいずれかを介して、適切な無機酸又は有機酸との化合物の反応によって調製され得ることをさらに認識する。あるいは、アルカリ及びアルカリ土類金属塩は、様々な公知の方法を介して化合物を適切な塩基と反応させることにより調製することができる。以下のものは、無機酸又は有機酸:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、二硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩及びウンデカン酸塩との反応により得ることができる酸塩のさらなる例である。
【0072】
該組成物は、任意の他の適切な担体、希釈剤又は賦形剤を含有してもよい。これらには、全ての従来の溶媒、分散媒体、充填剤、固体担体、コーティング剤、抗真菌剤及び抗菌剤、皮膚浸透剤、界面活性剤、等張剤及び吸収剤などが含まれる。本発明の組成物は、他の補助的生理活性剤も含んでよいことが理解される。
【0073】
例えば、該医薬組成物は、保存剤、緩衝剤、安定剤及び/又は粘度増強剤をさらに含んでよい。適切な保存剤の例としては、パラヒドロキシ安息香酸、プロピレングリコール、フェノール、フェニルエチルアルコール又はベンジルアルコールの安息香酸エステルが挙げられる。適切な緩衝剤の例としては、リン酸ナトリウム塩、クエン酸、及び酒石酸などが挙げられる。適切な安定剤の例としては、α-トコフェロール酢酸塩、α-チオグリセリン、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アセチルシステイン、8-ヒドロキシキノリンなどの酸化防止剤、エデト酸二ナトリウムなどのキレート剤が挙げられる。適切な粘度増強剤、懸濁剤又は分散剤の例としては、置換セルロースエーテル、置換セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー、ポリオキシプロピレングリコール、及びソルビタンセスキオレエートが挙げられる。
【0074】
例えば、該医薬組成物は、pH調節剤及び/又は等張剤をさらに含んでよい。適切なpH調節剤の例には、塩酸、及び水酸化ナトリウムなどが含まれる。
【0075】
式(I)の化合物のプロドラッグである任意の化合物も、本発明の範囲及び趣旨に含まれることが理解される。「プロドラッグ」という用語は、その最も広い意味で使用され、インビボで本発明の化合物に変換されるその誘導体を包含する。そのような誘導体は、当業者が容易に思いつき、例えば、ホスホン酸誘導体を含む。
【0076】
当業者なら、本明細書に記載の本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更を受けやすいことを理解する。本発明は、その趣旨及び範囲内にあるそのような全ての変形及び変更を含むことを理解すべきである。本発明はまた、本明細書で言及されるか又は本明細書に示される工程、特徴、組成物及び化合物の全てを個々に又は集合的に含み、前記工程又は特徴の任意の2以上のいずれかの組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。
【0077】
本発明の特定の実施形態をこれから以下の実施例を参照して説明するが、これらは、例示の目的のみのためのものであり、本明細書で前述した一般性の範囲を限定することを意図するものではない。
【0078】
実施例
活性医薬成分(API)の特徴付け
式(I)の化合物、特に、以下に示す化合物(Ia)は、全ての実施例で使用され、特に、化合物(Ia)の2HCl塩(化合物(Ia)HCl)である。
【化8】
【0079】
溶解性
表1は、化合物(Ia)の溶解性評価及びそのそれぞれのpHを示す。エタノールもこの研究の一部として評価した。APIは、50mg/mLの化合物(Ia)HClの濃度で自由に可溶性があり、黄金色が観察された。
【0080】
表1:化合物(Ia)2HClの水での溶解性
【表1】
【0081】
考慮した共溶媒及び溶解性の結果を表2に列挙する。7日後に、溶液を再度チェックし、溶液1及び2は最初の外観として残っていることが判明した。
【0082】
表2:コリフォールHS15及びTween80との50mg/mLの化合物(Ia)2HClの溶解性
【表2】
【0083】
賦形剤の適合性
溶液の製剤の良好な特徴は、その溶解性及び安定性である。選択した溶媒系はまた、所望の濃度で薬物を溶解することができなければならず、薬物が十分な化学的安定性を有する環境を提供しなければならない。この研究は、潜在的賦形剤との2週間の安定性の最初の比較であり、分解率(%)を評価した。評価する賦形剤は、液体及び凍結乾燥製剤中に典型的に見られるものである。活性物質及び賦形剤を含有する一連の混合物を、指定期間、高温に供し、劣化を監視することによって賦形剤の適合性を調査した。
【0084】
表3:溶解性試験における賦形剤
【表3】
【0085】
表3の中の水溶性の溶液も、水中400mg/mLのコリフォールを用いて、溶解剤としてTween80を用いて調製した。これらの溶液を25℃/60%RH及び40℃/75%RHで14日間安定させた。製剤を、14日間の保存後にアッセイ及び関連物質について評価した。HPLC結果については表4及び表5を参照されたい。
【0086】
表4:各製剤についてのアッセイ結果(%)
【表4】
【0087】
表5:各製剤についての不純物の結果(%)
【表5】
【0088】
この結果は、化合物(Ia)2HClが製剤の範囲内で全く安定であったことを示す。化合物(Ia)2HClは、不純物の結果に関してpH6~10でより安定であるが、調製中に、溶液がpH3~7で安定しやすいことが観察された。溶液はまた、250mg/mL、400mg/mLのコリフォールHS製剤中で及び水中250mg/mLのTween80で安定であることも判明した。
【0089】
製剤開発-パート1
等張溶液を確立し、また化合物(Ia)2HClの最大濃度を確立するために製剤を試験した。Tween80及びコリフォールHS15を、250mg/mL及び様々なAPI濃度の溶解剤として使用して製剤を調製した。濃度範囲は、最終製剤に推奨される可能な強度を実証するために調製した。張度を向上させるために、塩化ナトリウム(NaCl)を該製剤に添加した。加えて、3つの他の製剤を調製し、その中の2つは、50mg/mLの化合物(Ia)2HClの最大濃度を含んでいた。Tween80の濃度も調節して、製剤安定性を失うことなく、使用できる溶解剤のより低い濃度範囲を確認した。製剤を表6に列挙し、これらの製剤を25℃/60%RH及び40℃/75%RHの安定チャンバー内に14日間置いた。
【0090】
表6:追加の安定性研究のための製剤
【表6】
【0091】
25℃/60%RH及び40℃/75%RHにおける製剤F1~F17及びF19の外観は、最初の調製時に観察されたもの(淡黄色~黄金色の溶液、透明で均一な液体)と一致した。25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方の条件下で14日後にF18に沈殿が観察された。安定性試験の結果を表7及び表8に示す。
【0092】
表7:F1~F19についてのアッセイ結果(%)
【表7】
【0093】
表8:F1~F19についての不純物の結果(%)(面積%)
【表8】
【0094】
この結果は、5mg/mL~40mg/mLの濃度範囲の化合物(Ia)2HClが、pH7に調整した水1mLあたり250mgのコリフォールHS15、9mgのNaCl中で安定であったことを示す(F1~F8)。50mg/mLの化合物(Ia)2HClが100mg/mLのTween80中で不安定であり(F18)、250mg/mLのTween80中の50mg/mLの化合物(Ia)2HClの外観は非常に粘稠である(F17)ことも観察された。最後に、100mg/mLのTween80中20mg/mLの化合物(Ia)2HCl(F19)を有する製剤は、非常に安定であることが示され、これは、製剤中のより低い濃度のTween80の1つの代替物となる可能性があることが観察された。
【0095】
5mg/mL及び0.2mg/mLの化合物(Ia)2HCl-Tween80
異なる濃度のTween80を、5mg/mL及び0.2mg/mLの化合物(Ia)HClの両方で試験した。加えて、pH4の製剤を用いて試験を行い、溶液の安定性に対するpHの影響を検証した。溶液を25℃/60%RH及び40℃/75%RHで14日間安定させ、製剤について表9に詳述した。
【0096】
表9:最適な製剤
【表9】
【0097】
安定性試験後の外観に関して、製剤F20及びF21は、25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方で最初に観察されたもの(淡黄色から黄色の溶液、透明で均一な液体)と一致した。製剤F22及びF23において、両方の条件での安定性試験後にゲルが形成された。製剤F24~F27は、最初に観察されたもの(無色、均一で透明な液体)と一致し、F28は、両方の安定性条件ではゲル状で曇った外観になった。最初に、調製後、F29は沈殿を示した。25℃/60%RH及び40℃/75%RHの両方の条件下で製剤F30及び31中に結晶が形成された。
【0098】
溶液をHPLC分析に供し、結果を表10及び表11に示す。
【0099】
表10:製剤F20~F27についてのアッセイ結果(%)
【表10】
【0100】
表11:製剤F20~F27の不純物の結果(%)(面積(%))
【表11】
【0101】
表12:製剤F20~F27の未知の不純物(RRT0.821)の面積(%)
【表12】
【0102】
5mg/mLの化合物(Ia)2HCl溶液の結果を分析することにより、両方とも、アッセイ(%)及び不純物(%)に関して最初の試験で得られたものと同様の結果を実証した。
【0103】
0.2mg/mLの化合物(Ia)2HClの濃度について、表12は、製剤F24及びF25が未知の分解ピーク(RRT0.821)を有していたことを実証する。このピークは、Tween80とAPIとの間の化学反応により生成され得る。この製剤では、化合物(Ia)2HClに対するTween80の最高比が観察された。Tween80を含有しない製剤F28は曇り、25℃/65%RH及び40℃/70%RHの保存条件の両方で2週間保存した後にゲルを形成し始めた。これは、APIの最低濃度においても溶解剤の使用の重要性を強調する。2mg/mLのTween80を含有する製剤F27は、25℃/65%RH及び40℃/70%RHの両方の保存条件下で2週間安定であった。
【0104】
5mg/mL及び0.2mg/mLの化合物(Ia)2HCl-プロピレングリコール及びPEG400
プロピレングリコール及びPEG400を用いて製剤化を行った。製剤の詳細については表13を参照されたい。
【0105】
表13:プロピレングリコールとPEG400を溶解剤として使用する製剤
【表13】
【0106】
pHを5に調整した場合としない場合とで製剤F32を調製すると、両方の溶液の間に差異は観察されなかった。製剤F32、F34及びF36の外観の結果は、調製の30分後に沈殿を示し、黄色の光沢で、曇った不均一な懸濁液であった。製剤F39は無色透明であり、均一のままであった。製剤F33は、数分以内に淡黄色の透明で均一な懸濁液から淡黄色の不均一な懸濁液に変化した。製剤F35、F37、F40、F42及びF43についても同様のことが予想される。
【0107】
5mg/mL及び0.2mg/mLの化合物(Ia)2HCl-コリフォールHS15
安定な溶液を生成するために使用することができるコリフォールHS15の最低濃度を選択するために、追加の製剤を調製した。製剤の詳細については表14を参照されたい。
【0108】
表14:コリフォールHS15を溶解剤として用いる製剤
【表14】
【0109】
pHを5に調整した場合としない場合での製剤F44及びF45の外観、及びpH調整をしていない製剤F46は、淡黄色で、透明で均一な溶液であった。しかし、pH調整をした製剤F46及びpH調整をしたF47とpH調整をしていないF47は、淡黄色で曇った不均一な懸濁液を呈した。より低い強度では、製剤F48及びF49は無色透明で均一であることが示された。これまで、製剤F45でコリフォールHS15の最低濃度が見られた。1週間安定させた後、pH調整した場合としない場合とで溶液の安定性に差異は観察されなかった。
【0110】
製剤F45=水1mLあたり5mg/mLの化合物(Ia)2HCl、25mg/mLのコリフォールHS15(2.5%w/w)、9mgのNaCl
【0111】
1mg/mL、5mg/mL及び15mg/mLの化合物(Ia)2HCl-プロピレングリコール
プロピレングリコールを溶解剤として用いて、さらなる製剤化を行った。製剤の詳細を表15に列挙する。
【0112】
表15:プロピレングリコールを溶解剤として用いる製剤
【表15】
【0113】
製剤の各々をオートクレーブによる(121℃で15分間加熱した蒸気での)滅菌に送り、HPLCアッセイ及び関連物質について試験した。対照試料とオートクレーブ処理した試料との比較を、表20及び表21に示す。加えて、製剤を5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで14日間安定させた。加速条件下で安定性を確認するために、試料を40℃/75%RHで14日間安定させた。安定性の結果を表18、19及び20に示す。
【0114】
プロピレングリコールと5%グルコースの相互作用
プロピレングリコール中の化合物(Ia)2HCl溶液を、注入流体としてのグルコース5%との相互作用の可能性について試験した。溶液と注入流体との相互作用の可能性を評価するために、表15に記載の製剤を用いて試験を行った。溶液の安定性を、外観及びpHについては6日間観察し、注入バッグ内の最終的な沈殿については十分な時間観察した。混合溶液は室温で維持し、光から保護しなかった。100%のプロピレングリコール中5mg/mLの化合物(Ia)2HCl(50mLのプロピレングリコール中250mgの化合物(Ia)2HCl-製剤F50)の溶解性を最初に評価した。溶解は遅かったが、1時間絶えず攪拌することで完全に溶解した。最終溶液の安定性及びpHを評価するために、18mLの製剤50を82mLの5%グルコースと混合した。注入流体(5%グルコース)は、pHが7.0と読み取られ、F50を添加した後、溶液の最終的なpHは2.8であった。室温で、光から保護せずに6日おいた後、溶液の外観は、最初に観察されたもの(無色、均一で透明な液体)と一致していた。
【0115】
試験される予定の次の製剤はF51及びF52であった。この目的は、より少ないプロピレングリコールを使用して溶液の安定性を評価することであった。これらの製剤の調製中に、APIの溶解性はF50より速く、pHは生理学的pHに近い5.0に調節できることが認められた。
【0116】
製剤F51及びF52を、流体(82mLの5%グルコース中18mLのIV溶液)と混合し、両方の溶液の最終pHは5.7であった。室温で、光から保護せずに6日おいた後、溶液の外観は、最初に観察されたもの(無色、均一で透明な液体)と一致した。
【0117】
湿潤熱による滅菌
湿潤熱(121℃で15分間)による殺菌を評価し、この工程からの分解の可能性を評価するために、各製剤からの1つの試料を対照として確保した。HPLC試験を、対照試料及び湿潤熱処理後の試料にて行った。試料を121℃で15分間オートクレーブ処理した。アッセイ結果(%)及び不純物の面積(%)については表16及び表17を参照されたい。
【0118】
表16:F50~F57のアッセイ結果(%)-オートクレーブ分析
【表16】
【0119】
表17:F50~F57の不純物の結果(%)-オートクレーブ分析(面積(%))
【表17】
【0120】
オートクレーブ処理した後、溶液は、最初の調製時に観察されたもの(無色から黄色、均一で透明な液体)と一致した。表20の化合物(Ia)2HClの効力は、絶対差の±2.0%以内の結果を示し、これは分析の変動として許容可能である。評価を必要とする別の重要な要因は、HPLCの結果であり、これは、表21によれば、湿潤熱処理後の試料の劣化を示さず、不純物(%)は有意に増加しなかった。結果は、湿潤熱(オートクレーブ)が滅菌の適切な方法であることを示す。
【0121】
製剤F50-F57の安定性の結果
表15に記載した試料からの安定性の結果を表18~20に列挙する。
【0122】
表18:F50~F57のアッセイ結果(%)
【表18】
【0123】
表19:F50~F57の不純物の結果(%)(面積(%))
【表19】
【0124】
表20:F50~F57の不純物の結果(%)-オートクレーブ分析(面積(%))
【表20】
【0125】
安定性試験後の溶液の外観を最初に観察されたものと比較した。全ての条件について安定チャンバー内で14日間おいた後に、製剤F50~F57は、外観に関して同じまま(無色~黄色の透明で均一な溶液)であった。オートクレーブ処理した溶液を評価したところ、製剤F50~F56は外観に関して同じまま(無色~黄色の透明で均一な溶液)であったが、製剤F57は黄色で、曇っており、不均一であることが観察された。製剤F50~F56は、121℃で15分間湿潤熱により滅菌した後並びに5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで14日間安定させた後に安定であることを示した。
【0126】
浸透圧モル濃度の評価
溶液からの悪影響を最小にするために、浸透圧モル濃度及びpHを調べ、生理学的レベルを満たすための限度を提案した。溶液の浸透圧モル濃度を調べ、結果を表21に提示する。
【0127】
薬物の投与は、評価されるべき重要な要因である。脳の膨潤の悪化を避けるために可能な最小限の流体容積を使用することを意図しているので、100mLの5%グルコースの注入バッグを静脈内流体として使用した。製剤F56を調製し、5%グルコースと混合し、アリコートを最終的なpH及び浸透圧モル濃度について試験した。2.0mL、3.0mL、4.0mL、5.0mL及び6.0mLの製剤F56(30、45、60、75及び90mgの化合物(Ia)を表す)をピペットでとり、5%グルコースで100mLに希釈することによって分析溶液を調製した。注:6.0mLの製剤F56(15mg/mLの化合物(Ia)HCl)が、90mgの化合物(Ia)2HClと等価である。最終製剤中のプロピレングリコールの寄与を確認するために、2.0mLを5%グルコースで100mLに希釈した。全ての試料を浸透圧モル濃度及びpHについて試験し、その結果を表21に提示する。
【0128】
表21:浸透圧モル濃度及びpHの結果
【表21】
【0129】
注入溶液にとって理想的なのは、投与すべき浸透圧モル濃度は、200~650mOsm/kgの範囲内であるべきである。上記の情報に基づいて、注射用の水及び200mLの5%グルコース中で最高用量を希釈する別の試験が提案された。注入流体として注射用の水及び5%のグルコースを使用した結果の比較については表22を参照されたい。
【0130】
表22:異なる注入流体を用いた浸透圧モル濃度の結果
【表22】
【0131】
製剤F56の安定性
製剤F56の試料を、以下の条件の5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで、3ヶ月間の安定性試験後に分析した。試料は、外観、pH、アッセイ及び関連物質について試験した。結果を表23にまとめる。製剤F56は、以下の条件:5℃、25℃/60%RH及び40℃/75%RHで3ヶ月後に安定であることを示した。
【0132】
表23:製剤F56の安定性試験の結果(時点=3ヶ月)
【表23】
【0133】
フィルターの適合性試験-Sartoab-P20-0.2μm
製造工程の一部として、溶液は湿潤熱による殺菌の前に濾過されるべきである。したがって、フィルター適合性を検証し、使用する最適なフィルターを決定するための研究を実施した。アッセイ及び関連物質を評価した。
【0134】
試験したフィルター=重複して試験したSartolab-P20-酢酸セルロース0.2μm(Sartorius)
フィルターの寄与を評価するために、100mLのF56を10×10mLのアリコートを通して濾過し、HPLCにより分析した。濾過していない試料の一部を対照として保持した。結果については表24及び25を参照されたい。
【0135】
表24:フィルター適合性-アッセイ(%)
【表24】
【0136】
表25:フィルター適合性-関連物質(面積(%))
【表25】
【0137】
表25の化合物(Ia)2HClの効力は、絶対差の±2.0%以内の結果を示し、これは分析の変動として許容可能である。100mLの溶液を濾過した後、効力(アッセイ%)又は関連物質(面積(%))における干渉は観察されなかった。フィルターSartolab-P20-酢酸セルロース0.2μmは、製造工程での使用に好適であると考えられた。
【0138】
GLP製造
製剤F56を、規模を拡大して製造し、バイアルに充填し、湿潤熱によってさらに殺菌した。生成を支援するための分析結果を行い、表26に列挙する。
【0139】
表26:15mg/mLの化合物(Ia)2HClの注入溶液
【表26】
【0140】
フィルターの適合性-Sartopure-PP2-8μm
細孔径がより大きいフィルター(規模を拡大した生成で、より速い速度で溶液を処理するのを助けるため)を試験し、効力(アッセイ(%))を評価した。
【0141】
試験したフィルター=重複して試験したSartopure-PP2-0.8μm(Sartorius-Lot#609011603)
フィルターの寄与を評価するために、100mLのF56を10×10mLアリコートを通して濾過し、HPLCにより分析した。濾過していない試料の一部を対照として保持した。結果については表27を参照されたい。
【0142】
表27:フィルター適合性-アッセイ(%)
【表27】
【0143】
表27の化合物(Ia)2HClの効力は、絶対差の±2.0%以内の結果を示し、これは分析の変動として許容可能である。100mLの溶液を濾過した後、効力(アッセイ(%))において干渉は観察されなかった。フィルターSartopure-PP2-0.8μmは、製造工程での使用に好適であると考えられた。
【0144】
注入研究
200mLの5%グルコース注入バッグ内の15mg/mLの化合物(Ia)2HCl静脈注射製剤の安定性及び相容性並びに第I相臨床試験での使用を目的とする注入ラインを決定するためにこの研究を行った。この研究では、静脈注射用の15mg/mLの化合物(Ia)2HClを5%グルコース注入バッグ内で混合し、0.05mg/mL及び0.45mg/mLの濃度を得た。
【0145】
理論量250mLの5%グルコースを含む注入バッグを用いて、200mLの5%グルコースバッグを調製した。50mLの注射器及び18G針を用いて、250mLの5%グルコースViaflex注入バッグから200mLの5%グルコースを除去し、500mLの空のViaflex注入バッグに添加した。適切な量の化合物(Ia)HClを注射器内で正確に秤量し、200mLの5%グルコースを含む注入バッグに注入した。
【0146】
投与されるバッグを、光から保護した5℃±3℃、光から保護した25℃/60%RH、及び周囲の室温で光から保護していない「通常の室内光」にさらして保存した。注入バッグを最初、4、8及び24時間の時点で試験した。注入ラインを、24時間の時点の後に周囲の室温のバッグを用いて試験した。
【0147】
注入ラインを注入バッグにつなぎ、注入ラインを通して一部の溶液を排出することによって、投与されるバッグの試験を行った。カニューレを注入ラインにつなぎ、試料を収集してアッセイ試験を行った。
【0148】
結果から、上に列挙した全ての条件について200mLの5%グルコースと最大8時間混合したときに、静脈注射用の15mg/mLの化合物(Ia)2HClが、溶液の外観、pH、アッセイ及び関連物質のパラメータについて安定であることが示された。