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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H02M3/28 L
H02M3/28 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019004420
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020058213
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018187435
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由沢 剛
(72)【発明者】
【氏名】陳 建
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147854(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117230(WO,A1)
【文献】特開2017-127108(JP,A)
【文献】特開2017-103889(JP,A)
【文献】特開2017-229209(JP,A)
【文献】特開2017-108592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0163039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの一次巻線と二次巻線との間の漏れインダクタンスを利用する共振リアクトルと共振コンデンサとを含む共振回路と、前記漏れインダクタンスと、前記共振コンデンサとの容量とによって共振が生じて前記共振回路から出力される共振電流を分流する分流回路と、を備えたスイッチング電源装置を制御駆動する制御装置であって、
前記分流回路によって分流された電流を平均化することにより負荷状態を表す負荷信号を出力する負荷検出回路と、
軽負荷時におけるバースト制御のスイッチング期間にハイサイドの第1のスイッチング素子およびローサイドの第2のスイッチング素子をターンオフするための複数のオフ信号を生成するオフ信号生成回路と、
前記バースト制御のスイッチング停止期間に前記共振回路がリンギング周波数で共振するときに前記共振回路から発生するリンギング電圧の共振サイクル数をカウントして前記バースト制御の前記スイッチング期間の開始時に前記第2のスイッチング素子をターンオンするための第1パルスオン信号を生成するオン信号生成回路と、
前記オフ信号生成回路によって生成された前記オフ信号と前記オン信号生成回路によって生成された前記第1パルスオン信号とから前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を交互にオン・オフ制御する第1の制御信号および第2の制御信号を生成する制御回路と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記オフ信号生成回路は、前記スイッチング電源装置の出力電圧とその目標電圧との差に相当するフィードバック電圧を入力して前記共振回路の前記共振リアクトルの一部を構成する前記トランスの補助巻線によって生成される巻線電圧の変化を検出する第1の閾値電圧および前記第1の閾値電圧より高い第2の閾値電圧を生成する閾値電圧生成回路と、前記巻線電圧が前記第1の閾値電圧より高くなると第1パルスオフ信号を出力する第1の比較器と、前記巻線電圧が前記第2の閾値電圧より低くなると第2パルスオフ信号を出力する第2の比較器と、前記共振電流を分流した電流に相当する電圧信号が第3の閾値電圧より低くなると第3パルスオフ信号を出力する第3の比較器とを有している、請求項1記載の制御装置。
【請求項3】
前記閾値電圧生成回路は、前記フィードバック電圧が大きくなるほど出力する前記第1の閾値電圧と前記第2の閾値電圧との差を小さくした、請求項2記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記オフ信号生成回路が出力した前記第1パルスオフ信号、前記第2パルスオフ信号および前記第3パルスオフ信号と前記オン信号生成回路が出力した前記第1パルスオン信号とを入力して第1パルス、第2パルスおよび第3パルスを順次生成し、前記第1パルスおよび前記第3パルスを前記第2の制御信号とし、前記第2パルスを前記第1の制御信号とした、請求項2記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1パルスおよび前記第2パルスがそれぞれオフしてからデッドタイム調整を実施した後に前記第2パルスおよび前記第3パルスをオンする、請求項4記載の制御装置。
【請求項6】
前記オン信号生成回路は、前記負荷信号に応じて前記リンギング電圧のボトム数を設定するボトム数設定回路と、前記巻線電圧がゼロ電位より低下した回数をカウントするカウント回路と、前記カウント回路がカウントした回数が前記ボトム数に一致したとき一致信号を出力するボトム数比較回路と、前記一致信号を前記リンギング電圧の1/4周期だけ遅延して前記第1パルスオン信号として出力する遅延回路と、前記第3パルスオフ信号の入力で前記カウント回路をイネーブル状態にするとともに前記遅延回路が出力した前記第1パルスオン信号の入力で前記カウント回路をディスエーブル状態にするフリップフロップとを有する、請求項2記載の制御装置。
【請求項7】
前記ボトム数設定回路は、前記負荷信号の値が大きくなるほど前記ボトム数を小さく設定した、請求項6記載の制御装置。
【請求項8】
前記オン信号生成回路は、前記負荷信号に応じて前記リンギング電圧のボトム数を設定する第1のボトム数設定回路と、前記スイッチング電源装置の出力電圧とその目標電圧との差に相当するフィードバック電圧に応じて前記リンギング電圧のボトム数を設定する第2のボトム数設定回路と、前記第1のボトム数設定回路が設定した第1のボトム数と前記第2のボトム数設定回路が設定した第2のボトム数とを比較するボトム数比較器と、前記第1のボトム数よりも前記第2のボトム数が大きいことを前記ボトム数比較器が判断したときに前記第1のボトム数を選択して出力し、前記第1のボトム数よりも前記第2のボトム数が小さいことを前記ボトム数比較器が判断したときに前記第2のボトム数を選択して出力するセレクタ回路と、前記巻線電圧がゼロ電位より低下した回数をカウントするカウント回路と、前記カウント回路がカウントした回数が前記セレクタ回路が出力した前記第1のボトム数または前記第2のボトム数に一致したとき一致信号を出力するボトム数比較回路と、前記一致信号を前記リンギング電圧の1/4周期だけ遅延して前記第1パルスオン信号として出力する遅延回路と、前記第3パルスオフ信号の入力で前記カウント回路をイネーブル状態にするとともに前記遅延回路が出力した前記第1パルスオン信号の入力で前記カウント回路をディスエーブル状態にするフリップフロップとを有する、請求項2記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1のボトム数設定回路は、前記負荷信号の値が大きくなるほど前記第1のボトム数を小さく設定し、前記第2のボトム数設定回路は、前記フィードバック電圧の値が大きくなるほど前記第2のボトム数を小さく設定した、請求項8記載の制御装置。
【請求項10】
前記負荷検出回路は、前記制御回路が前記第2パルスを生成しているときの前記電圧信号と前記第2パルスを生成していないときのグランド電位とを平均化した前記負荷信号を出力する、請求項4記載の制御装置。
【請求項11】
ハイサイドの第1のスイッチング素子と、ローサイドの第2のスイッチング素子と、トランスの一次巻線と二次巻線との間の漏れインダクタンスを利用する共振リアクトルと共振コンデンサとを含む共振回路と、前記漏れインダクタンスと、前記共振コンデンサとの容量とによって共振が生じて前記共振回路から出力される共振電流を分流する分流回路と、を備えたスイッチング電源装置を制御駆動する制御装置であって、
前記分流回路によって分流された電流を平均化することにより負荷状態を表す負荷信号を出力する負荷検出回路と、
軽負荷時における前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のバースト制御の第1のスイッチング停止期間に前記共振回路がリンギング周波数で共振するときに前記共振回路から発生するリンギング電圧のボトム数を前記負荷信号に応じて設定する第1のボトム数設定回路と、
負荷増大時における前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のバースト制御の前記第1のスイッチング停止期間より短い第2のスイッチング停止期間に、前記スイッチング電源装置の出力電圧とその目標電圧との差に相当するフィードバック電圧に応じて前記リンギング電圧のボトム数を設定する第2のボトム数設定回路と、
前記第1のボトム数設定回路が設定した第1のボトム数と前記第2のボトム数設定回路が設定した第2のボトム数とを比較するボトム数比較器と、
前記第1のボトム数よりも前記第2のボトム数が大きいことを前記ボトム数比較器が判断したときに前記第1のスイッチング停止期間を設定する前記第1のボトム数を選択して出力し、前記第1のボトム数よりも前記第2のボトム数が小さいことを前記ボトム数比較器が判断したときに前記第2のスイッチング停止期間を設定する前記第2のボトム数を選択して出力するセレクタ回路と、
を備えた制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流共振型のDC-DCスイッチングコンバータを備え、軽負荷時の高効率と音鳴り抑制とを両立したバースト制御が可能な制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流共振型のDC-DCスイッチングコンバータは、高効率化・薄型化に適しているため、テレビなどの電源アダプタ、LED(Light Emitting Diode)照明器具などに広く採用されている。
【0003】
このような電流共振型のDC-DCコンバータのスイッチング電源装置では、電気機器が使用されていない待機状態のときに、スイッチング動作を間欠的に停止するようにしたバースト制御が一般的に実施されている(たとえば、特許文献1参照)。バースト制御は、スイッチング停止期間が設けられているので、スイッチング電源装置の待機状態での平均的な待機電力を大幅に削減している。
【0004】
バースト制御では、スイッチング動作を行うスイッチング期間とスイッチング動作を停止するスイッチング停止期間とを1周期としたバースト周波数が20ヘルツ(Hz)~20kHzの可聴周波数帯に入ることがある。この場合、トランスに流れる20Hz~20kHzの電流によりコアの磁歪音が発生し、これが音鳴りの原因となっている。ただし、待機状態での負荷が1ワット(W)以下の場合では、バースト周波数は、100Hz前後で振幅が小さいことから、音鳴りは、実質的に許容範囲に抑えられている。
【0005】
近年のスイッチング電源装置では、軽負荷(10~30W程度)での高効率化が求められている。この軽負荷時においても、従来と同様のバースト制御を行うと、バースト周波数が1kHz前後となり、この周波数での音鳴りは、許容することができないほど大きなものとなる。
【0006】
これに対し、軽負荷時のバースト周波数を20kHzより高い周波数に設定して可聴周波数での音鳴りを回避することが行われている(たとえば、非特許文献1参照)。この非特許文献1の記載(68ページ、段落9.3.2)によれば、軽負荷時のバースト周波数を23kHzより高い周波数に設定している。
【0007】
この軽負荷時のバースト制御でも、スイッチング停止期間は、ハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子をターンオフしてスイッチング動作を停止させている。このとき、ハイサイドおよびローサイドのスイッチング素子が共に接続されたノードには、共振コンデンサおよび励磁インダクタの共振回路が接続されており、その共振回路は、ノードとグランドとの間の浮遊容量によって閉回路にされている。このため、バースト周期のスイッチング停止期間(69ページ、Figure 46において、ハーフブリッジHBの波形におけるdumpパルス後のwaitの期間)の間、共振回路は、リンギング周波数で共振することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-229209号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】NXP Semiconductors、“AN11801 TEA19161 and TEA19162 controller ICs Application note”、[online]、2017年5月5日、NXP Semiconductors、[平成30年8月1日検索]、インターネット<URL: https://www.nxp.com/docs/en/application-note/AN11801.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
非特許文献1のバースト制御によれば、スイッチング停止期間の長さは、出力電力、すなわち、フィードバック電圧に応じて決められるが、実際にスイッチング停止期間が終了するタイミングは、出力電力に相当するリンギング波形がピークとなるタイミングである。これは、リンギング波形がピークとなるタイミングでハイサイドのスイッチング素子をターンオンさせると、効率が良いからである。
【0011】
ここで、スイッチング停止期間におけるリンギングの共振サイクル数は、整数であるので、出力電力に相当する共振サイクル数が2つの隣接した離散数になることがある(非特許文献1の70ページ、段落9.3.2.3参照)。このように、異なる共振サイクル数が混在すると、バースト周波数は、連続性がなくなり、安定しなくなる。この共振サイクル数の混在状態は、複数の波形が重なった形になるので、個々の共振サイクル数の周期が可聴範囲に入っていない状態であっても、フーリエ変換すると可聴範囲の成分があるため、音鳴りの許容範囲を超える状態が発生することがある。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、軽負荷時の高効率と音鳴り抑制とを両立したバースト制御が可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記の課題を解決するために、トランスの一次巻線と二次巻線との間の漏れインダクタンスを利用する共振リアクトルと共振コンデンサとを含む共振回路と、漏れインダクタンスと、共振コンデンサとの容量とによって共振が生じて共振回路から出力される共振電流を分流する分流回路と、を備えたスイッチング電源装置を制御駆動する制御装置が提供される。この制御装置は、分流回路によって分流された電流を平均化することにより負荷状態を表す負荷信号を出力する負荷検出回路と、軽負荷時におけるバースト制御のスイッチング期間にハイサイドの第1のスイッチング素子およびローサイドの第2のスイッチング素子をターンオフするための複数のオフ信号を生成するオフ信号生成回路と、バースト制御のスイッチング停止期間に共振回路がリンギング周波数で共振するときに共振回路から発生するリンギング電圧の共振サイクル数をカウントしてバースト制御のスイッチング期間の開始時に第2のスイッチング素子をターンオンするための第1パルスオン信号を生成するオン信号生成回路と、オフ信号生成回路によって生成されたオフ信号とオン信号生成回路によって生成された第1パルスオン信号とから第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子を交互にオン・オフ制御する第1の制御信号および第2の制御信号を生成する制御回路と、を備える
【発明の効果】
【0014】
上記構成の制御装置は、バースト制御のスイッチング停止期間に発生するリンギング電圧の共振サイクル数をあらかじめ設定した回数に制限しているため、共振サイクル数が混在することがなく、共振サイクル数が混在することによる音鳴りを抑制することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る制御装置を備えたスイッチング電源装置を示す回路図である。
図2】第1の実施の形態に係る制御装置としての制御ICの一構成例を示す機能ブロック図である。
図3】三パルス制御回路の一構成例を示す回路図である。
図4】VSボトム制御回路の一構成例を示す回路図である。
図5】CA電圧に対する設定ボトム数の関係を示す図である。
図6】負荷検出回路の一構成例を示す回路図である。
図7】制御回路およびVSボトム制御回路の動作を示す状態遷移図である。
図8】バースト動作時のタイミングチャートである。
図9】第2の実施の形態に係る制御装置としての制御ICにおけるVSボトム制御回路の一構成例を示す回路図である。
図10】FB電圧に対する設定ボトム数の関係を示す図である。
図11】負荷急増時のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示している。また、以下の説明において、構成要素の端子名とその端子における電圧、信号などは、同じ符号を用いることがある。
【0017】
図1は第1の実施の形態に係る制御装置を備えたスイッチング電源装置を示す回路図、図2は第1の実施の形態に係る制御装置としての制御ICの一構成例を示す機能ブロック図である。
【0018】
図1に示したスイッチング電源装置は、直流入力電圧Viが印加される入力端子10p,10nを有している。直流入力電圧Viは、たとえば、力率改善回路によって生成された高圧で一定の電圧である。入力端子10p,10nには、入力コンデンサC1と、ハイサイドのスイッチング素子Qaおよびローサイドのスイッチング素子Qbの直列回路からなるハーフブリッジ回路とが並列に接続されている。スイッチング素子Qa,Qbは、図示の例では、NチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を使用している。スイッチング素子Qa,Qbにそれぞれ並列に接続されている容量Ca,Cbは、スイッチング素子Qa,Qbのドレイン・ソース間の浮遊容量を示している。
【0019】
スイッチング素子Qa,Qbの共通の接続点は、トランスT1の一次巻線P1の一方の端子に接続され、一次巻線P1の他方の端子は、共振コンデンサCrを介してグランドに接続されている。ここで、トランスT1の一次巻線P1と二次巻線S1,S2との結合係数を小さくすることで大きくした漏れインダクタンスを利用する共振リアクトルと共振コンデンサCrとは、共振回路を構成している。なお、漏れインダクタンスを用いず、共振コンデンサCrにトランスT1を構成するインダクタンスとは別のインダクタを直列に接続して、当該インダクタンスを共振回路の共振リアクトルとするようにしても良い。
【0020】
トランスT1の二次巻線S1の一方の端子は、ダイオードD3のアノード端子に接続され、二次巻線S2の一方の端子は、ダイオードD4のアノード端子に接続されている。ダイオードD3,D4のカソード端子は、出力コンデンサC10の正極端子および出力端子11pに接続されている。出力コンデンサC10の負極端子は、二次巻線S1,S2の共通の接続点および出力端子11nに接続されている。二次巻線S1,S2、ダイオードD3,D4および出力コンデンサC10は、二次巻線S1,S2に生起された交流電圧を整流・平滑して直流電圧に変換する回路を構成し、スイッチング電源装置の出力回路を構成している。
【0021】
出力コンデンサC10の正極端子は、抵抗R8を介してフォトカプラPC1の発光ダイオードのアノード端子に接続され、発光ダイオードのカソード端子は、シャントレギュレータSR1のカソード端子に接続されている。発光ダイオードのアノード端子およびカソード端子には、抵抗R6が並列に接続されている。シャントレギュレータSR1のアノード端子は、出力端子11nに接続されている。シャントレギュレータSR1は、出力コンデンサC10の正極端子と負極端子との間に直列接続された抵抗R9,R10の接続点に接続されたリファレンス端子を有している。シャントレギュレータSR1のリファレンス端子とカソード端子とには、抵抗R7およびコンデンサC7の直列回路が接続されている。このシャントレギュレータSR1は、出力電圧Vo(出力コンデンサC10の両端電圧)を分圧した電位と内蔵の基準電圧(出力電圧の目標電圧に相当)との差に応じた電流を発光ダイオードに流すものである。フォトカプラPC1のフォトトランジスタは、そのコレクタ端子が制御IC12のFB端子に接続され、エミッタ端子がグランドに接続され、コレクタ端子およびエミッタ端子には、コンデンサC2が並列に接続されている。
【0022】
制御IC12は、入力コンデンサC1の正極端子に接続されたVH端子、グランドに接続されたGND端子を有している。制御IC12は、また、抵抗R1を介してスイッチング素子Qaのゲート端子に接続されたHO端子、抵抗R2を介してスイッチング素子Qbのゲート端子に接続されたLO端子を有している。制御IC12は、さらに、VB端子、VS端子、CA端子、IS端子およびVCC端子を有している。VB端子とVS端子との間には、ブートストラップコンデンサC5が接続され、VS端子は、スイッチング素子Qa,Qbの共通の接続点に接続されている。CA端子には、コンデンサCcaの一方の端子が接続され、コンデンサCcaの他方の端子は、グランドに接続されている。IS端子は、共振コンデンサCrに並列に接続されたコンデンサCsおよび抵抗Rsの直列回路の共通接続点に接続されている。VCC端子は、コンデンサC3の正極端子に接続され、コンデンサC3の負極端子は、グランドに接続されている。VCC端子は、また、ブートストラップダイオードD2のアノード端子に接続され、このブートストラップダイオードD2のカソード端子は、VB端子に接続されている。VCC端子は、さらに、ダイオードD1のカソード端子に接続され、ダイオードD1のアノード端子は、トランスT1が備える補助巻線P2の一方の端子に接続され、補助巻線P2の他方の端子は、グランドに接続されている。補助巻線P2は、また、抵抗R3,R4の直列回路が並列に接続され、抵抗R3,R4の共通の接続点は、制御IC12のVW端子に接続されている。
【0023】
ここで、共振コンデンサCrに並列に接続されたコンデンサCsおよび抵抗Rsの直列回路は、共振電流を分流する分流回路13であり、この分流回路13で分流された電流は、電流検出用の抵抗Rsにより電圧信号に変換されて制御IC12のIS端子に入力される。共振コンデンサCrおよびコンデンサCsに流れる共振電流は、実質的に同一の波形を有し、その最大振幅は、共振コンデンサCrおよびコンデンサCsの容量比で決まる。コンデンサCsの容量を共振コンデンサCrの容量よりも小さくすると、極めて小さな電流が電流検出用の抵抗Rsに流れるだけであって、電流検出のための消費電力を無視できる程度に小さくすることができる。
【0024】
制御IC12は、図2に示したように、起動回路21、三パルス制御回路(オフ信号生成回路)22、VSボトム制御回路(オン信号生成回路)23、負荷検出回路24、制御回路25、ハイサイドドライブ回路26およびローサイドドライブ回路27を有している。
【0025】
起動回路21の入力端子は、VH端子に接続され、起動回路21の出力端子は、ローサイドドライブ回路27とVCC端子とに接続されている。三パルス制御回路22の入力端子は、FB端子、VW端子およびIS端子に接続されている。三パルス制御回路22は、第1パルスオフ信号1st_pulse_off、第2パルスオフ信号2nd_pulse_offおよび第3パルスオフ信号3rd_pulse_offの出力端子を有し、それぞれ制御回路25の入力端子に接続されている。三パルス制御回路22の第3パルスオフ信号の出力端子は、VSボトム制御回路23の入力端子に接続されている。VSボトム制御回路23の入力端子は、また、VW端子およびCA端子に接続され、VSボトム制御回路23の出力端子は、制御回路25の第1パルスオン信号1st_pulse_onの入力端子に接続されている。負荷検出回路24の入力端子は、IS端子および制御回路25の信号sw_ctrlの出力端子に接続され、負荷検出回路24の出力端子は、CA端子に接続されている。
【0026】
制御回路25のハイサイド出力信号hi_preの出力端子は、ハイサイドドライブ回路26の入力端子に接続され、制御回路25のローサイド出力信号lo_preの出力端子は、ローサイドドライブ回路27の入力端子に接続されている。ハイサイドドライブ回路26の出力端子は、HO端子に接続され、ローサイドドライブ回路27の出力端子は、LO端子に接続されている。ハイサイドドライブ回路26は、また、ハイサイドの電源用のVB端子およびハイサイドの基準電位となるVS端子に接続されている。
【0027】
起動回路21は、スイッチング電源装置の起動時に直流入力電圧Viを制御IC12の電源電圧に変換し、VCC端子に供給してコンデンサC3を充電し、起動後は、動作を停止する。なお、起動後の制御IC12の電源は、トランスT1の補助巻線P2に生起された交流電圧をダイオードD1およびコンデンサC3により直流電圧に変換して使用している。
【0028】
次に、制御IC12の三パルス制御回路22、VSボトム制御回路23、負荷検出回路24および制御回路25の具体例について説明する。
図3は三パルス制御回路の一構成例を示す回路図、図4はVSボトム制御回路の一構成例を示す回路図、図5はCA電圧に対する設定ボトム数の関係を示す図、図6は負荷検出回路の一構成例を示す回路図、図7は制御回路およびVSボトム制御回路の動作を示す状態遷移図、図8はバースト動作時のタイミングチャートである。
【0029】
三パルス制御回路22は、図3に示したように、アナログ・デジタル変換器31、デジタル制御回路32、デジタル・アナログ変換器33,34および比較器35,36,37を有し、オフ信号生成回路を構成している。
【0030】
アナログ・デジタル変換器31の入力端子は、制御IC12のFB端子に接続され、アナログ・デジタル変換器31の出力端子は、デジタル制御回路32に接続されている。なお、FB端子は、制御IC12内で、図示しないプルアップ抵抗などにより高電位側にプルアップされていて、出力電圧Voに相当する値の電圧になっている。デジタル制御回路32は、2つの出力端子を有し、これらの出力端子は、それぞれデジタル・アナログ変換器33,34の入力端子に接続されている。デジタル・アナログ変換器33の出力端子は、比較器35の非反転入力端子に接続され、デジタル・アナログ変換器34の出力端子は、比較器36の反転入力端子に接続されている。比較器35の反転入力端子および比較器36の非反転入力端子は、制御IC12のVW端子に接続されている。比較器37の反転入力端子は、制御IC12のIS端子に接続され、比較器37の非反転入力端子には、IS閾値電圧ISthが印加されている。比較器35,36,37の出力端子は、制御回路25の入力端子に接続されている。なお、アナログ・デジタル変換器31、デジタル制御回路32およびデジタル・アナログ変換器33,34は、閾値電圧生成回路を構成している。
【0031】
この三パルス制御回路22では、アナログ・デジタル変換器31がFB端子に入力されたフィードバック電圧を10ビットのデジタル信号に変換し、デジタル制御回路32では、フィードバック電圧に応じて設定される2つの10ビットのデジタル信号を出力する。たとえば、デジタル制御回路32は、負荷の重さに応じてトランスT1の一次側から二次側へ伝達する電力を調整するために、入力したフィードバック電圧が大きくなるほど出力する2つのデジタル信号値の差が小さくなるよう設定している。デジタル・アナログ変換器33,34は、デジタル制御回路32が出力したデジタル信号をアナログのVW閾値電圧Vvwth1,Vvwth2に変換して出力する。比較器35は、制御IC12のVW端子に印加されたVW電圧(巻線電圧)とVW閾値電圧Vvwth1とを比較し、第1パルスがオンのときにVW電圧がVW閾値電圧Vvwth1より高くなると、第1パルスオフ信号1st_pulse_offを出力する。比較器36は、制御IC12のVW端子に印加されたVW電圧とVW閾値電圧Vvwth2とを比較し、第2パルスがオンのときにVW電圧がVW閾値電圧Vvwth2より低くなると、第2パルスオフ信号2nd_pulse_offを出力する。比較器37は、制御IC12のIS端子に印加されたIS電圧とIS閾値電圧ISthとを比較し、第3パルスがオンのときにIS電圧がIS閾値電圧ISthまで低下したときに、第3パルスオフ信号3rd_pulse_offを出力する。
【0032】
このようにして、三パルス制御回路22は、軽負荷時のバースト制御におけるスイッチング期間(三パルス制御期間)に生成される第1パルス、第2パルスおよび第3パルスのターンオフのタイミングを制御している。すなわち、第1パルスは、スイッチング素子Qbをターンオンして励磁電流を生成し、次の第2パルスのときに共振回路が共振できる状態にする信号であり、そのターンオフのタイミングは、VW電圧がVW閾値電圧Vvwth1より高くなるときである。第2パルスは、スイッチング素子Qaをターンオンして電力をトランスT1の二次側に伝達する信号であり、そのターンオフのタイミングは、VW電圧がVW閾値電圧Vvwth2より低くなるときである。第3パルスは、スイッチング素子Qbをターンオンして励磁エネルギを共振コンデンサCrに蓄える信号であり、そのターンオフのタイミングは、IS電圧がIS閾値電圧ISthまで低下したときである。
【0033】
VSボトム制御回路23は、図4に示したように、アナログ・デジタル変換器41、ボトム数設定回路42、比較器43、RSフリップフロップ44、ボトム数カウント回路45、ボトム数比較回路46および遅延回路47を有し、第1パルスのためのオン信号生成回路を構成している。
【0034】
アナログ・デジタル変換器41の入力端子は、制御IC12のCA端子に接続され、アナログ・デジタル変換器41の出力端子は、ボトム数設定回路42の入力端子に接続されている。ボトム数設定回路42の出力端子は、ボトム数比較回路46の一方の入力端子に接続されている。比較器43の反転入力端子は、制御IC12のVW端子に接続され、比較器43の非反転入力端子には、0ボルト(V)の電圧が印加されている。比較器43の出力端子は、ボトム数カウント回路45の入力端子に接続されている。RSフリップフロップ44のセット入力端子は、三パルス制御回路22の比較器37の出力端子に接続され、RSフリップフロップ44の出力端子は、ボトム数カウント回路45のイネーブル端子に接続されている。ボトム数カウント回路45の出力端子は、ボトム数比較回路46の他方の入力端子に接続されている。ボトム数比較回路46の出力端子は、遅延回路47の入力端子に接続され、遅延回路47の出力端子は、制御回路25の入力端子に接続されているとともにRSフリップフロップ44のリセット入力端子に接続されている。
【0035】
このVSボトム制御回路23は、アナログ・デジタル変換器41がCA端子に接続されたコンデンサCcaの電圧を10ビットのデジタル信号に変換する。ボトム数設定回路42は、CA端子の電圧(負荷信号)に応じて軽負荷時のバースト制御におけるスイッチング停止期間(VSボトム制御期間)の長さを設定する。ボトム数設定回路42では、図5に示したように、CA電圧に対応した設定ボトム数Nca_botを出力する。ただし、設定ボトム数Nca_botは、CA電圧が上昇するときと低下するときとで異なる値を有している。設定ボトム数Nca_botの設定にヒステリシスを持たせることで、スイッチング停止期間に現れるリンギング周波数が短時間のうちに頻繁に変化してしまうことがないようにしている。設定ボトム数Nca_botは、たとえば、4ビットのデジタル信号によって表されている。この設定ボトム数Nca_botは、バースト制御でのスイッチング停止期間に相当する。
【0036】
ボトム数カウント回路45は、スイッチング停止期間に現れるリンギング電圧のボトムの数をカウントし、カウント済ボトム数Nvw_botを4ビットのデジタル信号で出力する。ここで、スイッチング停止期間は、第3パルスがオフしてから次のバースト周期の第1パルスがオンするまでの期間である。したがって、RSフリップフロップ44が第3パルスオフ信号3rd_pulse_offを受けてセットされ、イネーブル信号Enbを出力したとき、ボトム数カウント回路45は、リンギング電圧のボトム数のカウントを開始する。また、RSフリップフロップ44が第1パルスオン信号1st_pulse_onを受けてリセットされたとき、ボトム数カウント回路45は、リンギング電圧のボトムの数のカウントを停止する。リンギング電圧は、トランスT1の一次巻線P1を含む共振回路で生成されるが、同様の電圧波形が補助巻線P2にも現れるので、リンギング電圧としては、補助巻線P2に生起され、抵抗R3,R4によって分圧されたVW電圧が用いられる。比較器43は、VW電圧を0Vと比較し、VW電圧が0Vより低下したときハイレベルの検出信号を出力する。ボトム数カウント回路45は、イネーブル信号Enbを入力している間、VW電圧が0Vより低下した回数をカウントする。このように、比較器43は、VW電圧が0Vより低下したタイミングを検出するのであって、VW電圧のボトムを検出していない。これは、VW電圧のボトムを直接検出することができないためである。実際のVW電圧のボトムは、VW電圧が0Vより低下したゼロクロスのタイミングからリンギング周期Tの1/4の期間だけ遅れた時間に現れる。
【0037】
ボトム数比較回路46は、設定ボトム数Nca_botとカウント済ボトム数Nvw_botとを比較し、カウント済ボトム数Nvw_botが設定ボトム数Nca_botに到達したとき、一致信号を出力する。このときの一致信号は、VW電圧が0Vより低下したときのものであるため、遅延回路47によってT/4だけ遅延されて、次のバースト周期の第1パルスオン信号1st_pulse_onとなる。なお、リンギング電圧は、トランスT1の共振リアクトル、共振コンデンサCrおよびスイッチング素子Qa,Qbのドレイン・ソース間の容量Ca,Cbからなる共振回路により固定の周波数で発振する。したがって、遅延回路47によるVW電圧のボトム検出は、正確に行われる。
【0038】
遅延回路47が出力する第1パルスオン信号1st_pulse_onは、制御回路25に送られる。この第1パルスオン信号1st_pulse_onは、RSフリップフロップ44のリセット端子に送られてRSフリップフロップ44をリセットする。これにより、ボトム数カウント回路45は、ディスエーブル状態になり、カウント数がクリアされる。
【0039】
負荷検出回路24は、図6に示したように、直列に接続されたスイッチsw1,sw2を有し、スイッチsw1の一方の端子は、制御IC12のIS端子に接続され、スイッチsw2の一方の端子は、制御IC12のGND端子に接続されている。IS端子は、コンデンサCsおよび抵抗Rsを含む分流回路13の出力端子に接続されている。スイッチsw1,sw2の共通の接続点は、抵抗Rfを介して制御IC12のCA端子に接続されている。CA端子には、コンデンサCcaが接続されており、抵抗RfおよびコンデンサCcaは、スイッチsw1,sw2の共通の接続点の電圧信号を平均化する平均化回路を構成している。
【0040】
スイッチsw1は、その制御端子が制御回路25から信号sw_ctrlを受けるsw_ctrl端子に接続され、スイッチsw2は、その制御端子がインバータ回路51を介してsw_ctrl端子に接続されている。これにより、負荷検出回路24は、信号sw_ctrlの論理レベルに応じてIS端子の信号またはグランドレベルの信号を平均化回路に入力する。ここで、信号sw_ctrlは、ハイサイドのスイッチング素子Qaを駆動するハイサイド出力信号hi_preが用いられるが、この軽負荷時のバースト制御では、第2パルスと同じである。したがって、ハイサイドのスイッチング素子Qaがターンオンしている間、共振電流に比例した電圧が平均化回路に印加され、ハイサイドのスイッチング素子Qaがターンオフしている間は、グランドレベルの電圧が平均化回路に印加される。このように、平均化回路の平均化にスイッチング素子Qaがターンオフしたときのグランドレベルを追加したことにより、スイッチング電源装置の入力電流の平均値、つまり、スイッチング電源装置の負荷状態が正確に検出され、VSボトム制御回路23に送られる。
【0041】
制御回路25は、図7の状態遷移図に示すシーケンスに従って動作する。この制御回路25の動作は、図8に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。この図8において、HOは、HO端子の駆動信号であって、制御回路25が出力するハイサイド出力信号hi_preと同じ波形を有し、LOは、LO端子の駆動信号であって、制御回路25が出力するローサイド出力信号lo_preと同じ波形を有する。VSは、VS端子のVS電圧、VWは、VW端子のVW電圧、ISは、IS端子のIS電圧、Io_hは、トランスT1の二次側の出力電流、Enbは、ボトム数カウント回路45に入力されるイネーブル信号Enbである。なお、この図8は、バースト周期の開始時のものではなく、バースト制御中であって、設定ボトム数Nca_botが「2」に設定されている場合を示している。
【0042】
制御回路25は、通常の連続スイッチング動作をしているアイドル状態にあるときに負荷の重さが低減して所定の軽負荷になると、第1パルスオン信号1st_pulse_onを生成してバースト制御のスイッチング動作が開始される三パルス制御期間に入る。これにより、制御回路25は、第1パルスをオンする。このとき、制御回路25が出力するハイサイド出力信号hi_preは、ローレベル(0)、ローサイド出力信号lo_preは、ハイレベル(1)となって、ハイサイドのスイッチング素子Qaをターンオフのまま、ローサイドのスイッチング素子Qbをターンオンする。これにより、VS端子がグランド電位になり、VW電圧は、最も低い電位になる。
【0043】
その後、VW電圧が最も低い電位から上昇し、VW閾値電圧Vvwth1より高くなって三パルス制御回路22から第1パルスオフ信号1st_pulse_offを受けると、制御回路25は、第1パルスをオフする。このとき、制御回路25が出力するローサイド出力信号lo_preは、ローレベル(0)となって、スイッチング素子Qbをターンオフする。
【0044】
スイッチング素子Qbのターンオフ後、制御回路25は、ハイサイドのスイッチング素子Qaおよびローサイドのスイッチング素子Qbが同時にオン状態になって貫通電流が流れてしまうことがないよう、デッドタイム調整(Td_adj)を実施する。
【0045】
デッドタイム調整(Td_adj)の実施後、制御回路25は、第2パルスオン信号2nd_pulse_onを生成し、第2パルスをオンする。このとき、制御回路25が出力するハイサイド出力信号hi_preは、ハイレベル(1)となって、ハイサイドのスイッチング素子Qaをターンオンする。これにより、VS端子が直流入力電圧Viの電位になると、VW電圧は、VW閾値電圧Vvwth2より高い電位になる。ハイサイドのスイッチング素子Qaがターンオンしている間、IS電圧が上昇し、トランスT1の二次側には、出力電流Io_hが流れる。
【0046】
その後、VW電圧がVW閾値電圧Vvwth2まで低くなって三パルス制御回路22から第2パルスオフ信号2nd_pulse_offを受けると、制御回路25は、第2パルスをオフする。このとき、制御回路25が出力するハイサイド出力信号hi_preは、ローレベル(0)となって、スイッチング素子Qaをターンオフする。
【0047】
次に、制御回路25は、デッドタイム調整(Td_adj)を実施し、第3パルスオン信号3rd_pulse_onを生成する。これにより、制御回路25は、第3パルスをオンする。このとき、制御回路25が出力するローサイド出力信号lo_preは、ハイレベル(1)となって、ローサイドのスイッチング素子Qbをターンオンする。これにより、IS電圧が低下する。
【0048】
IS電圧がIS閾値電圧ISthまで低下して三パルス制御回路22から第3パルスオフ信号3rd_pulse_offを受けると、制御回路25は、第3パルスをオフする。このとき、制御回路25が出力するローサイド出力信号lo_preは、ローレベル(0)となって、スイッチング素子Qbをターンオフする。
【0049】
第3パルスがオフされると、バースト周期は、スイッチング動作が停止されるVMボトム制御期間に入る。このVMボトム制御期間では、第3パルスオフ信号3rd_pulse_offを受けたVSボトム制御回路23は、ボトム数カウント回路45をイネーブル状態にしてVMボトム数をカウントする。カウント済ボトム数Nvw_botが設定ボトム数Nca_botに達すると、その到達のタイミングからリンギング周期Tの1/4の期間だけ遅延した後に遅延回路47が第1パルスオン信号1st_pulse_onを出力する。
【0050】
この第1パルスオン信号1st_pulse_onを制御回路25が受けると、第1パルスがオンして次のバースト周期が開始される。また、第1パルスオン信号1st_pulse_onをVSボトム制御回路23が受けると、ボトム数カウント回路45がディスエーブル状態になってカウントされたボトム数がクリアされる。
【0051】
以上のように、このスイッチング電源装置の制御装置では、負荷の重さ(CA電圧)に応じてVSボトム数(VSボトム制御期間)を設定し、この設定したVSボトム数に基づいてスイッチング停止期間におけるリンギングの共振サイクル数を制御している。軽負荷時では、比較的安定したCA電圧によって共振サイクル数をあらかじめ設定していることから、共振サイクル数は、頻繁に変化することなく安定しており、共振サイクル数の混在が生じることもない。このため、バースト制御による高効率と共振サイクル数が混在しないことによる音鳴り抑制とを両立させることができる。
【0052】
上記のVSボトム制御回路23では、負荷がスタンバイ状態から通常状態に復帰するときのように軽負荷状態から重負荷状態に急激に変化したとき、出力電圧が一時的にドロップすることがある。これは、ボトム数の制御が負荷状態を表す負荷信号、すなわち、応答の遅いCA端子の電圧に基づいて行われているので、ボトム数の制御が負荷急変に追従できないことに起因している。以下では、負荷急増時において、出力電圧のドロップが少なくなるよう改善した第2の実施の形態の制御装置について説明する。
【0053】
図9は第2の実施の形態に係る制御装置としての制御ICにおけるVSボトム制御回路の一構成例を示す回路図、図10はFB電圧に対する設定ボトム数の関係を示す図、図11は負荷急増時のタイミングチャートである。
【0054】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の制御IC12におけるVSボトム制御回路23のみ図9に示すVSボトム制御回路23aに変更されており、制御IC12における他の構成要素については、変更がない。したがって、ここでは、変更のあるVSボトム制御回路23aの構成および動作を説明する。なお、図9のVSボトム制御回路23aにおいて、図4のVSボトム制御回路23と同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0055】
VSボトム制御回路23aは、図4のVSボトム制御回路23に、アナログ・デジタル変換器61、ボトム数設定回路62、比較器(ボトム数比較器)63およびセレクタ回路64を追加して構成されている。
【0056】
入力端子が制御IC12のCA端子に接続されているアナログ・デジタル変換器41の出力端子は、ボトム数設定回路42の入力端子に接続されている。ボトム数設定回路42の出力端子は、比較器63の非反転入力端子とセレクタ回路64の一方の入力端子とに接続されている。アナログ・デジタル変換器61の入力端子は、制御IC12のFB端子に接続され、アナログ・デジタル変換器61の出力端子は、ボトム数設定回路62の入力端子に接続されている。ボトム数設定回路62の出力端子は、比較器63の反転入力端子とセレクタ回路64の他方の入力端子とに接続されている。比較器63の出力端子は、セレクタ回路64の制御端子Sに接続され、セレクタ回路64の出力端子は、ボトム数比較回路46の一方の入力端子に接続されている。セレクタ回路64は、たとえば、制御端子Sの論理状態によって一方の入力端子または他方の入力端子に入力された信号を出力するマルチプレクサとすることができる。
【0057】
このVSボトム制御回路23aでは、アナログ・デジタル変換器41がCA電圧を10ビットのデジタル信号に変換し、アナログ・デジタル変換器61がFB電圧を10ビットのデジタル信号に変換する。ボトム数設定回路42は、CA電圧(負荷信号)に応じたボトム数(スイッチング停止期間)を設定し、ボトム数設定回路62は、FB電圧(フィードバック電圧)に応じたボトム数(スイッチング停止期間)を設定する。すなわち、ボトム数設定回路42は、たとえば、図5に示した入出力特性を有し、CA電圧に応じた設定ボトム数Nca_botを出力する。ボトム数設定回路62は、図10に示した入出力特性を有し、FB電圧に応じた設定ボトム数Nfb_botを出力する。設定ボトム数Nca_botおよび設定ボトム数Nfb_botは、たとえば、4ビットのデジタル信号によって表されている。なお、ボトム数設定回路42,62は、それぞれスイッチング停止期間設定回路として機能する。
【0058】
図5に図示したCA電圧に対する設定ボトム数の関係例によれば、ボトム数設定回路42は、CA電圧の変化範囲(0-1ボルト)に亘って「10-1」の整数に順次丸められた設定ボトム数Nca_botを出力する。一方、図10に図示したFB電圧に対する設定ボトム数の関係例によれば、ボトム数設定回路62は、定常負荷のときのFB電圧の変化範囲(1.0-1.3ボルト)で「10」の設定ボトム数Nfb_botを出力する。また、ボトム数設定回路62は、負荷急変のときのFB電圧の変化範囲(1.4-1.6ボルト)では「10-1」の間で急変する設定ボトム数Nfb_botを出力する。
【0059】
比較器63は、設定ボトム数Nca_botと設定ボトム数Nfb_botとを比較し、設定ボトム数Nca_botおよび設定ボトム数Nfb_botのいずれが小さいかを判断する。
【0060】
ここで、定常負荷の状態にあれば、「10-1」の間のたとえば「7」の値を有する設定ボトム数Nca_botが比較器63の非反転入力端子に入力され、「10」の値を有する設定ボトム数Nfb_botが比較器63の反転入力端子に入力される。この場合、比較器63は、反転入力端子に非反転入力端子よりも値の大きな値が入力されるので、ローレベル(0)の論理信号を出力し、このローレベル(0)の論理信号は、セレクタ回路64の制御端子Sに入力される。セレクタ回路64は、制御端子Sにローレベル(0)の論理信号が入力されると、設定ボトム数Nca_botを選択し、設定ボトム数N_botとして4ビットのデジタル信号で出力する。すなわち、セレクタ回路64は、設定ボトム数Nfb_botよりも値の小さな設定ボトム数Nca_botを選択して出力する。この設定ボトム数N_botは、ボトム数比較回路46に比較のための参照信号として入力される。
【0061】
次に、負荷急増が生じると、比較器63の非反転入力端子には、定常負荷のときとほとんど変わらない「7」の値を有する設定ボトム数Nca_botが入力され、比較器63の反転入力端子には、「1」の値を有する設定ボトム数Nfb_botが入力される。この場合、比較器63の非反転入力端子に反転入力端子よりも値の大きな「7」が入力されるので、比較器63は、ハイレベル(1)の論理信号を出力し、このハイレベル(1)の論理信号は、セレクタ回路64の制御端子Sに入力される。セレクタ回路64は、制御端子Sにハイレベル(1)の論理信号が入力されると、設定ボトム数Nfb_botを選択し、設定ボトム数N_botとして出力する。すなわち、セレクタ回路64は、設定ボトム数Nca_botよりも値の小さな設定ボトム数Nfb_botを選択し、設定ボトム数N_botとして出力する。この設定ボトム数N_botは、ボトム数比較回路46に比較のための参照信号として入力される。
【0062】
次に、以上の構成のVSボトム制御回路23aを有する制御IC12を備えたスイッチング電源装置の動作について図11を参照しながら説明する。まず、負荷がスタンバイ状態にあってスイッチング電源装置がバースト制御されているとき、出力電圧Voは、安定したCA電圧に基づいて制御されており、したがって、FB電圧(フィードバック電圧)および出力電力Poは、安定した状態にある。
【0063】
ここで、負荷がスタンバイ状態から通常状態に復帰して出力電力Poが急増すると、出力電力Poの急変を受けて、FB電圧が増加する。これにより、CA電圧に応じて設定されていた設定ボトム数Nca_botとFB電圧に応じて設定されていた設定ボトム数Nfb_botとの値が逆転し、VSボトム制御期間の設定ボトム数Nfb_botは、実質的に「1」になる。スイッチング停止期間であるVSボトム制御期間が最小になることで、制御の応答性が良くなり、出力電圧Voのドロップが少なくなる。なお、出力電圧Voの変化曲線において、破線で示した曲線は、負荷急増に応答良く追従できないCA電圧で制御されている場合を示したものである。
【0064】
以上のように、第2の実施の形態のスイッチング電源装置の制御装置では、バースト制御による高効率と共振サイクル数が混在しないことによる音鳴り抑制とを両立させることに加えて、負荷急増時の出力電圧のドロップを抑制することができる。
【0065】
なお、第2の実施の形態では、CA電圧に応じたリンギングの共振サイクル数(VSボトム数)およびFB電圧に応じたリンギングの共振サイクル数(VSボトム数)の小さい方をバースト制御中におけるVSボトム制御期間の設定に利用している。しかし、CA電圧に応じたリンギングの共振サイクル数およびFB電圧に応じたリンギングの共振サイクル数の小さい方を選択した結果は、必ずしもバースト制御中におけるVSボトム制御期間の設定だけに利用しなくても良い。
【0066】
また、上記に実施の形態では、共振リアクトルおよび共振コンデンサCrを含む直列振回路は、ローサイドのスイッチング素子Qbに並列に接続しているが、ハイサイドのスイッチング素子Qaに並列に接続していても良い。
【符号の説明】
【0067】
10p,10n 入力端子
11p,11n 出力端子
12 制御IC
13 分流回路
21 起動回路
22 三パルス制御回路(オフ信号生成回路)
23,23a VSボトム制御回路(オン信号生成回路)
24 負荷検出回路
25 制御回路
26 ハイサイドドライブ回路
27 ローサイドドライブ回路
31 アナログ・デジタル変換器
32 デジタル制御回路
33,34 デジタル・アナログ変換器
35 比較器(第1の比較器)
36 比較器(第2の比較器)
37 比較器(第3の比較器)
41 アナログ・デジタル変換器
42 ボトム数設定回路(第1のスイッチング停止期間設定回路)
43 比較器
44 RSフリップフロップ
45 ボトム数カウント回路
46 ボトム数比較回路
47 遅延回路
51 インバータ回路
61 アナログ・デジタル変換器
62 ボトム数設定回路(第2のスイッチング停止期間設定回路)
63 比較器
64 セレクタ回路
C1 入力コンデンサ
C2,C3 コンデンサ
C5 ブートストラップコンデンサ
C7 コンデンサ
C10 出力コンデンサ
Ca,Cb 容量
Cca コンデンサ
Cr 共振コンデンサ
Cs コンデンサ
D1 ダイオード
D2 ブートストラップダイオード
D3,D4 ダイオード
P1 一次巻線
P2 補助巻線
PC1 フォトカプラ
Qa,Qb スイッチング素子
R1,R2,R3,R4,R6,R7,R8,R9,R10,Rf,Rs 抵抗
S1,S2 二次巻線
SR1 シャントレギュレータ
T1 トランス
sw1,sw2 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11