(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】給紙装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/16 20060101AFI20231212BHJP
B65H 3/12 20060101ALI20231212BHJP
B65H 3/48 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65H7/16
B65H3/12 310C
B65H3/48 320A
(21)【出願番号】P 2019054807
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 信哉
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020827(JP,A)
【文献】特開2015-040099(JP,A)
【文献】特開2008-063135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/16
B65H 3/12
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙がセットされるセット板と、
前記セット板にセットされた前記用紙の位置を規制する規制カーソルと、
前記セット板及びセットされた用紙の上方に設けられ、吸引孔が設けられた給紙用ベルトと、
前記給紙用ベルトから空気を吸引して浮上エアーを発生させ、前記浮上エアーによりセットされた前記用紙を吸引する吸引装置と、
前記給紙用ベルトを周回させて用紙を送り出す送出機構と、
前記吸引装置が前記用紙を吸引しているときの上下方向の用紙間隔を測る
間隔測定部である超音波センサーと、
前記超音波センサーの出力に基づき、前記用紙間隔を認識し、
認識した前記用紙間隔に基づき、前記浮上エアーの風量を調整する制御部と、
を含み、
前記規制カーソルとして、セットされた用紙後端を規制する後端規制カーソルを含み、
前記用紙後端は、用紙搬送方向上流側の端部であり、
前記超音波センサーは、発信部と受信部を含み、
前記発信部は超音波を発信し、
前記受信部は受信した超音波のレベルに応じた電圧を出力し、
前記発信部と前記受信部のうち何れか一方は、前記給紙用ベルトの下面よりも上側に設けられ、
前記発信部と前記受信部のうち何れか他方は、前記後端規制カーソルに設けられ、
前記後端規制カーソルは、用紙搬送方向と平行にスライド移動可能であり、
前記後端規制カーソルに設けられた前記発信部又は前記受信部であるカーソルセンサーを上下方向で移動させる移動機構を含み、
前記移動機構は、前記後端規制カーソルが用紙搬送方向上流側に移動するほど前記カーソルセンサーを上方に移動させ、前記後端規制カーソルが用紙搬送方向下流側に移動するほど前記カーソルセンサーを下方に移動させる移動機構を含むことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
用紙がセットされるセット板と、
前記セット板にセットされた前記用紙の位置を規制する規制カーソルと、
前記セット板及びセットされた用紙の上方に設けられ、吸引孔が設けられた給紙用ベルトと、
前記給紙用ベルトから空気を吸引して浮上エアーを発生させ、前記浮上エアーによりセットされた前記用紙を吸引する吸引装置と、
前記給紙用ベルトを周回させて用紙を送り出す送出機構と、
前記吸引装置が前記用紙を吸引しているときの上下方向の用紙間隔を測る間隔測定部と、
前記間隔測定部の出力に基づき、前記用紙間隔を認識し、
認識した前記用紙間隔に基づき、前記浮上エアーの風量を調整する制御部と、
を含み、
前記規制カーソルとして、セットされた用紙後端を規制する後端規制カーソルを含み、
前記用紙後端は、用紙搬送方向上流側の端部であり、
前記間隔測定部は、前記後端規制カーソルに設けられ、イメージセンサーを含む撮影部であることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
前記制御部は、
認識した前記用紙間隔が予め定められた許容範囲の最小値以上、前記許容範囲の最大値以下のとき、前記浮上エアーの風量を前記吸引装置に維持させ、
認識した前記用紙間隔が前記許容範囲の前記最小値未満のとき、前記浮上エアーの風量を前記吸引装置に減少させ、
認識した前記用紙間隔が前記許容範囲の前記最大値を超えているとき、前記浮上エアーの風量を前記吸引装置に増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の給紙装置。
【請求項4】
分離エアーを発生させ、セットされた前記用紙の側面に前記分離エアーを吹き付ける吹付分離装置を含み、
前記制御部は、
前記吸引装置の用紙吸引時、前記分離エアーを前記吹付分離装置に発生させ、
認識した前記用紙間隔に基づき、前記分離エアーの風量を調整することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記制御部は、
認識した前記用紙間隔が予め定められた許容範囲の最小値以上、前記許容範囲の最大値以下のとき、前記分離エアーの風量を前記吹付分離装置に維持させ、
認識した前記用紙間隔が前記許容範囲の前記最小値未満のとき、前記分離エアーの風量を前記吹付分離装置に減少させ、
認識した前記用紙間隔が前記許容範囲の前記最大値を超えているとき、前記分離エアーの風量を前記吹付分離装置に増加させることを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記間隔測定部の出力に基づき、前記制御部は、セットされた前記用紙の最上位用紙と上から2番目の前記用紙である2番目用紙との上下方向の隙間を前記用紙間隔として認識することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の給紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セットされた用紙を吸引して給紙を行う給紙装置に関する。また、本発明はこの給紙装置を含む画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアー方式の給紙装置がある。エアー方式の給紙装置には、搬送ベルトを含むものがある。搬送ベルトは、用紙を吸引する。用紙は搬送ベルトに吸着する。この状態で搬送ベルトを走行させる。これにより、用紙が送り出される。このような吸引エアーを利用した給紙装置の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、全面に複数の吸引孔を有し収容用紙を吸着して搬送する無端状の搬送ベルトと、搬送ベルトに内包され吸引孔を介して収容用紙を吸引して搬送ベルトに吸着させるエアー吸引部と、用紙収容部に収容されている用紙に浮上エアーを送風して用紙を浮上させる浮上エアー送風部と、用紙搬送方向における搬送ベルトの搬送面の範囲内の所定位置に配置され、1枚目の用紙の後端の所定位置の通過を検出する用紙後端検出部と、浮上エアー送風部における浮上エアーの送風動作を制御する制御部と、を備え、
1枚目の用紙が搬送ベルト上を搬送されているときに2枚目の用紙を浮上させるための浮上エアーを送風させ、用紙後端検出部の検出結果に基づいて、浮上エアーの送風を停止させる給紙装置が記載されている。この構成により、1枚目の用紙の搬送中に2枚目の用紙が搬送ベルトに吸着する重送の発生を防ごうとする(特許文献1:請求項1、段落[0011]等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給紙装置では重送が生ずることがある。重送とは、複数枚の用紙が重なって搬送されることである。重送により用紙の詰まり(ジャム)が生ずることがある。また、1ページの内容が複数枚の用紙にまたがって印刷されることもある。重送はエラーの原因となる。
【0006】
エアー方式の給紙装置で重送が生ずる理由は様々である。エアー方式の給紙装置では、画像形成装置のメーカー推奨の用紙(標準用紙)を基準に風量が定められる。一方、用紙の種類は多い。用紙によっては、標準用紙に基づき定めた風量が適切でない場合がある。このような場合、重送が生ずる。また、用紙の含水率、表面の粗さ、空気を操るためのファンの性能の経年変化、送風部分でのホコリのつまりも、重送の要因となり得る。用紙の種類や給紙装置の状態によって、重送の生じやすさが変化し、重送の発生を抑えきれない場合があるという問題がある。
【0007】
特許文献1記載の技術では、1枚目の用紙の後端が所定位置を通過すると、浮上エアーの送風を停止する。1枚目の用紙の搬送中での2枚目の用紙の搬送ベルトでの吸着を防ごうとする。しかし、特許文献1記載の給紙装置でも、用紙の種類や給紙装置の状態によっては、重送が発生することがある。例えば、用紙が軽い(薄い)場合、1枚目の用紙と2枚目の用紙が重なって搬送ベルトに吸着される場合があり得る。従って、特許文献1記載の技術は、上記の問題を解決できない。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、用紙の種類や給紙装置の使用年数(使用時間)によらず、問題(重送)が生じないように、給紙用の空気の風量を調整する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る給紙装置は、給紙装置は、セット板、規制カーソル、給紙用ベルト、吸引装置、送出機構、間隔測定部、制御部を含む。前記セット板には、用紙がセットされる。前記規制カーソルは前記セット板にセットされた前記用紙の位置を規制する。前記給紙用ベルトは、前記セット板及びセットされた用紙の上方に設けられる。前記給紙用ベルトには、吸引孔が設けられる。前記吸引装置は、前記給紙用ベルトから空気を吸引して浮上エアーを発生させる。前記吸引装置は前記浮上エアーによりセットされた前記用紙を吸引する。前記送出機構は、前記給紙用ベルトを周回させて用紙を送り出す。前記間隔測定部は、前記吸引装置が前記用紙を吸引しているときの用紙間隔を測る。前記間隔測定部の出力に基づき、前記制御部は、前記用紙間隔を認識する。認識した前記用紙間隔に基づき、前記制御部は、前記浮上エアーの風量を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、用紙の種類や給紙装置の使用年数(使用時間)によらず、重送のような問題(給紙エラー)の発生を防ぐことができる。用紙の吸引中、問題が生じにくい用紙間隔となるように、給紙用の空気の風量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るプリンターの一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る給紙カセットの一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る給紙カセットの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る吸引装置と送出機構の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る給紙装置の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る間隔測定部による測定の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るプリンターでの浮上エアーと分離エアーの風量制御の流れの一例を示す図である。
【
図8】変形例に係る間隔測定部の一例を示す図である。
【
図9】変形例に係る給紙装置の一例を示す図である。
【
図10】変形例に係る給紙装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図7を用いて本発明の実施形態に係る給紙装置を説明する。給紙装置として、プリンター100を例に挙げて説明する。プリンター100は画像形成装置でもある。なお、本発明は、プリンター100だけではなく、他の給紙を行う装置(例えば、複合機)にも適用できる。以下の本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(プリンター100)
図1を用いて、実施形態に係るプリンター100を説明する。
図1は、実施形態に係るプリンター100の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、プリンター100は、制御部1、記憶部2、操作パネル3、印刷部4を含む。
【0015】
制御部1はプリンター100の動作を制御する。制御部1は、コピーや送信のようなジョブでの動作を制御する。制御部1は、制御回路10、画像処理回路11、通信部12を含む。制御回路10は、例えば、CPUである。制御回路10は、ジョブに関する処理、演算を行う。
【0016】
例えば、画像処理回路11はASICである。画像処理回路11は、通信部12が受信した印刷用データに基づき、画像データを生成する。画像処理回路11は、生成した画像データの画像処理を行い、出力用画像データを生成する。出力用画像データは印刷ジョブに用いられる。
【0017】
通信部12は通信用のハードウェア(通信回路)とソフトウェアを含む。通信部12はコンピューター200と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。通信部12はコンピューター200から印刷用データを受信する。印刷用データは、例えば、ページ記述言語で記述されたデータを含む。制御部1(画像処理回路11)は、ページ記述言語で記述されたデータを解析して画像データを生成する。生成した画像データに基づき、制御部1は印刷部4に印刷させる。
【0018】
記憶部2はRAM、ROM、ストレージを含む。ストレージは、例えば、HDD又はSSDである。制御部1は、記憶部2のプログラムやデータに基づき、各部を制御する。
【0019】
操作パネル3は使用者の設定を受け付ける。操作パネル3は、表示パネル31、タッチパネル32、ハードキー33を含む。制御部1は、メッセージや、設定用画面を表示パネル31に表示させる。制御部1は、操作用画像を表示パネル31に表示させる。操作用画像は、例えば、ボタン、キー、タブである。タッチパネル32の出力に基づき、制御部1は、操作された操作用画像を認識する。ハードキー33は、スタートキーやテンキーを含む。タッチパネル32、ハードキー33は使用者の設定操作(ジョブに関する操作)を受け付ける。例えば、操作パネル3は、原稿の読取に関する設定を受け付ける。例えば、操作パネル3は、読み取る原稿サイズの設定を受け付ける。制御部1は操作パネル3の出力に基づき、設定内容を認識する。
【0020】
印刷部4は、給紙部4a(詳細は後述)、用紙搬送部4b、画像形成部4c、定着部4dを含む。印刷ジョブのとき、制御部1は用紙を給紙部4aに供給させる。用紙搬送部4bは、用紙搬送用の搬送ローラー対、搬送モーターを含む。搬送ローラー対は用紙を搬送する。搬送モーターは搬送ローラー対を回転させる。制御部1は用紙を用紙搬送部4bに搬送させる。
【0021】
画像形成部4cは、例えば、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写ローラーを含む。出力用画像データに基づき、制御部1はトナー像を画像形成部4cに形成させる。制御部1は搬送用紙へのトナー像の転写を画像形成部4cに行わせる。定着部4dは、ヒーター、定着用回転体、定着用モーターを含む。ヒーターは定着用ローラーを熱する。用紙は定着用回転体と接しつつ搬送される。これにより、トナー像が用紙に定着する。制御部1は転写されたトナー像の用紙への定着を定着部4dに行わせる。用紙搬送部4bは印刷済み用紙を機外に排出する。
【0022】
(給紙カセット5)
次に、
図2~
図5を用いて、実施形態に係る給紙カセット5の一例を説明する。
図2、
図3は、実施形態に係る給紙カセット5の一例を示す図である。
図4は、実施形態に係る吸引装置6と送出機構7の一例を示す図である。
図5は、実施形態に係る給紙装置の一例を示す図である。
【0023】
給紙装置は、給紙カセット5を含む。給紙カセット5はプリンター100から引き出し可能である。用紙を補給するとき、給紙カセット5は引き出される(開けられる)。給紙後、給紙カセット5は押し戻される。
【0024】
図2は給紙カセット5を上方向から見た図である。
図2に示すように、給紙カセット5は、セット板51、規制カーソルを含む。セット板51は、例えば、金属製である。セット板51には用紙(用紙束)がセットされる。用紙は上下方向に積まれた状態でセットされる。なお、
図2は、用紙がセットされていない状態を示す。
【0025】
規制カーソルは、セット板51にセットされた用紙の位置を規制する。給紙カセット5には、規制カーソルとして、後端規制カーソル52と幅規制カーソル53が設けられる。セット板51のうち、後端規制カーソル52と幅規制カーソル53の移動範囲と重なる部分は、切り取られている。
【0026】
後端規制カーソル52は、セットされた用紙の後端の位置を規制する。用紙後端とは、用紙搬送方向(副走査方向)の上流側の端部である。後端規制カーソル52は、用紙搬送方向でスライド移動可能である。セットされた用紙の後端と後端規制カーソル52が接するまで、使用者は、後端規制カーソル52を移動させる。後端規制カーソル52が接することにより、用紙の位置が規制される。用紙の位置ずれが防がれる。
【0027】
幅規制カーソル53は、セットされた用紙を用紙搬送方向と垂直な方向(主走査方向)で規制する。幅規制カーソル53は、2つあり、対となっている。各幅規制カーソル53は、用紙搬送方向と垂直な方向でスライド移動可能である。各幅規制カーソル53は、連動する。主走査方向において、用紙の中心方向に一方の幅規制カーソル53を移動させたとき、他方の幅規制カーソル53も中心方向に移動する。主走査方向において、用紙の中心から離れる方向に一方の幅規制カーソル53を移動させたとき、他方の幅規制カーソル53も中心から離れる方向に移動する。
【0028】
セットされた用紙の端辺と各幅規制カーソル53が接するまで、使用者は、幅規制カーソル53を移動させる。各幅規制カーソル53が接することにより、用紙の主走査方向の位置が規制される。主走査方向での用紙の位置ずれが防がれる。
図2の2点鎖線は中心線L1を示す。この中心線L1は、搬送路と用紙の主走査方向での中心を示す。各幅規制カーソル53の規制により、用紙の主走査方向の中心と、中心線L1が一致する(中央通紙)。
【0029】
図3は、用紙後端側(用紙搬送方向上流側)から用紙を見た図の一例を示す。
図3に示すように、セット板51、セットされた(積まれた)用紙のうち最上位の用紙の上方に、給紙ベルトや吹付分離装置8が設けられる。
【0030】
また、給紙カセット5(給紙装置)には、昇降機構54が設けられる。昇降機構54は、セット板51を昇降させる。例えば、昇降機構54は、複数の滑車機構と昇降モーター55を含む。1つの滑車機構は、ワイヤー56、プーリー57、巻取ドラム58を含む。ワイヤー56の一端は、セット板51の端部に取り付けられる。ワイヤー56の他端は巻取ドラム58と接続される。プーリー57にはワイヤー56が架けられる。昇降モーター55は巻取ドラム58を回転させる。セット板51を上昇させるとき、制御部1は、セット板51が上昇する方向(巻取ドラム58がワイヤー56を巻き取る方向)に昇降モーター55を回転させる。セット板51を下降させるとき、制御部1は、セット板51が下降する方向(ワイヤー56の巻き取り量を減らす方向)に昇降モーター55を回転させる。
【0031】
図3では、滑車機構を2つ設ける例を示している。しかし、滑車機構は、2つより多くてもよい。例えば、セット板51の4隅に滑車機構を設けてもよい。また、滑車を用いず、他の手法により、セット板51を昇降する機構を設けてもよい。
【0032】
給紙装置から印刷を行うとき、制御部1は、用紙束のうちの最上位用紙の位置を規定位置(規定の高さ)で維持する。給紙用ベルト70と最上位用紙の上下方向の間隔が予め定められた給紙時間隔となる位置が最上位用紙の規定位置とされる。給紙時間隔は、数mm~数cmの範囲内のいずれかの長さとされる(例えば、1cm)。
【0033】
給紙カセット5内には、用紙位置センサー59が設けられる。用紙位置センサー59は、最上位用紙が規定位置にあることを検知するためのセンサーである。例えば、反射型や透過型の光センサーを用紙位置センサー59として用いることができる。セット板51の上昇により、最上位用紙が規定位置に到達したとき、用紙位置センサー59の出力レベルが変化する。また、最上位用紙の位置(高さ)が規定位置よりも低くなったとき、用紙位置センサー59の出力レベルが変化する。用紙位置センサー59の出力は、制御部1に入力される。
【0034】
セット板51を上昇させるとき、制御部1は、用紙位置センサー59の出力レベルを監視する。用紙位置センサー59の出力レベルの変化に基づき、最上位用紙の規定位置への到達を認識できたとき、制御部1は、セット板51の上昇を停止させる。用紙位置センサー59の出力レベルの変化に基づき、印刷ジョブ中(連続給紙中)に、最上位用紙の位置が規定位置よりも低くなったことを認識したとき、制御部1は昇降モーター55を回転させる。最上位用紙の規定位置への到達を認識できるまで、制御部1は、昇降モーター55を回転させる。制御部1は、最上位用紙の上下方向の位置(高さ)を、規定位置で維持する。
【0035】
次に、
図3~
図5を用いて、吸引装置6と送出機構7を説明する。
図3に示すように、吸引装置6、送出機構7は、セット板51、セットされた用紙束、幅規制カーソル53、及び、後端規制カーソル52よりも上方に設けられる。
【0036】
送出機構7は、給紙用ベルト70、駆動ローラー72、従動ローラー73、ベルトモーター74を含む。複数の吸引孔71が給紙用ベルト70に設けられる。
図3では、吸引孔71が円形である例を示している。吸引孔71は給紙用ベルト70を貫通している。
図4に示すように、給紙用ベルト70は、無端状である。給紙用ベルト70は、駆動ローラー72と複数の従動ローラー73に架け回される。ベルトモーター74(
図5参照)は、駆動ローラー72を回転させる。ベルトモーター74を回転させることにより、給紙用ベルト70が周回する。
【0037】
図3に示すように、給紙用ベルト70の主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)の中心と、幅規制カーソル53で規制された用紙の主走査方向の中心が一致するように、給紙用ベルト70が設置される。給紙用ベルト70の主走査方向の幅は、例えば、印刷可能な最小サイズの用紙幅と同じとされる。また、給紙用ベルト70の下面は、水平である。
【0038】
図4の左右方向は副走査方向(用紙搬送方向)である。架け回された給紙用ベルト70の内側に吸引装置6が設けられる。吸引装置6は、給紙用ベルト70のうち、下面の吸引孔71から空気を吸引する。吸引装置6は、給紙用ベルト70の下側の空気を吸い込む。つまり、給紙用ベルト70のうち、下面の吸引孔71が空気を吸い込む。この吸引による空気の流れが浮上エアーである。発生した浮上エアーは、用紙束の最上位用紙を浮き上がらせる。浮上エアー(吸引装置6の吸引)により、最上位用紙は、給紙用ベルト70に吸引される(吸い寄せられる)。なお、浮上エアーは、上から2番目の用紙(最上位用紙の1つ下の用紙、二番目用紙)も、ある程度浮き上がらせる。
【0039】
吸引装置6には、吸引用ファン60が1又は複数設けられる。
図4では、吸引用ファン60を複数設ける例を示す。吸引用ファン60は、給紙用ベルト70の下側の空気を吸い込む方向に回転する。吸引用ファン60を回転させることにより、空気とともに、給紙用ベルト70の下側に位置する最上位用紙も吸い寄せられる。吸引によって、浮き上がった最上位用紙は、給紙用ベルト70と接する。
【0040】
給紙用ベルト70に用紙が吸着されている状態で、制御部1は、ベルトモーター74を回転させる。制御部1は、用紙搬送方向(用紙搬送部4b)に向けて用紙を送る方向に給紙用ベルト70を回転させる。送り出された用紙は、用紙搬送部4bの搬送ローラー対に進入する。以後、制御部1は、画像形成部4c、定着部4dに向けて、用紙を用紙搬送部4bに搬送させる。
【0041】
次に、
図3、
図5を用いて、吹付分離装置8の一例を説明する。吹付分離装置8は、分離エアーを発生させる。給紙を行うとき、制御部1は、吹付分離装置8に分離エアーを発生させる。言い換えると、吸引装置6が用紙を吸引するとき、制御部1は、吹付分離装置8に分離エアーを発生させる。分離エアーとは、セットされた用紙の側面に吹き付ける空気である。吹付分離装置8は、用紙のうち、用紙搬送方向(副走査方向)と平行な端辺に分離エアーを吹き付ける。
【0042】
分離エアーは、用紙と用紙に隙間を持たせる機能がある。分離エアーは、給紙用ベルト70に吸い付く用紙(最上位用紙)と、上から2番目の用紙(2番目用紙)との接触を無くすためのエアーである。つまり、最上位用紙と2番目用紙の隙間に分離エアーが流れ込む。分離エアーによって、最上位用紙と2番目用紙との摩擦を減らすことができる。複数枚の用紙の連なった搬送(重送)の発生を減らすことができる。分離エアーにより、給紙用ベルト70への複数枚の用紙の吸着を防止することもできる。また、分離エアーは、各用紙の密着状態を解きほぐす機能もある。
【0043】
吹付分離装置8は、分離用ファン80と吹付ダクト81を含む。分離用ファン80は分離エアーを発生させる。制御部1は、吹付ダクト81から空気が吹き出されるように、分離用ファン80を回転させる。吹付ダクト81は、分離エアーを吹き出す。吹付ダクト81は、分離エアーを用紙の側面(副走査方向と平行な端辺)に吹き付ける。吹付ダクト81は、例えば、規定位置の高さの用紙にむけて空気を吹き出す。
【0044】
なお、用紙の主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)の幅の位置は、用紙サイズによって変わる。そのため、主走査方向で吹付ダクト81の位置を移動させることができる。例えば、操作パネル3は、セットされた用紙のサイズの設定を受け付ける。そして、給紙カセット5(給紙装置)には、吹付ダクト81の位置を移動させるダクト移動機構82が設けられる。制御部1は、セットされた用紙サイズに応じて、ダクト移動機構82に吹付ダクト81の位置を移動させる。制御部1は、セットされた用紙サイズに応じて、吹付ダクト81の位置を自動調整する。なお、ダクト移動機構82は、手動で吹付ダクト81の位置を移動させる機構でもよい。
【0045】
また、給紙カセット5(給紙装置)には、間隔測定部9が設けられる。間隔測定部9は、吸引装置6が用紙を吸引しているときの上下方向(高さ方向)の用紙間隔を測る。間隔測定部9の出力に基づき、制御部1は、用紙間隔を認識する。
【0046】
(間隔測定部9による測定)
次に、
図6を用いて、実施形態に係る間隔測定部9による測定の一例を説明する。
図6は、実施形態に係る間隔測定部9による測定の一例を示す図である。
【0047】
図6は、給紙用ベルト70に向けて最上位用紙を吸引しているときの用紙の状態(振る舞い)の一例を示す図である。浮上エアーによって、給紙用ベルト70は最上位用紙を吸着する。分離エアーの影響により、最上位用紙と2番目用紙の間に空房層(間隔、隙間)ができる。間隔測定部9は、空房層の高さ方向(上下方向)の間隔を測るためのセンサーである。
【0048】
なお、用紙の主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)の幅が、給紙用ベルト70の主走査方向の幅よりも広い場合がある。このような場合、給紙用ベルト70から離れている部分では、若干垂れ下がる。つまり、用紙の主走査方向の端の部分は、主走査方向の中心に比べ、下方に位置する。吸引時、浮上した用紙は、上に凸状となる。
図6も浮いた用紙が上に凸状となっている状態を示している。
【0049】
例えば、間隔測定部9は撮影部9a(カメラ)を含む。撮影部9aは、ランプ9b、イメージセンサー9cを含む。イメージセンサー9cは、例えば、エリアイメージセンサー(2次元型イメージセンサー)である。撮影部9aは、後端規制カーソル52に設けられる。吸引装置6が浮上エアーを発生させ、吹付分離装置8が分離エアーを発生させているとき、制御部1は、間隔測定部9(撮影部9a)に撮影させる。具体的に、制御部1はランプ9bを点灯させる。制御部1は、ランプ9bの点灯中にイメージセンサー9cによる読み取りを行わせる。
【0050】
撮影部9a(カメラ)の撮影範囲の向きは、後端規制カーソル52からみて、用紙搬送方向上流側である。撮影部9aは、用紙後端側から用紙を撮影する。撮影部9aは、撮影範囲が以下の条件を満たすように設置される。例えば、1つめの条件は、給紙用ベルト70の下面が撮影範囲に含まれることである。2つめの条件は、浮上エアーと分離エアーの発生中、最上位用紙と2番目用紙が撮影範囲に含まれることである。3つ目の条件は、撮影範囲の主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)の中心が、セットされた用紙束の主走査方向の中心と一致することである。
図6では、撮影部9a(間隔測定部9)の撮影範囲の一例を破線の矩形で示している。
【0051】
間隔測定部9は、吸引装置6が用紙を吸引しているときの用紙間隔を測る。間隔測定部9のイメージセンサー9cは、撮影によるアナログ画像信号を出力する。アナログ画像信号は制御部1に入力される。受信したアナログ画像信号に基づき、制御部1(画像処理回路11)は、撮影画像データを生成する。制御部1は、撮影画像データを処理し、高さ方向(上下方向)の最上位用紙と2番目用紙の上下方向の間隔(用紙間隔)を認識する。このように、制御部1は、間隔測定部9の出力に基づき、用紙間隔を認識する。
【0052】
撮影画像データのうち、用紙を撮影した画素の画素値は、例えば、明るい色(例えば、白色)となる。撮影画像データのうち、用紙と用紙の隙間を撮影した画素の画素値は、例えば、暗い色(例えば、黒色)となる。例えば、制御部1(画像処理回路11)は、撮影画像データの二値化処理を行う。さらに、制御部1は、二値化した画像データのエッジ強調処理を行う。これにより、制御部1は、用紙後端を示すライン(曲線、又は、直線)を検出する。
【0053】
制御部1(画像処理回路11)は、用紙を示すラインのうち、最も上に位置するライン(最上位用紙を示すライン)と、上から2番目に位置するライン(2番目用紙を示すライン)を認識する。そして、制御部1は、最上位用紙を示すラインと2番目用紙を示すラインの上下方向の間隔を求める。例えば、制御部1は、上下方向と平行な1ラインごとに、最上位用紙を示す画素と、2番目用紙を示す画素の間隔を求める。そして、制御部1は、求めた間隔の平均値、最大値、最小値、又は、中央値を用紙間隔として求める。
【0054】
このように、間隔測定部9は、セット板51にセットされた用紙のうち、最上位用紙と2番目用紙(1つ下の用紙)の高さ方向(上下方向)の隙間を用紙間隔として測る。間隔測定部9の出力に基づき、制御部1は、最上位用紙と2番目用紙の用紙間隔を認識する。
【0055】
(風量調整制御)
次に、
図7を用いて、実施形態に係るプリンター100での浮上エアーと分離エアーの風量制御の流れの一例を説明する。
図7は、実施形態に係るプリンター100での浮上エアーと分離エアーの風量制御の流れの一例を示す図である。
【0056】
図7のスタートは、印刷ジョブの1枚目の用紙の給紙を開始する時点である。まず、制御部1は、浮上エアーと分離エアーを発生させる(ステップ♯1)。具体的に、制御部1は、吸引用ファン60と分離用ファン80の回転を開始させる。制御部1は、回転開始後、吸引用ファン60と分離用ファン80の回転速度を加速する。そして、制御部1は、吸引用ファン60(吸引用ファン60のモーター)の回転速度を第1安定速度で安定させる。また、制御部1は、分離用ファン80(分離用ファン80のモーター)の回転速度を第2安定速度で安定させる。
【0057】
第1安定速度は、固定値でもよい。この場合、基準として用いる用紙(標準用紙)を用いた場合に、用紙間隔が適切となる吸引用ファン60(吸引用ファン60のモーター)の回転速度を第1安定速度とすることができる。また、第1安定速度は、前回の印刷ジョブの最終ページの給紙時の吸引用ファン60の回転速度でもよい。この場合、制御部1は印刷ジョブの最終ページの給紙時の吸引用ファン60の回転速度を記憶部2に記憶させる。
【0058】
また、第2安定速度は固定値でもよい。この場合、基準として用いる用紙(標準用紙)を用いた場合に、用紙間隔が適切となる分離用ファン80(分離用ファン80のモーター)の回転速度を第2安定速度とすることができる。また、第2安定速度は、前回の印刷ジョブの最終ページの給紙時の分離用ファン80の回転速度でもよい。この場合、制御部1は、印刷ジョブの最終ページの給紙時の分離用ファン80の回転速度を記憶部2に記憶させる。
【0059】
各ファンの回転速度を安定させるため、制御部1は、予め定められた第1安定用時間待つ(ステップ♯2)。その間、最上位用紙は、浮上し、給紙用ベルト70は最上位用紙を吸引する。第1安定用時間は、吸引用ファン60と分離用ファン80の風量が安定するまでの待ち時間である。第1安定用時間は、例えば、10秒程度である。
【0060】
次に、制御部1は、間隔測定部9を動作させる(ステップ♯3)。そして、間隔測定部9の出力に基づき、制御部1は用紙間隔を認識する(ステップ♯4)。具体的に、制御部1は、最上位用紙(給紙用ベルト70と接している用紙)と、2番目用紙(最上位用紙の1つ下の用紙)との上下方向の間隔を認識する。
【0061】
次に、制御部1は、認識した用紙間隔が許容範囲B1内か否かを確認する(ステップ♯5)。用紙間隔が許容範囲B1の最小値以上、最大値以下のとき、制御部1は、許容範囲B1内と判定する。ここで、許容範囲B1は予め定められる。許容範囲B1の最小値と最大値が予め定められる。例えば、実験により、重送や無給紙が生じない用紙間隔の適正範囲を定める。つまり、トラブルが生じにくい用紙間隔が予め定められる。記憶部2は予め定められた許容範囲B1を不揮発的に記憶する(
図1参照)。
【0062】
なお、操作パネル3は、許容範囲B1の設定を受け付けてもよい。この場合、使用者やメンテナンス担当者が許容範囲B1を定めることができる。制御部1は、操作パネル3で設定された許容範囲B1を記憶部2に記憶させる。制御部1は、記憶部2に記憶された許容範囲B1を用いて確認する。
【0063】
認識した用紙間隔が許容範囲B1外のとき(ステップ♯5のNo)、制御部1は、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満か否かを確認する(ステップ♯6)。認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満の場合、用紙間隔が狭すぎるといえる。2番目用紙が浮きすぎている状態とみなせる。浮上エアーの風量が大きすぎることが浮きすぎの要因と考えられる。また、強めの分離エアーが2番目用紙を上方に吹き上げている可能性もある。
【0064】
反対に、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最大値を超えている場合、用紙間隔が広すぎるといえる。最上位用紙と2番目用紙の距離が開きすぎている。次の用紙の給紙のとき無給紙が生ずる可能性が高くなる。2番目用紙の浮き不足の要因は、浮上エアーの風量が弱めであることが考えられる。また、分離エアーが弱めである可能性もある。
【0065】
そこで、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のとき(ステップ♯6のYes)、制御部1は、浮上エアーの風量を吸引装置6に減少させる(ステップ♯7)。具体的に、制御部1は吸引装置6の吸引用ファン60(吸引用ファン60のモーター)の回転速度を下げさせる。制御部1は、用紙間隔が狭いほど、吸引用ファン60の回転速度の減少量を多くしてもよい。なお、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のときでも、制御部1は、浮上エアーの風量を変えない(維持する、減らさない)ようにしてもよい。
【0066】
また、制御部1は、分離エアーの風量を吹付分離装置8に減少させる(ステップ♯8)。具体的に、制御部1は、吸引装置6の分離用ファン80(分離用ファン80のモーター)の回転速度を下げさせる。制御部1は、用紙間隔が狭いほど、分離用ファン80の回転速度の減少量を多くしてもよい。なお、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のときでも、制御部1は、分離用ファン80の風量を変えない(維持する、減らさない)ようにしてもよい。また、制御部1は、浮上エアーと分離エアーのうち、一方のみを減らすようにしてもよい。
【0067】
反対に、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最大値を超えているとき(ステップ♯6のNo)、制御部1は浮上エアーの風量を吸引装置6に増加させる(ステップ♯9)。具体的に、制御部1は吸引装置6の吸引用ファン60(吸引用ファン60のモーター)の回転速度を上げさせる。制御部1は、用紙間隔が広いほど、吸引用ファン60の回転速度の上昇量を多くしてもよい。なお、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最大値を超えていても、制御部1は浮上エアーの風量を変えない(維持する、増やさない)ようにしてもよい。
【0068】
また、制御部1は、分離エアーの風量を吹付分離装置8に減少させる(ステップ♯10)。具体的に、制御部1は、吸引装置6の分離用ファン80(分離用ファン80のモーター)の回転速度を上げさせる。制御部1は、用紙間隔が広いほど、分離用ファン80の回転速度の上昇量を多くしてもよい。なお、認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のときでも、制御部1は、分離用ファン80の風量を変えない(維持する、増やさない)ようにしてもよい。また、制御部1は、浮上エアーと分離エアーのうち、一方のみを増やすようにしてもよい。
【0069】
浮上エアーと分離エアーの風量を調整したとき、制御部1は、予め定められた第2安定用時間待つ(ステップ♯11)。制御部1は、調整した(変更した)風量を安定させる。第2安定用時間は、吸引用ファン60と分離用ファン80の風量が安定するまでの待ち時間である。第2安定用時間は、第1安定用時間よりも短い。すでに、吸引用ファン60と分離用ファン80は回転しており、風量が安定するまでの時間は回転開始時よりも短くてすむためである。例えば、第2安定用時間は、1~数秒程度である。そして、制御部1はステップ#4を実行する(ステップ#4に戻る)。
【0070】
認識した用紙間隔が許容範囲B1内になっているとき(ステップ♯5のYes)、制御部1は、浮上エアーと分離エアーの風量を維持する(ステップ♯12)。具体的には、制御部1は、吸引用ファン60(吸引用ファン60のモーター)と分離用ファン80(分離用ファン80のモーター)の回転速度を維持する。そして、制御部1は、吸引した用紙送出(給紙)を開始する(ステップ#13)。具体的に、制御部1は、ベルトモーター74を回転させる。これにより、給紙用ベルト70に吸い付けられている用紙が用紙搬送部4b、画像形成部4cに向けて送り出される。
【0071】
やがて、制御部1は、吸引した用紙送出(給紙)を停止させる(ステップ#14)。具体的に、制御部1は、ベルトモーター74の回転を停止させる。例えば、用紙搬送部4bの最上流の搬送ローラー対の近傍に用紙先端到達を検知するセンサーが設けられる。このセンサーが用紙到達を検知し、最上流の搬送ローラー対が用紙搬送を引き継ぐまで、制御部1はベルトモーター74を回転させる。
【0072】
そして、制御部1は、印刷ジョブの最後の用紙(ページ)の給紙が完了したか否かを確認する(ステップ#15)。まだ給紙する用紙が残っている場合(ステップ♯15のNo)、制御部1はステップ#4を実行する(ステップ#4に戻る)。一方、最後の用紙の給紙が完了すると(ステップ#15のYes)、制御部1は、浮上エアーと分離エアーを停止させる(ステップ#16)。具体的に、制御部1は、吸引用ファン60と分離用ファン80を停止させる。そして、制御部1は本フローチャートの処理を終了する(エンド)。
【0073】
このようにして、実施形態に係る給紙装置は、セット板51、規制カーソル、給紙用ベルト70、吸引装置6、送出機構7、間隔測定部9、制御部1を含む。セット板51には、用紙がセットされる。規制カーソルはセット板51にセットされた用紙の位置を規制する。給紙用ベルト70は、セット板51及びセットされた用紙の上方に設けられる。給紙用ベルト70には、吸引孔71が設けられる。吸引装置6は、給紙用ベルト70から空気を吸引して浮上エアーを発生させる。吸引装置6は浮上エアーによりセットされた用紙を吸引する。送出機構7は、給紙用ベルト70を周回させて用紙を送り出す。間隔測定部9は、吸引装置6が用紙を吸引しているときの用紙間隔を測る。間隔測定部9の出力に基づき、制御部1は、用紙間隔を認識する。認識した用紙間隔に基づき、制御部1は、浮上エアーの風量を調整する。
【0074】
給紙用ベルト70に吸引された用紙と、他の用紙との間隔(用紙間隔)を測ることができる。重送が生ずるほど用紙が接近しているか(用紙間隔が狭くなりすぎているか)否かを確認することができる。言い換えると、浮上エアーが強すぎるか否かを確認することができる。また、無給紙につながるほど用紙が離れているかも確認することができる。言い換えると、浮上エアーが弱すぎるか否かを確認することもできる。認識した用紙間隔に基づき、給紙用ベルト70に吸引された用紙と、他の用紙の間隔が適切か否かを確認することができる。確認の結果、重送が生じにくい用紙間隔となるように、浮上エアーの風量を調整することができる。
【0075】
認識した用紙間隔が予め定められた許容範囲B1の最小値以上、許容範囲B1の最大値以下のとき、制御部1は、浮上エアーの風量を吸引装置6に維持させる。認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のとき、制御部1は、浮上エアーの風量を吸引装置6に減少させる。認識した用紙間隔が許容範囲B1の最大値を超えているとき、制御部1は、浮上エアーの風量を吸引装置6に増加させる。吸引中の各用紙の上下方向の間隔が狭すぎる場合、又は、広すぎる場合、間隔が適切になるように、浮上エアーの風量を調整することができる。言い換えると、浮上エアーが強すぎず、かつ、弱すぎないように調整することができる。重送や無給紙が生じないように、浮上エアーを適切な強さ(風量)とすることができる。
【0076】
給紙装置は、分離エアーを発生させ、セットされた用紙の側面に分離エアーを吹き付ける吹付分離装置8を含む。吸引装置6の用紙吸引時、制御部1は、分離エアーを吹付分離装置8に発生させる。認識した用紙間隔に基づき、制御部1は、分離エアーの風量を調整する。給紙用ベルト70に吸引された用紙と、他の用紙との間隔(用紙間隔)が適切か否か確認することができる。言い換えると、分離エアーが強すぎるか否か、及び、分離エアーが弱すぎるか否かを確認することもできる。重送が生じないように分離エアーの風量を調整することができる。
【0077】
認識した用紙間隔が予め定められた許容範囲B1の最小値以上、許容範囲B1の最大値以下のとき、制御部1は、分離エアーの風量を吹付分離装置8に維持させる。認識した用紙間隔が許容範囲B1の最小値未満のとき、制御部1は、分離エアーの風量を吹付分離装置8に減少させる。認識した用紙間隔が許容範囲B1の最大値を超えているとき、制御部1は、分離エアーの風量を吹付分離装置8に増加させる。吸引中の各用紙の上下方向の用紙間隔が狭すぎる場合、又は、広すぎる場合、用紙間隔が適切になるように、分離エアーの風量を調整することができる。言い換えると、分離エアーが強すぎず、かつ、弱すぎないように調整することができる。重送や無給紙が生じないように、分離エアーを適切な強さ(風量)とすることができる。
【0078】
間隔測定部9の出力に基づき、制御部1は、セットされた用紙の最上位用紙と上から2番目の用紙である2番目用紙との上下方向の隙間を用紙間隔として認識する。給紙用ベルト70に接するまで吸引されたる用紙と、その直下の用紙の間隔が適切か否かを確認することができる。重送のような給紙エラーが生ずるか否かを、最上位用紙と最上位用紙の1つ下の用紙(2番目用紙)の間隔に基づき判定することができる。
【0079】
給紙装置は、規制カーソルとして、セットされた用紙後端を規制する後端規制カーソル52を含む。用紙後端は、用紙搬送方向上流側の端部である。間隔測定部9は、後端規制カーソル52に設けられ、イメージセンサー9cを含む撮影部9aである。吸引中の状態を撮影することができる。後端規制カーソル52から用紙先頭方向(用紙搬送方向の上流側から下流側の方向)からみた用紙の間隔を測ることができる。吸引中の用紙の確認が適切か否かを測ることができる。
【0080】
(変形例)
次に、
図8~
図10を用いて、変形例に係る給紙装置を説明する。
図8は、変形例に係る間隔測定部9の一例を示す図である。
図9、
図10は、変形例に係る給紙装置の一例を示す図である。
【0081】
上述の実施形態の説明では、カメラ(撮影部9a)を間隔測定部9として用いる例を説明した。変形例は、カメラの代わりに、超音波センサー90を間隔測定部9として用いる。つまり、間隔測定部9は超音波センサー90である。超音波センサー90の出力に基づき、制御部1は、用紙間隔を認識する点で異なる。
【0082】
図8に示すように、超音波センサー90は、発信部91と受信部92を含む。発信部91と受信部92は、いずれも圧電素子を含む。発信部91は、超音波を発信する。制御部1は、圧電素子に所定個数のパルス信号を入力する。受信部92は、発信部91から発信された超音波を受信する。受信部92の圧電素子は、受信した超音波の強度(レベル)に応じた電圧を出力する。
【0083】
また、超音波センサー90は積分回路93を含む。積分回路93は、受信部92の圧電素子から出力された電荷をチャージ(積分)する。所定個数分のパルスの超音波を受信する間、制御部1は、受信部92の圧電素子が出力した電荷を積分回路93にチャージさせる。積分回路93の出力は、受信した超音波が強いほど大きくなる。制御部1は、受信部92が出力した電圧の大きさを認識する。なお、制御部1は、所定個数の超音波の発信前に、積分回路93に電荷を放電させる。制御部1は、最初の超音波のパルスを受信する時点の積分回路93の出力値をゼロとする。
【0084】
発信部91と受信部92は、超音波を送受信する。発信部91と受信部92は、給紙用ベルト70に吸引された用紙(最上位用紙)と、2番目用紙の用紙に超音波を透過させる。
図9は、発信部91と受信部92の設置例を示す。最上位用紙の上に発信部91又は受信部92を位置させるため、発信部91と受信部92の何れか一方が、給紙用ベルト70の下面よりも上側に設けられる。例えば、主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)で、給紙用ベルト70の外側に発信部91と受信部92の何れか一方を設けることができる。また、発信部91と受信部92のうちの他方を、後端規制カーソル52に設けることができる。以下では、後端規制カーソル52に設けられた発信部91又は受信部92をカーソルセンサー93と称する。
【0085】
図9は、吸引装置6とセットされた用紙を主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)から見た図である。
図9に示すように、発信部91と受信部92は、用紙の平面に対して、斜めに超音波を通す。最上位用紙と2番目用紙の間隔(用紙間隔)の長短により、受信部92が受ける超音波の強度が変わる。例えば、用紙間隔が広いほど、受信部92が受ける超音波の強度が小さくなる場合がある。用紙間隔が広いほど、積分回路93の出力電圧が小さくなる場合がある。最上位用紙と2番目用紙の間隔が狭いほど、積分回路93の出力電圧が大きくなる場合がある。
【0086】
間隔測定部9に超音波センサー90を用いるとき、記憶部2は、受信出力対応データD1を不揮発的に記憶する(
図8参照)。受信出力対応データD1は、受信部92の出力電圧に対応する用紙間隔を定義したデータ(テーブル)である。制御部1は、受信部92の出力電圧の大きさを認識する。制御部1は、受信出力対応データD1を参照し、認識した受信部92の出力電圧の大きさに対応する用紙間隔を読み出す。制御部1は、読み出した用紙間隔を許容範囲B1と比較する。
【0087】
ここで、後端規制カーソル52は、用紙搬送方向と平行にスライド移動可能である。後端規制カーソル52の位置により、副走査方向(用紙搬送方向)において、カーソルセンサー93の位置が変わる。そして、最上位用紙と2番目用紙の用紙間隔を正確に測るには、最上位用紙と2番目用紙を通過後の超音波を受信部92が受信することが好ましい。そこで、後端規制カーソル52には移動機構94が設けられる。移動機構94は、後端規制カーソル52の位置にあわせ、カーソルセンサー93を上下動させる。移動機構94は、超音波の発信後、最上位用紙を通過し、さらに、2番目用紙を通過した超音波を受信できるように、カーソルセンサー93の位置を調整する。
【0088】
図10に示すように、移動機構94は、用紙搬送方向上流側に移動するほど、後端規制カーソル52に設けられたカーソルセンサー93を上方に移動させる。また、移動機構94は、後端規制カーソル52が用紙搬送方向下流側に移動するほどカーソルセンサー93を下方に移動させる。後端規制カーソル52の位置によらず、最上位用紙と2番目用紙のみを通過した超音波を受信部92に受信させることができる。
【0089】
図10は、移動機構94の一例を示す。例えば、移動機構94は、直交スライド機構である。移動機構94の一部、又は全部は、後端規制カーソル52に含まれる。直交スライド機構は、従動リンク95、スライドジョイント96、回転軸97を含む。後端規制カーソル52はL字状である。回転軸97の副走査方向の位置は固定される。スライドジョイント96にカーソルセンサー93が取り付けられる。後端規制カーソル52をスライドさせると、従動リンク95が回転(揺動)する。従動リンク95の回転により、スライドジョイント96は上下方向(垂直方向)に移動する。
【0090】
変形例に係る給紙装置は、規制カーソルとして、セットされた用紙後端を規制する後端規制カーソル52を含む。用紙後端は、用紙搬送方向上流側の端部である。間隔測定部9は超音波センサー90である。超音波センサー90は、発信部91と受信部92を含む。発信部91は、超音波を発信する。受信部92は、受信した超音波のレベルに応じた電圧を出力する。発信部91と受信部92のうち何れか一方は、給紙用ベルト70の下面よりも上側に設けられる。発信部91と受信部92のうち何れか他方は、後端規制カーソル52に設けられる。超音波センサー90を用いて、吸引中の用紙の間隔が適切か否かを確認することができる。
【0091】
後端規制カーソル52は、用紙搬送方向と平行にスライド移動可能である。給紙装置は移動機構94を含む。移動機構94は、後端規制カーソル52に設けられた発信部91又は受信部92であるカーソルセンサー93を上下方向で移動させる。移動機構94は、後端規制カーソル52が用紙搬送方向上流側に移動するほどカーソルセンサー93を上方に移動させる。移動機構94は、後端規制カーソル52が用紙搬送方向下流側に移動するほどカーソルセンサー93を下方に移動させる。
【0092】
本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の更新を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、給紙装置に使用可能である。
【符号の説明】
【0094】
100 プリンター(給紙装置、画像形成装置)
1 制御部 51 セット板
52 後端規制カーソル 6 吸引装置
7 送出機構 70 給紙用ベルト
71 吸引孔 8 吹付分離装置
9 間隔測定部 9a 撮影部
9c イメージセンサー 90 超音波センサー
91 発信部 92 受信部
93 カーソルセンサー 94 移動機構
B1 許容範囲