(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】検眼装置、検眼プログラム、及び検眼システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/00 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
A61B3/00
(21)【出願番号】P 2019067311
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】加納 徹哉
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-126502(JP,U)
【文献】特開平06-304146(JP,A)
【文献】特開平06-014879(JP,A)
【文献】特開平11-309115(JP,A)
【文献】特表2011-500188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を検査する検眼装置であって、
前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像手段と、
前記被検眼を検査するための検査手段と、
前記検査手段を用いるための前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定手段と、
を備え、
前記検査手段に対する動作は、
前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
請求項1の検眼装置において、
前記検査手段に対する動作を検出するための検出器を備え、
前記検出手段は、前記検出器の検出結果に基づいて、前記検査手段に対する動作を検出することを特徴とする検眼装置。
【請求項3】
被検眼を検査する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、
前記検眼装置のプロセッサに実行されることで、
前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像ステップと、
前記検眼装置における検査手段を用いるための、前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出ステップと、
前記検出ステップの検出結果に基づいて、前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定ステップと、
を前記検眼装置に実行させ、
前記検査手段に対する動作は、
前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする検眼プログラム。
【請求項4】
被検眼を検査する検眼システムであって、
前記被検眼を検査する検眼装置と、
前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像手段と、
前記被検眼を検査するための検査手段と、
前記検査手段を用いるための前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出手段と、
前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定手段と、
を備え、
前記検査手段に対する動作は、
前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする検眼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼を検査する検眼装置、検眼プログラム、及び検眼システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を検査する検眼装置として、被検眼の眼底断層画像を撮影する眼科撮影装置(特許文献1)、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式検眼装置(特許文献2)、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置(特許文献3)、等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-110392号公報
【文献】特開平10-33479号公報
【文献】特開平5-176893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、検査時は、検査内容に応じた適切な検査環境を設定することが好ましい。しかし、検査前あるいは検査後に被検者を誘導するような場合等の環境と、検査時の環境と、が異なることは多い。このような場合には、状況に合わせて適宜環境を切り換える必要があり、手間であった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、検査に適した環境を容易に設定することができる検眼装置、検眼プログラム、及び検眼システムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1)本開示の第1態様に係る検眼装置は、被検眼を検査する検眼装置であって、前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像手段と、前記被検眼を検査するための検査手段と、前記検査手段を用いるための前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて、前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定手段と、を備え、前記検査手段に対する動作は、前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする。
【0008】
(2)本開示の第2態様に係る検眼プログラムは、被検眼を検査する検眼装置にて用いる検眼プログラムであって、前記検眼装置のプロセッサに実行されることで、前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像ステップと、前記検眼装置における検査手段を用いるための、前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出ステップと、前記検出ステップの検出結果に基づいて、前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定ステップと、を前記検眼装置に実行させ、前記検査手段に対する動作は、前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする。
【0009】
(3)本開示の第3態様に係る検眼システムは、被検眼を検査する検眼システムであって、前記被検眼を検査する検眼装置と、前記被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する前眼部撮像手段と、前記被検眼を検査するための検査手段と、前記検査手段を用いるための前記検査手段に対する動作によって、前記被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出する検出手段と、前記被検眼の検査環境として、前記被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境の少なくともいずれかの環境を設定するための設定手段と、を備え、前記検査手段に対する動作は、前記前眼部画像における前記被検眼の特徴部位を検出する動作であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】被検者の顎が顎台に載置されたときの検査室の様子を示す図である。
【
図4】検者が開始スイッチを選択したときの検査室の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示における実施形態の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0012】
<検眼装置>
本実施形態に係る検眼装置(例えば、OCT装置100)は、被検眼を検査する装置である。検眼装置は、被検眼を撮影することで、被検眼を検査する装置でもよい。例えば、検眼装置は、被検眼の前眼部を撮影して、被検眼の前眼部画像データ、被検眼の角膜形状、等を取得する眼科撮影装置でもよい。また、例えば、検眼装置は、被検眼の眼底を撮影して、被検眼の眼底正面画像データ、被検眼の眼底断層画像データ、等を取得する眼科撮影装置でもよい。
【0013】
検眼装置は、被検眼を測定することで、被検眼を検査する装置でもよい。一例として、検眼装置は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式検眼装置でもよい。例えば、被検眼の光学特性として、被検眼の眼屈折力(例えば、球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、コントラスト感度、等を他覚的に測定する他覚式検眼装置でもよい。また、一例として、検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置でもよい。例えば、被検眼の光学特性として、被検眼の眼屈折力等を自覚的に測定する自覚式検眼装置でもよい。また、一例として、検眼装置は、被検者の視認による応答を得て、被検眼の視野を測定する検眼装置でもよい。
【0014】
より詳細には、検眼装置として、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)、走査型レーザ検眼鏡、眼底カメラ、眼圧測定装置、眼軸長測定装置、角膜形状測定装置、角膜曲率測定装置、超音波検眼装置、眼屈折力測定装置、フォロプタ、視野計、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0015】
<検査手段>
本実施形態において、検眼装置は、検査手段(例えば、OCT光学系)を備える。検査手段は、被検眼を検査するための検査手段である。検査手段は、光を受光することで被検眼を検査する検査系を備えてもよい。この場合、検査系は、被検眼を撮像するための撮像光学系であってもよい。また、この場合、検査系は、被検眼を測定するための測定光学系であってもよい。検査手段は、撮像光学系と測定光学系の少なくともいずれかを備える構成としてもよい。
【0016】
検査手段は、光を受光することで被検眼を検査する検査系に限定されず、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系であってもよい。この場合、検査系は、超音波を出射してその反射波を検出することにより被検眼を測定するための超音波測定系であってもよい。
【0017】
なお、検査手段としては、光を受光することで被検眼を検査する検査系と、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系と、のいずれかを備える構成としてもよい。もちろん、光を受光することで被検眼を検査する検査系と、超音波を受信することで被検眼を検査する検査系と、をどちらも備える構成としてもよい。
【0018】
<検出手段>
本実施形態において、検眼装置は、検出手段(例えば、制御部107)を備える。検出手段は、検査手段を用いるための検査手段に対する動作を検出する。検査手段は、検査手段を用いるための検査手段に対する動作として、被検眼の検査を開始できる状態か否かを検出してもよい。すなわち、検査手段に対して検者または被検者の少なくともいずれかが所定の動作を行うことで、被検眼の検査を開始できる状態になったか否かを検出してもよい。
【0019】
検出手段は、検出手段を用いるための検査手段に対する検者の動作を検出してもよい。この場合、検者が検査装置を起動させるために操作部を操作する動作、検者が検査を開始するために操作部を操作する動作、等が検出される。一例として、検者が検眼装置に接近する動作、検者が検眼装置を起動する動作(例えば、装置の電源の投入、装置の動作を待機させる待機モードの解除、等)、検者が検眼装置を用いた検査を開始する動作、等が検出されてもよい。また、検出手段は、検出手段を用いるための検査手段に対する被検者の動作を検出してもよい。この場合、被検者が検査を開始するための検査位置に移動する動作、被検者が検眼装置に接近する動作、被検者が検眼装置に接触する動作、等が検出される。一例として、被検者が検眼装置の前に立つ動作、被検者が検眼装置の前に座る動作、被検者が額当てや顎台に接触する動作、等が検出されてもよい。
【0020】
本実施形態において、検眼装置は、検出器を備えていてもよい。検出器は、検査手段を用いるための検査手段に対する動作を検出する。この場合、検出手段は、検出器の検出結果に基づいて、検査手段を用いるための検査手段に対する動作を検出してもよい。
【0021】
検出器は、検眼装置に被検者が接触したことを検出してもよい。例えば、検出器として、検眼装置における被検者の接触を検出することが可能な撮影手段(例えば、撮像素子を備えるカメラ、等)が利用されてもよい。検出手段は、撮影手段により撮影された画像を解析することで、検眼装置に被検者が接触する動作を検出してもよい。また、例えば、検出器として、検眼装置における被検者の接触を検出することが可能なセンサ(例えば、光センサ、圧力センサ、荷重センサ、超音波センサ、等の少なくともいずれか)が利用されてもよい。検出手段は、センサから発せられる信号に基づいて、検眼装置に検者または被検者が接触する動作を検出してもよい。一例として、検出器が荷重センサである場合、荷重センサは検知した荷重を電気抵抗値に変換して出力する。検査手段は、荷重センサによる検知信号の有無(言い換えると、電気抵抗値の出力の有無)に基づいて、検眼装置に検者または被検者が接触する動作を検出することができる。
【0022】
なお、検眼装置が被検者の額を当接するための額当てを有する場合、検出器は額当てに設けられてもよい。検出手段は、検出器の検出結果に基づいて、被検者の額が額当てに当接したか否かを検出してもよい。また、検眼装置が被検者の顎を載置するための顎台を有する場合、検出器は顎台に設けられてもよい。検出手段は、検出器の検出結果に基づいて、被検者の顎が顎台に載置されたか否かを検出してもよい。もちろん、検眼装置が額当てと顎台を有する場合は、検出器が額当てと顎台の少なくともいずれかに設けられてもよい。
【0023】
検出器は、検眼装置に被検者が接近したことを検出してもよい。例えば、検出器として、検眼装置における検者または被検者の位置関係を検出することが可能な撮影手段が利用されてもよい。検出手段は、撮影手段によって検眼装置と被検者が撮影された画像を解析することで、検眼装置と検者または被検者が所定の距離であるかを検出してもよい。また、例えば、検出器として、検眼装置における検者または被検者の位置関係を検出することが可能なセンサ(例えば、距離センサ、位置センサ、人感センサ、等の少なくともいずれか)が利用されてもよい。検出手段は、センサから発せられる信号に基づいて、検眼装置と検者または被検者が所定の距離であるかを検出してもよい。
【0024】
本実施形態において、検眼装置は、前眼部撮像手段を備えていてもよい。前眼部撮像手段は、被検眼の前眼部を撮像して前眼部画像を取得する。この場合、検出手段は、前眼部画像に基づいて、検査手段を用いるための検査手段に対する動作を検出してもよい。
【0025】
例えば、検出手段は、前眼部画像を解析し、被検眼の特徴部位(例えば、瞼の動き、角膜頂点位置、瞳孔位置、虹彩位置、等)を検出することで、検査手段を用いるための検査手段に対する被検者の動作を検出してもよい。一例として、検出手段は、前眼部画像を解析して被検眼の瞳孔部分を検出した際に、被検者が検査を開始するための検査位置に移動したこと(言い換えると、被検眼が検査位置に配置されたこと)を検出してもよい。
【0026】
<設定手段>
本実施形態において、検眼装置は、設定手段(例えば、制御部107)を備える。設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、被検眼の検査環境を設定するための設定手段である。例えば、被検眼の検査環境とは、検査室の環境であってもよい。
【0027】
設定手段は、検出手段の検出結果に基づき、検査手段を用いるための検査手段に対する動作に連動させて、被検眼の検査環境を設定してもよい。例えば、検査手段を用いるための検査手段に対する検者の動作に連動させて、被検眼の検査環境を設定してもよい。また、例えば、検査手段を用いるための検査手段に対する被検者の動作に連動させて、被検眼の検査環境を設定してもよい。
【0028】
本実施形態において、検眼装置は、通信手段を備えてもよい。通信手段は、有線通信及び無線通信の少なくともいずれかの構成を用いて、検眼装置とは異なる装置が備える通信手段と通信を行う。例えば、有線通信の場合は、光ファイバー、有線LAN、等が用いられる。例えば、無線通信の場合は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、等が用いられる。なお、通信手段は、受信手段と送信手段を有してもよく、各手段が兼用されてもよいし、別々に設けられてもよい。
【0029】
検眼装置が備える通信手段と、検眼装置とは異なる装置が備える通信手段と、は互いの通信手段を介して直接的に通信を行う構成としてもよい。この場合、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、通信手段を介して、被検眼の検査環境を設定する。また、検眼装置が備える通信手段と、検眼装置とは異なる装置が備える通信手段と、は互いの通信手段の間にデバイス等を介して間接的に通信を行う構成としてもよい。例えば、共有サーバ、IoT(Internet of Things)デバイス、等を介して間接的に通信を行う構成としてもよい。つまり、検眼装置と、検眼装置とは異なる装置と、がデバイス等を介して接続されていてもよい。この場合、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、通信手段からデバイス等を経由して、被検眼の検査環境を設定する。
【0030】
設定手段は、被検眼の検査環境として、被検眼を検査する検査室の照明環境、遮光環境、空調環境、等の検査環境を設定してもよい。例えば、設定手段は、検査室の照明環境を、検査室に設置された照明装置(例えば、天井照明、スタンドライト、等)の照度や色温度を調節することで設定してもよい。この場合、設定手段は、照明装置の電源を投入あるいは切断するように制御する、照明装置の設定条件を変更するように制御する、等してもよい。
【0031】
また、例えば、設定手段は、検査室の遮光環境を、検査室に設置された遮光装置(例えば、暗幕、自動カーテン、等)の開閉を調節することで設定してもよい。この場合、設定手段は、遮光装置の電源を投入あるいは切断するように制御する等してもよい。
【0032】
また、例えば、設定手段は、検査室の空調環境を、検査室に設置された空調装置(例えば、エアコンディショナー、送風機、等)の温度、風量、風向き、等を調節することで設定してもよい。この場合、設定手段は、空調装置の電源を投入あるいは切断するように制御する、空調装置の設定条件を変更するように制御する、等してもよい。
【0033】
例えば、本実施形態においては、設定手段が、検出手段の検出結果に基づいて、被検眼の検査環境を暗視下に設定する。一例として、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、照明装置の電源を切断させるように制御し(言い換えると、照明装置の点灯と消灯を切り換えるように制御し)、被検眼の検査環境を暗視下に設定する構成であってもよい。また、一例として、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、遮光装置の遮光装置の電源を投入させるように制御し(言い換えると、遮光装置の開閉を切り換えるように制御し)、被検眼の検査環境を暗視下に設定する構成であってもよい。
【0034】
より詳細には、例えば、本実施形態においては、検出手段が、検査手段を用いるための検査手段に対する動作として、被検者の顎が顎台に載置されたか否かを検出し、設定手段が、検出手段の検出結果に基づいて、検眼装置が置かれた検査室の照明を消灯する構成としてもよい。
【0035】
なお、本開示は、本実施形態に記載した検眼システムに限定されない。例えば、上記の実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種の記憶媒体等を介して検眼装置あるいは検眼システムに供給し、検眼装置あるいは検眼システムの制御部(例えば、CPU)が、プログラムを読み出して実行することも可能である。
【0036】
<第1実施例>
本実施形態に係る第1実施例について説明する。ここでは、被検者の被検眼を検査するための検査室にて検眼システムを構築した場合を例に挙げて説明する。
【0037】
図1は、検査室10の一例である。検査室10には、検眼システムが備える検眼装置100が設置されている。また、検査室10には、照明装置20が設置されている。
【0038】
<検眼装置>
検眼装置100は、被検者Pの被検眼Eを検査するために用いる。本実施例では、検眼装置100として、眼科撮影装置を例示する。眼科撮影装置は、いわゆる眼科用光干渉断層計の構成を備えたOCT装置であってもよい。以下では、検眼装置100をOCT装置100と称して説明する。
【0039】
OCT装置100は、被検眼Eに照射された測定光と参照光による干渉信号を検出するOCT光学系を有し、干渉信号を処理することで、被検眼EのOCTデータを取得する。OCT装置100は、操作部(ジョイスティック)101、移動台102、測定部103、顔支持ユニット104、モニタ106、制御部107、等を備える。
【0040】
操作部101は、被検眼Eに対して、測定部103を上下方向(Y方向)、左右方向(X方向)、及び前後方向(Z方向)へ相対的に移動させる。操作部101を操作することで、移動台102に設けられたX移動機構とZ移動機構が駆動し、移動台102の上部に配置された測定部103が、左右方向及び前後方向に移動される。また、操作部101を操作することで、測定部103に設けられたY移動機構が駆動し、測定部103が、上下方向に移動される。
【0041】
測定部103の内部には、前眼部撮像光学系、OCT光学系、等が収納される。前眼部撮像光学系は、被検眼Eの前眼部を撮像する。前眼部撮像光学系は、前眼部を照明する光源、前眼部を撮像する撮像素子、等を備えた構成であってもよい。もちろん、前眼部撮像光学系は、これらとは異なる構成を備えてもよい。OCT光学系は、低コヒーレント光を発する光源、光源から出射した光を測定光及び参照光に分割する光分割器、被検眼Eへ測定光を導く測定光学系、被検眼Eの眼底上で測定光を横断方向に走査させる走査部、参照光を生成する参照光学系、測定光と参照光の合成による干渉信号を検出する検出器、等を備えた構成であってもよい。もちろん、OCT光学系は、これらとは異なる構成を備えてもよい。
【0042】
顔支持ユニット104は、被検者Pの顔を支持する。顔支持ユニット104は、額当て104aと、顎台104bと、を有する。額当て104aには、被検者Pの額が当接される。顎台104bには、被検者Pの顎が載置される。顎台104bには、検出器105が設けられる。
【0043】
検出器105は、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたか否かを検出する。検出器105は、光センサ、圧力センサ、荷重センサ、超音波センサ、等の少なくともいずれかにより構成されてもよい。例えば、本実施例では、検出器105として荷重センサが用いられ、荷重センサによって、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたことによる荷重が検出される。検出器105の検出結果は、制御部107に出力される。
【0044】
モニタ106は、OCT光学系によりOCTデータを得るための設定画面(例えば、測定光の走査位置、走査パターン、深さ方向の領域、等を設定する設定画面)、OCTデータから生成される断層画像、前眼部撮像光学系により撮像される前眼部画像、等を表示する。モニタ106はタッチパネルであってもよく、モニタ106が操作部を兼ねてもよい。
【0045】
制御部107は、一般的なCPU(Central Processing Unit)、RAM、ROM、等を備える。CPUは、OCT装置100の制御を司る。RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。ROMには、OCT装置100の動作を制御するためのプログラム等が記憶される。制御部107には、操作部101、移動機構(X移動機構、Y移動機構、Z移動機構)の駆動部、検出器105、モニタ106、前眼部撮像光学系が備える光源や撮像素子、OCT光学系が備える光源や検出器、記憶部(メモリ)108、通信部109、等が電気的に接続される。
【0046】
記憶部108は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、記憶部108は、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ、等でもよい。記憶部108は、OCTデータを得るための設定に係る情報、OCTデータ、等を記憶してもよい。
【0047】
通信部109は、送信部と受信部で構成され、他の通信部(例えば、照明装置20が備える通信部23)に向けた信号の送信と、他の通信部から送信された信号の受信と、を行う。なお、本実施例における通信部109は、少なくとも送信部を備えていればよく、必ずしも受信部を備えていなくてもよい。つまり、本実施例における通信部109は、少なくとも信号を送信可能であればよく、必ずしも信号を受信可能としなくてもよい。
【0048】
<照明装置>
照明装置20は、検査室10を照明する。照明装置20は、制御部21、等を備える。制御部21には、一般的なCPU、RAM、ROM、等が備えられ、光源22、通信部23、等が電気的に接続される。
【0049】
通信部23は、送信部と受信部で構成され、他の通信部(例えば、OCT装置100が備える通信部109)に向けた信号の送信と、他の通信部から送信された信号の受信と、を行う。なお、本実施例における通信部23は、少なくとも受信部を備えていればよく、必ずしも送信部を備えていなくてもよい。つまり、本実施例における通信部23は、少なくとも信号を受信可能であればよく、必ずしも信号を送信可能としなくてもよい。
【0050】
<OCT装置と照明装置の通信>
本実施例では、OCT装置100の通信部109と、照明装置20の通信部23と、が有線あるいは無線のネットワークを介して互いに接続され、信号の送受信を行う。より詳細には、OCT装置100において、制御部107が通信部109へ入力した信号が、通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。照明装置20の通信部23は、通信部109から出力された信号を受信して制御部21へ入力する。
【0051】
例えば、本実施例では、OCT装置100における制御部107が、通信部109へ光源22を消灯するための消灯信号を入力し、消灯信号が通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。照明装置20の通信部23は、通信部109から出力された消灯信号を受信して、これを制御部21へ入力する。また、例えば、本実施例では、OCT装置100における制御部107が、通信部109へ光源22を点灯するための点灯信号を入力し、点灯信号が通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。照明装置20の通信部23は、通信部109から出力された点灯信号を受信して、これを制御部21へ入力する。照明装置20の制御部21は、受信した消灯信号または点灯信号に基づいて、光源22を制御し、光源22を消灯させたり点灯させたりする。
【0052】
<制御動作>
上記の構成を備える検眼システムにおいて、OCT装置100を用いた被検眼Eに対する検査の制御動作を説明する。
【0053】
<被検者による顎の顎台への載置とその検出>
OCT装置100の制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「顎を顎台の上に置いてください。」等)を発し、被検者Pを装置へ誘導する。被検者Pは指示に従い、OCT装置100の前へ座り、顎を顎台104bに載置する。顎台104bに設けられた検出器105は、外部からの荷重を検知した際に、この荷重を電気信号に変換して、制御部107に出力する。制御部107は、検出器105から電気信号が入力されたときに、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたと検出する。
【0054】
なお、制御部107は、検出器105による電気信号が所定の時間以上で連続的に入力されたときに、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたと検出してもよい。例えば、所定の時間は、被検者Pが顎を顎台104bに置きなおした場合等と区別できる時間であればよい。一例として、5秒間以上であってもよい。これによって、制御部107は、被検者Pの顎が顎台104bに載置され、被検眼Eの検査を開始できる状態になったと検出することができる。
【0055】
<検査室の消灯>
図2は、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたときの検査室10の様子を示している。制御部107は、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたことを検出すると、被検眼Eの検査環境を設定するための信号を通信部109へと送信する。例えば、照明装置20の光源22を消灯するための消灯信号を通信部109へと送信する。
【0056】
OCT装置100の通信部109が消灯信号を発すると、照明装置20の通信部23が消灯信号を受信し、制御部21に消灯信号を入力する。制御部21は、消灯信号の入力に基づいて、光源22を消灯させる。これによって、検査室10は、
図1に示す状態から
図2に示す状態となり、被検眼Eの検査環境が暗視下に設定される。
【0057】
<被検眼に対する検査の開始>
OCT装置100の制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「視標を観察してください。」等)を発し、被検者Pに固視標を観察させる。被検者Pは指示に従い、測定部103が備える図示なきモニタに表示された固視標を注視する。また、OCT装置100の制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「検査を開始します。開始スイッチを押してください。」等)を発し、被検者Pに検査を開始するための図示なきスイッチを操作させる。被検者Pは指示に従い、スイッチを操作する。
【0058】
制御部107は、スイッチから入力された開始信号に応じて、前眼部撮像光学系を制御し、被検眼Eの前眼部画像を撮像するとともに、被検眼Eの角膜にアライメント指標を投影する。制御部107は、アライメント指標像を利用して、測定部103の測定光軸に対する被検眼Eの角膜頂点位置(略角膜頂点位置)の位置ずれを検出し、自動アライメントを行う。
【0059】
OCT装置100と被検眼Eのアライメントが完了すると、検者Dが所望する被検眼Eの眼底部位を高感度・高解像度で観察するための最適化制御(例えば、光路長の調整、フォーカスの調整、偏光状態の調整、等)と、OCTデータの取得と、を実行する。
【0060】
<被検者による顎の顎台からの離去とその検出>
OCT装置100の制御部107は、図示なきスピーカから音声アナウンス(例えば、「検査を終了します。お疲れ様でした。」等)を発し、被検者Pに検査の終了を報知する。被検者Pは顎を顎台104bから離す。このとき、顎台104bに設けられた検出器105は、外部からの荷重を検知できなくなり、制御部107への電気信号の出力を停止する。制御部107は、検出器105から電気信号の入力が途絶えたときに、被検者Pの顎が顎台104bから離れたと検出する。
【0061】
なお、制御部107は、検出器105による電気信号の入力が所定の時間以上で連続的に途絶えたときに、被検者Pの顎が顎台104bから離れたと検出してもよい。これによって、制御部107は、被検者Pの顎が顎台104bから離れ、被検眼Eの検査が終了した状態になったと検出することができる。
【0062】
<検査室の点灯>
制御部107は、被検者Pの顎が顎台104bから離れたことを検出すると、照明装置20の光源22を点灯するための点灯信号を通信部109へと送信する。OCT装置100の通信部109が点灯信号を発すると、照明装置20の通信部23が点灯信号を受信し、制御部21に点灯信号を入力する。制御部21は、点灯信号の入力に基づいて、光源22を点灯させる。これによって、検査室10は、
図2に示す状態から
図1に示す状態となり、被検眼Eの検査環境が明視下に設定される。
【0063】
<第2実施例>
本実施形態に係る第2実施例について説明する。ここでは、被検者Pの被検眼を検査するための検査室10と、OCT装置100を操作する操作室50と、にて検眼システムを構築した場合を例に挙げて説明する。なお、第1実施例と同様の構成は、第1実施例と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0064】
図3は、検査室10及び操作室50の一例である。検査室10には、検眼システムが備える検眼装置100が設置されている。また、検査室10には、遮光装置30、撮影装置40、等が設置されている。操作室50には、検眼装置100における遠隔操作部200が設置されている。
【0065】
<遮光装置>
遮光装置30は、検査室10を遮光する。遮光装置30は、暗幕、自動カーテン、等の少なくともいずれかであってもよく、
図3では暗幕31を例示している。遮光装置30は、制御部32、等を備える。制御部32には、一般的なCPU、RAM、ROM、等が備えられ、暗幕31を開閉するための開閉機構の駆動部、通信部33、等が電気的に接続される。
【0066】
通信部33は、送信部と受信部で構成され、他の通信部(例えば、OCT装置100が備える通信部109)に向けた信号の送信と、他の通信部から送信された信号の受信と、を行う。なお、本実施例における通信部33は、少なくとも受信部を備えていればよく、必ずしも送信部を備えていなくてもよい。つまり、本実施例における通信部33は、少なくとも信号を受信可能であればよく、必ずしも信号を送信可能としなくてもよい。
【0067】
<撮影装置>
撮影装置40は、検査室10を撮影する。撮影装置40は、制御部41、等を備える。制御部41には、一般的なCPU、RAM、ROM、等が備えられ、検出器42、通信部43、等が電気的に接続される。検出器42は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、等の撮像素子でもよい。
【0068】
通信部43は、送信部と受信部で構成され、他の通信部(例えば、OCT装置100が備える遠隔操作部200の通信部204)に向けた信号の送信と、他の通信部から送信された信号の受信と、を行う。なお、本実施例における通信部34は、少なくとも送信部を備えていればよく、必ずしも受信部を備えていなくてもよい。つまり、本実施例における通信部43は、少なくとも信号を送信可能であればよく、必ずしも信号を受信可能としなくてもよい。
【0069】
本実施例において、撮影装置40には、暗視下においても利用可能な暗視カメラ(例えば、高感度カメラ、赤外線カメラ、等)が用いられてもよい。これにより、検査室10を暗視下でも撮影することができる。撮影装置40は、検査室10を動画として撮影してもよいし、一定時間ごとの静止画として撮影してもよい。
【0070】
また、本実施例において、撮影装置40には、図示なきマイク及びスピーカが備えられてもよい。例えば、撮影装置40のマイクが拾った被検者Pの音声が、遠隔操作部200の図示なきスピーカから出力され、検者Dに伝達されてもよい。また、例えば、遠隔操作部200の図示なきマイクが拾った検者Dの音声が、撮影装置40の図示なきスピーカから出力され、被検者Pに伝達されてもよい。
【0071】
<遠隔操作部>
OCT装置100の遠隔操作部200は、被検者PをOCT装置100まで誘導して、OCT装置100による被検眼Eの検査を可能な状態(言い換えると、被検眼Eの検査を開始することが可能な状態)とする。遠隔操作部200は、制御部201、等を備える。制御部201には、一般的なCPU、RAM、ROM、等が備えられ、モニタ202、操作部(マウス)203、通信部204、等が電気的に接続される。
【0072】
モニタ202には、OCT装置100を操作するための操作画面210(例えば、前眼部画像、OCTデータから生成された断層画像、等)、撮影装置40により撮影された撮影画像220、等が表示される。操作部203からは、検者DがOCT装置100を操作する操作信号が入力される。
【0073】
通信部204は、送信部と受信部で構成され、他の通信部(例えば、OCT装置100が備える通信部109、遮光装置30が備える通信部33、撮影装置40が備える通信部43、等)に向けた信号の送信と、他の通信部から送信された信号の受信と、を行う。
【0074】
<OCT装置と遮光装置の通信>
本実施例では、OCT装置100の通信部109と、遮光装置30の通信部33と、が有線あるいは無線のネットワークを介して互いに接続され、信号の送受信を行う。より詳細には、OCT装置100において、制御部107が通信部109へ入力した信号が、通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。遮光装置30の通信部33は、通信部109から出力された信号を受信して制御部32へ入力する。
【0075】
例えば、本実施例では、OCT装置100における制御部107が、通信部109へ暗幕31を閉じるための閉信号を入力し、閉信号が通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。遮光装置30の通信部33は、通信部109から出力された閉信号を受信して、これを制御部32へ入力する。また、例えば、本実施例では、OCT装置100における制御部107が、通信部109へ暗幕31を開くための開信号を入力し、開信号が通信部109によってOCT装置100の外部へ出力される。遮光装置30の通信部33は、通信部109から出力された開信号を受信して、これを制御部32へ入力する。遮光装置30の制御部x33、受信した閉信号または開信号に基づいて、図示なき開閉機構の駆動部を制御し、暗幕31を閉じたり開いたりする。
【0076】
<制御動作>
上記の構成を備える検眼システムにおいて、OCT装置100を用いた被検眼Eに対する検査の制御動作を説明する。
【0077】
<OCT装置と撮影部の電源投入>
検者Dは、OCT装置100の電源を投入する。例えば、検者Dは、遠隔操作部200の操作部203を操作して、モニタ202に表示されたOCT装置100を起動させるための図示なき電源スイッチを選択する。遠隔操作部200の制御部201は、電源スイッチから入力された起動信号を通信部204へ入力し、通信部204は起動信号を送信する。OCT装置100の通信部109は、起動信号を受信し、起動信号を制御部107へ入力する。制御部107は、起動信号の入力に応じてOCT装置100を起動させる。OCT装置100が起動すると、OCT装置100が起動したことを示す完了信号が発せられる。
【0078】
また、検者Dは、撮影装置40の電源を投入する。例えば、検者Dは、操作部203を操作して、モニタ202に表示された撮影装置40を起動させるための図示なき電源スイッチを選択する。遠隔操作部200の制御部201は、電源スイッチから入力された起動信号を通信部204へ入力し、通信部204は起動信号を送信する。撮影装置40の通信部43は、起動信号を受信し、起動信号を202へ入力する。制御部41は、起動信号の入力に応じて撮影装置40を起動させる。撮影装置40が起動すると、撮影装置40が起動したことを示す完了信号が発せられる。
【0079】
<遠隔操作部への画面表示>
OCT装置100の制御部107は、完了信号に応じて、遠隔操作部200の制御部201に、OCT装置100を操作するための操作画面を送信する。また、撮影装置40の制御部41は、完了信号に応じて、検査室10の撮影を開始し、遠隔操作部200の制御部201に、検出器42によって逐次撮影される撮影画像を送信する。検者Dが観察する遠隔操作部200のモニタ202には、このようにして、OCT装置100の操作画面210と、撮影装置40が撮影した検査室10の撮影画像220と、が表示される。
【0080】
<被検者の誘導と検査条件の設定>
検者Dは、モニタ202に表示された撮影画像220を観察し、被検者Pが検査室10に入室したことを確認すると、被検者Pを装置へ誘導し、顎を顎台104bに載せるように指示を出す。被検者Pは指示に従い、OCT装置100の前へ座り、顎を顎台104bに載置する。顎台104bに設けられた検出器105は、外部からの荷重を検知し、制御部107に電気信号を入力する。
【0081】
制御部107は、電気信号が入力されると、被検者Pの顎が顎台104bに載置されたことを検出して、制御部201へ検出信号を送信する。遠隔操作部200の制御部201は、検出信号に応じて、検者Dに検査の開始を促す旨のメッセージをモニタ202に表示させる。
【0082】
検者Dは、メッセージを確認すると、モニタ202に表示された操作画面210を操作して、OCT装置100の検査条件を設定する。遠隔操作部200の制御部201は、それぞれの条件を選択したことにより発せられる選択信号を、OCT装置100の制御部107へ送信する。OCT装置100の制御部107は、受信した選択信号に応じて、OCT装置100の検査条件を設定する。
【0083】
<検者による動作の検出と、暗幕の降下及び検査の開始>
検者Dは、OCT装置100の検査条件を設定すると、被検眼Eに対する検査を開始する。例えば、検者Dは、遠隔操作部200の操作部203を操作して、モニタ202に表示されたアライメント及び検査を開始するための図示なき開始スイッチを選択する。遠隔操作部200の制御部201は、開始スイッチから入力された開始信号を通信部204へ入力し、通信部204は開始信号を送信する。
【0084】
図4は、検者Dが図示なき開始スイッチを選択したときの検査室10の様子を示している。遠隔操作部200の通信部204が開始信号を発すると、遮光装置30の通信部33が開始信号を受信し、制御部32に開始信号を入力する。制御部32は、開始信号の入力に基づいて、暗幕31を閉じる。これによって、検査室10は、
図3に示す状態から
図4に示す状態となり、被検眼Eの検査環境が暗視下に設定される。
【0085】
また、遠隔操作部200の通信部204が開始信号を発すると、OCT装置100の通信部109が開始信号を受信し、制御部107に開始信号を入力する。制御部107は、開始信号の入力に基づいて、前述の自動アライメントを行う。
【0086】
OCT装置100と被検眼Eのアライメントが完了すると、制御部107は、検者Dが所望する被検眼Eの眼底部位を高感度・高解像度で観察するための最適化制御(例えば、光路長の調整、フォーカスの調整、偏光状態の調整、等)と、OCTデータの取得と、を実行する。
【0087】
なお、本実施例では、検者による開始スイッチの入力に連動して、遮光装置30における暗幕31の降下と、OCT装置100における検査の開始と、が実行される構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、検者による開始スイッチの入力に連動して、遮光装置30における暗幕31の降下が実行されてもよい。この場合、遮光装置30が、暗幕31の降下を完了した際に完了信号を発し、OCT装置100がこの完了信号に基づいて、自動アライメントを行ってもよい。
【0088】
<検者による動作の検出と暗幕の上昇>
検者Dは、OCTデータを取得すると、被検眼に対する検査を終了する。例えば、検者Dは、遠隔操作部200の操作部203を操作して、モニタ202に表示された検査を終了するための図示なき終了スイッチを選択する。遠隔操作部200の制御部201は、終了スイッチから入力された終了信号を通信部204へ入力し、通信部204は終了信号を送信する。
【0089】
遠隔操作部200の通信部204が終了信号を発すると、遮光装置30の通信部33が終了信号を受信し、制御部32に終了信号を入力する。制御部32は、終了信号の入力に基づいて、暗幕31を開く。これによって、検査室10は、
図4に示す状態から
図3に示す状態となり、被検眼Eの検査環境が明視下に設定される。
【0090】
なお、本実施例では、検者による終了スイッチの入力に連動して、遮光装置30における暗幕31が上昇する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、OCT装置100を用いた一連の検査が完了した際に、制御部107が検査の終了を示す終了信号を自動的に発し、遮光装置30がこの完了信号に基づいて、自動的に暗幕31を上昇させてもよい。
【0091】
以上説明したように、例えば、本実施例における検眼装置は、被検眼を検査するための検査手段と、検査手段を用いるための検査手段に対する動作を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて、被検眼の検査環境を設定するための設定手段と、を備える。従来は、検者が状況に合わせて適宜検査環境を設定したり、予め検査時の環境に設定された中で被検者を誘導したりしており、手間や誘導のしづらさがあった。しかし、検眼装置がこのような構成を備えることで、検査手段に対する動作に連動させて、被検眼に対する最適な検査環境を容易に設定することができる。検者は、検査環境が整った状態で検査を開始することができ、より精度の良い検査結果を得ることができる。
【0092】
また、例えば、本実施例における検眼装置において、検出手段は、検査手段を用いるための検査手段に対する被検者の動作を検出する。これによって、検者は、検査前あるいは検査後の被検者の誘導と、検査の開始時と、のそれぞれのタイミングで最適な検査環境が設定された中で、検査をスムーズに開始することができる。さらに、検査室に検者が居らず、検査の開始から終了までの過程(例えば、アライメント動作、撮影動作、等)を全自動で制御するような検眼装置を用いた場合であっても、被検眼に対する最適な検査環境が設定された中で、検査がスムーズに開始されるようになる。
【0093】
また、例えば、本実施例における検眼装置において、検出手段は、検査手段に対する動作として、被検眼の検査を開始できる状態か否かを検出する。検者は、このような検出結果に基づいて被検眼の検査環境が設定されることで、被検者の検査が可能な状態になったかどうかを容易に把握することができる。
【0094】
また、例えば、本実施例における検眼装置において、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、検査環境を暗視下に設定する。眼科分野では、検査室の照明装置等、周囲の光の変化による検査精度への影響を軽減させるため、被検眼を検査する際に暗室を作ることがある。設定手段が被検眼の検査環境を暗視下に設定することで、被検眼を精度よく検査することができる。
【0095】
また、例えば、本実施例における検眼装置は、被検者の顔の少なくとも一部を支持するための顔支持ユニットを備え、検出手段は、検査手段に対する動作として、被検者の顔の少なくとも一部が顔支持ユニットに支持されたか否かを検出し、設定手段は、検出手段の検出結果に基づいて、検眼装置が置かれた検査室の照明を消灯する。例えば、被検者の顎が顎台に載置されたか否か、被検者の額が額当てに当接されたか否か、等が検出され、その検出結果に基づいて検査室の照明を消灯する。これにより、被検眼の検査を開始するタイミングに合わせて、被検眼の検査環境が自動的に暗視下に設定されるので、被検眼を効率よく検査することができる。
【0096】
<変容例>
なお、本実施例では、OCT装置100と、照明装置20あるいは遮光装置30と、がそれぞれ制御部を備え、互いに通信することで、OCT装置100の制御部107が照明装置20あるいは遮光装置30を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、OCT装置100の制御部107に、照明装置20の光源22、遮光装置30の図示なき駆動部、等が電気的に接続されることで、OCT装置100の制御部107が、被検眼の検査環境(すなわち、照明環境や遮光環境)を設定する構成としてもよい。
【0097】
なお、本実施例では、OCT装置100と照明装置20、あるいはOCT装置100と遮光装置30が、互いに通信することで、被検眼の検査環境を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。OCT装置100は、検査室に設置された照明装置20、遮光装置30、空調装置(一例として、エアコンディショナー等)、等の少なくともいずれかの装置と通信することで、被検眼の検査環境を設定する構成としてもよい。つまり、被検眼の検査環境として、検査室の照明環境、遮光環境、空調環境、等の少なくともいずれかの環境を設定する構成としてもよい。
【0098】
なお、本実施例では、OCT装置100と、OCT装置とは異なる装置と、が互いに通信することで、被検眼の検査環境を設定する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。OCT装置100と、OCT装置とは異なる装置と、が互いに通信することで、被検者へ検査に係る情報を出力する構成としてもよい。例えば、OCT装置100と誘導装置(例えば、スマートスピーカ等)が通信することで、OCT装置100の次の動作が報知されてもよい。一例として、被検者が顎を顎台104bに載置したことを検出した際に、誘導装置が、検査に応じた音声ガイド(例えば、「室内の電気を消灯します」、「装置が動きます」等)を発するようにしてもよい。
【0099】
なお、本実施例では、操作室50に検者Dが、検査室10に被検者Pが居り、検者Dが撮影画像220を観察しながら被検者Pに指示を出す場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、操作室50に検者Dが、検査室10に被検者Pと被検者Pを補助する補助者が居り、検者Dが撮影画像220を観察しながら補助者に指示を出してもよい。この場合、OCT装置100の制御部107は、補助者がOCT装置100の操作部101またはモニタ106を操作して検査の開始スイッチを選択したことを検出してもよい。制御部107が開始スイッチから入力された開始信号を通信部109へ入力し、通信部109は開始信号を送信する。照明装置20及び遮光装置30は、開始信号を受信し、これに基づいて、検査環境を暗視下に設定してもよい。
【0100】
なお、本実施例では、被検者Pの顎が顎台104bから離れたことを検出して、照明装置20の光源22が点灯する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、被検眼Eに対する検査の途中でOCT装置100の異常が検知された場合等には、被検者Pの顎が顎台104bに載置されていても、照明装置20の光源22を点灯させるようにしてもよい。また、本実施例では、検者Dが検査を終了するための図示なき終了スイッチを選択すると、暗幕31が開く構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。同様に、例えば、被検眼Eに対する検査の途中でOCT装置100の異常が検知された場合等には、終了スイッチが選択されていなくても、暗幕31を開くようにしてもよい。
【0101】
また、例えば、検査室10に複数台の検眼装置を設置し、複数の被検者に対して検査を開始するとき等、ある検眼装置において被検者の顎が顎台に載置されたことが検出されても、他の検眼装置において被検者の顎が顎台から離れていることが検出されている場合には、照明装置20の光源22を消灯させないようにしてもよい。例えば、すべての検眼装置において被検者の顎が顎台に載置されたことが検出された際に、照明装置20の光源22を消灯させるようにしてもよい。
【0102】
同様に、被検者に対する検査が終了し、ある検眼装置において被検者の顎が顎台から離れたことが検出されても、他の検眼装置において被検者の顎が顎台に載置されていることが検出されている場合には、照明装置20の光源22を点灯させないようにしてもよい。例えば、すべての検眼装置において被検者の顎が顎台から離れたことが検出された際に、照明装置20の光源22を点灯させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 検査室
20 照明装置
30 遮光装置
40 撮影装置
50 操作室
100 OCT装置
200 遠隔操作部