(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧金属板
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20231212BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231212BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/16 101
B32B27/20 A
B32B27/32 Z
(21)【出願番号】P 2019093578
(22)【出願日】2019-05-17
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
(72)【発明者】
【氏名】河西 優衣
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-285960(JP,A)
【文献】特開2009-241462(JP,A)
【文献】特開2008-080650(JP,A)
【文献】特開2018-016059(JP,A)
【文献】特開2012-076355(JP,A)
【文献】特開2007-069354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にプライマー層を有する熱可塑性樹脂透明原反層の表面に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、トップコート層をこの順序に有する化粧シートであって、
前記熱可塑性樹脂透明原反層は、ランダムポリプロピレン樹脂からなり、
前記透明熱可塑性樹脂層はポリプロピレン樹脂からなり、
トップコート層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなり、
絵柄模様層は、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面を模した絵柄を印刷したものであることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明熱可塑性樹脂層が、ホモポリプロピレン樹脂からなる、請求項1に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材に貼り合わせて室内装飾部材等の表面に用いる化粧シート及びこれを用いた化粧金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や住宅の内装に用いられる化粧シートとしては、合成樹脂シートに木目模様や石目模様、抽象柄などの絵柄を印刷した化粧シートが一般的に用いられている。化粧シートの表面には、用途に応じて様々な艶、質感が再現されており、例えば居室用の空間では落ち着いた雰囲気を出すために艶を低くしたり、キッチンなどでは高級感が出るように高光沢な塗装風の鏡面仕上げにしたりすることが行われる。
【0003】
一方、装飾部材としてステンレス板やアルミニウム板等の金属板を用いた化粧部材が用いられることがあるが、金属そのものを用いる場合、意匠性において選択肢が狭く、用途が限定されることがあった。
【0004】
特許文献1に記載された金属調積層シートは、特許請求の範囲に記載された通り、少なくとも片面にポリ塩化ビニル薄層が形成された二枚の軟質アルミニウムシート層を、該ポリ塩化ビニル薄層が内面となるように、硬質ポリ塩化ビニルシートの両面に積層した積層シートを基体層とし、該基体層の少なくとも片面に、表面に金属蒸着層を有するポリエステルフィルムを積層した金属調積層シートであって、該金属蒸着層は、ポリエステルフィルムの表面に形成された表面硬化膜に、プラズマ処理、コロナ処理、あるいはアルカリ処理を施した後、該処理面に形成されたものであることを特徴とする鏡像の鮮明度ならびに蒸着層の密着性にすぐれた金属調積層シートである。
【0005】
特許文献1に記載された金属調積層シートは、加工性や施工性の良い硬質ポリ塩化ビニルシートを基材として、鮮明度の高い鏡面化粧板を実現したものであるが、鏡面という特殊な効果を狙ったものであり、用途としては非常に限定的である。
【0006】
特許文献2に記載されたプレコート鋼板は、特許請求の範囲に記載された通り、鋼板の表面にプライマー樹脂塗料が塗装焼き付けされてプライマーを形成してあり、プライマーの表面にリーフィング性アルミニウム紛が塗料固形分100重量部に対して20~50重量部配合してなるアルミニウム紛入り樹脂塗料が塗料粘度20~300秒(No.4フォードカップ)でロール塗装後に焼き付け乾燥されてアルミ塗膜を形成してあるプレコート鋼板である。
【0007】
さらに特許文献2の請求項5には、アルミ塗膜の表面に印刷層としてヘアライン模様が印刷されているプレコート鋼板が記載されている。このプレコート鋼板は、鋼板の表面にアルミ塗膜を形成し、さらにヘアライン模様を印刷することにより、外観上においてステンレス板やアルミニウム板と同等の質感を出すことを目的としたものであるが、プレコート鋼板においては、塗膜の厚さに制約があるため、深みのある質感表現ができないことに加えて、模様の印刷は、グラビアオフセット印刷方式に限定されるため、多色による精巧な印刷が不可能であり、意匠面において満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平4-185330号公報
【文献】特開平11-207861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は、金属箔や金属蒸着膜を使用することなく、実際の金属板以上の意匠効果を発揮する化粧シート及びこれを用いた化粧金属板を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、裏面にプライマー層を有する熱可塑性樹脂透明原反層の表面に、絵柄模様層、接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、トップコート層をこの順序に有する化粧シートであって、前記熱可塑性樹脂透明原反層は、ランダムポリプロピレン樹脂からなり、前記透明熱可塑性樹脂層はポリプロピレン樹脂からなり、トップコート層は、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなり、絵柄模様層は、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面を模した絵柄を印刷したものであることを特徴とする化粧シートである。
【0011】
本発明に係る化粧シートは、印刷原反として透明ポリプロピレン樹脂シートを用い、絵柄模様層の上にさらに透明ポリプロピレン樹脂層を設けたことにより、実際の金属板を凌駕する非常に立体感のある意匠性を発揮することができたものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記透明熱可塑性樹脂層が、ホモポリプロピレン樹脂からなる、請求項1に記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る化粧シートは、光輝成分を含む印刷インキを用いて金属表面を模した絵柄を印刷するに当たって、印刷原反として通常用いられる着色原反に替えて透明ポリプロピレン樹脂原反を用い、さらに絵柄層の上に接着剤を介して透明ポリプロピレン樹脂層を設けたことにより、非常に深みのある絵柄表現が可能となった。この結果、実際の金属板を上回る高度な意匠性を発揮することが可能となった。
【0014】
本発明に係る化粧シートは、グラビア輪転印刷機を用いて透明ポリプロピレン樹脂原反に印刷することができるため、多色の精巧な印刷が可能であり、従来のグラビアオフセット印刷機によるプレコート鋼板とは比較にならない高度な意匠性が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における層構成を示した断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した化粧シートを接着剤を用いて基材に貼り合わせた化粧金属板の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しながら本発明に係る化粧シートについて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る化粧シートの一実施態様における層構成を示した断面模式図である。本発明に係る化粧シート1は、裏面にプライマー層8を有する熱可塑性樹脂透明原反層2の表面に、絵柄模様層3、接着剤層4、透明熱可塑性樹脂層5、トップコート層6をこの順序に有する化粧シートである。
【0017】
熱可塑性樹脂透明原反層2としては、ポリプロピレン樹脂を主成分とし、これに充填剤
、安定剤等を添加した樹脂組成物をシート状に成形したものを使用する。
【0018】
熱可塑性樹脂透明原反層2の表面に光輝成分を含む印刷インキを用いて絵柄模様層3を印刷形成する。印刷方法としては、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等任意であるが、グラビア輪転印刷法が最も適している。光輝成分としては、光輝性アルミニウム顔料や、パール顔料、合成パール顔料等を用いることができる。絵柄模様層3には、光輝成分を含む印刷インキ以外に、光輝成分を含まない通常の印刷インキを用いた絵柄が含まれていても勿論良い。
【0019】
絵柄模様層3の上に、接着剤層4を介して透明熱可塑性樹脂層5を設ける。透明熱可塑性樹脂層5としてはポリプロピレン樹脂を主成分とし、これに必要に応じて添加剤として安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加した樹脂組成物をフィルム状に成形したものをドライラミネート法によって貼り合わせたり、樹脂組成物を押出機のTダイから押し出して同時ラミネートする押し出しラミネート法によって下地層と貼り合わせる。
【0020】
透明熱可塑性樹脂層5を押し出しラミネート法によって形成する場合、2軸押出機を用いて、接着性樹脂と表面樹脂の2層を共押出法によって同時に形成しても良い。この場合接着剤層4を省略することができる場合もある。
【0021】
透明熱可塑性樹脂層5の表面にトップコート層6を設ける。これらは、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂のいずれかまたはこれらから選択される2種以上の混合物からなるものを使用する。
【0022】
図2は、
図1に示した化粧シート1を接着剤9を用いて金属基材7に貼り合わせた化粧金属板10の断面模式図である。金属基材7としては、亜鉛めっき鋼板、化成処理鋼板、ステンレス板、アルミニウム板等の金属板の他、予めこれらを棒状に加工した金属部材や型材等にも適用できる。
【0023】
金属板を基材として用いた場合には、貼り合わせた後に折曲げ加工やロールフォーミング加工によって立体的な形状の部材としても良い。以下実施例に基づいて本発明に係る化粧シートについて具体的に説明する。
【実施例】
【0024】
熱可塑性樹脂透明原反層として厚さ70μmのランダムポリプロピレン樹脂シートを用い、この表面に絵柄模様層としてウレタン樹脂グラビアインキ(東洋インキ社製ラミスター)にアルミペーストを添加したインキを用いてグラビア印刷により金属の錆柄を印刷した。
【0025】
絵柄模様層上に、透明熱可塑性樹脂層として厚さ70μmのホモポリプロピレン樹脂フィルムを接着剤を用いたドライラミネート法によって貼り合わせた。透明熱可塑性樹脂層の表面にトップコート層としてアクリルウレタン樹脂系2液硬化型樹脂(DICグラフィック社製)を6μmの厚さになるように塗布し、熱可塑性樹脂透明原反層の裏面にプライマー層を塗布して化粧シートを作製した。化粧シートの裏面にウレタン樹脂系接着剤(ノーテープ工業社製)を25μmの厚さに塗布してアルミニウム板と貼り合わせ化粧金属板を完成させた。
【0026】
<比較例>
比較例として、熱可塑性樹脂透明原反に替えて着色ポリプロピレン樹脂原反を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製し、同様に化粧金属板を得た。
【0027】
実施例と比較例の化粧金属板について10人の評価者による立体的な金属意匠感の評価を行った。
【0028】
<評価基準>
良いとした人の人数0人・・・×
良いとした人の人数1~6人・・・△
良いとした人の人数7~10人・・・〇
結果を表1に示す。
【0029】
【0030】
このように、本発明に係る化粧シートは、立体的に見える金属意匠感が高いと感じる人が多いことが分かる。
【符号の説明】
【0031】
1・・・化粧シート
2・・・熱可塑性樹脂透明原反層
3・・・絵柄模様層
4・・・接着剤層
5・・・透明熱可塑性樹脂層
6・・・トップコート層
7・・・金属基材
8・・・プライマー層
9・・・接着剤層
10・・・化粧金属板