(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】真空密着包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 75/30 20060101AFI20231212BHJP
B65D 81/20 20060101ALI20231212BHJP
B65D 75/60 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65D75/30 B
B65D81/20 C
B65D75/60
(21)【出願番号】P 2019096089
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村木 健太郎
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-017759(JP,U)
【文献】特開2017-001740(JP,A)
【文献】国際公開第2005/009869(WO,A1)
【文献】特開2018-167857(JP,A)
【文献】特開2013-052919(JP,A)
【文献】特開昭60-047632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/30-75/60
B65D 81/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表材と裏材をシールすることにより形成され、内容物を収納した真空密着包装体であって、
表材と裏材がシールされていない未シール部の一部を含む位置に、表材または裏材を構成する2枚のフィルムにより形成された折り込み部が設けられ、
前記折り込み部は、
イージーピール層を有し、表材または裏材を構成する2枚のフィルムをそれぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされて形成されており、
前記折り込み部の天端部の両端を除く領域に設けられ、かつ、前記折り込み部の前記天端部以外の端縁に接していない未シール部を有す
ることを特徴とする、真空密着包装体。
【請求項2】
前記折り込み部が、内容物の一部に接する位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の真空密着包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空密着包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの畜産加工品食品、チーズ等の乳加工製品、半生菓子、野菜などの農産物、かまぼこなどの加工水産物などの包装として、真空密着包装などが知られている。
【0003】
この真空密着包装は、プラスチックフィルムなどの上に上記食品を置き、その上に別のプラスチックフィルムをかぶせて脱気した後に密着包装するもので、食品の袋詰めの手間を省くことができたり、食品の酸化防止、品質保持、微生物の侵入や繁殖の防止などの効果を発揮したりすることが出来る。
【0004】
この真空密着包装による包装体の一例として、特許文献1には、含有率15%以上の水畜産加工品を少なくとも1層の収縮フィルムをラミネートした多層フィルムを用いて真空包装後、加熱加温処理して該袋を内容物に密着収縮させてなる水畜産加工品包装物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明により、加熱加温処理(75~125℃)の度合をコントロールすることにより3~20%の間で製品の種別に応じてその収縮率をコントロールして包装することができるので、フィルムを製品に密着させて空間を無くすることができ、しわの部分から離水とネトの発生を防止できる。
【0007】
しかし、上記を含めた従来の真空密着包装体(
図9で示す、従来の真空密着包装体の第一実施形態を示す平面図参照)では、開封予定部から内容物までの間に、包装体を構成する裏材と表材のフィルムが密着している場合、包装体から内容物を取り出すために包装体に予め設けられたノッチ部などから包装体を開封しても、内容物が取り出しづらいという問題がある。
【0008】
具体的には、ノッチ部などからカットして包装体を開封しても、表材と裏材のフィルムが密着しているために、そのままでは内容物を取り出すことはできず、密着した表材と裏材のフィルムを引き離して包装体内に空気を入れるために、例えば、指でこの表材と裏材の2枚のフィルムを強くずらすなどの動作が必要で、この動作は、消費者にとって結構煩雑な作業である。
【0009】
そこで、本発明は、包装体本体の未シール部における、表材と裏材が密着している部分が、離れやすくなることで、開口しやすく、内容物が取り出しやすい真空密着包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、表材と裏材をシールすることにより形成され、内容物を収納した真空密着包装体であって、表材と裏材がシールされていない未シール部の一部を含む位置に、表材または裏材を構成する2枚のフィルムにより形成された折り込み部が設けられ、前記折り込み部は、イージーピール層を有し、表材または裏材を構成する2枚のフィルムをそれぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされて形成されており、前記折り込み部の天端部の両端を除く領域に設けられ、かつ、前記折り込み部の前記天端部以外の端縁に接していない未シール部を有することを特徴とする真空密着包装体である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記折り込み部が、内容物の一部に接する位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の真空密着包装体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る真空密着包装体は、表材と裏材がシールされていない未シール部の一部を含む位置に、表材または裏材を構成する2枚のフィルムにより形成された折り込み部が設けられ、前記折り込み部は、イージーピール層を有し、表材または裏材を構成する2枚のフィルムをそれぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされて形成されており、未シール部を有する。
【0014】
これにより、折り込み部の未シール部を起点として真空密着包装体を開封し、折り込み部を構成するフィルムのシールを包装体本体の未シール部まで剥がすと同時に、真空密着包装体の中に空気が入る。そして、包装体本体の未シール部における、表材と裏材が密着する部分で、その密着が解かれて引き離され、真空密着包装体が開口しやすく、内容物が取り出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の真空密着包装体の第一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1の真空密着包装体のA-A線の断面模式図である。
【
図3】本発明の真空密着包装体の表材と裏材のそれぞれの層構成の一例を示す説明図である。
【
図4】
図1の真空密着包装体を開封・開口した状態の一例を示す説明図である。
【
図5】本発明の真空密着包装体の第二実施形態を示す平面図である。
【
図6】
図5の真空密着包装体のB-B線の断面模式図である。
【
図7】
図5の真空密着包装体を開封・開口した状態の一例を示す説明図である。
【
図8】本発明の真空密着包装体の第三実施形態を示す平面図である。
【
図9】従来の真空密着包装体の第一実施形態を示す平面図である。
【
図10】従来の真空密着包装体の第二実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、必要に応じて図面を参照して、本発明に係る真空密着包装体の実施形態の例について説明する。
【0017】
図1は、本発明の真空密着包装体50の第一実施形態を示す平面図である。
図2は、
図1の真空密着包装体50のA-A線の断面模式図である。
図3は、本発明の真空密着包装体50の表材1と裏材2のそれぞれの層構成の一例を示す説明図である。
図1に示す通り、本発明の真空密着包装体50は、折り込み部11が設けられた表材1と、裏材2とをシールすることにより形成され、内容物15を収納した真空密着包装体である。
【0018】
図1のとおり、表材1と裏材2の間に内容物15が挟まれ、四方のフランジ部6、7、7、8が表材1と裏材2によりシールされ、天シール部3、地シール部5および左右側シール部4、4が形成され、脱気包装された状態で密封されている。また左右側シール部4、4と、天シール部3および地シール部5とに囲まれた領域には、表材1と裏材2がシールされていない、包装体本体における未シール部10が形成されている。
【0019】
図1のように、表材1に折り込み部11を設ける場合は、
図3に示す表材1の層構成とは、表材1を構成する上側フィルム1aと表材1を構成する下側フィルム1bのそれぞれの層構成のことを指す。また、表材1に折り込み部11を設ける場合、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bのそれぞれの内容物側にイージーピール層33を有する。なお、少なくとも折り込み部11がイージーピール層33を有していればよい。
【0020】
また、表材1と裏材2がシールされていない未シール部10の一部を含む位置に、表材1を構成する上側フィルム1aと表材1を構成する下側フィルム1bにより形成された折り込み部11が設けられ、前記折り込み部11は、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bをそれぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされて形成されている。その重ね合わされた部分の少なくとも一部をシールして表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされる。よって、前記折り込み部11は、前記表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bがシールされていない未シール部12を有する。
【0021】
表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされた部分をイージーピール層33とすることで、折り込み部11から開封する際にシールを剥がしやすくなる。なお、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bが重ね合わされた部分の中のシール部は、表材1と裏材2を貼り合わせた際に内容物15が密封されるように設けられる。ここでは、「開封」とは、表材1となるフィルムと裏材2となるフィルムがシールされて密封された真空密着包装体50の一部のシール部を剥がして、包装体の密封状態を解くことを言う。
【0022】
図1では、真空密着包装体50の第一実施形態として、内容物15は、真空密着包装体50のほぼ中央に収納されており、表材1の折り込み部11が、天シール部3と内容物15の間に設けられているが、表材1の折り込み部11は、包装体本体の未シール部9の一部を含む位置に設けられていればよい。折り込み部11の中で、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bがシールされない箇所(以下、折り込み部の未シール部12という)は、折り込み部の天端部13の一部に設けられ、折り込み部の天端部13を下側にして折り込み部11を折り曲げた際に上側に弧を描く略山形状で設けられる。
【0023】
この折り込み部の未シール部12を起点として真空密着包装体50を開封することで、真空密着包装体50を開口する時に、密着している表材1と裏材2のフィルムの密着を解いて引き離しやすくし、内容物15が取り出しやすくなる。ここでは、「開口」とは、真空密着包装体50の開封後に、密着している表材1と裏材2のフィルムの密着を解くことを言う。よって、真空密着包装体50を開封する際のいわゆる開封開始部ともなる折り込み部の未シール部12は、少なくとも指で摘まめる程度の領域で設けることが好ましい。
【0024】
また、
図1のように、折り込み部の未シール部12を、折り込み部の天端部13の一部に設ける場合、折り込み部の未シール部12の形状は、指が摘まみやすい形状であればよく、上記の略山形状以外に、長方形、台形、三角形等が挙げられる。
【0025】
図2は、
図1の真空密着包装体50のA-A線の断面模式図である。
図2に示す通り、表材1は折り込み部11を有し、天フランジ部6にシールされ天シール部3を形成すると共に、地フランジ部8にシールされ地シール部5を形成し、脱気包装され内容物15が密
封されている。この内容物15の例として、
図2においては、側面視縦長楕円形状の固形の内容物15が収納されている。天シール部3、左右側シール4、4、および地シール部5に囲まれた領域には、包装体本体における未シール部9が形成されている。
【0026】
また、
図2に示す通り、真空密着包装体50には、真空密着包装体50の中の空気の脱気により、包装体本体における未シール部9の領域内で、表材1と裏材2が内容物15を挟む込む部分以外の部分に、表材1となるフィルムと裏材2となるフィルムの、それぞれの内容物側の面同士が密着する箇所10(以下、表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所という)を有する。
図1に示す真空密着包装体50の第一実施形態では、表材1の折り込み部11は、この表材1と裏材2が密着する箇所10に設けられている。
【0027】
図4は、
図1の真空密着包装体を開封・開口した状態の一例を示す説明図である。
図4(a)は、天シール部3と内容物15の間に設けられた折り込み部11の中の、折り込み部の未シール部12における、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bを左右のそれぞれの手の指で摘まみ、この2枚のフィルム1a、1bを上下にめくって開封している状態である。このように、折り込み部の未シール部12は、真空密着包装体50を開封する際のいわゆる開封開始部でもあり、折り込み部の未シール部12を起点に開封することで、容易に開封できる。
【0028】
図4(b)は、真空密着包装体50を開封して、折り込み部11を包装体本体の未シール部9まで剥がすと同時に、真空密着包装体50の中に空気が入った瞬間を示す。この時点では、まだ内容物15が見えていない状態である。
【0029】
開封した真空密着包装体50を開口する時は、
図4(c)のように、表材1を構成するフィルム1aの左右側シール部4、4のシールが剥がされて上向きにめくり上げられるとともに、表材1を構成するフィルム1bの左右側シール部4、4のシールが剥がされて下向きにめくり上げられる。
【0030】
そして、表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所10で、表材1と裏材2のフィルムの密着が解かれて引き離され、真空密着包装体50が開口し、内容物15を取り出しやすくなる。
【0031】
図5は、本発明の真空密着包装体の第二実施形態を示す平面図である。
図6は、
図5の真空密着包装体のB-B線の断面模式図である。
図1に示す真空密着包装体50の一実施形態では、折り込み部11が、天シール部3と内容物15の間に設けられているが、
図5では、内容物15の一部に接する位置に設けられている。折り込み部の未シール部12は、
図1と同じく、折り込み部の天端部13の一部に設けられ、この折り込み部の天端部13を下側にして折り込み部11を折り曲げた際に上側に弧を描く略山形状で設けられている。
【0032】
図7は、
図5の真空密着包装体を開封・開口した状態の一例を示す説明図である。
図7(a)は、真空密着包装体50を開封している状態を示す。
図7(b)は、真空密着包装体50の開封後に開口している状態を示す。折り込み部11を、内容物15の一部に接する位置に設けることで、折り込み部11を起点として真空密着包装体50を開封し、折り込み部11を構成する2枚のフィルム1a、1bを包装体本体の未シール部9まで剥がすと同時に、真空密着包装体50の中に空気が入る。そして、内容物15がむき出しになるとともに、表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所10で、表材1と裏材2の密着が解かれて引き離され、真空密着包装体50が開口し、内容物15を取り出しやすくなる。
図4で示す、表材1の折り込み部11が、天シール部3と内容物15の間に設けられている真空密着包装体50の開封・開口状態と異なり、開封してすぐに内容物15がむき出しに
なるため、より内容物15を取り出しやすくなる。
【0033】
なお、開封してすぐに内容物15をむき出しにさせるために、ノッチ部などを内容物の左右や上下の位置に形成することで、ノッチ部などからカットした際に、表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所10におけるフィルムの密着に影響されずに内容物をすぐにむき出しにさせることが可能となり得る。しかし、密封された内容物を通るようにカットすることで、内容物を傷めたり、柔らかい内容物の形状を損ねたりするおそれがある。本発明のように、単に内容物を通るようにカットするのではなく、折り込み部11から真空密着包装体50を開封することで、開封時に内容物を傷めることなく、開口して内容物15を容易に取り出すことが可能となる。
【0034】
図8は、本発明の真空密着包装体50の第三実施形態を示す平面図である。
図8に示す真空密着包装体50は、
図1に示す真空密着包装体50と、折り込み部11の形状と折り込み部の未シール部12の形状が異なり、それ以外の部分は同じである。この折り込み部11と折り込み部の未シール部12の形状の詳細を下記に記す。
【0035】
表1を構成する2枚のフィルム1a、1bのそれぞれの一つの角に、摘み部19を構成する、フィルムの延長部20が設けられている。これら2枚のフィルムを、それぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされ、その重ね合わされた部分の一部をシールして表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされる。折り込み部の未シール部12は、フィルムの延長部20を含め、折り込み部の左右側端部14と折り込み部の天端部13を沿うようにして、設けられている。
【0036】
図8に示す真空密着包装体50を開封する時は、折り込み部の未シール部12に設けられた摘み部19を構成する2枚のフィルム1a、1bを左右のそれぞれの手の指で摘まみ、この2枚のフィルム1a、1bを上下にめくって開封する。開口時は、表材1を構成するフィルム1aの左右側シール部4、4のシールが剥がされて上向きにめくり上げられるとともに、表材1を構成するフィルム1bの左右側シール部4、4のシールが剥がされて下向きにめくり上げられる。そして、表材1と裏材2が密着する箇所10で、表材1と裏材2の密着が解かれて引き離され、真空密着包装体50が開口し、内容物15を取り出しやすくなる。
【0037】
折り込み部の未シール部12に摘み部19が設けられることで、
図1に示す、折り込み部11に摘み部19が設けられておらず、折り込み部の未シール部12が折り込み部の天端部13に設けられている真空密着包装体50と比べて、いわゆる開封開始部とすべき箇所を確認しやすいとともに、折り込み部11を構成する2枚のフィルムをめくりやすいため、真空密着包装体50を、より開封しやすくなる。
【0038】
上記では、いわゆる開封開始部としての未シール部13を有する折り込み部11を、表材1に設けた実施形態を示したが、裏材2に前記折り込み部11を設けても良い。裏材2に開封開始部となる未シール部12を有する折り込み部11を設ける場合、本発明に関わる真空密着包装体50は、裏材2を構成する2枚のフィルム1a、1bのそれぞれの内容物側にイージーピール層33を有する。また、この場合、折り込み部11は、裏材2を構成する2枚のフィルム1a、1bをそれぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、前記イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされて形成されている。その重ね合わされた部分の少なくとも一部をシールして裏材2を構成する2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされる。なお、少なくとも折り込み部11がイージーピール層33を有していればよい。
【0039】
図3は、本発明の真空密着包装体50の表材1と裏材2のそれぞれの層構成の一例を示す説明図である。表材1に折り込み部11を設ける場合は、
図3に示す表材1の層構成とは、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bのそれぞれの層構成のことを指し、一方、裏材2に折り込み部11を設ける場合は、
図3に示す裏材2の層構成とは、裏材2を構成する2枚のフィルム1a、1bのそれぞれの層構成のことを指す。表材1と裏材2は、それぞれ積層フィルム16からなるものであり、この表材1と裏材2をそれぞれ構成する積層フィルム16の積層体は、外層側から、基材層31、中間層32、シーラント層33、の順で積層する。なお、折り込み部11はイージーピール層33を有し、表材1に折り込み部11を設ける場合、表材1のシーラント層33は、イージーピール層により構成され、裏材2に折り込み部11を設ける場合、裏材2のシーラント層33は、イージーピール層により構成される。
【0040】
表材1と裏材2のそれぞれの基材層31としては、少なくとも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EAA)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂からなるフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール共重合体(PETG)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂なども使用することができる。ポリアミド樹脂からなるナイロンフィルムなどを単層または二層以上の複層にして使用できる。
【0041】
また表材1と裏材2のそれぞれの中間層32としては、酸素バリア性、水蒸気バリアなどのガスバリア性を向上させるために、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)や塩化ビニリデンフィルム(PVDC)などを積層することもできる。なお、ガスバリア性の安定性からエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムが好ましい。
【0042】
耐ピンホール性などを向上させるために、ナイロンフィルムを積層することもできる。ナイロンフィルムとしては、例えば、6-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロンなどが使用できる。
【0043】
内容物15をボイル殺菌、レトルト殺菌するものには、例えば、ポリプロピレンフィルム/接着層/エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム/接着層/ポリプロピレンフィルムの五層共押出し積層フィルムが使用できる。ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマーなどのフィルムが好ましい。
【0044】
表材1と裏材2のそれぞれを構成する積層体の中に中間層32を設けることで、ガスバリア性、耐ピンホール性などを向上させることができる。また中間層32を積層する接着樹脂層としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-メタルメタアクリレート共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂、エチレン-アクリル酸共重合樹脂、エチレン-メタアクリル酸共重合樹脂、エチレン系アイオノマーなどのエチレン-共重合体系樹脂からなるフィルムなどが挙げられる。中でもポリプロピレン樹脂からなるフィルムが好ましい。
【0045】
表材1と裏材2のそれぞれのシーラント層33については、折り込み部11を設ける場合は、折り込み部11から開封する際にシールを剥がしやすくするため、イージーピール層で構成されている。イージーピール層は、例えば、種類の異なる次の樹脂A及び樹脂Bより構成することができる。すなわち、樹脂Aとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(L
LDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)及びこれらのアイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。特に樹脂Aとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を好適に用いることができる。一方、樹脂Bとしては、ポリプロピレン(PP)又はポリブチレン(PB)を用いることができる。樹脂BのPPは、ランダムコポリマー、ホモポリマー、ブロックコポリマー等のいずれも使用でき、中でもランダムコポリマーを好適に用いることができる。
【0046】
樹脂Aと樹脂Bの含有率は、シール性及び開封性の観点から、イージーピール層全体の質量に対して樹脂Aを40質量%以上、好ましくは50質量%以上とすることが望ましく、樹脂Aの上限を80質量%以下、好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下とすることが望ましい。一方、樹脂Bはイージーピール層全体の質量に対して20質量%以上、好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上とし、上限を60質量%以下、好ましくは50質量%以下とすることが望ましい。樹脂Aの含有率を40質量%以上(すなわち、樹脂Bの含有率を60質量%以下)とすることにより、良好なヒートシール性を維持することができる。一方、樹脂Aの含有率を80質量%以下(すなわち、樹脂Bの含有率を20質量%以上)とすることにより、適度なイージーピール強度が得られ、良好な開封性が得られる。
【0047】
上記の表材1と裏材2のそれぞれの基材層21、中間層22、イージーピール層としてのシーラント層23の各層の好ましい厚みは、基材層21が12μm、中間層22が15μm、イージーピール層としてのシーラント層23が50μmである。
【0048】
上記の表材1または裏材2を構成する2枚のフィルム1a、1bおよび表材1または裏材2となるフィルムの製造方法には特に制限はなく、基材層、中間層及びシーラント層を同時に、又は逐次的に積層して作製することができる。具体的には、Tダイ法、チューブラ法など既存の方法を用いて、ダイを備えた押出機を用いて共押出しすることにより、各層を備えたフィルムを一度に作製できる。また、各層を構成する樹脂を別々にシート化した後に、ウェットラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法やプレス法や押出ラミネート法などを用いて積層して逐次的に作製することもできる。
【0049】
以下、本発明の真空密着包装体50の具体的製造方法について一例を説明する。
【0050】
まず、表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bを、それぞれイージーピール層側を山折りにして折り曲げるとともに、イージーピール層を内側にして相対向させて重ね合わされ、その重ね合わされた部分の少なくとも一部をシールして表材1を構成する2枚のフィルム1a、1bが貼り合わされる。
【0051】
次に、裏材2のシーラント層23側に内容物15を置き、その上に上記表材1のシーラント層23側が内容物15に接するようにかぶせてシーラント層23同士が対向するようにする。そして、表材1と裏材2のフランジ部同士を重ね合わせ、まず天シール部3以外の、左右側シール部4、4、地シール部5を形成する。その後に行う真空包装の方法として、大きく分けて、チャンバー方式とノズル方式があるが、主流は後者である。ノズル方式は、袋の中にノズルを差し込み、スポンジ等でノズル以外の口部を押さえて、真空ポンプで袋内を脱気する方法である。一方、チャンバー方式は、真空にできるボックス(チャンバー)内に内容物を詰めた袋をセットし、ボックス内を真空にし、この状態で密封シールするものである。本発明の真空密着包装体50の製造において、例えば、このチャンバー方式を採用する場合は、上記の天部のみシールされていない状態で内容物15が収納された袋状のものをチャンバー内にセットし、チャンバー内を真空にし、この状態で天シール部を形成して内容物15を密封する。以上により、脱気包装された真空密着包装体50を作成する。
【0052】
なお、上記で説明した真空密着包装体50の実施形態では、折り込み部11が、表材1または裏材2を構成する上側のフィルム1aと下側のフィルム1bにより構成され、2枚のフィルムを上下にめくって開封する形式である。しかし、折り込み部11を平面視縦に設けて、表材1または裏材2を構成する左右のフィルムにより構成され、この左右のフィルムを左右にめくって開封する形式としてもよい。
【0053】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。下記の実施例1、2、および比較例1、2ともに、真空密着包装体50の縦横の寸法、密封された内容物15の内容や形状(ここでは正面視および側面視縦長楕円形状)は、同じである。
【0054】
(実施例1)
図1に示す真空密着包装体50を使用した。具体的には、表材1の折り込み部11が、天シール部3と内容物15の間に設けられており、折り込み部の未シール部12は、折り込み部11の天端部13の一部に設けられ、折り込み部11の天端部13を下側にして折り込み部11を折り曲げた際に上側に弧を描く略山形状で設けられている。
【0055】
実施例1における、包装体の表材1と裏材2のそれぞれを構成する積層フィルムの層構成は、表1に示すとおり、外層側から、酸化ケイ素蒸着ポリエステル(GLPET)12μm/ナイロン(NY)15μm/イージーピール50μmとなる。
【0056】
(実施例2)
図8に示す本発明の真空密着包装体50を使用した。具体的には、裏材1の折り込み部11が、天シール部3と内容物15の間に設けられており、折り込み部の未シール部12は、摘み部19を構成するフィルムの延長部20を含め、折り込み部の左右側端部14と天端部13を沿うようにして、設けられている。真空密着包装体50の開封時は、この摘み部19を構成する2枚のフィルム1a、1bを左右のそれぞれの手の指で摘まみ、この2枚のフィルム1a、1bを上下にめくって開封した。
【0057】
実施例2における、真空密着包装体50の表材1と裏材2のそれぞれを構成する積層フィルムの層構成は、表1に示すとおり、外層側から、蒸着ナイロン(GLNY)15μm/イージーピール50μmとなる。
【0058】
(比較例1)
図9は、従来の真空密着包装体50の第一実施形態を示す平面図である。
図9に示す通り、表材1と裏材2の間に内容物15が挟まれ、四方のフランジ部6、7、7、8が表材1と裏材2とによりシールされ、天シール部3、地シール部5および左右側シール部4、4が形成され、脱気包装された状態で密封されている。また左右側シール部4、4と、天シール部3および地シール部5とに囲まれた領域には、包装体本体の未シール部9が設けられている。また、天シール部3と内容物15の間の左右側シール部4、4には、表材1と裏材2に跨る、ノッチ部18が、相対称してそれぞれ形成されている。この左右のノッチ部18をつなぐ位置に、開封予定部17が設けられている。
【0059】
比較例1として、この
図9に示す従来の真空密着包装体50を使用した。
【0060】
比較例1における、真空密着包装体50包装体の表材1と裏材2のそれぞれを構成する積層フィルムの層構成は、表1に示すとおり、外層側から、酸化ケイ素蒸着ポリエステル
(GLPET)12μm/ナイロン(NY)15μm/無延伸ポリプロピレン(CPP)50μmとなる。
【0061】
(比較例2)
図10は、従来の真空密着包装体50の第二実施形態を示す平面図である。
図10に示す従来の真空密着包装体50は、
図8に示す真空密着包装体50のように折り込み部11はなく、切り取るためのノッチ部18がない代わりに、天シール部3と左側シール部4を結ぶ左上の位置に、手の指で摘まんで開封するための摘み部19が設けられている。
【0062】
具体的には、表材1と裏材2のそれぞれのフィルムの一つの角に、摘み部19を構成するフィルムの延長部20が設けられている。これら2枚のフィルムを、それぞれイージーピール層側を内側にして、相対向させて重ね合わされ、その重ね合わされた部分の四方(フィルムの延長部20を除く)をシールして表材1と裏材2が貼り合わされる。
【0063】
比較例2として、この
図10に示す従来の真空密着包装体50を使用した。上述の通り、左上に摘み部19が設けられ、真空密着包装体50の開封時は、この摘み部19を構成する2枚のフィルムを左右のそれぞれの手の指で摘まみ、この2枚のフィルムを上下にめくって開封した。
【0064】
比較例2における、真空密着包装体50包装体の表材1と裏材2のそれぞれを構成する積層フィルムの層構成は、実施例1と同じで、表1に示すとおり、外層側から、酸化ケイ素蒸着ポリエステル(GLPET)12μm/ナイロン(NY)15μm/イージーピール50μmとなる。
【0065】
(評価)
上記の実施例1、2および比較例1、2のそれぞれの真空密着包装体50を作成し、それぞれの真空密着包装体50の開口時の使用感について、対象10人におけるモニター評価をおこなった。評価内容は、真空密着包装体50の開口時の使用感である。この真空密着包装体50の開口時の使用感について、10人中10人が内容物を取り出しやすいと感じた場合に〇とし、10人中1人でも内容物を取り出しにくいと感じた場合は×として示す。その結果を表1に示した。
【0066】
【0067】
モニター評価の結果、実施例1と実施例2は、天シール部3と内容物15の間に設けられた折り込み部の未シール部12を起点として真空密着包装体50を開封し、折り込み部11を包装体本体の未シール部9まで剥がすとほぼ同時に、真空密着包装体50の中に空気が入った。そして、表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所10で、表材1と裏材2のフィルムの密着が解かれて引き離され、真空密着包装体50が開口し、内容物15がむき出しとなり、内容物15を取り出しやすかった。
【0068】
このように、実施例1と実施例2では、真空密着包装体50の中に空気を入れやすく、容易に開口して、内容物15を取り出すことができ、結果的に、10人中10人が内容物15を取り出しやすいと感じた。
【0069】
一方、比較例1は、開封予定部18と内容物15の間の表材1と裏材2のフィルムが密着する箇所10における、密着した表材1と裏材2を指で強くずらして真空密着包装体50の中に空気を入れたが、表材1と裏材2の密着を解放させるのに時間がかかり、結果的に、10人中少なくとも1人は内容物15を取り出しにくいと感じた。
【0070】
また、比較例2は、開封開始部となる摘み部19から内容物15までの距離が遠く、表材1と裏材2を、内容物15の位置まで剥がし、真空密着包装体50の中に空気を入れて表材1と裏材2の密着を解放させるのに時間がかかり、結果的に、10人中少なくとも1人は内容物15を取り出しにくいと感じた。
【符号の説明】
【0071】
1・・・表材
1a・・・表材を構成する上側フィルム
1b・・・表材を構成する下側フィルム
2・・・裏材
3・・・天シール部
4、4・・・側シール部
5・・・地シール部
6・・・天フランジ部
7、7・・・側フランジ部
8・・・地フランジ部
9・・・包装体本体の未シール部
10・・・裏材と表材をそれぞれ構成する2枚のフィルムの内容物側の面同士が密着する箇所(裏材と表材のフィルムが密着する箇所)
11・・・折り込み部
12・・・折り込み部の未シール部
13・・・折り込み部の天端部
14・・・折り込み部の側端部
15・・・内容物
16・・・積層フィルム
17・・・開封予定部
18・・・ノッチ部
19・・・摘み部
20・・・フィルムの延長部
31・・・基材層
32・・・中間層
33・・・シーラント層
50・・・真空密着包装体