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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ロボットシステムおよび可搬型教示装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20231212BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019101037
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020192658
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】王 磊
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-197856(JP,A)
【文献】特開2006-113858(JP,A)
【文献】特開2017-100207(JP,A)
【文献】特開2016-107379(JP,A)
【文献】特開2016-144852(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103303(WO,A1)
【文献】特開2013-206237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な移動型ロボットと、
情報を表示する表示部を有し、前記移動型ロボットを教示する可搬型教示装置と、
前記可搬型教示装置の現在位置を検出する第1検出部と、
前記移動型ロボットの現在位置を検出する第2検出部と、
を有し、
前記表示部は、
前記第1検出部の検出結果および前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記可搬型教示装置の現在位置および前記移動型ロボットの現在位置と、
あらかじめ登録された、位置および形状が既知であり、かつ前記位置が不変である障害物と、
を表示し、
前記可搬型教示装置は、移動中の前記移動型ロボットとの通信を確立したときに、前記移動型ロボットを停止させる信号を出力することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記可搬型教示装置は、前記移動型ロボットと前記可搬型教示装置との通信状態を前記表示部に表示させる請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記第2検出部は、
前記移動型ロボットに設けられ、前記移動型ロボットの外部環境に配置されたマーカーを検出するマーカー検出部と、
前記移動型ロボットに設けられている慣性センサーと、
前記マーカー検出部で前記マーカーを検出することにより、前記移動型ロボットの基準位置を求める機能と、前記慣性センサーにより前記基準位置から前記移動型ロボットの現在位置までの距離および方向を求める機能と、を含む演算部と、
を有する請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記可搬型教示装置は、前記可搬型教示装置の姿勢変化に基づいて、前記可搬型教示装置の現在位置および前記移動型ロボットの現在位置の表示態様を変更させる請求項1ないし3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記可搬型教示装置は、前記移動型ロボットの現在の作業内容を前記表示部に表示させる請求項1ないし4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記可搬型教示装置は、前記移動型ロボットの外部環境を前記表示部に表示させる請求項1ないし5のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記可搬型教示装置は、前記可搬型教示装置を使用する人を使用者とするとき、前記使用者以外の人の現在位置を前記表示部に表示させる請求項1ないし6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記移動型ロボットとして、第1ロボットと、第2ロボットと、を備え、
前記可搬型教示装置は、
前記第1ロボットの現在位置と、前記第2ロボットの現在位置と、を前記表示部に表示させ、
前記第1ロボットおよび前記第2ロボットと通信可能な通信部と、前記第1ロボットを選択する選択操作を受け付ける入力受付部と、を有し、前記選択操作に基づき、前記通信部は、前記第1ロボットとの通信を確立する請求項1ないし7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記通信部が前記第1ロボットとの通信を確立したとき、前記入力受付部は、前記第1ロボットの移動を停止させ、かつ前記第2ロボットの移動を停止させない第1停止モードと、前記第1ロボットの移動および前記第2ロボットの移動を停止させる第2停止モードのいずれかを選択する操作を受け付ける請求項8に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記可搬型教示装置は、前記入力受付部が前記選択操作を受け付けたことを示す情報を、前記第1ロボットの現在位置に関連付けて前記表示部に表示させる請求項8または9に記載のロボットシステム。
【請求項11】
ヘッドマウントディスプレイを備え、
前記可搬型教示装置は、拡張現実技術により、前記第1ロボットの実像に重ね合わせて前記ヘッドマウントディスプレイに前記情報を表示させる請求項10に記載のロボットシステム。
【請求項12】
前記入力受付部が前記選択操作を受け付けたとき、前記可搬型教示装置は、前記第1ロボットが予定している移動軌跡を読み出して前記表示部に表示させる請求項8ないし11のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項13】
移動可能な移動型ロボットを教示する可搬型教示装置であって、
情報を表示する表示部を有し、
前記可搬型教示装置の現在位置を検出する第1検出部の検出結果、および、前記移動型ロボットの現在位置を検出する第2検出部の検出結果、に基づいて、前記可搬型教示装置の現在位置および前記移動型ロボットの現在位置と、
あらかじめ登録された、位置および形状が既知であり、かつ前記位置が不変である障害物と、
を前記表示部に表示し、
移動中の前記移動型ロボットとの通信を確立したときに、前記移動型ロボットを停止させる信号を出力することを特徴とする可搬型教示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムおよび可搬型教示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通信により、1台の可搬型教示装置、いわゆるティーチペンダントと、複数台のロボットと、を接続し、ロボットを操作するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数台のロボットと、各ロボットを制御するコントローラーと、コントローラーと無線通信で接続されている教示装置と、を有するロボットシステムが開示されている。また、このロボットシステムは、教示装置に設けられた教示装置位置測定部を有している。この教示装置位置測定部は、室内GPS(Global Positioning System)のような位置同定システムを用いて工場内における教示装置の位置を求め、それを教示装置のディスプレイに表示する。一方、ディスプレイには、工場内におけるロボットの配置図を表示しておく。これにより、ディスプレイ上にロボットの配置図および教示装置の位置の双方を表示することができるので、例えば教示装置を用いて操作しようとするロボットを選択するとき、直感的に選択することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-197856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のロボットは、工場の床等に固定されているため、ロボット同士の位置関係が変わることはない。しかし、近年、自律移動ロボットのように、移動可能なロボットが開発されている。自律移動ロボットでは、ロボットの位置が刻々と変化するため、教示装置とロボットとの位置関係も絶えず変化する。その結果、教示装置を用いて操作しようとするロボットを選択するとき、選択すべきロボットとは異なるロボットを選択してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の適用例に係るロボットシステムは、
移動可能な移動型ロボットと、
情報を表示する表示部を有し、前記移動型ロボットを教示する可搬型教示装置と、
前記可搬型教示装置の現在位置を検出する第1検出部と、
前記移動型ロボットの現在位置を検出する第2検出部と、
前記第1検出部の検出結果および前記第2検出部の検出結果に基づいて、前記可搬型教示装置の現在位置および前記移動型ロボットの現在位置を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムを模式的に示す図である。
図2図1に示すロボットシステムの機能ブロック図である。
図3図2に示す第1検出部の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図4図2に示す第2検出部の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図5】ロボットシステムの各部の機能を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。
図6】第1実施形態に係るロボットシステムの作動内容を説明するため、可搬型教示装置と移動型ロボットの配置例を示す概念図である。
図7図6に示す配置例に対応した内容を表示している可搬型教示装置の表示部を示す図である。
図8】1つの移動型ロボットが移動した場合の軌跡の例を示す図である。
図9図8に示す移動型ロボットの軌跡を表示部においてラインとして表示した例を示す図である。
図10】移動型ロボットの外部環境を表示している可搬型教示装置の表示部を示す図である。
図11】複数の移動型ロボットの中から1つを選択した状態にある表示部を示す図である。
図12】移動型ロボットと可搬型教示装置との通信状態を表す表示部を示す図である。
図13】移動型ロボットが予定している移動軌跡を表示している表示部を示す図である。
図14】第2実施形態に係るロボットシステムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のロボットシステムおよび可搬型教示装置の好適な実施形態を添付図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係るロボットシステムを模式的に示す図である。図2は、図1に示すロボットシステムの機能ブロック図である。
【0010】
図1に示すロボットシステム1は、移動型ロボット20と、制御装置30と、可搬型教示装置40と、を備える。
【0011】
移動型ロボット20は、移動可能な台車50と、台車50に搭載されているロボットアーム60と、を備えている。また、制御装置30は、移動型ロボット20とは別体であってもよいが、本実施形態では台車50の内部に収納されている。これにより、制御装置30は、移動型ロボット20とともに移動可能になっている。
【0012】
また、ロボットシステム1は、1台の移動型ロボット20を備えていてもよいが、図1では、複数台の移動型ロボット20を備えている。
【0013】
可搬型教示装置40は、各移動型ロボット20を教示する装置であって、ユーザーが把持した状態でも移動可能な可搬性を有している。可搬型教示装置40と各移動型ロボット20との間は、各図では無線通信により接続されているが、有線通信により接続されていてもよい。
【0014】
1.1 可搬型教示装置
図2に示す可搬型教示装置40は、通信部41と、表示制御部42と、表示部43と、第1検出部44と、入力受付部45と、教示装置制御部46と、インジケーターランプ部47を備えている。
【0015】
通信部41は、可搬型教示装置40と各移動型ロボット20とを無線通信または有線通信により接続する送受信機を含む。
【0016】
表示制御部42は、第1検出部44による検出結果と、後述する移動型ロボット20が備える第2検出部70による検出結果と、に基づいて、可搬型教示装置40の現在位置および移動型ロボット20の現在位置を表示部43に表示させる。また、通信部41と特定の移動型ロボット20との通信が確立したときには、その移動型ロボット20の表示を他の移動型ロボット20とは異ならせることにより、視覚的に通信状態を表示させる。
【0017】
表示部43は、表示制御部42からの信号に基づき、可搬型教示装置40の現在位置および移動型ロボット20の現在位置を表示する。表示部43としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置等が挙げられる。表示部43による表示は、2次元表示であっても3次元表示であってもよい。3次元の場合には、奥行き方向の位置をユーザーに認識させやすいという利点がある。
【0018】
第1検出部44は、移動型ロボット20が位置する空間において、可搬型教示装置40の位置を検出する。位置の検出には、屋内で位置を検出する公知の測位技術が用いられる。一例としては、無線LAN(Local Area Network)による測位技術、RFID(Radio Frequency Identifier)による測位技術、位置の推定と地図の作成を同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)による測位技術、IMES(Indoor Messaging System)による測位技術、歩行者自律航法による測位技術、ビーコン測位技術、画像認識による測位技術、超音波による測位技術等が挙げられる。また、これらの測位技術の2種類以上を組み合わせて高精度化を図るようにしてもよい。さらに、可視光、地磁気のような測距または方向検出の技術を用いて、測位技術の高精度化を図るようにしてもよい。
【0019】
なお、第1検出部44は、可搬型教示装置40に設けられていてもよいが、可搬型教示装置40の位置を検出可能であれば、可搬型教示装置40の外部に設けられていてもよい。
【0020】
第1検出部44は、上述したように、様々な方式の測位技術を採用可能であるが、本実施形態では、一例として、外部環境に対する可搬型教示装置40の位置を計測する技術と、外部環境に存在するマーカーを検出する技術と、を併用した測位技術を採用している。
【0021】
図3は、図2に示す第1検出部44の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図3に示すように、本実施形態では、既知の位置にマーカーM1が設けられている。マーカーM1は、第1検出部44を備える可搬型教示装置40に対して外部環境に設けられている。また、図3に示す第1検出部44は、可搬型教示装置40の運動状態を計測する慣性センサー441、マーカーM1を検出可能なマーカー検出部442、および、慣性センサー441の検出結果およびマーカー検出部442の検出結果に基づいて、可搬型教示装置40の現在位置を算出する演算部443と、後述する移動型ロボット20の現在位置を位置送信部74から受信する位置受信部444と、を備えている。位置受信部444は、通信部41と統合されていてもよい。
【0022】
慣性センサー71は、例えば加速度センサーと角速度センサーとを組み合わせたセンサーである。慣性センサー71の検出結果、すなわち相対運動情報を積分することにより、移動方向と移動量を推定することができる。このような推定技術をデッドレコニングともいう。デッドレコニングにより、移動方向と移動量を推定することができれば、現在位置を推定することができるが、一方、誤差が累積してしまうことが問題である。
【0023】
そこで、第1検出部44は、マーカー検出部442を備えている。マーカー検出部442は、デッドレコニングによる誤差の累積が許容範囲を超える前に、マーカーM1を検出する。マーカーM1の位置は既知であるので、マーカーM1を検出することによって、外部環境に対する可搬型教示装置40の位置を校正することができる。つまり、マーカー検出部442の検出結果により、可搬型教示装置40の基準位置を求め、デッドレコニングの誤差を解消する。
【0024】
また、マーカー検出部72によるマーカーM1の検出方法は、例えば、カメラを用いた視覚による検出が挙げられる。カメラで撮像した画像に基づき、可搬型教示装置40からマーカーM1までの距離と方向を算出することができる。なお、視覚による検出は、例えば超音波による方法、レーザーによる測距方法で代替することができる。
【0025】
可搬型教示装置40の第1検出部44が有する演算部443が算出した可搬型教示装置40の現在位置は、後述するように、表示制御部42により表示部43に表示される際に用いられる。
【0026】
入力受付部45は、表示部43に表示された内容に基づいて、ユーザーによる選択操作等の入力操作を受け付ける。入力受付部45が受け付けた入力操作の信号は、教示装置制御部46に出力される。入力受付部45としては、例えば、タッチパネル、スライドパッド、キーパッド、キーボード等が挙げられる。このうち、タッチパネルについては、表示部43の表示面に重ねて設けられるのが好ましい。
【0027】
教示装置制御部46は、入力受付部45が受け付けた入力操作に基づいて、1つの移動型ロボット20を選択し、通信部41に、その移動型ロボット20との通信を確立させる。そして、通信を確立した移動型ロボット20に、種々の操作信号を出力する。これにより、移動型ロボット20に教示作業を行う。また、通信部41における通信状況に応じて、インジケーターランプ部47の点灯パターンを変更させる。
【0028】
インジケーターランプ部47は、例えばLED(Light Emitting Diode)ランプ等で構成される。インジケーターランプ部47では、例えば通信部41と移動型ロボット20との通信状態を点灯パターンによって表す。これにより、より直感的に通信状態をユーザーに認識させることができる。また、LEDランプには、複数色の光を独立して点灯可能なランプを用いるようにしてもよい。これにより、点灯色に応じて通信状態を表すこともできる。
可搬型教示装置40には、この他に任意の機器等が設けられていてもよい。
【0029】
1.2 移動型ロボット
図2に示す移動型ロボット20は、台車50と、ロボットアーム60と、通信部22と、第2検出部70と、を備えている。
【0030】
図1に示すロボットアーム60は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットアームである。このロボットアーム60は、アーム61、アーム62、アーム63、アーム64、アーム65、およびアーム66を有する。これらアーム61~66は、基端側から先端側に向かってこの順に連結されている。各アーム61~66は、隣り合うアームまたは台車50に対して回動可能になっている。
【0031】
ロボットアーム60の先端には、図1に示すように、作業対象物を把持する把持ハンド67が接続されている。なお、把持ハンド67は、交換可能であり、把持ハンド67に代えて、吸着ハンド、磁気ハンド、ねじ止めツール、係合ツール等が用いられてもよい。
【0032】
移動型ロボット20は、一方のアームを他方のアームまたは台車50に対して回動させる図示しないモーターと、図示しない減速機と、を備える駆動部を有する。また、移動型ロボット20は、モーターまたは減速機の回転軸の回転角度を検出する図示しない位置センサーを有する。駆動部および位置センサーは、例えば台車50および各アーム61~66に設けられており、各アームを互いに独立して駆動可能にしている。なお、各駆動部および各位置センサーは、それぞれ制御装置30と通信可能に接続されている。
【0033】
なお、ロボットアーム60のアームの数は、1~5本または7本以上であってもよい。また、ロボットアーム60は、スカラロボットであってもよく、2つまたはそれ以上のロボットアーム60を備える双腕ロボットであってもよい。
【0034】
台車50は、目的とする位置に移動可能な台車であれば、特に限定されないが、例えばAMR(Autonomous Mobile Robot)、AGV(Automated Guided Vehicles)等が挙げられる。制御装置30において作業プログラムを実行することにより、制御装置30から台車50に対して駆動制御信号が出力される。この駆動制御信号に基づいて、台車50の駆動が制御され、台車50が目的とする位置に移動する。
【0035】
この移動は、磁気テープや磁気棒等のガイドに沿って、目的地まで誘導される自動誘導であってもよいが、本実施形態に係る移動型ロボット20は、周囲の状況を読み取って、目的地まで自律的に移動する自律移動可能なものである。すなわち、本実施形態に係る移動型ロボット20は、自律移動型ロボットである。このような自律移動型ロボットは、誘導するためのガイドを必要とせずに目的地まで移動することができる。このため、作業内容に応じて、目的地を容易に変更することができる。また、設置が容易であり、設置コストも比較的安価である。
【0036】
本実施形態に係る移動型ロボット20の自律移動は、台車50が備える公知の自律移動システムにより実現される。なお、台車50が備える自律移動システムは、制御装置30と統合されていてもよい。また、台車50は、動力で移動するものが好ましいが、手動で動かされるものであってもよい。
【0037】
通信部22は、移動型ロボット20と可搬型教示装置40とを無線通信により接続する送受信機を含む。移動型ロボット20と可搬型教示装置40との無線通信の通信方式は、インフラストラクチャーモードであっても、アドホックモードであってもよい。
【0038】
なお、移動型ロボット20と可搬型教示装置40とは有線通信で接続されていてもよいが、本実施形態では無線通信で接続されている。これにより、配線に伴う移動の制約がなくなるので、移動型ロボット20の機動性が高まり、作業効率を高めることができる。同様に、可搬型教示装置40の可搬性もより高まる。
【0039】
第2検出部70は、移動型ロボット20が位置する空間において、移動型ロボット20の位置を検出する。位置の検出には、第1検出部44と同様、屋内で位置を検出する公知の測位技術が用いられる。一例としては、無線LANによる測位技術、RFIDによる測位技術、IMESによる測位技術、SLAMによる測位技術、歩行者自律航法による測位技術、ビーコン測位技術、画像認識による測位技術、超音波による測位技術等が挙げられる。また、これらの測位技術の2種類以上を組み合わせて高精度化を図るようにしてもよい。さらに、可視光、地磁気のような測距、方向検出の技術を用いて、測位技術の高精度化を図るようにしてもよい。
【0040】
第2検出部70は、上述したように、様々な方式の測位技術を採用可能であるが、本実施形態では、一例として、外部環境に対する移動型ロボット20の位置姿勢を計測する技術と、外部環境に存在するマーカーを検出する技術と、を併用した測位技術を採用している。
【0041】
図4は、図2に示す第2検出部70の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態では、既知の位置にマーカーM2が設けられている。マーカーM2は、第2検出部70を備える移動型ロボット20に対して外部環境に設けられている。また、図4に示す第2検出部70は、移動型ロボット20の運動状態を計測する慣性センサー71、マーカーM2を検出可能なマーカー検出部72、および、慣性センサー71の検出結果およびマーカー検出部72の検出結果に基づいて、移動型ロボット20の現在位置を算出する演算部73と、算出した移動型ロボット20の現在位置を、可搬型教示装置40の位置受信部444へ送信する位置送信部74と、を備えている。位置送信部74から位置受信部444への通信は、公知の無線通信技術を用いることが可能である。
【0042】
慣性センサー71は、例えば加速度センサーと角速度センサーとを組み合わせたセンサーである。慣性センサー71の検出結果、すなわち相対運動情報を積分することにより、移動方向と移動量を推定することができる。このような推定技術をデッドレコニングともいう。デッドレコニングにより、移動方向と移動量を推定することができれば、現在位置を推定することができるが、一方、誤差が累積してしまうことが問題である。
【0043】
そこで、第2検出部70は、マーカー検出部72を備えている。マーカー検出部72は、デッドレコニングによる誤差の累積が許容範囲を超える前に、マーカーM2を検出する。マーカーM2の位置は既知であるので、マーカーM2を検出することによって、外部環境に対する移動型ロボット20の位置を校正することができる。つまり、マーカー検出部72の検出結果により、移動型ロボット20の基準位置を求め、デッドレコニングの誤差を解消する。
【0044】
なお、慣性センサー71は、角速度センサーと、台車50の車輪の回転量を検出するセンサーと、を組み合わせたセンサーで代替することができる。
【0045】
また、マーカー検出部72によるマーカーM2の検出方法は、例えば、カメラを用いた視覚による検出が挙げられる。カメラで撮像した画像に基づき、移動型ロボット20からマーカーM2までの距離と方向を算出することができる。なお、視覚による検出は、例えば超音波による方法、レーザーによる測距方法で代替することができる。
【0046】
以上のように、第2検出部70は、移動型ロボット20に設けられ、移動型ロボット20の外部環境に配置されたマーカーM2を検出するマーカー検出部72と、移動型ロボット20に設けられている慣性センサー71と、マーカー検出部72でマーカーM2を検出することにより、移動型ロボット20の基準位置を求める機能と、慣性センサー71により基準位置から移動型ロボット20の現在位置までの距離および方向を求める機能と、を含む演算部73と、を有している。
【0047】
このような第2検出部70によれば、比較的簡単な構成でも、移動型ロボット20の現在位置を測位することができる。このため、第2検出部70の低コスト化および小型化を図ることができる。
なお、演算部73は、後述する制御装置30と統合されていてもよい。
【0048】
また、位置送信部74は、通信部22と統合されていてもよく、制御装置30と統合されていてもよい。
【0049】
また、第2検出部70は、移動型ロボット20の外部に設けられていてもよい。その場合、外部からの計測によって移動型ロボット20の個体識別の取得と測位とが可能になっていればよい。
【0050】
また、マーカーM2は、マーカーM1と同一のマーカーでもよく、異なるマーカーでもよく、一つに限らず、複数配置されていてもよい。
【0051】
また、各移動型ロボット20の有する位置送信部74から直接、可搬型教示装置40の有する位置受信部444へ各移動型ロボット20の現在位置を送信する例を示したが、これに限らない。例えば、各移動型ロボット20および可搬型教示装置40の外部環境に設けられたサーバーのような中継装置へ各移動型ロボット20の現在位置が送信され、中継装置から可搬型教示装置40へ各移動型ロボット20の現在位置が送信される構成でもよい。この場合、中継装置は、通信部を有し、通信部は、位置受信部444および位置送信部74と通信可能である。
【0052】
さらに、移動型ロボット20同士は、互いの位置をカメラ等の撮像センサーで確認し、確認結果を移動型ロボット20の測位結果に反映させるようになっていてもよい。
【0053】
移動型ロボット20には、この他に任意の機器等が設けられていてもよい。具体的には、作業対象物や移動型ロボット20またはその周辺を撮像する撮像部、ロボットアーム60に加わる外力を検出する力センサーのような各種センサー等が挙げられる。
【0054】
また、ロボットシステム1が複数の移動型ロボット20を備える場合、各移動型ロボット20の構成は、上記と同様である。なお、各移動型ロボット20は、固有のID(識別記号)を有している。可搬型教示装置40と各移動型ロボット20との通信においては、このIDを付与したデータを送受信することにより、特定の移動型ロボット20と可搬型教示装置40との通信を確立することができる。
【0055】
1.3 制御装置
制御装置30は、ロボット制御部31、記憶部32および経路取得部33を備えている。
【0056】
ロボット制御部31は、記憶部32に保存されているプログラムを読み出して実行することにより、ロボットアーム60の駆動を制御して作業を行わせる。なお、プログラムの選択は、可搬型教示装置40からの操作信号に基づいて行われる。
【0057】
また、経路取得部33は、台車50が予定している移動軌跡を取得する機能を有している。移動軌跡は、移動型ロボット20の現在位置と、記憶部32に保存されているプログラムと、に基づいて決定される。
【0058】
1.4 ロボットシステムのハードウェア構成
前述したロボットシステム1の各部の機能は、例えば図5に示すハードウェア構成によって実現可能である。
【0059】
図5は、ロボットシステム1の各部の機能を実現するハードウェア構成の一例を示す図である。
【0060】
図5に示す可搬型教示装置40は、互いに通信可能に接続されたプロセッサー、メモリー、外部インターフェース、入力装置、および出力装置を備えている。
【0061】
このうち、図5に示すプロセッサーとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)等が挙げられる。
【0062】
また、図5に示すメモリーとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリーや、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリー等が挙げられる。なお、メモリーは、非着脱式に限らず、着脱式の外部記憶装置であってもよい。
【0063】
さらに、図5に示す外部インターフェースとしては、各種の通信用コネクターが挙げられる。一例として、USB(Universal Serial Bus)コネクター、RS-232Cコネクター、有線LAN(Local Area Network)等が挙げられる。また、外部インターフェースは、例えば、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、特定小電力無線通信等の各種無線通信規格による無線通信が可能な送受信機を含む。
【0064】
また、図5に示す入力装置としては、例えば、キーボード、タッチパネル等が挙げられ、出力装置としては、例えば、モニター等が挙げられる。
【0065】
なお、可搬型教示装置40は、前述した構成要素に加えて、さらに他のハードウェア構成要素を備えていてもよい。例えば、第1検出部44の構成によっては、無線アンテナ、RFIDタグ、ビーコン受信機、超音波送受波器、フォトダイオード、レーザーダイオード、カメラ、地磁気センサー等を備えていてもよい。
【0066】
図5に示す制御装置30は、互いに通信可能に接続されたプロセッサー、メモリーおよび外部インターフェースを備えている。
このうち、図5に示すプロセッサーとしては、例えばCPU等が挙げられる。
【0067】
また、図5に示すメモリーとしては、例えばRAM等の揮発性メモリーや、ROM等の不揮発性メモリー等が挙げられる。なお、メモリーは、非着脱式に限らず、着脱式の外部記憶装置であってもよい。
【0068】
さらに、図5に示す外部インターフェースとしては、各種の通信用コネクターが挙げられる。一例として、USB(Universal Serial Bus)コネクター、RS-232Cコネクター等が挙げられる。
【0069】
また、図2に示す通信部22は、前述した各種無線通信規格による無線通信を可能とする送受信機を含む。なお、無線通信にアクセスポイントを介した場合には、アクセスポイントと通信部22との間が有線で通信可能に接続されていてもよい。
【0070】
また、制御装置30は、前述した構成要素に加えて、さらに他のハードウェア構成要素を備えていてもよい。
【0071】
例えば、可搬型教示装置40は、一次電池または二次電池を備えていてもよい。これにより、可搬性がより高められる。なお、電池の残量が低下した場合には、表示部43またはインジケーターランプ部47を用いて報知するようにしてもよい。この場合、一時的に、可搬型教示装置40と移動型ロボット20とを通信線および電源線で接続するようにすればよい。また、可搬型教示装置40と移動型ロボット20とを通信線で接続し、可搬型教示装置40と別の電源とを電源線で接続するようにしてもよい。
【0072】
1.5 可搬型教示装置の作動内容
次に、可搬型教示装置40の作動内容について説明する。
【0073】
1.5.1 現在位置の表示
図6は、第1実施形態に係るロボットシステム1の作動内容を説明するため、可搬型教示装置40と移動型ロボット20の配置例を示す概念図である。図7は、図6に示す配置例に対応した内容を表示している可搬型教示装置40の表示部43を示す図である。
【0074】
本実施形態に係るロボットシステム1は、前述したように、移動可能な移動型ロボット20と、情報を表示する表示部43を有し、移動型ロボット20を教示する可搬型教示装置40と、可搬型教示装置40の現在位置を検出する第1検出部44と、移動型ロボット20の現在位置を検出する第2検出部70と、第1検出部44の検出結果、および、第2検出部70の検出結果、に基づいて、可搬型教示装置40の現在位置および移動型ロボット20の現在位置を、表示部43に表示させる表示制御部42と、を有している。
【0075】
このようなロボットシステム1によれば、例えば、図6に示すように、6台の移動型ロボット20が設置領域9に設置されているとき、その6台の移動型ロボット20の現在位置を、可搬型教示装置40の表示部43に表示することができる。また、この設置領域9に、可搬型教示装置40が位置していれば、その可搬型教示装置40の現在位置を、同じく表示部43に表示することができる。つまり、可搬型教示装置40と移動型ロボット20とが配置されている設置領域9を俯瞰することで得られる配置図に相当する情報を、表示部43に表示することができる。これにより、ユーザーUは、教示作業を行うべき移動型ロボット20を誤認しにくくなり、その移動型ロボット20に対して、より確実に教示作業を行うことができる。
【0076】
また、本実施形態に係る可搬型教示装置40は、移動可能な移動型ロボット20を教示する装置であって、情報を表示する表示部43と、可搬型教示装置40の現在位置を検出する第1検出部44の検出結果、および、移動型ロボット20の現在位置を検出する第2検出部70の検出結果、に基づいて、可搬型教示装置40の現在位置および移動型ロボット20の現在位置を表示部43に表示させる表示制御部42と、を有している。
【0077】
このような可搬型教示装置40によれば、ユーザーUは、教示作業を行うべき移動型ロボット20に対して、より確実に教示作業を行うことができる。
【0078】
以下、より詳細に説明する。
図6では、可搬型教示装置40を持ったユーザーUを取り囲むように6台の移動型ロボット20が位置している。このとき、可搬型教示装置40の表示部43には、図6に示す移動型ロボット20の現在位置およびユーザーUの現在位置が表示されるので、図7に示すように、可搬型教示装置40の向きに応じた配置で、6台の移動型ロボット20を示すアイコン20Aと可搬型教示装置40を示すアイコン40Aとが表示されている。
【0079】
ここで、図6に示す6台の移動型ロボット20は、識別記号としてNo.01~06を有しているものとする。そして、識別記号No.01~06に対応する移動型ロボット20を、移動型ロボット201~206とする。また、可搬型教示装置40は、これらの移動型ロボット201~206から、識別記号No.01~06を付した位置情報を受信することによって、位置情報と識別番号とを対応付けることができる。ここでは、移動型ロボット201~206に対応するアイコン20Aを、アイコン201A~206Aとする。
【0080】
図7に示すアイコン201A~206Aの互いの位置関係は、図6に示す移動型ロボット201~206の互いの位置関係に対応している。また、図7において可搬型教示装置40の表示部43における上方向UDは、図6においてユーザーUが持つ可搬型教示装置40の背面が向く方向BDと対応している。換言すれば、方向BDが常に表示部43の上方向UDとなるように、ユーザーUの姿勢に応じて表示部43の表示内容が回転するようになっている。これにより、可搬型教示装置40を把持しているユーザーUの視線方向と、表示部43の上方向UDと、が一致することになる。その結果、表示部43の表示内容は、ユーザーUの見え方とほぼ一致したものとなり、ユーザーUにとっては、直感的に移動型ロボット201~206とアイコン201A~206Aとを容易に対応付けることができる。
【0081】
以上のような作用により、ユーザーUが例えば6台の移動型ロボット201~206から1台を選択するべく、アイコン201A~206Aから1つを選択する操作を行う際、選択操作を誤る確率が低くなる。その結果、確実な教示作業を行うことができる。
【0082】
なお、表示部43には、アイコン201A~206Aに加えて、図7に示すように、識別記号No.01~06を表示するようにしてもよい。これにより、アイコン201A~206Aの位置関係だけでなく、識別記号No.01~06を視認することによっても、各移動型ロボット201~206を識別することができる。
【0083】
また、表示部43におけるアイコン201A~206Aの位置およびアイコン40Aの位置は、移動型ロボット201~206の現在位置および可搬型教示装置40の現在位置に応じて逐次更新される。このため、移動型ロボット201~206が移動したり、可搬型教示装置40を持ったユーザーUが移動したりしたときには、それに応じて、表示部43の表示内容に反映される。
【0084】
図8は、1つの移動型ロボット201が移動した場合の軌跡T1の例を示す図である。図9は、図8に示す移動型ロボット201の軌跡T1を表示部43においてラインL1として表示した例を示す図である。
【0085】
図8に示すように、移動型ロボット201が軌跡T1で示す経路で移動したとき、図9には、移動先の移動型ロボット201の現在位置に対応したアイコン201Aと、軌跡T1に対応するラインL1と、が表示されている。これにより、ユーザーUは、移動型ロボット201が所定の経路で移動したか否かを直感的に確認することができる。また、図8に示すように、可搬型教示装置40が軌跡T2で示す経路で移動したとき、図9には、移動先の可搬型教示装置40の現在位置に対応したアイコン40Aと、軌跡T2に対応するラインL2と、が表示されている。これにより、ユーザーUは、可搬型教示装置40を把持した自身が、どのような経路で移動したかを直感的に確認することができる。
【0086】
このように、可搬型教示装置40の表示制御部42は、可搬型教示装置40の姿勢変化に基づいて、可搬型教示装置40の現在位置を示すアイコン40Aの表示態様および移動型ロボット20の現在位置を示すアイコン201Aの表示態様を変更させる。これにより、ユーザーUは、現実空間と表示内容とを一致させやすくなり、より直感的に操作することが可能になる。その結果、選択すべき移動型ロボット20とは異なるものを選択操作してしまうおそれが少なくなる。
【0087】
また、可搬型教示装置40の表示制御部42は、移動型ロボット20の外部環境を表示部43に表示させる機能を有していてもよい。
【0088】
図10は、移動型ロボット20の外部環境を表示している可搬型教示装置40の表示部43を示す図である。
【0089】
図10に示す表示部43には、移動型ロボット20の周辺に存在する障害物の例として、建物の柱91が表示されている。柱91の位置および形状は既知であり、かつ、移動型ロボット20が移動してもその位置は不変である。このため、柱91のような外部環境の情報を表示制御部42にあらかじめ登録しておくことにより、表示部43に表示させることができる。
【0090】
このようにして外部環境を表示することにより、ユーザーUは、現実空間における空間認識と、表示部43における空間認識と、をより精度よく一致させることができる。すなわち、ユーザーUは、絶えず移動する可能性がある移動型ロボット20のみでなく、移動しない外部環境との位置関係も含めて、移動型ロボット201~206の中の1つを直感的に特定することができる。このため、選択すべき移動型ロボット20とは異なるものを選択操作してしまうおそれがより少なくなる。
【0091】
さらに、可搬型教示装置40の表示制御部42は、可搬型教示装置40を使用する人を、使用者であるユーザーUとするとき、図10に示すように、ユーザーU以外の人Hの現在位置を表示部43に表示させる機能を有していてもよい。このようなユーザーU以外の人Hも表示させることにより、ユーザーUは、現実空間における空間認識と、表示部43における空間認識と、をより精度よく一致させることができる。このため、選択すべき移動型ロボット20とは異なるものを選択操作してしまうおそれがより少なくなる。
【0092】
なお、ユーザーU以外の人Hの現在位置については、例えば、図示しないカメラで外部環境を撮像し、画像認識処理によって検出することができる。また、人Hが、無線LANによる無線通信可能なデバイスを携帯している場合には、例えば前述したような無線LANによる測位技術を用いて、人Hの現在位置を求めることができる。
【0093】
なお、表示制御部42は、可搬型教示装置40以外の場所、例えば移動型ロボット20に設けられていてもよく、その他の場所に独立して設けられていてもよい。
【0094】
一方、表示部43における表示の応答性や、ロボットシステム1の構成の簡素化等を考慮すると、表示制御部42は、可搬型教示装置40に設けられているのが好ましい。これにより、表示の応答性に優れるとともに、ロボットシステム1の構成の簡素化を図ることが可能な可搬型教示装置40を実現することができる。
【0095】
また、前述した各種アイコンは、任意の画像や文字等であってもよい。つまり、現在位置等を表示させる表示内容は、特に限定されない。例えば、図7に示すように、可搬型教示装置40を示すTPという文字を併記するようにしてもよい。
【0096】
1.5.2 選択操作の表示
図11は、複数の移動型ロボット20の中から1つを選択した状態にある表示部43を示す図である。
【0097】
図11に示す表示部43には、ユーザーUが、アイコン206Aを選択する選択操作を入力受付部45に対して行った後の状態が表示されている。この選択操作により、識別記号No.06の移動型ロボット206が選択されたことになり、移動型ロボット206と可搬型教示装置40との間で無線通信が確立する。
【0098】
具体的には、本実施形態に係るロボットシステム1は、第1ロボットとしての移動型ロボット206と、第2ロボットとしての移動型ロボット201~205と、を備えている。このとき、表示制御部42は、移動型ロボット206の現在位置と、移動型ロボット201~205の現在位置と、を表示部43に表示させる。そして、可搬型教示装置40は、前述したように、移動型ロボット206および移動型ロボット205と通信可能な通信部41と、移動型ロボット206を選択する選択操作を受け付ける入力受付部45と、を有し、選択操作に基づき、通信部41は、移動型ロボット206との通信を確立する。
【0099】
これにより、ユーザーUは、現実空間における移動型ロボット206の現在位置と、移動型ロボット205の現在位置と、の位置関係に基づいて、直感的に、移動型ロボット206を選択する選択操作を行うことができる。このため、選択すべき移動型ロボット206とは異なるものを選択操作してしまうおそれがより少なくなる。その結果、選択すべき移動型ロボット206との通信をより確実に確立することができる。
【0100】
なお、選択操作に伴って、表示制御部42は、入力受付部45が選択操作を受け付けたことを示す情報を、移動型ロボット206の現在位置に関連付けて表示部43に表示させる機能を有していてもよい。具体的には、図11に示すように、アイコン206Aの色を、他のアイコン201A~205Aとは異ならせる。これにより、ユーザーUは、その後に教示作業を行おうとする移動型ロボット206が確実に選択されているか否かを、視覚的に確認することができる。その結果、選択すべき移動型ロボット206とは異なるものが選択された場合に、それを見逃してしまうおそれが小さくなる。
【0101】
また、通信の確立に伴って、表示制御部42は、移動型ロボット206と可搬型教示装置40との通信状態を表示部43に表示させる機能を有していてもよい。具体的には、図11に示すように、アイコン206Aの色を、他のアイコン201A~205Aとは異ならせる。これにより、ユーザーUは、移動型ロボット206との通信が確立したことを視覚的に把握することができる。その結果、選択すべき移動型ロボット206とは異なるものを選択操作してしまうおそれがより少なくなる。
【0102】
なお、アイコン206Aは、色以外の要素、例えば大きさ、色の濃さ、動き、形、模様等が変わるようになっていてもよい。また、通信の確立に伴うアイコン206Aの色やその他の要素は、選択操作に伴うアイコン206Aの色や要素とは異なっているのが好ましい。これにより、アイコン206Aの色または要素は、選択操作および通信の確立という状況変化に応じて、順次変化することになる。その結果、現在の状況を区別しつつ視覚的に確認することができる。
【0103】
これに加え、通信が確立した場合には、可搬型教示装置40のインジケーターランプ部47の点灯パターンを変化させるようにしてもよい。例えば、いずれの移動型ロボット20とも通信が確立していない場合には、インジケーターランプ部47を点灯させないようにすればよい。一方、例えば移動型ロボット206との通信が確立した場合には、インジケーターランプ部47を点灯させるようにする。これにより、インジケーターランプ部47の点灯を視認することによっても、通信の確立を視覚的に把握することができる。
【0104】
また、インジケーターランプ部47は、各移動型ロボット20にも設けられていてもよい。その場合、例えば移動型ロボット206との通信が確立した際には、可搬型教示装置40のインジケーターランプ部47を点灯させるとともに、移動型ロボット206に設けられたインジケーターランプ部も点灯させるようにすればよい。これにより、移動型ロボット206自体を目視することによっても、通信が確立していることを把握することができる。なお、その場合には、お互いの点灯色を揃えるようにするのが好ましい。
【0105】
また、移動型ロボット206との通信が確立した場合、表示制御部42は、移動型ロボット206の現在の作業内容49を表示部43に表示させる機能を有していてもよい。具体的には、図11に示すように、アイコン206Aに関連付けるように、移動型ロボット206が現在行っている作業内容49を表示する。これにより、ユーザーUは、選択した移動型ロボット206の作業内容49を把握することができる。また、作業内容49以外の種々の情報を表示するようにしてもよい。これらの情報を表示することにより、ユーザーUがその後に行う教示作業に際し、これらの情報を反映させることができる。また、情報の内容に基づくことで、選択すべき移動型ロボット20とは異なるものに対して教示作業を行ってしまうおそれが少なくなる。なお、作業内容49以外の情報とは、移動型ロボット206に関するあらゆる情報が挙げられるが、例えば、移動型ロボット20の機種名等が挙げられる。
【0106】
なお、通信が確立した後、何らかの原因で通信状態が悪化する場合がある。無線通信の場合は、通信距離や障害物の有無等で、電波強度が低下すると、通信状態が悪化する。また、有線通信の場合は、通信線に損傷等が生じると、通信状態が悪化する。このような状態が発生した場合、ユーザーUに速やかに知らせることが求められる。これにより、通信を確立している移動型ロボット206に対して、即座に対処することができ、安全性等を高めることができる。
【0107】
図12は、移動型ロボット206と可搬型教示装置40との通信状態を表す表示部43を示す図である。
【0108】
図12には、図11に示すように、移動型ロボット206と可搬型教示装置40との通信が確立した後、何らかの原因で通信状態が悪化した状態が表示されている。具体的には、アイコン206Aを点滅させる。これにより、ユーザーUは、移動型ロボット206との通信状態が悪化していることを視覚的に把握することができる。なお、表示方法は、アイコン206Aの点滅以外に、例えばアイコン206Aの大きさ、色の濃さ、動き、形、模様等の変化であってもよい。
【0109】
これに加え、通信状態が悪化した場合には、可搬型教示装置40のインジケーターランプ部47の点灯パターンを変化させるようにしてもよい。例えば、例えば移動型ロボット206の通信状態が悪化した場合には、インジケーターランプ部47を点滅させるようにする。これにより、インジケーターランプ部47の点滅を視認することによっても、通信状態の悪化を視覚的に把握することができる。
【0110】
また、インジケーターランプ部47が、各移動型ロボット20にも設けられている場合、例えば移動型ロボット206との通信状態が悪化した際には、可搬型教示装置40のインジケーターランプ部47を点滅させるとともに、移動型ロボット206に設けられたインジケーターランプ部も点滅させるようにすればよい。これにより、移動型ロボット206自体を目視することによっても、通信状態が悪化していることを把握することができる。
【0111】
なお、移動型ロボット206との通信が確立したときには、可搬型教示装置40は、移動型ロボット206の移動を停止させる信号を出力するようにしてもよい。これにより、ロボット制御部31により、移動型ロボット206の移動を停止させることができる。その結果、通信が確立した後に教示作業を行う際、移動型ロボット206が移動してしまうことによる不具合、例えば、通信状態が悪化するのを防止することができ、教示作業を安定して行うことができる。
【0112】
この際、可搬型教示装置40の入力受付部45は、移動型ロボット20の移動を停止させる停止モードとして、2つの停止モードのいずれを選択するかについて、入力操作を受け付けるようにしてもよい。具体的には、通信部22が第1ロボットとしての移動型ロボット206との通信を確立したとき、入力受付部45は、移動型ロボット206の移動を停止させ、かつ、第2ロボットとしての移動型ロボット201~205の移動を停止させない第1停止モードと、移動型ロボット206と移動型ロボット201~205の双方、すなわち全ての移動型ロボット201~206の移動を停止させる第2停止モードのいずれかを選択する操作を受け付けるようにしてもよい。
【0113】
このようにして停止モードを選択可能にすることで、ロボットシステム1全体の作業の生産性を大きく低下させることなく、移動型ロボット206に対するより確実な教示作業の実施が可能になる。
【0114】
なお、2つの停止モード以外に、停止させないモードを含めるようにしてもよい。この場合には、作業の生産性を低下させるおそれはないものの、選択操作および教示作業がやや難しくなるおそれがある。
【0115】
また、入力受付部45が第1ロボットとしての移動型ロボット201を選択する選択操作を受け付けたときには、表示制御部42は、経路取得部33が取得した、移動型ロボット201が予定している移動軌跡を読み出して、表示部43に表示させる機能を有していてもよい。
【0116】
図13は、移動型ロボット201が予定している移動軌跡を表示している表示部43を示す図である。
【0117】
図13に示すように、表示部43では、移動型ロボット201が今後予定している移動軌跡をラインL3で表示している。このようなラインL3を表示することにより、移動型ロボット201の移動先を直感的に把握することができる。これにより、移動先に合わせた教示作業を行うことができるので、教示作業の効率化を図ることができる。
【0118】
なお、表示部43には、選択操作により選択された移動型ロボット201以外の移動型ロボット202~206についても、移動軌跡がラインで表示されるようになっていてもよい。
【0119】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。
図14は、第2実施形態に係るロボットシステムを示す概念図である。
【0120】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、図14において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0121】
第2実施形態に係るロボットシステム1は、可搬型教示装置40と通信可能に接続され、表示部43とは別にヘッドマウントディスプレイ8を備えている。つまり、ヘッドマウントディスプレイ8は、表示部43による情報表示を補助する目的で用いられる。
【0122】
図14に示すヘッドマウントディスプレイ8は、移動型ロボット20の実像を透過させるレンズ81と、レンズ81を支持するフレーム82と、レンズ81に表示内容85を投影する図示しない投影部と、を有している。レンズ81は、ハーフミラーになっており、ヘッドマウントディスプレイ8を装着するユーザーに実像を視認させることができる。また、レンズ81に投影した表示内容85を、実像に重ね合わせて表示することができる。このため、移動型ロボット20の実像と表示内容85とを重ね合わせることができ、視覚的に両者を関連付けることができる。これにより、ユーザーは、移動型ロボット20とそれに付随する情報とを容易に関連付けることができ、状況を把握させる効率を高めることができる。つまり、拡張現実の技術を用いて、ユーザーの理解促進を図ることができる。
【0123】
具体的には、図14では、レンズ81を介して、移動型ロボット201~203の実像が見えている様子を図示している。また、この実像に重ね合わせるように、各移動型ロボット201~203に対応する表示内容85を、例えば文字情報として表示している。表示内容85としては、文字の他に、画像、動画等が挙げられる。また、文字情報としては、例えば、機種名、接続の可否、実行中の作業名等、移動型ロボット201~203に関するあらゆる情報が挙げられる。
【0124】
なお、表示内容85には、このほかに、入力受付部45への入力操作に用いるカーソルCを表示してもよい。図14に示すカーソルCは、可搬型教示装置40に設けられた、図示しないスライドパッド等の入力装置における移動操作によって移動可能である。また、それとともに、入力装置における選択操作によってカーソルCが指している情報を選択することができる。このため、カーソルCを、例えば、移動型ロボット201の実像に合わせた状態で選択操作を行うことにより、第1実施形態と同様、移動型ロボット201と可搬型教示装置40との間で通信を確立することができる。
【0125】
以上のように、本実施形態に係るロボットシステム1は、さらにヘッドマウントディスプレイ8を備えている。そして、表示制御部42は、拡張現実技術により、第1ロボットとしての移動型ロボット20の実像に重ね合わせて、ヘッドマウントディスプレイ8に情報を表示させるようにしてもよい。
【0126】
このようなロボットシステム1によれば、拡張現実技術を用いることで、ユーザーが、現実空間の移動型ロボット20の実像を直接視認しながら、選択操作を行うことができる。しかも、その実像に隣り合うように各種情報を表示することもできるので、実像の取り違えも発生しにくい。これにより、選択すべき移動型ロボット20とは異なるものを選択操作してしまうおそれがより少なくなる。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0127】
なお、ヘッドマウントディスプレイ8は、上記とは異なり、表示部43を代替する表示部として用いられてもよい。その場合、ヘッドマウントディスプレイ8には、可搬型教示装置40の現在位置を示すアイコン等も併せて表示させるようにすればよい。また、前述した表示内容85も、移動型ロボット20の現在位置を示す位置に、それぞれ表示するようにすればよい。このような仕様にすれば、ヘッドマウントディスプレイ8に表示部43を代替させることができる。また、その場合には、レンズ81をハーフミラーにすることなく、ヘッドマウントディスプレイ8を不透過型の画像表示装置として用いるようにしてもよい。さらに、その場合には、可搬型教示装置40の本体と表示部であるヘッドマウントディスプレイ8とがケーブル等を介して接続されていればよく、本体には、スライドパッド等の入力装置を設けるようにすればよい。
【0128】
また、ヘッドマウントディスプレイ8に代えて、腕時計型ディスプレイ等のウェアラブルディスプレイが用いられてもよい。
【0129】
以上、本発明のロボットシステムおよび可搬型教示装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、ロボットシステムおよび可搬型教示装置の前記実施形態には、それぞれ他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【符号の説明】
【0130】
1…ロボットシステム、8…ヘッドマウントディスプレイ、9…設置領域、20…移動型ロボット、20A…アイコン、22…通信部、30…制御装置、31…ロボット制御部、32…記憶部、33…経路取得部、40…可搬型教示装置、40A…アイコン、41…通信部、42…表示制御部、43…表示部、44…第1検出部、45…入力受付部、46…教示装置制御部、47…インジケーターランプ部、49…作業内容、50…台車、52…ロボット制御部、60…ロボットアーム、61…アーム、62…アーム、63…アーム、64…アーム、65…アーム、66…アーム、67…把持ハンド、70…第2検出部、71…慣性センサー、72…マーカー検出部、73…演算部、74…位置送信部、81…レンズ、82…フレーム、85…表示内容、91…柱、201…移動型ロボット、201A…アイコン、202…移動型ロボット、202A…アイコン、203…移動型ロボット、203A…アイコン、204…移動型ロボット、204A…アイコン、205…移動型ロボット、205A…アイコン、206…移動型ロボット、206A…アイコン、441…慣性センサー、442…マーカー検出部、443…演算部、444…位置受信部、BD…方向、C…カーソル、H…人、L1…ライン、L2…ライン、L3…ライン、M1…マーカー、M2…マーカー、T1…軌跡、T2…軌跡、U…ユーザー、UD…上方向
図1
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