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特許7400219不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置、性能評価方法、及び性能評価プログラム
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  • 特許-不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置、性能評価方法、及び性能評価プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置、性能評価方法、及び性能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/22 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G06F11/22 675Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019105920
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201546
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 芳伸
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-041547(JP,A)
【文献】特開2013-045154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置であって、
前記不揮発性半導体記憶装置に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する書込処理部と、
前記書込処理部により取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する判定処理部と、
前記判定処理部による判定結果に基づいて前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価部と、を備え
前記標準アクセス時間データは、前記不揮発性半導体記憶装置とは別の個体を少なくとも含む複数の不揮発性半導体記憶装置のそれぞれに対して、回路基板に実装される前に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで取得されたアクセス時間の分布が同等となるアクセス時間データに基づいて定められることを特徴とする性能評価装置。
【請求項2】
前記性能評価部は、前記判定処理部によりアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたと判定した回数をカウントして性能を評価することを特徴とする請求項1に記載の性能評価装置。
【請求項3】
前記不揮発性半導体記憶装置を前記回路基板から取り外した後に、前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価することを特徴とする請求項1または2に記載の性能評価装置。
【請求項4】
不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能評価方法であって、
前記不揮発性半導体記憶装置に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する書込処理ステップと、
前記書込処理ステップにより取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する判定処理ステップと、
前記判定処理ステップによる判定結果に基づいて前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価ステップと、を備え
前記標準アクセス時間データは、前記不揮発性半導体記憶装置とは別の個体を少なくとも含む複数の不揮発性半導体記憶装置のそれぞれに対して、回路基板に実装される前に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで取得されたアクセス時間の分布が同等となるアクセス時間データに基づいて定められることを特徴とする性能評価方法。
【請求項5】
不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能評価プログラムであって、
前記不揮発性半導体記憶装置に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する書込処理ステップと、
前記書込処理ステップにより取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する判定処理ステップと、
前記判定処理ステップによる判定結果に基づいて前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価ステップと、をコンピュータに実行させ
前記標準アクセス時間データは、前記不揮発性半導体記憶装置とは別の個体を少なくとも含む複数の不揮発性半導体記憶装置のそれぞれに対して、回路基板に実装される前に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで取得されたアクセス時間の分布が同等となるアクセス時間データに基づいて定められることを特徴とする性能評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリカード等の不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置、性能評価方法、及び性能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリカード(SDカード等)、USBメモリ、ソリッドステートドライブ(SSD)といった不揮発性半導体記憶装置が普及している。不揮発性半導体記憶装置は、NAND型フラッシュメモリ等の不揮発性半導体メモリと、不揮発性半導体メモリのアクセス制御を行うコントローラを内蔵している。不揮発性半導体記憶装置に内蔵されている不揮発性メモリ及びコントローラの種類は多種多様であり、その組み合わせも多種多様となっている。
【0003】
不揮発性半導体メモリの寿命を予測する方法として、不揮発性半導体メモリへの積算書き込み量を利用開始日と対応づけて記録し、不揮発性半導体メモリの寿命到達日時を予測する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また予め取得した寿命が一定以上の場合に、物理メモリ容量の不足時に未使用のプログラムを一時的に退避する書込処理を実行するスワップ機能をオフにすることで、記憶装置の寿命の短縮を避ける手法が提案されている(例えば特許文献2参照)。また不揮発性半導体記憶装置に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで測定される単位記憶領域ごとのアクセス時間の特徴量を他の不揮発性半導体記憶装置の特徴量と比較して、評価対象の不揮発性半導体記憶装置を分類する手法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-142776号公報
【文献】特開2018-156582号公報
【文献】特開2016-157228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、不揮発性半導体記憶装置の一つであるeMMC(embedded Multi Media Card)は、回路基板に実装される前にデータを書き込んだ後、リフロー処理等によって回路基板に実装されることが多い。eMMCは、基板実装後にデータの確認検査が実施される場合があるが、この確認検査において内部のメモリの劣化について評価することまでは行われていない。回路基板への実装前にデータがeMMCに書き込まれない場合も含め、リフロー処理による熱的負荷等の環境変化を受けた不揮発性半導体記憶装置のその後の性能を評価する方法は検討されていなかった。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価装置、性能評価方法、及び性能評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の性能評価装置は、不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能評価装置であって、前記不揮発性半導体記憶装置に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する書込処理部と、前記書込処理部により取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する判定処理部と、前記判定処理部による判定結果に基づいて前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価部と、を備える。
【0008】
また本発明の別の態様は性能評価方法である。この性能評価方法は、不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能評価方法であって、前記不揮発性半導体記憶装置に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する書込処理ステップと、前記書込処理ステップにより取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する判定処理ステップと、前記判定処理ステップによる判定結果に基づいて前記不揮発性半導体記憶装置の性能を評価する性能評価ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置の性能を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】所定のアクセスパターンの一例を示す模式図である。
図2】所定のアクセスパターンに対するアクセス時間の分布の例を示すグラフである。
図3】eMMC単体評価時の性能評価装置の構成を示すブロック図である。
図4】eMMCの初期評価処理の手順を示すフローチャートである。
図5】eMMC基板実装時の性能評価装置の構成を示すブロック図である。
図6】性能評価処理の手順を示すフローチャートである。
図7】性能が劣化した場合の所定のアクセスパターンに対するアクセス時間の分布の例を示すグラフである。
図8】回路基板から取り外したeMMC単体評価時の性能評価装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図8を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
例えば不揮発性半導体メモリであるNAND系のメモリは、所定のアクセスパターンによってメモリにアクセスした場合に、アクセス完了の応答が得られるまでの時間であるアクセス時間がほぼ一定になる傾向にある。同様に、基板実装型メモリであるeMMCについても、回路基板への実装前に所定のアクセスパターンでメモリへアクセスすることによってアクセス時間を評価すれば、ある一定のアクセス時間が得られる。尚、eMMCは、不揮発性半導体メモリおよびコントローラを含む不揮発性半導体記憶装置に含まれる基板実装型メモリの一例である。
【0013】
一般的にeMMCは、基板実装型のデバイスであることから、厳密なアクセス時間はスペックとして定められていないことが多い。このため、同じ型番のeMMCであっても、このeMMCのメーカが正常と判断する閾値の範囲で評価結果にばらつきが存在している傾向にある。しかしながら、同じ評価、例えば、全く同じ回数、同じ環境変化で同じアクセス方法によって書き込み処理を実行する等の手順を経た同じ型番のeMMCでは、各単位領域ごとにアクセス時間が同等な個体が複数存在する。これをeMMCの標準個体と呼ぶこととする。
【0014】
このeMMCの標準個体は、eMMC内部のNAND型フラッシュメモリの書き込み性能および読み込み性能において生産上のばらつきが無いかまたは小さく、最も標準的なアクセス時間が得られる個体である。
【0015】
図1は、所定のアクセスパターンの一例を示す模式図である。図1において、縦軸はLBA(Logical Block Address)を示し、横軸はコマンド発行番号(コマンドの発行順序を示す番号)を示している。コマンド発行番号が小さい方から順に大きくなる方向へ、各コマンドが発行される。図1に示す書き込みパターンは、正方向へのアクセスを示しており、0LBAから最大LBAまで256セクタ単位でメディア全面に書き込みを行う。書き込むデータは任意の物でもよいが、データが0、1、2、からFまでの常に1を加算した連続したデータを書き込むと、書き込まれたデータに問題があった場合、どのデータで問題があったかを発見しやすい利便性がある。アクセスパターンは、できるだけデータを転送するデバイスの転送最大量とすることが望ましく、本実施例では28bitLBA転送の最大値である256セクタ単位での書き込みとしている。アクセスパターンはこれに限らず、例えば512セクタ等であってもよい。また、最大LBAから0LBAまで逆方向でアクセスするものでもよい。総合的な処理時間を考慮して書き込みはメディア全面とせず、期待する時間内で処理が終了できるようにあらかじめ決めておいた固定領域の範囲に限定してアクセスするとしてもよい。
【0016】
図2は所定のアクセスパターンに対するアクセス時間の分布の例を示すグラフである。図2において、縦軸はアクセス時間を示し、横軸はコマンド発行番号を示している。アクセス時間は、所定のアクセスパターンによる書き込み処理のコマンド発行から書き込み完了の応答コマンドを受信するまでの時間とする。各コマンド発行番号に対してアクセス時間が取得され、図2ではミリ秒オーダーで細かくプロットしてある。
【0017】
図3はeMMC単体評価時の性能評価装置10の構成を示すブロック図である。性能評価装置10は、書込処理部11、記憶処理部12および標準抽出部13を有し、コマンド実行部40を介してeMMC30への書き込み処理を実行する。性能評価装置10は、例えばパーソナルコンピュ-タなどによって構成され、記憶部20に格納されたコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムに用いる各種情報に従って、上述の各部による処理を実行する。記憶部20は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク記憶装置等のデータ記憶装置によって構成されており、所定のアクセスパターンを記憶している。
【0018】
書込処理部11は、所定のアクセスパターンを記憶部20から読み出し、読み出したアクセスパターンでeMMC30への書き込み処理を実行する。書込処理部11は、所定のアクセスパターンにおける各コマンド発行番号に対するアクセス時間を取得する。記憶処理部12は、書込処理部11によって取得された各コマンド発行番号に対するアクセス時間を1つのeMMC30に対するアクセス時間データとして、記憶部20に記憶する。
【0019】
標準抽出部13は、記憶部20に記憶された複数のeMMC30のアクセス時間データに基づいてアクセスを行った結果、アクセス時間の分布を同じくするeMMCを複数見つけ出し、標準個体とする。また標準抽出部13は、標準個体のアクセス時間データを標準アクセス時間データとして、データベース装置50へ登録する。尚、データベース装置50は、ハードディスク等のデータ記憶装置によって構成されている。
【0020】
コマンド実行部40は、性能評価装置10に接続されており、性能評価装置10からのコマンドを受け付けて書き込み処理および読み出し処理を実行する。eMMC30は、例えばソケットなどを用いてコマンド実行部40に電気的に接続される。
【0021】
eMMC30は、不揮発性半導体メモリ31及びコントローラ32を有する。コントローラ32はコマンド実行部40から書き込みコマンド及び書き込みデータを受信すると当該データを不揮発性半導体メモリ31の指定された記憶領域に書き込む。当該データの書き込みが完了するとコマンド実行部40に応答信号を返す。またコントローラ32はコマンド実行部40から読み出しコマンドを受信すると、不揮発性半導体メモリ31の指定された記憶領域からデータを読み出し、コマンド実行部40に送信する。
【0022】
図4は、eMMC30の初期評価処理の手順を示すフローチャートである。eMMC30の初期評価処理では、標準個体を抽出し、標準アクセス時間データを取得する。性能評価装置10において、eMMC30の評価サンプル個数nを設定する(S1)。書込処理部11は、所定のアクセスパターンに従いアクセス時間データを取得する(S2)。記憶処理部12は、取得されたアクセス時間データを記憶部20へ記憶させる。書込処理部11は設定されたn個の評価が完了したか否かを判定し(S3)、完了していない場合(S3:NO)、次のeMMC30に対してステップS2に戻って処理を繰り返す。
【0023】
ステップS3において、n個の評価が完了したと判定した場合(S3:YES)、標準抽出部13は、n個の評価結果のばらつきに基づいて標準個体を抽出する(S4)。標準抽出部13は、標準アクセス時間データを含む標準個体のデータをデータベース装置50へ登録する(S5)。
【0024】
eMMC30の標準個体を見つけ出す初期評価では、複数のeMMC30に対して、回路基板に実装せずに、ソケット等を用いて書き込み処理を行う性能評価装置10に接続する。性能評価装置10は、少なくとも所定のアクセスパターン(図1参照)による書き込み処理を実行し、アクセス時間を計測する。性能評価装置10は、アクセス時間の計測において、オペレーティングシステムによるオーバーヘッド等が介在しないことが望ましい。また性能評価装置10は、1回の転送量で転送可能な大きなデータを可能な限り早い転送周波数のバス速度で、全領域に対し所定のアクセスパターンでデータの書き込み、ないしは読み込みを実行することが好ましい。初期評価によって複数のeMMC30のアクセス時間を計測し、図2のようなアクセス時間を示すグラフを取った結果、アクセス時間の分布を同じくするeMMC30を複数見つけ出し、標準個体とする。
【0025】
標準アクセス時間データが取得されたeMMC30は、種々の電気製品等における回路基板に実装されることになる。eMMC30は、リフロー処理や、回路基板への実装前および実装後の書き込み回数の増加等により、本来書き込もうとしたNAND型フラッシュメモリのエリアに問題が生じた場合、標準個体のアクセス時間に問題を解消するための処理時間が加算され、結果としてアクセス時間が標準個体よりも長くなる。例えば、NAND型フラッシュメモリのエリアに書き込もうとしたときに、書き込みに問題が生じ、何回か書き込みを行うためにリトライが発生し、更に代替領域への書き換え処理が行われるなどして、アクセス時間が標準個体よりも長くなる。
【0026】
図5は、eMMC基板実装時の性能評価装置10Aの構成を示すブロック図である。eMMC30は不揮発性半導体メモリ31及びコントローラ32を有する。eMMC30は性能評価装置10Aとともに回路基板に実装されている。コントローラ32は書き込みコマンド及び書き込みデータを受信すると当該データを不揮発性半導体メモリ31の指定された記憶領域に書き込む。当該データの書き込みが完了すると応答信号を返す。またコントローラ32は読み出しコマンドを受信すると、不揮発性半導体メモリ31の指定された記憶領域からデータを読み出し、読み出したデータを返す。
【0027】
性能評価装置10Aは、カーナビゲーション装置およびドライブレコーダ等の車両搭載装置や、家庭用の電気製品、据置型および携帯型などの情報処理装置等の電子機器の内部に設けられたメインコントローラであり、通常の動作においてこれら電子機器を制御する。メインコントローラとしての性能評価装置10Aは、通常の動作中において、eMMC30のコントローラ32に対して通常の動作中のコマンド命令を出力する。性能評価装置10Aは、コントローラ32に対して通常の動作におけるコマンド命令を出力した後、次のコマンド命令を連続して出さない場合、コントローラ32に対して所定のコマンド命令を出力し性能評価を実行するとよい。
【0028】
性能評価装置10Aは、書込処理部11、記憶処理部12、判定処理部14および性能評価部15を有する。性能評価装置10Aは、eMMC30とともに上述の電子機器内に設けられている。性能評価装置10Aは、例えばCPUなどによって構成され、eMMC30に格納されたコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムに用いる各種情報に従って、上述の各部による処理を実行する。
【0029】
書込処理部11は、eMMC30に対し、所定のアクセスパターンでの書き込み処理を実行し、書き込み処理によるアクセス時間データを取得する。書込処理部11は、所定のアクセスパターンおよび書込みデータをeMMC30から読み出す。性能評価装置10Aが通常の動作によりeMMC30に読み書きする動作と、書込処理部11がeMMC30に書き込む動作とは、同時に実行されないものとする。
【0030】
記憶処理部12は、書込処理部11により取得されたアクセス時間データをeMMC30に記憶させる処理を行う。eMMC30は、予めeMMC30について取得された上述の標準アクセス時間データを記憶している。また、eMMC30には、所定のアクセスパターン、およびeMMC30へ書き込む書込みデータが記憶されている。
【0031】
判定処理部14は、eMMC30に記憶された標準アクセス時間データと、書込処理部11により取得された応答時間データとを比較判定する。標準アクセス時間データは上述のようにデータベース装置50に登録されたものを用いるとよい。判定処理部14は、例えば、所定のアクセスパターンにおけるコマンド発行番号ごとに標準アクセス時間データとアクセス時間データとを比較し、アクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否を判定する。このほか、判定処理部14は、アクセス時間の平均時間、最頻時間または標準偏差などの統計的な数値を用いて標準アクセス時間データとアクセス時間データとを比較判定するようにしてもよい。
【0032】
性能評価部15は、判定処理部14によってアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたと判定された場合に、eMMC30の性能が劣化していると評価し、評価結果をeMMC30に記憶する。また性能評価部15は、判定処理部14によってコマンド発行番号ごとにアクセス時間データと標準アクセス時間データとを判定した結果に基づき、アクセス時間データが標準アクセス時間データを超えた回数をカウントし、所定値以上となったときに性能が劣化していると評価してもよい。
【0033】
性能評価部15は、eMMC30の性能が劣化していると評価した場合、eMMC30に対する読み書きの動作を停止すべきである旨の劣化評価アラームを出力し、外部へ報知するようにしてもよい。性能評価部15が出力する劣化評価アラームに基づいて、eMMC30の交換やデータバックアップ等が行われるようにするとよい。
【0034】
次に性能評価装置10Aの動作について説明する。図6は性能評価処理の手順を示すフローチャートである。性能評価装置10Aの書込処理部11は、図1に示す所定のアクセスパターンに基づきコマンド発行番号に対するeMMC30への書き込み処理を実行し、アクセス時間を取得する(S11)。尚、性能評価処理の初期状態では、コマンド発行番号は1番とし、後述する閾値カウンターは0にリセットしておくものとする。書込処理部11は、所定のアクセスパターンによる書き込み処理に従うものであれば、書き込まれるデータについてはどのようなデータとしてもよい。書込処理部11は、例えば、回路基板へ実装するリフローの前にeMMC30に書き込まれた地図データなどのデータと同じデータを上書きするようにしてもよい。これによりeMMC30のメモリ空き容量の消費を抑えながら性能評価処理を実行することができる。
【0035】
リフロー前にeMMC30に書き込まれるデータは、実装される電子機器に応じて、映像、音楽、画面表示、音声等のデータ、更には電子機器の機能を実現するために用意されるデータなど様々である。
【0036】
判定処理部14は、コマンド発行番号に対するアクセス時間が標準アクセス時間データを超えたか否かを判定し(S12)、超えたと判定された場合(S12:YES)、閾値カウンターに1を加算する(S13)。ステップS12において超えていないと判定された場合(S12:NO)およびステップS13の後、性能評価部15は、閾値カウンターが所定値以上であるか否かを判定する(S14)。
【0037】
閾値カウンターが所定値以上であると判定された場合(S14:YES)、性能評価部15は、性能劣化アラームを出力し(S15)、処理を終了する。閾値カウンターが所定値以上ではないと判定された場合(S14:NO)、全てのコマンド発行番号に対する書き込み処理が終了したか否かを判定し(S16)、終了していない場合(S16:NO)、次のコマンド発行番号に移行し(S17)、ステップS11に戻って処理を繰り返す。ステップS16において全てのコマンド発行番号に対する書き込み処理が終了したと判定された場合(S16:YES)、処理を終了する。
【0038】
図7は性能が劣化した場合の所定のアクセスパターンに対するアクセス時間の分布の例を示すグラフである。書き込もうとしている不揮発性半導体メモリ31のエリアに問題があれば、それを修正しようとする処理がeMMC30内部のコントローラ32で働き、その処理の発生時間分、図7に示すようにアクセス時間が延びる。
【0039】
例えばウェアーレベリングというeMMC30内部の不揮発性半導体メモリ31の劣化を均一にしようとする動きであれば、通常、eMMC30内部で行われる処理として、大きなアクセス時間の変化は見られない。しかし、リトライのような書き込み処理を何回か行い、代替領域へデータを移動させる処理が発生すれば、アクセス時間が大きく変化する。このようなアクセス時間の変化が見られる個体は、累積書き込み回数が少なくても内部の不揮発性半導体メモリ31に何らかの異常が発生している個体であることから、標準個体よりも性能が劣化していると判断できる。
【0040】
性能評価装置10Aは、書込処理部11により取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定して評価することで、回路基板に実装されたeMMC30の性能を評価することができる。また性能評価装置10Aは、アクセス時間データが標準アクセス時間データを超えた場合をカウントし、所定値以上となったときに性能が劣化したと評価することで、書き込みのリトライ等の処理が所定回数以上となったときにeMMC30が劣化したと判定することができる。
【0041】
標準アクセス時間データは、複数のeMMC30のそれぞれに対して、回路基板に実装される前に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで取得される応答時間データに基づいて定められる。性能評価装置10Aは、eMMC30が回路基板に実装される際のリフロー処理等による外部環境の影響を受けていない状態でのアクセス時間データを基準として、eMMC30の性能を評価することができる。
【0042】
性能評価装置10Aは、たとえ累積書き込み回数が少ないeMMC30であっても、不揮発性半導体メモリ31が劣化するような外部環境の変化、例えばリフロー処理による熱的負荷などを受けたことによる性能劣化を判別可能とする。
【0043】
図6による性能評価処理の手順において、性能評価装置10Aは、所定のアクセスパターンによるアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えることや、その回数によってeMMC30の性能を評価した。上述のように、性能評価装置10Aは、アクセス時間の平均時間、最頻時間または標準偏差などの統計的な数値に基づいて、標準アクセス時間データと、書込処理部11で取得したアクセス時間データとを比較判定し、eMMC30の性能を評価するようにしてもよい。
【0044】
また、一度回路基板から取り外したeMMC30をリボールして再利用する際にも、回路基板から取り外したeMMC30に対して性能評価を行うようにしてもよい。この場合、回路基板から取り外した単体のeMMC30において、回路基板に実装されていない状態で、所定のアクセスパターンでの書き込み処理を実行し、アクセス時間を取得する。
【0045】
図8は、回路基板から取り外したeMMC単体評価時の性能評価装置10Aの構成を示すブロック図である。回路基板から取り外したeMMC30は、図8に示した性能評価装置10Aにコマンド実行部40を介して接続して性能評価を行うようにする。eMMC30は、例えばソケットなどを用いてコマンド実行部40に電気的に接続される。性能評価装置10Aは、図5に示す性能評価装置10Aと同様に書込処理部11、記憶処理部12、判定処理部14および性能評価部15を有し、例えばパーソナルコンピュータなどによって構成される。性能評価装置10Aは、書込処理部11からコマンド実行部40を介してeMMC30に所定のアクセスパターンでの書き込み処理を実行し、アクセス時間を取得し、eMMC30単体で性能評価する。所定のアクセスパターンや書込みデータ等は、記憶部20に記憶されているものを用いてもよいし、eMMC30の不揮発性半導体メモリ31に記憶されているものを用いてもよい。また、標準アクセス時間データは、データベース装置50に記憶されているものを用いてもよいし、eMMC30の不揮発性半導体メモリ31に記憶されているものを用いてもよい。回路基板から取り外した単体のeMMC30においてアクセス時間が延びている場合、不揮発性半導体メモリ31の劣化が生じていることから、再利用しないと判断することができる。
【0046】
次に、各実施形態に係る性能評価装置10および10A、性能評価方法並びに性能評価プログラムの特徴を説明する。
性能評価装置10Aは、書込処理部11、判定処理部14および性能評価部15を備え、不揮発性半導体メモリ31およびコントローラ32を含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価する。書込処理部11は、eMMC30に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する。判定処理部14は、書込処理部11により取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する。性能評価部15は、判定処理部14による判定結果に基づいてeMMC30の性能を評価する。これにより、性能評価装置10Aは、回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価することができる。
【0047】
また性能評価部15は、判定処理部14によりアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたと判定した回数をカウントして性能を評価する。これにより、性能評価装置10Aは、書き込みのリトライ等の処理が所定回数以上となったときにeMMC30が劣化したと判定することができる。
【0048】
また性能評価装置10Aは、不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30を回路基板から取り外した後に、eMMC30の性能を評価する。これにより、性能評価装置10Aは、回路基板から取り外したeMMC30においてアクセス時間が延びている場合、再利用しないと判断することができる。
【0049】
また標準アクセス時間データは、複数のeMMC30のそれぞれに対して、回路基板に実装される前に、所定のアクセスパターンでデータを書き込んで取得されるアクセス時間データに基づいて定められる。これにより、性能評価装置10Aは、eMMC30が回路基板に実装される際のリフロー処理等による外部環境の影響を受けていない状態でのアクセス時間データを基準として、eMMC30の性能を評価することができる。
【0050】
性能評価装置10は、書込処理部11および標準抽出部13を備え、不揮発性半導体メモリ31およびコントローラ32を含み回路基板に実装される前の不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価する。書込処理部11は、複数のeMMC30に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する。標準抽出部13は、書込処理部11により取得された複数のアクセス時間データのばらつきに基づいて、標準アクセス時間データを取得する。これにより、性能評価装置10は、eMMC30の評価に対して、外部環境の影響を受けていない状態でのアクセス時間データを提供することができる。
【0051】
性能評価方法は、書込処理ステップ、判定処理ステップおよび性能評価ステップを備え、不揮発性半導体メモリ31およびコントローラ32を含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価する。書込処理ステップは、eMMC30に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する。判定処理ステップは、書込処理ステップにより取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する。性能評価ステップは、判定処理ステップによる判定結果に基づいてeMMC30の性能を評価する。この性能評価方法によれば、回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価することができる。
【0052】
性能評価プログラムは、書込処理ステップ、判定処理ステップおよび性能評価ステップをコンピュータに実行させ、不揮発性半導体メモリ31およびコントローラ32を含み回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価する。書込処理ステップは、eMMC30に所定のアクセスパターンでデータを書き込み、アクセス時間データを取得する。判定処理ステップは、書込処理ステップにより取得されたアクセス時間データが標準アクセス時間データを超えたか否かを判定する。性能評価ステップは、判定処理ステップによる判定結果に基づいてeMMC30の性能を評価する。この性能評価プログラムによれば、回路基板に実装された不揮発性半導体記憶装置であるeMMC30の性能を評価することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0054】
10 性能評価装置(eMMC単体評価時)、
10A 性能評価装置(eMMC基板実装時およびeMMC単体評価時)、
11 書込処理部、 13 標準抽出部、
14 判定処理部、 15 性能評価部、
30 eMMC(不揮発性半導体記憶装置)、
31 不揮発性半導体メモリ、 32 コントローラ。
図1
図2
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図4
図5
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図8