(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】有機溶剤回収方法及び有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/72 20060101AFI20231212BHJP
B01D 53/70 20060101ALI20231212BHJP
B01D 53/82 20060101ALI20231212BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B01D53/72 ZAB
B01D53/70
B01D53/82
B01D53/04 230
B01D53/04 240
(21)【出願番号】P 2019128497
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 瞬
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-176240(JP,A)
【文献】特開平05-262502(JP,A)
【文献】国際公開第2016/043049(WO,A1)
【文献】特開2001-347126(JP,A)
【文献】特開2001-000836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
B01D 53/34-53/73;53/74-53/85;
53/92-53/92;53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に吸着させる吸着工程と、
脱着ガスにて前記吸着材から有機溶剤を脱着する脱着工程と、
脱着した有機溶剤を回収する回収工程と、を含む有機溶剤回収方法において、
さらに、有機溶剤の分解を促す分解活性物質の前記吸着材への付着量を制御する付着量制御工程を含み、
前記付着量制御工程は、前記吸着材を定期的に水で洗浄する洗浄工程であり、
前記洗浄工程は、前記吸着材を水に浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程で用いた水を排水した後、前記吸着材を再度水に浸漬させる再浸漬工程と、前記再浸漬工程後に、前記吸着材を乾燥させる乾燥工程と、を含むことを特徴とする有機溶剤回収方法。
【請求項2】
前記浸
漬工程及び前記再浸漬工程では、25℃以上の水に浸漬させることを特徴とする請求項1に記載の有機溶剤回収方法。
【請求項3】
上記吸着材は活性炭素繊維から構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の有機溶剤回収方法。
【請求項4】
上記被処理ガス中の有機溶剤は、前記分解活性物質と反応することで分解物質を生成する分解物質生成成分を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の有機溶剤回収方法。
【請求項5】
上記分解物質生成成分は、エステル、ケトン、またはハロゲン性化合物であることを特徴とする請求項4に記載の有機溶剤回収方法。
【請求項6】
有機溶剤を含有する被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に吸着させ、脱着ガスにて前記吸着材から有機溶剤を脱着し、脱着した有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置と、
前記吸着材を水洗する吸着材洗浄装置と、を備え、
前記吸着材洗浄装置は、前記吸着材を水に浸漬させ、前記浸漬で用いた水を排水した後、前記吸着材を再度水に浸漬させ、前記再度水に浸漬させた後に、前記吸着材を乾燥することを特徴とする有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤含有ガスから有機溶剤を回収する有機溶剤回収方法及び有機溶剤回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場等より排出される有機溶剤含有ガスから有機溶剤を回収・再利用し、且つ有機溶剤が大気中へ排出することを防ぐ処理装置として、従来、吸着材として粒状活性炭あるいは活性炭素繊維を充填させた吸着槽を有し、各吸着槽が有機溶剤含有被処理ガスを吸着する吸着工程と、吸着材に吸着された有機溶剤を吸着材に水蒸気を供給して脱着する脱着工程を交互に行うことで連続的に処理を行う装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、脱着工程において水蒸気に換えて窒素等の高温不活性ガスを用いて脱着を行う有機溶剤回収装置も提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-347126号公報
【文献】特許第5298292号
【文献】特許第5482776号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の処理装置では、例えば、エステル系またはケトン系等の反応性が高い有機溶剤を含有する被処理ガスを処理する場合、脱着に用いる水蒸気中に含まれる有機溶剤の分解を促す微量成分(有機溶剤分解活性物質)が吸着材に残存し蓄積すると、吸着材に吸着された有機溶剤が分解されて、回収有機溶剤中に該有機溶剤の分解物が混入する場合がある。また、脱着に不活性ガスを用いる場合であっても、被処理ガス自体に微量の有機溶剤分解活性物質が含まれる場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされ、有機溶剤の分解を抑制することができる有機溶剤回収方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)有機溶剤を含有する被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に吸着させる吸着工程と、脱着ガスにて前記吸着材から有機溶剤を脱着する脱着工程と、脱着した有機溶剤を回収する回収工程と、を含む有機溶剤回収方法において、さらに、有機溶剤の分解を促す分解活性物質の前記吸着材への付着量を制御する付着量制御工程を含む有機溶剤回収方法。
(2)前記付着量制御工程は、前記吸着材を定期的に水で洗浄する洗浄工程である(1)に記載の有機溶剤回収方法。
(3)前記洗浄工程は、前記吸着材を25℃以上の水に浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程で用いた水を排水した後、前記吸着材を再度25℃以上の水に浸漬させる再浸漬工程と、前記再浸漬工程後に、前記吸着材を乾燥させる乾燥工程と、を含む(2)に記載の有機溶剤回収方法。
(4)上記吸着材は活性炭素繊維から構成されている(1)から(3)のいずれか1つに記載の有機溶剤回収方法。
(5)上記被処理ガス中の有機溶剤は、前記分解活性物質と反応することで分解物質を生成する分解物質生成成分を含んでいる(1)から(4)のいずれか1つに記載の有機溶剤回収方法。
(6)上記分解物質生成成分は、エステル、ケトン、またはハロゲン性化合物である(5)に記載の有機溶剤回収方法。
(7)有機溶剤を含有する被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に吸着させ、脱着ガスにて前記吸着材から有機溶剤を脱着し、脱着した有機溶剤を回収する有機溶剤回収装置と、前記吸着材を水洗する吸着材洗浄装置と、を備えた有機溶剤回収システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機溶剤回収方法を用いることで、付着量制御工程にて吸着材への有機溶剤分解活性物質の付着量を制御することができるので、有機溶剤の分解が抑制され、分解物が回収有機溶剤に混じることが抑制され、品質の高い回収有機溶剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】有機溶剤回収システムが備える有機溶剤回収装置の一例の概略構成を示した図である。
【
図2】有機溶剤回収システムが備える吸着材洗浄装置の一例の概略構成を示した図である。
【
図3】実施例及び比較例における有機溶剤回収システムにて回収された酢酸エチル中の酢酸濃度の時間推移を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の有機溶剤回収方法は、有機溶剤を含有する被処理ガス中の有機溶剤を吸着材に吸着させる吸着工程と、脱着ガスにて前記吸着材から有機溶剤を脱着する脱着工程と、脱着した有機溶剤を回収する回収工程と、を含む有機溶剤回収方法において、さらに、有機溶剤の分解を促す分解活性物質の前記吸着材への付着量を制御する付着量制御工程と、を含む。
【0013】
本実施形態の有機溶剤回収方法を用いることができる有機溶剤回収システムの一例について
図1、
図2を用いて説明する。
【0014】
本実施形態の有機溶剤回収システムは、
図1に示す有機溶剤回収装置1と
図2に示す吸着材洗浄装置2を備える。
【0015】
有機溶剤回収装置1において、有機溶剤を含有している被処理ガスは、被処理ガス導入ライン11から送風機12にて自動下ダンパー15の開閉により吸着処理を実行する吸着槽13に送られ、被処理ガスに含有する有機溶剤は吸着槽13内の吸着材14に接触する際に吸着される(吸着工程)。その結果、被処理ガスは処理済みの清浄ガスとなり排気ライン17へ送られて大気に放出される。
【0016】
一方、自動上ダンパー16の開閉により脱着処理を実行する吸着槽13内の有機溶剤が吸着された吸着材14は、水蒸気ライン19から水蒸気導入ライン18を通じて導入された水蒸気によって脱着され(脱着工程)、回収ライン21を通じて凝縮器22へ導入され液化・凝縮し、凝縮した有機溶剤を含む水蒸気はセパレーター23に送られ、回収有機溶剤と分離排水とに分けて回収される(回収工程)。
【0017】
ここで、吸着材14に付着した有機溶剤分解活性物質の量が多くなると、吸着材14に吸着された有機溶剤が分解されて、回収有機溶剤中に該有機溶剤の分解物が混入する。そのため、本実施形態では、吸着材14の有機溶剤分解物量の付着量が多くならないように、制御する。有機溶剤分解活性物質とは、有機溶剤回収装置1で回収する有機溶剤の分解を促す微量成分を指す。
【0018】
吸着材14の有機溶剤分解活性物質の付着量は、例えば、有機溶剤回収装置1の吸着材14の一部を抜き取り、温水で抽出を行い、抽出液を蒸発乾固後に重量を測定することで、計量できる。これ以外の方法で計量してもよい。
【0019】
本実施形態の有機溶剤回収システムでは、回収有機溶剤中の有機溶剤分解物量が許容量を超えたことが確認された場合、吸着槽13内から吸着材14が取り出され、吸着材洗浄装置2の吸着材洗浄槽33の中に移動される。その後、吸着材洗浄装置2は、水導入ライン34を通して水(例えば、水道水)を吸着材洗浄槽33に導入し、吸着材14に付着した有機溶剤分解活性物質の除去を行う(付着量制御工程、洗浄工程)。充分に吸着材14に付着した有機溶剤分解活性物質の除去が確認された後に、吸着材洗浄装置2は、吸着材洗浄槽33内の水道水を排水ライン35より排水し、外気ファン31及びヒーター32にて加熱された熱風を吸着材洗浄槽33内に導入して吸着材14を乾燥させる。
【0020】
本実施形態の有機溶剤回収システムでは、吸着材洗浄装置2による吸着材の洗浄処理の実施によって有機溶剤分解活性物質が除去された吸着材14を、再度、有機溶剤回収装置1の吸着槽13に搭載することで、有機溶剤含有ガスを処理し高品質な回収有機溶剤を得ることができるようになる。
【0021】
本実施形態の有機溶剤回収方法により回収する有機溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、O-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、フロン-112、フロン-113、HCFC、HFC、臭化プロピル、ヨウ化ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メタクリル酸メチル、炭酸ジエチル、蟻酸エチル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、アニソール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、アリルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、0-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ホロン、アセトニトリル、アクリロニトリル、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、テトラデカン、デカリン、ベンゼン、トルエン、m-キシレン、O-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、n-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシド等が挙げられるがこれに限定されず、これら複数種が混合された状態でもよい。本実施形態の方法により、特に、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系化合物、といった反応性が高い有機溶剤においてその分解物の生成を抑制して回収することができる。
【0022】
吸着材14は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ及び多孔性有機化合物のいずれかを含んで構成される。好ましくは活性炭素繊維から構成される吸着材である。活性炭素繊維は、繊維構造のため害表面積が非常に大きく、繊維表面にミクロポアが直接開孔しているため、ガスとの接触効率が高く、他の吸着材よりも高い吸脱着効率を発揮する。
【0023】
上記有機溶剤分解活性物質としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カルシウム等の硫酸水素塩、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム等の酢酸塩、リン酸カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム等の硝酸塩といった塩類が挙げられるが、これらに限定されず、これら複数種が混合された状態でもよい。
【0024】
上記有機溶剤分解活性物質は、有機溶剤回収装置1に導入される被処理ガス、外気、あるいは、脱着用に用いられる水蒸気等に極微量含まれている成分によって生成され、その生成量は有機溶剤回収システムの使用頻度、外的環境等に左右されるが、基本的には経時的に増加傾向を取る。
【0025】
有機溶剤分解活性物質を吸着材14から除去する方法としては、吸着材14の交換、過剰な脱着用水蒸気の導入、吸着材14の水洗等が挙げられるが、除去効果やそれに掛かる費用等を考慮すると吸着を水洗して除去する方法が望ましい。なお、吸着材14の水洗方法としては有機溶剤回収装置1内で実施する方法でも、本実施形態のように吸着材14を一度取り出して水洗した後に再度有機溶剤回収装置1に搭載する方法でもよい。
【0026】
有機溶剤分解活性物質を吸着材14から除去する方法の一つである吸着材14の水洗については、10℃以上の水(例えば、水道水)に吸着材14を浸漬させる(浸漬工程)ことが望ましく、より好ましくは25℃以上の水に浸漬させることが望ましい。水洗を行う水温を25℃以上とすることで、吸着材14に付着している有機溶剤分解活性物質である塩類をより効率よく溶解して除去することができる。
【0027】
吸着材14の水洗方法においては、一度吸着材を浸漬させて水洗を行った後に、浸漬に使用した水を一度排水して、再度吸着材14を水に浸漬させる(再浸漬工程)ことが望ましい。こうすることで、吸着材14に付着している有機溶剤分解活性物質の再付着を抑制し、より効率よく有機溶剤分解活性物質を除去することができる。
【0028】
吸着材14の水洗時間としては、1時間以上が望ましく、より好ましくは3時間以上浸漬することが望ましい。また、吸着材14の体積と浸漬に使用する水との比率である浴比としては3倍以上で水洗することが望ましい。こうすることで、吸着材14に付着している有機溶剤分解活性物質をより効率よく除去することができる。吸着材14を再浸漬して水洗した後には乾燥させる(乾燥工程)。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明に基づいた実施の形態における有機溶剤回収システムの詳細を更に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
有機溶剤含有被処理ガスとして、エステル系有機溶剤の一種である酢酸エチルを2,000ppm含む45℃の溶剤混合ガスを、風量70Nm3/分で送風機にて吸着槽に送り、吸着材による10分間吸着処理を行った。吸着処理後、水蒸気により10分間脱着した。脱着ガスである酢酸エチルと水蒸気の混合ガスは、凝縮器へ送られ、冷却水にて凝縮し、酢酸エチルを回収した。ここで、前述の酢酸エチル回収操作を3,000時間続けて実施し、2,000時間、3,000時間における回収した酢酸エチル中の酢酸濃度を測定した。
【0031】
上記3,000時間経過後の吸着材を取り出し吸着材水洗槽に設置した後に、25℃の水道水を吸着材量の3倍となるよう導入し3時間静置した。その後、吸着材の浸漬に使用した水道水を排水し、再度25℃の水道水を吸着材の3倍となるよう吸着材水洗槽に導入し3時間静置した。その後、吸着材の再浸漬に使用しようした水道水を排水し、100℃の熱風を、風量70Nm3/分で3時間送風機にて吸着材水洗槽に送り、吸着材を乾燥させた。
【0032】
その後、水洗前後の吸着材に付着していた有機溶剤分解活性物質量を測定したところ、41mg/gから5mg/gに低下していることを確認した。
【0033】
水洗、乾燥後の吸着材を再度有機溶剤回収システムに搭載し、酢酸エチルを2,000ppm含む45℃の溶剤混合ガスを、風量70Nm
3/分で送風機にて吸着槽に送り、吸着材による10分間吸着処理を行った。吸着処理後、水蒸気により10分間脱着した。この酢酸エチル回収操作を3,000時間続けて実施し、2,000時間、3,000時間における回収した酢酸エチル中の酢酸濃度を測定した。測定結果のグラフを
図3に示す。
【0034】
[比較例1]
有機溶剤含有被処理ガスとして、エステル系有機溶剤の一種である酢酸エチルを2,000ppm含む45℃の溶剤混合ガスを、風量70Nm
3/分で送風機にて吸着槽に送り、吸着材による10分間吸着処理を行った。吸着処理後、水蒸気により10分間脱着した。脱着ガスである酢酸エチルと水蒸気の混合ガスは、凝縮器へ送られ、冷却水にて凝縮し、酢酸エチルを回収した。ここで、前述の酢酸エチル回収操作を6,000時間続けて実施し、2,000時間、3,000時間、5,000時間、6,000時間における回収した酢酸エチル中の酢酸濃度を測定した。測定結果のグラフを
図3に示す。つまり、比較例1では、実施例1で実施された吸着材の水洗が行われていない。
【0035】
図3に示す実施例1及び比較例1における回収された酢酸エチル中の酢酸濃度の時間推移を比較したグラフから分かるように、実施例1では比較例1よりも、回収された酢酸エチル中の酢酸濃度を経時的に増加するのを抑制できていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る有機溶剤回収方法を用いることで、反応性の高い有機溶剤含有ガスを、水蒸気を用いた有機溶剤回収装置で回収処理を行う場合において、該有機溶剤の分解を抑制し、品質の高い回収有機溶剤を得ることができるため、産業界へ大いに寄与できる。
【符号の説明】
【0037】
1.有機溶剤回収装置
2.吸着材洗浄装置
11.被処理ガス導入ライン
12.送風機
13.吸着槽
14.吸着材
15.自動下ダンパー
16.自動上ダンパー
17.排気ライン
18.水蒸気導入ライン
19.水蒸気ライン
21.回収ライン
22.凝縮器
23.セパレーター
31.外気ファン
32.ヒーター
33.吸着材洗浄槽
34.水導入ライン
35.排水ライン