(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】多孔膜及び複合膜
(51)【国際特許分類】
C08J 9/40 20060101AFI20231212BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20231212BHJP
H01M 8/1058 20160101ALI20231212BHJP
H01M 8/1051 20160101ALI20231212BHJP
H01M 8/106 20160101ALI20231212BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C08J9/40 CEZ
H01M8/10 101
H01M8/1058
H01M8/1051
H01M8/106
C25B13/08 303
C25B13/08 301
(21)【出願番号】P 2019132749
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】津坂 恭子
(72)【発明者】
【氏名】吉野 修平
(72)【発明者】
【氏名】篠原 朗大
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-064777(JP,A)
【文献】特開2010-033762(JP,A)
【文献】特開2019-083123(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186386(WO,A1)
【文献】特開2015-219941(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125694(WO,A1)
【文献】特開2007-123060(JP,A)
【文献】特開2006-128066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、 67/20
H01M 8/00 -8/0297、 8/08- 8/2495
C25B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた多孔膜。
(1)前記多孔膜は、
ポリベンゾイミダゾール(PBI)の不織布からなる多孔質の基材と、
前記基材の表面又は内部に添加された第1劣化抑制剤と
を備えている。
(2)前記第1劣化抑制剤
は、前記ポリベンゾイミダゾール(PBI)に含まれるイミダゾール基に吸着している
(a)
Ce、Ag、Cs、及び、Snからなる群から選ばれるいずれか1以上の金属元素(A)のイオン、及び/又は、
(b)前記金属元素(A)を含む化合物
からなる。
(3)前記多孔膜は、次の式(1)で表される金属元素(A)の含有率が0.1wt%以上50wt%以下である。
金属元素(A)の含有率(wt%)=W
M
×100/(W
M
+W
p
) …(1)
但し、
W
M
は、前記金属元素(A)の重量、
W
p
は、前記基材の重量。
(4)前記多孔膜は、
(a)Ce、Ag、Cs、及びSnからなる群から選ばれるいずれか1以上の金属元素(B)のイオン、
(b)前記金属元素(B)の粒子、及び/又は、
(c)前記金属元素(B)を含む化合物
からなる第2劣化抑制剤を含む固体高分子電解質と複合化させた複合膜を作製するために用いられる。
【請求項2】
以下の構成を備えた複合膜。
(1)前記複合膜は、
固体高分子電解質と
前記固体高分子電解質を補強するための
請求項1に記載の多孔膜
と、
前記固体高分子電解質に添加された第2劣化抑制剤と
を備え、
前記第2劣化抑制剤は、
(a)Ce、Ag、Cs、及びSnからなる群から選ばれるいずれか1以上の金属元素(B)のイオン、
(b)前記金属元素(B)の粒子、及び/又は、
(c)前記金属元素(B)を含む化合物
からなる。
(2)前記複合膜は、次の式(2)で表される金属元素(B)の含有率が0.01%以上10%以下である。
金属元素(B)の含有率(%)=n
M
×M×100/(n
I
×I) …(2)
但し、
n
M
は、前記金属元素(B)が取り得る最大価数、
Mは、前記金属元素(B)のモル数、
n
I
は、前記固体高分子電解質に含まれるイオン交換基の価数、
Iは、前記イオン交換基のモル数。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔膜及び複合膜に関し、さらに詳しくは、固体高分子電解質の劣化を起こすラジカルの発生を抑制し、又は、ラジカルを消去する作用がある金属元素(A)を含む多孔膜、及び固体高分子電解質がこのような多孔膜で補強された複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ソーダ電解装置、水電解装置、燃料電池などにおいて、電気化学反応を生じさせる部位に膜電極接合体(MEA)が用いられている。MEAは、酸素と水素の直接反応若しくは電気化学反応によって直接的に生成するラジカル、又は、過酸化水素を経て生成するラジカルにより、電解質が攻撃され劣化すると言われている。
例えば、燃料電池においては、電解質膜の抵抗増加、クロスリークの増加、薄膜化による短寿命化などが起こることが知られている。さらには、ラジカル攻撃により生成する劣化生成物により触媒被毒が起こり、電解性能や電池性能が低下するおそれがある。
【0003】
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、ラジカルによる電解質の劣化の抑制を目的とするものではないが、ポリベンゾイミダゾール(PBI)と、熱硬化性樹脂の一種である1,4-ブタンジオールジグリシンエーテルとを含む紡糸溶液を静電紡糸することにより得られる不織布が開示されている。
【0004】
同文献には、
(A)PBIを静電紡糸する際に紡糸溶液に熱硬化性樹脂を添加すると、熱硬化性樹脂がPBIと反応してポリマー鎖を架橋し、耐薬品性が向上する点、及び、
(B)紡糸溶液に塩化リチウムなどの塩をさらに添加すると、紡糸溶液の導電性が高くなるために、繊維径が小さくなり、かつ、繊維径のばらつきも小さくなる点
が記載されている。
【0005】
特許文献2には、
(a)パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、及びポリベンゾイミダゾール(PBI)を含むキャスト溶液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることにより電解質膜を作製し、
(b)セリウムイオンの含有率が3%となるように硝酸セリウム水溶液に電解質膜を浸漬する
ことにより得られる高分子電解質膜が開示されている。
【0006】
同文献には、
(A)スルフィド系化合物は溶出した白金を不活性化し、ポリアゾール化合物は過酸化物ラジカルを不活性化し、遷移金属イオンは過酸化水素分解する機能を持つが、これら単独では、高温低加湿条件下での耐久性が不十分となる点、及び、
(B)遷移金属イオン、ポリアゾール系化合物、及びスルフィド系化合物を組み合わせて用いると、過酸化水素、溶出した白金、及び過酸化物ラジカルが相補的に不活性化され、高温低加湿条件下での耐久性が向上する点
が記載されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、難溶性鉄シアノ錯体の微粒子を含む電解質膜を備えた固体高分子形燃料電池が開示されている。
同文献には、電解質膜に、対カチオンとして特定の金属イオンを含む難溶性鉄シアノ錯体を添加すると、燃料電池の耐久性が向上する点が記載されている。
【0008】
特許文献2、3に記載されているように、電解質膜の酸基のプロトンの一部を遷移金属イオンでイオン交換し、あるいは、電解質膜にある種の化合物を添加すると、電解質膜の耐久性が向上する。しかし、電解質膜に劣化抑制作用があるイオン又は化合物を添加する方法は、電解質膜の伝導度を低下させる場合がある。一方、伝導度の低下を抑制するために、劣化抑制剤の添加量を減らすと、耐久性が不十分となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-234581号公報
【文献】特開2013-095757号公報
【文献】特開2018-006109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、固体高分子電解質と複合化した時に、固体高分子電解質の伝導度を著しく低下させることなく、固体高分子電解質のラジカルによる劣化を抑制することが可能な多孔膜を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、固体高分子電解質がこのような多孔膜で補強された複合膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る多孔膜は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記多孔膜は、
多孔質の基材と、
前記基材の表面又は内部に添加された第1劣化抑制剤と
を備えている。
(2)前記第1劣化抑制剤は、
(a)前記基材と複合化される固体高分子電解質の劣化を起こすラジカルの発生を抑制し、又は前記ラジカルを消去する作用がある金属元素(A)のイオン、及び/又は、
(b)前記金属元素(A)を含む化合物
からなる。
【0012】
本発明に係る複合膜は、
固体高分子電解質と
前記固体高分子電解質を補強するための本発明に係る多孔膜と、
を備えている。
本発明に係る複合膜は、前記固体高分子電解質に添加された第2劣化抑制剤をさらに備えていても良い。
【発明の効果】
【0013】
固体高分子電解質を多孔膜で補強して複合膜とする場合において、多孔膜に第1劣化抑制剤を添加すると、伝導度を著しく低下させることなく、固体高分子電解質の劣化を抑制することができる。
また、多孔膜に第1劣化抑制剤を添加することに加えて、固体高分子電解質に第2劣化抑制剤をさらに添加すると、多孔膜又は固体高分子電解質のいずれか一方に劣化抑制剤を添加した場合に比べて、耐久性が向上する。しかも、高い耐久性を得るために、第2劣化抑制剤の添加量を過度に多くする必要がないので、伝導度の低下も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】Ce水溶液への浸漬、水洗、及び乾燥後のPBI不織布のEDAXスペクトルである。
【
図3】実施例1~2及び比較例1~3で得られた複合膜のフッ素排出速度(FER)と伝導度である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 多孔膜]
本発明に係る多孔膜は、
多孔質の基材と、
前記基材の表面又は内部に添加された第1劣化抑制剤と
を備えている。
【0016】
[1.1. 基材]
[1.1.1. 形状]
基材の形状は、多孔質である限りにおいて、特に限定されない。多孔質の基材としては、例えば、不織布、エッチングにより細孔を形成した膜、延伸処理により細孔を形成した膜、相分離法により細孔を形成した膜などがある。基材は、特に、不織布が好ましい。これは、第1劣化抑制剤を添加した溶液を紡糸することにより、第1劣化抑制剤を均一に基材に含有させることができるためである。
【0017】
基材の厚さ及び気孔率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。例えば、本発明に係る多孔膜を固体高分子電解質の補強材として用いる場合、厚さは、1μm以上20μm以下が好ましい。また、気孔率は、50%以上95%以下が好ましい。
【0018】
[1.1.2. 材料]
基材の材料は、その表面又は内部に第1劣化抑制剤を添加することが可能なもであれば良い。後述するように、第1劣化抑制剤は、金属元素(A)のイオン、又は、金属元素(A)を含む化合物からなる。そのため、基材の材料は、金属元素(A)のイオン又は金属元素(A)を含む化合物と化学的な相互作用を起こすことによって吸着することが可能な官能基を持つものが好ましい。これは、金属元素(A)のイオン又は金属元素(A)を含む化合物と官能基との化学的相互作用により、金属元素(A)が基材に仮固定されるためである。
【0019】
ここで、「金属元素(A)のイオンと相互作用を起こす官能基」とは、
(a)金属元素(A)のイオンが配位結合することが可能な官能基、
(b)金属元素(A)のイオンがイオン結合することが可能な官能基、又は、
(c)金属元素(A)のイオンが極性引力で結合することが可能な官能基
をいう。
【0020】
特に、多孔膜は、基材が孤立電子対又は電荷を持つN原子、O原子、S原子、又はP原子を含む官能基を備えた高分子化合物であり、第1劣化抑制剤が官能基に吸着している金属元素(A)のイオン、又は、金属元素(A)を含む化合物であるものが好ましい。
官能基は、高分子化合物に内在しているものでも良く、あるいは、高分子化合物に対して後処理により付加されたものでも良い。
【0021】
「金属元素(A)のイオン若しくは金属元素(A)を含む化合物を吸着させることが可能な官能基」としては、例えば、
(a)アミノ基、ピロール基、ピリジン基、イミダゾール基、スルホンイミド基、スルホンアミド基などのN含有官能基、
(b)カルボニル基、カルボキシル基、エーテル基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのO含有官能基、
(c)チオール基、チオカルボニル基などのS含有官能基、
(d)ホスフィノ基などのP含有官能基、
などがある。
【0022】
このような高分子化合物としては、例えば、
(a)ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエチレンオキサイド、
(b)上記高分子化合物の誘導体(基本構造に官能基などが導入されるなど、原子や有機基が他の原子や有機基に置きかえられたもの)、
などがある。
高分子化合物がPBIである場合、PBIの誘導体としては、例えば、
(a)ベンゾイミダゾール環の間に芳香族環R(例えば、フェニレン基、ビフェニレン基などの架橋基、ナフチレン基などの縮合環、ピリジンなどのヘテロ環など)が導入されたもの(例えば、Rがフェニレン基からなるポリ-2,2’-(m-フェニレン)-5,5’-ビベンゾイミダゾール)、
(b)フェニレン基のHがスルホン酸基などで置換されたもの、
などがある。
基材は、これらのいずれか1種の高分子化合物からなるものでも良く、あるいは、2種以上の高分子化合物からなる混合物でも良い。
これらの中でも、基材は、PBI、PES、又は、PIが好ましい。これは、耐熱性、及び力学特性に優れているためである。
【0023】
[1.2. 第1劣化抑制剤]
[1.2.1. 定義]
本発明に係る多孔膜は、固体高分子電解質の補強材として使用することができる。本発明に係る多孔膜と固体高分子電解質からなる複合膜は、固体高分子形燃料電池などの各種電気化学デバイスの電解質膜として使用することができる。
本発明において、「第1劣化抑制剤」とは、このような複合膜をラジカルが発生する環境下で使用した時に、固体高分子電解質の劣化を起こすラジカルの発生を抑制し、又はラジカルを消去する作用がある金属元素(A)を含む添加物をいう。第1劣化抑制剤は、固体高分子電解質の劣化を抑制する作用に加えて、多孔膜の劣化を抑制する作用をさらに備えているものでも良い。
【0024】
第1劣化抑制剤は、具体的には、
(a)基材と複合化される固体高分子電解質の劣化を起こすラジカルの発生を抑制し、又は前記ラジカルを消去する作用がある金属元素(A)のイオン、及び/又は、
(b)金属元素(A)を含む化合物
からなる。
ここで、「ラジカルの発生を抑制する作用」とは、ラジカルの発生源となる過酸化水素をイオン分解する作用、あるいは、過酸化水素からラジカルを発生する作用がある金属元素(C)のイオンを捕捉して不活性化させる作用をいう。このような作用がある金属元素(A)としては、Cs、Sn、Ti、Mn、Co、Zr、Ru、Rh、W、Pt等が挙げられる。
「ラジカルを消去する作用」とは、ラジカルと反応し(Mn++HO・→M(n+1)++OH-)ラジカルを還元させる作用をいう。このような作用がある金属元素(A)としては、Ce、Ag等が挙げられる。
第1劣化抑制剤が金属元素(A)のイオンである場合、金属元素(A)のイオンは、多孔質の基材に含まれる所定の官能基に吸着している。
第1劣化抑制剤が金属元素(A)を含む化合物である場合も同様に、金属元素(A)を含む化合物は、多孔質の基材の表面又は内部の官能基に吸着している。
【0025】
[1.2.2. 第1劣化抑制剤の具体例]
金属元素(A)としては、例えば、
(a)Ceなどの希土類金属元素、
(b)Ag、Cs、Sn、Ti、Mn、Co、Zr、Ru、Rh、W、Ptなどの遷移金属元素
などがある。金属元素(A)は、これらのいずれか1種の金属元素であっても良く、あるいは、2種以上の金属元素であっても良い。
これらの中でも、金属元素(A)は、Ce、Ag、Cs、及びSnからなる群から選ばれるいずれか1以上の金属元素が好ましい。これは、ラジカルの生成を抑制する作用、又はラジカルを消去する作用が大きいためである。
【0026】
第1劣化抑制剤として添加される「金属元素(A)の化合物」としては、例えば、
(a)硝酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、セリウムアセチルアセトナート、
(b)硝酸銀、銀アセチルアセトナート、
(c)硝酸セシウム、硫酸セシウム、塩化セシウム、蟻酸セシウム、
(d)硫酸スズ、
などがある。
【0027】
[1.2.3. 金属元素(A)の含有率]
「金属元素(A)の含有率(wt%)」とは、次の式(1)で表される値をいう。
金属元素(A)の含有率(wt%)=WM×100/(WM+Wp) …(1)
但し、
WMは、前記金属元素(A)の重量、
Wpは、前記基材の重量。
【0028】
金属元素(A)の含有率は、基材と複合化される固体高分子電解質の耐久性に影響を与える。金属元素(A)の含有率が低すぎると、固体高分子電解質の劣化の抑制が不十分となる。従って、金属元素(A)の含有率は、0.1wt%以上が好ましい。含有率は、好ましくは、0.5wt%以上、さらに好ましくは、1wt%以上である。
一方、金属元素(A)の含有率が高くなりすぎると、固体高分子電解質と複合化した時に固体高分子電解質の伝導度が低下する場合がある。従って、金属元素(A)の含有率は、50wt%以下が好ましい。含有率は、好ましくは、30wt%以下、さらに好ましくは、20wt%以下である。
【0029】
[2. 多孔膜の製造方法]
本発明に係る多孔膜は、種々の方法により製造することができる。
多孔膜の製造方法は、
(a)種々の方法を用いて多孔質の基材を作製し、次いで、多孔質の基材に第1劣化抑制剤を添加する方法、及び、
(b)多孔質の基材を製造するための原料に第1劣化抑制剤を加え、第1劣化抑制剤を含む原料を用いて、直接、第1劣化抑制剤を含む多孔膜を製造する方法、
に大別される。
【0030】
例えば、多孔質の基材が孤立電子対又は電荷を持つN原子、O原子、S原子、又はP原子を含む官能基を備えた高分子化合物からなり、第1劣化抑制剤が金属元素(A)のイオンである場合、まず、種々の方法を用いて多孔質の基材を作製する。基材の製造方法は、特に限定されない。基材の製造方法としては、例えば、電解紡糸法、相分離法、エッチング法、延伸法などがある。
次いで、金属元素(A)のイオンを含む溶液中に基材を浸漬する。これにより、官能基に金属元素(A)のイオンを吸着させることができる。
【0031】
あるいは、電解紡糸法を用いて多孔質の基材を製造する場合において、第1劣化抑制剤が金属元素(A)のイオン、又は、金属元素(A)を含む化合物である時には、多孔質の基材を製造するための原料溶液中に第1劣化抑制剤を添加すれば良い。第1劣化抑制剤を含む原料溶液をそのまま電解紡糸すると、第1劣化抑制剤を含む不織布を、直接、製造することができる。
【0032】
第1劣化抑制剤が金属元素(A)を含む化合物からなり、水を含む溶媒中に第1劣化抑制剤を溶解させて溶液とし、この溶液を用いて多孔膜中に第1劣化抑制剤を添加する場合、金属元素(A)を含む化合物は、溶解度S(20℃)が1.0以上であるものが好ましい。これは、高濃度の溶液を用いた場合であっても、金属元素(A)のイオン又は金属元素(A)を含む化合物を官能基に均一に吸着させることができるためである。溶解度Sは、好ましくは、5以上800以下、さらに好ましくは、10以上500以下である。
ここで、「溶解度S」とは、水の重量(100g)に対する、20℃の水100gに溶解させることが可能な金属元素(A)を含む化合物の限界の重量(xg)の比(=x/100)をいう。
【0033】
[3. 複合膜]
本発明に係る複合膜は、
固体高分子電解質と
前記固体高分子電解質を補強するための本発明に係る多孔膜と、
を備えている。
複合膜は、固体高分子電解質に添加された第2劣化抑制剤をさらに備えていても良い。
【0034】
[3.1. 固体高分子電解質]
本発明において、複合膜に含まれる固体高分子電解質の材料は、特に限定されない。固体高分子電解質は、フッ素系電解質又は炭化水素系電解質のいずれであっても良い。また、固体高分子電解質の酸基の種類についても、特に限定されない。酸基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホンイミド基等がある。固体高分子電解質には、これらの酸基のいずれか1種類のみが含まれていても良く、あるいは、2種以上が含まれていても良い。
【0035】
[3.2. 多孔膜]
多孔膜は、固体高分子電解質を補強するためのものである。多孔膜は、多孔質の基材と、基材の表面又は内部に添加された第1劣化抑制剤とを備えている。多孔膜の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0036】
本発明において、多孔膜による固体高分子電解質の補強方法は、特に限定されない。補強方法としては、例えば、
(a)多孔膜の細孔内に固体高分子電解質溶液を含浸させ、溶媒を除去する方法、
(b)多孔膜を固体高分子電解質前駆体膜ではさみ、細孔内に電解質前駆体を溶融含浸させた後、電解質前駆体を加水分解する方法、
(c)多孔膜の細孔内に固体高分子電解質のモノマ、オリゴマ、プレポリマ等を充填し、細孔内で重合させる方法、
などがある。
【0037】
[3.3. 第2劣化抑制剤]
[3.3.1. 定義]
本発明に係る複合膜は、固体高分子電解質に添加された第2劣化抑制剤をさらに備えていても良い。多孔膜に第1劣化抑制剤を添加することに加えて、固体高分子電解質に第2劣化抑制剤をさらに添加すると、固体高分子電解質の伝導度を大きく低下させることなく、固体高分子電解質の耐久性を向上させることができる。
【0038】
ここで、「第2劣化抑制剤」とは、固体高分子電解質の劣化を起こすラジカルの発生を抑制し、又は、ラジカルを消去する作用がある金属元素(B)を含む添加物をいう。第2劣化抑制剤は、固体高分子電解質の劣化を抑制する作用に加えて、多孔膜の劣化を抑制する作用をさらに備えているものでも良い。
ここで、「ラジカルの発生を抑制する作用」とは、ラジカルの発生源となる過酸化水素をイオン分解する作用、あるいは、過酸化水素からラジカルを発生する作用がある金属元素(C)のイオンを捕捉して不活性化させる作用をいう。
「ラジカルを消去する作用」とは、ラジカルと反応し、ラジカルを還元させる作用をいう。
金属元素(B)は、多孔膜に含まれる金属元素(A)と同一の金属元素であっても良く、あるいは、異なる金属元素であっても良い。
【0039】
第2劣化抑制剤は、具体的には、
(a)固体高分子電解質の劣化を抑制する作用がある金属元素(B)のイオン、
(b)金属元素(B)の粒子、及び/又は、
(c)金属元素(B)を含む化合物
からなる。
第2劣化抑制剤が金属元素(B)のイオンである場合、金属元素(B)のイオンは、固体高分子電解質の酸基にイオン交換して吸着している。
一方、第2劣化抑制剤が金属元素(B)の粒子、及び/又は、金属元素(B)を含む化合物である場合、金属元素(B)の粒子、及び/又は、金属元素(B)を含む化合物は、固体高分子電解質に化学的相互作用により吸着していても良く、あるいは、固体高分子電解質の表面又は内部に分散していても良い。
【0040】
[3.3.2. 第2劣化抑制剤の具体例]
金属元素(B)としては、例えば、
(a)Ceなどの希土類金属元素、
(b)Ag、Cs、Sn、Ti、Mn、Co、Zr、Ru、Rh、W、Ptなどの遷移金属元素、
などがある。金属元素(B)は、これらのいずれか1種の金属元素であっても良く、あるいは、2種以上の金属元素であっても良い。
これらの中でも、金属元素(B)は、Ce、Ag、Cs、及びSnからなる群から選ばれるいずれか1以上の金属元素が好ましい。
金属元素(B)及びその化合物の詳細については、金属元素(A)及びその化合物と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
[3.3.3. 平均粒径]
第2劣化抑制剤が金属元素(B)の粒子、又は、金属元素(B)を含む化合物の粒子である場合、その平均粒径は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な粒径を選択することができる。
【0042】
但し、粒子の平均粒径が大きくなりすぎると、電解質と複合化させるのが困難となる。従って、粒子の平均粒径は、500nm以下が好ましい。平均粒径は、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。
ここで、「粒径」とは、固体高分子電解質に含まれる粒子の大きさを電子顕微鏡で観察した時の粒子の最大寸法をいう。
「平均粒径」とは、無作為に選んだ10個以上の粒子の粒径の平均値をいう。
【0043】
[3.3.4. 金属元素(B)の含有率]
「金属元素(B)の含有率(%)」とは、次の式(2)で表される値をいう。
金属元素(B)の含有率(%)=nM×M×100/(nI×I) …(2)
但し、
nMは、前記金属元素(B)が取り得る最大価数、
Mは、前記金属元素(B)のモル数、
nIは、前記固体高分子電解質に含まれるイオン交換基の価数、
Iは、前記イオン交換基のモル数。
【0044】
金属元素(B)の含有率は、複合膜に含まれる固体高分子電解質の耐久性に影響を与える。金属元素(B)の含有率が低すぎると、固体高分子電解質の劣化の抑制が不十分となる。従って、金属元素(B)の含有率は、0.01%以上が好ましい。含有率は、好ましくは、0.05%以上、さらに好ましくは、0.1%以上である。
【0045】
一方、第2劣化抑制剤が金属元素(B)のイオンである場合において、金属元素(B)の含有率が高くなりすぎると、固体高分子電解質の伝導度が過度に低下する。
また、第2劣化抑制剤が金属元素(B)を含む粒子である場合において、金属元素(B)の含有率が高くなりすぎると、伝導度の低下に加え、均一に分散できなくなる他、応力集中によりミクロなクラックが生じる場合がある。
従って、金属元素(B)の含有率は、30%以下が好ましい。含有率は、好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、10%以下である。
【0046】
[4. 作用]
ある種の金属元素は、ラジカルの生成を抑制し、又は、ラジカルを分解する作用がある。そのため、このような金属元素又はその化合物を劣化抑制剤として電解質膜に添加すると、電解質膜の耐久性が向上する。しかし、高い耐久性を得るために電解質膜に相対的に多量の劣化抑制剤を添加すると、劣化抑制剤に含まれる金属イオンが酸基のプロトンとイオン交換し、電解質膜の伝導度を低下させる場合がある。また、電解質膜の劣化により酸基が脱落すると、酸基と共に劣化抑制剤も溶出し、電解質の劣化が加速される。
【0047】
これに対し、固体高分子電解質を多孔膜で補強した複合膜において、多孔膜に第1劣化抑制剤を添加すると、第1劣化抑制剤の金属元素(A)は、官能基との相互作用により仮固定されているため、電解質に拡散して伝導度を大きく低下させることがない。電解質が劣化して、酸基と共に第1劣化抑制剤が溶出すると、濃度勾配により基材から電解質へ第1劣化抑制剤が拡散し、固体高分子電解質の劣化を抑制することができる。また、伝導度を大きく低下させることなく、第1劣化抑制剤を電解質よりも多く多孔膜に添加でき、耐久性が向上する。しかも、多孔膜は、補強材としても機能するので、複合膜の機械的強度も向上する。
また、多孔膜に第1劣化抑制剤を添加することに加えて、固体高分子電解質に第2劣化抑制剤をさらに添加すると、多孔膜又は固体高分子電解質のいずれか一方に劣化抑制剤を添加した場合に比べて、耐久性が向上する。しかも、高い耐久性を得るために、第2劣化抑制剤の添加量を過度に多くする必要がないので、伝導度の低下も抑制される。
【実施例】
【0048】
(実施例1~2、比較例1~3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
[1.1.1. 多孔膜の作製]
ポリベンゾイミダゾール(PBI)の濃度が20wt%となるように、PBI及びN,N-ジメチルアセトアミドを秤量した。N,N-ジメチルアセトアミドにPBIを加え、80℃で加熱した。得られた溶液をエレクトロスピニング装置で電解紡糸し、PBIからなる不織布を得た。印加電圧は、25kVとした。
【0049】
得られたPBI不織布を、0.2wt%Ce(NO
3)
3水溶液に浸漬した。浸漬後の不織布を、水洗、乾燥した。
図1に、PBI不織布のSEM像を示す。
図1より、不織布の繊維径は1μm以下であることが分かった。また、
図2に、Ce水溶液への浸漬、水洗、及び乾燥後のPBI不織布のEDAXスペクトルを示す。
図2より、不織布にCeが添加されていることが分かった。実施例1の場合、Ceの含有率は、1.2wt%であった。
【0050】
[1.1.2. 複合膜の作製]
ナフィオン(登録商標)溶液(D2020)を1-プロパノール及び超純水で希釈し、ポリマー濃度10wt%の溶液を得た。原料の重量比は、D2020:1-プロパノール:超純水=10:7:3とした。Ceを含有する不織布に、濃度10wt%のナフィオン(登録商標)溶液を含浸させ、静置して溶媒を蒸散させ、複合膜を得た。さらに、複合膜を140℃で15分加熱した。
【0051】
[1.2. 実施例2]
[1.2.1. 多孔膜の作製]
実施例1と同様にして、Ceを含むPBI不織布を作製した。
[1.2.2. 複合膜の作製]
実施例1と同様にして、10wt%に希釈したナフィオン(登録商標)溶液を作製した。これに、電解質のスルホン酸基の3%をCe3+で置換する量に相当するCe(NO3)3水溶液を添加した。以下、実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0052】
[1.3. 比較例1]
PBI不織布のCe(NO3)3水溶液への浸漬処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、多孔膜及び電解質のいずれもCeを含まない複合膜を作製した。
[1.4. 比較例2~3]
実施例1と同様にして、Ceを含まないPBI不織布を作製した。以下、実施例2と同様にして、電解質にのみスルホン酸基の3%相当(比較例2)又は10%相当(比較例3)のCeを含む複合膜を作製した。
【0053】
[2. 試験方法]
[2.1. フッ素排出速度(FER)]
複合膜に含まれる電解質のスルホン酸基の1%をFeイオン(Fe2+)で交換した。得られた複合膜を、0.3wt%の過酸化水素水蒸気に105℃で、5時間曝露した。複合膜から排出されたフッ素を回収して定量した。さらに、排出されたフッ素量を電解質重量で規格化し、フッ素排出速度(FER)(μg/mg/hr)を算出した。
[2.2. 伝導度]
複合膜を2端子セルにセットして、交流インピーダンス法により抵抗を測定し、複合膜の膜厚、膜幅を求め、複合膜の伝導度を算出した。測定温度は25℃、相対湿度はRH20%とした。
【0054】
[3. 結果]
図3に、実施例1~2及び比較例1~3で得られた複合膜のフッ素排出速度(FER)と伝導度を示す。
図3より、以下のことが分かる。
(1)比較例1のFERは、1.82μg/mg/hrであった。
(2)電解質にスルホン酸基の3%相当のCeを添加した場合(比較例2)、FERは0.93μg/mg/hrに低下した。また、電解質にスルホン酸基の10%相当のCeを添加した場合(比較例3)、FERは0.45μg/mg/hrまで低下した。しかし、電解質にCeを添加した場合、Ce添加量が多くなるほど、伝導度が低下した。
【0055】
(3)多孔膜にのみCeを添加した場合(実施例1)、FERは0.47μg/mg/hrに低下した。一方、実施例1の伝導度は、比較例1、2と同等以上であった。実施例1のFERが比較例1~3より小さく、かつ、実施例1の伝導度が比較例1、2と同等以上であるのは、
(a)多孔膜に添加されたCeの一部が電解質に拡散し、拡散したCeが電解質の劣化を抑制しているため、及び、
(b)電解質が劣化し、電解質に拡散したCeが溶出した場合であっても、多孔膜から電解質に必要最小限のCeが補給されるため、
と考えられる。
(4)さらに、多孔膜及び電解質の双方にCeを添加した場合(実施例2)、FERは0.19μg/mg/hrに低下した。また、実施例2の伝導度は、比較例2と同等であった。Ce添加の総量がほぼ同じ比較例3に比べ、実施例2はFERが低く、伝導度が高かった。
(5)電解質に添加したCeが初期の劣化を抑制する。また、電解質の劣化が始まり、電解質に添加したCeが溶出しても、多孔膜から電解質にCeが補給され、すぐに劣化を抑制できると考えられる。
【0056】
(実施例3)
[1. 試料の作製]
[1.1. 多孔膜の作製]
PBIの濃度が20wt%となるように、PBI及びN,N-ジメチルアセトアミドを秤量した。また、溶液中のCe(NO3)3の含有率が3%となるように、Ce(NO3)3水溶液を調製した。N,N-ジメチルアセトアミドにPBI及びCe(NO3)3水溶液を加え、80℃で加熱した。得られた溶液をエレクトロスピニング装置で電解紡糸し、Ceを含むPBIからなる不織布を得た。印加電圧25kVとした。
[1.2. 複合膜の作製]
実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0057】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例3の場合、FERは0.70μg/mg/hr、伝導度は、9.8×10-4S/cmであった。
【0058】
(実施例4)
[1. 試料の作製]
第1劣化抑制剤として、0.2wt%のAgNO3水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、Agを含有する多孔膜を作製した。Agの含有率は、2wt%であった。以下、実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0059】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例4の場合、FERは0.52μg/mg/hr、伝導度は、9.6×10-4S/cmであった。
【0060】
(実施例5)
[1. 試料の作製]
第1劣化抑制剤として、0.2wt%のCsNO3水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、Csを含有する多孔膜を作製した。Csの含有率は、1.6wt%であった。以下、実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0061】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例5の場合、FERは0.49μg/mg/hr、伝導度は、9.6×10-4S/cmであった。
【0062】
(実施例6)
[1. 試料の作製]
第1劣化抑制剤として、0.2wt%のSnSO4水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、Snを含有する多孔膜を作製した。Snの含有率は、0.8wt%であった。以下、実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0063】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例6の場合、FERは0.54μg/mg/hr、伝導度は、9.7×10-4S/cmであった。
【0064】
(実施例7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 多孔膜の作製]
ポリエーテルスルホン(PES)の濃度が20wt%となるように、PES及びジメチルホルムアミドを秤量した。また、溶液中のCe(NO3)3の含有率が1%となるように、Ce(NO3)3水溶液を調製した。ジメチルホルムアミドにPES及びCe(NO3)3水溶液を加え、80℃で加熱した。得られた溶液をエレクトロスピニング装置で電解紡糸し、Ceを含むPESからなる不織布を得た。印加電圧は、20kVとした。
[1.2. 複合膜の作製]
実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0065】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例7の場合、FERは0.91μg/mg/hr、伝導度は、9.9×10-4S/cmであった。
【0066】
(実施例8)
[1. 試料の作製]
[1.1. 多孔膜の作製]
ポリイミド(PI)の濃度が20wt%となるように、PI及びジメチルホルムアミドを秤量した。また、溶液中のCe(NO3)3の含有率が1%となるように、Ce(NO3)3水溶液を調製した。ジメチルホルムアミドにPI及びCe(NO3)3水溶液を加え、80℃で加熱した。得られた溶液をエレクトロスピニング装置で電解紡糸し、Ceを含むPIからなる不織布を得た。印加電圧は、30kVとした。
[1.2. 複合膜の作製]
実施例1と同様にして、複合膜を作製した。
【0067】
[2. 試験方法及び結果]
実施例1と同様にして、FER及び伝導度を測定した。実施例8の場合、FERは0.84μg/mg/hr、伝導度は、9.8×10-4S/cmであった。
【0068】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る多孔膜は、固体高分子電解質膜の補強材として用いることができる。
本発明に係る複合膜は、固体高分子形燃料電池、固体高分子形水電解装置などの電解質膜として用いることができる。