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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20231212BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20231212BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231212BHJP
   B41M 7/02 20060101ALN20231212BHJP
【FI】
G03G15/01 J
G03G9/08
G03G15/20 505
B41M7/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019136302
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021021755
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野宮 誠
(72)【発明者】
【氏名】牧井 厚人
(72)【発明者】
【氏名】大浦 麗仁
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-178452(JP,A)
【文献】特開2009-053396(JP,A)
【文献】特開2013-140216(JP,A)
【文献】特開2018-205694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 9/08
G03G 15/20
B41M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体と、前記記録媒体上に形成された熱可塑性樹脂層とを含む樹脂製画像を加飾して加飾画像を形成するための画像形成方法であって、
粉体保持面に保持された粉体を配向させる粉体配向工程と、
配向させた前記粉体を、前記熱可塑性樹脂層の表面に転写する粉体転写工程と、
を有し、
前記熱可塑性樹脂層の粘弾性測定において、周波数1Hzかつ昇温速度3℃/分の測定条件で、30℃から100℃まで測定した際の90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である画像形成方法。
【請求項2】
前記粉体は、軟化した前記熱可塑性樹脂層の表面に転写される、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂層は、結晶性樹脂を含む、請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記粉体配向工程は、粉体保持面に保持された前記粉体を摺擦する工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記摺擦する工程は、円筒状の配向部材の回転により前記粉体を摺擦する工程である、請求項4に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記粉体保持面は、粘着性を有することにより前記粉体を保持する、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記粉体は、非球形粉体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記粉体の形状は、扁平な粒子形状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記粉体の厚みは0.2μm~3.0μmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記粉体は、金属粉および/または金属酸化物粉である、請求項1~9のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド印刷市場において、特色印刷、メタリック印刷、高付加価値印刷の需要が高まっている。中でも、メタリック印刷およびパール印刷に関する要望は特に大きく、多種多様な検討が行われている。また、上記印刷の記録媒体は紙媒体が中心であるが、フィルムなどの非紙媒体への印刷に対する要望も高まっている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、トナー画像を形成し、着色剤層と粘着剤層を有する箔体を、トナー画像に重ね合わせて加熱および加圧し、トナーの加熱による溶着を利用することで、トナー画像を加飾する方法を開示している。これにより、箔体にしわを生じさせることなく箔付け転写ができると記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、光輝性顔料をトナーに含有させた光輝性トナーを必要な部分にのみ使用してメタリック画像を形成する方法が開示されている。光輝性トナーを使用することで、トナー載り量が低い場合であっても、光輝性の高い画像を形成できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平01-200985号公報
【文献】特開2014-157249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、転写箔を用いることにより、特許文献2では、光輝性トナーを用いることにより、それぞれ所望する画像が得られている。しかしながら、本発明者らの検討によると、両者ともに、所望する光沢が得られないことがあった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、十分な光沢感およびメタリック感を有する画像を容易に作製できる画像形成方法および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像形成方法は、記録媒体と、前記記録媒体上に形成された熱可塑性樹脂層とを含む樹脂製画像を加飾して加飾画像を形成するための画像形成方法であって、粉体保持面に保持された粉体を配向させる粉体配向工程と、配向させた前記粉体を、前記熱可塑性樹脂層の表面に転写する粉体転写工程と、を有し、前記熱可塑性樹脂層の粘弾性測定において、周波数1Hzかつ昇温速度3℃/分の測定条件で、30℃から100℃まで測定した際の90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である。
【0009】
本発明の画像形成装置は、粉体を保持するための粉体保持面を有する粉体保持部材と、前記粉体保持面に保持された前記粉体を配向させるための配向部材と、前記粉体保持部材の粉体保持面と対向する位置に設けられ、熱可塑性樹脂層を有する記録媒体を前記粉体保持面との間で挟持して、前記粉体を前記熱可塑性樹脂層の表面に転写するための対向部材と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な光沢感およびメタリック感を有する画像を容易に作製できる画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る上記画像形成装置の一部である表面処理部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
1.画像形成方法
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、記録媒体と、記録媒体上に形成された熱可塑性樹脂層とを含む樹脂製画像を加飾して加飾画像を形成するための画像形成方法であって、(1)粉体保持面に保持された粉体を配向させる粉体配向工程と、(2)配向させた粉体を、熱可塑性樹脂層の表面に転写する粉体転写工程と、有する画像形成方法である。また、本発明の一実施の形態に係る画像形成方法において、上記(1)および(2)の工程の前に、樹脂層形成工程、および粉体供給工程を有していてもよい。以下、各工程について説明する。
【0014】
1-1.樹脂層形成工程
樹脂層形成工程は、乾式および湿式の電子写真方式やインクジェット法などの公知の画像形成方法を用いて、記録媒体上に熱可塑性樹脂を付与して、熱可塑性樹脂層(以下、「樹脂層」ともいう)を形成する工程である。
【0015】
1-1-1.記録媒体
本発明で使用することができる記録媒体は、その上に樹脂層を形成することができれば特に制限されない。記録媒体の例には、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙またはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、プラスチックフィルム、樹脂製フィルム、布などの各種が含まれる。また、上記記録媒体の形状および色は特に限定されず、形成すべき最終画像に応じて適宜選択することができる。
【0016】
1-1-2.熱可塑性樹脂層
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂を含む樹脂層である。当該熱可塑性樹脂層は、電子写真方式で形成されたトナー画像からなる層であることが好ましく、上述した記録媒体に定着されたトナー粒子により構成された樹脂層であることがより好ましい。また、当該樹脂層は、周波数1Hzかつ昇温速度3℃/分の測定条件で、30℃から100℃まで測定した際の90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であり、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることがより好ましい。なお、「貯蔵弾性率」とは、材料の硬さの指標となるものであり、その値が小さいほど柔らかい材料であることを示すものである。なお、貯蔵弾性率G’は、レオメーター「ARESG2」(TA INSTRUMENT社製)を用いて測定することができる。
【0017】
90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上である場合には、軟化した樹脂層が適度な固さを有し、樹脂層が崩れるのを抑制するので、樹脂層色の濃度差を生じにくくするとともに、下地である記録媒体を見えにくくすることができる。また、90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以下である場合には、加熱によって樹脂層は適度に軟らかくなり、粉体の表面の凹凸の内部に樹脂が入り込みやすくなることから、樹脂層を構成する樹脂と粉体との接触面積が増えるので、樹脂層への粉体の付着性を良好とすることができる。これにより、所望する光沢感およびメタリック感(ミラー調/パール調)を有する画像を容易に作製することができる。
【0018】
また、樹脂層を構成する熱可塑性樹脂は公知の熱可塑性樹脂から適宜に選ぶことができる。なお、当該樹脂層は、着色剤、分散剤、界面活性剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0019】
熱可塑性樹脂の例には、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、カーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂が含まれる。上記熱可塑性樹脂の中では、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましく、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂であることがより好ましい。上記熱可塑性樹脂は、樹脂層の90℃における貯蔵弾性率G’を1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下となるようにできれば、特に限定されない。なお、上述の熱可塑性樹脂は、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
本発明でいう「スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂」とは、少なくともスチレン単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成される共重合体樹脂のことをいう。なお、スチレン単量体には、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
【0021】
また、本発明でいう「(メタ)アクリル酸エステル単量体」とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有する単量体のことをいう。(メタ)アクリル酸エステル単量体の例には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
【0022】
上述したスチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂の例には、上記スチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、一般のビニル単量体(オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N-ビニル化合物類など)をさらに用いて形成される共重合体が含まれる。さらに、スチレン-(メタ)アクリル系共重合体樹脂の例には、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体およびその他の一般のビニル単量体の他、多官能性ビニル単量体や、側鎖にイオン性解離基(カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基など)を有するビニル単量体を用いて形成される共重合体も含まれる。ビニル単量体の例には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などが含まれる。
【0023】
また、上述した熱可塑性樹脂は、共重合体であってもよい。熱可塑性樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0024】
また、熱可塑性樹脂層は、結晶性樹脂を含むことが好ましい。
【0025】
樹脂層に含まれる結晶性樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂であることが好ましい。樹脂層に結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、樹脂層の90℃付近における貯蔵弾性率G’の変化の勾配を小さくすることができることから、樹脂層を軟化させるための加熱温度を広い範囲(例えば70~100℃)にすることができる。これにより、加熱される温度にばらつきがあっても樹脂層を所望する柔らかさに調整しやすくなるので、所望する光沢感およびメタリック感(ミラー調/パール調)を有する画像を容易に作製することができる。
【0026】
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸化合物)と、2価以上のアルコール(多価アルコール化合物)との重縮合反応によって得られる結晶性樹脂である。
【0027】
多価カルボン酸化合物とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上有する化合物であり、多価カルボン酸化合物のアルキルエステル、酸無水物及び酸塩化物を用いることができる。
【0028】
上記多価カルボン酸化合物の例には、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、酒石酸、粘液酸などの2価の脂肪族カルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸およびドデセニルコハク酸などの2価の芳香族カルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上の芳香族カルボン酸などが含まれる。
【0029】
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、上記多価カルボン酸化合物の中では、2価の脂肪族カルボン酸であることが好ましい。なお、上記多価カルボン酸化合物は、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
多価アルコール化合物とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物である。
【0031】
上記多価アルコール化合物の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの2価の直鎖型脂肪族アルコール;シクロヘキサンジオールなどの2価の脂環式アルコール;ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの2価の芳香族アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の脂肪族アルコール;ヘキサメチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のグアニジン骨格を有するアルコールなどが含まれる。
【0032】
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、上記多価アルコール化合物の中では、2価の脂肪族アルコールであることが好ましく、2価の直鎖型脂肪族アルコールであることがより好ましい。なお、上記多価アルコール化合物は、1種類のみを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
結晶性ポリエステル樹脂を合成するためのモノマーにおける上記多価アルコール化合物と上記多価カルボン酸化合物との割合は、多価アルコール化合物のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸化合物のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]で2.0/1.0~1.0/2.0であることが好ましく、1.5/1.0~1.0/1.5であることがより好ましい。
【0034】
結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂であることが好ましい。ここで、「明確な吸熱ピーク」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことをいう。
【0035】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、その構成成分が100%ポリエステル構造からなるポリマー以外にも、ポリエステルを構成する成分と他の成分とを共に重合してなるポリマー(共重合体)も意味する。ただし、後者の場合には、ポリマー(共重合体)を構成するポリエステル以外の他の構成成分が50.0質量%以下である。
【0036】
また、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られるポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整してもよい。モノカルボン酸の例には、酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等が含まれる。また、モノアルコールの例には、メタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどが含まれる。
【0037】
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、2,000~1,000,000であることが好ましく、5,000~100,000であることがより好ましく、10,000~50,000であることが特に好ましい。
【0038】
樹脂層を構成する熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn」1本および「TSKgelSuperHZ-M」3本(いずれも東ソー株式会社製)を連結したものを用いて測定することができる。
【0039】
カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。測定試料(樹脂)を、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解し、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理し、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出する。検量線は、東ソー株式会社製「polystylene標準試料TSKstandard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとする。
【0040】
また、樹脂層中における熱可塑性樹脂の含有量は特に制限されないが、熱により樹脂層の表面を軟化させ、樹脂層の表面状態を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して60.0~97.0質量%であることが好ましく、70.0~95.0質量%であることがより好ましい。
【0041】
一方、樹脂層が熱可塑性樹脂以外の他の成分(例えば、着色剤、離型剤等)を含む場合、他の成分の含有量は特に制限されないが、熱により樹脂層の表面を軟化させ、樹脂層の表面状態を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して3.0~40.0質量%であることが好ましく、5.0~30.0質量%であることがより好ましい。
【0042】
上述した樹脂層は、電子写真方式で形成されたトナー画像からなる層であり、記録媒体に定着された複数種のトナーにより構成された層であることが好ましい。複数種のトナーにより樹脂層を構成することで、トナー画像と粉体との組み合わせで、様々な加飾画像を形成することができる。上記複数種のトナーは、例えば、含有する色材により呈される色が異なる複数種のトナー粒子を含むものとすることができる。トナー粒子の例には、ブラックトナー粒子、ホワイトトナー粒子、クリアトナー粒子、シアントナー粒子、イエロートナー粒子、マゼンダトナー粒子などが含まれる。
【0043】
トナー粒子は、トナー母体粒子に外添剤を添加し混合して製造することができる。トナー母体粒子の製造方法の例には、粉砕法、乳化重合凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法等が含まれる。これらのうちで、トナー母体粒子の製造方法としては、乳化凝集法、乳化重合凝集法が好ましい。
【0044】
特に、本発明のトナー母体粒子は、水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に樹脂微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤微粒子および樹脂微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであること、すなわち乳化凝集法などの製造方法により得られるものであることが好ましい。このような製造方法が好ましい理由は、トナー母体粒子に含有される着色剤の分散液における着色剤微粒子の分散性に優れ、さらに、着色剤微粒子と樹脂微粒子とを凝集、融着させた場合においても、着色剤微粒子が優れた分散性を保持したままトナー母体粒子を形成することができるためである。
【0045】
トナー母体粒子は、例えば、上述したような樹脂を含有し、着色剤および離型剤を含有することが好ましい。また、トナー母体粒子は荷電制御剤、磁性体を含んでもよい。以下、着色剤、離型剤、外添剤、荷電制御剤、磁性体をそれぞれ説明する。
【0046】
着色剤は、公知の着色剤が使用できる。具体的には、イエロートナー用のイエロー着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等、また、顔料としてC.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等が使用可能であり、これらの混合物も使用可能である。
【0047】
マゼンタトナー用のマゼンタ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等、顔料としてC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等が使用可能であり、これらの混合物も使用可能である。
【0048】
シアントナー用のシアン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等、顔料としてC.I.ピグメントブルー1、同7、同15:3、同18:3、同60、同62、同66、同76等が使用可能である。
【0049】
オレンジトナー用のオレンジ着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントオレンジ63、同68、同71、同72、同78等、顔料としてC.I.ピグメントオレンジ16、同36、同43、同51、同55、同59、同61、同71等が使用可能である。
【0050】
グリーン用のグリーン着色剤としては、染料としてC.I.ソルベントグリーン3、同5、同28等、顔料としてC.I.ピグメントグリーン7等が使用可能である。
【0051】
ブラックトナー用の着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が使用可能であり、カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用可能である。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが使用可能である。
【0052】
白色トナー用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、または有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)などが使用可能である。
【0053】
着色剤の含有量は、樹脂100.0質量部に対して、1.0~10.0質量部であることが好ましく、2.0~9.0質量部であることがより好ましい。
【0054】
また、トナー母体粒子に含むことができる離型剤は、特に制限されず、公知の離型剤を用いることができる。離型剤の例には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス等が含まれる。これらは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
離型剤の含有量は、樹脂100.0質量部に対して1.0~30.0質量部であることが好ましく、2.0~20.0質量部であることがより好ましい。
【0056】
外添剤は、流動性や帯電性を制御する目的で、公知の金属酸化物粒子を使用することができる。外添剤の例には、シリカ粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、酸化亜鉛粒子、酸化クロム粒子、酸化セリウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化タングステン粒子、酸化スズ粒子、酸化テルル粒子、酸化マンガン粒子、および酸化ホウ素粒子等が含まれる。これらは、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、スチレン、メタクリル酸メチルなどの単独重合体やこれらの共重合体等の有機微粒子を外添剤として使用してもよい。
【0058】
クリーニング性や転写性をさらに向上させるために外添剤として滑剤を使用してもよい。滑剤の例には、ステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩等の高級脂肪酸の金属塩が含まれる。
【0059】
これら外添剤の添加量は、トナー母体粒子全体に対して0.1~10.0質量%であることが好ましく、1.0~5.0質量%であることがより好ましい。
【0060】
トナー母体粒子に外添剤を添加する方法は特に限定されない。トナー母体粒子に外添剤を添加する方法の例には、乾燥済みのトナー母体粒子に外添剤を粉体で添加して混合する乾式法などが含まれる。外添剤の混合装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの公知の混合装置を使用することができる。たとえば、ヘンシェルミキサーを用いる場合は、攪拌羽根の先端の周速を好ましくは30~80m/sとし、20~50℃で10~30分程度攪拌混合することが好ましい。
【0061】
荷電制御剤は、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、公知の正帯電制御剤および負帯電制御剤を使用することができる。荷電制御剤の含有量は、樹脂100.0質量部に対して0.01~30.0質量部であることが好ましく、0.1~10.0質量部であることがより好ましい。
【0062】
磁性体は公知の磁性体を使用することができる。磁性体の例には、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金などが含まれる。熱処理することにより強磁性を示す合金の例には、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金、二酸化クロムなどが含まれる。
【0063】
トナー母体粒子の粒径は、画質を向上させる目的で小径であることが好ましく、帯電性、流動性、付着性の観点から、トナー母体粒子の体積基準メジアン径(D50)が2.0~8.0μmであることが好ましく、4.0~7.0μmであることがより好ましい。また、体積基準メジアン径(D50)が上記範囲内であると現像、転写、クリーニングが容易となる点で好ましい。
【0064】
トナー粒子の体積基準メジアン径(D50)は、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。測定手順としては、トナー粒子0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を作製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5.0~10.0%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを25000個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は100μmのものを使用する。測定範囲1.0~30.0μmの範囲を256分割しての頻度数を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メジアン径(D50)とする。
【0065】
トナー母体粒子の平均円形度は帯電の立ち上がりや流動性の観点から、より球形に近い0.945以上であることが好ましい。平均円形度は、各粒子の円形度を足し合わせ、測定した全粒子数で割った算術平均値である。なお、平均円形度は、湿式フロー式粒子径・形状分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)を用いて求めることができる。
【0066】
トナー母体粒子の円形度は、トナー粒子を界面活性剤水溶液に湿潤させ、超音波分散を1分間行い、分散した後、上述の分析装置を用い、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で測定を行うことができる。この範囲であれば、再現性のある測定値が得られる。円形度は下記式で算出することができる。
円形度=粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長/粒子投影像の周囲長
【0067】
上述した樹脂層は、電子写真方式で形成されたトナー画像からなる層であり、記録媒体に定着されたトナー粒子により構成された樹脂層であることが好ましい。トナー粒子であれば、電子写真方式による画像形成方法を利用することができるので、容易に樹脂層の形成ができる。また、トナー粒子により構成された樹脂層は、貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であるので、熱を加えることにより容易に軟化するので、軟化した樹脂層の表面に粉体を転写して、十分な光沢感およびメタリック感(ミラー調/パール調)を有する画像を容易に作製することができる。
【0068】
また、上述したトナー粒子とキャリア粒子とを、混合装置を用いて混合することで現像剤を製造することができる。混合装置の例には、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合器が含まれる。トナー粒子およびキャリア粒子の合計に対するトナー粒子の比率(トナー濃度)は4.0~8.0質量%であることが好ましい。トナー粒子の比率が4.0~8.0質量%であることで、トナーの帯電量が適切となり、初期および連続印字後の画質がより良好となる。
【0069】
ここで、「キャリア粒子」とは、キャリア芯材粒子の表面を被覆用樹脂で被覆した粒子のことをいう。また、「キャリア芯材粒子」とは、鉄粉などの金属粉の他、各種フェライト粒子またはそれらを樹脂中に分散させた粒子のことをいう。
【0070】
このようにして、記録媒体上に熱可塑性樹脂層が形成された樹脂製画像が形成される。
【0071】
1-2.粉体供給工程
粉体供給工程は、粉体を貯蔵容器内に配置されている搬送部材(例えば、回転する円柱形状のブラシやスポンジ、またはスクリュー形状の部材)を用いて貯蔵容器の開口部にまで搬送し、粉体保持部材(後述)に粉体を供給する工程である。粉体供給工程は、粉体保持部材に粉体を供給することができれば特に制限されない。粉体保持部材は、駆動モーターによって円筒状の軸を中心として回転する円筒状の部材であることが好ましく、円筒状の側周表面を粉体保持面としていることが好ましい。粉体保持面は、粉体をその表面に付着させることから、粘着性を有することが好ましい。
【0072】
1-3.粉体配向工程
粉体配向工程は、粉体保持部材の粉体保持面に付着している粉体の向きを揃える工程をいう。粉体の向きを揃える方法には、配向部材(例えば、ブラシ、スポンジまたは不織布のような多孔質材料)で、粉体保持部材の粉体保持面に付着している粉体の表面を摺擦する方法がある。また、粉体配向工程は、粉体保持面に付着している粉体の向きを揃えることができれば特に制限されず、例えば、粉体の表面に送風すること、粉体が磁性粒子を含むものであれば、粉体保持部材の内部から磁力を使って粉体を引き寄せることによって行うこともできる。ここで、「摺擦する」とは、粉体保持部材の粉体保持面に接触するように配置している配向部材を粉体保持面に対して相対的に移動させることをいう。
【0073】
また、粉体保持部材の粉体保持面に粉体を配向させる観点から、摺擦には押圧が伴うことが好ましい。「押圧」とは、粉体の表面に対して交差する方向(たとえば垂直方向)に粉体の表面を押すことを意味する。
【0074】
摺擦は、摺擦の速度が遅すぎると粉体保持面に沿う粉体の配向が不十分となり、速すぎると粉体の付着が不十分となることがあり、粉体保持部材の粉体保持面に沿う粉体の配向が不十分となり、最終画像における所期の外観の明瞭さが低下することがある。粉体保持部材の粉体保持面における粉体の付着と配向とを十分に行う観点から、粉体保持部材の粉体保持面に対する配向部材の相対的な速度差は、5mm/秒~500mm/秒であることが好ましく、50mm/秒~250mm/秒であることがより好ましい。
【0075】
摺擦は、粉体保持部材の粉体保持面に対する配向部材の接触幅が、狭すぎると配向部材が粉体保持面に沿って移動する際に粉体の向きのばらつきが生じやすく、粉体保持面に付着する粉体の配向が不十分になることがあり、接触幅が広すぎると、記録媒体の搬送が難しくなる。粉体保持面に付着する粉体の所期の配向性を十分に実現する観点から、接触幅は、粉体保持面に対する配向部材の移動方向の長さで、1mm~200mmであることが好ましい。
【0076】
摺擦は、押圧力が低すぎると、樹脂層に転写する前に粉体が粉体保持面から剥がれてしまうおそれがあり、高すぎると、粉体が樹脂層に転写されにくくなるおそれがある。配向させた粉体を樹脂層に効率よく転写させる観点から、押圧力は、1~10kPaであることが好ましく、1~5kPaであることがより好ましい。
【0077】
配向部材は、回転部材であってもよいし、往復運動する部材または固定されている部材のような非回転部材であってもよい。配向部材は、粉体保持面に対して垂直な方向を回転軸として相対的に回転する部材であってもよいし、粉体保持面に接する回転自在なローラであってもよい。配向部材の形状には、円筒、楕円、多角形が含まれる。この中において、配向部材の形状は、円筒状であることが好ましい。
【0078】
配向部材は、粉体保持面を押圧しながらその表面が粉体の表面に対して相対的に移動自在に構成される。配向部材による摺擦は、例えば、粉体が粉体保持部材により搬送されているときに、固定された配向部材で摺擦することによって、あるいは、搬送されているときに、搬送速度よりも遅い速度で回転するローラで摺擦することによって、あるいは、搬送されているときに搬送方向とは逆の方向に回転するローラで摺擦することによって、あるいは、搬送方向に対してその回転軸が斜めとなる向きに配置された回転自在なローラで摺擦することによって行うことが可能である。
【0079】
また、配向部材は、柔軟性を有することが好ましい。配向部材の柔軟性は、例えば、押圧時に、粉体の表面の形状に追従可能な程度に配向部材の表面が変形する程度の柔らかさ(変形追従性)である。このような柔軟性を有する配向部材の例には、スポンジおよびブラシが含まれる。
【0080】
1-4.粉体転写工程
粉体転写工程は、粉体配向工程で粉体保持部材の粉体保持面に配向させた粉体を、軟化させた樹脂層の表面に転写させる工程をいう。粉体を樹脂層に転写する方法は、配向させた粉体を粉体保持面から樹脂層に転写することができれば、特に制限されない。
【0081】
樹脂層を軟化させる方法の例には、樹脂層が配置された記録媒体を画像面が上になるように、ホットプレート上に配置させて記録媒体の下側から加熱する方法、画像面側(上側)からヒータで加熱する方法、樹脂層を軟化させる軟化剤を樹脂層の表面に付与する方法、および記録媒体の上側または下側から光照射により軟化させる方法などがある。
【0082】
樹脂層を加熱により軟化させる場合には、樹脂層が軟化して粉体が付着する温度(以下、「付着温度」とも言う)で行う。
【0083】
付着温度は、常温の樹脂層の温度を徐々に上げていき、所期の画像が得られる温度、例えば、ミラー調/パール調の画像であれば樹脂層の表面に粉体が貼り付き始める温度を検出することによって求めることができる。
【0084】
また、付着温度は、十分な光沢感およびメタリック感(ミラー調/パール調)を有する画像を得るという観点から、65~150℃であることが好ましく、70~110℃であることがより好ましい。上記温度は、例えば、使用する記録媒体が樹脂フィルムである場合には、樹脂フィルムの種類、樹脂フィルムの厚さ、樹脂層の軟化のしやすさなどによって適宜選択することができる。また、所望する質感(光沢)に合わせて、上記温度を適宜選択することができる。
【0085】
また、画像面側(上側)からヒータで加熱する方法においても、上記方法と同様にして、付着温度を決めることができる。
【0086】
また、樹脂層を軟化剤の付与により軟化させる場合には、付着温度は、記録媒体の温度が当該記録媒体に変形が生じる温度より低くなるように、または粉体に劣化、変色もしくは変形を生じさせる温度よりも低い温度となるようにすることが好ましい。
【0087】
軟化剤は、樹脂層を軟化させることができれば特に制限されない。軟化剤の例には、有機溶剤、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、またはそれらを含む溶液などが含まれ、具体的には、アジピン酸イソブチル、テトラヒドロフラン、またはそれらを含む溶液などが含まれる。軟化剤を樹脂層の表面に付与すると、樹脂層を構成する樹脂が部分的に溶解するか、または、樹脂が膨潤することにより、樹脂層が軟化すると考えられる。
【0088】
軟化剤を付与する方法は、軟化剤を樹脂層の表面に付与できれば、特に制限されない。軟化剤を付与する方法の例には、スプレー塗布、インクジェット方式、ディスペンサーによる塗布などが含まれる。軟化剤は、粉体を供給する前に付与されてもよいし、粉体の供給と同時に付与されてもよい。上記軟化剤の付与量は、特に制限されず、樹脂層、粉体、所望の加飾効果等に応じて任意に調整することができ、樹脂層を十分に軟化させる程度でも、樹脂層が接着能を持ちはじめる程度でもよい。
【0089】
また、樹脂層を光照射により軟化させる場合には、樹脂層を変色または劣化させない方法であれば、特に限定されない。光照射の例には、紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、レーザー照射などが含まれる。上記光照射の中では、取り扱いが容易で、樹脂層を十分な速度で軟化させることができるという観点から、紫外光を用いることが好ましい。特に、樹脂層がトナー画像である場合、異なる色のトナーを含む樹脂層を容易に軟化できるという観点から、光照射は紫外光で行うことが好ましい。
【0090】
粉体は、上述のいずれかの方法で軟化された樹脂層の表面に転写されうる。これにより、樹脂層と粉体とが接触してなる加飾画像を形成することができる。
【0091】
粉体は粉体粒子が集合したものである。粉体は、例えば、メタリック感のある加飾効果を得たい場合、金属粉または金属酸化物粉を含む粉体粒子であることが好ましい。粉体粒子の例には、金属粒子、樹脂粒子、熱応答性材料を含む粒子、磁性粒子、非磁性粒子などが含まれる。また、粉体粒子は、異なる2種以上の材料からなるものであってもよい。粉体粒子の形状は、球形粒子であってもよいし、非球形粒子であってもよい。粉体は、合成品であってもよいし市販品であってもよい。粉体は、異なる2種以上の粉体粒子の混合品であってもよい。なお、粉体はトナーではない。
【0092】
また、上述の粉体粒子は、被覆されていてもよい。たとえば、金属粒子は、当該金属とは異なる金属、金属酸化物または樹脂で被覆されたものでもよいし、樹脂またはガラス等の表面を金属、金属酸化物で被覆したものでもよい。また、金属粒子は金属酸化物粒子であってもよく、当該金属酸化物とは異なる金属酸化物、金属または樹脂で被覆されたものでもよい。また、金属粒子は、金属または金属酸化物を板状に延展させて粉砕したものやそれを種々の材料で被覆したもの、フィルムやガラスに金属または金属酸化物を蒸着または湿式コーティングしたものでもよい。メタリック画像を得るためには、金属粒子は金属または金属酸化物を含有することが好ましく、金属または金属酸化物の含有量は0.2~100質量%であることが好ましい。
【0093】
粉体の形状は、粉体保持面に沿って粉体を配向させてから、樹脂層の表面に転写させるという観点から、真球ではない形状を有する粉体(非球形粉体)、例えば、扁平な粒子形状であることが好ましい。「扁平な粒子形状」とは、粉体の粒子における最大長さを長径、当該長径に直交する方向における最大長さを短径、上記長径に直交する方向の最少長さを厚み、とするときに、厚みに対する短径の比率が5以上である形状のことをいう。
【0094】
粉体の厚みは、配向した粉体の付着による外観効果を十分に発現させる観点から、0.2~10μmであることが好ましく、0.2~3.0μmであることがより好ましい。粉体の厚みが小さすぎると、樹脂層の表面に付着した粉体の長径方向および短径方向を含む粉体の平面方向が上記樹脂層の表面方向に実質的に沿う粉体の良好な配向状態が十分に形成されないことがある。上記厚みが大きすぎると、画像をこすった時に粉体が取れてしまうことがある。
【0095】
また、上述した粉体の例には、メタシャイン(日本板硝子株式会社製、「メタシャイン」は同社の登録商標)、サンシャインベビー クロムパウダー、オーロラパウダー、パールパウダー(いずれも株式会社GGコーポレーション製)、ICEGEL ミラーメタルパウダー(株式会社TAT製)、ピカエース MCシャインダスト、エフェクトC(株式会社クラチ製、「ピカエース」は同社の登録商標)、PREGEL マジックパウダー、ミラーシリーズ(有限会社プリアンファ製、「PREGEL」は同社の登録商標)、Bonnailシャインパウダー(株式会社ケイズプランイング製、「BON NAIL」は同社の登録商標)、エルジーneo(尾池工業株式会社製、「エルジーneo」は同社の登録商標)、アストロフレーク(日本防湿工業株式会社製)、アルミニウム顔料(東洋アルミニウム株式会社製)が含まれる。
【0096】
熱応答性材料は、熱による刺激をきっかけに膨張、収縮、変形などの形状の変化、顕色、消色、変色などの色の変化を起こす材料である。熱応答性材料を含む粒子の例には、熱膨張性マイクロカプセル、感温カプセルなどが含まれる。熱膨張性マイクロカプセルの例には、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、クレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製)などが、感温カプセルの例には、感温染料カプセル(株式会社日本カプセルプロダクツ製)などが含まれる。
【0097】
粉体転写工程のあとにさらに摺擦工程を有していてもよい。
【0098】
なお、上記実施形態では、樹脂製画像の形成と、形成された樹脂製画像の粉体による加飾とを連続して一体的に行う態様を示したが、すでに形成されている樹脂製画像の表面に配向された粉体を転写して、上記樹脂製画像を加飾してもよい。
【0099】
2.画像形成装置
本発明の一実施の形態に係る画像形成装置10について図1を用いて説明する。画像形成装置10は、図1に示されるように、樹脂製画像形成部60と表面処理部70とを有する。樹脂製画像形成部60は、記録媒体とその上に配置されている熱可塑性樹脂層とを含む樹脂製画像を作製する部分である。表面処理部70は、樹脂製画像形成部60で形成された樹脂製画像の表面を処理して加飾する部分である。
【0100】
2-1.樹脂製画像形成部
樹脂製画像形成部60は、公知のカラープリンタと同様の構成を有している。樹脂製画像形成部60は、画像読取部、画像形成部、記録媒体搬送部、給記録媒体部、データ受付部、制御部および定着部27を有する。
【0101】
画像読取部は、光源11、光学系12、撮像素子13、および画像処理部14を有する。
【0102】
画像読取部は、光源11から照射された光は、読取面に載置された原稿に照射され、その反射光は光学系12のレンズおよび反射鏡を介して、読取り位置に移動した撮像素子13に結像する。撮像素子13は、原稿からの反射光の強度に応じて電気信号を生成する。生成された電気信号は、画像処理部14において、アナログ信号からディジタル信号に変換された後、補正処理、フィルター処理、画像圧縮処理等が施され、画像データとして画像処理部14のメモリに記憶される。こうして、画像読取部は、原稿の画像を読み取り、画像データを記憶する。
【0103】
画像形成部は、イエロー(Y)トナーからなる画像を形成する画像形成部、マゼンタ(M)トナーからなる画像を形成する画像形成部、シアン(C)トナーからなる画像を形成する画像形成部、ブラック(K)トナーからなる画像を形成する画像形成部、および、中間転写ベルト26を有する。なお、Y、M、CおよびKは、トナーの色を表している。
【0104】
画像形成部は、回転体としての感光体ドラム21、ならびにその周囲に配置された帯電部22、光書込部23、現像装置24およびドラムクリーナー25を有している。中間転写ベルト26は、複数のローラにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0105】
感光体ドラム21は、ドラムモーターにより所定の速度で回転する。帯電部22は、感光体ドラム21の表面を所望の電位に帯電させ、光書込部23は、画像データに基づいて、画像情報信号を感光体ドラム21に書き込み、感光体ドラム21に画像情報信号に基づく潜像を形成する。そして潜像は現像装置24により現像され、感光体ドラム21上に可視画像であるトナー画像が形成される。このようにして、YMCKの各画像形成部の感光体ドラム21に、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの未定着のトナー画像が形成される。こうして、画像形成部は、電子写真方式の画像形成プロセスを用いてトナー画像を形成する。
【0106】
YMCKの各画像形成部により形成された各色のトナー画像は、走行する中間転写ベルト26上に一次転写部により逐次転写される。こうして、中間転写ベルト26上に、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色のトナー層が重畳したカラートナー画像が形成される。
【0107】
記録媒体搬送部では、記録媒体Sは、送り出しローラ31およびさばきローラ32によって給記録媒体部の給記録媒体トレイ41、42、43から一枚ずつ搬送経路に送り出される。搬送経路に送り出された記録媒体Sは、搬送ローラ33によって搬送経路に沿ってループローラ34およびレジストローラ35を経て2次転写ローラに搬送される。そして、記録媒体S上に中間転写ベルト26上のカラートナー画像が転写される。
【0108】
カラートナー画像が転写された記録媒体Sに、定着部27にて熱と圧力とが加えられることにより、記録媒体S上のカラートナー画像がカラートナー層として記録媒体Sに定着される。こうして、記録媒体S上に形成された樹脂層を含む樹脂製画像が作製される。記録媒体S上に形成された樹脂層を含む樹脂製画像は、排記録媒体ローラ36を経て表面処理部70に送られる。
【0109】
なお、定着がなされた記録媒体Sを記録媒体反転部37に導いて記録媒体Sの表裏を反転して排出することができる。これにより、記録媒体Sの両面に画像を形成することができる。
【0110】
制御部は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を有する。CPUは、ROMに記憶されたプログラムにしたがって、画像読取部、画像形成部、記録媒体搬送部、給記録媒体部、および表面処理部を制御し、演算結果などをRAMに記憶する。また、制御部は、外部から受信された印刷データを解析して、ビットマップ形式の画像データを生成し、画像データに基づく画像を記録媒体S上に形成する制御を行う。上記プログラムには、表面処理部における軟化剤供給量を調整するためのプログラム、および、摺擦条件を設定するためのプログラムが含まれている。
【0111】
また、制御部は、不図示の通信部を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(WideArea Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で、各種データの送受信を行う。制御部は、例えば、外部の装置から送信された画像データ、または、データ受付部が受け付けた、形成すべき加飾画像に関する入力されたデータを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて記録媒体Sに画像を形成させる。通信部は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0112】
樹脂製画像形成部60によって形成された樹脂製画像は、表面処理部70に搬送され加飾される。
【0113】
次に、表面処理部70について図2を用いて説明する。
【0114】
2-2.表面処理部
図2に示されるように、表面処理部70は、熱可塑性樹脂層100を軟化させるための加熱部材110と、粉体Pを保持するための粉体保持部材120と、貯蔵容器130に貯蔵されている粉体Pを供給する粉体供給部材140と、粉体供給部材140から供給された粉体を粉体保持部材120の表面で配向させるための配向部材150と、粉体保持部材120の粉体保持面121と対向する位置に設けられ、軟化した熱可塑性樹脂層100の表面に粉体Pを配置させるための対向部材160と、余剰粉体回収部材170と、を有する。
【0115】
2-3.加熱部材
加熱部材110は、粉体が転写される熱可塑性樹脂層100の温度を調整するための部材である。加熱部材110は、加熱装置であってもよいし、冷却装置であってもよいし、その両方の機能を有する装置であってもよい。加熱部材110には、公知の装置を利用することができ、その例には、ホットプレート、オーブンおよび送風装置が含まれる。
【0116】
2-4.粉体保持部材
粉体保持部材120は、駆動モーターによって円筒状の軸を中心として回転する、例えば、外径が75mmの円筒状の部材であり、円筒状の側周表面を粉体保持面121としている。この粉体保持部材120の粉体保持面121は、粘着性を有し、次に説明する粉体Pを粘着によって保持する。
【0117】
粉体保持面121は、粘着力(凝着力ともいう)が28kPa以上であることが好ましい。また、粉体保持面121の粘着力は、熱可塑性樹脂層100が粘着力を発現した場合に、粉体保持面121から熱可塑性樹脂層100に対して粉体Pが転写される範囲であることが好ましい。したがって、粉体保持面121の粘着力は、470kPa以下であることが好ましく、350kPa以下であることがより好ましい。これにより、粉体保持面121から熱可塑性樹脂層100に対して粉体Pを転写させることができる。このような粉体保持面121を構成する材料の例には、フッ素ゴム、シリコーンゴム、およびウレタンゴムなどが含まれる。また、粉体保持面121を構成する材料はゴム材料に限定されることはなく、粉末を保持することが可能な粘着力を有していれば、他の樹脂材料や金属材料であってもよい。
【0118】
粘着力は、タッキング試験機「FSR-1000」(株式会社レスカ製)を用いて測定することができる。粘着力は、試料表面にプローブの先端を押しつけて引き剥がす際に必要な力を粘着力として測定することができる。たとえば、上記粘着力の測定は、以下の条件で測定することができる。なお、粘着力は、プローブの先端の面積を元に、圧力に換算することができる。
(測定条件)
(1)プローブ径:直径10mm
(2)押しつけ速度:5mm/秒
(3)押しつけ圧力:50kPa
(4)押し付け保持時間:1秒
(5)プローブ引き上げ速度:5mm/秒
(6)測定温度:20℃
【0119】
また、粉体保持部材120は、記録媒体Sの搬送経路上における加熱部材110の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて熱可塑性樹脂層100が形成された主面側に配置されている。粉体保持部材120は、記録媒体Sに向かう側において記録媒体Sの搬送方向(矢印)に沿った方向に回転する構成となっている。なお、加熱部材110によって熱可塑性樹脂層100を加熱して粘着性を発現させる場合、粉体保持部材120にも熱が伝わるため、粉体保持部材120を構成する材料、特に粉体保持面121を構成する材料は、耐熱性を有することが好ましい。このような材料としては、上述したゴム材料のなかでは、シリコーンゴム(粘着力:80kPa)であることが好ましい。
【0120】
2-5.粉体供給部材
粉体供給部材140は、粉体保持部材120の粉体保持面121に粉体Pを供給するためのものであって、円筒状の粉体保持部材120の軸方向に沿って設けられている。このような粉体供給部材140は、粉体Pを貯蔵する貯蔵容器130と、貯蔵容器130内に収容された搬送部材(不図示)とを有する。
【0121】
このうち貯蔵容器130は、円筒状の粉体保持部材120の粉体保持面121の軸方向に沿って配置された開口部を有する。
【0122】
また搬送部材は、例えば、回転する円柱形状のブラシやスポンジ、さらにはスクリュー形状のものである。この搬送部材は、粉体保持部材120と逆方向に回転することにより、貯蔵容器130内に貯蔵された粉体Pを貯蔵容器130の開口部にまで搬送し、粉体保持部材120の粉体保持面121に粉体Pを供給する。
【0123】
なお、粉体供給部材140は、このような構成に限定されることはなく、例えば、貯蔵容器130内に貯蔵された粉体Pに、粉体保持部材120の粉体保持面121を直接、接触させる構成のものであってもよい。
【0124】
2-6.配向部材
配向部材150は、粉体保持部材120の粉体保持面121を摺擦することにより、粉体保持部材120の粉体保持面121において粉体Pを配向させるためのものであり、粉体保持部材120の回転方向に対して粉体供給部材140の下流側に配置されている。配向部材の形状には、円筒、楕円、多角形が含まれる。この中において、配向部材の形状は、円筒状であることが好ましい。
【0125】
この配向部材150は、円筒形状を有し、粉体保持面121に当接する状態で配置されたことにより、回転する粉体保持部材120の粉体保持面121を摺擦する構成となっている。また配向部材150の側周面であって、粉体保持面121を摺擦する面は、粉体Pを収容するための空隙を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えば、ブラシ、スポンジまたは不織布のような多孔質材料が用いられる。
【0126】
また、配向部材150は、回転する粉体保持部材120の粉体保持面121を摺擦することにより、粘着性を有する粉体保持面121に供給された粉体Pのうち、粉体保持面121に粘着していない余分な粉体Pを除去する。この際、配向部材150の側周面の空隙に、余分な粉体Pを捕捉する。また、この配向部材150は、粉体回収部材(不図示)を備えていてもよい。
【0127】
これにより、粘着性を有する粉体保持面121には、1層分の粉体Pが直接粘着された状態で残されることになる。この際、以降に詳細に説明するように、粉体Pが非球形状であれば、粉体保持面121において粉体Pが配向部材150によって摺擦されることにより、粉体保持面121に対する粉体Pの方向性を揃えることができる。
【0128】
また配向部材150は、円筒形状の軸を中心にして回転する構成であることが好ましい。これにより、空隙に捕捉されて収容された粉体Pを回転方向に運搬し続けることができるため、粉体保持面121と配向部材150とのニップ部に粉体Pが堆積することがなく、粉体保持面121から余分な粉体Pを除去する効果が高くなる。またこれにより、配向部材150による粉体保持面121の摺擦性を安定化させることが可能である。
【0129】
さらに配向部材150の回転方向が粉体保持部材120の回転方向と同一向であれば、粉体保持部材120に対する配向部材150の相対速度がより高速化され、配向部材150によって粉体保持部材120の粉体保持面121をより高速で摺擦することができ、より高い摺擦効果を得ることが可能になる。
【0130】
また、粉体保持部材120の粉体保持面121に対する配向部材150の押圧力は、1~10kPaであることが好ましく、1~5kPaであることがより好ましい。押圧力が低すぎると、粉体保持部材120の軸方向における押圧が不安定となる。一方、押圧力が高すぎると、配向部材150を回転させるためのトルクが大きくなり、配向部材150の駆動ムラの発生や、配向部材150および粉体保持部材120の材料劣化を招く要因となる。
【0131】
また、配向部材150に設けられた粉体回収部材(不図示)は、配向部材150の側周面に対向して配置され、配向部材150の側周面の空隙に収容された粉体Pを回収する。このような粉体回収部材は、エアー吸引方式のものでもよいし、ローラやブレード形態の部材を配向部材150の側周面に当接させ、配向部材150の側周面を構成する材料の復元力によって空隙から粉体Pをはじき出す構成のものであってもよい。
【0132】
配向部材150に対してこのような粉体回収部材を設けることにより、配向部材150による粉体Pの除去効果を持続させることが可能になり、配向部材150による粉体保持面121の摺擦性を長期に維持することが可能である。なお、以上のような配向部材150は、粉体供給部材140における搬送部材を兼ねる構造であってもよい。
【0133】
2-7.対向部材
対向部材160は、粉体保持部材120の粉体保持面121に粘着保持された粉体Pを、記録媒体Sの主面上に形成された熱可塑性樹脂層100に転写させるためのものである。この対向部材160は、ローラ状のものであり、粉体保持部材120との間に記録媒体Sを挟持するニップ部を構成する。これにより、加熱部材110での加熱によって溶融して粘着性を発現した熱可塑性樹脂層100に対し、粉体保持部材120の粉体保持面121に配向した状態で粘着保持された粉体Pが当接して押し圧され、粉体保持面121から熱可塑性樹脂層100に配向した状態の粉体Pが転写される。また熱可塑性樹脂層100は、加熱部材110を通過後には軟化している段階にあるため、軟化によって接着性が発現し、熱可塑性樹脂層100に粉体Pが接着保持される。これにより、熱可塑性樹脂層100の表面に、光沢を有する粉体Pが貼り付けられた光沢画像を得ることができる。
【0134】
2-8.余剰粉体回収部材
余剰粉体回収部材170は、粉体保持部材120と対向部材160とのニップ部を通過した記録媒体S上の余分な粉体Pを回収するためのものである。この余剰粉体回収部材170は、記録媒体Sの搬送経路上における粉体保持部材120と対向部材160とのニップ部の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて熱可塑性樹脂層100が形成された側に配置される。ここで、記録媒体S上の余分な粉体Pとは、熱可塑性樹脂層100に接着保持されていない粉体Pであることとする。
【0135】
このような余剰粉体回収部材170は、例えば、エアー吸引によって粉体Pを吸引する構成のものが例示されるが、これに限定されることはない。
【0136】
なお、表面処理部70は、図1に示されるように樹脂製画像形成部60と合体しているが、表面処理部70のみを画像形成装置として使用してもよい。あるいは、表面処理部70は、カラープリンタ内に組み込まれ、当該カラープリンタと一体的に構成されていてもよい。
【実施例
【0137】
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0138】
1.非晶性樹脂微粒子の分散液(A-1)の調製
非晶性樹脂微粒子の分散液(A-1)を、以下の手順で作製した。
【0139】
(樹脂粒子(B-1)の調製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器(以下、「反応容器」とする)に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム(7.0質量部)をイオン交換水(3000.0質量部)に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱した。加熱後、下記単量体、連鎖移動剤および離型剤を80℃にて溶解させた混合液を添加した。このときの撹拌速度は230rpmであった。
スチレン 285.0質量部
n-ブチルアクリレート 91.0質量部
メタクリル酸 13.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤) 1.5質量部
パラフィンワックス(離型剤、融点77℃) 135.0質量部
【0140】
循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック株式会社、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間の混合分散処理を行い、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。この分散液に、過硫酸カリウム(6.0質量部)をイオン交換水(200.0質量部)に溶解させた重合開始剤の溶液を添加し、得られた混合液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行って、樹脂粒子(B-1)を得た。
【0141】
(非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)の調製)
反応容器に、樹脂粒子(B-1)(524.0質量部/固形分換算)、イオン交換水(400.0質量部)を仕込み、よく混合した後、過硫酸カリウム(11.0質量部)をイオン交換水(400.0質量部)に溶解させた溶液を添加した。さらに、82℃の温度条件下で、下記単量体および連鎖移動剤の混合液を1時間かけて滴下した。なお、固形分換算とは上記樹脂粒子(B-1)の連鎖移動剤を除いた化合物の合計量である。
スチレン 400.0質量部
n-ブチルアクリレート 165.0質量部
メタクリル酸 30.0質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8.0質量部
【0142】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)を得た。得られた非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)中の樹脂粒子の体積基準メジアン径(D50)は220nmであり、ガラス転移温度(Tg)は48℃であり、重量平均分子量(Mw)は32,000であった。
【0143】
非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)のメジアン径はマイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)で測定した。
【0144】
(ガラス転移温度(Tg)の測定方法)
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。
【0145】
測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットした。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。そして、昇温速度10℃/分で0から200まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200から0まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0から200まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得た。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0146】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn」1本および「TSKgelSuperHZ-M」3本(いずれも東ソー株式会社製)を連結したものを用いて測定した。
【0147】
カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流した。試料溶液の調製は、測定試料(樹脂)を、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させ、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行った。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出した。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。検量線は、東ソー株式会社製「polystylene標準試料TSKstandard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製した。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとした。
【0148】
非晶性樹脂微粒子の水系分散液A-1~A-8に含まれる樹脂微粒子B-1~B-8の各成分の含有量(単位は質量部)を表1に示す。
【0149】
また、非晶性樹脂微粒子の水系分散液A-2~A-8は、上述したA-1の成分の含有量を変更した以外は、A-1と同様にして調製した。水系分散液A-2~A-8の成分の含有量を表2に示す。
【0150】
表1、2で示される各略号は次のとおりである。
【0151】
a:スチレン
b:n-ブチルアクリレート
c:メタクリル酸
d:n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート(連鎖移動剤)
e:パラフィンワックス(HNP-51;日本精蝋株式会社製)
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
2.結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液Cの調製
(結晶性ポリエステル樹脂Dの調製)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサーおよび精留塔を備えた反応容器に、ドデカン二酸(440.0質量部)と、1,6-ヘキサンジオール(153.0質量部)を仕込み、反応系の温度を1時間かけて190℃まで昇温し、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した。その後、エステル化触媒としてチタンテトラブトキサイド(Ti(O-n-Bu))(0.3質量部)を投入し、生成される水を留去しながら反応系の温度を150℃から6時間かけて240℃に昇温し、さらに、240℃に維持した状態で6時間脱水縮合反応を行うことにより、非ハイブリッド型の結晶性ポリエステル樹脂Dを得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂Dは、重量平均分子量(Mw)が14,500、融点(Tm)が70℃であった。
【0155】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液Cの調製)
結晶性ポリエステル樹脂D(72.0質量部)をメチルエチルケトン(72.0質量部)に、70℃で30分撹拌し、溶解させた。次いで、この溶解液に25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(2.5質量部)を添加した。得られた溶解液を撹拌器を有する反応容器に入れ、イオン交換水(250.0質量部)にポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムを濃度が1質量%になるよう溶解させた水溶液を70分にわたって滴下混合した。滴下の途中で容器内の液は白濁化し、全量滴下後に乳化液を得た。
【0156】
次いで、上記乳化液を70℃で保温したまま、ダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を使用し、15kPa(150mbar)に減圧下で3時間撹拌することでメチルエチルケトンを蒸留除去し、結晶性ポリエステル樹脂の水系分散液Cを得た。レーザー回折式粒度分布測定器「LA-750(HORIBA製)」にて測定した結果、上記分散液に含まれる粒子は、体積基準メジアン径(D50)が132nmであった。
【0157】
3.非晶性樹脂微粒子の分散液(E)の調製
非晶性樹脂微粒子の分散液(E)を、以下の手順で作製した。
【0158】
(非晶性ポリエステル樹脂(F)の調製)
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、下記重縮合系樹脂(非晶性ポリエステル樹脂)の原料を入れ、170℃に加熱し溶解させた。
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
【0159】
溶解後、得られた溶液に、エステル化触媒としてTi(OBu)(0.4質量部)を入れ、235℃まで昇温させ、常圧下(101.3kPa)で5時間、減圧下(8kPa)で1時間反応を行った。次いで、得られた反応液を200℃まで冷却し、減圧下(20kPa)で所望の軟化点に達するまで反応を行った。反応終了後、脱溶剤を行い、非晶性ポリエステル樹脂(F)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(F)のガラス転移温度(Tg)は57℃であり、重量平均分子量(Mw)は19000であった。
【0160】
(非晶性樹脂微粒子の分散液(E)の調製)
非晶性ポリエステル樹脂(F)(100質量部)を酢酸エチル(400質量部)(関東化学株式会社製)に溶解し、得られた溶液と、あらかじめ作製した0.26質量%のラウリル硫酸ナトリウム溶液(638質量部)とを混合し、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(株式会社日本精機製作所製)でV-LEVEL300μAで30分間超音波分散した。次いで、40℃に加温した状態でダイヤフラム式真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を用いて、減圧下で3時間撹拌しながら酢酸エチルを完全に除去し、非晶性ポリエステル樹脂(F)の微粒子の固形分量は13.5質量%である非晶性樹脂微粒子の分散液(E)を得た。樹脂粒子の体積基準のメジアン径は190nmであった。
【0161】
なお、重量平均分子量(Mw)の測定およびメジアン径の測定は、上述した非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)で用いた装置と同様の装置で行った。
【0162】
4.離型剤分散液(G)の調製
パラフィンワックス(離型剤、融点77℃)(60質量部)と、イオン性界面活性剤「ネオゲンRK」(5質量部、第一工業製薬株式会社製)と、イオン交換水240質量部とを混合した溶液を95℃に加熱し、ホモジナイザー「ウルトラタックスT50」(IKA社製)を用いて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーを用いて分散処理することにより、離型剤粒子の固形分濃度が20質量%の分散液(G)を調製した。レーザー回折式粒度分布測定器「LA-750(HORIBA製)」にて測定した結果、分散液(G)中の離型剤粒子の体積基準メジアン径(D50)は、240nmであった。
【0163】
5.着色剤粒子分散液(H)の調製
ドデシル硫酸ナトリウム(90質量部)をイオン交換水(1600質量部)に攪拌して溶解した。この溶液を攪拌しながら、C.I.PigmentRed 122(キナクリドン)(420質量部)を徐々に添加した。次いで、機械式分散機「クレアミックス」を用いて分散処理することにより、着色剤粒子を分散した着色剤粒子分散液1を調製した。着色剤粒子分散液1中の着色剤粒子の分散径を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)を用いて測定したところ、体積基準のメジアン径で205nmであった。
(測定条件)
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重 :1.05(球状粒子換算)
溶媒屈折率 :1.33
溶媒粘度 :0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 :測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
【0164】
6.トナー粒子の調製
6-1-1.トナー母体粒子1の調製
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液(A-1)(360.0質量部(固形分換算))と、イオン交換水(2000.0質量部)と、を投入した。室温(25℃)下、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、上記分散液のpHを10に調整した。さらに、着色剤粒子分散液H(30.0質量部(固形分換算))を投入し、塩化マグネシウム(60.0質量部)をイオン交換水(60.0質量部)に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、液温が80℃に到達した後、粒径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整し、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。その後、塩化ナトリウム(190.0質量部)をイオン交換水(760.0質量部)に溶解させた水溶液を添加して、粒径の成長を停止させた。
【0165】
さらに、84℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-3000」を用いて平均円形度が0.970になった時点で2.5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0166】
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子1を得た。
【0167】
6-1-2.トナー母体粒子2の調製
トナー母体粒子2は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部(固形分換算))を、水系分散液A-2(360質量部(固形分換算))に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0168】
6-1-3.トナー母体粒子3の調製
トナー母体粒子3は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、水系分散液A-3(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0169】
6-1-4.トナー母体粒子4の調製
トナー母体粒子4は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、水系分散液A-4(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0170】
6-1-5.トナー母体粒子5の調製
トナー母体粒子5は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、水系分散液A-5(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0171】
6-1-6.トナー母体粒子6の調製
トナー母体粒子6は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、水系分散液A-6(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0172】
6-1-7.トナー母体粒子7の調製
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、非晶性樹脂微粒子の水系分散液A-6(324.0質量部(固形分換算))と、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液C(36.0質量部(固形分換算))と、イオン交換水(2000.0質量部)と、を投入した。室温(25℃)下、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、上記分散液のpHを10に調整した。さらに、着色剤粒子分散液H(30.0質量部(固形分換算))を投入し、塩化マグネシウム(60.0質量部)をイオン交換水(60.0質量部)に溶解させた溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。3分間放置した後、60分間かけて80℃まで昇温し、液温が80℃に到達した後、粒径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整し、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。その後、塩化ナトリウム(190.0質量部)をイオン交換水(760.0質量部)に溶解させた水溶液を添加して、粒径の成長を停止させた。
【0173】
さらに、84℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-3000」を用いて平均円形度が0.970になった時点で2.5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。
【0174】
次いで、上記分散液について固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子7を得た。
【0175】
6-1-8.トナー母体粒子8の調製
トナー母体粒子8は、トナー母体粒子7で用いた水系分散液A-6(324.0質量部)を、水系分散液A-8(324.0質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子7と同様にして調製した。
【0176】
6-1-9.トナー母体粒子9の調製
トナー母体粒子9は、トナー母体粒子7で用いた水系分散液A-6(324.0質量部)を、水系分散液A-8(342.0部(固形分換算))に、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液C(36.0質量部(固形分換算))を18.0質量部(固形分換算)に変更した以外は、トナー母体粒子7と同様にして調製した。
【0177】
6-1-10.トナー母体粒子10の調製
撹拌装置、温度センサーおよび冷却管を取り付けた反応容器に、水系分散液E(310質量部(固形分換算))と、結晶性ポリエステル樹脂粒子の分散液C(50質量部(固形分換算))と、イオン交換水(1000質量部)とを投入した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0178】
得られた分散液に、着色剤粒子分散液H(30質量部(固形分換算))および離型剤分散液G(36質量部(固形分換算))添加し、撹拌下で、塩化マグネシウム(60質量部)をイオン交換水(60質量部)に溶解した水溶液を、30℃において10分間かけて上記分散液に添加した。その後、3分間放置した後に昇温を開始し、得られた分散液を60分間かけて80℃まで昇温し、80℃を保持したまま、粒径の成長速度が0.01μm/分となるように撹拌速度を調整し、コールターマルチサイザー3(コールター・ベックマン社製)により測定した体積基準のメジアン径が6.0μmになるまで成長させた。その後、塩化ナトリウム(190.0質量部)をイオン交換水(760.0質量部)に溶解させた水溶液を添加して、粒径の成長を停止させた。
【0179】
さらに、85℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、トナーの平均円形度の測定装置「FPIA-3000」を用いて、平均円形度が0.970になった時点で2.5℃/分の冷却速度で30℃に冷却した。上記分散液を固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄した後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子10を得た。
【0180】
6-1-11.トナー母体粒子11の調製
トナー母体粒子11は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、A-7(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0181】
6-1-12.トナー母体粒子12の調製
トナー母体粒子12は、トナー母体粒子1で用いた水系分散液A-1(360.0質量部)を、A-8(360質量部)に変更した以外は、トナー母体粒子1と同様にして調製した。
【0182】
上述したトナー母体粒子1~12に含まれる成分の含有量を表3に示す。
【0183】
【表3】
【0184】
6-2.トナー粒子1の調製
トナー母体粒子1(100.0質量部)に対して、外添剤として、シリカ微粒子A(NAX50;日本アエロジル株式会社製、1.7質量部)と、シリカ微粒子B(R805;日本アエロジル株式会社製、0.3質量部)と、酸化チタン粒子A(1次数平均粒径85nm;イソブチルトリメトキシシランで表面処理したもの、0.15質量部)と、酸化チタン粒子B(1次数平均粒径20nm;ヘキシルトリメトキシシランで表面処理したもの、0.15質量部)とを添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、トナー粒子1を得た。
【0185】
6-2-2.トナー粒子2~12の調製
トナー粒子2~12は、トナー母体粒子1をそれぞれトナー母体粒子2~12に変更した以外は、トナー粒子1と同様にして調製した。
【0186】
トナー粒子1~12に含まれる成分の含有量を表4に示す。なお、表4中に示される数値の単位は質量部である。
【0187】
【表4】
【0188】
7.評価
調製したトナー粒子1~12を用いた加飾画像を形成し、それぞれについて光沢感の評価を行った。
【0189】
7-1.貯蔵弾性率の測定
トナー粒子1~12から構成される熱可塑性樹脂層の貯蔵弾性率G’の測定を行った。熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率G’は、レオメーター(TA INSTRUMENT社製:ARES G2)を用いて測定した。
【0190】
(測定条件)
周波数:1Hz
昇温速度:3℃/分
軸方向力:0g
感度:10g
初期歪み:0.01%
歪み調節:30.0%
最小歪み:0.01%
最大歪み:10.0%
最小トルク:1g・cm
最大トルク:80g・cm
サンプリング間隔:1.0℃/pt
【0191】
(測定方法)
トナー1~12をそれぞれ0.2g計量し、圧縮成形機で25MPaの圧力を印可して加圧成型を行い、直径10mmの円柱状ペレットを作製した。上記円柱状ペレットの上に直径8mmのパラレルプレートを、下に直径25mmのパラレルプレートをセットし、周波数1Hzの条件で昇温した。サンプルセットを100℃にて行い、ギャップを一度1.4mmにセットした後にプレート間からはみ出したサンプルの掻き取りを行った後に1.1mmにギャップをセットし、軸方向力をかけつつ30℃まで冷却し、10分静置した。その後、軸方向力を加えるのをやめて、周波数1Hzかつ昇温速度3℃/分の条件において、30℃から100℃まで貯蔵弾性率G’の測定を行った。この際の90℃における貯蔵弾性率G’を貯蔵弾性率G’とした。
【0192】
7-2.画像形成
図1に示される本発明の一実施の形態に係る画像形成装置を用いてトナー画像(実施例)を形成した。また、特開2019-005965号公報の図3に示される画像形成装置を用いてトナー画像(比較例)を形成した。画像形成装置はともに、市販の複合機「AccurioPressC2060」(コニカミノルタ株式会社製、「AccurioPress」は同社の登録商標)を改造したものである。
【0193】
(画像形成条件:実施例)
トナー粒子1~12を用いて2cm×2cmの正方形パッチ画像を記録媒体上に形成し、記録媒体上に当該パッチ画像を有する定着されたトナー画像を出力した。このとき、記録媒体としてリンテック株式会社製ニューカラーRゆきを用いた。また、このとき、熱可塑性樹脂層としてのトナー画像(トナー)の付着量は、11.0g/mとした。
【0194】
7-3.加飾画像の形成
図1で示される画像形成装置を用いて出力したトナー画像に、図2で示される表面処理部70にて表面処理を行うことにより加飾画像を得た。表面処理部70では、加熱部材の熱により、記録媒体上の画像が所望の温度になるように調整し、粉体保持面121と記録媒体Sと、を接触させ、粉体Pを画像に転写した。なお、本実施例では、加熱部材上の熱可塑性樹脂層(画像)の加熱温度を100℃または80℃として加飾画像の形成を行った。
【0195】
(摺擦条件)
(1)配向部材:ウレタン製のスポンジローラ(外径:25mm、スポンジ厚み:6mm)(ルビーセルローラ:トーヨーポリマー株式会社製、「ルビーセル」は同社の登録商標)
(2)粉体:メタシャインME2025PS(日本板硝子社製)
(3)摺擦時の押圧力[N]:5kPa
(4)摺擦速度:180mm/秒(粉体保持部材と配向部材の回転方向を同一にし、接触する表面の相対速度)
【0196】
(粉体保持部材)
粉体保持部材は、外径75mmの円筒状で、保持面を構成する材料は、シリコーンゴム(粘着力80kPa)を使用した。
【0197】
(画像形成条件:比較例)
特開2019-005965号公報の図2および図3に示される画像形成装置を用いて出力したトナー画像(トナー粒子4を使用)を形成し、加飾画像を得た。
【0198】
8.光沢感評価
トナー粒子1~12を用いて作製した加飾画像の光沢感の評価を行った。
【0199】
(評価方法)
得られた加飾画像について、変角光度計「GP-5」(株式会社村上色彩技術研究所製)を用い、入射角度45°における反射光量を反射光(受光)の角度を変えながら測定した。当該測定は、15~75°の受光角度の範囲で行い、ピークの半値幅とピークの積分値(面積)を求めた。以下の評価基準(積分値(面積))は、トナー粒子11(比較例)を用いたときの画像の加熱温度(100℃)のときの積分値(面積)を100としたときの相対値である。また、評価基準(半値幅)は、トナー粒子11(比較例)を用いたときの画像の加熱温度(100℃)のときの半値幅を100としたときの相対値である。
【0200】
ここで、積分値(面積)が大きい程、粉体が多くついている(転写率が高い)ことを示しており、半値幅が小さい程向きがそろっていることを示している。よって、面積が大きく、半値幅が狭いものが最もメタリック感が強い。
【0201】
(評価基準:積分値(面積))
◎:120以上
○:90以上120未満
△:70以上90未満
×:70未満
【0202】
(評価基準:半値幅)
◎:75未満
○:75以上85未満
△:85以上95未満
×:95以上
【0203】
貯蔵弾性率G’の測定結果および光沢感評価の結果を表5に示す。表5中、図1に示される本発明の一実施の形態に係る画像形成装置を装置(f)、特開2019-005965号公報の図2および図3に示される画像形成装置を装置(g)とする。
【0204】
【表5】
【0205】
表5に示されるトナー粒子1~12から明らかなように、30℃から100℃まで測定した際の90℃における貯蔵弾性率G’が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である樹脂層を形成するトナー粒子1~10では、粉体の転写時の温度が70~100℃と広い温度幅に用いることができることがわかった。とくに、結晶性ポリエステル樹脂粒子を含むトナー粒子7~9、非晶性ポリエステル樹脂粒子および結晶性ポリエステル樹脂粒子を含むトナー粒子10では、70~100℃の温度領域において優れた光沢を有する加飾画像を得ることができることがわかった。これは、結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、30~100℃まで温度変化させた場合であっても、貯蔵弾性率G’の変化の勾配を小さくすることができるからであると考えられる。これにより、所望する画像の光沢に合わせて、熱可塑性樹脂層の表面の状態を調整することができる。
【0206】
また、樹脂層に粉体を供給してから、摺擦して樹脂層の表面に付着した粉体の向きを揃える場合と比較して、粉体保持部材の粉体保持面に付着している粉体の向きを揃えてから、樹脂層に転写することにより、十分な光沢感およびメタリック感(ミラー調/パール調)を有する画像を得ることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明によれば、十分な光沢感およびメタリック感を有する画像を容易に作製することができる。よって、本発明によれば、上記の特殊な外観を呈する画像の形成のさらなる普及が期待される。
【符号の説明】
【0208】
10 画像形成装置
11 光源
12 光学系
13 撮像素子
14 画像処理部
21 感光体ドラム
22 帯電部
23 光書込部
24 現像装置
25 ドラムクリーナー
26 中間転写ベルト
27 定着部
31 送り出しローラ
32 さばきローラ
33 搬送ローラ
34 ループローラ
35 レジストローラ
36 排記録媒体ローラ
37 記録媒体反転部
41~43 給記録媒体トレイ
60 樹脂製画像形成部
70 表面処理部
100 熱可塑性樹脂層
110 加熱部材
120 粉体保持部材
121 粉体保持面
130 貯蔵容器
140 粉体供給部材
150 配向部材
160 対向部材
170 余剰粉体回収部材
P 粉体
S 記録媒体
図1
図2