(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用表示制御装置および車両用表示制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20231212BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20231212BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20231212BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231212BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20231212BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60W50/14
G01C21/36
G08G1/16 C
G06T19/00 600
(21)【出願番号】P 2019137312
(22)【出願日】2019-07-25
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹森 大祐
(72)【発明者】
【氏名】柳生 明彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰博
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】間根山 しおり
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145606(WO,A1)
【文献】特開2019-098756(JP,A)
【文献】特開2016-182891(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131296(WO,A1)
【文献】特開2017-211366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60W 50/14
G01C 21/36
G08G 1/16
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用され、表示装置(230)を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御装置であって、
自車が走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツに関する情報を取得する情報取得部(204)と、
前記表示装置にて、前記予想軌跡コンテンツを表示させることで、該自車の前方の道路に前記予想軌跡コンテンツを重畳表示させる表示制御部(207)を備え、
前記表示制御部は、前記表示装置にて複数の前記予想軌跡コンテンツとして前記自車の予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルート
であって先行車を回避するための回避ルートを同時に表示させると共に、複数の前記予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高い前記回避ルートを該優先度の低い前記予定走行ルートの上に重ねて表示させる、車両用表示制御装置。
【請求項2】
車両に適用され、表示装置(230)を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御装置であって、
自車が走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツに関する情報を取得する情報取得部(204)と、
前記表示装置にて、前記予想軌跡コンテンツを表示させることで、該自車の前方の道路に前記予想軌跡コンテンツを重畳表示させる表示制御部(207)を備え、
前記表示制御部は、前記表示装置にて複数の前記予想軌跡コンテンツを同時に表示させると共に、複数の前記予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高いものを該優先度の低いものの上に重ねて表示させるようになっており、
さらに、前記表示制御部は、前記予想軌跡コンテンツのうち前記自車から遠い位置を表している部分を該自車から近い位置を表している部分よりも輪郭を強調して表示する
、車両用表示制御装置。
【請求項3】
前記自車の現在の車両位置を取得する自車位置取得部(202)と、
道路形状データを含む地図データを取得する高精度地図取得部(203)と、
前記自車位置取得部が取得した前記車両位置と前記高精度地図取得部で取得する前記地図データとを用いて、仮想三次元空間上において、前記道路上での複数の前記予想軌跡コンテンツの表示位置および複数の前記予想軌跡コンテンツをどのように描画するかを特定する三次元位置特定部(204)と、を有し、
前記表示制御部は、前記三次元位置特定部での特定結果に基づいて、前記自車の前方の道路に前記予想軌跡コンテンツを重畳表示させる、請求項1
または2に記載の車両用表示制御装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツの基端の高さを揃えて表示させる、請求項1
ないし3のいずれか1つに記載の車両用表示制御装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツの上端の高さを揃えて表示させる、請求項
4に記載の車両用表示制御装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツを優先度に応じて表示形態を異ならせて表示する、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の車両用表示制御装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、表示する前記予想軌跡コンテンツが変化すると、変化する前に対して元々表示していた前記予想軌跡コンテンツの表示形態を変化させる、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の車両用表示制御装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツのうち優先度が高いものと比較して、前記優先度が低いものの方の透明度が高い表示とする、請求項
6または7に記載の車両用表示制御装置。
【請求項9】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツを別々に特定して異なるレイヤーとして取得し、前記優先度が高いもののレイヤーを該優先度が低いもののレイヤーの上に重ねることで、複数の前記予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高いものを該優先度の低いものの上に重ねて表示させる、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用表示制御装置。
【請求項10】
前記表示制御部は、複数の前記予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高いものを該優先度の低いものの上に重ねた1つの複合コンテンツを表示させる、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の車両用表示制御装置。
【請求項11】
車両に適用され、表示装置(230)を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御方法であって、
自車が走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツに関する情報を取得することと、
前記表示装置にて、前記予想軌跡コンテンツを表示させることで、該自車の前方の道路に前記予想軌跡コンテンツを重畳表示させることを含み、
前記重畳表示させることでは、前記表示装置にて複数の前記予想軌跡コンテンツとして前記自車の予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルート
であって先行車を回避するための回避ルートを同時に表示させると共に、複数の前記予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高い前記回避ルートを該優先度の低い前記予定走行ルートの上に重ねて表示させる、車両用表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)などの表示装置を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御装置および車両用表示制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、HUD装置を用いてコンテンツを道路に重畳表示することで、ドライバに案内経路などの情報を伝える車両用画像表示システムが提案されている。この特許文献1の車両用画像表示システムでは、ウィンドシールドの表示画面に車両が走行中の道路に沿った予定走行ルートの矢印の重畳表示を行うことで経路案内情報を伝えている。また、予定走行ルートから車線変更する場合に、車線変更の走行コースの矢印の重畳表示が予定走行ルートの矢印の重畳表示と共に行われ、ドライバに伝えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の案内経路を同時に表示してドライバに伝える場合や、複数のアプリケーションを実行する場合など、複数のコンテンツを同時に表示する場合、HUD装置の表示画面上は煩雑な表示になり易い。このため、ドライバが瞬時に情報を読み取ることが困難な状況に陥る可能性がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、複数のコンテンツを同時に表示する際にドライバに判りやすい表示が行えるようにする車両用表示制御装置および車両用表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、車両に適用され、表示装置(230)を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御装置であって、表示装置にて、自車が走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツに関する情報を取得する情報取得部(204)と、表示装置にて、予想軌跡コンテンツを表示させることで、該自車の前方の道路に予想軌跡コンテンツを重畳表示させる表示制御部(207)を備え、表示制御部は、表示装置にて複数の予想軌跡コンテンツとして自車の予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルートであって先行車を回避するための回避ルートを同時に表示させると共に、複数の予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高い回避ルートを該優先度の低い予定走行ルートの上に重ねて表示させる。
【0007】
このように、複数の予想軌跡コンテンツとして予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルートであって先行車を回避するための回避ルートが重なるように表示しつつ、より優先度の高いコンテンツとなる回避ルートが優先度の低いコンテンツとなる予定走行ルートよりも上に表示されるようにしている。これにより、ドライバに対してより優先度の高いコンテンツとなる回避ルートが優先的に読み取れる表示となる。よって、複数のコンテンツを同時に表示する際に、ドライバに判りやすい表示を行うことが可能な車両用表示制御装置にできる。
【0008】
請求項11に記載の発明は、車両に適用され、表示装置(230)を制御して自車の前景にコンテンツを重畳表示させる車両用表示制御方法であって、自車が走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツに関する情報を取得することと、表示装置にて、予想軌跡コンテンツを表示させることで、該自車の前方の道路に予想軌跡コンテンツを重畳表示させることを含み、重畳表示させることでは、表示装置にて複数の予想軌跡コンテンツとして自車の予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルートであって先行車を回避するための回避ルートを同時に表示させると共に、複数の予想軌跡コンテンツのうちの優先度が高い回避ルートを該優先度の低い予定走行ルートの上に重ねて表示させる。
【0009】
このように、複数の予想軌跡コンテンツとして予定走行ルートと該予定走行ルートとは異なる新たなルートであって先行車を回避するための回避ルートが重なるように表示しつつ、より優先度の高いコンテンツとなる回避ルートが優先度の低いコンテンツとなる予定走行ルートよりも上に表示されるようにしている。これにより、ドライバに対してより優先度の高いコンテンツとなる回避ルートが優先的に読み取れる表示となる。よって、複数のコンテンツを同時に表示する際に、ドライバに判りやすい表示を行うことが可能な車両用表示制御方法にできる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態にかかる車両用表示システムのブロック構成を示した図である。
【
図2】HUD装置による画像表示の様子を模式的に示した図である。
【
図3】HCU(Human Machine Interface Control Unit)の詳細なブロック構成などを示した図である。
【
図4】予定走行ルートを道路上に重畳表示させたときの様子を示した図である。
【
図5A】予定走行ルートに加えて回避ルートを道路上に重畳表示させたときの様子を示した図である。
【
図6A】他の実施形態で説明する予定走行ルートを半透明として回避ルートと共に道路上に重畳表示させたときの様子を示した図である。
【
図7】他の実施形態で説明する予定走行ルートおよび回避ルートのうち自車から遠い位置を示す部分の輪郭を強調表示するときの様子を示した図である。
【
図8】他の実施形態で説明する予定走行ルートを単なるラインで表示するときの様子を示した図である。
【
図9】他の実施形態で説明する予定走行ルートや回避ルートを矢印の輪郭のみで表示するときの様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すように、車両用表示システム1は、HMI(Human Machine Interface)システム2、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)ロケータ3、周辺監視センサ4、車両制御ECU5および運転支援ECU6を有する。HMIシステム2、ADASロケータ3、周辺監視センサ4、車両制御ECU5および運転支援ECU6は、例えば車内LANに接続されており、相互間における情報の受け渡しが行えるようになっている。
【0014】
ADASロケータ3は、全球測位衛生システム(以下、GNSSという)受信機30、慣性センサ31および地図データベース(以下、地
図DBという)32を備えている。
【0015】
GNSS受信機30は、GPS(Global Positioning System)の受信機などであり、複数の人工衛星からの測位信号を受信する。慣性センサ31は、車両に生じる慣性力、つまり走行状態を検出するセンサで、例えばジャイロセンサや加速度センサを備えた構成とされる。ADASロケータ3は、GNSS受信機30で受信する測位信号と、慣性センサ31の計測結果とを組み合わせることにより、自車の車両位置を逐次測位する。そして、ADASロケータ3は、測位した車両位置を車内LANへ出力する。
【0016】
地
図DB32は、不揮発性メモリであって、リンクデータ、ノードデータ、道路形状データ等の地図データを高精度地図として格納している。道路形状のデータには、高度、横断勾配、縦断勾配、車線数等のデータが含まれている。高度、横断勾配、縦断勾配、車線数等のデータは、少なくとも道路上の地点別であればよく、例えば地図データの観測点別とすればよい。
【0017】
また、地
図DB32は、地図データとして、道路形状および構造物の特徴点の点群からなる三次元地図を用いる構成であってもよい。ADASロケータ3は、この三次元地図を用いる場合、GNSS受信機30を用いずに、この三次元地図と、道路形状および構造物の特徴点の点群を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)等の周辺監視センサ4での検出結果とを用いて、自車の車両位置を特定する構成としてもよい。なお、地図データは、自車に搭載された車載通信モジュールを用いて自車の外部から取得する構成としてもよい。
【0018】
周辺監視センサ4は、自車の周辺環境を監視する自律センサである。一例として、周辺監視センサ4は、歩行者や他車両などの移動する動的物標および路上の構造物や走行区画線などの静止している静的物標といった自車周辺の対象物を検出する。例えば周辺監視センサ4としては、自車周囲の所定範囲を撮像する周辺監視カメラ、自車周囲の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ、ソナー、LIDAR等の探査波センサが挙げられる。周辺監視カメラは、撮像装置に相当するもので、自車の周辺画像を撮影し、その撮像データをセンシング情報として車内LANへ出力する。探査波センサは、探査波を出力すると共にその反射波を取得することで得られた物標との相対速度や相対距離および物標が存在する方位角などの測定結果をセンシング情報として車内LANへ逐次出力する。
【0019】
本実施形態では、周辺監視センサ4として、少なくとも、自車の前方の所定範囲を撮像範囲とする前方カメラ41と、自車の前方の所定範囲に探査波を送信するミリ波レーダ42とを用いる構成としている。
【0020】
車両制御ECU5は、自車の加減速制御や操舵制御などの車両運動制御を行う電子制御装置である。ここでは、車両制御ECU5が1つのECUで構成された例を示してあるが、操舵制御を行う操舵ECU、加減速制御を行うパワーユニット制御ECUおよびブレーキECU等の複数のECUで構成されていても良い。車両制御ECU5は、自車に搭載されたアクセルポジションセンサ、ブレーキ踏力センサ、舵角センサ、車輪速センサ等の各センサから出力される検出信号を取得している。そして、車両制御ECU5は、取得した検出信号を処理することで、電子制御スロットル、ブレーキアクチュエータ、EPS(Electric Power Steering)モータ等の各走行制御デバイスへ制御信号を出力する。また、車両制御ECU5は、上述の各センサの検出信号や制御信号を車内LANへ出力している。
【0021】
運転支援ECU6は、車両制御ECU5を制御することにより、ドライバによる運転操作の代行を行う自動運転機能を実行する。運転支援ECU6は、ADASロケータ3から取得する自車の車両位置や地図データおよび周辺監視センサ4でのセンシング情報をもとに、自車の走行環境を認識する。一例としては、周辺監視センサ4でのセンシング情報から、自車周辺に存在する物体などの対象物の形状および移動状態を認識したり、自車周辺の路面標示の形状を認識したりする。そして、自車の車両位置および地図データと組み合わせることで、実際の走行環境を三次元で再現した仮想三次元空間を生成する。
【0022】
また、運転支援ECU6は、認識した走行環境に基づき、自動運転機能によって、ドライバが予め設定した目的地へ向かわせるために、自車を自動走行させる上での走行計画を設定する。運転支援ECU6は、走行計画として、自車を目的地へ辿り着かせるための予定走行ルートを算出し、その予定走行ルート情報を車内LANに出力している。また、運転支援ECU6は、走行計画として、生成した自車の周囲の仮想三次元空間を用いて、例えば先行車との目標車間距離を維持するための加減速度、車線追従や車線変更のための操舵、衝突回避のための急制動等を決定している。それに加えて、運転支援ECU6は、走行計画として、より快適な運転になるように、予定走行ルートと異なる新たなルートを算出し、新たなルート情報を車内LANに出力している。例えば、新たなルートとしては、先行車両を追い越すような回避ルートなどが挙げられる。以下では、新たなルートの一例として回避ルートを挙げて説明する。
【0023】
運転支援ECU6で実行する自動運転機能の一例としては、駆動力および制動力を調整することで、先行車との目標車間距離を維持するように自車の走行速度を制御するACC(Adaptive Cruise Control)機能がある。また、前方のセンシング情報をもとに制動力を発生させることで、自車を強制的に減速させるAEB(Autonomous Emergency Braking)機能がある。また、ドライバが予め設定した目的地に辿り着くまでの予定走行ルートや新たなルート情報をHMIシステム2に伝える機能もある。なお、ここで述べたのは、あくまで一例であり、自動運転の機能として他の機能を備えている構成としてもよい。また、運転支援のために実行される制御としては、自動運転に限るものでは無く、単にまた、ドライバが予め設定した目的地に辿り着くまでの予定走行ルートや新たなルート情報をHMIシステム2に伝える機能が実行される制御であっても良い。例えば図示しないナビゲーション装置における経路案内の制御などでも良い。
【0024】
HMIシステム2は、コックピット内の情報マネジメントを行うシステムであり、ドライバからの入力操作を受け付けたり、ドライバに向けて情報を提示したりする。具体的には、HMIシステム2は、HCU20、操作デバイス21、DSM(Driver Status Monitor)22および表示装置23を備えている。
【0025】
操作デバイス21は、ドライバが操作するスイッチ群である。操作デバイス21は、各種の設定を行うために用いられ、例えばステアリングなどに備えられるスイッチなどで構成される。
【0026】
DSM22は、ドライバの状態を認識する装置であり、例えば車室内に備えられた近赤外光源および近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニット等とによって構成されている。具体的には、DSM22では、近赤外光源からドライバに向けて近赤外光を照射し、近赤外カメラによって撮影すると共に、その撮像画像を制御ユニットによって画像解析し、ドライバの視点位置を測定している。そして、測定した視点位置の情報を車内LANを通じてHCU20へ出力する。
【0027】
表示装置23は、重畳表示を行うための表示部を構成するものであり、ここではHUD装置230を用いている。
図2を用いてHUD装置230について説明を行う。
【0028】
図2に示すようにHUD230は、自車のインストルメントパネル12内に設置される。HUD230は、例えば液晶式又は走査式等のプロジェクタ231により、HCU20から出力される画像データに基づく表示画像を形成する。表示画像としては、走行計画に従った予定走行ルートや回避ルートに関する画像などが挙げられる。ここでいう予定走行ルートや回避ルートが予想軌跡コンテンツに相当するものである。予定走行ルートは、自車がこれから走行すべき予想軌跡であり、回避ルートは予定走行ルートとは異なる新たな予想軌跡である。
【0029】
HUD230は、プロジェクタ231によって形成される表示画像を、例えば凹面鏡等の光学系232を通じて、投影部材としてのフロントウインドシールド10に既定された投影領域に投影する。投影領域は、フロントウインドシールド10において表示画像の投影を可能にした領域であり、その領域内におけるドライバが視認しやすい画角に表示画像が投影される。フロントウインドシールド10によって車室内側に反射された表示画像は、運転席に着座するドライバによって知覚される。また、透光性ガラスにより形成されるフロントウインドシールド10を透過した、自車の前方に存在する風景としての前景も、運転席に着座するドライバによって知覚される。これにより、ドライバに対して、HUD230がフロントウインドシールド10の前方に結像させる表示画像の虚像100を自車の前景の一部に重畳表示させて視認させられ、所謂AR(Augmented Reality)表示が実現される。
【0030】
なお、表示装置23として、HUD230を例に挙げたが、HUD230の他にも、画像を表示する装置を用いる構成としてもよい。例えば、コンビネーションメータ、CID(Center Information Display)等を表示装置23としても良い。
【0031】
HCU20は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータを主体として構成され、HUD230と車内LANとに接続されている。HCU20は、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムを実行することにより、HUD230による表示を制御する。このHCU20が車両用表示制御装置に相当する。プロセッサがこの制御プログラムを実行することにより、制御プログラムに対応する車両用表示制御方法が実行される。なお、ここで言うメモリが、コンピュータによって読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)に相当する。
【0032】
HCU20は、HUD230での表示制御を行う機能ブロックとして、
図3に示すブロック構成とされている。具体的にはHCU20は、撮像画像取得部200、距離方位取得部201、自車位置取得部202、高精度地図取得部203、三次元位置特定部204、視点位置特定部205、不可視領域推定部206および表示生成部207を備える。
【0033】
撮像画像取得部200は、前方カメラ41で逐次撮像する撮像画像をセンシング情報として取得する。距離方位取得部201は、ミリ波レーダ42で逐次測定する対象物の距離および方位角をセンシング情報として取得する。自車位置取得部202は、ADASロケータ3で逐次測位する自車の現在の車両位置を取得する。高精度地図取得部203は、ADASロケータ3の地
図DB32に格納されている地図データを取得する。高精度地図取得部203は、観測点別、つまり複数の地点別の道路形状データを含む高精度地図を取得することになる。
【0034】
三次元位置特定部204は、運転支援ECU6から伝えられる予定走行ルート情報を取得し、仮想三次元空間上における予定走行ルートの表示位置やどのように表示するかを特定する。同様に、三次元位置特定部204は、運転支援ECU6から伝えられる回避ルート情報を取得し、仮想三次元空間上における回避ルートの表示位置やどのように表示するかを特定する。具体的には、三次元位置特定部204は、高精度地図取得部203が取得した地図データと自車位置取得部202が取得した自車の車両位置および撮像画像取得部200や距離方位取得部201で取得した自車周辺のセンシング情報を入力する。そして、三次元位置特定部204は、入力した各種情報に基づいて、仮想三次元空間上において、自車の前方の道路形状などを把握した上で、道路のどの位置にどのように予定走行ルートや回避ルートを描画できるかを特定する。
【0035】
また、三次元位置特定部204は、運転支援ECU6が生成した仮想三次元空間上において、自車に対する対象物が存在していれば、その対象物の三次元位置を特定する。例えば、三次元位置特定部204は、運転支援ECU6で認識する走行環境のうちから対象物を選定して三次元位置を特定している。一例としては、三次元位置特定部204は、自車の回避対象とする障害物を対象物として選定したり、ACC機能で追従させる先行車を対象物として選定したりしている。そして、先行車などの対象物が存在している場合、三次元位置特定部204は、その対象物の位置などを把握した上で、道路のどの位置にどのように予定走行ルートや回避ルートを描画できるかを特定する。例えば、対象物と重ならないようにしつつ、予定走行ルートや回避ルートを描画できる位置を特定すると共に、道路形状に対応してどのように描画するかを特定する。
【0036】
視点位置特定部205は、DSM22で逐次検出する視点位置の情報から自車の車両位置を基準とするドライバの視点位置を特定する。例えば、視点位置特定部205は、DSM22で検出する視点位置を、DSM22での視点位置の基準とする位置と自車における車両位置の基準となる位置とのずれをもとに、自車の車両位置を基準とする視点位置に変換する。これにより、自車の車両位置を基準としたドライバの視点位置が特定される。
【0037】
不可視領域推定部206は、路面の勾配変化によって自車のドライバから不可視となる不可視領域を推定する。具体的には、不可視領域推定部206は、高精度地図取得部203で取得する高精度地図に高度の情報が含まれている地点のうち自車と対象物との間の地点の高度の情報と、視点位置特定部205で特定する視点位置とをもとに、不可視領域を推定する。
【0038】
表示生成部207は、自車に対する予定走行ルートや回避ルートを道路に重畳表示させるための画像データを生成し、この画像データをHUD230に出力する。予定走行ルートや回避ルートの描画位置は、それらの表示画像が投影領域に投影されたときに、ドライバに視認可能な位置で、かつ、それらの表示画像に基づく虚像が前景中の道路上に表示されるように設定される。また、予定走行ルートや回避ルートの表示の形状は、道路形状に対応したものに特定されている。これにより、HUD230にて道路に貼り付けるように予定走行ルートや回避ルートの虚像が重畳表示される。この表示生成部207が表示制御部に相当する。
【0039】
一例としては、表示生成部207は、予定走行ルートや回避ルートの表示位置と視点位置および予めHCU20の不揮発性メモリに格納されている投影領域の設定位置の位置関係を把握する。そして、表示生成部207は、予定走行ルートや回避ルートの表示位置、自車と対象物との間の地点の高度、視点および投影領域の位置関係に基づき、道路に予定走行ルートや回避ルートを重畳表示できる虚像の結像位置を幾何学的に算出する。
【0040】
このとき、表示生成部207は、不可視領域推定部206で推定される不可視領域が存在する場合には、この不可視領域を避けて、予定走行ルートや回避ルートを重畳表示させる。これら予定走行ルートや回避ルートの表示は、自車および先行車が移動しても、所定位置、ここでは自車の前方の道路上に表示が維持されることで重畳表示が為される。
【0041】
以上のようにして、本実施形態の車両用表示システム1が構成されている。続いて、本実施形態の車両用表示システム1のHUD表示制御について、運転支援制御と共に説明する。なお、HUD表示制御についてはHCU20で実行され、運転支援制御については運転支援ECU6で実行される。
【0042】
まず、ドライバが運転支援制御の要求を行い、ナビゲーション装置などを通じて目的地を設定すると、自動運転などの運転支援制御が行われ、自車も走行開始する。これに基づき、運転支援ECU6では、上記のように設定した目的地へ向かわせるための走行計画が設定され、この走行計画に従った予定走行ルート情報がHCU20に伝えられる。この予定走行ルート情報は、自車がどのような経路で走行すれば目的地に辿り着くことができるかを示す情報となっている。HUD230では、予定走行ルートのうちの一部のみを表示することになるが、予定走行ルートは現在の自車の位置から目的地に至る迄の経路として決められている。
【0043】
一方、HCU20は、周辺監視センサ4の検出結果を入力し、車両の周辺状況を取得する。具体的には、撮像画像取得部200にて、前方カメラ41が逐次撮像したセンシング情報を入力し、それから自車の前方の撮像画像を取得する。また、距離方位取得部201にて、ミリ波レーダ42のセンシング情報を入力し、先行車などの対象物との距離および方位角を取得する。
【0044】
また、HCU20は、ADASロケータ3に備えられたGNSS受信機30や慣性センサ31および地
図DB32から各種情報を入力し、自車の車両位置を逐次測位する。具体的には、自車位置取得部202にて、自車の車両位置の情報、つまりGNSS受信機30での受信結果に基づき自車の経緯度に関する情報を取得すると共に、慣性センサ31での検出結果に基づき自車が道路上のどちらを向いているかを取得する。これにより、HCU20は、自車が道路上のどちらを向いているかの情報を含めた自車の車両位置の情報を取得する。また、高精度地図取得部203にて、地
図DB32から現在走行中の道路の地図情報など、例えば道路形状や勾配、車線数などの情報を取得する。
【0045】
さらに、HCU20は、三次元位置特定部204にて、予定走行ルート情報を取得し、周辺監視センサ4やADASロケータ3から得た各種情報に基づき、仮想三次元空間上における予定走行ルートの表示位置などを特定する。すなわち、三次元位置特定部204にて、仮想三次元空間上において、道路に対してどのように予定走行ルートを描画できるかを特定する。
【0046】
また、HCU20は、視点位置特定部205にて、DSM22での検出結果に基づいてドライバの視点位置を特定し、不可視領域推定部206にて、自車のドライバの不可視領域を推定する。これにより、投影領域のうちのどの画角に表示するとドライバが視認しやすいかを割り出す。
【0047】
このように、三次元位置特定部204で仮想三次元空間上にどのように予定走行ルートを描画するかが特定され、不可視領域推定部206にてドライバが視認しやすい領域の割り出しが行われる。そして、表示生成部207において、三次元位置特定部204での特定結果と不可視領域推定部206での推定結果に基づいて、実際にHUD230の投影領域におけるどの画角に予定走行ルートを表示するかを決める。これにより、表示生成部207より、HUD230に対して制御信号を出力してHUD230を制御し、ドライバが視認しやすい領域の画角に予定走行ルートを表示させる。
【0048】
この場合、
図4に示されるように投影領域の所定の画角70において予定走行ルート71の重畳表示が行われる。すなわち、道路に対して、フロントウインドシールド10の前方に結像される虚像で表された一本のライン状の予定走行ルート71が重畳表示される。高速道路などの複数車線存在する道路においては、走行中の車線上に予定走行ルート71が重畳表示される。このようにして、実景の一部に予定走行ルート71を重畳表示させたAR表示が行われ、道路に予定走行ルート71が描画されているかのようにドライバに視認させることができる。なお、ここでは車線が直線状になっている場合を図示してあるが、道路が直線状ではない場合には、その道路形状に沿って予定走行ルート71が描画される。
【0049】
このようにして、予定走行ルート71を道路に対して重畳表示することでドライバに対して認識させられるが、さらに運転支援ECU6から回避ルート情報がHCU20に伝えられ、回避ルートが新たに提案されることがある。例えば、運転支援制御では、周辺監視結果より、低速走行している先行車の存在が確認された場合などには、それを回避するための回避ルートを新たなルートとして提案することがある。
【0050】
この場合、予定走行ルート71に関する表示については、上記した通りの手法によって行いつつ、それに加えて回避ルートに関する表示も行われる。
【0051】
具体的には、運転支援ECU6から三次元位置特定部204に対して自車を回避するための回避ルート情報、例えば回避先の車線に関する情報が伝えられる。これに基づき、HCU20は、三次元位置特定部204にて、運転支援ECU6からの回避ルート情報に加えて、周辺監視センサ4やADASロケータ3から得た各種情報に基づき、仮想三次元空間上における回避ルートを特定する。すなわち三次元位置特定部204にて、予定走行ルート71と回避ルートとを重ね合わせたルート表示を仮想三次元空間上における道路のどの位置に描画できるかを特定している。ここでは仮想三次元空間上において予定走行ルート71と回避ルートとを別々に特定し、異なるレイヤーとして取得している。そして、三次元位置特定部204にて、予定走行ルート71のレイヤーと回避ルートのレイヤーとが重ねられて表示されようにするデータを作成している。
【0052】
この後、表示生成部207において、三次元位置特定部204での特定結果と不可視領域推定部206での推定結果に基づいて、実際にHUD230の投影領域のどの画角に回避ルートを表示するかを決める。具体的には、回避ルートを表示する画角を予定走行ルート71と同じ画角に設定する。そして、表示生成部207より、HUD230に対して制御信号を出力してHUD230を制御し、投影領域のうちドライバが視認しやすい画角に予定走行ルート71と共に回避ルートを表示させる。
【0053】
このとき、HUD230による表示としては、予定走行ルート71と回避ルートという複数の予想軌跡コンテンツが同時に表示されることになる。しかしながら、単に複数の予想軌跡コンテンツを同時に表示した場合、HUD230の表示画面上は煩雑な表示になり易く、ドライバが瞬時に情報を読み取ることが困難な状況に陥る可能性がある。
【0054】
このため、本実施形態のHUD表示制御では、複数の予想軌跡コンテンツが重なるように表示しつつ、より優先度の高いコンテンツが優先度の低いコンテンツよりも上に表示されるようにしている。例えば、回避ルートの方が予定走行ルート71よりも優先度が高いコンテンツとして設定される。そして、三次元位置特定部204で仮想三次元空間上において予定走行ルート71と回避ルートを特定する際に、回避ルートのレイヤーが予定走行ルート71のレイヤーの上に重ねられるようにする。または、表示生成部207がHUD230に表示させる際に、回避ルートが予定走行ルート71よりも上に重なるように表示させる。
【0055】
これにより、
図5Aに示されるように、より優先度の高いコンテンツが優先度の低いコンテンツの上に、すなわち回避ルート72が予定走行ルート71の上に重なるようにして道路上に重畳表示される。このため、ドライバに対して回避ルート72が優先的に読み取れる表示となる。よって、HCU20により、複数のコンテンツを同時に表示する際に、ドライバに判りやすい表示を行うことが可能となる。本実施形態の場合、予定走行ルート71と回避ルート72を異なる色としつつ、全域一色で表している。例えば、予定走行ルート71を青色矢印、回避ルート72を赤色矢印で表すようにしている。このように、予定走行ルート71と回避ルート72の表示色を変えることで、さらにドライバに判りやすい表示を行うことが可能となる。
【0056】
また、
図5Aの表示では、各ルート表示の基端、つまり各ルート表示のうちの自車側の端部の高さが同じ高さに揃えられるようにしている。同様に、各ルート表示の先端、つまり各ルート表示のうちの自車から離れる側の端部も同じ高さに揃えられるようにしている。この
図5Aの表示を道路の上方から見たとすると、
図5Bに示す表示となり、直線状とされた予定走行ルート71の長手方向において、各ルート表示の基端と先端の位置が揃うような表示とされる。また、各ルート表示の基端は、幅方向において車両の中央に配置され、各ルート表示が車両の中央から延びるような表示とされる。これにより、車両がこれから走行するルートであることをドライバに認識させやすくすることができる。
【0057】
このように、予定走行ルート71や回避ルート72を表示する際に、HUD230の表示画面中における各ルート表示の基端の高さが同じ高さに揃えられるようにしている。これにより、複数のコンテンツが離れて表示される形態ではなく、重ねて表示されるようにできると共に、ドライバにとってより見やすい表示形態とすることが可能となる。さらに、各ルート表示の先端、つまり各ルート表示のうちの自車から離れる側の端部も同じ高さに揃えられるようにしている。このため、更にドライバにとって見やすい表示形態とすることが可能となる。
【0058】
なお、予定走行ルート71と共に回避ルート72の表示が行われたのち、ドライバが回避ルート72を選択して車線変更したり、自車の速度を落として低速走行中の先行車両の速度に合わせたりすると、再び予定走行ルート71のみの表示に戻る。具体的には、ドライバが回避ルート72を選択して車線変更した場合には、変更後の車線を走行中の車線として改めて目的地に導く予定走行ルート71が設定され、その車線上に予定走行ルート71を示す矢印が重畳表示される。また、運転支援ECU6の制御形態によるが、低速走行中の先行車両を追い抜いた後に、再び車線変更前の車線に戻すようなルートが新たに提案されることもある。その場合には、この新たなルートを優先度の高いコンテンツとして、車線変更後に走行中の車線に沿って表示される予定走行ルート71に重ねて表示することもできる。
【0059】
(他の実施形態)
本開示は、上記した実施形態に準拠して記述されたが、当該実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0060】
例えば、上記第1実施形態では、予定走行ルート71と回避ルート72を異なる色で表しつつ、共に全域一色で表すようにしているが、各ルートを異なる表示形態で表示しても良い。
【0061】
一例を示すと、
図6Aに示すように、優先度の高い方となる回避ルート72については非透明の全域着色として下方の道路が隠れる表示形態とし、優先度の低い方となる予定走行ルート71については下方の道路が透ける半透明の表示形態としても良い。このようにすれば、優先度の高いルートをより際立たせることができ、ドライバに優先的に認識させることが可能となる。なお、この場合も、
図6Aの表示を道路の上方から見たときに、
図6Bに示す表示とし、直線状とされた予定走行ルート71の長手方向において、各ルート表示の基端と先端の位置が揃うような表示とされると好ましい。また、優先度の低い方を半透明とし、優先度の高い方を非透明とする表示形態だけでなく、複数の前記予想軌跡コンテンツのうち優先度が高いものと比較して、優先度が低いものの方の透明度が高い表示とされていれば良い。つまり、優先度が高いものが必ずしも非透明である必要は無い。また、
図6Aのように、優先度が低い方となる予想走行ルート71は、回避ルート72が発生する前においては非透明で表示され、回避ルート72が発生したあとに半透明で表示されることになり、予想軌跡コンテンツの変化に伴って表示形態が変化することになる。このように、予想軌跡コンテンツが変化する場合には、変化する前に元々表示していた予想軌跡コンテンツから表示形態を変化させるようにしても良い。
【0062】
また、道路に重なるようにルート表示を行う場合、表示されるルートは自車側においては幅広となり、自車から離れるほど幅狭となる。これは、自車から離れた位置ほどHUD230の表示における1画素中で表現される情報量が多くなることを意味している。このため、自車から遠くに離れた位置を表している部分ほどドライバが視認しにくくなり易い。したがって、自車から遠い位置を表している部分ほど、自車から近い位置を表している部分よりも輪郭が強調される表示形態にするのが好ましい。例えば、
図7に示すように、自車から遠い位置を示す所定範囲、例えばルート表示を行う矢印のうちのうち先端側の1/3の範囲については、黒色などの矢印表示と異なる色の輪郭を表示する。これにより、自車から遠くに離れた位置を表している部分もドライバに的確に認識させることが可能となる。
【0063】
なお、ここでは輪郭を強調するために、矢印表示と異なる色で輪郭を表すようにしているが、他の表示形態、例えば自車から遠くなるほど矢印表示の色を濃くして表示する等の表示形態としても良い。
【0064】
また、矢印表示に限らず、例えば
図8に示すように、予定走行ルート71については単なるラインでの表示とされていても良い。また、
図9に示すように、矢印の輪郭のみを示すようにしも良い。その場合でも、優先度の高いルート表示が上に表示されるようにすることで、ドライバに対して優先的に認識されるようにできる。
【0065】
さらに、上記第1実施形態では、三次元位置特定部204で、仮想三次元空間上において予定走行ルート71と回避ルート72とを別々に特定し、異なるレイヤーとして取得している。しかしながら、初めからレイヤーを分けずに、予定走行ルート71の上に回避ルート72が重ねて表示されるデータを取得するようにしても良い。つまり、複数のコンテンツを表示する場合に、各コンテンツを異なるレイヤーに分けた表示とするのではなく、初めから複数のコンテンツが複合された1つの複合コンテンツの表示としたものであってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、自車がこれから走行すべき予想軌跡を表示する予想軌跡コンテンツとして予定走行ルート71と回避ルート72を例に挙げて説明したが、他の予想軌跡コンテンツであっても良い。例えば、案内できるルートが複数発生した場合に、第1予定走行ルートと第2予定走行ルートというように、複数の予定走行ルートを同時に表示するような場合にも、それぞれが予想軌跡コンテンツとなる。また、予想軌跡コンテンツが2つ同時に表示される場合を例に挙げて説明したが、2つよりも多い予想軌跡コンテンツが同時に表示される場合であっても良い。これらの場合も、優先度の高いものが優先度の低いものの上に表示されるようにすれば良い。例えば、運転支援ECU6にて走行計画を設定する際には、地
図DB32から地図データを取得し、リンクデータやノードデータなどに基づいてコスト計算を行って走行計画を設定する。その際のコスト計算の結果に基づいて優先度を設定できる。例えば、コストが低いほど優先度を高くするなどのように、優先度を設定できる。また、渋滞発生などにより車両周辺の環境が変わり、コスト計算の結果が変化した場合には、その計算結果に合わせて優先度を変更し、予想軌跡コンテンツの重なり方を変化させても良い。
【0067】
また、優先度については予想軌跡コンテンツごとに予め決めておいても良いし、新たに表示することになった予想軌跡コンテンツほど高くなるようにしても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、HCU20に備えられる各機能部の構成例を示したが、必ずしも上記実施形態で示した構成例通りでなくても良い。例えば、各機能部が別々に備えられている必要はなく、複数の機能部が1つの共通する機能部として構成されていても良いし、1つの機能部が複数に分かれていても良い。一例を示すと、三次元位置特定部204は、予想軌跡コンテンツとなる予定走行ルート71や回避ルート72の表示位置等を特定する機能に加えてこれらに関する情報を取得する情報取得部としての機能も備えている。これらが別々の機能部として存在していても良い。
【0069】
なお、本開示に記載の表示制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の表示制御部およびその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の表示制御部およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…車両用表示システム、2…HMIシステム、3…ADASロケータ、4…周辺監視センサ、5…車両制御ECU、6…運転支援ECU、10…フロントウインドシールド、70…画角、71…予定走行ルート、72…回避ルート、200…撮像画像取得部、201…距離方位取得部、202…自車位置取得部、203…高精度地図取得部、204…三次元位置特定部、205…視点位置特定部、206…不可視領域推定部、207…表示生成部、230…HUD装置