IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7400264画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム
<>
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図1
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図2
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図3
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図4
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図5
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図6
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図7
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図8
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図9
  • 特許-画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20231212BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20231212BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G03G15/08 362
G03G15/08 321B
G03G21/14
G03G21/00 510
G03G21/00 390
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019152012
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021033005
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】國久 哲平
(72)【発明者】
【氏名】廣田 創
(72)【発明者】
【氏名】内貴 繁喜
(72)【発明者】
【氏名】赤司 裕紀
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-333421(JP,A)
【文献】特開2013-148836(JP,A)
【文献】特開2010-060707(JP,A)
【文献】特開2014-079989(JP,A)
【文献】特開2018-146828(JP,A)
【文献】特開2009-036787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/14
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、
前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、
前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、
前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、
を備え、
前記撹拌制御手段は、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記判断手段は、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像器は、
充填されている現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度センサー、
を備え、
前記判断手段は、前記撹拌動作中において前記トナー濃度センサーから出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記現像器の工場出荷時において前記トナー濃度センサーにより検出されたトナー濃度を前記基準値として取得することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像器は、
工場出荷時において前記トナー濃度センサーにより検出されたトナー濃度を前記基準値として記憶する記憶手段、
を更に備え、
前記取得手段は、前記記憶手段に記憶されている前記基準値を取得することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像器は、
充填されている現像剤を撹拌させる撹拌手段、
を備え、
前記撹拌制御手段は、前記撹拌手段を駆動することによって前記現像器に前記撹拌動作を行わせることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記撹拌手段は、現像剤の充填空間に配置された撹拌スクリューを有し、
前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを回転させることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、
前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、
前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、
前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、
を備え、
前記現像器は、充填されている現像剤を撹拌させる撹拌スクリューを有する撹拌手段を備え
前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを所定速度で所定時間回転させたときに前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合、前記撹拌スクリューを前記所定速度とは異なる速度に変化させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、
前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、
前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、
前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、
を備え、
前記現像器は、充填されている現像剤を撹拌させる撹拌スクリューを有する撹拌手段を備え
前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを所定方向に所定時間回転させたときに前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合、前記撹拌スクリューを前記所定方向とは異なる方向に回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
前記撹拌手段は、前記現像器の筐体に取り付けられた振動部材を有し、
前記撹拌制御手段は、前記振動部材を駆動して前記現像器に充填されている現像剤に振動を付与することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記判断手段は、前記撹拌動作が開始されてから予め設定された撹拌期間が経過した時点において、前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合に異常通知を行うことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記判断手段は、前記撹拌動作が開始されてから予め設定された撹拌期間が経過した時点において、前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合にジョブの実行を禁止することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項13】
トナーを含む現像剤が充填された現像器の工場出荷時にトナー濃度の基準値を予め設定しておく設定ステップと、
前記現像器が画像形成装置に装着され、前記画像形成装置において前記現像器を最初に動作させるとき、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌ステップと、
前記撹拌動作が行われるとき、前記基準値を取得する取得ステップと、
前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断ステップと、
を有し、
前記撹拌ステップは、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする現像剤撹拌方法。
【請求項14】
前記判断ステップは、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする請求項13に記載の現像剤撹拌方法。
【請求項15】
前記設定ステップは、前記基準値を所定のサーバーに保存することによって設定し、
前記取得ステップは、前記サーバーから前記基準値を取得することを特徴とする請求項13又は14に記載の現像剤撹拌方法。
【請求項16】
トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置において実行される現像剤撹拌プログラムであって、前記画像形成装置に、
前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌ステップと、
前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得ステップと、
前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断ステップと、
を実行させ、
前記撹拌ステップは、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする現像剤撹拌プログラム。
【請求項17】
前記判断ステップは、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする請求項16に記載の現像剤撹拌プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラムに関し、特に画像形成装置に装着された現像器に充填されている現像剤を撹拌する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に装着される現像器には、トナーとキャリアとを含む現像剤が充填されている。現像器内の現像剤は、工場から出荷された後の輸送環境や保管環境の影響を受けて嵩密度が変化することが知られている。すなわち、現像器の輸送中や保管中に、周辺環境の影響により現像剤に含まれるトナーが凝集してしまうことで嵩密度が変化する。工場出荷時から嵩密度が変化してしまった状態の現像剤を使用して画像形成を行ってしまうと、噴煙が発生して装置内部を汚してしまうと共に、画像の濃度異常が発生するという問題がある。
【0003】
そのような問題を解決するためのひとつの手法として、例えば画像形成装置に新品の現像器が装着されたときに初期撹拌動作を行うことが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1の従来技術では、顧客先でのセットアップ時に現像器内のスクリューを予め設定された時間だけ駆動して現像剤を撹拌するようにしている。
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、初期撹拌動作を行う時間が予め設定された時間に固定されているため、嵩密度の変化度合が大きい場合には撹拌時間が不十分となり、初期撹拌動作の終了後においても現像剤が十分にほぐれていない状態となることがある。その場合、初期撹拌動作の終了後に画像形成を行うと、依然として噴煙発生や濃度異常といった問題が発生する可能性がある。
【0005】
上記従来技術において噴煙発生や濃度異常といった問題を確実に解決しようとすると、初期撹拌動作のための時間をかなり長い時間に予め設定しておくことが必要となる。ところが、初期撹拌動作の時間を長時間に設定すると、顧客先でのセットアップ時間が長くなり、画像形成装置を早期に使用可能な状態とすることができないという問題が生じる。特に、嵩密度の変化度合が小さい場合には、初期撹拌動作が開始されてから比較的早いタイミングで現像剤が十分にほぐれた状態となるにもかかわらず、その後も長時間に亘る初期撹拌動作が継続されることから、画像形成装置を長時間使用することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-106344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、工場出荷時と同程度の状態まで現像剤をほぐすことができたか否かを判定できるようにした画像形成装置、現像剤撹拌方法及び現像剤撹拌プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、トナーを含む現像が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、を備え、前記撹拌制御手段は、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする構成である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1の画像形成装置において、前記判断手段は、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする構成である。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、前記現像器は、充填されている現像剤のトナー濃度を検出するトナー濃度センサー、を備え、前記判断手段は、前記撹拌動作中において前記トナー濃度センサーから出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することを特徴とする構成である。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項3の画像形成装置において、前記取得手段は、前記現像器の工場出荷時において前記トナー濃度センサーにより検出されたトナー濃度を前記基準値として取得することを特徴とする構成である。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4の画像形成装置において、前記現像器は、工場出荷時において前記トナー濃度センサーにより検出されたトナー濃度を前記基準値として記憶する記憶手段、を更に備え、前記取得手段は、前記記憶手段に記憶されている前記基準値を取得することを特徴とする構成である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかの画像形成装置において、前記現像器は、充填されている現像剤を撹拌させる撹拌手段、を備え、前記撹拌制御手段は、前記撹拌手段を駆動することによって前記現像器に前記撹拌動作を行わせることを特徴とする構成である。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項6の画像形成装置において、前記撹拌手段は、現像剤の充填空間に配置された撹拌スクリューを有し、前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを回転させることを特徴とする構成である。
【0015】
請求項8に係る発明は、トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、を備え、前記現像器は、充填されている現像剤を撹拌させる撹拌スクリューを有する撹拌手段を備え、前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを所定速度で所定時間回転させたときに前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合、前記撹拌スクリューを前記所定速度とは異なる速度に変化させることを特徴とする構成である。
【0016】
請求項9に係る発明は、トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置であって、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌制御手段と、前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得手段と、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断手段と、を備え、前記現像器は、充填されている現像剤を撹拌させる撹拌スクリューを有する撹拌手段を備え、前記撹拌制御手段は、前記撹拌スクリューを所定方向に所定時間回転させたときに前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合、前記撹拌スクリューを前記所定方向とは異なる方向に回転させることを特徴とする構成である。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項6乃至9のいずれかの画像形成装置において、前記撹拌手段は、前記現像器の筐体に取り付けられた振動部材を有し、前記撹拌制御手段は、前記振動部材を駆動して前記現像器に充填されている現像剤に振動を付与することを特徴とする構成である。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至10のいずれかの画像形成装置において、前記判断手段は、前記撹拌動作が開始されてから予め設定された撹拌期間が経過した時点において、前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合に異常通知を行うことを特徴とする構成である。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至11のいずれかの画像形成装置において、前記判断手段は、前記撹拌動作が開始されてから予め設定された撹拌期間が経過した時点において、前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となっていない場合にジョブの実行を禁止することを特徴とする構成である。
【0020】
請求項13に係る発明は、現像剤撹拌方法であって、トナーを含む現像剤が充填された現像器の工場出荷時にトナー濃度の基準値を予め設定しておく設定ステップと、前記現像器が画像形成装置に装着され、前記画像形成装置において前記現像器を最初に動作させるとき、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌ステップと、前記撹拌動作が行われるとき、前記基準値を取得する取得ステップと、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断ステップと、を有し、前記撹拌ステップは、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする構成である。
【0021】
請求項14に係る発明は、請求項13の現像剤撹拌方法において、前記判断ステップは、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする構成である。
【0022】
請求項15に係る発明は、請求項13又は14の現像剤撹拌方法において、前記設定ステップは、前記基準値を所定のサーバーに保存することによって設定し、前記取得ステップは、前記サーバーから前記基準値を取得することを特徴とする構成である。
【0023】
請求項16に係る発明は、トナーを含む現像剤が充填された現像器を着脱可能な画像形成装置において実行される現像剤撹拌プログラムであって、前記画像形成装置に、前記現像器の初期動作として前記現像器に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる撹拌ステップと、前記撹拌動作が行われるとき、前記現像器の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値を取得する取得ステップと、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度を前記基準値と比較することによって現像剤の撹拌状態を判断する判断ステップと、を実行させ、前記撹拌ステップは、前記撹拌動作を行う撹拌期間を複数の期間に分割し、分割された各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させることを特徴とする構成である。
【0024】
請求項17に係る発明は、請求項16の現像剤撹拌プログラムにおいて、前記判断ステップは、前記撹拌動作中において前記現像器から出力されるトナー濃度が前記基準値に対して所定範囲内の値となったときに前記撹拌動作を終了させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、工場出荷時と同程度の状態まで現像剤をほぐすことができたか否かを判定できるため、顧客先でのセットアップ時間が長くなることを防ぐことができる。噴煙発生や濃度異常といった問題を解決することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】画像形成装置の一構成例を示す概念図である。
図2】現像器の一構成例を示す断面図である。
図3】トナー濃度センサーの出力特性を示す図である。
図4】現像器の工場出荷前に行われるトナー濃度の基準値を設定する手順の一例を示すフローチャートである。
図5】画像形成装置のコントローラによる制御機構の一例を示すブロック図である。
図6】撹拌制御部による撹拌動作の種類を例示した図である。
図7】現像器の初期動作として行われる撹拌動作の経過時間とトナー濃度センサーの出力値との関係を示す図である。
図8】コントローラによって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】現像剤撹拌処理の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】画像形成装置を含む画像形成システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する要素には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態である画像形成装置1の一構成例を示す概念図である。この画像形成装置1は、電子写真方式で印刷用紙などのシート材9に画像形成を行って出力するプリンタであって、タンデム方式でカラー画像を形成することが可能な装置である。画像形成装置1は、装置本体1aの内部に、搬送部2と、画像形成部3と、定着部4とを備えており、下部の給紙カセット8に収容されているシート材9を1枚ずつ搬送し、そのシート材9にカラー画像又はモノクロ画像を形成して上部の排出口5から排紙トレイ6上にシート材9を排出する構成である。また画像形成装置1は、装置本体1aの内部に、コントローラ7を備えている。コントローラ7は、搬送部2、画像形成部3及び定着部4といった各部の動作を制御する。また、コントローラ7は、後述するように、現像器に予め充填されている現像剤の撹拌動作を制御する。
【0029】
搬送部2は、給紙カセット8と、ピックアップローラー10と、給紙部11と、搬送路12と、レジスト部13と、二次転写ローラー14とを有している。給紙カセット8は、シート材9の束を収容する容器である。ピックアップローラー10は、給紙カセット8に収容されているシート材9の束の最上部のシート材9を取り出して給紙部11へ送り出す。ただし、ピックアップローラー10は、複数枚のシート材9を給紙カセット8の下流側に送り出すことがある。給紙部11は、ピックアップローラー10によって送り出される1枚又は複数枚のシート材9のうちから最上部に位置する1枚のシート材9だけを抜き出して下流側の搬送路12へ供給する。
【0030】
搬送路12は、シート材9を矢印F2方向へ搬送するための経路である。搬送路12を搬送されるシート材9は、レジスト部13において斜行補正が施される。レジスト部13は、一対のローラーを備えて構成され、画像形成部3によって形成されるトナー像が二次転写ローラー14の位置へ移動してくるタイミングに合わせて一対のローラーが駆動されることにより、斜行補正を施したシート材9を二次転写ローラー14の位置へ搬送する。シート材9は、二次転写ローラー14の位置を通過するときに画像形成部3において形成されたトナー像が転写され、その後、定着部4を通過する際に紙面に転写されたトナー像の定着処理が施される。定着部4は、搬送されるシート材9に対して加熱処理及び加圧処理を施すことによってトナー像をシート材9に定着させる。その後、シート材9は、排出口5から排紙トレイ6上へ排出される。
【0031】
画像形成部3は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色のトナー像を形成し、二次転写ローラー14の位置を通過するシート材9に対してそれら4色のトナー像を同時に転写することが可能な構成である。画像形成部3は、各色に対応する複数のトナーボトル19(19Y,19M,19C,19K)と、各色に対応する複数の画像形成ユニット20(20Y,20M,20C,20K)と、各色に対応する複数の露光部25(25Y,25M,25C,25K)と、転写ユニット30とを備えている。
【0032】
転写ユニット30は、所定間隔を隔てて配置される一対のローラー31,32と、無端ベルトによって構成され、一対のローラー31,32に掛架された状態に配置される中間転写ベルト33と、中間転写ベルト33の内側において各画像形成ユニット20に対向する位置に配置される複数の一次転写ローラー34(34Y,34M,34C,34K)と、中間転写ベルト33の表面に残留するトナーを除去するためのクリーニング部35とを有し、これらが一体的に組み付けられたユニットである。
【0033】
一対のローラー31,32のうち、一方のローラー31は、装置本体1aの内部に設けられる駆動軸に装着されて回転する駆動ローラーであり、駆動軸が回転駆動されることによって中間転写ベルト33を矢印F1方向へ循環移動させる。他方のローラー32は、装置本体1aの内部に設けられる従動軸に装着され、中間転写ベルト33の循環移動に伴い、従動回転する。これら一対のローラー31,32は、中間転写ベルト33に対して一定のテンションを付与した状態で装置本体1aの内部において所定間隔離れた位置に設置される。ローラー31は、駆動軸に装着されることにより、二次転写ローラー14に対向する位置に設置され、二次転写ローラー14との間に中間転写ベルト33を挟み込んだ状態で中間転写ベルト33に押圧力を付与している。そしてローラー31は、レジスト部13から搬送されるシート材9を中間転写ベルト33と二次転写ローラー14との間に挟み込んで押圧することにより、中間転写ベルト33の表面に形成されているトナー像をシート材9に二次転写させる。
【0034】
クリーニング部35は、ローラー32に対向する位置おいて中間転写ベルト33の表面に接触する状態に保持され、矢印F1方向に循環移動する中間転写ベルト33の表面に残留しているトナーを除去する。
【0035】
各色に対応する画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、転写ユニット30の下方位置に設けられており、各色に対応する露光部25Y,25M,25C,25Kは各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kの更に下方位置に設けられている。トナーボトル19Y,19M,19C,19Kは、転写ユニット30の上部に配置され、各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kに対して各色のトナーを含む現像剤を供給する。
【0036】
各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは同様の構成を有しており、使用するトナーの色が異なるだけである。すなわち、各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、感光体ドラムとして構成される像担持体21と、像担持体21の周囲に配置される、帯電部22と、現像器23と、クリーニングブレード24とを備えている。尚、以下において、各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kを区別する必要がないときには、それらを総称して画像形成ユニット20と呼ぶことがある。
【0037】
像担持体21は、ドラム表面に感光層を有しており、例えば転写ユニット30の一次転写ローラー34による転写圧が付与された中間転写ベルト33と接触した状態で右回り方向(時計回り方向)に回転する。その回転方向に沿って像担持体21の周囲には、クリーニングブレード24と、帯電部22と、現像器23とが配置されている。帯電部22は、像担持体21の表面に接する帯電ローラーを備えて構成され、像担持体21の表面を所定電荷に帯電させる。露光部25は、帯電部22によって帯電した感光層を画像データに基づいて露光することにより、像担持体21の表面に静電潜像を形成する。現像器23は、トナーとキャリアとを含む現像剤が内部に充填されており、その現像剤を像担持体21の表面に供給し、静電潜像をトナーで顕像化させることにより像担持体21の表面にトナー像を形成する。像担持体21に形成されたトナー像は、中間転写ベルト33と接触する位置で中間転写ベルト33に一次転写される。一次転写ローラー34には、像担持体21の表面に形成される帯電したトナー像と逆極性となるバイアス電圧が印加されており、静電気力によって像担持体21の表面に形成されているトナー像を中間転写ベルト33に一次転写させることができる。
【0038】
各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kは、それぞれの一次転写ローラー34Y,34M,34C,34Kと協働しながら、矢印F1方向に循環移動する中間転写ベルト33に対して各色のトナー像を順次重畳させながら一次転写していく。したがって、中間転写ベルト33が最下流の画像形成ユニット20Kの位置を通過すると、中間転写ベルト33の表面には、4色のトナー像が重畳されたカラー画像が形成される。尚、シート材9にモノクロ画像を形成する場合には、画像形成ユニット20Y,20M,20Cが動作せず、K(ブラック)に対応する画像形成ユニット20Kのみが動作して中間転写ベルト33にKのトナーのみによるモノクロ画像が形成される。
【0039】
そして中間転写ベルト33に形成されるトナー像は、二次転写ローラー14と対向する位置を通過するときに、搬送部2によって搬送されるシート材9と接触し、そのシート材9の表面に二次転写される。すなわち、二次転写ローラー14は、中間転写ベルト33を挟んでローラー31と対向する位置に設けられており、中間転写ベルト33に一次転写されたトナー像がシート材9と接触するときに、帯電したトナーと逆極性のバイアス電圧が印加されることでトナー像をシート材9に二次転写させる。
【0040】
二次転写ローラー14の位置でトナー像をシート材9に二次転写した後においても、中間転写ベルト33の表面上には一部のトナーが残留することがある。そのような残留トナーは、中間転写ベルト33の表面に付着した状態のまま中間転写ベルト33と共に循環移動する。そしてクリーニング部35の位置を通過するときに、残留トナーは、クリーニング部35に設けられているクリーニングブレード又はクリーニングブラシによって中間転写ベルト33の表面から除去される。
【0041】
また、各画像形成ユニット20Y,20M,20C,20Kにおいて、像担持体21に形成されたトナー像を中間転写ベルト33に一次転写した後においても、像担持体21の表面にはトナーが残留することがある。そのような残留トナーは、像担持体21の回転に伴ってクリーニングブレード24に向かって進行し、クリーニングブレード24によって像担持体21の表面から除去される。
【0042】
次に現像器23について説明する。図2は、現像器23の一構成例を示す断面図である。この現像器23は、筐体40の内部にトナーとキャリアとを含む現像剤が充填されている。現像器23は、画像形成ユニット20に対して着脱可能である。言い換えると、現像器23は、画像形成装置1の装置本体1aに対して着脱可能である。現像器23の筐体40には、トナーボトル19から供給される現像剤を内部に補給するための補給口40aが所定位置に形成されている。そのため、現像器23は、装置本体1aに装着されると、補給口40aを介してトナーボトル19から供給される現像剤を補充することができる。尚、新品の現像器23の場合には、工場出荷時に現像剤が予め筐体40内の充填空間に充填されている。
【0043】
現像器23は、図2に示すように、筐体40の内部に、現像スリーブ41と、供給スクリュー42と、撹拌スクリュー43とを備えている。また、現像器23は、筐体40の内部に隔壁45を備えている。隔壁45は、現像スリーブ41と供給スクリュー42とが配置された上部空間と、撹拌スクリュー43が配置された下部空間とを区成するためのものである。尚、隔壁45によって区成される上部空間と下部空間とは、供給スクリュー42及び撹拌スクリュー43の両端部分において互いに連通しており、現像剤を移動させることができる。
【0044】
現像スリーブ41は、隔壁45によって区成された上部空間に配置され、その一部が筐体40から外側に露出した状態である。現像スリーブ41の露出した部分は、像担持体21の表面に対して一定間隔を隔てた状態で配置される。また現像スリーブ41は、現像器23が装置本体1aに装着されると、回転軸41aが装置本体1aに設けられたモーターと結合し、所定方向に回転駆動される。現像スリーブ41は、所定方向に回転することにより、供給スクリュー42から供給される現像剤を像担持体21の表面に供給する。
【0045】
供給スクリュー42は、現像剤を撹拌させる機能を有する撹拌手段のひとつである。供給スクリュー42は、現像スリーブ41と平行に配置され、装置本体1aのモーターによって回転駆動される回転軸42aを有している。供給スクリュー42は、回転軸42aが駆動されて所定方向に回転することにより、下部空間から供給される現像剤を現像スリーブ41の長手方向に沿って搬送しつつ、現像剤を現像スリーブ41へ供給する。
【0046】
撹拌スクリュー43も、現像剤を撹拌させる撹拌手段のひとつである。撹拌スクリュー43は、供給スクリュー42と平行に配置され、装置本体1aのモーターによって回転駆動される回転軸43aを有している。尚、撹拌スクリュー43は、供給スクリュー42と同一のモーターによって駆動されるものであっても良い。ただし、筐体40の内部において現像剤を循環させるという点において、撹拌スクリュー43及び供給スクリュー42は、互いに反対方向へ回転駆動されることが好ましい。
【0047】
撹拌スクリュー43は、所定方向に回転することにより、現像剤を撹拌しつつ、スクリューの長手方向に沿って搬送する。これにより、現像剤に含まれるトナーを摩擦帯電させることができる。撹拌スクリュー43は、現像器23の下部空間(撹拌空間)で現像剤を撹拌させた後、隔壁45の一端側において上部空間に連通している部分を介して現像剤を上部空間に汲み上げる。
【0048】
現像スリーブ41は、その内周側にマグネット部材を有しており、そのマグネット部材によって、帯電したトナーをスリーブ表面に捕獲する。そして現像スリーブ41は、回転することにより、スリーブ表面に捕獲したトナーを像担持体21の表面に供給する。筐体40内におけるトナーとキャリアとの比率が低くなると、スリーブ表面に捕獲される現像剤が少なくなり、濃度異常となる。そのため、トナーとキャリアとの比率を一定の状態に維持すべく、現像器23において供給スクリュー42及び撹拌スクリュー43による撹拌が行われる。
【0049】
また現像器23は、筐体40の外壁部に取り付けられた、トナー濃度センサー46と、記憶部47と、複数の振動部材48とを備えている。
【0050】
トナー濃度センサー46は、例えば撹拌スクリュー43付近の筐体40の外壁部に設けられる。トナー濃度センサー46は、筐体40内に充填されている現像剤のトナー濃度(トナーとキャリアの比率)を検出するセンサーである。トナー濃度センサー46は、例えばコルピッツ発振回路によって構成される。コルピッツ発振回路は、1つのコイルと、2つのコンデンサとから成るLC同調型の発振回路であり、2つのコンデンサの容量と、コイルのインダクタンスによって発振周波数が決まる。したがって、コルピッツ発振回路によって構成されるトナー濃度センサー46は、筐体40内のトナーとキャリアの比率の変化に起因するコイルのインダクタンス変化を、発振周波数の変化をとして出力する。
【0051】
図3は、トナー濃度センサー46の出力特性を示す図である。トナー濃度センサー46は、図3において出力特性G1として示すように、現像器23内のトナー濃度に比例した周波数を出力する。例えば、新品の現像器23の場合、筐体40内には所定のトナー濃度D1(例えば8%)の現像剤が充填されている。そのため、工場出荷時において筐体40内の現像剤が十分に撹拌された状態である場合、トナー濃度センサー46の出力値は、所定のトナー濃度D1に応じた周波数(出力値)となる。例えば、図3に示す出力特性G1のトナー濃度センサー46は、工場出荷時において筐体40内の現像剤が十分に撹拌された状態であるとき、所定のトナー濃度D1に応じた出力値V1を出力する。
【0052】
ところが、トナー濃度センサー46には個体差があり、その個体差によって出力特性にばらつきが生じる。例えば、ある現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力特性が図3に示す出力特性G1であったとしても、別の現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力特性は図3に示す出力特性G2であったり、或いは、出力特性G3であったりする。つまり、筐体40内に充填されている現像材が所定のトナー濃度D1であっても、現像器23が変わればトナー濃度センサー46から出力される出力値がそれぞれ異なることになる。
【0053】
そこで本実施形態では、現像器23の工場出荷時において、筐体40内の現像剤が十分に撹拌された状態であるときにトナー濃度センサー46にトナー濃度の測定を行わせ、トナー濃度センサー46から出力される周波数の出力値を記憶部47に保存し、その出力値をトナー濃度の基準値として予め設定しておく。尚、工場出荷時にトナー濃度の基準値を設定する際には、トナー濃度センサー46が筐体40内の現像剤が十分に撹拌された状態で実際にトナー濃度を測定するものに限られず、例えばトナー濃度センサー46の出力特性を測定し、その出力特性から所定のトナー濃度D1の現像剤を測定した場合の出力値を演算により算出し、演算で算出された出力値をトナー濃度の基準値として設定するものであっても構わない。
【0054】
記憶部47は、例えば半導体メモリなどで構成される不揮発性の記憶手段である。記憶部47は、上述したように現像器23の工場出荷時に予め設定されるトナー濃度の基準値を記憶する。
【0055】
複数の振動部材48のそれぞれは現像剤を撹拌させる撹拌手段のひとつである。複数の振動部材48は、例えば撹拌スクリュー43付近の筐体40の外壁部に、撹拌スクリュー43の長手方向に沿って所定間隔に配置される。例えば、各振動部材48は、振動モーターによって構成される。振動モーターは、振動子を取り付けた出力軸を回転させることで振動を発生させるモーターである。複数の振動部材48は、筐体40の外壁を振動させることにより、筐体40内の現像剤に振動を付与し、現像剤を撹拌する。したがって、現像剤は、供給スクリュー42と撹拌スクリュー43による撹拌作用だけでなく、更に振動部材48による撹拌作用を受けることになり、ほぐれやすくなる。
【0056】
図4は、現像器23の工場出荷前に行われるトナー濃度の基準値を設定する手順の一例を示すフローチャートである。尚、図4に示す手順は、現像器23の出荷前に行われれば良く、製造過程において行われるものであっても良い。図4に示すように、まず、現像器23は、筐体40に対して所定のトナー濃度D1の現像剤が充填される(ステップS1)。筐体40に現像剤が充填されると、次に現像器23は、供給スクリュー42、撹拌スクリュー43及び振動部材48が駆動され、充填された現像剤の撹拌が行われる(ステップS2)。この撹拌動作により、筐体40内の現像剤は、十分に撹拌された状態となる。その後、現像器23は、十分に撹拌された状態でトナー濃度センサー46から出力される出力値を、トナー濃度の基準値Vrとして取得し、その基準値Vrを記憶部47に保存する。このような手順が行われることにより、工場から出荷される現像器23には、その現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46が所定のトナー濃度D1を測定したときの基準値Vrが設定される。
【0057】
工場から出荷される現像器23は、輸送中や保管中に周辺環境の影響を受け、筐体40内のトナーが凝集してしまうことで現像剤の嵩密度が変化する。具体的には、トナーが凝集すると、筐体40内において現像剤の嵩密度が高くなる。現像剤の嵩密度が高くなると、トナー濃度センサー46によって測定されるトナー濃度が低下する。つまり、現像器23の筐体40内には、所定のトナー濃度D1の現像剤が充填されているにもかかわらず、嵩密度が高くなることによってトナー濃度センサー46から出力される出力値が低下するのである。
【0058】
そこで画像形成装置1のコントローラ7は、装置本体1aに装着された現像器23を最初に動作させるときに、現像器23の初期動作として、現像器23の筐体40内に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせることで、現像剤の嵩密度を工場出荷時と同様の状態(現像剤が十分にほぐれた状態)に戻す制御を行う。このとき、コントローラ7は、トナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度(周波数)と、工場出荷時に予め設定されているトナー濃度の基準値Vrとに基づき、筐体40内に充填されている現像剤の撹拌状態を判断するように構成される。以下、このようなコントローラ7について詳しく説明する。
【0059】
図5は、画像形成装置1のコントローラ7による制御機構の一例を示すブロック図である。画像形成装置1の装置本体1aには、コントローラ7と、操作パネル53と、通信インタフェース54と、モーター58とが設けられている。コントローラ7は、CPU50と、メモリ51とを備えている。CPU50は、メモリ51に記憶されているプログラム52を読み出して実行するハードウェアプロセッサーである。メモリ51は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などによって構成される不揮発性の記憶手段である。尚、メモリ51に記憶されるプログラム52は、現像剤撹拌プログラムである。
【0060】
操作パネル53は、ユーザーが画像形成装置1を使用する際のユーザーインタフェースとなるものであり、表示部53aと操作部53bとを備えている。表示部53aは、例えばカラー液晶ディスプレイなどで構成され、各種情報を表示する。操作部53bは、例えばタッチパネルキーや押しボタンキーなどで構成され、ユーザーによる入力操作を受け付ける。通信インタフェース54は、画像形成装置1をLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続して外部の装置と通信を行うためのものである。例えば、画像形成装置1は、この通信インタフェース54を介して印刷ジョブを受信することができる。モーター58は、現像器23が装置本体1aに装着されたときに、少なくとも撹拌スクリュー43の回転軸43aと結合し、撹拌スクリュー43を回転させる駆動源である。尚、モーター58は、リンク機構などを介して供給スクリュー42の回転軸42aにも結合され、供給スクリュー42と撹拌スクリュー43とを同時に回転させることができる構成であっても構わない。
【0061】
コントローラ7のCPU50は、メモリ51のプログラム52を読み出して実行することにより、トナー調整部55及びジョブ制御部56として機能する。トナー調整部55は、装置本体1aに装着された現像器23を最初に動作させるときに機能し、現像器23の初期動作として、筐体40内に充填されている現像剤を撹拌させる動作を制御する。ジョブ制御部56は、トナー調整部55による現像器23の初期動作が正常に完了した後に機能し、ユーザーによって指定された印刷ジョブの実行を制御する。例えば通信インタフェース54を介して印刷ジョブを受信した場合、ジョブ制御部56は、その印刷ジョブに基づいて搬送部2、画像形成部3及び定着部4のそれぞれを同期させて駆動し、印刷ジョブに含まれている印刷対象の画像がシート材9に対して適切に形成されるように制御する。
【0062】
トナー調整部55は、撹拌制御部61と、基準値取得部62と、判断部63とを備えている。トナー調整部55は、これら各部を動作させることにより、現像器23に初期動作となる撹拌動作を行わせる。
【0063】
撹拌制御部61は、現像器23の初期動作として、現像器23の筐体40内に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる。具体的には、撹拌制御部61は、モーター58を駆動し、撹拌スクリュー43を回転させることにより、筐体40内の現像剤を撹拌する。また、撹拌制御部61は、筐体40の外壁部に取り付けられている振動部材48を駆動することにより、筐体40内の現像剤に振動を付与して撹拌する。
【0064】
また、撹拌制御部61は、予め設定された撹拌期間が経過するまで現像器23に現像剤の撹拌動作を行わせる。撹拌制御部61は、その撹拌期間において撹拌スクリュー43及び振動部材48などの撹拌手段による撹拌動作を変化させる。撹拌期間において撹拌動作を変化させることにより、現像剤をほぐれやすくするのである。例えば、撹拌スクリュー43を一方向に回転させているときにはほぐれなかった現像剤であっても、撹拌スクリュー43を逆方向に回転させることにより、ほぐすことができることがある。また、撹拌スクリュー43を所定の速度で回転させているときにはほぐれなかった現像剤であっても、撹拌スクリュー43の回転速度を変化させることにより、ほぐすことができることもある。そのため、撹拌制御部61は、撹拌期間内に現像剤が十分にほぐれた状態となるように、その撹拌期間において撹拌スクリュー43及び振動部材48などの撹拌手段による撹拌動作の態様を変化させるのである。
【0065】
図6は、撹拌制御部61による撹拌動作の種類を例示した図である。例えば、撹拌制御部61は、撹拌期間中において、第1動作、第2動作、第3動作及び第4動作の4種類の撹拌動作が行われるように制御する。第1動作は、撹拌スクリュー43を予め定められた正回転方向へ回転させると共に、撹拌スクリュー43の回転速度を低速に設定して回転させる動作である。第2動作は、撹拌スクリュー43を正回転方向とは反対の逆回転方向へ回転させると共に、撹拌スクリュー43の回転速度を低速に設定して回転させる動作である。第3動作は、撹拌スクリュー43を正回転方向へ回転させると共に、撹拌スクリュー43の回転速度を高速に設定して回転させる動作である。第4動作は、撹拌スクリュー43を逆回転方向へ回転させると共に、撹拌スクリュー43の回転速度を高速に設定して回転させる動作である。尚、図6では、4種類の動作の全てにおいて振動部材48をオン状態にして振動を付与する例を示しているが、これに限られるものではなく、振動部材48のオンオフ状態を変化させるようにしても良い。
【0066】
撹拌制御部61は、例えば現像器23に撹拌動作を行わせる撹拌期間を、第1期間、第2期間、第3期間及び第4期間といった4つの期間に分割する。撹拌制御部61は、それら4つの期間を上述した4種類の撹拌動作に割り当て、各期間が経過するごとに撹拌動作を変化させていく。これにより、撹拌期間中において現像器23に充填されている現像剤に対して複数種類の撹拌動作が行われることになり、トナーが凝集して嵩密度が高くなった現像剤を工場出荷時と同様の状態に戻すことができる。
【0067】
基準値取得部62は、撹拌制御部61による撹拌動作が行われるとき、現像器23の工場出荷時に予め設定されたトナー濃度の基準値Vrを取得する。現像器23は、装置本体1aに装着されることにより、コントローラ7と電気的に接続された状態となる。そのため、基準値取得部62は、装置本体1aに装着された現像器23に搭載されている記憶部47から工場出荷時に予め設定された基準値Vrを読み出すことにより、トナー濃度の基準値Vrを取得する。そして基準値取得部62は、記憶部47から読み出した基準値Vrを判断部63へ出力する。
【0068】
判断部63は、撹拌制御部61による撹拌動作が行われているとき、現像器23のトナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度を、基準値Vrと比較することにより、現像剤の撹拌状態を判断する。判断部63は、撹拌制御部61による撹拌動作の実行中において現像器23のトナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度が基準値Vrの近傍値に到達すると、現像器23の筐体40内の現像剤が工場出荷時と略同じ状態までほぐれた状態となり、十分に撹拌された状態となったと判断する。つまり、新品の現像器23が使用される前の状態では、現像器23の筐体40に所定のトナー濃度D1の現像剤が充填されているため、現像器23の初期動作時に現像剤を十分に撹拌すれば、現像剤の嵩密度が工場出荷時と同等の状態に復帰し、トナー濃度センサー46によって検出されるトナー濃度が工場出荷時に予め設定された基準値Vrと略等しい値を示す。このことから、判断部63は、現像器23のトナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度が基準値Vrの近傍値になった場合に、現像剤が十分に撹拌された状態であると判断するのである。
【0069】
判断部63は、トナー濃度センサー46によって検出されるトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値となった場合に、基準値Vrの近傍値であると判断する。例えば、判断部63は、トナー濃度センサー46によって検出されるトナー濃度が基準値Vrに対して前後数パーセントから十数パーセント程度の範囲内の値である場合に、基準値Vrの近傍値であると判断する。
【0070】
そして判断部63は、撹拌制御部61による撹拌動作が行われる撹拌期間においてトナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度を常に又は所定時間周期で監視し、撹拌期間中にトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値となったことを検知すると、撹拌制御部61による撹拌動作を終了させる。これにより、現像器23に充填されている現像剤が工場出荷時と同等の状態に復帰すれば、撹拌期間が経過していない場合であっても復帰したタイミングで撹拌動作を早期に終了させることができる。そのため、画像形成装置1において、現像器23を使用する印刷ジョブの実行を早期に開始することができる。
【0071】
一方、撹拌期間が終了した時点において、トナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値となっていない場合、判断部63は、異常通知を行う。例えば、判断部63は、操作パネル53の表示部53aに対してトナー濃度異常を示す画面を表示することにより、ユーザー又はメンテナンス作業者に異常通知を行う。尚、異常通知は、必ずしも表示部53aに画面表示を行うものに限られず、図示を省略するスピーカーから警告音などを発生させるものであっても良い。
【0072】
また、判断部63は、撹拌期間が終了した時点において、トナー濃度センサー46から出力されるトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値となっていない場合、ジョブ制御部56による印刷ジョブの実行を禁止する。これにより、噴煙の発生や濃度異常といった問題が生じることを回避することができる。
【0073】
図7は、現像器23の初期動作として行われる撹拌動作の経過時間とトナー濃度センサー46の出力値との関係を示す図である。図7において斜線で示す領域が、基準値Vrに対して所定範囲の値となる領域である。現像器23に充填されている現像剤の嵩密度が工場出荷時よりも高くなっている場合、トナー濃度センサー46の出力値は、基準値Vrよりも低い値を示し、基準値Vrの所定範囲内にはない。このとき、トナー濃度センサー46は、例えば出力値Vxを出力する。
【0074】
撹拌制御部61は、例えばタイミングT0からタイミングT4までの撹拌期間において現像器23に撹拌動作を行わせる。このとき、撹拌制御部61は、まずタイミングT0からタイミングT1までの第1期間において現像器23に第1動作による撹拌動作を行わせる。例えば、現像器23に充填されている現像剤の嵩密度の変化度合が小さく、第1期間においてトナー濃度センサー46の出力値が図7の曲線C1で示すように変化した場合、トナー濃度センサー46の出力値は第1期間において基準値Vrの所定範囲内の値となる。この場合、撹拌制御部61は、判断部63によってトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内であると判断されたタイミングtaで撹拌動作を終了させる。
【0075】
第1期間において、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲の値とならなかった場合、撹拌制御部61は、タイミングT1において撹拌動作を第1動作から第2動作に切り替える。撹拌動作を第1動作から第2動作に切り替えることにより、第1動作では十分にほぐれなかった現像剤が第2動作によって次第にほぐれていくことがある。撹拌制御部61は、タイミングT1からタイミングT2までの第2期間において現像器23に第2動作による撹拌動作を継続させる。そして第2期間においてトナー濃度センサー46の出力値が図7の曲線C2で示すように変化した場合、撹拌制御部61は、判断部63によってトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内であると判断されたタイミングtbで撹拌動作を終了させる。
【0076】
第2期間において、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲の値とならなかった場合、撹拌制御部61は、タイミングT2において撹拌動作を第2動作から第3動作に切り替える。撹拌動作を第2動作から第3動作に切り替えることにより、第2動作では十分にほぐれなかった現像剤が第3動作によって次第にほぐれていくことがある。撹拌制御部61は、タイミングT2からタイミングT3までの第3期間において現像器23に第3動作による撹拌動作を継続させる。そして第3期間においてトナー濃度センサー46の出力値が図7の曲線C3で示すように変化した場合、撹拌制御部61は、判断部63によってトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内であると判断されたタイミングtcで撹拌動作を終了させる。
【0077】
第3期間において、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲の値とならなかった場合、撹拌制御部61は、タイミングT3において撹拌動作を第3動作から第4動作に切り替える。撹拌動作を第3動作から第4動作に切り替えることにより、第3動作では十分にほぐれなかった現像剤が第4動作によって次第にほぐれていくことがある。撹拌制御部61は、タイミングT3からタイミングT4までの第4期間において現像器23に第3動作による撹拌動作を継続させる。そして第4期間においてトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値になると、撹拌制御部61は、そのタイミングで撹拌動作を終了させる。
【0078】
これに対し、第4期間においてトナー濃度センサー46の出力値が図7の曲線C4で示すように変化した場合、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内となることなく、撹拌期間が終了する。この場合、撹拌制御部61は、撹拌期間が終了するタイミングT4で撹拌動作を終了させる。撹拌期間が終了してもトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値となっていない場合、判断部63による異常通知が行われる。
【0079】
このように撹拌制御部61は、予め設定された撹拌期間において複数種類の撹拌動作を行うことで凝集したトナーをほぐして現像剤の嵩密度を工場出荷時と略同じ状態に戻すようにしている。そして撹拌制御部61は、撹拌期間が経過する前に、現像剤の嵩密度が工場出荷時と同程度の状態に戻れば、その時点で撹拌動作を終了させる。これにより、画像形成装置1は、従来よりも早期にユーザーが利用可能な状態となる。
【0080】
また、撹拌制御部61は、現像剤の嵩密度が工場出荷時と略同じ状態に戻っていない場合であっても、予め設定された撹拌期間が経過したときに撹拌動作を終了させる。そのため、画像形成装置1が長時間に亘って利用できなくなるようなことはない。また、この場合には、判断部63によって異常通知がなされ、ジョブ制御部56による印刷ジョブの実行が禁止された状態となる。そのため、メンテナンス作業者などによる速やかな処置を行うことが可能であり、しかも画像形成装置1において噴煙が発生したり、或いは、画像形成されたシート材9において濃度異常が発生したりするといった問題が生じることを回避することができる。
【0081】
次に、上述したコントローラ7による処理手順について説明する。図8及び図9は、コントローラ7によって行われる処理手順の一例を示すフローチャートである。図8及び図9に示す処理は、コントローラ7のトナー調整部55によって行われる。コントローラ7は、この処理を開始すると、まず現像器23が装置本体1aに装着されたか否かを判断する(ステップS10)。現像器23の装着を検知していない場合(ステップS10でNO)、コントローラ7による処理は終了する。また、現像器23が装着されたことを検知した場合(ステップS10でYES)、コントローラ7は、その現像器23が新品であるか否かを判断する(ステップS11)。例えば、現像器23には装置本体1aに装着された状態で通電が行われることにより切断されるヒューズなどの電気部品が実装されており、コントローラ7は、現像器23が装着されたときにその電気部品の状態遷移を検知することにより、新品であるか否かを判断する。装置本体1aに装着された現像器23が新品でない場合(ステップS11でNO)、コントローラ7による処理は終了する。
【0082】
装置本体1aに装着された現像器23が新品である場合(ステップS11)、コントローラ7は、現像器23の初期動作として現像剤の撹拌動作を行うことを決定する(ステップS12)。そしてコントローラ7は、現像器23の工場出荷時に予め設定された基準値Vrを取得する(ステップS13)。例えば、コントローラ7は、装置本体1aに装着された現像器23の記憶部47に予め記憶されている基準値Vrを取得する。コントローラ7は、現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46が所定のトナー濃度D1を測定したときの基準値Vrを取得すると、現像剤撹拌処理を開始する(ステップS14)。
【0083】
図9は、現像剤撹拌処理(ステップS14)の詳細な処理手順の一例を示すフローチャートである。コントローラ7は、現像器23の初期動作として現像剤撹拌処理を開始すると、まず第1動作で現像剤の撹拌を開始する(ステップS20)。すなわち、コントローラ7は、撹拌スクリュー43を低速で正回転方向へ回転させると共に、振動部材48をオンにして現像剤に振動を付与することで現像剤を撹拌する。第1動作を開始すると、コントローラ7は、現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力値を取得し(ステップS21)、その出力値が基準値Vrの近傍値であるか否かを判断する(ステップS22)。つまり、コントローラ7は、トナー濃度センサー46によって検出されるトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値となったか否かを判断するのである。その結果、トナー濃度センサー46によって検出されるトナー濃度が基準値Vrに対して所定範囲内の値である場合(ステップS22でYES)、コントローラ7による処理はステップS36へ進む。
【0084】
ステップS22においてトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値でないと判断した場合(ステップS22でNO)、コントローラ7は、撹拌動作を開始してから所定時間(図7に示すタイミングT0からタイミングT1までの第1期間)が経過したか否かを判断する(ステップS23)。所定時間が経過していない場合(ステップS23でNO)、コントローラ7による処理は、ステップS21に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、所定時間が経過している場合(ステップS23でYES)、コントローラ7による処理はステップS24に進む。
【0085】
ステップS24に進むと、コントローラ7は、撹拌動作を第1動作から第2動作に変更し、第2動作による現像剤の撹拌を開始する(ステップS24)。すなわち、コントローラ7は、撹拌スクリュー43を低速で逆回転方向へ回転させると共に、振動部材48をオンにして現像剤に振動を付与することで現像剤を撹拌する。そしてコントローラ7は、現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力値を取得し(ステップS25)、その出力値が基準値Vrの近傍値であるか否かを判断する(ステップS26)。その結果、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値である場合(ステップS26でYES)、コントローラ7による処理はステップS36へ進む。
【0086】
ステップS26においてトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値でないと判断した場合(ステップS26でNO)、コントローラ7は、撹拌動作を開始してから所定時間(図7に示すタイミングT1からタイミングT2までの第2期間)が経過したか否かを判断する(ステップS27)。所定時間が経過していない場合(ステップS27でNO)、コントローラ7による処理は、ステップS25に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、所定時間が経過している場合(ステップS27でYES)、コントローラ7による処理はステップS28に進む。
【0087】
ステップS28に進むと、コントローラ7は、撹拌動作を第2動作から第3動作に変更し、第3動作による現像剤の撹拌を開始する(ステップS28)。すなわち、コントローラ7は、撹拌スクリュー43を高速で正回転方向へ回転させると共に、振動部材48をオンにして現像剤に振動を付与することで現像剤を撹拌する。そしてコントローラ7は、現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力値を取得し(ステップS29)、その出力値が基準値Vrの近傍値であるか否かを判断する(ステップS30)。その結果、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値である場合(ステップS30でYES)、コントローラ7による処理はステップS36へ進む。
【0088】
ステップS30においてトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値でないと判断した場合(ステップS30でNO)、コントローラ7は、撹拌動作を開始してから所定時間(図7に示すタイミングT2からタイミングT3までの第3期間)が経過したか否かを判断する(ステップS31)。所定時間が経過していない場合(ステップS31でNO)、コントローラ7による処理は、ステップS29に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、所定時間が経過している場合(ステップS31でYES)、コントローラ7による処理はステップS32に進む。
【0089】
ステップS32に進むと、コントローラ7は、撹拌動作を第3動作から第4動作に変更し、第4動作による現像剤の撹拌を開始する(ステップS32)。すなわち、コントローラ7は、撹拌スクリュー43を高速で逆回転方向へ回転させると共に、振動部材48をオンにして現像剤に振動を付与することで現像剤を撹拌する。そしてコントローラ7は、現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46の出力値を取得し(ステップS33)、その出力値が基準値Vrの近傍値であるか否かを判断する(ステップS34)。その結果、トナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値である場合(ステップS34でYES)、コントローラ7による処理はステップS36へ進む。
【0090】
ステップS36に進むと、コントローラ7は、現像剤の嵩密度が工場出荷時と同程度の状態にまで復帰したと判断し、現像剤の撹拌動作が正常終了したと判定する(ステップS36)。つまり、コントローラ7は、予め設定された撹拌期間内において、現像剤が十分にほぐれた状態となった時点で、撹拌動作が正常終了したと判定する。
【0091】
一方、ステップS34においてトナー濃度センサー46の出力値が基準値Vrに対して所定範囲内の値でないと判断した場合(ステップS34でNO)、コントローラ7は、撹拌動作を開始してから所定時間(図7に示すタイミングT3からタイミングT4までの第4期間)が経過したか否かを判断する(ステップS35)。所定時間が経過していない場合(ステップS35でNO)、コントローラ7による処理は、ステップS33に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、所定時間が経過している場合(ステップS35でYES)、コントローラ7は、予め設定された撹拌期間内に現像剤の嵩密度を工場出荷時点と同程度まで復帰させることができなかったと判断し、現像剤の撹拌動作が異常終了したと判定する(ステップS37)。以上で、現像剤撹拌処理(ステップS14)が終了する。
【0092】
図8のフローチャートに戻り、現像剤撹拌処理(ステップS14)が終了すると、コントローラ7は、撹拌スクリュー43及び振動部材48を駆動することによる撹拌動作を終了させる(ステップS15)。そしてコントローラ7は、現像剤撹拌処理(ステップS14)において正常終了と判定されたか否かを判断する(ステップS16)。現像剤撹拌処理(ステップS14)において撹拌動作が正常終了したと判定された場合(ステップS16でYES)、コントローラ7によるトナー調整処理はそのまま終了する。
【0093】
一方、現像剤撹拌処理(ステップS14)において撹拌動作が異常終了したと判定された場合(ステップS16でNO)、コントローラ7は、トナー異常通知を行う(ステップS17)。これにより、コントローラ7は、トナー濃度が異常値を示していることをユーザー又はメンテナンス作業者に通知することができる。また、コントローラ7は、ジョブ制御部56による印刷ジョブの実行を禁止する(ステップS18)。これにより、噴煙の発生や濃度異常といった問題が生じることを回避することができる。
【0094】
このように本実施形態の画像形成装置1は、トナーを含む現像材が充填された現像器23を装置本体1aに対して着脱可能であり、装置本体1aに装着された現像器23の初期動作として、現像器23に充填されている現像剤の撹拌動作を行わせる。そして画像形成装置1は、現像剤の撹拌動作中において現像器23から出力されるトナー濃度を基準値Vrと比較することにより、現像剤の撹拌状態を判断する。画像形成装置1は、基準値Vrとして、工場出荷時に予め設定された値を参照するため、現像剤の撹拌動作中に、現像器23に充填されている現像剤が工場出荷時と同程度の状態までほぐれたか否かを適切に判定することが可能である。そのため、画像形成装置1は、現像剤が十分にほぐれたタイミングで初期動作としての撹拌動作を終了させることが可能であり、顧客先でのセットアップ時間が長くなってしまうことを避けることができる。
【0095】
また、画像形成装置1は、現像剤が十分にほぐれていないときには、印刷ジョブを実行しないようにすることが可能であり、噴煙発生や濃度異常といった問題を解決することができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、工場出荷時に予め設定されるトナー濃度の基準値Vrが現像器23に搭載されている記憶部47に保存されている場合を例示した。本実施形態では、工場出荷時に予め設定されるトナー濃度の基準値Vrをサーバーに保存しておく例について説明する。尚、本実施形態における画像形成装置1の構成は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0097】
図10は、画像形成装置1を含む画像形成システム100の構成例を示す概念図である。この画像形成システム100は、現像器23を製造する工場101に設けられる基準値登録装置110と、インターネットなどのクラウド102上に設置されるサーバー120と、顧客先のオフィス103などに設けられる画像形成装置1とを備えて構成される。
【0098】
工場101では、現像器23が出荷される前に、基準値登録装置110と現像器23とが接続され、基準値登録装置110が現像器23に搭載されているトナー濃度センサー46から出力される出力値を取得可能な状態となる。その状態において、現像器23の筐体40内に充填されている現像剤が十分に撹拌されたときに、基準値登録装置110は、トナー濃度センサー46にトナー濃度の測定を行わせ、トナー濃度センサー46から出力される出力値を取得する。そして基準値登録装置110は、その出力値を基準値Vrとしてサーバー120に送信する。このとき、基準値登録装置110は、現像器23を識別するためのシリアル番号などの識別情報を基準値Vrと共にサーバー120へ送信する。
【0099】
サーバー120は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などで構成される記憶装置121を備えている。サーバー120は、工場101の基準値登録装置110から送信される基準値Vrと、現像器23の識別情報とを受信するとを受信すると、それらを互いに関連付けて記憶装置121に保存しておく。つまり、本実施形態の画像形成システム100は、現像器23の工場出荷時に予め設定される基準値Vrをサーバー120に保存しておくのである。
【0100】
一方、工場101からは、サーバー120に基準値Vrが記憶された現像器23が出荷される。この現像器23は、様々な輸送過程や保管過程を経て、顧客先のオフィス103などに搬送され、画像形成装置1の装置本体1aに装着される。画像形成装置1は、装置本体1aに装着された現像器23を最初に動作させるとき、現像器23の初期動作を行う。すなわち、画像形成装置1は、現像器23に充填されている現像剤を撹拌するための撹拌動作を行う。このとき、画像形成装置1において基準値取得部62が機能し、現像器23の工場出荷時に予め設定された基準値Vrが取得される。
【0101】
本実施形態の基準値取得部62は、通信インタフェース54を介してクラウド102上のサーバー120にアクセスし、サーバー120から現像器23に対応する基準値Vrを取得する。例えば、基準値取得部62は、操作パネル53の表示部53aに現像器23の識別情報の入力を促す画面を表示し、ユーザー又はメンテナンス作業者による識別情報の入力操作を受け付ける。そして基準値取得部62は、ユーザー又はメンテナンス作業者によって入力された識別情報をサーバー120へ送信することにより、装置本体1aに装着された現像器23に対応する基準値Vrをサーバー120から取得する。尚、現像器23の記憶部47に現像器23の識別情報が保存されている場合、基準値取得部62は、記憶部47に保存されている識別情報を読み出してサーバー120へ送信するようにしても良い。
【0102】
画像形成装置1は、基準値取得部62によってサーバー120から基準値Vrが取得されると、その後は第1実施形態で説明した動作と同様の動作を行うようにすれば良い。
【0103】
このように本実施形態の画像形成装置1は、現像器23の工場出荷時に予め設定されるトナー濃度の基準値Vrをサーバー120に保存しており、サーバー120から取得するようにしている。このような構成によれば、現像器23は、基準値Vrを記憶しておくための記憶部47を具備する必要がない。そのため、現像器23を安価に提供することができるという利点がある。
【0104】
尚、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。そのため、本実施形態の画像形成装置1は、第1実施形態で説明した作用効果を奏する点に何ら変わりはない。
【0105】
(変形例)
以上、本発明に関する好ましい幾つかの実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0106】
例えば、上記実施形態では、現像器23の工場出荷時に十分にほぐれた状態の現像剤を実際にトナー濃度センサー46で測定することにより、トナー濃度の基準値Vrを設定する例を説明した。しかし、工場出荷時には、必ずしも実際にトナー濃度センサー46でトナー濃度を測定しなくても構わない。例えば、現像器23の工場出荷時に、トナー濃度センサー46の個体差に応じた出力特性を測定すれば、その出力特性に基づいて基準値Vrを演算により設定することが可能である。
【0107】
また、上記実施形態では、画像形成装置1がカラー印刷を行うことが可能なカラー機である場合を例示した。しかし、画像形成装置1は、カラー機に限られるものではなく、モノクロ専用機であっても構わない。
【0108】
また、上記実施形態では、画像形成装置1のコントローラ7に予めプログラム52がインストールされている場合を例示した。しかし、プログラム52は、例えば通信インタフェース54などを介してコントローラ7にインストールされるものであっても構わない。この場合、プログラム52は、インターネットなどを介してダウンロード可能な態様で提供される。また、これに限らず、プログラム52は、CD-ROMやUSBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された態様で提供されるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0109】
1 画像形成装置
23 現像器
42 供給スクリュー(撹拌手段)
43 撹拌スクリュー(撹拌手段)
46 トナー濃度センサー
47 記憶部(記憶手段)
48 振動部材(撹拌手段)
52 プログラム(現像剤撹拌プログラム)
61 撹拌制御部(撹拌制御手段)
62 基準値取得部(取得手段)
63 判断部(判断手段)
Vr 基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10