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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】電子部品モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
H01L23/40 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019170162
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021048277
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100187034
【弁理士】
【氏名又は名称】夏目 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100198971
【弁理士】
【氏名又は名称】木地本 浩和
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】大西 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 七絵
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悟
(72)【発明者】
【氏名】松井 優人
【審査官】高橋 優斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213375(JP,A)
【文献】特開2014-036033(JP,A)
【文献】特開2017-130618(JP,A)
【文献】国際公開第2014/184846(WO,A1)
【文献】特開2015-225946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/12-23/15
H01L23/29
H01L23/34-23/473
H05K1/00-1/02
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する基板と、
前記第1面に搭載され、発熱する第1電子部品と、
前記基板の厚さ方向からみて前記第1電子部品の一部または全部に重なり、前記第2面に搭載され、発熱する第2電子部品と、
前記基板における第1部分に接続された放熱部材と、
前記基板における前記第1部分よりも前記第1電子部品および前記第2電子部品の少なくとも一方に近い第2部分および前記放熱部材に接続された熱伝導部材と、を有
前記基板には、前記熱伝導部材が挿入される貫通孔が設けられ、
前記放熱部材には、前記熱伝導部材の一部が挿入される孔または凹部が設けられ、
前記孔または前記凹部には、雌ネジが設けられており、
前記熱伝導部材には、前記雌ネジと嵌め合う雄ネジが設けられる、
電子部品モジュール。
【請求項2】
前記基板は、絶縁性の基材を有しており、
前記熱伝導部材は、前記基材よりも熱伝導率が高い、
請求項に記載の電子部品モジュール。
【請求項3】
前記基材は、複数の絶縁層の積層により構成されており、
前記基板は、前記複数の絶縁層の層間に配置され、前記基材を構成する材料よりも熱伝導率の高い材料で構成される熱伝導層をさらに有し、
前記熱伝導部材は、前記熱伝導層に接続される、
請求項に記載の電子部品モジュール。
【請求項4】
前記第1部分には、前記熱伝導層に接続されるサーマルビアが設けられる、
請求項に記載の電子部品モジュール。
【請求項5】
前記熱伝導層は、導電性を有しており、
前記熱伝導層には、基準電位が供給される、
請求項またはに記載の電子部品モジュール。
【請求項6】
前記放熱部材は、
前記基板に対して前記第1電子部品側に配置される第1放熱部材と、
前記基板に対して前記第2電子部品側に配置される第2放熱部材と、を含み、
前記熱伝導部材は、前記第1放熱部材および前記第2放熱部材の双方に接続される、
請求項1からのいずれか1項に記載の電子部品モジュール。
【請求項7】
前記放熱部材は、
前記基板に対して前記第1電子部品側に配置される第1放熱部材と、
前記基板に対して前記第2電子部品側に配置される第2放熱部材と、を含み、
前記熱伝導部材は、
前記第2部分および前記第1放熱部材に接続された第1熱伝導部材と、
前記第2部分および前記第2放熱部材に接続された第2熱伝導部材と、を含む、
請求項1からのいずれか1項に記載の電子部品モジュール。
【請求項8】
前記熱伝導部材が貫通する前記基板の貫通孔の壁面には、金属膜が配置される、
請求項1からのいずれか1項に記載の電子部品モジュール。
【請求項9】
前記熱伝導部材と前記第1電子部品との間の距離は、前記熱伝導部材と前記第1電子部品との絶縁に必要な最小距離である絶縁距離に対して、1.0倍以上2.0倍以下の範囲内であり、
前記熱伝導部材と前記第2電子部品との間の距離は、前記熱伝導部材と前記第2電子部品との絶縁に必要な最小距離である絶縁距離に対して、1.0倍以上2.0倍以下の範囲内である、
請求項1からのいずれか1項に記載の電子部品モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を基板上に搭載した電子部品モジュールでは、例えば、特許文献1に開示されるように、電子部品からの熱を放熱するためのヒートシンクを基板に接続する場合がある。特許文献1では、基板にサーマルビアが設けられており、当該サーマルビアにヒートシンクが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-208123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
両面実装の場合、基板とヒートシンクとの間にも電子部品が配置される。このため、特許文献1では、両面実装の場合、ヒートシンクとの接続のためのサーマルビアを電子部品に近づけることができず、この結果、電子部品からの熱を十分に放熱できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電子部品モジュールは、第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する基板と、前記第1面に搭載され、発熱する第1電子部品と、前記基板の厚さ方向からみて前記第1電子部品の一部または全部に重なり、前記第2面に搭載され、発熱する第2電子部品と、前記基板における第1部分に接続された放熱部材と、前記基板における前記第1部分よりも前記第1電子部品および前記第2電子部品の少なくとも一方に近い第2部分および前記放熱部材に接続された熱伝導部材と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る電子部品モジュールの概略構成を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電子部品モジュールの平面図である。
図3図2中のA-A線断面図である。
図4】第2実施形態に係る電子部品モジュールの断面図である。
図5】第3実施形態に係る電子部品モジュールの断面図である。
図6】第4実施形態に係る電子部品モジュールの断面図である。
図7】変形例に係る電子部品モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る電子部品モジュール1の概略構成を示す斜視図である。図1では、電子部品モジュール1に含まれる基板2の外形が二点鎖線で図示される。なお、以下では、説明の便宜上、互いに直交する「X軸」、「Y軸」および「Z軸」を適宜に用いて説明する。また、X軸に沿う一方向を「X1方向」といい、X1方向とは反対の方向を「X2方向」という。同様に、Y軸に沿う一方向を「Y1方向」といい、Y1方向とは反対の方向を「Y2方向」という。Z軸に沿う一方向を「Z1方向」といい、Z1方向とは反対の方向を「Z2方向」という。ここで、Z軸は、後述する基板2の厚さ方向に沿う軸である。また、Z1方向またはZ2方向からみることを「平面視」という。
【0008】
図1に示すように、電子部品モジュール1は、基板2と複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4と放熱部材5と複数の熱伝導部材6と複数のネジ7とを有する。
【0009】
まず、電子部品モジュール1の概略を説明すると、基板2の一方の面には、複数の第1電子部品3が搭載される。一方、基板2の他方の面には、複数の第2電子部品4が搭載される。基板2は、放熱部材5に対して複数のネジ7によるネジ留めにより固定される。放熱部材5は、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱する。
【0010】
その上、複数の熱伝導部材6が複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5に伝導する。ここで、各熱伝導部材6は、基板2における放熱部材5と接続する部分よりも複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とに近い部分に接続される。このため、複数の熱伝導部材6を用いない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とから放熱部材5への熱抵抗を大幅に小さくすることができる。このため、複数の熱伝導部材6を用いない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5により効率的に放熱することができる。以下、電子部品モジュール1の各部を順次詳細に説明する。
【0011】
図2は、第1実施形態に係る電子部品モジュール1の平面図である。図3は、図2中のA-A線断面図である。図2および図3に示すように、基板2におけるZ1方向の面である第1面F1には、複数の第1電子部品3が搭載される。一方、基板2におけるZ2方向の面である第2面F2には、複数の第2電子部品が搭載される。
【0012】
第1電子部品3および第2電子部品4のそれぞれは、通電に伴い発熱する能動部品または受動部品である。当該能動部品としては、例えば、トランジスタ、半導体集積回路、ダイオードおよびオペアンプ等が挙げられる。当該受動部品としては、例えば、抵抗、コイルおよびコンデンサ等が挙げられる。基板2に搭載される複数の第1電子部品3の種類は、特に限定されず、互いに同じであっても異なってもよい。同様に、基板2に搭載される複数の第2電子部品4の種類は、特に限定されず、互いに同じであっても異なってもよい。また、第1電子部品3の種類と第2電子部品4の種類とは、互いに同じであっても異なってもよい。図2では、第1電子部品3および第2電子部品4のぞれぞれの数が3個である。なお、第1電子部品3および第2電子部品4のぞれぞれの数は、2個以下または4個以上でもよい。また、基板2に対する第1電子部品3または第2電子部品4の配置は、図2に示す例に限定されず、任意である。また、第1電子部品3および第2電子部品4には、例えば、リレー、スイッチ、コネクタ、基板、端子または線材等が含まれてもよい。
【0013】
基板2は、基材21と第1配線22aと第2配線22bと熱伝導層23aおよび23bと保護膜24aおよび24bとを有する。
【0014】
基材21は、絶縁層21a、21bおよび21cを有する。これらは、Z2方向に向けて、この順に積層される。絶縁層21a、21bおよび21cのそれぞれは、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化または固化した層である。なお、基材21が有する絶縁層の数は、3層に限定されず、2層以下または4層以上でもよい。
【0015】
当該繊維基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、有機繊維、金属繊維、カーボン繊維または鉱物繊維等からなる織布、不織布およびマット類等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、当該繊維基材としては、ガラス繊維基材が好適に用いられる。
【0016】
当該樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂およびポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、当該樹脂材料としては、エポキシ樹脂が好適に用いられる。なお、当該樹脂材料には、例えば、アルミナ等の金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、窒化ホウ素等の窒化物に代表される電気絶縁性かつ高熱伝導性のフィラーが含まれてもよい。
【0017】
第1配線22aは、前述の絶縁層21aにおける絶縁層21bとは反対側の面上に配置され、第1電子部品3に接続される導体パターンである。一方、第2配線22bは、前述の絶縁層21cにおける絶縁層21bとは反対側の面上に配置され、第2電子部品4に接続される導体パターンである。第1配線22aおよび第2配線22bのそれぞれは、例えば、金属材料で構成される。当該金属材料としては、例えば、銅、鉄、アルミニウム、インジウム、スズ、鉛、銀、亜鉛、ビスマスおよびアンチモン等が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、当該金属材料としては、熱伝導性および導電性に優れることから、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金が好適に用いられる。なお、第1配線22aは、第1電子部品3に接続されないダミー配線を含んでもよい。当該ダミー配線は、第1電子部品3からの放熱に寄与する。同様に、第2配線22bは、第2電子部品4に接続されないダミー配線を含んでもよい。
【0018】
熱伝導層23aは、前述の絶縁層21aと絶縁層21bとの間に配置され、基板2の面方向に沿って熱を伝導する層である。同様に、熱伝導層23bは、前述の絶縁層21bと絶縁層21cとの間に配置され、基板2の面方向に沿って熱を伝導する層である。これらの層は、それぞれ、図示しないが、適宜にパターニングされた平面視形状をなしており、基板2における面方向での熱伝導性を高める。また、熱伝導層23aおよび23bが基板2の厚さ方向に重なることにより、基板2の厚さ方向での熱伝導性も高められる。本実施形態の熱伝導層23aおよび23bは、伝熱性だけでなく、導電性を有する。また、熱伝導層23aおよび23bには、設置電位等の基準電位が供給される。このため、熱伝導層23aおよび23bは、例えば、アースとして用いられる。熱伝導層23aおよび23bのそれぞれは、例えば、前述の第1配線22aおよび第2配線22bと同様、金属材料で構成される。当該金属材料の具体例としては、熱伝導性に優れることから、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金が好適に用いられる。なお、熱伝導層23aおよび23bは、必要に応じて設ければよく、熱伝導層23aおよび23bの一方または両方を省略してもよい。
【0019】
保護膜24aは、第1配線22aの一部を覆うように、絶縁層21aにおける絶縁層21bとは反対側の面上に配置されるソルダーレジスト等で構成される絶縁膜である。ここで、保護膜24aは、前述の第1配線22aと第1電子部品3との接続を許容しつつ広範囲にわたって第1配線22aを覆う。同様に、保護膜24bは、第2配線22bの一部を覆うように、絶縁層21cにおける絶縁層21bとは反対側の面上に配置されるソルダーレジスト等で構成される絶縁膜である。ここで、保護膜24bは、前述の第2配線22bと第2電子部品4との接続を許容しつつ広範囲にわたって第2配線22bを覆う。
【0020】
また、基材21には、基材21の厚さ方向に貫通するサーマルビアとして、複数の貫通孔25と複数の貫通孔26とが設けられる。図2に示すように、複数の貫通孔25のそれぞれは、基板2における放熱部材5と接触する部分である1対の第1部分P1に位置する。これに対し、複数の貫通孔26のそれぞれは、基板2における第1部分P1よりも第1電子部品3および第2電子部品4に近い部分である第2部分P2に位置する。ここで、第2部分P2と第1電子部品3および第2電子部品4との間の距離L2は、第1部分P1と第1電子部品3および第2電子部品4との間の距離L1よりも短い。図2では、貫通孔25および26の数がそれぞれ8個である。なお、貫通孔25および26の数または配置等は、図2に示す例に限定されず、任意である。
【0021】
各貫通孔25の壁面には、金属膜27が設けられる。同様に、各貫通孔26の壁面には、金属膜28が設けられる。金属膜27および28のそれぞれは、前述の熱伝導層23aおよび23bに接続される。金属膜27および28の構成材料としては、それぞれ、例えば、前述の熱伝導層23aおよび23bと同様、例えば、銅、鉄、アルミニウム、インジウム、スズ、鉛、銀、亜鉛、ビスマスおよびアンチモン等が挙げられ、これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、当該金属材料としては、熱伝導性に優れることから、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金が好適に用いられる。なお、前述の第1配線22aおよび第2配線22bがダミー配線を有する場合、金属膜27および28のそれぞれは、当該ダミー配線に接続されてもよい。
【0022】
前述の複数の貫通孔25のうち、一部(図2に示す例では4個)の貫通孔25のそれぞれには、伝熱体29が挿入される。伝熱体29は、基板2の厚さ方向に熱を伝導する伝熱ポストである。伝熱体29は、図3に示す経路H1で、前述の複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5に伝導する。ここで、伝熱体29は、前述の金属膜27に接触しており、熱伝導層23aおよび23bからの熱を受ける。伝熱体29の横断面形状は、貫通孔25の横断面形状と同一でも異なってもよい。伝熱体29と貫通孔25の壁面との間に隙間が形成される場合、当該隙間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材を充填してもよい。伝熱体29の構成材料としては、熱伝導性に優れることから、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金が好適に用いられる。
【0023】
また、残り(図2に示す例では4個)の貫通孔25のそれぞれには、ネジ7が挿入される。ネジ7は、放熱部材5に対して基板2をねじ留めにより固定するための雄ネジである。また、ネジ7は、前述の伝熱体29と同様、基板2の厚さ方向に熱を伝導する。ネジ7と貫通孔25の壁面との間に隙間が形成される場合、当該隙間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材を充填してもよい。ネジ7の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料を用いることができるが、熱伝導性に優れることから、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金を用いることが好ましい。
【0024】
前述の複数の貫通孔26のそれぞれには、熱伝導部材6が挿入される。複数の熱伝導部材6のそれぞれは、基板2の厚さ方向に熱を伝導する棒状の部材である。熱伝導部材6は、図3に示す経路H2で、前述の複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5に伝導する。ここで、経路H2の熱抵抗は、前述の経路H1の熱抵抗よりも小さい。このため、複数の熱伝導部材6を用いない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とから放熱部材5への熱抵抗を大幅に小さくすることができる。本実施形態の熱伝導部材6は、前述の金属膜28に接触しており、熱伝導層23aおよび23bからの熱を受ける。また、熱伝導部材6は、基板2の第1面F1から第1電子部品3の厚さTよりも大きい長さLで突出する。このため、放熱部材5と第1電子部品3とを接触させずに、熱伝導部材6と放熱部材5とを接触させることができる。図2では、熱伝導部材6の横断面形状が円形である。なお、熱伝導部材6の横断面形状は、図2に示す例に限定されず、例えば、多角形または楕円形等でもよい。また、熱伝導部材6の横断面形状は、貫通孔26の横断面形状と同一でも異なってもよい。熱伝導部材6と貫通孔26の壁面との間に隙間が形成される場合、当該隙間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材を充填してもよい。
【0025】
熱伝導部材6の構成材料には、前述の基板2の基材21を構成する材料の熱伝導率よりも高い熱伝導率の材料が用いられる。特に、熱伝導部材6の構成材料としては、熱伝導性に優れることから、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金を用いることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、熱伝導部材6の一方の端面が放熱部材5に接触する。この接触により、熱伝導部材6と放熱部材5とが熱的に接続される。ここで、熱伝導部材6と放熱部材5との間の熱伝導効率を高める観点から、熱伝導部材6と放熱部材5との接触面積をできるだけ大きくすることが好ましい。また、同様の観点から、熱伝導部材6と放熱部材5との間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材が介在してもよい。
【0027】
放熱部材5は、ヒートシンクである。図3に示すように、放熱部材5は、本体51と複数のフィン52と1対のスペーサー53とを有する。これらは、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらのいずれかの合金で構成される。本体51は、平板状をなす。複数のフィン52は、本体51の一方の面に設けられる。複数のフィン52の形状または数等は、図3に示す例に限定されず、任意である。1対のスペーサー53は、第1電子部品3が放熱部材5に接触するのを防止するように、本体51と基板2との間の距離を規定する。ここで、1対のスペーサー53が前述の基板2の第1部分P1にわたり接触する。なお、1対のスペーサー53間の空間Sは、放熱部材5に設けられる凹部と言い換えることもできる。また、1対のスペーサー53に代えて、例えば、枠状のスペーサーを用いることもできる。空間Sには、シリコーン樹脂等の導電性に優れる充填材が充填されてもよい。
【0028】
以上の電子部品モジュール1は、前述のように、基板2と複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4と放熱部材5と複数の熱伝導部材6とを有する。基板2は、第1面F1と第1面F1とは反対側の第2面F2とを有する。複数の第1電子部品3のそれぞれは、第1面F1に搭載され、発熱する。複数の第2電子部品4のそれぞれは、基板2の厚さ方向からみて第1電子部品3の一部または全部に重なり、第2面F2に搭載され、発熱する。放熱部材5は、基板2における第1部分P1に接続され、複数の第1電子部品3および複数の第2電子部品4からの熱を放熱する。複数の熱伝導部材6のそれぞれは、複数の第1電子部品3および複数の第2電子部品4からの熱を放熱部材5に伝導する。特に、複数の熱伝導部材6のそれぞれは、基板2における第1部分P1よりも第1電子部品3および第2電子部品4の少なくとも一方に近い第2部分P2および放熱部材5に接続される。このため、複数の熱伝導部材6を用いない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とから放熱部材5への熱抵抗を大幅に小さくすることができる。この結果、複数の熱伝導部材6を用いない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5により効率的に放熱することができる。
【0029】
ここで、前述のように、基板2は、絶縁性の基材21を有する。熱伝導部材6は、基材21よりも熱伝導率が高い。このため、熱伝導部材6が基材21よりも熱伝導率が低い場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を熱伝導部材6で効率的に伝導することができる。
【0030】
また、基材21は、複数の絶縁層21a、21bおよび21cの積層により構成される。基板2は、複数の絶縁層21a、21bおよび21bの層間に配置され、基材21を構成する材料よりも熱伝導率の高い材料で構成される熱伝導層23aおよび23bをさらに有する。熱伝導部材6は、熱伝導層23aおよび23bに接続される。このため、熱伝導部材6を熱伝導層23aおよび23bに接続しない場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を熱伝導部材6で効率的に伝導することができる。
【0031】
さらに、第1部分P1には、熱伝導層23aおよび23bに接続されるサーマルビアである複数の貫通孔25が設けられる。このため、基板2における放熱部材5と接触する部分において、基板2から放熱部材5に直接的に熱を伝導させることができる。
【0032】
また、熱伝導層23aおよび23bは、それぞれ、導電性を有する。熱伝導層23aおよび23bには、基準電位が供給される。このため、熱伝導層23aおよび23bをアースまたは電磁シールド等として用いることができる。
【0033】
さらに、熱伝導部材6が貫通する基板2の貫通孔26の壁面には、金属膜28が配置される。このため、金属膜28を省略した場合に比べて、熱伝導層23aおよび23bと熱伝導部材6との熱的な接続を安定させることができる。
【0034】
また、第2部分P2と第1電子部品3および第2電子部品4との間の距離L2は、熱伝導部材6と第1電子部品3との絶縁に必要な最小距離である絶縁距離に対して、1.0倍以上2.0倍以下の範囲内であることが好ましい。距離L2がこの範囲内であることにより、熱伝導部材6と第1電子部品3との絶縁を維持しつつ、距離L2を短くすることができる。なお、距離L2は、「熱伝導部材6と第1電子部品3との間の距離」および「熱伝導部材6と第2電子部品4との間の距離」に相当する。
【0035】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0036】
図4は、第2実施形態に係る電子部品モジュール1Aの断面図である。図4に示す電子部品モジュール1Aは、第1実施形態の放熱部材5に代えて、放熱部材5Aを有する以外は、前述の第1実施形態の電子部品モジュール1と同様である。
【0037】
放熱部材5Aは、本体51Aと複数のフィン52と1対のスペーサー53とを有する。本体51Aは、平板状をなしており、本体51Aの一方の面には、複数のフィン52が設けられ、本体51Aの他方の面には、1対のスペーサー53が設けられる。本実施形態の本体51Aの当該一方の面には、複数の熱伝導部材6に対応して複数の凹部54が設けられる。複数の凹部54のそれぞれには、対応する熱伝導部材6の一部が挿入される。
【0038】
凹部54は、熱伝導部材6の当該一部に沿う形状をなす。凹部54は、熱伝導部材6の当該一部と嵌め合う形状でもよいし、熱伝導部材6の当該一部との間に隙間を有する形状でもよい。なお、当該隙間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材が充填されてもよい。
【0039】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様の効果が得られる。また、放熱部材5Aには、熱伝導部材6の一部が挿入される凹部54が設けられる。このため、熱伝導部材6の横断面積を大きくしなくても、凹部54を設けない場合に比べて、放熱部材5Aと熱伝導部材6との接触面積を大きくすることができる。この結果、凹部54を設けない場合に比べて、放熱部材5Aと熱伝導部材6との間の熱抵抗を小さくすることができる。なお、放熱部材5Aには、凹部54に代えて、熱伝導部材6の一部が挿入される孔が設けられてもよい。
【0040】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0041】
図5は、第3実施形態に係る電子部品モジュール1Bの断面図である。図5に示す電子部品モジュール1Bは、第1実施形態の放熱部材5および熱伝導部材6に代えて、放熱部材5Bおよび熱伝導部材6Bを有する以外は、前述の第1実施形態の電子部品モジュール1と同様である。
【0042】
放熱部材5Bは、第1放熱部材5aと第2放熱部材5bとを含む。第1放熱部材5aは、基板2に対して第1電子部品3側に配置される。本実施形態での第1放熱部材5aは、前述の第2実施形態の放熱部材5Aと同様に構成される。一方、第2放熱部材5bは、基板2に対して第2電子部品4側に配置される。本実施形態での第2放熱部材5bは、前述の第1実施形態の放熱部材5と同様に構成される。熱伝導部材6Bは、基板2を貫通しており、Z1方向およびZ2方向の双方に突出する。そして、熱伝導部材6Bは、第1放熱部材5aおよび第2放熱部材5bの双方に接続される。このため、第1放熱部材5aおよび第2放熱部材5bをいずれか一方を省略した場合に比べて、複数の第1電子部品3と複数の第2電子部品4とからの熱を放熱部材5Bにより効率的に放熱することができる。
【0043】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用や機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0044】
図6は、第4実施形態に係る電子部品モジュール1Cの断面図である。図6に示す電子部品モジュール1Cは、第1実施形態の放熱部材5および熱伝導部材6に代えて、放熱部材5Cおよび熱伝導部材6Cを有する以外は、前述の第1実施形態の電子部品モジュール1と同様である。
【0045】
放熱部材5Cは、本体51Cと複数のフィン52と1対のスペーサー53とを有する。本体51Cは、平板状をなしており、本体51Cの一方の面には、複数のフィン52が設けられ、本体51Cの他方の面には、1対のスペーサー53が設けられる。本実施形態の本体51Cの当該一方の面には、複数の熱伝導部材6Cに対応して複数の凹部54Cが設けられる。複数の凹部54Cのそれぞれには、対応する熱伝導部材6の一部が挿入される。
【0046】
本実施形態の凹部54Cには、雌ネジ55が設けられる。また、熱伝導部材6Cには、雌ネジ55と嵌め合う雄ネジ61が設けられる。このため、熱伝導部材6Cを用いて放熱部材5Cに対して基板2を固定することができる。この固定は、前述のネジ7による固定と併用してもよいし、ネジ7による固定に代えて用いてもよい。また、外力等により放熱部材5Cと熱伝導部材6Cとの接触面積が変動することが低減される。
【0047】
5.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0048】
例えば、前述の各形態における貫通孔26の数は、8個に限定されず、7個以下でもよいし、9個以上でもよい。また、複数の貫通孔26のうちの一部の貫通孔26には、熱伝導部材6、6Bまたは6Cが挿入されなくてもよい。
【0049】
また、前述の各形態では、熱伝導部材6、6Bまたは6Cが基板2を貫通する構成が例示されるが、当該構成に限定されず、基板2を貫通しない熱伝導部材を介して基板2と放熱部材5、5A、5Bまたは5Cとが熱的に接続されてもよい。以下、この一例を図7に基づいて説明する。
【0050】
図7は、変形例に係る電子部品モジュール1Dの断面図である。図7に示す電子部品モジュール1Dは、前述の第3実施形態の複数の熱伝導部材6Bに代えて、複数の熱伝導部材6Dおよび複数の伝熱体30を有する以外は、前述の第3実施形態の電子部品モジュール1Bと同様である。複数の伝熱体30は、複数の貫通孔26に対応しており、各伝熱体30は、対応する貫通孔26に挿入され、前述の伝熱体29と同様に構成される。すなわち、本変形例では、前述の基板2に複数の伝熱体30を加えた基板2Dが用いられる。
【0051】
熱伝導部材6Dは、第1熱伝導部材6aおよび第2熱伝導部材6bを含む。第1熱伝導部材6aは、第2部分P2および第1放熱部材5aに接続される。一方、第2熱伝導部材6bは、第2部分P2および第2放熱部材5bに接続される。第1熱伝導部材6aおよび第2熱伝導部材6bのそれぞれは、貫通孔26に挿入されない以外は、前述の熱伝導部材6、6Bまたは6Cと同様に構成される。本実施形態では、第1熱伝導部材6aおよび第2熱伝導部材6bのそれぞれが前述の伝熱体30に接続される。ここで、第1熱伝導部材6aまたは第2熱伝導部材6bと基板2Dとの間には、導電性グリスまたは導電性フィラー等の熱伝導性に優れる充填材が充填されてもよい。
【0052】
以上の図7に示す変形例によっても、前述の各形態と同様の効果が得られる。なお、第1熱伝導部材6aまたは第2熱伝導部材6bと伝熱体30とが一体で構成されてもよい。また、第1熱伝導部材6aおよび第2熱伝導部材6bのそれぞれは、基板2Dにおける伝熱体30以外の部分に接続されてもよい。この場合、貫通孔26および伝熱体30を省略することができる。また、基板2Dにおける第1熱伝導部材6aと接続する部分と、基板2Dにおける第2熱伝導部材6bと接続する部分とが、平面視で異なる位置でもよい。さらに、第1放熱部材5aと第1熱伝導部材6aとが一体で構成されてもよいし、第2放熱部材5bと第2熱伝導部材6bとが一体で構成されてもよい。
【0053】
また、前述の各形態における貫通孔25の数は、8個に限定されず、7個以下でもよいし、9個以上でもよい。また、貫通孔25は、省略してもよい。この場合、例えば、基板2と放熱部材5とが接着剤等により接合されるか、または、クリップのような固定部材により基板2と放熱部材5との位置関係が固定される。ただし、基板2に貫通孔25を設けることにより、前述のように伝熱体29またはネジ7を用いて基板2から放熱部材5への熱伝導性を高められるという利点がある。ネジ7を用いる基板2と放熱部材5との固定は、クリップのような固定部材を用いる場合に比べて、電子部品モジュール1の小型化および簡素化を図りやすいという利点もある。
【符号の説明】
【0054】
1…電子部品モジュール、1A…電子部品モジュール、1B…電子部品モジュール、1C…電子部品モジュール、1D…電子部品モジュール、2…基板、3…第1電子部品、4…第2電子部品、5…放熱部材、5A…放熱部材、5B…放熱部材、5C…放熱部材、5a…第1放熱部材、5b…第2放熱部材、6…熱伝導部材、6a…第1熱伝導部材、6b…第2熱伝導部材、6B…熱伝導部材、6C…熱伝導部材、6D…熱伝導部材、7…ネジ、21…基材、21a…絶縁層、21b…絶縁層、21c…絶縁層、23a…熱伝導層、23b…熱伝導層、25…貫通孔、26…貫通孔、27…金属膜、28…金属膜、29…伝熱体、54…凹部、54C…凹部、55…雌ネジ、61…雄ネジ、F1…第1面、F2…第2面、H1…経路、H2…経路、L1…距離、L2…距離、P1…第1部分、P2…第2部分、T…厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7