(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】デュアルICカードおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
G06K19/077 192
G06K19/077 144
G06K19/077 212
G06K19/077 244
(21)【出願番号】P 2019174001
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智仁
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-169563(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038684(WO,A1)
【文献】特開2010-033137(JP,A)
【文献】特開2009-157666(JP,A)
【文献】特開2016-051330(JP,A)
【文献】特表2000-502477(JP,A)
【文献】特開2019-219732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの片面に被覆導線
をその太さ方向の半分
よりも大きく埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体の所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し、且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した後、ICモジュールを凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続してなるデュアルICカードにおいて、
ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に、アンテナコアシートの巻線アンテナを備えた面とは反対側の面が備えられていることを特徴とするデュアルICカード。
【請求項2】
樹脂シートの片面に、巻回した被覆導線
をその太さ方向の半分
よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、ICモジュールを収容する凹部と巻線アンテナの所定の部位に前記ICモジュールとの接続部を形成する工程と、
ICモジュールを前記凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続する工程と、を備えていることを特徴とするデュアルICカードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアルICカードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードなどの金融系カード、マイナンバーカードなどの公共カードおよび身分証明に使用されて来た接触型ICカードが、デュアルICカードに切り替わりつつある。
【0003】
デュアルICカードは、通常、接触型ICカードで使用される接触端子を備えたICモジュールの他に、非接触通信を可能とする巻線アンテナがカードの周縁部に沿って備えられている。
【0004】
この様なデュアルICカードの製造方法は、
図3に例示した様に、通常まず、巻線アンテナをプラスチックシートに、アンテナを構成する被覆導線を太さ方向に半分以上埋め込んだアンテナコアシート1と、アンテナコアシート1の巻線アンテナ7´側に配置されたもう1枚のコアシート2と、アンテナコアシート1の巻線アンテナ7´とは反対側に裏側中間シート5と裏側オーバーシート6を、またコアシート2のアンテナコアシート1とは反対側に表側中間シート3と、表側オーバーシート4を、それぞれ配置し(
図3(a)参照)、積層し、接合した積層体20´を作製する(
図3(b)参照)。各層間の接合は、接着剤を使用した接着または熱融着による。
【0005】
次に、
図3(c)に例示した様に、作製した積層体20´の所定の部位を、表側オーバーシート4、表側中間シート3、コアシート2の順にミーリング加工(切削加工)することにより、デュアルICカードモジュール(図示省略)を収容する凹部13を形成し、同時にまたは更に、巻線アンテナ7´の所定の部位を切削加工することによりデュアルICカードモジュール(図示省略)と接続する接続部12を形成する。接続部12と凹部13を合わせて、ミーリング加工部9と称する。
【0006】
最後に、デュアルICカードモジュールを凹部13に配置し、巻線アンテナ7´と接続部12を電気的に接続する事により、デュアルICカードを作製している。デュアルICカードモジュールと巻線アンテナ7´の接続には、半田付け、導電性接着剤、異方性導電フィルムなどが使用されている。
【0007】
また、
図3(c)の代わりに、
図3(d)に例示した様なミーリング加工部9´としても良い。即ち、
図3(c)では凹部13とICモジュールとの接続部12は、隔壁により隔てられ、それぞれ独立したミーリング加工部9により構成されているが、
図3(d)では凹部13´とICモジュールとの接続部12´は、一体化したミーリング加工部9´となっていても良い。
【0008】
従来の製造方法においては、積層体20´の表側から、表側オーバーシート4、表側中間シート3、コアシート2の順にミーリング加工して行くが、例えば最後のコアシート2をミーリング加工して巻線アンテナ7´の所定の部位をミーリング加工する際に、コアシート2とアンテナコアシート1間の接合面の接着性が十分に安定していない事によるミーリング加工の不安定性がある。具体的には、ミーリング加工により接合面で剥離や破壊が発生し、良好にミーリング加工ができない場合がある。その為、巻線アンテナ7´の所定の部位を切削加工することによりデュアルICカードモジュールと接続する接続部12、12´を良好に形成できない問題がある。
【0009】
この様な問題を解決する関連先行技術としては、例えば、特許文献1にデュアルICカードとその製造方法に関する技術が開示されている。この技術は将に従来のデュアルICカードの製造方法に関するものである為、作製した積層体の所定の部位を、ミーリング加工(切削加工)する際に発生するシートとシートの接合面の接着性が不安定である事によるミーリング加工の不安定性を解消する事について考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の問題点に鑑み、本発明は、デュアルICカードの製造方法において、複数のシートが接合された積層体の表面からミーリング加工を行う際に、シートとシートの接合面の接着性の不安定性に起因するミーリング加工の不安定性が無いデュアルICカードの製造方法およびデュアルICカードを提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、樹脂シートの片面に被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナを備えたアンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体の所定の位置をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部を形成し、且つミーリング加工により巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成した後、ICモジュールを凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続してなるデュアルICカードにおいて、
ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に、アンテナコアシートの巻線アンテナを備えた面とは反対側の面が備えられていることを特徴とするデュアルICカードである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、樹脂シートの片面に、巻回した被覆導線をその太さ方向の半分よりも大きく埋め込む事により作製した巻線アンテナを備えたアンテナコアシートを製造する工程と、
該アンテナコアシートの表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合して積層体を製造する工程と、
該積層体の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナが埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、ICモジュールを収容する凹部と巻線アンテナの所定の部位に前記ICモジュールとの接続部を形成する工程と、
ICモジュールを前記凹部に収容し、ICモジュールと巻線アンテナを電気的に接続する工程と、を備えていることを特徴とするデュアルICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデュアルICカードの製造方法によれば、ミーリング加工により凹部を形成する積層体の面側に、アンテナコアシートの巻線アンテナを備えた面とは反対側の面が備えられているため、ミーリング加工により、巻線アンテナの所定の部位にICモジュールとの接続部を形成する際に、シートとシートの接合面までミーリング加工せずに接続部を形成することができる。その為、シートとシートの接合面の接着性の不安定性に起因するミーリング加工の不安定性が発現することが無い。
【0015】
本発明のデュアルICカードは、本発明のデュアルICカードの製造方法を使用して製
造するため、シートとシートの接合面の接着性の不安定性に起因するミーリング加工の不安定性が発現することが無い。その為、接合面で剥離や破壊が発生し、巻線アンテナの所定の部位を切削加工することによりデュアルICカードモジュールと接続する電極を良好に形成できない問題が無い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のデュアルICカードの製造工程の一部を例示した断面説明図。
【
図2】本発明のデュアルICカードの製造工程の一部を例示した断面説明図。
【
図3】従来のデュアルICカードの製造工程の一部を例示した断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<デュアルICカードの製造方法>
本発明のデュアルICカードの製造方法について、
図1と
図2を用いて説明する。
本発明のデュアルICカードの製造方法は、樹脂シートの片面に、巻回した被覆導線の太さ方向の半分以上を埋め込む事により作製した巻線アンテナ7を備えたアンテナコアシート1を製造する工程と、該アンテナコアシート1の表裏面に、それぞれ複数の樹脂シートを接合して積層体20を製造する工程(
図1(a)、(b)参照)と、該積層体20の所定の位置に、前記アンテナコアシートの巻線アンテナ7が埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工により、ICモジュールを収容する凹部11を形成する工程(
図1(c)参照)と、ミーリング加工により、巻線アンテナ7の所定の部位に前記ICモジュールとの接続部10を形成する工程(
図1(c)参照)と、ICモジュールを前記凹部11に収容する工程と、ICモジュールと巻線アンテナ7を電気的に接続する工程と、を備えている。
本発明のデュアルICカードの製造方法においては、積層体20を製造する工程が、積層体20のミーリング加工により凹部11を形成する積層体20の側に、アンテナコアシート1の巻線アンテナ7を備えた面とは反対側の面を配置することが特徴である。
【0018】
この様に配置する事により、積層体20の所定の位置に、樹脂シートの巻線アンテナ7が埋め込まれた面とは反対側の面からミーリング加工する際に、表側オーバーシート4、表側中間シート3を加工し、更にアンテナコアシート1の加工を行う。
【0019】
このアンテナコアシート1のミーリング加工は、巻線アンテナ7が埋め込まれている面とは反対側の面から行われる。その事により、ミーリング加工の深さがアンテナコアシート1とコアシート2の接合面に至る前までに、巻線アンテナ7を構成している被覆導線の最大断面積が得られる為、アンテナコアシート1とコアシート2の接合面における接合性の不安定性に影響される事無く、巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10を形成する事が可能となる。
【0020】
また、
図1(c)の代わりに、
図1(d)に例示した様なミーリング加工部8´としても良い。即ち、
図1(c)では凹部11とICモジュールとの接続部10は、隔壁により隔てられ、それぞれ独立したミーリング加工部8により構成されているが、
図1(d)に示した様に、凹部11´とICモジュールとの接続部10´は、一体化したミーリング加工部8´となっていても良い。
【0021】
次に、
図1(c)または
図1(d)のミーリング加工部8または8´に、ICモジュール16を搭載することにより、デュアルICカード100(
図2(e)参照)を作製する事ができる。
【0022】
<デュアルICカード>
次に、本発明のデュアルICカードについて、
図1と
図2を用いて説明する。
本発明のデュアルICカードは、樹脂シートの片面に被覆導線の太さ方向の半分以上を埋め込んだ状態で巻回してなる巻線アンテナ7を備えたアンテナコアシート1の表裏面に(
図1(a)参照)、それぞれ複数の樹脂シートを接合してなる積層体20(
図1(b)参照)の所定の位置に、前記アンテナコアシート1の巻線アンテナ7が埋め込まれた面とは反対側の面から積層体20をミーリング加工する事により、ICモジュールを収容する凹部11を形成し(
図1(c)参照)、且つミーリング加工により巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10を形成した後(
図1(c)参照)、ICモジュールを凹部11に収容し、ICモジュールと巻線アンテナ7を電気的に接続してなるデュアルICカードである。
【0023】
本発明のデュアルICカード100(
図2(e)参照)においては、ミーリング加工により凹部11を形成する積層体20の面側に、アンテナコアシート1の巻線アンテナ7を備えた面とは反対側の面が備えられている、または配置されていることが特徴である。
【0024】
また、本発明のデュアルICカード100においては、
図1(c)の代わりに、
図1(d)に例示した様なミーリング加工部8´としても良い。即ち、
図1(c)では凹部11とICモジュールとの接続部10は、隔壁により隔てられ、それぞれ独立したミーリング加工部により構成されているが、
図1(d)に示した様に、凹部11´とICモジュールとの接続部10´は、一体化したミーリング加工部となっていても良い。
【0025】
(ICモジュール)
本発明のデュアルICカード100で使用する(デュアル)ICモジュール16(
図2(e)参照)は、接触式通信機能と非接触式通信機能の両方を有するICモジュールである。ICモジュール16の形態は特に限定する必要は無いが、例えば、ICチップ17がキャリアテープに実装されたCOT(Chip On Tape)の形態でガラスエポキシ等の絶縁基板であるICモジュール基板21上に実装され、ICチップ17のパッド電極(図示省略)とICモジュール16の電極(図示省略)間をボンディングワイヤ18により接続されたICモジュールを使用することができる。
【0026】
(デュアルICカード)
この様なICモジュール16のICチップ17を、積層体20に形成されたミーリング加工部8、8´の凹部11、11´に収容し、ICモジュールとの接続部10、10´とICモジュール16の電極間を、異方性導電フィルム15(
図2(e)参照)や導電性ペーストなどの電気的接続手段を用いて接続する事により、デュアルICカード100を作製することができる。
図2(e)は、
図1(d)のミーリング加工部8´にICモジュール16を実装した場合を例示したものである。
【0027】
(アンテナコアシート)
アンテナコアシート1は、樹脂シートに巻線アンテナ7が備えられたものである。
樹脂シートの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン-4フッ化エチレン共重合体などのポリフッ化エチレン樹脂、ナイロン-6、ナイロン6、6などのポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル樹脂、三酢酸セルロース、セロファンなどのセルロース樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂などが挙げられる。
樹脂材料の含有量は、30質量以上、80質量%以下、であることが好ましい。
厚さは、50~250μmである。更には100~200μmであることが更に好ましい。
また、色や透過濃度は、それぞれの目的にあったものを選定すれば良い。
【0028】
(コアシート)
コアシート2は、アンテナコアシート1と同様の樹脂シートを好適に使用することができる。
【0029】
(表側および裏側中間シート)
表側中間シート3および裏側中間シート5は、印刷を行う場合があるため、印刷インキに対する印刷適性が備えられている事が望ましい。樹脂としては、PC(ポリカーボネート)やPET-G(グリコール変性のPET)などを好適に使用することができる。厚みとしては、カードの厚さ制限を超えない範囲で適宜選定すれば良い。例えば、0.05mm~0.20mmの範囲の厚さを積層すれば良い。更には、0.15mm前後の厚さが好ましい。
【0030】
(表側および裏側オーバーシート)
表側オーバーシート4および裏側オーバーシート6は、表側中間シート3および裏側中間シート5と同様の樹脂シートを使用することができる。厚みとしては、カードの厚さ制限を超えない範囲で適宜選定すれば良い。例えば、0.05mm~0.20mmの範囲の厚さにすれば良い。更には、0.05mm前後の厚さが好ましい。
【0031】
(巻線アンテナ)
巻線アンテナ7は、被覆導線を樹脂シート(アンテナコアシート1)の片面に被覆導線をその太さ方向の半分以上を埋め込んだ状態で巻回してなるものである。被覆導線は、マグネットワイヤーを好適に使用することができるが、これに限定する必要は無い。また、必要な導電性を備えているのであれば導電性材料は金属に限定する必要は無い。
被覆導線としては、通常マグネットワイヤーを使用することができる。
マグネットワイヤーとは、銅、銅合金、アルミニウムなどの導電線の表面を絶縁樹脂層で被覆したものである。絶縁樹脂としては、ポロビニールホルマール、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミド、ポリイミドなどが使用される。価格、耐熱性などにより適宜選択すればよい。
【0032】
(ICモジュールとの接続部)
巻線アンテナ7のICモジュールのパッド電極との接続部10、10´は、積層体20の所定の位置に、アンテナコアシート1の巻線アンテナ7が埋め込まれた面とは反対側の面から積層体20をミーリング加工する事により、巻線アンテナ7の所定の部位にICモジュールとの接続部10、10´を形成する。接続部10、10´の形成は、ミーリング加工により露出した巻線アンテナ7の側面からミーリング加工し、巻線アンテナ7の表面を被覆している絶縁樹脂層の除去および巻線アンテナ7自身のミーリング加工による導電線の金属の露出面積を増大させる。露出面積は、巻線アンテナ7の半径まで加工した時が最大となる。その為、巻線アンテナ7の半径までミーリング加工する事が好ましい。
【0033】
巻線アンテナ7のICモジュールのパッド電極との接続部10、10´と、ICモジュールのパッド電極と、の接続方法は、特に限定する必要は無い。例えば、はんだ付け、導電性インキ、導電性接着剤、異方性導電フィルムなどを使用して実施することができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
(アンテナコアシートの作製)
アンテナコアシートの熱可塑性樹脂シートとして、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートを用意した。
【0035】
そのPETシートに、直径0.1mmの自己融着線をデュアルICカードの周縁部内側に沿って、5ターン巻回した状態で、超音波振動子を使用して、マグネットワイヤーの半径0.05mm以上が埋め込まれる様に埋め込んだ。以上により、アンテナコアシートを作製した。
【0036】
(コアシート)
アンテナコアシートの巻線アンテナが備えられた面と向い合せに配置されるコアシートとしては、アンテナコアシートと同じ材料であっても良いし、異なる材料であっても構わないが、本実施例においては、アンテナコアシートと同じポリエチレンテレフタレート(PET)シートを使用した。
【0037】
(中間シート)
中間シートとして、厚さ0.2mmの白色のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを使用した。中間シートには印刷が行なわれる場合があるため、印刷適性が優れた樹脂を選択する事が好ましい。
【0038】
(オーバーシート)
オーバーシートとして、厚さ0.7mmの透明のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂シートを使用した。オーバーシートには耐擦傷性が求められるため、それに適した樹脂を選択する事が好ましいが、その他の適性を含めて選択する。
【0039】
(積層体の作製)
図1(a)に例示した層(シート)構成を備えた積層体20を形成した。積層体20を構成する各シート間の接着には、ホットメルト接着剤を使用し、熱プレスする事により、積層体を得た。
【0040】
(ミーリング加工)
作製した積層体の所望の位置をミーリング加工し、
図1(d)に例示したのと同様なミーリング加工部を形成した。ミーリング加工機は、カード専用のミーリング加工機を使用した。
【0041】
まず、
図1(d)に例示した様に、積層体の表面から巻線アンテナ
7の半径までをミーリング加工してICモジュールとの接続部10´を形成した。この時、巻線アンテナ
7の半径までアンテナコアシート1をミーリング加工してもコアシート2との接合面には至る事が無い。その為、アンテナコアシート1とコアシート2の接合面における接着性に不安定性に影響されることが無い。
【0042】
次に、デュアルICモジュール16のボンディングワイヤ18とICチップ17を封止した封止樹脂19の部分を収容する空間である凹部11´を形成した。以上により、凹部8´(
図1(d)参照)を作製した。
【0043】
(ICモジュールの実装)
次に、
図2(e)に例示した様に、デュアルICモジュール16を凹部8´に実装した。
まず、接続部10´に異方性導電フィルム15を配置した。異方性導電フィルム15と
しては、ポリエステル系材に導電性フィラーを含有したものを使用した。
【0044】
次に、デュアルICモジュール16を凹部8´の所定に配置し、ICモジュール16の背面から熱圧着した。
【0045】
以上により、デュアルICカードのサンプルを500作製した。
【0046】
<比較例1>
図3(a)、(b)、(d)に示した層構成とした以外は、実施例1と同様にして、デュアルICカードのサンプルを500枚作製した。
【0047】
<評価>
実施例1と比較例1で作製したデュアルICカード各500枚について、良品と不良品の検査を行った。検査基準は、巻線アンテナが良好に露出できていたものを良品、巻線アンテナが引きちぎれたり、損傷したりしたものを不良品とした。
評価結果を表1に示した。比較例1においては、良品が405、不良品が95(良品率81.0%)であったのに対し、実施例1においては、良品が496、不良品が4(良品率99.2%)であった。
【0048】
【符号の説明】
【0049】
1・・・アンテナコアシート
2・・・コアシート
3・・・表側中間シート
4・・・表側オーバーシート
5・・・裏側中間シート
6・・・裏側オーバーシート
7、7´・・・巻線アンテナ
8、8´、9、9´・・・ミーリング加工部
10、10´、12、12´・・・(巻線アンテナの)ICモジュールとの接続部
11、11´、13、13´・・・(ICモジュールを収容する)凹部
14・・・導電性ペースト
15・・・異方性導電フィルム
16・・・(デュアル)ICモジュール
17・・・ICチップ
18・・・ボンディングワイヤ
19・・・封止樹脂
20、20´・・・積層体
21・・・ICモジュール基板
100・・・デュアルICカード