(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231212BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231212BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
F16H57/04 N
F16H57/04 J
F16H57/04 Q
(21)【出願番号】P 2019174583
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019122294
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】高田 響
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-201316(JP,A)
【文献】特開2013-174338(JP,A)
【文献】特開2009-275824(JP,A)
【文献】特開2004-176744(JP,A)
【文献】特開2018-123874(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105299(WO,A1)
【文献】特開2019-027495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転するシャフトを有するモータと、
前記シャフトに接続され中間軸を中心として回転するカウンタギヤを有する減速装置と、
前記減速装置に接続され差動軸を中心として回転するリングギヤを有する差動装置と、
前記減速装置および前記差動装置を収容するギヤ室が設けられたハウジングと、
前記ギヤ室内の下部領域に溜るオイルと、を備え、
水平面に沿い互いに直交する方向を第1方向および第2方向として、
前記モータ軸、前記中間軸および前記差動軸は、前記第1方向に沿って延び、
前記カウンタギヤの下端部は、前記リングギヤの下端部より下側に位置し前記オイルに浸かり、
前記ハウジングは、
前記カウンタギヤより上側に位置し軸方向位置が前記カウンタギヤに重なり上側に開口するキャッチタンクと、
軸方向位置が前記カウンタギヤに重なり前記カウンタギヤの
前記第2方向の側部を通り上側に向かうに従い前記キャッチタンクに向かって傾斜する油滴ガイドと、
前記油滴ガイドの上側に位置する分岐ガイドと、を有
し、
前記分岐ガイドは、
前記キャッチタンクよりも前記第2方向の一方側に位置する下端部と、
前記下端部から上側に向かうに従い前記第2方向の他方側に傾斜する第1ガイド部と、
前記下端部から上側に向かうに従い前記第2方向の一方側に傾斜する第2ガイド部と、を有し、
前記第1ガイド部は、前記カウンタギヤによってかき上げられたオイルを前記キャッチタンクに誘導し、
前記第2ガイド部は、前記カウンタギヤによってかき上げられたオイルを前記第2方向において前記キャッチタンクの反対側に誘導する、
モータユニット。
【請求項2】
前記油滴ガイドは、
前記カウンタギヤの歯先に沿って円弧状に湾曲して延びる湾曲部と、
前記カウンタギヤの直上に位置し前記キャッチタンクに向かって直線的に延びる直線部と、を有する、
請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記油滴ガイドは、上端部が前記キャッチタンクの開口の直上に位置する庇部を有する、
請求項1又は2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記ハウジングは、
軸方向位置が前記カウンタギヤに重なり前記カウンタギヤの下側において前記カウンタギヤの歯先に沿って円弧状に湾曲して延びる液中ガイドを有する、請求項1~3の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記オイルを圧送して循環させるポンプを備え、
前記ハウジングの前記ギヤ室内の下部領域には、前記ポンプの吸入口が配置され、
前記液中ガイドは、軸方向から見て、前記カウンタギヤの歯先と前記吸入口との間に配置される、
請求項4に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記キャッチタンクは、軸方向位置が前記リングギヤと重なる、請求項1~5の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向から覆うギヤカバーと、を有し、
前記ギヤカバーは、前記シャフト、前記カウンタギヤ、および前記リングギヤを、ベアリングを介してそれぞれ回転可能に支持し、
前記ギヤカバーには、前記キャッチタンク内の前記オイルを何れかの前記ベアリングに向けて流す貫通孔が設けられる、
請求項1~6の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記ギヤカバーには、前記オイルをそれぞれの前記ベアリングに向けて流す3つの前記貫通孔が設けられる、
請求項7の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項9】
前記ギヤカバーには、凹溝が設けられ、
前記凹溝の一端は前記キャッチタンクから延びる前記貫通孔に繋がり、他端は前記ベアリングの外周面に開口する、
請求項7又は8に記載のモータユニット。
【請求項10】
前記ギヤカバーには、前記凹溝の縁に沿って延びる一対のガイド壁が設けられる、請求項9に記載のモータユニット。
【請求項11】
前記ハウジングは、前記ギヤ室を軸方向から覆うギヤカバーと、を有し、
前記ギヤカバーは、前記シャフト、前記カウンタギヤ、および前記リングギヤを、ベアリングを介してそれぞれ回転可能に支持し、
前記ギヤカバーには、前記キャッチタンクの開口縁から何れかの前記ベアリングの外周面に向かって延びて、前記キャッチタンクから溢出した前記オイルを何れかの前記ベアリングに向けて流す凹溝が設けられる、
請求項1~10の何れか一項に記載のモータユニット。
【請求項12】
前記減速装置は、
前記シャフトに固定され前記モータ軸を中心として回転するピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤと噛み合う前記カウンタギヤと、
前記カウンタギヤとともに前記中間軸を中心として回転し前記リングギヤと噛み合うドライブギヤと、を有する、
請求項1~11の何れか一項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車およびハイブリッド自動車の普及に伴い車両を駆動するモータユニットの開発が進んでいる。このようなモータユニットは、ギヤの潤滑性を高めるため又はモータを冷却するために、内部にオイルが貯留される場合がある。特許文献1には、ケースの底部に溜められたオイルをギヤの回転によってかき上げることでオイルを循環させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、主にデフリングギヤを用いてオイルをかき上げてオイルを循環させている。また、デフリングギヤによって効率的にオイルをかき上げるために、デフリングギヤの下端部を他のギヤより下側に配置している。一般的に、効率的な減速構成を確保するために、デフリングギヤは他のギヤと比較して大径となる。デフリングギヤの下端部を他のギヤより下側に配置する場合には、デフリングギヤが下側に突出して配置されるため、モータユニット全体の上下方向寸法が大型化するという問題がある。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記問題点に鑑みて、カウンタギヤの下端部を他のギヤより下側に配置することでモータユニットの上下方向寸法を小型化しつつ、カウンタギヤによる効率的なかき上げを可能とするモータユニットの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータユニットの一つの態様は、車両を駆動するモータユニットであって、モータ軸を中心として回転するシャフトを有するモータと、前記シャフトに接続され中間軸を中心として回転するカウンタギヤを有する減速装置と、前記減速装置に接続され差動軸を中心として回転するリングギヤを有する差動装置と、前記減速装置および前記差動装置を収容するギヤ室が設けられたハウジングと、前記ギヤ室内の下部領域に溜るオイルと、を備える。ここで水平面に沿い互いに直交する方向を第1方向および第2方向とする。前記モータ軸、前記中間軸および前記差動軸は、前記第1方向に沿って延び、前記カウンタギヤの下端部は、前記リングギヤの下端部より下側に位置し前記オイルに浸かる。前記ハウジングは、前記カウンタギヤより上側に位置し軸方向位置が前記カウンタギヤに重なり上側に開口するキャッチタンクと、軸方向位置が前記カウンタギヤに重なり前記カウンタギヤの第2方向の側部を通り上側に向かうに従い前記キャッチタンクに向かって傾斜する油滴ガイドと、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、カウンタギヤの下端部を他のギヤより下側に配置することでモータユニットの上下方向寸法を小型化しつつ、カウンタギヤによる効率的なかき上げを可能とするモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータユニットの概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータユニット1の斜視図であり、減速装置および差動装置5を開放した状態を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態のモータユニット1の側面図であり、減速装置および差動装置5を開放した状態を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態のモータユニット1の側面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の第2の側壁(ギヤカバー)の側面図である。
【
図6】
図6は、変形例の第4のオイル導入路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両左方であり、-Y方向が車両右方である。
【0010】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼ぶ。また、車両左方(すなわち、+Y側)を、単に軸方向一方側と呼び、車両右方(すなわち、-Y側)を、単に軸方向他方側と呼ぶ。さらに、モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
以下の説明において、Y軸と平行な方向である車両の幅方向を単に「車幅方向」又は「第1方向」と呼ぶ。以下の説明において、X軸と平行な方向である車両前後方向を単に「前後方向」又は「第2方向」と呼ぶ。また、車両の後方(すなわち、-X側)を単に前後方向一方側と呼び、車両の前方(すなわち、+X側)を、単に前後方向他方側と呼ぶ。第1方向および第2方向は、水平面に沿い互いに直交する方向である。
【0012】
図1は、一実施形態のモータユニット1の概念図である。
モータユニット1は、車両を駆動する。モータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0013】
図1に示すように、モータユニット1は、モータ2と、減速装置4と、差動装置5と、ハウジング6と、オイルOと、ポンプ96と、クーラー97を備える。減速装置4および差動装置5は、ギヤ部3を構成する。ハウジング6の内部は、モータ2、減速装置4および差動装置5を収容する収容空間80が設けられる。収容空間80は、モータ2を収容するモータ室81と、ギヤ部3を収容するギヤ室82と、に区画される。
【0014】
<モータ>
モータ2は、ハウジング6のモータ室81に収容される。モータ2は、ロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、を備える。モータ2は、ステータ30と、ステータ30の内側に回転自在に配置されるロータ20と、を備えるインナーロータ型モータである。
【0015】
ロータ20は、図示略のバッテリからステータ30に電力が供給されることで回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネット(図示略)と、を有する。すなわち、モータ2は、シャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネットと、を有する。ロータ20は、モータ軸J2を中心として回転する。ロータ20のトルクは、減速装置4を介し差動装置5に伝達される。
【0016】
シャフト21は、車幅方向(第1方向)に延びるモータ軸J2を中心として延びる。シャフト21は、モータ軸J2を中心として回転する。シャフト21は、内部にモータ軸J2に沿って延びる内周面を有する中空部22が設けられた中空シャフトである。
【0017】
シャフト21は、ハウジング6のモータ室81とギヤ室82とを跨いで延びる。シャフト21の一方の端部は、ギヤ室82側に突出する。ギヤ室82に突出するシャフト21の端部には、ピニオンギヤ41が固定されている。
【0018】
シャフト21は、第3のベアリング13、第4のベアリング14、第5のベアリング15および第6のベアリング16によって回転可能に支持される。第3のベアリング13は、シャフト21の軸方向他方側の端部を支持する。第4のベアリング14は、シャフト21の軸方向一方側の端部を支持する。第4のベアリング14および第5のベアリング15は、シャフト21の中程で、シャフト21を支持する。
【0019】
ロータコア24は、珪素鋼板を積層して構成される。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。ロータコア24には、図示略の複数のロータマグネットが固定される。複数のロータマグネットは、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0020】
ステータ30は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に複数の磁極歯(図示略)を有する。磁極歯の間には、コイル線が掛けまわされる。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル31を構成する。
【0021】
<減速装置>
図2は、モータユニット1の斜視図であり、減速装置4および差動装置5を開放した状態を示す。
減速装置4は、ギヤ室82に収容される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置4は、モータ2のシャフト21に接続される。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。
【0022】
減速装置4は、ピニオンギヤ41と、中間シャフト45と、中間シャフト45に固定されたカウンタギヤ42およびドライブギヤ43と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、ピニオンギヤ41、カウンタギヤ42およびドライブギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0023】
ピニオンギヤ41は、モータ2のシャフト21の外周面に固定される。ピニオンギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J2を中心に回転する。
【0024】
中間シャフト45は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J4を中心として回転する。中間シャフト45の一端は、第7のベアリング69を介して第2の側壁68に回転可能に支持される。なお、図示を省略するが、中間シャフト45の他端は、ベアリングを介して隔壁61cに回転可能に支持される。
【0025】
カウンタギヤ42とドライブギヤ43とは、軸方向に並んで配置される。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。カウンタギヤ42およびドライブギヤ43は、中間軸J4を中心として回転する。カウンタギヤ42、ドライブギヤ43および中間シャフト45のうち少なくとも2つは、単一の部材から構成されていてもよい。カウンタギヤ42は、ピニオンギヤ41と噛み合う。ドライブギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0026】
<差動装置>
差動装置5は、ギヤ室82に収容される。差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、一対の出力シャフト55に同トルクを伝える機能を有する。
【0027】
差動装置5は、リングギヤ51と、ギヤハウジング52と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ54とを有する。また、差動装置5は、
図1に示すように、一対の出力シャフト55と、第1のベアリング56と、第2のベアリング57と、を有する。リングギヤ51は、モータ軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。
【0028】
一対の出力シャフト55は、軸方向に沿って延びる。一対の出力シャフト55の一端にはそれぞれサイドギヤが接続され、他端にはそれぞれ車輪が接続される。一対の出力シャフト55は、モータ2のトルクを、車輪を介して路面に伝える。
【0029】
第1のベアリング56および第2のベアリング57は、ハウジング6に保持される。第1のベアリング56は、一対の出力シャフト55のうち軸方向一方側に位置する一方を回転可能に支持し、第2のベアリング57は、軸方向他方側に位置する他方を回転可能に支持する。すなわち、第1のベアリング56および第2のベアリング57は、差動装置5を差動軸J5周りに回転可能に支持する。
【0030】
<各軸の配置>
図3および
図4は、ともにモータユニット1の側面図である。
図5は、第2の側壁(ギヤカバー)68の側面図である。なお、
図3では、ハウジング6の第2の側壁68を省略して減速装置4および差動装置5を開放させた状態を図示する。
図3および
図4と、
図5とは図示方向が互いに反対向きである。
【0031】
図3に示すように、モータ軸J2、中間軸J4および差動軸J5は、車幅方向(Y軸方向、第1方向)に沿って延びる。上下方向において、モータ軸J2、差動軸J5および中間軸J4は、上側から下側に向かってこの順に配置される。リングギヤ51は、他のギヤと比較して直径が大きい。上下方向において、差動軸J5は、モータ軸J2と中間軸J4との間に配置される。このため、リングギヤ51を、他のギヤと上下方向において重ねて配置することができ、上下方向において、ギヤ部3を小型化することができる。
【0032】
ギヤ室82内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。以下の説明において、ギヤ室82内の下部領域をオイル溜りPと呼ぶ。カウンタギヤ42の下端部は、オイル溜りPに溜るオイルOに浸かる。
【0033】
オイル溜りPに溜るオイルOは、減速装置4および差動装置5の動作によってかき上げられて、一部が第1の油路91(
図1参照)に供給され、一部がギヤ室82内に拡散される。ギヤ室82に拡散されたオイルOは、ギヤ室82内の減速装置4および差動装置5の各ギヤに供給されてギヤの歯面にオイルOを行き渡らせる。減速装置4および差動装置5に供給され潤滑に使用されたオイルOは、滴下してギヤ室82の下側に位置するオイル溜りPに回収される。また、収容空間80内のオイルOの容量は、オイルOが油路90に供給されることでオイル溜りPの液面が最下位置となった場合でもカウンタギヤ42がオイル溜りPのオイルOに浸かる程度に設定される。また、収容空間80内のオイルOの容量は、モータユニット1の停止時であってオイル溜りPの液面が最高位置となった場合に、中間シャフト45を支持するベアリングの一部がオイルOに浸かる程度に設定される。
【0034】
本実施形態によれば、中間軸J4がモータ軸J2および差動軸J5より下側に位置する。これにより、中間軸J4周りに回転するカウンタギヤ42の下端部を他のギヤより下側に配置することができる。すなわち、カウンタギヤ42の下端部は、リングギヤ51の下端部より下側に位置する。これにより、カウンタギヤ42をオイル溜りPのオイルOに十分に浸からせて、カウンタギヤ42によってオイルOを効率的にかき上げることができる。
【0035】
モータ軸J2、中間軸J4および差動軸J5は、前後方向(第2方向)の一方側(-X側)から他方側(+X側)に向かってこの順で並ぶ。すなわち、中間軸J4は、前後方向において、差動軸J5とモータ軸J2との間に位置する。ギヤ部3において、モータ2の動力は、モータ軸J2周りに回転するギヤ、差動軸J5周りに回転するギヤ、差動軸J5周りに回転するギヤの順で伝わる。本実施形態によれば、ギヤ部3の各ギヤが力の伝達経路に沿って前後方向に並ぶことで、ギヤ部3の上下方向の寸法を小型化できる。
【0036】
<ハウジング>
図1に示すように、ハウジング6は、軸方向と直交する平面に沿って延びる隔壁61c、第1の側壁61dおよび第2の側壁68を有する。隔壁61cは、ハウジング6の収容空間80をモータ室81とギヤ室82とに区画する。第1の側壁61dは、隔壁61cに連なる。第2の側壁68は、軸方向において隔壁61cおよび第1の側壁61dと対向する。
【0037】
隔壁61cには、シャフト通過孔61fと隔壁開口61gとが設けられる。シャフト通過孔61fおよび隔壁開口61gは、モータ室81とギヤ室82とを連通させる。シャフト通過孔61fには、シャフト21が通過する。シャフト通過孔61fの内側には第4のベアリング14および第5のベアリング15が配置される。隔壁61cは、第4のベアリング14および第5のベアリング15を介してシャフト21を支持する。
【0038】
隔壁開口61gは、シャフト通過孔61fの下側に位置する。隔壁開口61gは、モータ室81の底部の近傍に設けられる。モータ室81内でモータ2を冷却したオイルOは、隔壁開口61gを介しモータ室81からギヤ室82のオイル溜りPに移動する。
【0039】
第1の側壁61dは、隔壁61cから前後方向の他方側に延びる。第1の側壁61dは、差動装置5に対して軸方向一方側(+Y側)に位置する。第1の側壁61dは、第1の出力シャフト通過孔66aと、第1のベアリング保持部66と、を有する。第1の出力シャフト通過孔66aには、出力シャフト55が通過する。第1のベアリング保持部66は、第1の出力シャフト通過孔66aの周囲を囲む。第1のベアリング保持部66は、出力シャフト55を回転可能に支持する第1のベアリング56を保持する。
【0040】
図3に示すように、第1のベアリング保持部66には、軸方向一方側に凹み上下方向に延びる溝状の開口部66bが設けられる。すなわち、ハウジング6は、開口部66bを有する。開口部66bは、第1のベアリング56の上側において第1のベアリング保持部66を上下方向に貫通し第1のベアリング56の外周面を露出させる。
【0041】
図1に示すように、第2の側壁68は、差動装置5に対して軸方向他方側(-Y側)に位置する。第2の側壁68は、第2の出力シャフト通過孔67aと、第2のベアリング保持部67と、を有する。第2の出力シャフト通過孔67aには、出力シャフト55が通過する。第2のベアリング保持部67は、第2の出力シャフト通過孔67aの周囲を囲む。第2のベアリング保持部67は、出力シャフト55を回転可能に支持する第2のベアリング57を保持する。
【0042】
図3に示すように、ハウジング6は、キャッチタンク93と、ガイド部材62と、第1のガイドリブ63と、第2のガイドリブ(分岐ガイド)64と、第3のガイドリブ(ガイドリブ)65と、を有する。キャッチタンク93、ガイド部材62、第1のガイドリブ63、第2のガイドリブ64および第3のガイドリブ65は、ギヤ室82内に配置される。
【0043】
キャッチタンク93は、上側に開口する。キャッチタンク93は、一時的にオイルを貯留するリザーバとして機能する。キャッチタンク93には、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOが溜る。
【0044】
なお、本実施形態において、車両が前方に進行するとき、カウンタギヤ42は、差動軸J5と対向する側において上側に向かって回転する方向(以下、第1回転方向T1)に回転する。したがって、オイルOは、カウンタギヤ42にかき上げられて中間軸J4と差動軸J5との間を通過しキャッチタンク93に入る。すなわち、車両が前方に進行するとき、オイル溜りPのオイルOは主にカウンタギヤ42のかき上げによってキャッチタンク93に導かれる。
【0045】
また、本実施形態において、車両が後方に進行するとき、オイル溜りPのオイルOは主にリングギヤ51のかき上げによってキャッチタンク93に導かれる。車両が後方に進行することで、カウンタギヤ42は、第1回転方向T1の反対方向に回転する。これに伴いリングギヤ51は、前後方向他方側において上側に向かって回転しオイルOをかき上げる。これにより、オイルOは、リングギヤ51の歯先とリングギヤ51に対し前後方向他方側の内壁面との間の隙間を通って、キャッチタンク93に導かれる。
【0046】
なお、
図2において図示される、隔壁61cから軸方向他方側に突出するリブ状の部分は、キャッチタンク93の一部である。キャッチタンク93は、隔壁61cから軸方向他方側に突出するリブ状の一部と、第2の側壁68から軸方向一方側に突出するリブ状の他部とが、軸方向において互いに連結することで構成される。したがって、キャッチタンク93は、ギヤ室82の軸方向の全長に延びる。また、キャッチタンク93は、軸方向位置がギヤ部3の全てのギヤに重なる。すなわち、キャッチタンク93の軸方向位置は、カウンタギヤ42およびリングギヤ51の軸方向位置に重なる。キャッチタンク93は、カウンタギヤ42のみならずリングギヤ51によってかき上げられたオイルOをも受けることができる。
なお、ここで軸方向位置とは、Y軸方向の位置を意味する。また、「軸方向位置が重なる」とは、もの同士のY軸座標の範囲に互いに重複する部分があることを意味する。
【0047】
図3に示すように、キャッチタンク93は、上下方向において中間軸J4および差動軸J5より上側に位置する。キャッチタンク93は、カウンタギヤ42の直上に位置する。すなわち、キャッチタンク93は、カウンタギヤ42より上側に位置し、上下方向から見てカウンタギヤ42と重なる。キャッチタンク93は、ピニオンギヤ41の前後方向の他方側(+X側)の側部に配置される。すなわち、キャッチタンク93とシャフト21とは、前後方向に並ぶ。
【0048】
キャッチタンク93の開口は、上下方向から見てカウンタギヤ42と重なる。ギヤによってかき上げられるオイルの大部分は、かき上げるギヤの直上に飛散する。キャッチタンク93をカウンタギヤ42の直上に配置することで、カウンタギヤ42でかき上げたオイルOをキャッチタンク93で効率的に受けることができる。
【0049】
キャッチタンク93は、底部93aと第1の側壁部93bと第2の側壁部93cとを有する。第1の側壁部93bは、底部93aの差動軸J5側の端部から上側に延び、第2の側壁部93cは、底部93aのモータ軸J2側の端部から上側に延びる。第1の側壁部93bは、キャッチタンク93の前後方向の他方側の壁面を構成する。第2の側壁部93cは、キャッチタンク93の前後方向の一方側の壁面を構成する。
【0050】
第2の側壁部93cの上端部は、ギヤ室82の天面に連なる。一方で、第1の側壁部93bの上端部は、ギヤ室82の天面から離間して配置される。すなわち、第1の側壁部93bの上端部は、第2の側壁部93cの上端部より下側に位置する。オイルOは、カウンタギヤ42によりかき上げられて、キャッチタンク93の前後方向他方側からキャッチタンク93に向かって飛散する。第1の側壁部93bの上端部の高さを低くすることによって、カウンタギヤ42によりかき上げられたオイルOを効率的にキャッチタンク93に貯留できる。また、第2の側壁部93cの上端部は、ギヤ室82の天面に連なるため、カウンタギヤ42によってかき上げられてキャッチタンク93の上側を通過するオイルOを第2の側壁部93cにあててキャッチタンク93に誘導できる。
【0051】
第2の側壁部93cは、隔壁61cに保持される第4のベアリング14の外周面に沿って斜め上方に延びる。第2の側壁部93cには、モータ軸J2の径方向に延びる第3のオイル導入路93dが設けられる。すなわち、ハウジング6は、第3のオイル導入路93dを有する。第3のオイル導入路93dは、第2の側壁部93cに直線状に延びる孔を加工することで成形される。
【0052】
第3のオイル導入路93dは、一方の端部において、キャッチタンク93の内部に開口し、他方の端部において、第4のベアリング14を囲むベアリング保持部の内周面に開口する。すなわち、第3のオイル導入路93dは、キャッチタンク93と第4のベアリング14を囲むベアリング保持部とを連通させる。第3のオイル導入路93dは、キャッチタンク93に貯留されたオイルOを第4のベアリング14の外周面に供給する。
【0053】
図4に示すように、ハウジング6の第2の側壁(ギヤカバー)68は、車幅方向の一方側(-Y側)からギヤ室を覆う。本実施形態において、第2の側壁68は、ハウジング本体6Aとは別部材であって、ボルトによってハウジング本体6Aに固定される。
【0054】
ハウジング6の第2の側壁68には、第1のオイル導入路(貫通孔)68b、第2のオイル導入路(貫通孔)68cおよび第4のオイル導入路68dが設けられる。すなわち、ハウジング6は、第1のオイル導入路68b、第2のオイル導入路68cおよび第4のオイル導入路68dを有する。
【0055】
第1のオイル導入路68bおよび第2のオイル導入路68c、並びに第4のオイル導入路68dの一部は、第2の側壁68に設けられた貫通孔である。第1のオイル導入路68bおよび第2のオイル導入路68c、並びに第4のオイル導入路68dの一部は、第2の側壁68に直線状に延びる孔を加工することで成形される。
【0056】
第1のオイル導入路68bは、キャッチタンク93からモータ軸J2の径方向内側に向かって延びる。第2のオイル導入路68cは、キャッチタンク93から差動軸J5の径方向内側に向かって延びる。第4のオイル導入路68dは、キャッチタンク93から中間軸J4の径方向内側に向かって延びる。キャッチタンク93は、モータ軸J2、差動軸J5および中間軸J4より上側に位置する。このため、第1のオイル導入路68b、第2のオイル導入路68cおよび第4のオイル導入路68dは、それぞれキャッチタンク93から離れるに従い下側に向かって傾斜する。これにより、第1のオイル導入路68b、第2のオイル導入路68cおよび第4のオイル導入路68dは、オイルOをキャッチタンク93から効率的に排出できる。
【0057】
図4に示すように、第1のオイル導入路68bは、第2の側壁68の内部を通る。第1のオイル導入路68bは、一方の端部において、キャッチタンク93の内部に開口し、他方の端部において、シャフト21の軸方向他方側の端部に開口する。第1のオイル導入路68bは、キャッチタンク93とシャフト21の内部とを繋ぐ。第1のオイル導入路68bは、キャッチタンク93に貯留されたオイルOをシャフト21の中空部22に誘導する。また、第1のオイル導入路68bは、キャッチタンク93に貯留されたオイルOをシャフト21の軸方向他方側の端部を保持する第3のベアリング13に供給する。
【0058】
第2のオイル導入路68cは、第2の側壁68の内部を通る。第2のオイル導入路68cは、一方の端部において、キャッチタンク93の内部に開口し、他方の端部において、第2のベアリング57を囲む第2のベアリング保持部67の内周面に開口する。すなわち、第2のオイル導入路68cは、キャッチタンク93から第2のベアリング保持部67の内周面まで延びる。第2のオイル導入路68cは、キャッチタンク93に貯留されたオイルOを第2のベアリング57の外周面に供給する。
【0059】
図5に示すように、第4のオイル導入路68dは、キャッチタンク93から第7のベアリング69まで延びる。第4のオイル導入路68dは、キャッチタンク93に貯留されたオイルOを第7のベアリング69の外周面に供給する。第4のオイル導入路68dは、一方向に連なる貫通孔68daおよび凹溝68dbを有する。貫通孔68daおよび凹溝68dbは、同方向に延びる。
【0060】
貫通孔68daは、第2の側壁68の内部を通る。貫通孔68daは、上下方向に沿って延びる。第4のオイル導入路68dは、一方の端部において、キャッチタンク93の内部に開口し、他方の端部において、凹溝68dbの内部に開口する。
【0061】
凹溝68dbは、第2の側壁68のギヤ室82側を向く面に設けられる。凹溝68dbは、上下方向に沿って延びる。凹溝68dbの一端はキャッチタンク93から延びる貫通孔68daに繋がる。また、凹溝68dbの他端は第7のベアリング69の外周面に開口する。凹溝68dbは、第7のベアリング69の外周面のうち上側を向く領域を露出させる。貫通孔68daを通って凹溝68dbに達したオイルは、凹溝68dbを流れて第7のベアリング69に供給される。
【0062】
凹溝68dbの縁には一対のガイド壁68eが設けられる。すなわち、第2の側壁68のギヤ室82側を向く面には、凹溝68dbの縁に沿って延びる一対のガイド壁68eが設けられる。ガイド壁68eが設けられることで、凹溝68dbを流れるオイルを効率的に第7のベアリング69に供給できる。
なお、本実施形態の第4のオイル導入路68dは、貫通孔68daと凹溝68dbとから構成されるが、第1のオイル導入路68bおよび第2のオイル導入路68cと同様に、全長に亘って貫通孔68daから構成されていてもよい。
【0063】
本実施形態によれば、第2の側壁68は、シャフト21、カウンタギヤ42、およびリングギヤ51を、ベアリング13、69、57を介してそれぞれ回転可能に支持する。第2の側壁68には、貫通孔(第1のオイル導入路68b、第2のオイル導入路68c、貫通孔68da)が設けられる。これらの貫通孔は、キャッチタンク93内のオイルを何れかのベアリング13、69、57に向けて流す。これにより、第2の側壁68に支持される各ベアリング13、69、57の潤滑性を高めることができる。
【0064】
本実施形態によれば、第2の側壁68には、オイルをそれぞれのベアリング13、69、57に向けて流す3つの貫通孔(第1のオイル導入路68b、第2のオイル導入路68c、貫通孔68da)が設けられる。これにより、それぞれのベアリング13、69、57の潤滑性をそれぞれ高めることができる。
【0065】
図6は、本実施形態に採用可能な変形例の第4のオイル導入路168dの模式図である。本変形例の第4のオイル導入路168dは、キャッチタンク93から第7のベアリング69まで延びる。第4のオイル導入路168dは、凹溝168dbのみを有する。すなわち、本変形例の第2の側壁(ギヤカバー)168には、凹溝168dbが設けられる。凹溝168dbは、キャッチタンク93の開口縁から第7のベアリング69に向かって延びる。凹溝168dbの下端は第7のベアリング69の外周面に開口する。また、凹溝168dbは、第7のベアリング69の外周面のうち上側を向く領域を露出させる。凹溝168dbは、キャッチタンク93から溢出したオイルOを第7のベアリング69に向けて流す。これにより、第4のオイル導入路168dは、キャッチタンク93から第7のベアリング69にオイルOを供給する。
なお、本変形例では、第7のベアリング69にオイルを供給するオイル導入路(第4のオイル導入路168d)について、全長が凹溝168dbから構成される場合について説明した。しかしながら、他のベアリングにオイルを供給するオイル導入路についても、全長が凹溝から構成されていてもよい。
【0066】
図3に示すように、ガイド部材62は、板状であり、カウンタギヤ42の歯先円に沿って円弧状に延びる。ガイド部材62は、ハウジング6の第1の側壁61dに固定される。ガイド部材62は、軸方向位置がカウンタギヤ42と重なる。カウンタギヤ42の一部は、オイル溜りPのオイルOに浸かり、他の一部はオイル溜りPのオイルOから露出する。
【0067】
ガイド部材62は、カウンタギヤ42に対して下側に位置する液中ガイド62aと、カウンタギヤ42に対して前後方向他方側に位置する第1の受け板(湾曲部)62bと、を有する。液中ガイド62aは、ガイド部材62のオイル溜りPに浸かる部分である。第1の受け板62bは、ガイド部材62のオイル溜りPから露出する部分である。液中ガイド62aと第1の受け板62bとは、同一曲率で滑らかに連なる。
【0068】
液中ガイド62aは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なりカウンタギヤ42の下側においてカウンタギヤ42の歯先に沿って円弧状に湾曲して延びる。本実施形態によれば、液中ガイド62aがオイル溜りPの液中において、カウンタギヤ42の歯先に沿って延びる。このため、カウンタギヤ42の中間軸J4周りの回転に伴い、オイル溜りPのオイルOを液中ガイド62aに沿って中間軸J4周りの中方向に誘導して流すことができる。これにより、液中ガイド62aは、カウンタギヤ42による液面より上側へのオイルOの効率的なかき上げを促進することができる。
【0069】
ギヤ室82には、ポンプ96のストレーナ96bが配置される。ストレーナ96bは、オイル溜りのオイルOに浸かる。ストレーナ96bは、オイル溜りPから吸い上げられるオイルOをろ過する。ストレーナ96bは、下側を向く吸入口96cを有する。吸入口96cは、オイル溜りPに開口する。すなわち、ポンプ96の吸入口96cは、ギヤ室82の下部領域に配置される。ポンプ96は、吸入口96cからオイル溜りPのオイルOを吸い込み、オイルOを圧送して後述する第2の油路92(
図1参照)を循環させる。
【0070】
液中ガイド62aは、軸方向から見て、カウンタギヤ42の歯先とポンプ96の吸入口96cとの間に配置される。このため、カウンタギヤ42によるオイルOの撹拌が吸入口96cにおけるオイルOの吸い込みに影響を与えることを抑制できる。また、液中ガイド62aは、カウンタギヤ42の回転に伴い発生した気泡が吸入口96cからポンプ96の内部に侵入することを抑制できる。
【0071】
第1の受け板62bは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。第1の受け板62bは、カウンタギヤ42の前後方向の側部を上下方向に延びる。第1の受け板62bは、カウンタギヤ42の歯先に沿って円弧状に湾曲しながら上側に向かうに従いキャッチタンク93に向かって傾斜して延びる。第1の受け板62bは、カウンタギヤ42がオイル溜りPからかき上げたオイルOをキャッチタンク93に向かって誘導する。
【0072】
第1のガイドリブ63は、ガイド部材62の上側に位置する。第1のガイドリブ63は、ハウジング6の第1の側壁61dから軸方向他方側に突出する。第1のガイドリブ63は、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。第1のガイドリブ63には、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOが当たる。第1のガイドリブ63は、軸方向から見て差動装置5に重なる。
【0073】
第1のガイドリブ63は、屈曲部63cと、第2の受け板(直線部)63aと、下側誘導ガイド63bと、を有する。第2の受け板63aおよび下側誘導ガイド63bは、屈曲部63cから互いに異なる方向に向かって直線状に延びる。したがって、第1のガイドリブ63は、軸方向から見て、屈曲部63cで屈曲する。第1のガイドリブ63は、軸方向から見て、屈曲部63cを頂点とするV字状である。屈曲部63cは、前後方向において中間軸J4と差動軸J5との間に配置される。
【0074】
第2の受け板63aは、第1の受け板62bより上側に位置する。第2の受け板63aの下端部は、第1の受け板62bの上端部と上下方向に対向する。第2の受け板63aは、カウンタギヤ42の前後方向の側部を上下方向に延びる。第2の受け板63aは、屈曲部63cから下側に向かうに従い前後方向他方側に傾斜する。第2の受け板63aは、キャッチタンク93に向かって直線的に延びる。また、第2の受け板63aは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。第2の受け板63aは、カウンタギヤ42がオイル溜りPからかき上げたオイルOをキャッチタンク93に向かって誘導する。
【0075】
下側誘導ガイド63bは、前後方向に沿って延びる。下側誘導ガイド63bは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。下側誘導ガイド63bは、前後方向に対して若干傾斜する。下側誘導ガイド63bは、屈曲部63cから前後方向他方側に向かうに従い下側に傾斜する。下側誘導ガイド63bの前後方向他方側の端部は、第1のベアリング保持部66に設けられた開口部66bの縁に繋がる。カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOの一部は、第1のガイドリブ63と第2のガイドリブ64との間を通って下側誘導ガイド63bによって受けられ下側誘導ガイド63bの上面を伝って流れて開口部66bに達する。さらに、このオイルOは、開口部66bを通り第1のベアリング56に供給される。すなわち、下側誘導ガイド63bは、オイルOを第1のベアリング56に誘導する。
【0076】
第2のガイドリブ(分岐ガイド)64は、ガイド部材62の上側に位置する。第2のガイドリブ64は、ハウジング6の第1の側壁61dから軸方向他方側に突出する。第2のガイドリブ64は、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。第2のガイドリブ64には、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOが当たる。
【0077】
第2のガイドリブ64は、下端部64cと、第3の受け板(第1ガイド部、庇部)64aと、上側誘導ガイド(第2ガイド部)64bと、を有する。第3の受け板64aおよび上側誘導ガイド64bは、下端部64cから互いに異なる方向に向かって延びる。したがって、第2のガイドリブ64は、軸方向から見て、下端部64cで屈曲する。第2のガイドリブ64は、軸方向から見て、下端部64cを頂点とするV字状である。下端部64cは、前後方向において中間軸J4と差動軸J5との間に配置される。下端部64cは、は、第2の受け板63aの上端部と隙間を介して上下方向に対向する。
【0078】
第3の受け板64aは、第2の受け板63aより上側に位置する。第3の受け板64aは、下端部64cから上側に向かうに従い前後方向一方側に傾斜する。第3の受け板64aは、上端部がキャッチタンク93の開口の直上に位置する。これにより、第3の受け板64aは、キャッチタンク93の庇部として機能する。第3の受け板64aは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。第3の受け板64aは、カウンタギヤ42がオイル溜りPからかき上げたオイルOを直下に落下させることでキャッチタンク93に誘導する。
【0079】
上側誘導ガイド64bは、下端部64cから上側に向かうに従い前後方向他方側に傾斜する。上側誘導ガイド64bは、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なる。上側誘導ガイド64bの前後方向他方側の端部は、第3のガイドリブ65の上端部と上下方向に対向する。カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOの一部は、第1のガイドリブ63と第2のガイドリブ64との間を通って第3の受け板64aに当たる。第3の受け板64aに当たったオイルOの一部は、下側に落下して下側誘導ガイド63bによって受けられ下側誘導ガイド63bを伝って開口部66bに誘導される。また、第3の受け板64aに当たったオイルOの他の一部は、第3の受け板64aを伝って第3のガイドリブ65を介して開口部66bに達する。
【0080】
本実施形態によれば、第2のガイドリブ64は、第3の受け板64aおよび上側誘導ガイド64bによって、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOを分岐させてそれぞれ異なる方向に誘導する。より具体的には、第3の受け板64aはキャッチタンク93に誘導し、上側誘導ガイド64bは差動装置5に誘導する。これにより、カウンタギヤ42でかき上げたオイルOをモータ2の冷却と差動装置5の潤滑とに用いることができ、オイルOを効率的に利用できる。
【0081】
第3のガイドリブ65は、第1のベアリング保持部66の直上に位置する。第3のガイドリブ65は、ハウジング6の第1の側壁61dから軸方向他方側に突出する。本実施形態において、第3のガイドリブ65は、第1のガイドリブ63および第2のガイドリブ64と比較して、突出高さが低い。
【0082】
第3のガイドリブ65は、差動軸J5の径方向に沿って直線的に延びる。第3のガイドリブ65の上端部は、上側誘導ガイド64bの直下に位置する。また、第3のガイドリブ65の下端部は、開口部66bの縁の直上に位置する。すなわち、第3のガイドリブ65は、上側誘導ガイド64bの直下から開口部66bの縁まで延びる。本実施形態によれば、第3のガイドリブ65は、上側誘導ガイド64bの下面を伝うオイルOを開口部66bに誘導する。これにより、第3のガイドリブ65に当たったオイルOを円滑に第1のベアリング56に供給できる。
【0083】
本実施形態においてハウジング6は、上下方向に沿って連なって並ぶ第1の受け板62b、第2の受け板63aおよび第3の受け板64aを有する。ここで、カウンタギヤ42によってかき上げられたオイルOをキャッチタンク93に導く構造を油滴ガイド60と呼ぶこととする。すなわち、ハウジング6は、油滴ガイド60を有する。また、油滴ガイド60は、第1の受け板62b、第2の受け板63aおよび第3の受け板64aを有する。
【0084】
本実施形態によれば、油滴ガイド60は、軸方向位置がカウンタギヤ42に重なりカウンタギヤ42の前後方向の側部を通り上側に向かうに従いキャッチタンク93に向かって傾斜する。このため、油滴ガイド60は、カウンタギヤ42にかき上げられるオイルOが前後方向他方側に拡散することを抑制でき、オイルOをキャッチタンク93に効率的に導くことができる。
【0085】
本実施形態によれば、油滴ガイド60の第1の受け板62bは、カウンタギヤ42の歯先に沿って円弧状に湾曲して延びる。このため、第1の受け板62bは、カウンタギヤ42からオイルOが径方向外側に飛散することを抑制しカウンタギヤ42から上側に向けてオイルOを飛散されることができ、オイルOをキャッチタンク93に効率的に導くことができる。
【0086】
本実施形態によれば、油滴ガイド60の第2の受け板63aは、第1の受け板62bの上側でキャッチタンク93に向かって直線的に延びる。上述した第1の受け板62bの作用により、カウンタギヤ42にかき上げられたオイルOは、カウンタギヤ42から上側に飛散する。本実施形態によれば、第2の受け板63aは、カウンタギヤ42の直上に位置しキャッチタンク93に向かって直接的に延びる。したがって、第2の受け板63aは、カウンタギヤ42から上側に飛散するオイルOを広範囲に受けてキャッチタンク93に導くことができる。
【0087】
<オイル>
オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤ室82内の下部領域(すなわちオイル溜りP)に溜る。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0088】
図1に示すように、オイルOは、モータユニット1内で、油路90内を循環する。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。
【0089】
なお、本明細書において、「油路」とは、収容空間80を循環するオイルOの経路を意味する。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かう定常的なオイルの流動を形成する「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路(例えばキャッチタンクのようなリザーバとして機能するもの)およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0090】
油路90は、ハウジング6の内部、すなわち収容空間80に位置する。油路90は、収容空間80のモータ室81とギヤ室82とに跨って構成される。油路90は、オイルOをオイル溜りPからモータ2を経て、再びオイル溜りPに導くオイルOの経路である。
油路90は、第1の油路91と第2の油路92とを有する。第1の油路91は、オイル溜りPからカウンタギヤ42にかき上げられることを起点する。第2の油路92は、オイル溜りPからポンプ96により吸い上げられることを起点する。
【0091】
第1の油路91および第2の油路92は、ともにオイル溜りPからオイルOをモータ2に供給して、再びオイル溜りPに回収する経路である。第1の油路91および第2の油路92において、オイルOは、モータ2から滴下して、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁開口61gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。
【0092】
(第1の油路)
第1の油路91において、オイルOは、オイル溜りPからカウンタギヤ42によりかき上げられてキャッチタンク93に導かれる。また、カウンタギヤ42にかき上げられたオイルOの一部は、第1のベアリング56に導かれて第1のベアリング56の潤滑性を高める。カウンタギヤ42にかき上げられたオイルOの他の一部は、ギヤ室82内の各ギヤに上側から降り注ぎ各ギヤの歯面に供給される。
【0093】
キャッチタンク93に溜まったオイルOの一部は、第1のオイル導入路68bを通りシャフト21の内部に供給されるとともに、第3のベアリング13の潤滑性を高める。また、キャッチタンク93に溜まったオイルOの他の一部は、第2のオイル導入路68cを通り第2のベアリング57に供給される。キャッチタンク93に溜まったオイルOの他の一部は、第4のオイル導入路68dを通り第7のベアリング69に供給される。さらに、キャッチタンク93に溜まったオイルOの他の一部は、第3のオイル導入路93dを通り、第4のベアリング14に供給される。
【0094】
シャフト21の中空部22に供給されたオイルOには、ロータ20の回転に伴う遠心力が付与される。オイルOは、ロータ20に設けられた孔から傾向方向外側に連続的に飛散して、ステータ30を冷却する。ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪いつつ下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口61gを介してギヤ室82に移動する。
【0095】
(第2の油路)
第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、が設けられる。第2の油路92においてオイルOは、ポンプ96によって吸い上げられるとともにクーラー97によって冷却され、モータ2の上側からモータ2に供給される。モータ2に供給されたオイルOは、ステータ30の外周面を伝いながら、ステータ30から熱を奪い、モータ2を冷却する。ステータ30の外周面を伝ったオイルOは、下方に滴下してモータ室81内の下部領域に溜る。第2の油路92のオイルOは、第1の油路91のオイルOとモータ室81内の下部領域で合流する。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁開口61gを介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。
【0096】
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ96によるモータ2へのオイルOの供給量は、モータ2の駆動状態に応じて適宜制御される。したがって、長時間の駆動や高い出力が必要な場合などモータ2の温度が高まることで、ポンプ96の駆動出力が高められてモータ2へのオイルOの供給量が増加される。
【0097】
クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。クーラー97の内部には、ラジエータから供給された冷却水が通過する冷却水用配管(図示略)が設けられる。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水との間で熱交換される。
【0098】
以上に、本発明の実施形態および変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0099】
1…モータユニット、2…モータ、4…減速装置、5…差動装置、6…ハウジング、21…シャフト、41…ピニオンギヤ、42…カウンタギヤ、43…ドライブギヤ、51…リングギヤ、55…出力シャフト、56…第1のベアリング、57…第2のベアリング、60…油滴ガイド、61d…第1の側壁、62…ガイド部材、62a…液中ガイド、62b…第1の受け板(湾曲部)、63a…第2の受け板(直線部)、64…第2のガイドリブ(分岐ガイド)、64a…第3の受け板(第1ガイド部、庇部)、64b…上側誘導ガイド(第2ガイド部)、64c…下端部、65…第3のガイドリブ(ガイドリブ)、66…第1のベアリング保持部、66b…開口部、67…第2のベアリング保持部、68…第2の側壁、68b…第1のオイル導入路、68c…第2のオイル導入路、82…ギヤ室、93…キャッチタンク、96…ポンプ、96c…吸入口、J2…モータ軸、J4…中間軸、J5…差動軸、O…オイル