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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231212BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231212BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 23/50 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/52 A
H01L21/52 C
H01L23/50 U
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019175304
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021002637
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019115114
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 賢平
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-005125(JP,A)
【文献】特開2004-047783(JP,A)
【文献】特開2003-017511(JP,A)
【文献】特開平06-069387(JP,A)
【文献】特開2008-181908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/52
H01L21/58
H01L23/50
H01L25/00-25/07
H01L25/10-25/11
H01L25/16-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、
おもて面の接合領域に前記半導体チップが接合されるダイパッドと、
前記半導体チップの裏面と前記接合領域との間に設けられ、前記半導体チップと前記接合領域とを接合するはんだと、
を有し、
前記はんだは、平面視で前記トランジスタ部に重複する第1部分と前記制御回路部のみに重複し、空洞部を含む第2部分とを備える、
半導体装置。
【請求項2】
前記第2部分は、前記接合領域の端辺から内側に、前記接合領域の辺の長さに対して10%入り込んで囲まれる領域内に前記空洞部を含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2部分は、平面視で円形の前記空洞部を前記第2部分の中央部に含む、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダイパッドは、前記接合領域の前記空洞部に対応する箇所に撥水領域が形成されている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記撥水領域における表面粗さは、前記撥水領域以外の前記接合領域の表面粗さよりも粗い、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記撥水領域は、酸化膜が形成されている、
請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記撥水領域は、樹脂が塗布されている、
請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップは、前記裏面の前記空洞部に対応する箇所に撥水領域が形成されている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記撥水領域は、樹脂が塗布されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記ダイパッドの前記接合領域の重心から離間して、前記接合領域の前記第2部分が塗布される領域側に突起部が形成されている、
請求項4乃至9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記突起部は、前記撥水領域の中心から離間して、前記接合領域の前記第2部分が塗布される領域側に形成されている、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ダイパッドは、前記撥水領域を取り囲み、前記ダイパッドの主面からの高さが前記撥水領域より高い土手部が形成されている、
請求項4乃至11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記土手部は樹脂により形成されている、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、前記半導体チップが接合される接合領域がおもて面に設定されたダイパッドとを用意する用意工程と、
前記半導体チップの前記制御回路部の裏面、または、前記ダイパッドの前記接合領域の前記半導体チップの前記制御回路部に対応する領域のいずれかのみに撥水領域を形成する撥水処理工程と、
前記ダイパッドにはんだを介して前記半導体チップを接合する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記撥水処理工程において、前記ダイパッドに対してレーザー加工を行って前記撥水領域を形成する、
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記撥水処理工程において、前記半導体チップの前記制御回路部の裏面に樹脂を塗布して前記撥水領域を形成する、
請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記ダイパッドの前記接合領域の重心から前記接合領域の前記制御回路部に対応する領域側に突起部が形成されている、
請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記撥水処理工程において、前記撥水領域と前記撥水領域を取り囲み、前記ダイパッドからの高さが前記撥水領域より高い土手部とを形成する、
請求項14または16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記撥水領域及び前記土手部は樹脂により形成する、
請求項18に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、
おもて面の接合領域に前記半導体チップが接合されるダイパッドと、
前記半導体チップの裏面と前記接合領域との間に設けられ、前記半導体チップと前記接合領域とを接合するはんだと、
を有し、
前記はんだは、平面視で前記トランジスタ部に重複する第1部分と前記制御回路部に重複し、前記はんだの空隙率が前記第1部分よりも大きい第2部分とを備える、
半導体装置。
【請求項21】
前記第2部分の空隙率は、1%以上、10%未満である、
請求項20に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記第1部分の空隙率は、10%以上、30%以下である、
請求項20または21に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体チップを含んでいる。また、半導体装置の小型化及びインテリジェント化を目的として、インテリジェントパワースイッチ等の半導体装置がある。インテリジェントパワースイッチは、縦型パワー半導体素子を含むトランジスタ部と、この縦型パワー半導体素子の制御・保護用回路を構成する横型半導体素子を含む制御回路部とを設けた半導体チップを搭載したものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような半導体装置では、温度差が大きい温度変化が生じる環境下でも高い信頼性が得られるために、半導体チップとダイパッドとを接合するはんだの強度を高め、半導体チップの剥離等を防ぐ必要がある。このため、はんだ量を増やしてはんだを厚くして、はんだの強度を高め、半導体装置の温度変化に対する信頼性の向上が図られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再公表2015-174197号公報
【文献】特開2002-353378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体装置の小型化並びに半導体チップのサイズの縮小化に伴い、はんだの塗布領域も縮小化が必要となる。しかし、はんだの強度を高めるためにはんだを厚くするとその分はんだの量が増加してしまい、塗布領域も広がり、半導体装置の小型化が進まない。
【0006】
また、はんだを厚くするとその厚さにばらつきが生じやすくなる。これに伴い、はんだに搭載される半導体チップも傾いてしまうおそれがある。傾いた半導体チップに対してボンディングワイヤをボンディングするとボンディングのための超音波が半導体チップに適切に伝わらず、ワイヤを確実に接合することができず、ボンディングワイヤの剥離等が生じやすくなる。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、はんだの厚さの増大を抑制しつつ、信頼性を維持することができる半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、おもて面の接合領域に前記半導体チップが接合されるダイパッドと、前記半導体チップの裏面と前記接合領域との間に設けられ、前記半導体チップと前記接合領域とを接合するはんだと、を有し、前記はんだは、平面視で前記トランジスタ部に重複する第1部分と前記制御回路部のみに重複し、空洞部を含む第2部分とを備える、半導体装置を提供する。
【0009】
本発明の一観点によれば、平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、前記半導体チップが接合される接合領域がおもて面に設定されたダイパッドとを用意する用意工程と、前記半導体チップの前記制御回路部の裏面、または、前記ダイパッドの前記接合領域の前記半導体チップの前記制御回路部に対応する領域のいずれかのみに撥水領域を形成する撥水処理工程と、前記ダイパッドにはんだを介して前記半導体チップを接合する工程と、を有する半導体装置の製造方法を提供する。
【0010】
本発明の一観点によれば、平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部とを含む半導体チップと、おもて面の接合領域に前記半導体チップが接合されるダイパッドと、前記半導体チップの裏面と前記接合領域との間に設けられ、前記半導体チップと前記接合領域とを接合するはんだと、を有し、前記はんだは、平面視で前記トランジスタ部に重複する第1部分と前記制御回路部に重複し、はんだの空隙率が前記第1部分よりも大きい第2部分とを備える、半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の半導体装置及び半導体装置の製造方法は、はんだの厚さの増大を抑制しつつ、信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態の半導体装置の外観を説明するための図である。
図2】第1の実施の形態の半導体装置の透視的平面図である。
図3】第1の実施の形態の半導体装置の側断面図である。
図4】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図6】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるリードフレームのセット工程を説明するための図である。
図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図である。
図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるはんだ塗布工程を説明するための図である。
図9】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる半導体チップセット工程を説明するための図である。
図10】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を説明するための図である。
図11】第1の実施の形態の半導体装置におけるダイパッドに対する撥水領域の形成領域を説明するための図である。
図12】第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図13】第3の実施の形態の半導体装置の透視的平面図である。
図14】第3の実施の形態の半導体装置の側断面図である。
図15】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図(その1)である。
図16】第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図(その2)である。
図17】第4の実施の形態の半導体装置の透視的平面図である。
図18】第4の実施の形態の半導体装置の側断面図である。
図19】第4の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図である。
図20】第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して、第1の実施の形態の半導体装置について、図1図3を用いて説明する。図1は、第1の実施の形態の半導体装置の外観を説明するための図である。図2は、第1の実施の形態の半導体装置の透視的平面図であり、図3は、第1の実施の形態の半導体装置の側断面図である。なお、図2は、図1の半導体装置10の平面図を透視的に示している。また、図3(A)は、図2の一点鎖線X1-X1による断面図、図3(B)は、図2の一点鎖線X2-X2による断面図をそれぞれ表している。
【0014】
また、第1,第2の実施の形態において、おもて面とは、図1の半導体装置10が上側を向いた面であり、例えば、図2のダイパッド20において半導体チップ50が搭載された面がおもて面である。裏面とは、図1の半導体装置10において、下側を向いた面を表す。例えば、図3のダイパッド20において半導体チップ50が搭載された面の反対側の面が裏面である。これらの図以外でもおもて面及び裏面は同様の方向性を意味する。
【0015】
半導体装置10は、ダイパッド20と複数の接続端子30とダイパッド20上にはんだ40を介して配置された半導体チップ50と半導体チップ50及び接続端子30を電気的に接続する複数のボンディングワイヤ60とを備えている。半導体装置10は、これらの部材が封止部材70により略立方体状に封止されて構成されている。半導体装置10は、少なくとも、1つのダイパッド20と1つの半導体チップ50があればよい。このような構成を有する半導体装置10は、封止側面71,72の長さは2.5mm以上、6mm以下、厚さは0.5mm以上、2mm以下である。
【0016】
ダイパッド20は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等の金属により構成されている。また、ダイパッド20のおもて面には、後述するように、半導体チップ50が接合される接合領域21(後述)が設定されている。さらに、この接合領域21には、撥水領域23(図3(B))が形成されている。撥水領域23は、ダイパッド20の接合領域21の中で、撥水領域23以外の領域と比べてはんだ濡れ性が悪い領域である。そのため、ダイパッド20の接合領域21に、後述するようにはんだ40が塗布されると、はんだ溶融した時に撥水領域23でははんだ40を弾き、撥水領域23以外の接合領域21にはんだ40が流れる。このため、ダイパッド20の接合領域21の全面にはんだ40を塗布すると、はんだ40を溶融させた後には撥水領域23以外の領域にははんだ40が存在するものの、撥水領域23上にははんだ40が存在せず、空隙(空洞部43)が生成される。なお、図2では、半導体チップ50の制御回路部52に対向するはんだ40に含まれる空洞部43の位置を破線で示している。
【0017】
ダイパッド20の対向する短辺には、切り落とされたフレーム部(後述)からダイパッド20を支持していた吊りピン部22が構成されている。吊りピン部22は、ダイパッド20の対向するそれぞれの短辺に、2つずつ形成されていてよい。このようなダイパッド20の裏面は、図示は省略するものの、封止部材70の裏面側にあたる封止主面から表出されて、封止主面と同一平面を成している。また、ダイパッド20の吊りピン部22の端面は封止部材70の対向する2つの封止側面72から露出している。
【0018】
接続端子30は、ボンディングワイヤ60が接合される平板状であって、平面視でT字型あるいはI字型を成している(なお、図2では、T字型の場合を示している)。接続端子30は、ダイパッド20を挟んだ両側にそれぞれ4つずつ配列している。なお、接続端子30の個数は一例であって、この場合に限らない。さらに、接続端子30は、図示を省略するものの、その裏面が封止部材70の封止主面から表出し、封止主面及びダイパッド20の裏面と同一平面を成している。このような接続端子30は、導電性に優れた銅あるいは銅合金等の金属により構成されている。そして、耐食性を向上させるために、例えば、すず、銀、すず合金または銀合金により構成される材料をめっき膜とするめっき処理等により表面に形成されている。
【0019】
はんだ40は、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする鉛フリーはんだにより構成される。さらに、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコン等の添加物が含まれてもよい。また、はんだ40は、後の図8に示されるように、第1部分41と第2部分42とを含んでいる。
【0020】
半導体チップ50は、例えば、シリコンまたは炭化シリコンから構成された、IGBT、パワーMOSFET等のスイッチング素子を含むトランジスタ部51を含んでいる。このような半導体チップ50は、例えば、裏面に主電極として入力電極(ドレイン電極またはコレクタ電極)を、おもて面に、制御電極(ゲート電極)及び主電極として出力電極(ソース電極またはエミッタ電極)をそれぞれ備えている。半導体チップ50は、さらに、このようなスイッチング素子をそれぞれ制御するための制御回路を含む制御回路部52を含んでいる。半導体チップ50は、例えば、図2に示されるように、平面視で一端部にトランジスタ部51が、残りの部分に制御回路部52がそれぞれ構成されている。また、このような半導体チップ50の長辺は、1.5cm以上、4cm以下、短辺は、1cm以上、3.2cm以下である。
【0021】
上記の半導体チップ50は、その裏面側がダイパッド20上にはんだ40により接合されている。この際、はんだ40は、平面視で半導体チップ50のトランジスタ部51に重複する第1部分41(図3(A))と、半導体チップ50の制御回路部52に重複し、空洞部43を含む第2部分42(図3(B))とを備える。また、このようにして半導体チップ50とダイパッド20とを接合するはんだ40の厚さは、10μm以上、100μm以下である。さらに、好ましくは、20μm以上、100μm以下である。この範囲より薄すぎても、厚すぎてもはんだ40の強度が低下し、半導体チップ50の剥離が生じやすくなる。
【0022】
ボンディングワイヤ60は、導電性に優れたアルミニウム、銅等の金属、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。なお、半導体装置10のボンディングワイヤ60では、銅または銅合金により構成されている。また、この径は、100μm以上、1mm以下であることが好ましい。また、ボンディングワイヤ60に替えて、板状のリードフレームまたは薄帯状のリボン等の接続部材を用いてもよい。封止部材70は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0023】
次に、このような半導体装置10の製造方法について、図4図10並びに図1図3を用いて説明する。図4は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートであり、図5は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。図6は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるリードフレームのセット工程を説明するための図であり、図7は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図である。図8は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれるはんだ塗布工程を説明するための図であり、図9は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる半導体チップセット工程を説明するための図である。図10は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる封止工程を説明するための図である。図5は、図7及び図9の一点鎖線X-Xによる断面図をそれぞれ表している。図6図10は、平面の要部をそれぞれ表している。
【0024】
[ステップS1] ダイパッド20及び接続端子30を含むリードフレーム(後述)、半導体チップ50、封止部材70等を予め用意する。半導体チップ50及び封止部材70については既述のものを用意する。リードフレームは、例えば、銅または銅合金により構成される。
【0025】
[ステップS2] リードフレームを所定位置にセットする。例えば、図6に示すリードフレーム80は、ダイパッド20が吊りピン部22を介して接続された一対のフレーム部81と、一対のフレーム部81を接続すると共に、複数の接続端子30が接続されているタイバー82とを有している。このようにリードフレーム80は、ダイパッド20と複数の接続端子30とが一体となっている。このようなリードフレーム80は、所定の金型で金属板を打ち抜くことで形成することができる。
【0026】
[ステップS3] リードフレーム80に含まれるダイパッド20の接合領域21に、例えば、図7に示されるように、撥水処理を行って撥水領域23を形成する。撥水領域23は、後に接合領域21に半導体チップ50を接合させた際の制御回路部52に対応する領域に形成される。また、ダイパッド20の撥水領域23の表面粗さは、他の接合領域21の表面粗さよりも粗く構成されてもよい。このような撥水領域23は、例えば、図5(A)に示されるように当該領域にレーザー加工により形成される。レーザー加工により、表面粗さを粗くすることができる。または、大気中あるいは酸素中でレーザー加工することにより、当該領域に酸化膜を形成してもよい。または、ポリイミド等の樹脂を塗布してもよい。
【0027】
[ステップS4] リードフレーム80に含まれるダイパッド20の撥水領域23を含む接合領域21の全面に、図8に示されるように、はんだ40を塗布する。この際のはんだ40は、後に半導体チップ50を接合した際にトランジスタ部51と重複する第1部分41と、同様に制御回路部52と重複する第2部分42とに便宜的に分けられる。なお、図8には、第2部分42に撥水領域23に対応する箇所を破線で示している。
【0028】
[ステップS5] リードフレーム80に含まれるダイパッド20上に塗布されたはんだ40上に半導体チップ50を位置合わせし(図5(B))、加熱しながら半導体チップ50をはんだ40に接合してダイパッド20側に押圧してセットする。はんだ40(第1部分41)により半導体チップ50のトランジスタ部51はダイパッド20に接合する。一方、はんだ40(第2部分42)は、ダイパッド20の接合領域21の撥水領域23を十分に濡らすことができず、また、撥水領域23以外の接合領域21は十分に濡らすことができる。このため、はんだ40(第2部分42)は、図5(C)に示されるように、撥水領域23に対向する箇所には空洞部43を含んで、半導体チップ50の制御回路部52とダイパッド20とを接合する。この際のはんだ40の厚さは、10μm以上、100μm以下である。なお、図9には、半導体チップ50の制御回路部52に空洞部43に対応する箇所を破線で示している。
【0029】
仮に、半導体チップ50とダイパッド20とを接合するはんだ40の第2部分42が空洞部43を含んでいない場合には、熱サイクルにより、はんだ40に熱応力が発生してはんだ40の角部にクラックが発生してしまう。これにより、半導体装置10の信頼性の低下を招いてしまう。はんだ40の角部のクラックの発生を抑制するためにはんだ40を厚くすることが考えられる。はんだ40を厚くすると、はんだ40に対するクラックの発生は抑制されるものの、既述の通り、はんだ40の厚さが不均一になってはんだ40に配置される半導体チップ50が傾くおそれがあり、また、はんだ量の増加に伴い小型化が難しくなる。
【0030】
一方、第1の実施の形態のように半導体チップ50とダイパッド20とを接合するはんだ40の第2部分42が空洞部43を含むことで、はんだ40の角部のクラックの発生を抑制することができる。空洞部43を含まないはんだ40の対角線の長さに比べて、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さ(図9中の破線矢印)は短くなる。このため、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生が防止される。したがって、このようなはんだ40は厚さを薄くすることができ、半導体装置10の小型化を図ることができる。また、はんだ40の厚さのばらつきも抑えることができるため、はんだ40上に接合される半導体チップ50の傾きも抑制される。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。また、半導体チップ50では、トランジスタ部51の方が制御回路部52よりも発熱量が大きい。特に近年はトランジスタ部51で炭化シリコンが適用される場合が増えている。炭化シリコンが用いられた半導体素子は、シリコンが用いられた場合に比べて多くの電流を流すために発熱量も増加する。このため、半導体チップ50のトランジスタ部51は高い放熱性が求められ、はんだ40の第1部分41に空洞部43を含ませることは好ましくない。このため、空洞部43は、はんだ40の第1部分41ではなく、第2部分42内に含ませることが望まれる。
【0031】
なお、はんだ40の第2部分42に含まれる空洞部43は、実際は、はんだ40が全く含まれていないということではなく、他のはんだ40の部分よりも空隙率が高い領域が一定の範囲を占めている。空隙率とは、はんだ40内の空隙(ボイド)の総体積をはんだ40の体積で割ったものである。はんだ40の第2部分42の空隙率は、10%以上、30%以下である。空隙率がこの範囲よりも小さい場合には、応力緩和の効果が得られない。また、空隙率がこの範囲よりも大きい場合には、はんだ40の残存領域が少なくなりすぎてクラックが発生し易くなる。一般的に、塗布されて固化したはんだ40には自然発生的に発生したボイドが含まれる。但し、はんだ40の第1部分41の空隙率は、第2部分の空隙率よりも十分低く、1%以上、10%未満である。
【0032】
[ステップS6] リードフレーム80のダイパッド20にはんだ40により接合された半導体チップ50とタイバー82とをボンディングワイヤ60で電気的に接続する(図示を省略)。リードフレーム80のダイパッド20に配置された半導体チップ50と接続端子30とボンディングワイヤ60とを、図10に示されるように、封止部材70を用いて所定の金型中で成形し、封止部材70で封止する。
【0033】
[ステップS7] リードフレーム80のフレーム部81及びタイバー82から封止部材70で封止したダイパッド20及び接続端子30を分離する。この分離には、例えば、タイバー82及び吊りピン部22を金型で打ち抜き、あるいは、ダイシングブレードによるダイシングが行われる。以上の工程により、図1図3に示される半導体装置10が得られる。
【0034】
上記半導体装置10は、平面視で一端部に構成されるトランジスタを備えるトランジスタ部51と残りの部分に構成される制御回路を備える制御回路部52とを含む半導体チップ50と、おもて面の接合領域21に半導体チップ50が接合されるダイパッド20と、を有している。さらに、半導体チップ50の裏面と接合領域21との間に設けられ、半導体チップ50と接合領域21とを接合するはんだ40を有している。この際、はんだ40は、平面視でトランジスタ部51に重複する第1部分41と制御回路部52に重複し、空洞部43を含む第2部分42とを備える。または、はんだ40は、平面視でトランジスタ部51に重複する第1部分41と制御回路部52に重複し、はんだ40の空隙率が第1部分41よりも大きい第2部分42とを備える。このような半導体装置10は、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生が防止される。このため、はんだ40の厚さを薄くすることができ、半導体装置10の小型化を図ることができる。また、はんだ40の厚さのばらつきも抑えることができるため、はんだ40上に接合される半導体チップ50の傾きも抑制される。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。
【0035】
次に、はんだ40の第2部分42に含まれる空洞部43を生成するにあたり、ダイパッド20に対する撥水領域23の形成範囲について図11を用いて説明する。図11は、第1の実施の形態の半導体装置におけるダイパッドに対する撥水領域の形成領域を説明するための図である。なお、図11に示す半導体装置10は、図2に対応するものであり、図2において半導体チップ50を除いた場合を示している。
【0036】
既述の通り、半導体装置10は、はんだ40の第2部分42に空洞部43を含むことで、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さ(図9中の破線矢印)が短くなり、はんだ40の角部に対するクラックの発生を抑制している。このため、ダイパッド20に形成する撥水領域23をはんだ40の第2部分42に対応する領域内で最大にすることが求められる。一方で、撥水領域23を広くし過ぎると、半導体チップ50の制御回路部52の放熱性が低下し過ぎてしまう。そこで、図11に示されるように、ダイパッド20の接合領域21の端辺から内側に、接合領域21の辺の長さに対して10%入り込んで囲まれる最大領域23a内に撥水領域23を形成し、最大領域23aと同様の広さの撥水領域23を形成する必要がある。なお、撥水領域23の平面視の形状は、第1の実施の形態の円形に限らず、矩形、楕円形等、どのような形状であってもよい。
【0037】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、撥水領域を半導体チップ50側に形成して、はんだ40に空洞部43を含ませるようにする場合について図12(並びに図4)を用いて説明する。図12は、第2の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。この場合でも、図4に示した製造方法と同様にステップS1,S2が実施される。ステップS3の撥水処理工程において、半導体チップ50の制御回路部52の裏面に撥水領域53を形成する。このような撥水領域53は、当該領域にポリイミド等の樹脂を塗布してもよい。または、酸化膜を形成してもよい。あるいは、アルミニウムまたはニッケルを含むめっき膜を形成してもよい。そして、ステップS4によりダイパッド20の接合領域21にはんだ40を塗布する。
【0038】
そして、ステップS5の半導体チップ50のセット工程が行われる。すなわち、リードフレーム80に含まれるダイパッド20上に塗布されたはんだ40上にこのように撥水領域53が形成された半導体チップ50を位置合わせし(図12(A))、加熱しながら半導体チップ50をはんだ40に接合してダイパッド20側に押圧してセットする。はんだ40(第1部分41)により半導体チップ50のトランジスタ部51はダイパッド20に接合する。一方、はんだ40(第2部分42)は、半導体チップ50の撥水領域53を十分に濡らすことができず、撥水領域53以外は十分に濡らすことができる。このため、はんだ40(第2部分42)は、図12(B)に示されるように、撥水領域53に対向する箇所には空洞部43を含んで、半導体チップ50の制御回路部52とダイパッド20とを接合する。この際のはんだ40の厚さは、第1の実施の形態と同様に、10μm以上、100μm以下である。この後は図4のステップS6,S7と同様の工程を行うことで、半導体装置10が得られる。
【0039】
このようにして得られた半導体装置10も、第1の実施の形態と同様に、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生が防止される。このため、はんだ40の厚さを薄くすることができ、半導体装置10の小型化を図ることができる。また、はんだ40の厚さのばらつきも抑えることができるため、はんだ40上に接合される半導体チップ50の傾きも抑制される。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。
【0040】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、第1の実施の形態の半導体装置10において、ダイパッド20に撥水領域23と共に、突起部を形成する場合について図13及び図14を用いて説明する。図13は、第3の実施の形態の半導体装置の透視的平面図であり、図14は、第3の実施の形態の半導体装置の側断面図である。なお、図13は、半導体装置10の平面図を透視的に示している。また、図14は、図13の一点鎖線X-Xによる断面図を表している。第3の実施の形態では、第1の実施の形態の半導体装置10と同じ構成には同じ符号を付しており、それらの説明については省略する。
【0041】
半導体装置10は、図13及び図14に示されるように、ダイパッド20と複数の接続端子30とダイパッド20上にはんだ40を介して配置された半導体チップ50と半導体チップ50及び接続端子30を電気的に接続するボンディングワイヤ60とを備えている。半導体装置10は、これらの部材が封止部材70により略立方体状に封止されて構成されている(図1参照)。
【0042】
ダイパッド20は、既述の通り、半導体チップ50が接合される接合領域21(後述する図15参照)の半導体チップ50の制御回路部52に対向する領域内に撥水領域23が形成されている。さらに、第3の実施の形態のダイパッド20の接合領域21に突起部24が形成されている。この突起部24により、半導体チップ50とダイパッド20との間隙が一定に維持されている。なお、図13及び図14に示す突起部24は、円柱状を成している場合を示している。
【0043】
第1の実施の形態では、ダイパッド20の接合領域21の半導体チップ50の制御回路部52に対応する領域内に撥水領域23を形成している。これにより、ダイパッド20の接合領域21に塗布されるはんだ40は撥水領域23上に空洞部43を含むようになる。この結果、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さが短くなり、はんだ40の角部に対するクラックの発生を抑制することができる。この撥水領域23は、図11に示したようにダイパッド20の最大領域23a内に形成される。この際、このダイパッド20上にはんだ40を塗布して半導体チップ50を配置すると、半導体チップ50は、はんだ40の空洞部43が含まれる側が傾いてしまい、はんだ40の厚さにばらつきが生じてしまう。撥水領域23の中心点がダイパッド20の重心からずれて形成され、さらに、撥水領域23の面積が比較的広めに形成された場合、撥水領域23に対応してはんだ40内に含まれる空洞部43によりはんだ40内に体積が少ない領域が生じる。このようなはんだ40上に半導体チップ50が配置されると、はんだ40の空洞部43側は半導体チップ50を支持することができず、半導体チップ50は傾いてしまう。このようにして、はんだ40の厚さにばらつきが生じると、半導体チップ50に対する放熱性にもばらつきが生じてしまい、半導体チップ50に不具合が生じてしまう場合がある。
【0044】
そこで、第3の実施の形態では、上記のように、ダイパッド20の半導体チップ50が傾いてしまう側に突起部24を設けた。これにより、撥水領域23に対応する箇所に空洞部43を含むはんだ40上の半導体チップ50が突起部24により支持されて半導体チップ50の傾きが防止される。このため、はんだ40の厚さも略均一に維持されて、半導体チップ50に対する放熱性のばらつきを抑制し、半導体装置10の信頼性の低下を防止することができる。このため、突起部24は円柱状に限らず、半導体チップ50とダイパッド20との間隙を一定に維持することができる形状であることを要する。このような形状として、例えば、凸状、角柱状、半楕円状、棒状等である。また、複数の突起部24を点在させて配置させてもよく、また、平面視で矩形状の突起部24を適宜配置してもよい。突起部24の高さは、半導体チップ50とダイパッド20との間隙が所望の間隔となるように、10μm以上、100μm以下であることが好ましい。また、突起部24の個数及び形成位置は一例であり、はんだ40上に配置される半導体チップ50を確実に支持して傾くことを抑制することができる箇所に形成される個数及び形成位置であればよい。
【0045】
次に、このような突起部24が形成されたダイパッド20を含む半導体装置10の製造方法について、図15及び図16並びに図4図10を用いて説明する。図15及び図16は、第3の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図である。なお、図16(A)は、図15の一点鎖線X-Xにおける断面図である。図16(B)は、撥水領域23及び突起部24が形成されたダイパッド20の平面図である。図16(B)では、ダイパッド20の短手方向に平行であって長辺の中心を通る中心線C1と長手方向に平行であって短辺の中心を通る中心線C2とを示している。また、中心線C1,C2の交点はダイパッド20の重心Gである。
【0046】
第3の実施の形態の半導体装置10についても、図4に示したフローチャートに従って製造される。この場合でも、図4に示した製造方法と同様にステップS1,S2が実施される。ステップS3の撥水処理工程において、リードフレーム80に含まれるダイパッド20の接合領域21に、撥水処理を行って撥水領域23を形成する。そして、ダイパッド20の所定箇所に対してプレス加工を行って、図15及び図16(A)に示されるように、ダイパッド20のおもて面に突起部24を形成する。なお、突起部24は、ステップS2においてリードフレーム80の形成時に形成してもよい。また、突起部24は、ダイパッド20に対するプレス加工を行って形成する場合に限らず、樹脂を塗布して形成してもよい。なお、このような樹脂は、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、このような突起部24は、後にはんだ40上に配置される半導体チップ50を確実に支持することができる箇所に形成されることを要する。このため、突起部24は、図16(B)に示すダイパッド20の制御回路部52に対応する領域内に形成される。
【0047】
また、撥水領域23の面積がダイパッド20のおもて面の面積の10%以上、30%以下を占め、撥水領域23の中心Pがダイパッド20の重心Gから位置ずれしている場合、突起部24は、中心線C1(重心G)よりも図16中下側の制御回路部52に対応する領域内に形成されることが好ましい。突起部24は、より確実に半導体チップ50を支持するためには、撥水領域23の中心Pから制御回路部52に対応する領域内に形成されることが好ましい。さらに、突起部24は、重心Gから最も離れた図16中下側の辺近傍に形成されることがより好ましい。このステップS3以降は、図4に示したフローチャートのステップS4~S7の工程が行われることで、図13及び図14に示す半導体装置10が製造される。
【0048】
このようにして得られた半導体装置10も、第1,第2の実施の形態と同様に、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生が防止される。また、突起部24により、半導体チップ50とダイパッド20との間隙を一定に保つことができる。このため、はんだ40の厚さを薄く、略均一にすることができ、半導体装置10の小型化を図ることができる。また、はんだ40の厚さのばらつきもより確実に抑えることができるため、はんだ40上に接合される半導体チップ50の傾きも抑制される。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となり、半導体チップ50に対する放熱性の低下を抑制することができる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。
【0049】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、第3の実施の形態の半導体装置10の変形例について図17及び図18を用いて説明する。図17は、第4の実施の形態の半導体装置の透視的平面図であり、図18は、第4の実施の形態の半導体装置の側断面図である。なお、第4の実施の形態でも、第3の実施の形態の半導体装置10と同じ構成には同じ符号を付しており、それらの説明については省略する。
【0050】
半導体装置10は、図17及び図18に示されるように、ダイパッド20と複数の接続端子30とダイパッド20上にはんだ40を介して配置された半導体チップ50と半導体チップ50及び接続端子30を電気的に接続するボンディングワイヤ60とを備えている。半導体装置10は、これらの部材が封止部材70により略立方体状に封止されて構成されている。
【0051】
ダイパッド20は、第3の実施の形態と同様に、半導体チップ50が接合される接合領域21(後述する図19参照)の半導体チップ50の制御回路部52に対向する領域内に撥水領域63及び突起部24が形成されている。この突起部24により、半導体チップ50とダイパッド20との間隙が一定に維持されている。なお、図17及び図18に示す突起部24は、円柱状を成している場合を示している。さらに、第4の実施の形態のダイパッド20は、撥水領域63の周囲を取り囲んで土手部25が形成されている。この際、土手部25の(ダイパッド20の主面からの)高さは、撥水領域63の主面よりも高位である。撥水領域63及び土手部25は、一体的に、樹脂により構成されている。なお、この樹脂は、マレイミド変性エポキシ樹脂、マレイミド変性フェノール樹脂、マレイミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。このようなダイパッド20では、撥水領域63と土手部25と半導体チップ50の裏面とで囲まれる空洞部43が構成される。
【0052】
第1~第3の実施の形態では、ダイパッド20の接合領域21の半導体チップ50の制御回路部52に対応する領域に撥水領域23を形成している。これにより、ダイパッド20に塗布されたはんだ40を撥水領域23で撥水させて、撥水領域23に対応するはんだ40の箇所に空洞部43を含ませている。しかしながら、撥水領域23ではんだ40を確実に撥水させることが難しく、ある程度の量のはんだ40が撥水領域23上に残る。すなわち、撥水領域23に対応するはんだ40の箇所がはんだ40の他の箇所よりもはんだ40の密度が低くなっている。特に、撥水領域23の縁部にはんだ40が付着しやすい。すなわち、空洞部43を確実に構成することができず、また、撥水領域23の面積が実質的に小さくなってしまう場合がある。これに伴い、空洞部43も小さくなってしまい、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さが実際の空洞部43よりも長くなる。したがって、はんだ40の角部のクラックの発生を確実に抑制することができなくなる場合がある。
【0053】
そこで、第4の実施の形態では、ダイパッド20の撥水領域63の周囲を取り囲む土手部25が形成されている。これにより、はんだ40は、撥水領域63に対応する箇所に確実に空洞部43を含むようになり、撥水領域63の面積に対応する空洞部43を維持することができる。したがって、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さを維持することができ、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生をより確実に防止することができる。
【0054】
次に、このような土手部25が形成されたダイパッド20を含む半導体装置10の製造方法について、図19並びに図4図10を用いて説明する。図19は、第4の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる撥水処理工程を説明するための図である。
【0055】
第4の実施の形態の半導体装置10についても、図4に示したフローチャートに従って製造される。この場合でも、図4に示した製造方法と同様にステップS1,S2が実施される。ステップS3の撥水処理工程において、リードフレーム80に含まれるダイパッド20の接合領域21に、樹脂を塗布して撥水領域63及び土手部25を形成する。この際、ダイパッド20のおもて面の所定の領域に塗布した樹脂から撥水領域63と当該撥水領域63の周囲を取り囲む土手部25とを形成する(図18参照)。なお、第1の実施の形態でダイパッド20にレーザーにより形成された撥水領域23に対して、当該撥水領域23を取り囲むように樹脂により土手部25を形成してもよい。撥水領域63及び土手部25の形成後、ダイパッド20に対してプレス加工を行って、図19に示されるように、ダイパッド20のおもて面に突起部24を形成する。なお、突起部24については、第3の実施の形態と同様にして形成される。また、突起部24は、ステップS2においてリードフレーム80の形成時に形成してもよい。このステップS3以降は、図4に示したフローチャートのステップS4~S7の工程が行われることで、図17及び図18に示す半導体装置10が製造される。
【0056】
このようにして得られた半導体装置10は、ダイパッド20上に撥水領域63と当該撥水領域63の周囲を取り囲む土手部25とを形成している。このため、はんだ40は、撥水領域63に対応する箇所に確実に空洞部43を含むようになり、撥水領域63の面積に対応する空洞部43を維持することができる。したがって、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さを維持することができ、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生をより確実に防止することができる。さらに、半導体装置10は、ダイパッド20に突起部24が形成されているため、第3の実施の形態と同様に、半導体チップ50とダイパッド20との間隙を一定に薄く保つことができる。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。
【0057】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態では、撥水領域63及び土手部25並びに突起部24を半導体チップ50側に形成して、はんだ40に空洞部43を含ませるようにする場合について図20(並びに図4)を用いて説明する。図20は、第5の実施の形態の半導体装置の製造方法を説明するための図である。この場合でも、図4に示した製造方法と同様にステップS1,S2が実施される。ステップS3の撥水処理工程において、半導体チップ50の制御回路部52の裏面に樹脂を塗布して撥水領域63及び土手部25を形成する。なお、図20には図示を省略しているものの、ダイパッド20に、突起部24を形成する。なお、突起部24については、第3の実施の形態と同様にして形成される。また、突起部24は、ステップS2においてリードフレーム80の形成時に形成してもよい。そして、ステップS4によりダイパッド20の接合領域21にはんだ40を塗布する。
【0058】
そして、ステップS5の半導体チップ50のセット工程が行われる。すなわち、リードフレーム80に含まれるダイパッド20上に塗布されたはんだ40上にこのように撥水領域63及び土手部25が形成された半導体チップ50を位置合わせし(図20(A))、加熱しながら半導体チップ50をはんだ40に接合してダイパッド20側に押圧してセットする。はんだ40(第1部分41)により半導体チップ50のトランジスタ部51はダイパッド20に接合する。一方、はんだ40(第2部分42)は、半導体チップ50の撥水領域63及び土手部25を十分に濡らすことができず、撥水領域63及び土手部25以外は十分に濡らすことができる。このため、はんだ40(第2部分42)は、図20(B)に示されるように、撥水領域63及び土手部25に対向する箇所には空洞部43を含んで、半導体チップ50の制御回路部52とダイパッド20とを接合する。この際のはんだ40の厚さは、第1の実施の形態と同様に、50μm以上、100μm以下である。これ以降は、図4に示したステップS6,S7と同様の工程を行うことで、半導体装置10が得られる。
【0059】
このようにして得られた半導体装置10も、第4の実施の形態と同様に、ダイパッド20上に撥水領域63と当該撥水領域63の周囲を取り囲む土手部25とを形成している。このため、はんだ40は、撥水領域63に対応する箇所に確実に空洞部43を含むようになり、撥水領域63の面積に対応する空洞部43を維持することができる。したがって、空洞部43の縁部からはんだ40の角部までの長さを維持することができ、熱サイクルによるはんだ40に対して生じる熱応力を低減でき、はんだ40の角部のクラックの発生をより確実に防止することができる。さらに、半導体装置10は、ダイパッド20に突起部24が形成されているため、第4の実施の形態と同様に、半導体チップ50とダイパッド20との間隙を一定に薄く保つことができる。このため、半導体チップ50に対するワイヤボンディングを適切に行うことが可能となる。したがって、半導体装置10の信頼性が維持されるようになる。
【符号の説明】
【0060】
10 半導体装置
20 ダイパッド
21 接合領域
22 吊りピン部
23,53,63 撥水領域
23a 最大領域
24 突起部
25 土手部
30 接続端子
40 はんだ
41 第1部分
42 第2部分
43 空洞部
50 半導体チップ
51 トランジスタ部
52 制御回路部
60 ボンディングワイヤ
70 封止部材
71,72 封止側面
80 リードフレーム
81 フレーム部
82 タイバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20