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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 305
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019178211
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053881
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥井 宏明
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-326503(JP,A)
【文献】特開2016-155283(JP,A)
【文献】特開2012-106342(JP,A)
【文献】特開2019-073033(JP,A)
【文献】特開2019-130821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0228011(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
第1圧電体と、
前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、
前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、
前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、
前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、
液体を収容し、前記第1圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第1圧力室と、液体を収容し、前記第2圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第2圧力室と、が設けられた圧力室基板と、を有し、
前記第1電極、前記第1圧電体、および前記第3電極は、前記第1圧力室からみたとき、前記第1圧力室に近い方から前記第1電極、前記第1圧電体、前記第3電極の順に設けられており、
前記第2電極、前記第2圧電体、および前記第3電極は、前記第2圧力室からみたとき、前記第2圧力室に近い方から前記第2電極、前記第2圧電体、前記第3電極の順に設けられており、
前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、
前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、
前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅であり、
前記第3電極のうち、前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間であって、前記第3部分よりも前記第1方向において前記第1圧電体側に配されている第4部分において、前記第2方向における幅は、前記第3幅よりも大きい第4幅であり、
前記第3電極のうち、前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間であって、前記第3部分よりも前記第1方向において前記第2圧電体側に配されている第5部分において、前記第2方向における幅は、前記第3幅よりも大きい第5幅である、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第3電極は、前記第1圧電体を覆い、かつ、前記第2圧電体を覆っている、液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1から2のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第3電極は、単一の部材によって構成されている、液体吐出ヘッド。
【請求項4】
液体吐出装置であって、
液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
第1圧電体と、
前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、
前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、
前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、
前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、を有し、
前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、
前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、
前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅である、液体吐出ヘッドと、
前記第1電極に対して、液体の吐出量に応じて異なる駆動信号を供給することができ、前記第2電極に対して、液体の吐出量に応じて異なる駆動信号を供給することができる、駆動信号供給回路と、
前記第3電極に対し、液体の吐出量によらず電圧が変化しない保持信号を供給する保持信号供給回路と、を有し、
前記駆動信号供給回路は、前記第1電極および前記第2電極に対して、前記第2方向における一方の側から接続されており、
前記保持信号供給回路は、前記第3電極に対して、前記第2方向における他方の側から接続されている、液体吐出装置
【請求項5】
請求項4記載の液体吐出装置であって、
前記第3電極の前記第3部分における前記一方の側の端部は、
前記第1部分における前記一方の側の端部よりも前記他方の側にあり、
前記第2部分における前記一方の側の端部よりも前記他方の側にある、液体吐出装置
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第3幅は、前記第1幅の1/2より小さく、かつ、前記第2幅の1/2より小さい、液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第1部分の前記第2方向についての抵抗値が、前記第1圧電体の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上であり、
前記第2部分の前記第2方向についての抵抗値が、前記第2圧電体の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上である、液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から3、ならびに請求項6および7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第1圧電体および前記第2圧電体は、前記第1圧電体の歪みおよび前記第2圧電体の歪みによって変形される一つの振動板の上に設けられており、
前記第3電極は、前記第1圧電体および前記第2圧電体、ならびに前記第1圧電体および前記第2圧電体が設けられている前記振動板の面の一部を覆っており、
前記液体吐出ヘッドは、前記第3電極を貫通して前記振動板に至る凹部を備えており、
前記振動板のうち前記凹部が設けられている部位の厚みは、前記振動板のうち前記凹部が設けられていない部位の厚みの1/2以上である、液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項記載の液体吐出ヘッドであって、さらに、
液体を収容し、前記第1圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第1圧力室と、液体を収容し、前記第2圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第2圧力室と、が設けられた圧力室基板を備え、
前記第3部分において、前記第1方向における幅は、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを区画する構造の前記第1方向における幅よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
第1圧電体と、
前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、
前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、
前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、
前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、を有し、
前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、
前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、
前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅であり、
前記第1圧電体および前記第2圧電体は、前記第1圧電体の歪みおよび前記第2圧電体の歪みによって変形される一つの振動板の上に設けられており、
前記第3電極は、前記第1圧電体および前記第2圧電体、ならびに前記第1圧電体および前記第2圧電体が設けられている前記振動板の面の一部を覆っており、
前記液体吐出ヘッドは、前記第3電極を貫通して前記振動板に至る凹部を備えており、
前記振動板のうち前記凹部が設けられている部位の厚みは、前記振動板のうち前記凹部が設けられていない部位の厚みの1/2以上である、液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、
第1圧電体と、
前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、
前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、
前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、
前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、
液体を収容し、前記第1圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第1圧力室と、液体を収容し、前記第2圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第2圧力室と、が設けられた圧力室基板と、を有し、
前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、
前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、
前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅であり、
前記第3部分において、前記第1方向における幅は、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを区画する構造の前記第1方向における幅よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1から3、ならびに請求項6から11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドからの吐出動作を制御する制御部と、を有する、液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルプレートと圧力室と振動板と圧電素子本体とを備える記録ヘッドが存在する(特許文献1)。圧電素子本体が撓み変形すると、振動板が変位し、圧力室内に圧力変動が生じる。その結果、ノズルプレートに設けられたノズルからインクが噴射される。記録ヘッドは、ノズルと、ノズルに対応する圧力室と、の複数の組み合わせを有する。記録ヘッドのノズルプレートにおいて、複数のノズルは直線状に並んで配されている。圧力室は、ノズルが並ぶ方向に対して垂直な方向に細長い形状を有する。
【0003】
圧電素子本体は、下電極層、圧電体層および上電極層を備える。下電極層は、圧力室ごとに独立して設けられている。下電極層は、圧力室の長手方向に沿って細長い形状を有する。下電極層の幅は、圧力室の幅よりも狭い。上電極層は、複数の圧力室にわたって連続して設けられている。上電極層は、複数の圧力室に共通な共通電極として機能する。下電極層と上電極層に電圧が印加されると、下電極層と上電極層の間に位置する圧電体層において歪みが生じる。その結果、圧電素子本体が撓み変形し、圧力室内のインクがノズルから吐出される。複数の下電極層への電圧の印加が選択的に行われることにより、複数の圧力室から対応するノズルを経て、選択的にインクが吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-58467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の記録ヘッドにおいては、一列に並んだ複数のノズルのうち、一つのノズルからインクを吐出する場合には、複数の下電極層のうち、インクを吐出するノズルの圧力室に対応する一つの下電極層のみがONされる。そして、ONされた下電極層と、複数の圧力室にわたって連続して設けられている上電極層との間の電位差により、それらの電極の間に位置する圧電体層において歪みが生じる。この場合、上電極層のうちのONされた下電極層と向かい合う部分において、複数の圧力室にわたって連続して設けられている上電極層全体を通じて、ONされた下電極層とは異なる電位が与えられる。このため、下電極層の長手方向に沿った位置ごとの両電極間の電位差の違いは小さい。
【0006】
一方、一列に並んだ複数のノズルのすべてからインクを吐出する場合には、複数の下電極層のすべてがONされる。そして、ONされた下電極層と、複数の圧力室にわたって連続して設けられている上電極層との間の電位差により、それらの電極の間に位置する圧電体層において歪みが生じる。この場合、上電極層においては、実質的に、それぞれの下電極層と向かい合う細長い部分ごとに、両端から電位が付与されることとなる。このため、上電極層の細長い一つの部分において、下電極層の長手方向の端近傍の部位と、中央近傍の部位とでは、上電極層自身の抵抗に起因して、電位が異なってしまう。その結果、下電極層の長手方向に沿った位置ごとの両電極間の電位差の違いが大きくなる。
【0007】
以上のような理由から、上記の記録ヘッドにおいては、複数のノズルのうち、一つのノズルからインクを吐出する場合と、複数のノズルのすべてからインクを吐出する場合とでは、一つの圧力室の長手方向に沿った位置ごとの二つの電極間の電位差が、異なってしまう。その結果、複数のノズルのうち、一つのノズルからインクを吐出する場合と、その一つのノズルを含むすべてのノズルからインクを吐出する場合とでは、その一つのノズルから吐出されるインクの量およびインク滴の形状が異なってしまうおそれがある。以上では極端な場合を例に説明したが、同様の問題は、インク滴を吐出するノズルの数、およびインク滴を吐出するノズルのノズル列内における位置が異なる場合に、同様に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態によれば、液体を吐出する液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、第1圧電体と、前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、を有する。前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の液体吐出装置100を示す説明図である。
図2】液体吐出ヘッド26の分解斜視図である。
図3図2のIII-III線の断面における液体吐出ヘッド26の構成を模式的に示す説明図である。
図4】液体吐出装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図5】圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す説明図である。
図6】比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す説明図である。
図7】各圧電素子38に接続される個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51と、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。
図8】各圧電素子38に接続される個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51と、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。
図9】第3電極51の第1部分511における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。
図10】第1電極531のX2方向に沿った各位置P2における電位と、駆動IC26Dと接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。
図11】X2方向に沿った各位置P2における、第3電極51の第1部分511と第1電極531との間の電位差の、X1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。
図12】比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける個別の電極53と、共通の第3電極51CPと、圧力室Chとを示す平面図である。
図13】液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。
図14】液体吐出ヘッド26CPの第1電極531における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26Dと接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。
図15】X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。
図16】比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51CPと、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。
図17】液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。
図18】液体吐出ヘッド26CPの第1電極531における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26Dと接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。
図19】X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。
図20】X方向の中央近傍の部位における、比較例の液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差Vを示すグラフである。
図21】第2実施形態の液体吐出ヘッド26bにおける個別の電極53と、共通の第3電極51bと、圧力室Chとを示す平面図である。
図22】第2実施形態の液体吐出ヘッド26bの第3電極51bの第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。
図23】第2実施形態の液体吐出ヘッド26bの第1電極531において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26Dと接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。
図24】X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26bの第3電極51bの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。
図25】第3電極の変形例1における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。
図26】第3電極の変形例2における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。
図27】第3電極の変形例3における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。
図28】第3電極の変形例4における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
A1.液体吐出装置および液体吐出ヘッドの構成:
図1は、第1実施形態の液体吐出装置100を示す説明図である。液体吐出装置100は、液体であるインクを媒体PMに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。液体吐出装置100は、インクを貯留する液体容器14を取りつけられ、媒体PMをセットされることができる、液体吐出装置100は、液体容器14内のインクを、媒体PMに向けて吐出することができる。液体吐出装置100は、制御ユニット20と、搬送機構22と、移動機構24と、液体吐出ヘッド26と、を備える。
【0011】
液体吐出ヘッド26は、複数のノズルNzを備える。液体吐出ヘッド26は、液体容器14から供給される液体のインクを、複数のノズルNzから吐出する。ノズルNzから吐出されたインクは、所定の位置に配された媒体PMに着弾する。液体吐出ヘッド26の構成については、後に詳細に説明する。
【0012】
移動機構24は、輪状のベルト244と、ベルト244に固定されており、液体吐出ヘッド26を保持することができるキャリッジ242と、を備える。移動機構24は、輪状のベルト244を双方向に回転させることにより、液体吐出ヘッド26をX方向に沿って往復させることができる。図1において、X方向を、逆向きの二つの矢印X1,X2で示す。
【0013】
搬送機構22は、移動機構24による液体吐出ヘッド26の複数回の移動の間に、媒体PMをY方向に沿って搬送する。Y方向は、X方向と直交する方向である。その結果、X方向とY方向で張られる仮想面に向かって吐出されたインクによって、媒体PM上に、画像が形成される。図1において、Y方向を、逆向きの二つの矢印Y1,Y2で示す。矢印Y2で示される向きが、媒体PMが搬送される向きである。
【0014】
図1には示していないが、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。液体吐出ヘッド26は、X方向に沿って搬送されている間に、Z方向に沿ってインクを吐出する。図1においては示されていないが、他の図において、Z方向のうち、液体吐出ヘッド26からインクが吐出される向きを矢印Z1で示し、逆の向きを矢印Z2で示す。
【0015】
制御ユニット20は、液体吐出ヘッド26からのインクの吐出動作を制御する。制御ユニット20は、搬送機構22と、移動機構24と、液体吐出ヘッド26と、を制御して、媒体PM上に画像を形成させる。
【0016】
図2は、液体吐出ヘッド26の分解斜視図である。液体吐出ヘッド26は、流路基板32と、圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、筐体部42と、封止体44と、ノズル板46と、吸振体48と、を備える。
【0017】
流路基板32は、略長方形の外形形状を有する板状の部材である。流路基板32は、それぞれ液体吐出ヘッド26内のインク流路の一部として機能する、開口部322と、供給流路324と、連通流路326と、中継流路328と、を備える。なお、中継流路328は、流路基板32のZ1側の面に設けられているため、図2には表されていない。
【0018】
開口部322は、流路基板32においてZ方向に伸びる一つの貫通孔である。液体吐出ヘッド26が備えるすべてのノズルNzから吐出されるインクは、開口部322内を通る。
【0019】
連通流路326は、流路基板32においてZ方向に伸びる貫通孔である。流路基板32は、複数の連通流路326を有する。複数の連通流路326は、開口部322に対してX1側において、Y方向に並んで設けられている。一つの連通流路326は、液体吐出ヘッド26が備える複数のノズルNzの一つに接続されている。連通流路326の数と液体吐出ヘッド26が備えるノズルNzの数は一致する。液体吐出ヘッド26が備える各ノズルNzから吐出されるインクは、対応する連通流路326内を通る。
【0020】
供給流路324は、流路基板32においてZ方向に伸びる貫通孔である。流路基板32は、複数の供給流路324を備える。一つの供給流路324は、後述する圧力室Chおよび上述の連通流路326を介して、液体吐出ヘッド26が備える複数のノズルNzの一つに接続される。供給流路324の数と液体吐出ヘッド26が備えるノズルNzの数とは、一致する。各供給流路324は、共通の開口部322と、各供給流路324が接続されている連通流路326と、の間に設けられている。液体吐出ヘッド26が備える各ノズルNzから吐出されるインクは、対応する供給流路324内を通る。
【0021】
中継流路328は、図2には表れていないが、流路基板32のZ1側の面に設けられた凹部である。中継流路328は、流路基板32のZ1側の面において、開口部322と、複数の供給流路324とを、接続している。液体吐出ヘッド26が備える各ノズルNzから吐出されるインクは、中継流路328を通る。
【0022】
圧力室基板34は、略長方形の外形形状を有する板状部材である。圧力室基板34は、シリコンで構成されている。圧力室基板34は、流路基板32に対してZ2側に配されている。より具体的には、圧力室基板34は、流路基板32の一部の領域であって、供給流路324および連通流路326が設けられている領域を覆うように、配されている。圧力室基板34は、複数の開口部342を備える。
【0023】
開口部342は、圧力室基板34においてZ方向に伸びる複数の貫通孔である。各開口部342は、流路基板32においてX方向に並んで配される一組の連通流路326および供給流路324と、Z方向に投影したときに、重なる位置に、配されている。各開口部342は、それら一組の連通流路326および供給流路324に接続されている。開口部342の数と液体吐出ヘッド26が備えるノズルNzの数とは、一致する。開口部342は、インクを収容し、液体吐出ヘッド26内の流路内のインクに圧力を加える圧力室Chとして機能する。
【0024】
振動板36は、圧力室基板34と一致する外形形状を有する板状部材である。振動板36は、圧力室基板34に対してZ2側に配されている。振動板36は、Z方向に投影したときに、振動板36の外形と圧力室基板34の外形とが一致するように、配されている。振動板36は、圧力室基板34の開口部342のZ2側を塞ぐ内壁として機能する。振動板36は、圧電素子38によって弾性変形されることができるように構成されている。
【0025】
圧電素子38は、振動板36に対してZ2側に配されている。より具体的には、一つの圧電素子38は、振動板36を挟んで、圧力室基板34の一つの開口部342と重なる位置に設けられている。圧電素子38は、図示しない密着層を介して振動板36に接合される。圧電素子38の数と液体吐出ヘッド26が備えるノズルNzの数とは、一致する。各圧電素子38は、配線基板50を介して電圧を印加されて、変形し、各開口部342(すなわち各圧力室Ch)の内壁を構成している振動板36を変形させる。その結果、圧力室Chが変形されて、圧力室Ch内のインクに圧力が加えられる。なお、配線基板50は、技術の理解を容易にするため、図2において省略されている。
【0026】
封止体44は、振動板36および圧電素子38に対してZ2側に配されている。より具体的には、封止体44は、振動板36の一部の領域であって、圧電素子38が設けられている領域を覆うように、配されている。封止体44は、Z1側の面に、一つの凹部を備えている。振動板36上に配された複数の圧電素子38は、この凹部に収容される。各圧電素子38は、電圧を印加されると、封止体44の凹部内において変形することができる。封止体44は、圧電素子38を保護するとともに圧力室基板34および振動板36の機械的な強度を補強する機能を奏する。
【0027】
筐体部42は、流路基板32に対してZ2側に配されている。より具体的には、筐体部42は、流路基板32の一部の領域であって、開口部322が設けられている領域を覆うように、配されている。筐体部42は、封止体44、振動板36、および圧力室基板34に対して、X2側に配されている。筐体部42は、収容部422と導入口424とを備える。
【0028】
収容部422は、Z1側に開口している一つの凹部である。収容部422は、筐体部42の内部およびZ1側の面に設けられているため、図2には表されていない。収容部422は、流路基板32の開口部322と、Z方向に投影したときに、重なる位置に配されている。収容部422は、開口部322に接続されている。
【0029】
導入口424は、Z方向に伸びる貫通孔であり、収容部422と接続されている。導入口424は、筐体部42のZ2側の面において、X方向およびY方向について略中央に配されている。
【0030】
ノズル板46は、流路基板32に対してZ1側に配されている。より具体的には、ノズル板46は、流路基板32の一部の領域であって、連通流路326が設けられている領域を覆うように、配されている。ノズル板46は、複数のノズルNzを備える。各ノズルNzは、流路基板32の各連通流路326と重なる位置に配されている。各ノズルNzは、各連通流路326に接続されている。各ノズルNzは、圧力室Chに収容されていたインクを吐出する。
【0031】
吸振体48は、流路基板32に対してZ2側に配されている。より具体的には、吸振体48は、流路基板32の一部の領域であって、開口部322、中継流路328(図2において示されず)、および供給流路324が設けられている領域を覆うように、配されている。吸振体48は、開口部322、中継流路328、および供給流路324のZ1側を塞ぐ内壁として機能する。吸振体48は、開口部322、中継流路328、および供給流路324の内部のインクの圧力に応じて弾性変形し、圧力変化を緩和するように構成されている。
【0032】
図3は、図2のIII-III線の断面における液体吐出ヘッド26の構成を模式的に示す説明図である。図3は、図2に示した筐体部42の導入口424、圧力室基板34の開口部342(圧力室Ch)、流路基板32の供給流路324および連通流路326等をとおるX-Z平面による液体吐出ヘッド26の断面を示している。なお、図3においては、図2において省略した配線基板50が示されている。
【0033】
配線基板50は、制御ユニット20(図1参照)および電源回路(図1図3において省略)と、液体吐出ヘッド26とを、電気的に接続するための複数の配線が形成された回路基板である。圧電素子38を駆動するための駆動信号が、配線基板50から各圧電素子38に供給される。配線基板50としては、たとえば、FPC(Flexible Printed Circuit)等の可撓性を有する基板を採用することができる。なお、配線基板50に代えて、FFC(Flexible Flat Cable)を配することもできる。
【0034】
振動板36は、圧力室Ch側に配される弾性層361と、圧電素子38側に配される絶縁層362と、を備える。弾性層361は、酸化シリコン(SiO)等の弾性材料で形成された弾性膜である。絶縁層362は、酸化ジルコニウム(ZrO)等の絶縁材料で形成された絶縁膜である。
【0035】
液体吐出ヘッド26に供給されたインクは、導入口424から収容部422内に導入され、開口部322、中継流路328、および供給流路324を通って、圧力室Ch(開口部342)に導入される。なお、収容部422と開口部322とで構成される空間を、液体貯留室Rsとも呼ぶ。液体貯留室Rsには、導入口424から供給され、液体吐出ヘッド26の各ノズルNzに供給されるインクが、貯留される。
【0036】
供給流路324、圧力室Ch、圧電素子38、および連通流路326は、一つのノズルNzに対して、一つづつ設けられる。供給流路324から圧力室Chに供給されたインクは、電圧を印加された圧電素子38によって振動板36を介して押圧される。そして、圧力室Ch内のインクは、連通流路326を介してノズルNzから吐出される。圧力室Ch内のインクが液体吐出ヘッド26外に吐出され、その後、振動板36が平板状に戻ることに伴って、導入口424から液体貯留室Rs(収容部422および開口部322)内に新たにインクが供給される。
【0037】
図4は、液体吐出装置100の電気的な構成を示すブロック図である。制御ユニット20は、制御信号Ctr、駆動信号COM-A、COM-B、および電圧VBSの保持信号を液体吐出ヘッド26に供給する。液体吐出ヘッド26は、制御ユニット20から受け取った制御信号Ctr、駆動信号COM-A、COM-B、および電圧VBSに応じて、圧電素子38を駆動し、ノズルNzからインクを吐出させる(図3参照)。
【0038】
制御ユニット20は、制御部21と、駆動回路25a、25bと、電圧生成回路23とを含む。制御部21は、CPUやRAM、ROMなどを有するマイクロコンピューターである。制御部21は、CPUで所定のプログラムを実行することによって、画像データに基づいて、液体吐出装置100の各部を制御するための各種の制御信号等を出力することができる。
【0039】
制御部21は、移動機構24および搬送機構22を制御する(図1参照)。制御部21は、移動機構24および搬送機構22に対する制御に同期させて、液体吐出ヘッド26に各種の制御信号Ctrを供給する。制御信号Ctrには、ノズルNzから吐出させるインクの量を規定する印刷データ、印刷データの転送に用いるクロック信号、印刷周期等を規定するタイミング信号等が含まれる。制御部21は、駆動回路25aにデジタルのデータdAを繰り返して供給する。制御部21は、駆動回路25bにデジタルのデータdBを繰り返して供給する。
【0040】
駆動回路25aは、データdAをアナログ変換し、さらに増幅して、駆動信号COM-Aとして液体吐出ヘッド26に出力する。駆動回路25bは、データdBをアナログ変換し、さらに増幅して、駆動信号COM-Bとして液体吐出ヘッド26に出力する。駆動回路25a、25bのハードウェア構成は同一である。
【0041】
本実施形態においては、1画素に対応する印刷周期中に1つのノズルNzからインク滴を最大で2回吐出させる。そのインク滴の組み合わせにより、1画素において、大ドット、中ドット、小ドットおよび非記録の4階調が表現される。
【0042】
駆動信号COM-Aは、印刷周期の前半の期間に配された台形波形Adp1と、印刷周期の後半の期間に配された台形波形Adp2とを有する。台形波形Adp1、Adp2は、互いにほぼ同一の波形である。台形波形Adp1、Adp2は、それぞれが圧電素子38の個別の電極に供給された場合、圧電素子38に対応するノズルNzから中程度の量のインクをそれぞれ吐出させる波形である。
【0043】
駆動信号COM-Bは、印刷周期の前半の期間に配された台形波形Bdp1と、印刷周期の後半の期間に配された台形波形Bdp2とを有する。台形波形Bdp1、Bdp2とは、互いに異なる波形である。台形波形Bdp1は、ノズルNzの付近におけるインクを微振動させてインクの粘度の増大を防止するための波形である。台形波形Bdp1が圧電素子38の個別の電極に供給された場合には、その圧電素子38に対応するノズルNzからインク滴は吐出されない。台形波形Bdp2は、圧電素子38の個別の電極に供給された場合に、その圧電素子38に対応するノズルNzから台形波形Adp1、Adp2よりも少ない量のインクを吐出させる波形である。
【0044】
ある画素に大ドットを形成すべき場合には、印刷周期の前半および後半において駆動信号COM-Aが選択され、駆動対象である圧電素子38の個別の電極(図4の圧電素子38の左側参照)に供給される。その結果、中程度の量のインク滴が2回吐出される。それらのインク滴のインクが媒体PM上で合体して、大ドットが形成される。
【0045】
ある画素に中ドットを形成すべき場合には、印刷周期の前半に駆動信号COM-Aが選択され、後半に駆動信号COM-Bが選択されて、駆動対象である圧電素子38の個別の電極に供給される。すなわち、台形波形Adp1と台形波形Bdp2が選択され、圧電素子38の個別の電極に供給される。その結果、中程度および小程度のインク滴が吐出される。それらのインク滴のインクが媒体PM上で合体して、中ドットが形成される。
【0046】
ある画素に小ドットを形成すべき場合には、印刷周期の前半では駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されず、後半に駆動信号COM-Bが選択されて、駆動対象である圧電素子38の個別の電極に供給される。すなわち、台形波形Bdp2が選択され、圧電素子38の個別の電極に供給される。その結果、小程度のインクが1回吐出され、媒体PMに小ドットが形成される。
【0047】
ある画素にドットを記録しない場合には、印刷周期の前半に駆動信号COM-Bが選択され、後半に駆動信号COM-A、COM-Bのいずれも選択されずに、駆動対象である圧電素子38の個別の電極に供給される。すなわち、台形波形Bdp1が選択され、圧電素子38の個別の電極に供給される。その結果、印刷周期の前半において当該ノズルNzの付近のインクが微振動し、インクは吐出されない。
【0048】
電圧生成回路23は、一定の電圧VBSを有する保持信号を生成して、液体吐出ヘッド26に出力する。保持信号は、アクチュエーター基板26Aにおける複数の圧電素子38の共通の電極(図4の圧電素子38の右側参照)の電位を、一定に保持する。
【0049】
液体吐出ヘッド26は、アクチュエーター基板26Aと駆動IC26Dを有する。なお、アクチュエーター基板26Aと駆動IC26Dとは、電気的な構成における概念的な区分であり、これらの呼称は、必ずしもそれらの構成が一つの基板や一つのICによって実現されていることを意味するものではない。
【0050】
駆動IC26Dは、アクチュエーター基板26Aの各圧電素子38の個別の電極に駆動信号を供給する。駆動IC26Dは、制御ユニット20の電圧生成回路23から受け取った保持信号を、アクチュエーター基板26Aの各圧電素子38の共通の電極に中継する。
【0051】
駆動IC26Dは、選択制御部26D1と、圧電素子38に一対一に対応した選択部26D2と、を有する。選択制御部26D1は、各選択部26D2における選択をそれぞれ制御する。より具体的には、選択制御部26D1は、制御部21からクロック信号に同期して供給される印刷データを、液体吐出ヘッド26の圧電素子38の数の分、蓄積する。そして、選択制御部26D1は、各選択部26D2に対し、印刷データに応じた駆動信号COM-A、COM-Bの選択を、タイミング信号で規定される印刷周期の前半および後半の開始タイミングで指示する。
【0052】
各選択部26D2は、選択制御部26D1からの指示にしたがって、駆動信号COM-A、COM-Bのいずれかを選択し、または、選択せずに、電圧Voutの駆動信号として、対応する圧電素子38の個別の電極に印加する。
【0053】
アクチュエーター基板26Aは、複数の圧電素子38を有する。各圧電素子38の一方の電極は個別に設けられているのに対して、他方の電極は、複数の圧電素子38について共通である。複数の圧電素子38の個別の電極に対しては、駆動信号によって、形成するドットの大きさに応じて異なる電圧Voutが付与される。複数の圧電素子38の共通の電極に対しては、配線パターン26Lを介して、保持信号によって一定の電圧VBSが付与される。
【0054】
図5は、圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す説明図である。液体吐出ヘッド26においては、ノズル列内のノズルNzの数と一致する数の圧電素子38が、振動板36に対してZ2側において、Y2方向に沿って配されている(図2参照)。図5においては、それら複数の圧電素子38のうち、3個の圧電素子38の周辺の構成が示されている。図5においては、技術の理解を容易にするため、圧力室基板34、振動板36、圧電素子38以外の構造は示していない。
【0055】
以下では、Y方向のうち矢印Y2で示される向きを「第1方向D1」とし、X方向のうち矢印X1で示される向きを「第2方向D2」として、圧力室基板34、振動板36、圧電素子38の構造を説明する。以下では、主として、図5において示した3個の圧電素子38のうち、圧電素子381,382およびその周辺の構造を例に、圧電素子の構造および機能を説明する。
【0056】
液体吐出ヘッド26は、複数の圧電素子38の構成要素の一部として、第1圧電体521と、第2圧電体522と、第1電極531と、第2電極532と、第3電極51と、を有する。
【0057】
第2圧電体522は、第1圧電体521と第1方向D1について異なる位置に位置する。より具体的には、第2圧電体522は、第1方向D1について、第1圧電体521と隣接する。なお、本明細書において「圧電体Aと圧電体Bとが隣接する」とは、圧電体Aと圧電体Bとの間に他の圧電体が存在しないことを意味する。第1圧電体521、第2圧電体522などの圧電体を区別せずに記載する際には、「圧電体52」と記載する。
【0058】
第1電極531は、第1圧電体521と電気的に接続し、第2圧電体522と電気的に接続しない。第2電極532は、第2圧電体522と電気的に接続し、第1圧電体521と電気的に接続しない。第1電極531と第2電極532とは、各圧電素子38に接続される個別の電極である(図4の圧電素子38の左側参照)。すなわち、第1圧電体521に接続されている第1電極531に対しては、駆動IC26Dから、インクの吐出量に応じて異なる駆動信号が供給される(図4の圧電素子38の左側参照)。第2圧電体522に接続されている第2電極532に対しても、駆動IC26Dから、インクの吐出量に応じて異なる駆動信号を供給される。第1電極531、第2電極532などの各圧電素子38に接続される個別の電極を区別せずに記載する際には、「電極53」と記載する。
【0059】
第3電極51は、第1圧電体521と第2圧電体522の両方に電気的に接続する。第3電極51は、各圧電素子38の共通の電極である(図4の圧電素子38の右側参照)。各圧電素子38に接続されている第3電極51に対しては、電圧生成回路23から、インクの吐出量によらず電圧が変化しない保持信号が供給される(図4の圧電素子38の右側参照)。第3電極51の厚みは、たとえば、数十nmである。
【0060】
第3電極51は、単一の部材によって構成されている。第3電極51は、第1圧電体521を覆い、かつ、第2圧電体522を覆っている。このような構成とすることにより、各圧電体521,522が設けられている振動板36と、各圧電体521,522と、の隙間に、結露による水やインクなどの液体が浸入する可能性を、低減することができる。
【0061】
振動板36に対して圧電素子381とは逆の側には、圧力室Chの一つである第1圧力室Ch1が設けられている。第1圧力室Ch1は、インクを収容し、第1圧電体521の歪みによって、収容しているインクに圧力が付与されるように構成されている。振動板36に対して圧電素子382とは逆の側には、圧力室Chの一つである第2圧力室Ch2が設けられている。第2圧力室Ch2は、インクを収容し、第2圧電体522の歪みによって、収容しているインクに圧力が付与されるように構成されている。
【0062】
第1圧力室Ch1からみたとき、第1電極531、第1圧電体521、および第3電極51は、第1圧力室Ch1に近い方から第1電極531、第1圧電体521、第3電極51の順に設けられている。第2圧力室Ch2からみたとき、第2電極532、第2圧電体522、および第3電極51は、第2圧力室Ch2に近い方から第2電極532、第2圧電体522、第3電極51の順に設けられている。言い換えると、Z方向において、第1圧電体521は第1電極531と第3電極51の間に設けられている。また、Z方向において、第2圧電体522は第2電極532と第3電極51の間に設けられている。すなわち、第1圧電体521と第2圧電体522の両方に電気的に接続する第3電極51が、第1圧電体521および第2圧電体522に対して、第1圧力室Ch1および第2圧力室Ch2とは逆の側に配される。
【0063】
液体吐出ヘッド26は、通常、圧力室Chに対して圧電体52が上方に位置し、圧力室Chの下方にインクを吐出できる向きに、配される。このため、本実施形態においては、第3電極51が、第1圧電体521の端および第2圧電体522の端の少なくとも一部を、上から封止することになる。よって、各圧電体52が設けられている振動板36と、各圧電体52と、の隙間に、結露による水やインクなどの液体が上から浸透する可能性を低減することができる。
【0064】
第3電極51は、第1部分511と、第2部分512と、第3部分513と、第4部分514と、第5部分515と、を有する。
【0065】
第1部分511は、第3電極51のうち第1圧電体521に対応する位置に配されている部分である。より具体的には、第1部分511は、第3電極51のうち、第1圧電体521を挟んで第1電極531と向かい合う部分である。第1部分511の第2方向D2における幅は、第1幅W1である。
【0066】
第2部分512は、第3電極51のうち第2圧電体522に対応する位置に配されている部分である。より具体的には、第2部分512は、第3電極51のうち、第2圧電体522を挟んで第2電極532と向かい合う部分である。第2部分512において、第2方向D2における幅は、第2幅W2である。第2幅W2の大きさは、第1幅W1と等しい。
【0067】
第1部分511の第2方向D2についての抵抗値は、第1圧電体521の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して、1/20以上である。第2部分512の第2方向D2についての抵抗値が、第2圧電体522の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上である。
【0068】
このような構成においては、第1部分511の第2方向D2に沿った電圧降下、および第2部分512の第2方向D2に沿った電圧降下が、0.05V以上となる。このため、第2電極532に第3電極51とは異なる電位Voutが付与され、第1電極531がOFFされているときと、第1電極531と第2電極532に第3電極51とは異なる電位Voutが付与されているときとにおける、第2方向D2に沿った位置ごとの第1部分511と第1電極531との電位差の違いを、小さくすることが、より有効である。この技術的効果については、後に説明する。
【0069】
第3部分513は、第3電極51のうち第1圧電体521と第2圧電体522の間に配されている部分である。第3部分513は、圧電体52を介さずに、振動板36の表面上に設けられている。第3部分513の第2方向D2における幅は、第3幅W3である。第3幅W3は、第1幅W1および第2幅W2よりも小さい。より具体的には、第3幅W3は、第1幅W1および第2幅W2の1/10である。
【0070】
第4部分514は、第3電極51のうち、第1部分511と第3部分513の間に配されている部分である。第4部分514は、第3部分513よりもY方向において第1部分511に近い位置に配されている部分である。第4部分514は、第1圧電体521が接触している振動板36の絶縁層362の表面と、第1圧電体521と、の境界B1を塞いでいる。第4部分514の第2方向D2における幅は、第4幅W4である。第4幅W4は、第3幅W3よりも大きい。より具体的には、第4幅W4は、第1幅W1および第2幅W2と等しい。
【0071】
第5部分515は、第3電極51のうち、第2部分512と第3部分513の間に配されている部分である。第5部分515は、第3部分513よりもY方向において第2部分512に近い位置に配されている部分である。第5部分515は、第2圧電体522が接触している振動板36の絶縁層362の表面と、第2圧電体522と、の境界B2を塞いでいる。第5部分515の第2方向D2における幅は、第5幅W5である。第5幅W5は、第3幅W3よりも大きい。より具体的には、第5幅W5は、第1幅W1、第2幅W2、および第4幅W4と等しい。図5において、第1方向D1についての第4部分514と第5部分515の間であって、第3電極51が設けられていない領域を、分断部51tとして示す。
【0072】
このような構成とすることにより、第1圧電体521と第2圧電体522の間に第3部分513が設けられており、かつ、第4部分514および第5部分515が設けられていない態様に比べて、より広い範囲で、境界B1および境界B2を、第3電極51で封止することができる。よって、各圧電体52が接触している振動板36の絶縁層362の表面と各圧電体52との隙間に、結露による水やインクなどの液体が浸入する可能性を低減することができる。
【0073】
図6は、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す説明図である。液体吐出ヘッド26CPにおいては、分断部51tがなく、第3部分513CPの幅W3CPが、第1幅W1および第2幅W2と等しい。液体吐出ヘッド26CPの他の点は、本実施形態の液体吐出ヘッド26と同じである。以下では、本実施形態の液体吐出ヘッド26の動作を、比較例の液体吐出ヘッド26CPの動作と比較しつつ、説明する。
【0074】
A2.液体吐出ヘッドの動作:
A2-1.本実施形態の液体吐出ヘッドの動作:
図7は、各圧電素子38に接続される個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51と、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。図7は、個別の電極53と共通の第3電極51と各圧力室Chとの関係を示すための図であり、各構成の実際の寸法および形状を反映するものではない。たとえば、図7に示されている駆動IC26Dは、図7に示された位置に駆動IC26Dが存在することを表すものではなく、個別の電極53に対して、駆動IC26Dによって、図7に示した側から電位が付与されることを表す。なお、第3電極51に対しては、電圧生成回路23によって、X方向の両側から電位が付与される。
【0075】
液体吐出ヘッド26が備える複数の個別の電極53のうち、電極531のみがONされ、他の個別の電極53がOFFされたものとする(図4の26D2参照)。このとき、第1圧電体521を挟んで第1電極531と向かい合う第1部分511において、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、X方向の両端から付与される(矢印A1参照)。その結果、第3電極51の第1部分511において、X方向の端近傍の部位と、中央近傍の部位とでは、第1部分511自身の抵抗に起因して、電位が異なる。
【0076】
図8は、各圧電素子38に接続される個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51と、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。図8は、図7と同様に、個別の電極53と共通の第3電極51と各圧力室Chとの関係を示すための図であり、各構成の実際の寸法および形状を反映するものではない。
【0077】
液体吐出ヘッド26が備える複数の個別の電極53のすべてがONされたものとする(図4の26D2参照)。このとき、各圧電体52を挟んで各電極53と向かい合う第3電極51の各部分において、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、電極531のみがONされた場合と同様に、X方向の両端から付与される(図8の矢印Aaおよび図7の矢印A1参照)。その結果、この場合も、第3電極51の第1部分511において、X方向の端近傍の部位と、中央近傍の部位とでは、第1部分511自身の抵抗に起因して、電位が異なる。
【0078】
図9は、第3電極51の第1部分511における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。図7で説明したように、電極531のみがONされた場合、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、第1部分511に対してX方向の両端から付与される(図7の矢印A1参照)。その結果、第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、第1部分511自身の抵抗に起因して、図9に示すようになる。
【0079】
図8で説明したように、液体吐出ヘッド26が備える複数の個別の電極53のすべてがONされた場合も、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、第1部分511に対してX方向の両端から付与される(図8の矢印Aa参照)。その結果、この場合も、第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、第1部分511自身の抵抗に起因して、ほぼ図9に示すようになる。すなわち、電極531のみがONされた場合と、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合とにおいて、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、ほぼ一致する。
【0080】
図10は、第1電極531におけるX2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26D(図7および図8の下段参照)と接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。第1電極531において、駆動IC26Dによって付与される電位Voutは、X1方向の端から付与される。その結果、第1電極531において、X1方向の端近傍の部位と、他の部位とでは、第1電極531自身の抵抗に起因して、電位が異なる。第1電極531において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531のX1方向の端部における電位との差ΔVbは、図10に示すようになる。
【0081】
第1電極531の各部に対する電位Voutの付与のされ方は、電極531のみがONされたか、すべての個別の電極53がONされたかによらず、同じである。このため、第1電極531における各部の端部の電位からの電位差ΔVbは、電極531のみがONされたか、すべての個別の電極53がONされたかによらず、図10に示すようになる。
【0082】
図11は、X2方向に沿った各位置P2における、第3電極51の第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。電位差のずれΔVpは、ΔVtとΔVbを重畳したものとなる。
【0083】
上述したように、電極531のみがONされたとき、電位差ΔVtは図9、電位差ΔVbは図10のようになる。したがって、電極531のみがONされたとき、X2方向に沿った各位置P2における電位差の、X1方向の端部における電位差からのずれΔVpは、図11に示すようになる。
【0084】
また、同じく上述したように、すべての個別の電極53がONされたときも、電位差ΔVtは図9、電位差ΔVbは図10のようになる。したがって、すべての電極53がONされたとき、X2方向に沿った各位置P2における電位差の、X1方向の端部における電位差からのずれΔVpは、図11に示すようになる。
【0085】
つまり、本実施形態では、電極531のみがONされたときも、すべての個別の電極53がONされたときも、ΔVpは同じである(図11参照)。
【0086】
A2-2.比較例の液体吐出ヘッドの動作:
共通の電極のうち個別の電極53と向かい合う各部分を分断する分断部51tを備えていない(図5図7参照)液体吐出ヘッド26CPを用いて比較例を説明する。比較例において、まず1つの電極531のみがONされた場合について説明し、次に複数の個別の電極53すべてがONされた場合について説明する。
【0087】
(1)1つの電極531のみがONされた場合:
図12は、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける個別の電極53と、共通の第3電極51CPと、圧力室Chとを示す平面図である。図12は、各構成の実際の寸法および形状を反映するものではない。液体吐出ヘッド26CPは、共通の電極のうち個別の電極53と向かい合う各部分を分断する分断部51tを備えていない(図5図7参照)。
【0088】
液体吐出ヘッド26CPが備える複数の個別の電極53のうち、電極531のみがONされ、他の個別の電極53がOFFされたものとする(図4の26D2参照)。このとき、第1圧電体521を挟んで第1電極531と向かい合う第1部分511において、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、第1部分511の様々な方向から付与される(矢印A1cp参照)。その結果、第3電極51CPの第1部分511において、X方向の端近傍の部位と、中央近傍の部位とでは、電位の差は、わずかに生じるだけである。
【0089】
図13は、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。液体吐出ヘッド26CPにおいて電極531のみがONされた場合、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、第1部分511に対して様々な方向から付与される(図12の矢印A1cp参照)。つまり、第1実施形態において、図9を用いて説明した液体吐出ヘッド26が備えた電極531のみがONされた場合とは異なる。その結果、第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、図13に示すようになる。図13図9を比較するとわかるように、比較例における液体吐出ヘッド26CPが備える電極531のみがONされた場合と、第1実施形態における液体吐出ヘッド26が備える電極531のみがONされた場合とでは、電位の差ΔVtが全く異なる傾向となる。
【0090】
図14は、液体吐出ヘッド26CPの第1電極531における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26D(図12の下段参照)と接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。液体吐出ヘッド26CPの第1電極531においても、駆動IC26Dによって付与される電位Voutは、X1方向の端から付与される。その結果、第1電極531において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531のX1方向の端部における電位との差ΔVbは、図14に示すようになる。
【0091】
図15は、X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。電位差のずれΔVpは、ΔVtとΔVbを重畳したものとなる(図13および図14参照)。
【0092】
(2)複数の個別の電極53すべてがONされた場合:
図16は、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおける個別の電極53と、各圧電素子38の共通の第3電極51CPと、各圧電素子38に対応する圧力室Chとを示す平面図である。図16は、図12と同様、個別の電極53と共通の第3電極51CPと各圧力室Chとの関係を示すための図であり、各構成の実際の寸法および形状を反映するものではない。
【0093】
液体吐出ヘッド26CPが備える複数の個別の電極53のすべてがONされたものとする(図4の26D2参照)。このとき、各圧電体52を挟んで各電極53と向かい合う第3電極51CPの各部分において、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、図8に示した本実施形態の場合と同様、X方向の両端から付与される(図16の矢印Aacp参照)。その結果、この場合も、図8に示した本実施形態の場合と同様、第3電極51CPの第1部分511において、X方向の端近傍の部位と、中央近傍の部位とでは、第1部分511自身の抵抗に起因して、電位が異なる。
【0094】
図17は、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。液体吐出ヘッド26CPが備える複数の個別の電極53のすべてがONされた場合は、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、第1部分511に対してX方向の両端から付与される(図16の矢印Aacp参照)。つまり、第1実施形態において、図9を用いて説明した液体吐出ヘッド26が備えた複数の個別の電極53のすべてがONされた場合と同様である。その結果、第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、第1部分511自身の抵抗に起因して、図17に示すようになる。図17図9を比較するとわかるように、比較例における液体吐出ヘッド26CPが備える複数の個別の電極53のすべてがONされた場合と、第1実施形態における液体吐出ヘッド26が備える複数の個別の電極53のすべてがONされた場合とでは、電位の差ΔVtが似たような傾向となる。
【0095】
図13図17の比較から分かるように、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおいては、電極531のみがONされた場合と、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合とにおいて、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、大きく異なる。
【0096】
図18は、液体吐出ヘッド26CPの第1電極531における、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26D(図16の下段参照)と接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。液体吐出ヘッド26CPにおいても、第1電極531の各部に対する電位Voutの付与のされ方は、電極531のみがONされたか、すべての個別の電極53がONされたかによらず、同じである。このため、第1電極531における各部の端部の電位からの電位差ΔVbは、図14に示す電極531のみがONされた場合と同じになる。
【0097】
図19は、X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。電位差のずれΔVpは、ΔVtとΔVbを重畳したものとなる。図15図19の比較から分かるように、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおいては、X2方向に沿った各位置P2における電位差の、X1方向の端部における電位差からのずれΔVpは、電極531のみがONされた場合と、すべての個別の電極53がONされた場合とで大きく異なる。
【0098】
(3)第1実施形態と比較例の比較:
図15図19を比較するとわかるように、比較例では、電極531のみがONされたときと、複数の個別の電極53すべてがONされたときとでは、電位差のずれΔVpは異なるものとなる。よって、電極531のみがONされたときと、複数の個別電極53すべてがONされたときで、電極531に対応するノズルから吐出されるインクの吐出特性(吐出量や吐出速度など)に違いが生じてしまう。
【0099】
これに対し、図11からわかるように、第1実施形態では、電極531のみがONされたときと、複数の個別の電極53すべてがONされたときとで、電位差のずれΔVpは同じとなる。よって、電極531のみがONされたとき、および複数の個別電極53すべてがONされたときにおいて、電極531に対応するノズルから吐出されるインクの吐出特性を同じとすることができる。
【0100】
この理由について簡単に説明する。比較例において電極531のみがONされたとき、図15を用いて説明したように、X方向の端近傍と中央近傍で電位の差はそれほど大きくは生じない。第3電極51が特に分断されずに設けられているため、電極531のみがONされると、図12に示すようにXY平面内の様々な方向から中央近傍に電位が付与され、それゆえ端部近傍との電位の差ΔVpが生じにくくなるのである。
【0101】
一方で、複数の個別電極53すべてがONされたときには、図19を用いて説明したように、X方向の端近傍と中央近傍で電位の差がある程度大きく生じる。複数の個別電極53すべてがONされると、第3電極が分断されていないとしても、特定の個別電極53に集中して電位が付与されることがないためである。つまり、複数の個別電極53それぞれには、図16に示すようにXY平面内のX方向端部から電位が付与されるのみで、図12のようなXY平面内の様々な方向から電位が付与されにくい。例えば、電極531に着目すると、電極531はONとなっているためX方向端部からは電位が付与されるが、電極531とY方向に隣り合う電極532にもONとなり電位が付与されているため、電極531にY方向から電位が付与されることはほぼないのである。その結果、端部近傍と中央部の電位の差ΔVpが比較的大きくなる。
【0102】
これに対し、第1実施形態では、第3電極51が分断されている。つまり、第3電極51は、第1圧電体521と第2圧電体522の間の第3部分513において、第1部分511および第2部分512よりも、第2方向D2について幅が狭く設けられている(図5および図7のW1~W3参照)。このため、1つの電極のみがONになったときでも、分断部では電位が伝わらないため、図8に示すように、1つの電極に対しY方向から電位が付与されにくい。したがって、第1実施形態では、1つの電極のみONになったときと、複数の電極すべてがONになったときとで、電位の差ΔVpはそれ程変わらない。これにより、電極のONとなった数によらず、吐出特性を大きく異ならせずにインクを吐出することが可能となる。
【0103】
なお、第1実施形態では電極のONとなった数によって電位の差ΔVpが変わることを抑えることができるが、図11に示すように、端部近傍と中央部近傍での電位の差ΔVp自体は発生する。但し、当該電位の差ΔVpは電極のONとなった数に依存しない、すなわちある程度固定された値となる。よって、第3電極51の各位置における抵抗を調整したり、付与する電位(電圧)を変えたりすることにより、この電位の差ΔVp自体はある程度抑制することができる。
【0104】
なお、本実施形態の液体吐出ヘッド26においては、第3部分513の第2方向D2における幅である第3幅W3は、第1部分511の第2方向D2における幅である第1幅W1の1/2より小さく、かつ、第2部分512の第2方向D2における幅である第2幅W2の1/2よりも小さい(図5参照)。このような構成とすることにより、第3幅W3が第1幅W1の1/2より大きく、かつ、第2幅W2の1/2よりも大きい態様に比べて、以下の効果が得られる。すなわち、第1電極531に第3電極51とは異なる電位が付与され、第2電極532がOFFされているときと、第1電極531と第2電極532に第3電極51とは異なる電位が付与されているときとにおける、第2方向D2に沿った位置ごとの第3電極51の第1部分511と第1電極531との電位の違いを、小さくすることができる。
【0105】
本実施形態における駆動回路25a、25bを「駆動信号供給回路」とも呼ぶ。電圧生成回路23を「保持信号供給回路」とも呼ぶ。
【0106】
B.第2実施形態:
第2実施形態の液体吐出ヘッド26bにおいては、第3電極51bの形状が、第1実施形態の液体吐出ヘッド26の第3電極とは異なる。第2実施形態の液体吐出ヘッド26bの他の点は、第1実施形態の液体吐出ヘッド26と同じである。
【0107】
上述したように、第1実施形態によれば、電極のONとなる数に応じて電位の差ΔVpが変化することは抑制できるが、端部近傍と中央部近傍の間における電位の差ΔVpは発生する。電位の差ΔVpが生じる、つまり特定位置(図11からわかるように、ここでは中央部近傍)において電圧降下が生じると、電圧の立ち上がりに遅れが生じ、吐出量の低下等を引き起こす等の問題が発生する虞がある。
【0108】
以下、詳細について説明する。図20は、X方向の中央近傍の部位における、比較例の液体吐出ヘッド26CPの第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差Vを示すグラフである。図20の横軸は、時間を表す。図20の縦軸は、X方向の中央近傍の部位における、第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差を表す。グラフV1は、電極531のみがONされた場合の第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差Vを表す。グラフVaは、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合の第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差Vを表す。
【0109】
図20から分かるように、比較例の液体吐出ヘッド26CPにおいては、電極531のみがONされた場合は、第3電極51CPの第1部分511と第1電極531との間の電位差V1は、ほぼ理想的な時間変化を示すのに対して、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合の電位差Vaは、理想的な時間変化に対して応答遅れを含んでいる。より詳細には、電圧の立ち上がりに遅れが生じている。その結果、圧力室Chにおける圧力上昇が十分生じなくなる。また、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合の電位差Vaにおいては、電位差Vが定常状態になる際の傾きの変化が滑らかになっている。その結果、ノズルNzと吐出されるインク滴とノズルNz内のインクとを迅速に切り離すことができず、インク滴に含まれるインクの量が低減する。
【0110】
さらに、複数の個別の電極53のすべてがONされた場合の電位差Vaの理想状態からのずれは、X2方向に沿った各位置P2によって異なるため(図15および図19参照)、各圧力室Chからインク滴の吐出を行う際に、各圧力室Chを封止している振動板36の各部分同士の共振を十分利用して、インク滴の吐出を行うことができなくなる。
【0111】
また、比較例においては、圧力室Chの第1方向D1の寸法に対する圧力室Chの第2方向D2の寸法の比が大きくなるほど、言い換えれば、個別電極53の第1方向D1の寸法に対する個別電極53の第2方向D2の寸法の比が大きくなるほど、隣接する圧電素子38間でクロストークが生じやすくなる。
【0112】
第2実施形態では、上述のような問題を解消するため、電極のONの数によって電位の差ΔVpが変化することを抑制するのに加え、電位差ΔVp自体を小さくすることを目的とする。
【0113】
図21は、第2実施形態の液体吐出ヘッド26bにおける個別の電極53と、共通の第3電極51bと、圧力室Chとを示す平面図である。図21は、各構成の実際の寸法および形状を反映するものではない。第1実施形態の液体吐出ヘッド26においては、第1部分511および第2部分512を含む、分断部51tによって分断されている第3電極51の各部は、X1方向の端とX2方向の端において互いに接続されている(図7および図8参照)。そして、分断部51tによって分断されている第3電極51の各部は、電圧生成回路23によって付与される電位VBSを、X方向の両端から付与される(図7の矢印A1および図8の矢印Aa参照)。
【0114】
しかし、第2実施形態の液体吐出ヘッド26bにおいては、第1部分511bおよび第2部分512bを含む、分断部51tbによって分断されている第3電極51の各部は、X2方向の端において互いに接続されており、X1方向の端においては互いに接続されていない。第3電極51bの第3部分513bにおける第2方向D2の側の端部は、第1部分511bにおける第2方向D2の側の端部および第2部分512bにおける第2方向D2の側の端部よりも、第2方向D2とは逆の側に位置する。
【0115】
分断部51tによって分断されている第3電極51の各部は、電圧生成回路23によって付与される電位VBSを、X2方向の端から付与される(図21の矢印A1b,Aab参照)。すなわち、第2実施形態の液体吐出ヘッド26bにおいては、駆動IC26Dは、第1電極531および第2電極532を含む各電極53に対して、第2方向D2の側から接続されている。これに対して、電圧生成回路23は、第3電極51bに対して、第2方向D2とは逆の側から接続されている。
【0116】
図22は、第2実施形態の液体吐出ヘッド26bの第3電極51bの第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtを示す説明図である。液体吐出ヘッド26bが備える複数の個別の電極53のうち、電極531のみがONされたときも、複数の個別の電極53のすべてがONされたときも、各電極53と向かい合う第3電極51の各部分において、電圧生成回路23によって付与される電位VBSは、X2方向の端から付与される。図21において、電極531のみがONされたときの電位が付与される向きを矢印A1bで示す。図21において、複数の個別の電極53のすべてがONされたときの電位が付与される向きを矢印Aabで示す。その結果、第3電極51の第1部分511において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1部分511の両端部における電位との差ΔVtは、第1部分511自身の抵抗に起因して、図22に示すようになる。すなわち、X2方向の端から遠いほど、言い換えれば、X1方向の端に近いほど、ΔVtは、小さくなる。より具体的には、ΔVtは、第3部分513bにおける第2方向D2の端部から各位置までの距離にほぼ比例して減少する。
【0117】
図23は、第2実施形態の液体吐出ヘッド26bの第1電極531において、X2方向に沿った各位置P2における電位と、第1電極531の駆動IC26D(図21の下段参照)と接続されている側の端部における電位と、の差ΔVbを示す説明図である。液体吐出ヘッド26bの第1電極531においても、第1電極531の各部に対する電位Voutの付与のされ方は、電極531のみがONされたか、すべての個別の電極53がONされたかによらず、同じである。このため、第1電極531における各部の端部の電位からの電位差ΔVbは、電極531のみがONされた場合と同じになる。すなわち、X2方向の端から遠いほど、言い換えれば、X1方向の端に近いほど、ΔVbは、大きくなる。より具体的には、第1電極531および第2電極532における第2方向D2の端部から各位置までの距離にほぼ比例して増大することになる。
【0118】
図24は、X2方向に沿った各位置P2における、液体吐出ヘッド26bの第3電極51bの第1部分511と第1電極531との間の電位差の、第1電極531のX1方向の端部における電位差からのずれΔVpを示す説明図である。電位差のずれΔVpは、ΔVtとΔVbを重畳したものとなる。
【0119】
第2実施形態においては、第1電極531および第2電極532を含む個別の電極53において、駆動信号の電位は、電極自身の抵抗のために、第2方向D2とは逆の側の端に近い位置ほど、駆動IC26Dが出力した電位からずれる(図22参照)。第3電極51bにおいて、保持信号の電位は、第3電極51b自身の抵抗のために、第2方向D2の端に近い位置ほど、電圧生成回路23が出力した電位からずれる(図23参照)。このため、ΔVtの減少傾向とΔVbの増大傾向が相殺しあう結果、第2実施形態によれば、駆動IC26Dと電圧生成回路23が個別の電極53および第3電極51bに対して同じ側にある態様に比べて、第1電極531と第3電極51bの電圧、および第2電極532と第3電極51bの電圧を、圧電体内の第2方向D2に沿った位置によらず、より一定に近づけることができる(図24および図11参照)。その結果、各圧力室Chからインク滴の吐出を行う際に、各圧力室Chを封止している振動板36の各部分同士の共振をより活用して、インク滴の吐出を行うことができる。
【0120】
C.第3電極の変形例:
(1)第3電極の変形例1:
図25は、第3電極の変形例1における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。第3電極の変形例1の液体吐出ヘッド26cにおいては、分断部51tcの構成が、第1実施形態の分断部51tとは異なる。第3電極の変形例1の他の点は、第1実施形態と同じである。
【0121】
第1実施形態の分断部51tは、振動板36上において、第3電極51が設けられていない部分である。そして、振動板36の絶縁層362は、分断部51tにおいても存在している(図5参照)。第3電極の変形例1においては、第3電極51cは、第1圧電体521および第2圧電体522、ならびに第1圧電体521および第2圧電体522が設けられている振動板36の面の一部を覆っている。そして、液体吐出ヘッド26cは、第3電極51cを貫通して振動板36に至る凹部の形態で、分断部51tcを備えている。その結果、分断部51tcにおいては、振動板36の絶縁層362は、存在しない。このような分断部51tcは、たとえば、振動板36および圧電体52の上に第3電極51cを形成した後、イオンミリングを行うことにより、形成することができる。振動板36のうち分断部51tcが設けられている部位の厚みTtは、振動板36のうち分断部51tcが設けられていない部位の厚みTpの70%である。このような態様としても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
(2)第3電極の変形例2:
図26は、第3電極の変形例2における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。第3電極の変形例2の液体吐出ヘッド26dにおいては、分断部51tdの構成が、第1実施形態の分断部51tとは異なる。第3電極の変形例2の他の点は、第1実施形態と同じである。
【0123】
第1実施形態の分断部51tは、振動板36上において、第3電極51が設けられていない部分である(図5参照)。そして、第3電極51の第4部分514は、第1圧電体521が接触している振動板36の絶縁層362の平面と、第1圧電体521と、の境界B1を塞いでいる。3電極51の第5部分515は、第2圧電体522が接触している振動板36の絶縁層362の平面と、第2圧電体522と、の境界B2を塞いでいる。
【0124】
第3電極の変形例2においては、分断部51tdは、振動板36上に加えて、圧電体52の側面および上面に及んでいる。すなわち、第3電極の変形例2においては、第3電極51dの第1部分511dと、第2部分512dとは、圧電体52の上面のみに設けられている。そして、第1部分511dの第1方向D1の幅と、第2部分512dの第1方向D1の幅は、個別電極53の第1方向の幅よりも狭い。このような態様としても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0125】
(3)第3電極の変形例3:
図27は、第3電極の変形例3における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。第3電極の変形例3の液体吐出ヘッド26eにおいては、分断部51teの構成が、第1実施形態の分断部51tとは異なる。第3電極の変形例3の他の点は、第1実施形態と同じである。
【0126】
第1実施形態の分断部51tは、振動板36上において、第3電極51が設けられていない部分である。そして、第3電極51の第4部分514および第5部分515が振動板36上に設けられている(図5参照)。分断部51tは、第4部分514と第5部分515の間に位置する。
【0127】
第3電極の変形例3においては、分断部51teは、圧電体52の上面において、第3電極51eの第1部分511eの両側、および第2部分512eの両側に設けられている。一つの分断部51teは、第1部分511eと第4部分514eの間に位置する。他の一つの分断部51teは、第2部分512eと第5部分515eの間に位置する。すなわち、分断部51teは、圧電体52を挟んで個別の電極53の一つと向かい合う部位に、2個、設けられている。このような態様とすれば、除去加工により分断部51teを設ける際に、振動板36の一部を除去してしまう可能性を低くすることができる。また、このような態様としても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0128】
(4)第3電極の変形例4:
図28は、第3電極の変形例4における圧力室基板34と、振動板36と、圧電素子38と、の構造を模式的に示す断面図である。第3電極の変形例4の液体吐出ヘッド26fにおいては、分断部51tfの構成が、第1実施形態の分断部51tとは異なる。第3電極の変形例4の他の点は、第1実施形態と同じである。
【0129】
第1実施形態の分断部51tは、振動板36上において、第3電極51が設けられていない部分である。そして、分断部51tの第1方向D1の幅は、隣り合う圧力室Chを区画する構造の第2方向D2における幅よりも小さい(図5参照)。
【0130】
第3電極の変形例4においては、第3部分513の第2方向D2における幅Wtは、第1圧力室Ch1と第2圧力室Ch2とを含む各圧力室Chを区画する壁部の第2方向D2における幅Wbよりも大きい。第3電極の変形例4は、それ以外の点については、第3電極51fの第1部分511f、第2部分512f、第4部分514f、第5部分515fの構成を含め、第1実施形態と同じである。このような態様としても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0131】
D.他の形態:
D1.他の形態1:
(1)上記第1実施形態においては、第3電極51は、第1部分511と、第2部分512と、第3部分513と、第4部分514と、第5部分515と、を有する(図5参照)。しかし、第3電極51は、第1部分511と第4部分514との間に、他の構成を有していてもよい。第3電極51は、第4部分514と第3部分513との間に、他の構成を有していてもよい。第3電極51は、第2部分512と第5部分515との間に、他の構成を有していてもよい。第3電極51は、第5部分515と第3部分513との間に、他の構成を有していてもよい。
【0132】
(2)上記第1実施形態においては、第3電極51の第3部分513は、第2方向D2について一定の幅を有している(図5参照)。しかし、第3電極51の第3部分513は、第2方向D2について一定の幅を有していない態様とすることもできる。そのような態様においては、第3幅W3は、第3部分513のうち、第2方向D2について最も狭い幅を有している部分の幅とする。
【0133】
(3)上記第1実施形態においては、第3電極51の第1部分511は、第3電極51のうち、第1圧電体521を挟んで第1電極531と向かい合う部分である(図5参照)。しかし、第3電極51の第1部分511は、たとえば、第1圧電体521の側面など、第1電極531と向かい合う領域以外の領域に及んでもよい。そのような態様においては、第1幅は、第1圧電体521の側面上に設けられた第3電極51の第2方向D2の幅でありうる。
【0134】
上記第1実施形態においては、第3電極51の第2部分512は、第3電極51のうち、第2圧電体522を挟んで第2電極532と向かい合う部分である(図5参照)。しかし、第3電極51の第2部分512は、たとえば、第2圧電体522の側面など、第2電極532と向かい合う領域以外の領域に及んでもよい。そのような態様においては、第2幅は、第2圧電体522の側面上に設けられた第3電極51の第2方向D2の幅でありうる。
【0135】
第3電極51の第4部分514も、振動板36上に設けられてもよいし、第1圧電体521の側面に及んでもよい。第3電極51の第5部分515も、振動板36上に設けられてもよいし、第2圧電体522の側面に及んでもよい。
【0136】
(4)本開示の技術は、特に、個別電極の第1方向の幅が個別電極の第2方向の長さの1/4以下の態様において特に有効であり、個別電極の第1方向の幅が個別電極の第2方向の長さの1/5以下の態様においてさらに有効であり、個別電極の第1方向の幅が個別電極の第2方向の長さの1/10以下の態様においていっそう有効である。なお、個別電極の第1方向の幅は、それぞれの個別電極のうち、第1方向について最も大きい部分の幅とする。個別電極の第2方向の長さは、それぞれの個別電極のうち、第2方向について最も大きい部分の長さとする。
上記実施形態においては、第2方向は第1方向と直交している。しかし、第2方向は、第1方向と90度以外の角度で交差している方向であってもよい。
【0137】
D2.他の形態2:
上記第1実施形態においては、第3電極51は、第1部分511と、第2部分512と、第3部分513と、第4部分514と、第5部分515と、を有する(図5参照)。しかし、第3電極51は、第1部分511と、第2部分512と、第3部分513と、を有し、第4部分514と、第5部分515と、を有さない態様とすることもできる。
【0138】
D3.他の形態3:
上記第1実施形態においては、第1圧力室Ch1からみたとき、第1電極531、第1圧電体521、および第3電極51は、第1圧力室Ch1に近い方から第1電極531、第1圧電体521、第3電極51の順に設けられている(図5参照)。第2圧力室Ch2からみたとき、第2電極532、第2圧電体522、および第3電極51は、第2圧力室Ch2に近い方から第2電極532、第2圧電体522、第3電極51の順に設けられている(図5参照)。
【0139】
しかし、第1電極531、第1圧電体521、および第3電極51は、第1圧力室Ch1からみたとき、第1圧力室Ch1に近い方から第3電極51、第1圧電体521、第1電極531の順に設けることもできる。第2電極532、第2圧電体522、および第3電極51は、第2圧力室Ch2からみたとき、第2圧力室Ch2に近い方から第3電極51、第2圧電体522、第2電極532の順に設けることもできる。
【0140】
D4.他の形態4:
上記第1実施形態においては、第3電極51は、第1圧電体521を覆い、かつ、第2圧電体522を覆っている(図5参照)。しかし、第3電極は、第3電極の変形例2,3に示すように、圧電体の一部を覆わない態様とすることもできる(図26図27参照)。
【0141】
D5.他の形態5:
上記第1実施形態においては、第3電極51は、単一の部材によって構成されている(図5参照)。第3電極51は、たとえば、Z方向について複数の層を有するなど、複数の素材いで構成することができる。
【0142】
D6.他の形態6:
上記第1実施形態においては、第1電極531に対しては、駆動IC26Dから、インクの吐出量に応じて異なる駆動信号が供給される(図4の圧電素子38の左側参照)。第2電極532に対しても、駆動IC26Dから、インクの吐出量に応じて異なる駆動信号を供給される。しかし、個別の電極に駆動信号を供給する駆動信号供給回路は、個別の電極ごとに設けられている態様に限られない。たとえば、個別の電極に駆動信号を供給する駆動信号供給回路は、一つのIC(Integrated Circuit)で構成されてもよい。また、個別の電極に駆動信号を供給する駆動信号供給回路は、インクの吐出量によらず電圧が変化しない保持信号を供給する保持信号供給回路や他の回路とともに一つのICで構成されてもよい。
【0143】
D7.他の形態7:
上記第2実施形態においては、駆動IC26Dは、第1電極531および第2電極532を含む各電極53に対して、第2方向D2の側から接続されている(図21参照)。これに対して、電圧生成回路23は、第3電極51bに対して、第2方向D2とは逆の側から接続されている。しかし、駆動IC26Dと電圧生成回路23は、電極に対して同じ側から接続されていてもよい。
【0144】
D8.他の形態8:
上記第2実施形態においては、第3電極51bの第3部分513bにおける第2方向D2の側の端部は、第1部分511bにおける第2方向D2の側の端部および第2部分512bにおける第2方向D2の側の端部よりも、第2方向D2とは逆の側に位置する(図21参照)。
【0145】
しかし、たとえば、駆動IC26Dが、電極に対して第2方向D2の側から接続されている態様においては、第3電極の第3部分における第2方向の側の端部は、第1部分における第2方向の側の端部および第2部分における第2方向の側の端部よりも、第2方向側に位置することになる。液体吐出ヘッド26は、そのような態様とすることもできる。
【0146】
D9.他の形態9:
上記第1実施形態においては、第3幅W3は、第1幅W1および第2幅W2の1/10である(図5参照)。しかし、第3幅W3の第1幅W1および第2幅W2に対する比は、5%、15%、20%、25%など、他の値であってもよい。ただし、第3幅W3の第1幅W1および第2幅W2に対する比は、1/2より小さいことが好ましい。
【0147】
D10.他の形態10:
上記第1実施形態においては、第1部分511の第2方向D2についての抵抗値は、第1圧電体521の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して、1/20以上である。第2部分512の第2方向D2についての抵抗値が、第2圧電体522の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上である。しかし、本開示の技術は、他の態様に適用した場合にも有効である。
【0148】
D11.他の形態11:
上記第3電極の変形例1の液体吐出ヘッド26cは、第3電極51cを貫通して振動板36に至る凹部の形態で、分断部51tcを備えている(図25参照)。そして、振動板36のうち分断部51tcが設けられている部位の厚みTtは、振動板36のうち分断部51tcが設けられていない部位の厚みTpの70%である。
【0149】
しかし、振動板36のうち分断部51tcが設けられている部位の厚みTtは、振動板36のうち分断部51tcが設けられていない部位の厚みTpの50%や90%など、他の割合とすることができる。また、分断部は、図5、ならびに図26図28に示すように、振動板に設けられた凹部ではない態様で設けることができる。
【0150】
D12.他の形態12:
上記第3電極の変形例4においては、第3部分513の第2方向D2における幅Wtは、第1圧力室Ch1と第2圧力室Ch2とを含む各圧力室Chを区画する壁部の第2方向D2における幅Wbよりも大きい(図28参照)。しかし、第3電極の変形例1に示すように、第3部分513の第2方向D2における幅は、第1圧力室Ch1と第2圧力室Ch2とを含む各圧力室Chを区画する壁部の第2方向D2における幅よりも小さくすることもできる(図25参照)。
【0151】
D13.他の形態13:
上記実施形態においては、液体吐出ヘッド26と、液体吐出ヘッド26からの吐出動作を制御する制御部21と、を有する、液体吐出装置100について説明した。しかし、本開示の技術は、これに限らず、たとえば、制御部を備えず、ネットワークを介して制御信号を受信する液体吐出装置として実現することもできる。
【0152】
E.さらに他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0153】
(1)本開示の一形態によれば、液体を吐出する液体吐出ヘッドが提供される。この液体吐出ヘッドは、第1圧電体と、前記第1圧電体と第1方向に異なる位置に配されている第2圧電体と、前記第1圧電体と電気的に接続し、前記第2圧電体と電気的に接続しない第1電極と、前記第2圧電体と電気的に接続し、前記第1圧電体と電気的に接続しない第2電極と、前記第1圧電体と前記第2圧電体の両方に電気的に接続する第3電極と、を有する。前記第3電極のうち前記第1圧電体に対応する位置に配されている第1部分において、前記第1方向と交差する第2方向における幅は、第1幅であり、前記第3電極のうち前記第2圧電体に対応する位置に配されている第2部分において、前記第2方向における幅は、第2幅であり、前記第3電極のうち前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間に配されている第3部分において、前記第2方向における幅は、前記第1幅と前記第2幅よりも小さい第3幅である。
このような態様においては、第3電極は、第1圧電体と第2圧電体の間の第3部分において、第1部分および第2部分よりも、第2方向について幅が狭く設けられている。このため、第1電極に第3電極とは異なる電位が付与され、第2電極がOFFされているときにおいて、第3電極の第1部分の電位は、第1方向よりも第2方向から付与されることとなる。また、第1電極と第2電極の両方に第3電極とは異なる電位が付与されているときにおいても、第3電極の第1部分の電位は、第1方向よりも第2方向から付与されることとなる。よって、第3部分の幅が第1部分および第2部分の幅と等しい態様に比べて、第1電極に第3電極とは異なる電位が付与され、第2電極がOFFされているときと、第1電極と第2電極に第3電極とは異なる電位が付与されているときとにおける、第2方向に沿った位置ごとの第3電極の第1部分と第1電極との電位の違いを、小さくすることができる。
同様に、第3部分の幅が第1部分および第2部分の幅と等しい態様に比べて、第2電極に第3電極とは異なる電位が付与され、第1電極がOFFされているときと、第1電極と第2電極に第3電極とは異なる電位が付与されているときとにおける、第2方向に沿った位置ごとの第3電極の第2部分と第2電極との電位の違いを、小さくすることができる。
【0154】
(2)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極のうち、前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間であって、前記第3部分よりも前記第1方向において前記第1圧電体側に配されている第4部分において、前記第2方向における幅は、前記第3幅よりも大きい第4幅であり、前記第3電極のうち、前記第1圧電体と前記第2圧電体の前記第1方向における間であって、前記第3部分よりも前記第1方向において前記第2圧電体側に配されている第5部分において、前記第2方向における幅は、前記第3幅よりも大きい第5幅である、態様とすることもできる。
【0155】
(3)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、さらに、液体を収容し、前記第1圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第1圧力室と、液体を収容し、前記第2圧電体の歪みによって液体に圧力が付与されるように構成されている第2圧力室と、が設けられた圧力室基板を備え、前記第1電極、前記第1圧電体、および前記第3電極は、前記第1圧力室からみたとき、前記第1圧力室に近い方から前記第1電極、前記第1圧電体、前記第3電極の順に設けられており、前記第2電極、前記第2圧電体、および前記第3電極は、前記第2圧力室からみたとき、前記第2圧力室に近い方から前記第2電極、前記第2圧電体、前記第3電極の順に設けられている、態様とすることもできる。
【0156】
(4)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極は、前記第1圧電体を覆い、かつ、前記第2圧電体を覆っている、態様とすることもできる。
【0157】
(5)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極は、単一の部材によって構成されている、態様とすることもできる。
【0158】
(6)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、さらに、前記第1電極に対して、液体の吐出量に応じて異なる駆動信号を供給することができ、前記第2電極に対して、液体の吐出量に応じて異なる駆動信号を供給することができる、駆動信号供給回路と、前記第3電極に対し、液体の吐出量によらず電圧が変化しない保持信号を供給する保持信号供給回路と、を有する、態様とすることもできる。
【0159】
(7)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記駆動信号供給回路は、前記第1電極および前記第2電極に対して、前記第2方向における一方の側から接続されており、前記保持信号供給回路は、前記第3電極に対して、前記第2方向における他方の側から接続されている、態様とすることもできる。
【0160】
(8)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3電極の前記第3部分における前記一方の側の端部は、前記第1部分における前記一方の側の端部よりも前記他方の側にあり、前記第2部分における前記一方の側の端部よりも前記他方の側にある、態様とすることもできる。
【0161】
(9)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第3幅は、前記第1幅の1/2より小さく、かつ、前記第2幅の1/2より小さい、態様とすることもできる。
【0162】
(10)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1部分の前記第2方向についての抵抗値が、前記第1圧電体の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上であり、前記第2部分の前記第2方向についての抵抗値が、前記第2圧電体の抗電界から35V/1μsecの電圧勾配にて駆動させたときの最大電流の逆数に対して1/20以上である、態様とすることもできる。
【0163】
(11)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、前記第1圧電体および前記第2圧電体は、前記第1圧電体の歪みおよび前記第2圧電体の歪みによって変形される一つの振動板の上に設けられており、前記第3電極は、前記第1圧電体および前記第2圧電体、ならびに前記第1圧電体および前記第2圧電体が設けられている前記振動板の面の一部を覆っており、前記液体吐出ヘッドは、前記第3電極を貫通して前記振動板に至る凹部を備えており、前記振動板のうち前記凹部が設けられている部位の厚みは、前記振動板のうち前記凹部が設けられていない部位の厚みの1/2以上である、態様とすることもできる。
【0164】
(12)上記形態の液体吐出ヘッドにおいて、さらに、液体を収容し、前記第1圧電体の歪みによって、液体に圧力が付与されるように構成されている第1圧力室と、液体を収容し、前記第2圧電体の歪みによって、液体に圧力が付与されるように構成されている第2圧力室と、が設けられた圧力室基板を備え、前記第3部分において、前記第1方向における幅は、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを区画する構造の前記第1方向における幅よりも大きい、態様とすることもできる。
【0165】
(13)本開示の他の形態によれば、上記形態の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドからの吐出動作を制御する制御部と、を有する、液体吐出装置が提供される。
【0166】
上述した本開示の各形態の有する複数の構成要素はすべてが必須のものではなく、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、適宜、前記複数の構成要素の一部の構成要素について、その変更、削除、新たな他の構成要素との差し替え、限定内容の一部削除を行うことが可能である。また、上述の課題の一部又は全部を解決するため、あるいは、本明細書に記載された効果の一部又は全部を達成するために、上述した本開示の一形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部を上述した本開示の他の形態に含まれる技術的特徴の一部又は全部と組み合わせて、本開示の独立した一形態とすることも可能である。
【符号の説明】
【0167】
14…液体容器、20…制御ユニット、21…制御部、22…搬送機構、23…電圧生成回路、24…移動機構、26…液体吐出ヘッド、32…流路基板、34…圧力室基板、36…振動板、38…圧電素子、46…ノズル板、51…第3電極、52…圧電体、53…電極、100…液体吐出装置、511…第1部分、511b…第1部分、512…第2部分、513…第3部分、513CP…第3部分、513b…第3部分、521…第1圧電体、522…第2圧電体、531…第1電極、532…第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28