(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20231212BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K5/24 A
H02K11/33
(21)【出願番号】P 2019178593
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 大介
(72)【発明者】
【氏名】村上 淳
(72)【発明者】
【氏名】赤石 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 和志
(72)【発明者】
【氏名】田村 翼
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128142(JP,A)
【文献】特開2019-112977(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151816(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/044521(WO,A1)
【文献】特開2011-223675(JP,A)
【文献】特開平07-184348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ軸を中心として回転するロータを有するモータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、
前記モータと電気的に接続されるインバータを収容するインバータケースと、を備え、
前記インバータケースは、上側に開口し、前記モータ軸に交差する方向で前記モータハウジングの横に配置され、
前記インバータケースと前記モータハウジングとは互いに繋がっており、
前記インバータケースは、底壁と、前記底壁の四方を囲む複数の壁部と、
上下方向に対して傾く傾斜壁と、を有し、
前記複数の壁部は、前記モータ軸に沿って配置され上下方向に広がる第1壁部および第2壁部と、前記モータ軸と直交する方向に沿って配置され上下方向に広がる第3壁部および第4壁部を有し、
前記第1壁部は、前記第2壁部よりも前記モータハウジングから離れた側に位置し、
前記傾斜壁は、前記底壁と前記第2壁部との間に設けられ、
前記底壁は、前記底壁の壁面に沿って広がる三角形以上の多角形状の第1リブを有する、
前記第1リブは、前記底壁と前記傾斜壁とのうち前記底壁のみに設けられている、
モータユニット。
【請求項2】
複数の前記第1リブは、前記底壁の壁面に沿って周期的に配列される、
請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
複数の前記第1リブが、ハニカム構造を構成している、
請求項2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記第1リブは、前記インバータケースの内側に位置する前記底壁の壁面に設けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項5】
少なくとも1つの前記第1リブは、前記底壁の壁面に設けられたボスに接続されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第1壁部は、前記第1壁部の壁面に沿って広がる三角形以上の多角形状の第2リブを有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記第2壁部は、前記第2壁部の壁面に沿って広がる三角形以上の多角形状の第2リブを有する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項8】
複数の前記第2リブは、前記第1壁部の壁面もしくは前記第2壁部の壁面に沿って周期的に配列される、
請求項6または請求項7に記載のモータユニット。
【請求項9】
複数の前記第2リブが、ハニカム構造を構成している、請求項6から8のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項10】
前記傾斜壁は、前記インバータケースの内側に位置する壁面に、前記モータ軸の周方向に沿って延びる複数の第3リブを有する、
請求項1から9のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項11】
前記インバータケースと前記モータハウジングは、単一の部材の一部であり、
前記傾斜壁は、前記モータハウジングの周壁部の一部によって構成されている、請求項10に記載のモータユニット。
【請求項12】
前記インバータケースと前記モータハウジングは、単一の部材の一部である、請求項1から10のいずれか1項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々のモータの振動対策が知られている。例えば、特許文献1には、振動を励起する加振力の低減で振動を低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータを収容するモータハウジングに、インバータを収容するインバータケースが繋がった構造を有するモータユニットにおいては、モータ駆動時に発生したモータ振動によってインバータケースの膜共振が励起されやすい。そのため、単にモータに対して振動対策を施すのみでは、上記のようなモータユニットに生じる振動を十分に低減しにくい場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモータユニットの一つの態様は、モータ軸を中心として回転するロータを有するモータと、前記モータを収容するモータハウジングと、前記モータと電気的に接続されるインバータを収容するインバータケースと、を備える。前記インバータケースは、上側に開口し、前記モータ軸に交差する方向で前記モータの横に配置される。前記インバータケースと前記モータハウジングとは互いに繋がっている。前記インバータケースは、底壁と、前記底壁の四方を囲む複数の壁部と、上下方向に対して傾く傾斜壁と、を有する。前記複数の壁部は、前記モータ軸に沿って上下方向に広がる第1壁部および第2壁部と、前記モータ軸と直交する方向に沿って上下方向に広がる第3壁部および第4壁部を有する。前記第1壁部は、前記第2壁部よりも前記モータハウジングから離れた側に位置する。前記傾斜壁は、前記底壁と前記第2壁部との間に設けられている。前記底壁は、前記底壁の壁面に沿って広がる三角形以上の多角形状の第1リブを有する。前記第1リブは、前記底壁と前記傾斜壁とのうち前記底壁のみに設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、モータユニットに生じる振動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態におけるモータユニットの概念図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるモータユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態におけるモータハウジングおよびインバータケースを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1リブの有無による振動レベルの違いを示すグラフである。
【
図5】
図5は、第2実施形態のハウジングの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態のハウジングの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。
【0009】
ただし、+X方向が車両後方であり、-X方向が車両前方となることもありうる。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両左方であり、-Y方向が車両右方である。但し、+X方向が車両後方となる場合には、+Y方向が車両右方であり、-Y方向が車両左方となることもありうる。すなわち、X軸の方向に関わらず、単に+Y方向が車両左右方向の一方側となり、-Y方向が車両左右方向の他方側となる。
【0010】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態におけるモータユニットの概念図である。
図2は、第1実施形態におけるモータユニットの斜視図である。
図3は、第1実施形態におけるモータハウジングおよびインバータケースの一部を示す斜視図である。
本実施形態のモータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0012】
モータユニット1は、
図1に示すように、モータ2と、伝達機構3と、ハウジング6と、ハウジング6内に収容されるオイルOと、インバータユニット110と、オイルクーラー9と、を備える。
モータ2は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、を備える。ハウジング6は、モータ2を収容するモータハウジング60と、伝達機構3を収容するギヤハウジング62とを有する。すなわち、モータユニット1は、モータハウジング60を備える。
【0013】
モータ2は、ステータ30の内側にロータ20が配置されるインナーロータ型モータである。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、ロータマグネット(図示略)と、を有する。
【0014】
シャフト21は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸J2を中心とする。シャフト21は、内部に中空部22を有する中空シャフトである。シャフト21は、モータハウジング60からギヤハウジング62内へ突出する。ギヤハウジング62に突出するシャフト21の端部は、伝達機構3に連結される。具体的には、シャフト21は、第1ギヤ41に連結される。
【0015】
ステータ30は、ロータ20を径方向外側から囲む。ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、モータハウジング60に保持される。コイル31はインバータユニット110に接続される。
【0016】
伝達機構3は、ギヤハウジング62に収容される。伝達機構3は、モータ軸J2の軸方向一方側においてシャフト21に接続される。伝達機構3は、減速装置4と差動装置5とを有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0017】
減速装置4は、モータ2のシャフト21に接続される。減速装置4は、第1ギヤ41と、第2ギヤ42と、第3ギヤ43と、中間シャフト45とを有する。第1ギヤ41は、モータ2のシャフト21に連結される。中間シャフト45は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びている。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45の両端に固定される。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2ギヤ42は、第1ギヤ41に噛み合う。第3ギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0018】
モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、第1ギヤ41、第2ギヤ42、中間シャフト45および第3ギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ51に伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0019】
差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車軸に伝達する。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝達する。差動装置5は、減速装置4の第3ギヤに噛み合うリングギヤ51のほか、いずれも図示しないギヤハウジング、ピニオンギヤ、ピニオンシャフト、サイドギヤ等を有する。
【0020】
ギヤハウジング62内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。本実施形態では、モータハウジング60の底部は、ギヤハウジング62の底部より上側に位置する。この構成により、モータ2を冷却した後のオイルOを、モータハウジング60の下部領域からギヤハウジング62のオイル溜りPに容易に回収できる。
【0021】
オイル溜りPには、差動装置5の一部が浸かる。オイル溜りPに溜るオイルOは、差動装置5の動作によってかき上げられる。かき上げられたオイルOの一部は、シャフト21内に供給される。オイルOの他の一部は、ギヤハウジング62内に拡散され、減速装置4および差動装置5の各ギヤに供給される。減速装置4および差動装置5の潤滑に使用されたオイルOは、滴下してギヤハウジング62の下側に位置するオイル溜りPに回収される。
【0022】
インバータユニット110は、モータ2と電気的に接続されるインバータ110aと、インバータ110aを収容するインバータケース111と、インバータケース111に固定されるカバー112と、を有する。すなわち、モータユニット1は、インバータ110aと、インバータケース111と、を備える。インバータ110aは、モータ2に供給される電流を制御する。
図2に示すように、インバータユニット110は、モータハウジング60の横に位置し、モータハウジング60の外周面に繋がっている。本実施形態においてインバータユニット110は、モータハウジング60の車両後方側(-X側)に位置する。
図1に示すように、インバータユニット110には、車両のラジエータから延びる冷却水配管95が接続される。冷却水配管95は、インバータユニット110からオイルクーラー9に延びる。
【0023】
オイルクーラー9は、モータハウジング60の側面に位置する。オイルクーラー9には、インバータユニット110から延びる冷却水配管95が接続される。オイルクーラー9には、電動オイルポンプ10から吐出されるオイルOが供給される。オイルクーラー9の内部を通過するオイルOは、冷却水配管95を通過する冷却水との熱交換により冷却される。オイルクーラー9で冷却されたオイルOはモータ2に供給される。
【0024】
電動オイルポンプ10は、ポンプモータ10aにより駆動されるオイルポンプである。電動オイルポンプ10は、オイル溜りPからオイルOを吸い上げ、オイルクーラー9に供給する。ポンプモータ10aは、電動オイルポンプ10のポンプ機構を回転させる。モータユニット1において、ポンプモータ10aの回転軸J6は、モータ軸J2と平行である。ポンプモータ10aを有する電動オイルポンプ10は、回転軸J6が延びる方向に長尺となり易い。ポンプモータ10aの回転軸J6をモータ軸J2と平行とすることで、電動オイルポンプ10がモータユニット1の径方向に突出しにくくなる。これにより、モータユニット1の径方向の寸法を小型化することができる。
【0025】
図1に示すように、オイルOは、ハウジング6に設けられた油路90内を循環する。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。油路90は、オイルOを循環させモータ2を冷却する。
【0026】
オイルOは、減速装置4および差動装置5の潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤハウジング62下部のオイル溜りPに溜る。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0027】
図1に示すように、油路90は、モータ2の下側のオイル溜りPからモータ2を経て、再びモータ2の下側のオイル溜りPに導くオイルOの経路である。油路90は、モータ2の内部を通る第1の油路91と、モータ2の外部を通る第2の油路92と、を有する。オイルOは、第1の油路91および第2の油路92において、モータ2を内部および外部から冷却する。
【0028】
第1の油路91において、オイルOは、オイル溜りPから差動装置5によりかき上げられてロータ20の内部に導かれる。オイルOは、ロータ20からコイル31に向かって噴射され、ステータ30を冷却する。ステータ30を冷却したオイルOは、モータハウジング60の下部領域を経由してギヤハウジング62のオイル溜まりPに移動する。
【0029】
第2の油路92において、オイルOは、電動オイルポンプ10によってオイル溜りPから汲み上げられる。オイルOは、オイルクーラー9を経由してモータ2の上部に汲み上げられ、モータ2の上側からモータ2に供給される。モータ2を冷却したオイルOは、モータハウジング60の下部領域を経由してギヤハウジング62のオイル溜まりPに移動する。
【0030】
(ハウジング)
図1に示すように、ハウジング6は、モータ軸J2に沿って延びる筒状のモータハウジング60と、モータハウジング60の軸方向一方側(-Y側)の端部に締結される第1のカバー部材61と、モータハウジング60の軸方向他方側の端部に締結されるギヤハウジング62と、を有する。
【0031】
モータハウジング60は、
図2および
図3に示すように、モータ2を径方向外側から囲む筒状の周壁部60aと、周壁部60aの軸方向一方側(-Y側)の端部から径方向に広がるフランジ部60bと、を少なくとも有する。
【0032】
本実施形態におけるモータハウジング60の周壁部60aの外周面には、インバータケース111が繋がっている。本実施形態の場合、モータハウジング60およびインバータケース111は、単一のダイカスト部品からなり、単一の部材の一部である。周壁部60aの内側には、モータ2のステータ30が固定される。フランジ部60bには、第1のカバー部材61がボルト締結される。
【0033】
第1のカバー部材61は、軸方向一方側(-Y側)を向く面に、複数の車体固定部61aを有する。モータユニット1において、車体固定部61aは、ボルトが締結されるボスである。モータユニット1は、車体固定部61aに締結されるボルトにより、マウントブラケットまたはインシュレータを介して車両のフレームに固定される。
【0034】
図1に示すように、ギヤハウジング62は、内部に伝達機構3を収容する。図示は省略するが、ギヤハウジング62は、軸方向他方側(+Y側)を向く面に、複数の車体固定部を有する。モータユニット1において、車体固定部は、ボルトが締結されるボスである。モータユニット1は、車体固定部に締結されるボルトにより、マウントブラケットまたはインシュレータを介して車両のフレームに固定される。
【0035】
(インバータケース)
インバータケース111は、
図3に示すように、上側(+Z側)に開口し、モータ軸J2に交差する方向でモータハウジング60の横に配置される。本実施形態においてインバータケース111は、モータハウジング60の車両後方側(-X側)に配置される。
【0036】
インバータケース111は、
図3に示すように、底壁113と、底壁の113の四方を囲む4つの壁部114と、フランジ部111aと、を有し、上側に開口する箱形状をなす。底壁113は、上下方向と直交する方向に広がっている。4つの壁部114は、モータ軸J2に沿って配置され上下方向に広がる第1壁部115および第2壁部116と、モータ軸J2と直交する方向に沿って配置され上下方向に広がる第3壁部117および第4壁部118である。
【0037】
インバータケース111を構成する4つの壁部114のうち、第1壁部115は、第2壁部116よりもモータハウジング60から離れた側に位置する。第2壁部116は、モータハウジング60の周壁部60aの外周面から上方(+Z側)に延びており、その上端は、第1壁部115の上端よりも上方に位置する。第1壁部115および第2壁部116の軸方向一方側(-Y側)の端部側には、第3壁部117が位置し、第1壁部115および第2壁部116の軸方向他方側(+Y側)の端部側には、第4壁部118が位置する。高さ位置の異なる第1壁部115および第2壁部116を繋ぐ第3壁部117および第4壁部118は、第2壁部116側から第1壁部115側(-X側)へ向かって斜め下方に延びている。このため、インバータケース111の開口111bは、上下方向(Z方向)に対して斜めに傾いており、第1壁部115側が低い。
【0038】
フランジ部111aは、4つの壁部114のうち底壁113側とは反対側の端部、すなわち各壁部114の上端側に位置する。フランジ部111aには、カバー112がボルト締結される。これにより、カバー112によって、インバータケース111の上側の開口111bが閉じられている。
【0039】
本実施形態における底壁113は、第1リブ71を有する。第1リブ71は、底壁113のうち、上方(+Z側)を向く壁面113aに設けられている。壁面113aは、インバータケース111の内壁面の一部を構成する面である。すなわち、壁面113aは、インバータケース111の内側に位置する壁面である。第1リブ71は、壁面113aから上側に突出している。
【0040】
第1リブ71は、壁面113aに沿って広がる三角形以上の多角形状のリブである。本実施形態において第1リブ71は、上下方向に見て、多角環状のリブである。第1リブ71は、例えば、上下方向に見て、正六角環状のリブである。なお、第1リブ71は、上下方向に見て、三角形以上、五角形以下の多角形状であってもよいし、七角形以上の多角形状であってもよい。
【0041】
本実施形態において第1リブ71は、複数設けられている。複数の第1リブ71は、壁面113aに沿って周期的に配列される。本実施形態において第1リブ71は、ハニカム構造を構成している。すなわち、正六角環状の第1リブ71が、壁面113aに沿って互いに隙間なく並べられている。本実施形態では、壁面113a全体に、複数の第1リブ71によって構成されたハニカム構造が設けられている。
【0042】
複数の第1リブ71のうちの少なくとも1つは、インバータケース111の底壁113の壁面113aに設けられたボス82に接続されている。ボス82は、壁面113aから上方に垂直に延びるボスである。ボス82の上端は、第1リブ71よりも上方に突出している。ボス82は、例えば、円柱状である。図示は省略するが、ボス82は、インバータケース111内に収容されるインバータ110aを下方から支持する。ボス82には、例えば、インバータ110aを固定するボルトが締め込まれる。
【0043】
図3に示すように、インバータケース111は、底壁113と第2壁部116との間に、上下方向(Z方向)に対して傾く傾斜壁119を有している。傾斜壁119は、第2壁部116の下端部と底壁113のうち車両前方側(+X側)の端部とを繋いでいる。傾斜壁119は、第2壁部116の下端部から底壁113に向かうに従って下方に位置する向きに傾斜している。本実施形態において傾斜壁119は、筒状をなすモータハウジング60の周壁部60aの一部からなる。傾斜壁119のうちインバータケース111の内側に位置する壁面119aは、周壁部60aの外周面の一部である。壁面119aは、インバータケース111の内側に向けて凸となる曲面である。壁面119aは、上方および車両後方を向く。
【0044】
インバータケース111は、傾斜壁119の内側の壁面119aに、モータ軸J2の周方向に沿って延びる複数の第3リブ73を有している。複数の第3リブ73は、軸方向に間隔をおいて配置され、第2壁部116の下端側から底壁113側へ向かって延びている。いずれの第3リブ73も、傾斜壁119の壁面119a、すなわちモータハウジング60の周壁部60aの外周面に沿って湾曲している。第3リブ73は、例えば、3つ設けられている。
【0045】
本実施形態のインバータケース111の底壁113は、底壁113の壁面113aに沿って広がる三角形以上の多角形状の第1リブ71を有する。そのため、単に一方向に延びるリブを設ける場合に比べて、底壁113の剛性を好適に向上させることができる。また、底壁113に生じる振動を一方向だけでなく、多方向において抑制することができる。これにより、モータ2の振動に起因する底壁113の膜振動(膜共振)を好適に抑制できる。また、インバータケース111において、底壁113は、他の壁部114に比べて、平面的な広がりが大きくなりやすく、膜振動が生じやすい。そのため、底壁113の剛性を好適に向上させて膜振動を抑制できることで、インバータケース111に生じる膜振動を特に好適に抑制できる。したがって、モータユニット1に生じる振動を低減できる。これにより、モータユニット1から騒音が生じることを抑制できる。
【0046】
なお、第1リブ71におけるハニカム形状が小さくなるほど剛性が高まるが、その大きさは、インバータケース111の重量および強度に応じて選定できる。
【0047】
また、本実施形態においては、複数の第1リブ71が底壁113の壁面113aに沿って周期的に配列されている。そのため、底壁113の剛性を均一的に向上させやすく、底壁113において強度分布の偏りが生じることを抑制しやすい。これにより、より安定して底壁113に生じる振動を抑制でき、モータユニット1に生じる振動をより低減できる。
【0048】
また、本実施形態では、複数の第1リブ71は、ハニカム構造を構成している。ハニカム構造は、他の多角形状のリブが隙間なく配列された構造に比べて、曲げ強度および圧縮強度が高い点において有利である。そのため、底壁113の剛性をより好適に向上できる。これにより、モータユニット1の振動をより低減できる。また、第1リブ71の高さを比較的低くしても底壁113の剛性を確保しやすい。そのため、第1リブ71の高さを抑えてインバータケース111内の収容空間を広く確保することができる。これにより、インバータケース111の大型化を避けることが可能である。
【0049】
なお、本実施形態では、底壁113の内側の壁面113aに第1リブ71を設けたが、これに限らず、例えば、底壁113の外側の壁面に第1リブ71を設ける構成としてもよいし、内外壁面の両方に設けてもよい。
【0050】
本実施形態において、複数の第1リブ71のうち少なくとも一つは、底壁113の壁面113aに設けられたボス82に接続されている。第1リブ71を、比較的強度の高い部位であるボス82に接続させることで、第1リブ71による補強効果を高め、インバータケース111の剛性をさらに高めることができる。よって、膜振動およびそれに起因する騒音をより効果的に低減させることができる。
【0051】
本実施形態において、インバータケース111は、底壁113と第2壁部116との間に、上下方向に対して傾く傾斜壁119を有する。第2壁部116は、第1壁部115よりもモータハウジング60に近いため、底壁113と第2壁部116との間に設けられた傾斜壁119には、モータ2の振動が伝わりやすい。これに対して、本実施形態では、傾斜壁119の内側の壁面119aにモータ軸J2の周方向に沿って延びる第3リブ73を複数設けた。これら第3リブ73を複数設けることで、傾斜壁119の剛性を向上させることができ、傾斜壁119の振動を低減できる。これにより、インバータケース111における膜振動およびそれに起因する騒音をより抑制することができる。
【0052】
本実施形態において、インバータケース111は、モータハウジング60と単一部品となっており、インバータケース111の傾斜壁119がモータハウジング60の周壁部60aの一部によって構成されている。そのため、傾斜壁119に第3リブ73を設けることで、モータハウジング60の振動を抑制することもできる。これにより、モータハウジング60からインバータケース111に伝わる振動自体を低減することができ、インバータケース111に生じる振動をより低減できる。したがって、モータユニット1の振動をより低減できる。
【0053】
また、本実施形態のハウジング6では、モータハウジング60とインバータケース111とが互いに繋がった単一のダイカスト部品からなるため、モータハウジング60に対して別体のインバータケース111をボルトを用いて固定する場合に比べて、インバータケース111の振動を抑制でき、騒音を低減できる。
【0054】
次に、第1リブ71が設けられた場合と、第1リブ71が設けられない場合とで、インバータケース111に生じる振動の振動レベルを比較した結果について述べる。
図4は、第1リブ71の有無によって振動レベルが異なることを示すグラフである。
図4に示すように、第1リブ71を有する本実施形態の構成の場合、第1リブ71が無い従来の構成に比べると、振動レベルのピーク値が低くなっている。このように、インバータケース111の底壁113に複数のハニカム形状の第1リブ71を設けておくことで、底壁113の剛性が増加して振動レベルが低減し、底壁113からの騒音を抑えることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態におけるハウジング206の構成について述べる。
図5は、第2実施形態におけるハウジング206の構成を示す斜視図である。
【0056】
図5に示すように、本実施形態のハウジング206は、インバータケース111を構成する第1壁部115の外側の壁面115bに、複数のリブ集合部207を有している。本実施形態のインバータケース111においても、第1実施形態と同様に、底壁113の内側の壁面113aに、ハニカム構造を構成する複数の第1リブ71を有する。本実施形態において第1リブ71は、壁面113aの一部のみに設けられている。より詳細には、第1リブ71は、壁面113aのうち軸方向一方側寄りの部分のみに設けられている。すなわち、壁面113aのうち軸方向他方側寄りの部分には、第1リブ71が設けられていない。
なお、上記構成に限られず、例えば、壁面113aのうち軸方向一方側寄りの部分に電子基板等の部品を設ける場合は当該領域に第1リブ71を設けず、軸方向他方側に第1リブ71を設ける構成としてもよい。
【0057】
上述した複数のリブ集合部207は、第1壁部115の外側の壁面115bのうち、上半分側の領域に位置する。本実施形態では、例えば4つのリブ集合部207を有し、軸方向に沿って配列されている。
【0058】
各リブ集合部207は、例えば、8つの第2リブ72により構成されている。これら8つの第2リブ72は、それぞれ三角形状をなし、3つの頂点のうちの一つが図中の点Mを中心に互いに集合する向きで配列されている。
【0059】
本実施形態において第2リブ72の形状は、例えば、略直角三角形である。リブ集合部207のうち上下方向で隣り合う一対の第2リブ72Aどうしは、軸方向に沿い点Mを通る対象軸に対して略線対称な形状をなし、直角をなす頂点を上下方向で互いに対向させている。また、軸方向で隣り合う一対の第2リブ72Bどうしは、上下方向に沿い点Mを通る対象軸に対して線対称な形状をなし、直角をなす頂点を水平方向で互いに対向させている。
【0060】
なお、リブ集合部207の構成は、以下のように言い換えることもできる。リブ集合部207は、矩形枠状の枠状リブと、矩形枠状のリブの中央に位置する中央部と、中央部から枠状リブに向かって放射線状に延びる8つの放射リブと、を有する。中央部は、上述した点Mを含む。
【0061】
本実施形態によれば、モータハウジング60から離れた第1壁部115は、第1壁部115の壁面115bに沿って広がる三角形以上の多角形状の第2リブ72を有する。そのため、第1壁部115の膜振動を抑制し、モータユニット1の振動をより低減できる。これにより、騒音を抑える効果をより高めることができる。
【0062】
なお、本実施形態のインバータケース111は、第1壁部115の外側の壁面115bに複数の第2リブ72を有するが、これら複数の第2リブ72を第1壁部115の内側の壁面に有していてもよいし、両方の壁面に有していてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、第1壁部115の外側の壁面115bのうち上半分の領域に複数のリブ集合部207を備えているが、下半分の領域に複数のリブ集合部207を備えた構成としてもよいし、壁面115bの全体に複数のリブ集合部207を備えた構成としてもよい。
【0064】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態におけるハウジング306の構成について述べる。
図6は、第3実施形態におけるハウジング306の構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態のハウジング306は、インバータケース111を構成する第2壁部116の外側の壁面116bに、複数のリブ集合体307を有している。図示は省略するが、本実施形態のインバータケース111においても、第1実施形態と同様に、底壁113の内側の壁面113aに、ハニカム構造を構成する複数の第1リブ71を有する。
【0065】
上述した複数のリブ集合体307は、第2壁部116の外側の壁面116bのほぼ全域に配置されているが、一部の領域にだけ配置されていてもよい。本実施形態では、例えば4つのリブ集合体307が軸方向に沿って配列されている。リブ集合体307は、例えば、第2実施形態と同様に、直角三角形をなす第2リブ72の集合体である。
【0066】
本実施形態では、インバータケース111のうち、第1壁部115よりもモータハウジング60に近い第2壁部116に複数の第2リブ72を備えることで、モータ振動による第2壁部116の膜振動を好適に抑制できる。また、第2壁部116の膜振動を抑制できることで、モータハウジング60から離れた第1壁部115に第2壁部116から伝わる膜振動もより抑えることができる。これにより、モータユニット1の振動をより好適に低減でき、騒音を抑える効果をより高めることができる。
【0067】
また、本実施形態において第2壁部116は、周壁部60aに接続されている。そのため、モータ2から第2壁部116に特に振動が伝わりやすい。これに対して、本実施形態では、上述したように第2壁部116に第2リブ72を設けることで、第2壁部116の振動を抑制できる。そのため、モータ2からインバータケース111に伝わる振動をより好適に抑制できる。
【0068】
なお、本実施形態のインバータケース111は、第2壁部116の外側の壁面116bに複数の第2リブ72を有するが、これら複数の第2リブ72を第2壁部116の内側の壁面に有していてもよいし、両方の壁面に有していてもよい。
【0069】
また、第2実施形態および第3実施形態においては、複数の第2リブ72からなるリブ集合部207,307が配列された構成としたが、これに限られず、壁面115bまたは壁面116bに沿って複数の第2リブ72を周期的に配列した構成としてもよい。この構成によれば、第2リブ72が設けられた壁部の剛性を均一的に向上させやすく、壁部において強度分布の偏りが生じることを抑制しやすい。
【0070】
また、第2リブ72の形状は、上述した略直角三角形に限られず、インバータケース111を構成する第1壁部115の壁面115bあるいは第2壁部116の壁面116bに沿って広がる三角形以上の多角形であればよい。また、例えば、複数の第2リブ72がハニカム構造を構成してもよい。この構成によれば、第1リブ71と同様に、第2リブ72が設けられた壁部の振動をより好適に抑制できる。
【0071】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0072】
例えば、第2実施形態および第3実施形態を組み合わせた構成としてもよい。すなわち、第1壁部115および第2壁部116のそれぞれに複数の第2リブ72を有する構成としてもよい。なお、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0073】
1…モータユニット、2…モータ、116…第2壁部、20…ロータ、60…モータハウジング、71…第1リブ、72,72A,72B…第2リブ、73…第3リブ、82…ボス、110a…インバータ、111…インバータケース、111b…開口、113…底壁、113a,115b,116b,119a…壁面、114…壁部、115…第1壁部、117…第3壁部、118…第4壁部、119…傾斜壁、J2…モータ軸