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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】直流モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/29 20160101AFI20231212BHJP
   H02P 29/62 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
H02P7/29 G
H02P29/62
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019179162
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057984
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】飯田 崇史
(72)【発明者】
【氏名】内藤 政行
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-230049(JP,A)
【文献】特開平09-070195(JP,A)
【文献】特開2017-158324(JP,A)
【文献】特開2009-131128(JP,A)
【文献】特開平11-069867(JP,A)
【文献】特開2000-350486(JP,A)
【文献】特開2014-220957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/29
H02P 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅変調制御により直流モータを駆動する直流モータ制御装置において、
前記パルス幅変調制御における前記直流モータの駆動信号のスイッチング周波数を同直流モータの駆動周波数とし、前記直流モータの電圧値及び電流値のうちの少なくとも一方を同直流モータの電気状態量としたとき、
第1周波数から同第1周波数とは異なる第2周波数に前記駆動周波数を切り替えた状態で前記電気状態量を取得した後、前記第2周波数とは異なる周波数に前記駆動周波数を切り替える取得部と、
前記取得部が取得した前記電気状態量に基づいて前記直流モータの回転数を導出する導出部と、
を備えており、かつ前記第2周波数は、前記駆動周波数を前記第1周波数とした状態で前記電気状態量を取得する場合よりも同電気状態量の取得精度が高くなる駆動周波数であり、
前記取得部は、前記電気状態量の取得を既定の周期毎に繰り返すものであって、
前記第2周波数は前記第1周波数よりも高い周波数とされており、かつ前記取得部は、前記直流モータの温度が高いときには、同温度が低いときよりも前記既定の周期を長くする直流モータ制御装置。
【請求項2】
前記第2周波数は前記第1周波数よりも高い周波数とされており、かつ前記取得部は、前記直流モータの温度が高いときには、同温度が低いときよりも、前記電気状態量の取得に際して前記駆動周波数を前記第2周波数に維持する期間を短くする請求項1に記載の直流モータ制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記直流モータの回転数の指示値である指示回転数の切替えに応じて前記電気状態量の取得を実行する請求項1又は請求項2に記載の直流モータ制御装置。
【請求項4】
前記直流モータは、車両の制動装置のブレーキ液を吐出するポンプを駆動するモータである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の直流モータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの供給電力をパルス幅変調により制御する直流モータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の制動装置においてブレーキ液を吐出するポンプを駆動する直流モータのパルス幅変調制御を行う直流モータ制御装置が記載されている。以下の説明では、パルス幅変調制御における直流モータの駆動信号のスイッチング周波数を同直流モータの駆動周波数と記載する。特許文献1には、ポンプの吐出能力の確保や直流モータの作動音の抑制に適した駆動周波数と、直流モータの温度上昇の抑制に適した駆動周波数と、は異なる周波数となることが、すなわちパルス幅変調制御における直流モータの駆動周波数には状況に応じた最適な値が存在することが、示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-59626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直流モータ制御装置には、直流モータの電圧値や電流値からモータ回転数を検知するものがある。こうした電圧値や電流値に基づくモータ回転数の検知精度は、直流モータの駆動周波数によって変化する。そのため、直流モータの電圧値や電流値に基づきモータ回転数を検知する場合には、その検知精度が低下する駆動周波数は使用できなくなり、設定可能な駆動周波数の範囲が制限されてしまう。そしてその結果、所望とする駆動周波数での直流モータの駆動を断念せざるを得なくなることがある。例えば上述した直流モータの作動音の抑制に適した駆動周波数がモータ回転数の検知精度が低下する周波数となっていれば、モータ回転数の検知精度の低下、作動音の増大のいずれかを許容しなければならなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する直流モータ制御装置は、パルス幅変調制御により直流モータを駆動するものであって、パルス幅変調制御における直流モータの駆動信号のスイッチング周波数を同直流モータの駆動周波数とし、直流モータの電圧値及び電流値のうちの少なくとも一方を同直流モータの電気状態量としたとき、第1周波数から同第1周波数とは異なる第2周波数に駆動周波数を切り替えた状態で電気状態量を取得した後、第2周波数とは異なる周波数に駆動周波数を切り替える取得部と、取得部が取得した電気状態量に基づいて前記直流モータの回転数を導出する導出部と、を備えている。そして、同制御装置は、駆動周波数を第1周波数とした状態で電気状態量を取得する場合よりも同電気状態量の取得精度が高くなる駆動周波数を第2周波数として用いている。
【0006】
以下の説明では、直流モータの回転数をモータ回転数と記載する。上記直流モータ制御装置では、取得部が取得した電気状態量に基づいて導出部がモータ回転数を導出することでモータ回転数を検知している。また、上記直流モータ制御装置における取得部は、直流モータの駆動周波数を第1周波数から第2周波数に切り替えた状態で電気状態量を取得し、その取得後に第2周波数と異なる周波数に駆動周波数を切り替えている。なお、以下の説明では、モータ回転数の検知のための電気状態量の取得を実施する期間をサンプリング期間と記載する。
【0007】
こうした直流モータ制御装置では、サンプリング期間とそれ以外の期間とでは異なる駆動周波数で直流モータが駆動される。そのため、サンプリング期間の駆動周波数、すなわち第2周波数として電気状態量の取得精度が高い周波数が設定されていれば、それ以外の期間の駆動周波数には、電気状態量の取得精度が低い周波数が設定されていても、モータ回転数の検知精度を確保できる。すなわち、サンプリング期間以外には、電気状態量の取得精度の低い駆動周波数での直流モータの駆動が許容される。したがって、上記直流モータ制御装置によれば、モータ回転数の検知精度の確保のための駆動周波数の設定の自由度の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の直流モータ制御装置、及び同制御装置が制御の対象とする直流モータを備える車両の制動装置の構成を模式的に示す図。
図2】(a)は直流モータの駆動信号の波形の一例を、(b)は同図(a)の場合よりもデューティ比が大きいときの同駆動信号の波形を、(c)は同図(a)の場合よりもデューティ比が小さいときの同駆動信号の波形を、それぞれ示す図。
図3】モータ電圧値及びモータ電流値とモータ回転数との関係を示す図。
図4】第1実施形態の直流モータ制御装置において取得部が実施する処理のフローチャート。
図5】第1実施形態による制御中の(a)は指示回転数、モータ回転数及びモータ回転数モニタ値の推移を、(b)は応答期間フラグの状態の推移を、(c)は第1カウンタの値の推移を、(d)は第2カウンタの値の推移を、(e)は駆動周波数の推移を、(f)は電流モニタ値の推移を、それぞれ示すタイムチャート。
図6】駆動周波数を第1周波数とした状態で直流モータを駆動したときの同直流モータの駆動信号及びモータ電流値の波形の一例を示す図。
図7】駆動周波数を第2周波数とした状態で直流モータを駆動したときの同直流モータの駆動信号及びモータ電流値の波形の一例を示す図。
図8】駆動周波数を第1周波数よりも低い周波数とした状態で直流モータを駆動したときの同直流モータの駆動信号及びモータ電流値の波形の一例を示す図。
図9】(a)は第2実施形態の直流モータ制御装置によるモータ温度が低いときの駆動周波数の切替え態様を、(b)は同第2実施形態の直流モータ制御装置によるモータ温度が高いときの駆動周波数の切替え態様を、それぞれ示すタイムチャート。
図10】駆動周波数を第2周波数とした状態で直流モータを駆動したときの同直流モータの駆動信号及びモータ電流値の波形の他の例を示す図。
図11】駆動周波数を第1周波数とした状態で直流モータを駆動したときの同直流モータの駆動信号及びモータ電流値の波形の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、直流モータ制御装置の第1実施形態を、図1図7を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して本実施形態の直流モータ制御装置が制御の対象とする直流モータ33を備える車両の制動装置20の構成を説明する。図1に示す制御装置50が直流モータ制御装置として機能する。制動装置20は、車輪21の回転を摩擦により減速させる制動機構40を備えている。
【0010】
制動機構40は、各車輪21にそれぞれ個別に設けられている。各車輪21の制動機構40はそれぞれ、車輪21と一体回転する回転体22と、その回転体22に押し付けられる摩擦材42と、を備えている。また、各車輪21の制動機構40には、液圧調整回路30からのブレーキ液の供給を受けて作動するホイールシリンダ41がそれぞれ設けられている。ホイールシリンダ41は、同ホイールシリンダ41内に導入されたブレーキ液の圧力であるW/C圧の増大に応じて摩擦材42を回転体22に押し付ける。そして、各車輪21の制動機構40は、回転体22に摩擦材42を押し付けたときの摩擦により、車輪21の回転を減速するための制動力を発生する。
【0011】
また、制動装置20は、ホイールシリンダ41内のブレーキ液の給排を通じてW/C圧を調整する液圧調整回路30を備えている。液圧調整回路30には、ブレーキ液を貯蔵するリザーブタンク35と、リザーブタンク35内のブレーキ液を汲み出して吐出するポンプ32と、が設けられている。さらに、液圧調整回路30には、ポンプ32を駆動する直流モータ33が設けられている。本実施形態では、直流モータ33として、整流子付きの直流モータが採用されている。
【0012】
直流モータ33は、直流モータ制御装置としての制御装置50により制御されている。制御装置50には、車両が備える各種センサからの検出信号が入力される。図1には、そうしたセンサの一例として、直流モータ33の温度、より具体的には直流モータ33のブラシ温度を検出する温度センサ36が示されている。また、制御装置50には、直流モータ33の供給電力を調整する駆動回路55、直流モータ33の端子間電圧であるモータ電圧値Emを検出する電圧計56、及び直流モータ33の電流値であるモータ電流値Imを検出する電流計57が設けられている。
【0013】
駆動回路55は、車載電源58から入力した電力をパルス幅変調により調整して直流モータ33に供給する。より詳しくは、駆動回路55は、車載電源58から入力した電力に対して一定の周期でスイッチングのオン、オフを繰り返すことで、図2(a)~(c)に示すような電圧のパルス信号を生成して直流モータ33に印加する。なお、図中における「E0」は、車載電源58からの入力電圧を示している。以下の説明では、駆動回路55が生成する電圧のパルス信号を、直流モータ33の駆動信号と記載する。こうした駆動信号のスイッチング周期Tに対するスイッチングのオン時間tの比(t/T)をデューティ比DUTYとする。このときのモータ電圧値Emの実効値EVは、デューティ比DUTYにより変化する。駆動回路55は、こうしたデューティ比DUTYを変化させることで、直流モータ33の供給電力を調整している。ちなみに、図2(b)には図2(a)の場合よりも大きい値がデューティ比DUTYとして設定されているときの、図2(c)には図2(a)の場合よりも小さい値がデューティ比DUTYとして設定されているときの、モータ電圧値Emの波形がそれぞれ示されている。なお、以下の説明では、こうした駆動信号のスイッチングの周波数、すなわち上記スイッチング周期Tの逆数を、直流モータ33の駆動周波数Fmと記載する。
【0014】
制御装置50には、直流モータ33の供給電力のパルス幅変調制御を行うための機能部として、取得部51、導出部52、指示回転数決定部53、デューティ比決定部54を備えている。
【0015】
取得部51は、直流モータ33の電気状態量として、電流計57からモータ電流値Imを取得する。そして、取得部51は、取得したモータ電流値Imの値を導出部52に受け渡す。こうした取得部51によるモータ電流値Imの取得に係る処理の詳細は後述する。なお、本実施形態における取得部51は、モータ電流値Imの取得に際して、駆動周波数Fmの切替えを駆動回路55に指示している。
【0016】
導出部52は、取得部51から受け取ったモータ電流値Imの値を電流モニタ値として記憶する。また、導出部52は、駆動信号のデューティ比DUTYから直流モータ33のモータ電圧値Emの実効値EVを算出する。そして、導出部52は、電流モニタ値とモータ電圧値Emの実効値EVとに基づいて直流モータ33の回転数であるモータ回転数Nmを導出する。本実施形態の制御装置50では、こうした導出部52によるモータ回転数Nmの導出を通じて同モータ回転数Nmを検知している。なお、本実施形態における導出部52は、制御装置50に予め記憶された演算マップに基づいてモータ回転数Nmを導出している。
【0017】
図3に示される各曲線はそれぞれ、モータ電圧値Emの実効値EVを一定とした状態で直流モータ33を駆動したときのモータ電流値Imとモータ回転数Nmとの関係を示す曲線となっている。図3のグラフにおいて図中上方に位置する曲線ほど、モータ電圧値Emの実効値EVが高い電圧となった状態での上記関係を示す曲線となっている。導出部52がモータ回転数Nmの導出に用いる上述の演算マップには、こうしたモータ電圧値Em及びモータ電流値Imとモータ回転数Nmとの関係が記憶されている。そして、導出部52は、その演算マップにおけるモータ電流値Imの値として取得部51から受け取った電流モニタ値を、モータ電圧値Emの値としてデューティ比DUTYから算出した同モータ電圧値Emの実効値EVを、それぞれ代入することで、モータ回転数Nmを導出している。
【0018】
一方、指示回転数決定部53は、モータ回転数Nmの指示値である指示回転数Ntを決定する。具体的には、指示回転数Ntの決定に際して指示回転数決定部53はまず、制動機構40の作動状況等に基づき、ポンプ32がリザーブタンク35から汲み出すブレーキ液の流量の要求値である要求吐出量を算出する。そして指示回転数決定部53は、要求吐出量の値分のブレーキ液をポンプ32に吐出させるために必要なモータ回転数を求めてその値を指示回転数Ntの値として決定する。
【0019】
さらに、デューティ比決定部54は、導出部52が導出したモータ回転数Nmと指示回転数決定部53が決定した指示回転数Ntとの偏差に基づき、指示回転数Ntの値が示す回転数で直流モータ33を駆動するために必要なデューティ比DUTYの値を算出する。そして、駆動回路55は、取得部51の駆動周波数Fmの切替え指示と、デューティ比決定部54が決定したデューティ比DUTYと、に従って駆動信号を生成して直流モータ33に印加している。なお、デューティ比決定部54が決定したデューティ比DUTYは導出部52に受け渡されて、同導出部52でのモータ電圧値Emの実効値EVの算出に用いられる。
【0020】
続いて、図4を参照して、取得部51によるモータ電流値Imの取得に係る処理の詳細を説明する。取得部51は、図4のフローチャートに示される処理を、直流モータ33の駆動開始時にステップS100より開始し、駆動停止時に終了する。ちなみに、直流モータ33の駆動は、指示回転数決定部53が決定する指示回転数Ntの値が「0」から正の値に切替わることをもって開始される。
【0021】
まずステップS100では、指示回転数Ntの値が変更されたか否かが判定される。指示回転数Ntの値が変更された場合(YES)には、ステップS110において応答期間フラグFLGがセットされるとともに第2カウンタC2の値が「0」にリセットされた後にステップS120に処理が進められる。これに対して指示回転数Ntの値が変更されなかった場合(NO)には、ステップS110をスキップしてそのままステップS120に処理が進められる。なお、応答期間フラグFLGは、セットされていることをもって、指示回転数Ntの変更からモータ回転数Nmがその変更された指示回転数Ntに追従するまでの応答遅れの期間にあることを示すフラグである。また、第2カウンタC2は、指示回転数Ntが変更されてからの経過時間を示すカウンタである。
【0022】
ステップS120に処理が進めると、そのステップS120において、応答期間フラグFLGがクリアされているか否かが判定される。そして、応答期間フラグFLGがクリアされている場合(YES)にはステップS130に、応答期間フラグFLGがクリアされていない場合(NO)、すなわち応答期間フラグFLGがセットされている場合にはステップS160に、それぞれ処理が進められる。
【0023】
応答期間フラグFLGがクリアされており、ステップS130に処理が進められた場合には、そのステップS130において、第1カウンタC1の値に「1」を加算するとともに、第2カウンタC2の値を「0」にリセットするカウンタ操作が行われる。そして、続くステップS140において、第1カウンタC1の値が既定の検知周期判定値τ1以上であるか否かが判定される。このときの第1カウンタC1の値が検知周期判定値τ1未満の場合(NO)には、既定の制御周期T0が経過した後、ステップS100に処理が戻される。これに対して、第1カウンタC1の値が検知周期判定値τ1以上の場合(YES)には、ステップS150において第1カウンタC1の値が「0」にリセットされた後、ステップS190に処理が進められる。
【0024】
なお、第1カウンタC1は、モータ電流値Imの取得が完了してからの経過時間を示すカウンタである。よって、ステップS140では、モータ電流値Imの取得完了から一定の時間が経過しているか否かが判定されている。
【0025】
ステップS190に処理が進められると、そのステップS190において、駆動回路55に対して、第1周波数FLから第2周波数FHへの駆動周波数Fmの切替えが指示される。なお、後述するように第2周波数FHには、第1周波数FLよりも高い周波数が設定されている。続いてステップS200において、直流モータ33の駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態で、電流計57からのモータ電流値Imの取得が行われ、それらの取得した値が導出部52に受け渡される。すなわち、ステップS200が、第2ステップに相当する。ここでのモータ電流値Imの取得が完了すると、続くステップS210において、駆動回路55に対して、第2周波数FHから第1周波数FLへの駆動周波数Fmの切替えが指示される。そしてその後、上記制御周期T0が経過した後、ステップS100に処理が戻される。なお、ステップS200では、ステップS190における駆動周波数Fmの切替え指示から既定の時間が経過した時点でモータ電流値Imを取得するようにしている。そのため、モータ電流値Imの取得に際して、駆動周波数Fmは一定の時間、第2周波数FHに維持される。
【0026】
なお、本実施形態では、上記ステップS190が、第1周波数FLから同第1周波数FLとは異なる第2周波数FHに駆動周波数Fmを切り替える第1ステップに相当する。また、上記ステップS200が、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態で電気状態量を取得する第2ステップに相当する。さらに、上記ステップS210が、電気状態量の取得後に第2周波数FHから第1周波数FLに駆動周波数Fmを切り替える第3ステップに相当する。
【0027】
一方、応答期間フラグFLGがセットされており(S120:NO)、ステップS160に処理が進められた場合には、そのステップS160において、第1カウンタC1の値を「0」にリセットするとともに第2カウンタC2の値に「1」を加算するカウンタ操作が行われる。そして続くステップS170において、第2カウンタC2の値が既定の応答完了判定値τ2以上であるか否かが判定される。このときの第2カウンタC2の値が応答完了判定値τ2未満である場合(NO)には、上記制御周期T0が経過した後、ステップS100に処理が戻される。これに対して、第2カウンタC2の値が応答完了判定値τ2以上である場合(YES)には、ステップS180において応答期間フラグFLGがクリアされた後、ステップS190に処理が進められる。そして、ステップS190~ステップS210において、上述の態様で、駆動周波数Fmの切替え、及びモータ電流値Imの取得が行われる。
【0028】
なお、応答完了判定値τ2には、モータ回転数Nmの応答遅れ期間の相対最大値を上記制御周期T0で割った商が値として設定されている。すなわち、ステップS170では、指示回転数Ntの変更後のモータ回転数Nmの応答遅れ期間が終了した状態にあるか否かが判定されている。
【0029】
続いて、本実施形態の作用及び効果を説明する。
図5に、直流モータ33の駆動開始から同駆動の終了までの期間における本実施形態の制御態様の一例を示す。なお、図5(a)は指示回転数Nt、実際のモータ回転数Nm、及び導出部52によるモータ回転数Nmの導出値であるモータ回転数モニタ値Nm*の推移を、図5(b)は応答期間フラグFLGの状態の推移を、図5(c)は第1カウンタC1の値の推移を、それぞれ示している。また、図5(d)は第2カウンタC2の値の推移を、図5(e)は直流モータ33の駆動周波数Fmの推移を、図5(f)は電流モニタ値の推移を、それぞれ示している。
【0030】
同図の時刻t0には、駆動周波数Fmを第1周波数FLとした状態で、直流モータ33の駆動が開始される。時刻t0の直流モータ33の駆動開始に際しては、指示回転数Ntの値が「0」から正の値に変更され、これにより応答期間フラグFLGがセットされる。そして、時刻t0からは、第2カウンタC2のカウントアップが開始される。なお、このときには、第1カウンタC1のカウントアップは開始されず、その値は「0」に保持される。
【0031】
その後の時刻t1に、第2カウンタC2の値が応答完了判定値τ2に達すると、すなわちモータ回転数Nmの応答遅れ期間が経過すると、直流モータ33の駆動周波数Fmが第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えられる。この時刻t1には、応答期間フラグFLGがクリアされ、第2カウンタC2の値が「0」にリセットされる。また、この時刻t1には、第2カウンタC2のカウントアップが一旦停止される。そして、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態で取得部51によるモータ電流値Imの取得が行われる。
【0032】
時刻t2にモータ電流値Imの取得が完了すると、その取得したモータ電流値Imの値が導出部52に受け渡されて、モータ回転数Nmの導出に用いられる電流モニタ値の値が更新される。一方、モータ電流値Imの取得が完了した時刻t2には、直流モータ33の駆動周波数Fmが第2周波数FHから再び第1周波数FLに切り替えられる。
【0033】
また、時刻t2には、第1カウンタC1のカウントアップが開始される。そして、その後の時刻t3に第1カウンタC1の値が検知周期判定値τ1に達すると、直流モータ33の駆動周波数Fmが第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えられ、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態でモータ電流値Imが取得される。そして、モータ電流値Imの取得が完了した時刻t4に、直流モータ33の駆動周波数Fmが第2周波数FHから第1周波数FLに再び切り替えられる。なお、第1カウンタC1の値は、時刻t3の時点で「0」にリセットされており、そのカウントアップは時刻t4に再開されている。
【0034】
なお、時刻t7及び時刻t14にも、指示回転数Ntが変更されている。これらのときにも同様にして、モータ回転数Nmの応答遅れ期間が経過した後の時刻t8、t15に直流モータ33の駆動周波数Fmが第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えられる。そして、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態でモータ電流値Imが取得され、その取得が完了した時刻t9、t16に第2周波数FHから第1周波数FLに再び駆動周波数Fmが切り替えられる。
【0035】
また、指示回転数Ntの変更がない期間には、第1カウンタC1の値が検知周期判定値τ1に達する毎に、直流モータ33の駆動周波数Fmが第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えられる。そして、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態でモータ電流値Imが取得した後に第2周波数FHから第1周波数FLに再び駆動周波数Fmが切り替えられる。図5の例では、こうした指示回転数Ntの変更がない期間における駆動周波数Fmを第2周波数FHに切り替えてのモータ電流値Imの取得が、上述の時刻t3から時刻t4までの期間の他、時刻t5から時刻t6までの期間、時刻t10から時刻t11までの期間、時刻t12から時刻t13までの期間、及び時刻t17から時刻t18までの期間に、それぞれ行われている。なお、図5の例では、時刻t19に、指示回転数Ntが「0」とされて、直流モータ33の駆動が終了されている。
【0036】
以上のように、本実施形態の直流モータ制御装置における取得部51は、指示回転数Ntが変更されたときにはモータ回転数Nmの応答遅れ期間の経過後に、指示回転数Ntが変更されていない期間には一定の周期毎に、下記の第1~第3ステップを通じて、モータ回転数Nmの導出に用いられるモータ電流値Imを取得している。すなわち、まず、第1ステップでは、第1周波数FLから同第1周波数FLとは異なる第2周波数FHに駆動周波数Fmを切り替える。次の第2ステップでは、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持した状態でモータ電流値Imを取得する。そして、第3ステップでは、モータ電流値Imの取得後に第2周波数FHから第1周波数FLに再び駆動周波数Fmを切り替える。
【0037】
図6に、駆動周波数Fmが第1周波数FLに設定されているときの直流モータ33の駆動信号及びモータ電流値Imの波形の一例を示す。同図に示すように、このときのモータ電流値Imは、駆動信号のパルスのオン、オフの切替えに応じて、大きく変動してしまう。そのため、このときの電流計57のモータ電流値Imの結果からは、十分な精度でモータ回転数Nmを検知できない虞がある。
【0038】
図7には、デューティ比DUTYが図6の場合と同じ値に設定され、かつ駆動周波数Fmが第2周波数FHに設定されているときの直流モータ33の駆動信号及びモータ電流値Imの波形の一例を示す。上述のように、第2周波数FHには、第1周波数FLよりも高い周波数が設定されている。同図に示すように、このときには駆動信号のパルスのオン、オフの切替えに応じたモータ電流値Imの変動は、図6の場合よりも小さくなっている。そのため、このときの電流計57のモータ電流値Imの結果からは、十分な精度でモータ回転数Nmを検知できる。
【0039】
一方、駆動周波数Fmが高いときには、駆動周波数Fmが低いときよりも、直流モータ33の発熱量が多くなる。よって、駆動周波数Fmを第2周波数FHとした状態で直流モータ33の駆動を続けると、直流モータ33の温度が上昇してしまう虞がある。このように、直流モータ33の駆動周波数Fmとして第2周波数FHを設定した場合には、第1周波数FLを設定した場合に比べ、モータ回転数Nmの検知精度を向上できるが、直流モータ33の温度が上昇し易くなる。
【0040】
これに対して、本実施形態では、直流モータ33の駆動周波数Fmを第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えた上でモータ電流値Imを取得するとともに、その取得後に駆動周波数Fmを第1周波数FLに戻している。すなわち、モータ電流値Imの取得を行う期間にはモータ回転数Nmの検知精度を確保し易い第2周波数FHで直流モータ33を駆動する一方で、それ以外の期間には直流モータ33の温度上昇を抑え易い第1周波数FLで直流モータ33を駆動している。そのため、モータ回転数Nmの検知精度を確保しつつ、直流モータ33の温度上昇を抑えられる。
【0041】
本実施形態の直流モータ制御装置によれば、さらに効果を奏することができる。
(1)取得部51は、駆動周波数Fmを第2周波数FHに切り替えてのモータ電流値Imの取得を既定の周期毎に繰り返し実行している。そのため、モータ回転数Nmを一定の周期毎に検知できる。
【0042】
(2)さらに取得部51は、指示回転数Ntが切り替えられた際にも、駆動周波数Fmを第2周波数FHに切り替えてのモータ電流値Imの取得を実施している。そのため、指示回転数Ntの切替えに応じたモータ回転数Nmの変化を速やかに検知できる。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態では、第1周波数FLよりも高い周波数を第2周波数FHとして設定していたが、第1周波数FLよりも低い周波数を第2周波数FHとして設定しても良い。図8には、そうした場合の駆動信号、及びモータ電流値Imの波形の一例が示されている。このときには、駆動信号のオン期間が長くなり、そのオン期間中のある程度の間、モータ電流値Imが一定に維持されるため、電流計57からモータ電流値Imのピーク値を取得することが可能となる。こうしたモータ電流値Imのピーク値とデューティ比DUTYとからは、同モータ電流値Imの実効値を求められる。そして、その求めたモータ電流値Imの実効値を用いてモータ回転数Nmを精度良く検知することが可能となる。
【0045】
・上記実施形態では、直流モータ33に印加する電圧をパルス幅変調により調整することで、同直流モータ33の駆動制御を行っていた。これに対して、直流モータ33に流す電流をパルス幅変調により調整することでも、同直流モータ33の駆動制御を行うことが可能である。こうした場合には下記の態様でモータ回転数Nmの検知を行うことが可能である。まず取得部51は、電流計57からのモータ電流値Imの取得に代えて、電圧計56からのモータ電圧値Emを電気状態量として取得する。また、導出部52は、デューティ比DUTYからモータ電流値Imの実効値を算出するとともに、そのモータ電流値Imの実効値と取得部51が取得したモータ電圧値Emとに基づき、モータ回転数Nmを導出する。この場合にも、取得部51が、直流モータ33の駆動周波数Fmを第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えた状態でモータ電圧値Emを取得し、その取得後に駆動周波数Fmを第1周波数FLに戻すようにすれば、上記実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
【0046】
・上記実施形態における取得部51は、直流モータ33の駆動周波数を第1周波数FLから第2周波数FHに切り替えた状態で電気状態量を取得した後、同駆動周波数を第2周波数FHから再び第1周波数FLに戻すようにしていた。電気状態量の取得を行っていないときの駆動周波数を、直流モータ33の温度等の同直流モータ33の運転状況に応じて可変制御を行う場合がある。こうした場合には、電気状態量の取得中に直流モータ33の運転状況が変化して、電気状態量の取得後の駆動周波数が取得前とは異なる値となることがある。こうした場合の取得部51は、直流モータ33の駆動周波数を第1周波数から第2周波数に切り替えた状態で電気状態量を取得した後、第1周波数及び第2周波数のいずれとも異なる第3周波数に駆動周波数を切り替えることになる。
【0047】
・取得部51が、電圧計56からモータ電圧値Emを、電流計57からモータ電流値Imを、それぞれ電気状態量として取得するとともに、それら取得したモータ電圧値Em及びモータ電流値Imの双方の値に基づいて導出部52がモータ回転数Nmを導出するようにしても良い。
【0048】
・取得部51が、駆動周波数Fmを第2周波数FHとした状態でモータ電流値Imやモータ電圧値Emを複数回取得するとともに、導出部52がそれらの平均値を用いてモータ回転数Nmを導出するようにしても良い。
【0049】
(第2実施形態)
次に、直流モータ制御装置の第2実施形態を、図9を併せ参照して説明する。なお本実施の形態にあって、上記実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0050】
第1実施形態では、モータ電流値Imの取得に際して、一定の時間の間、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持していた。また、指示回転数Ntの切替えがなされていない期間は、駆動周波数Fmを第2周波数FHに切り替えてのモータ電流値Imの取得を一定の周期毎に行うようにしていた。なお、以下の説明では、このときの取得部51によるモータ電流値Imの取得の周期をサンプリング周期DPと記載する。また、駆動周波数Fmを第2周波数FHに維持する期間をサンプリング期間STと記載する。
【0051】
上述のように、第1周波数FLから第2周波数FHに駆動周波数Fmを切り替えることでモータ電流値Imの変動が小さくなり、モータ回転数Nmの検知精度が向上する。ただし、モータ電流値Imの変動は、第2周波数FHへの駆動周波数Fmの切替えとともに瞬時には縮小しないため、モータ回転数Nmの検知精度を高めるには、サンプリング期間STをある程度よりも長い時間とすることが望ましい。また、モータ回転数Nmの検知頻度を高めるため、サンプリング周期DPは短くすることが望ましい。ただし、駆動周波数Fmとして高い周波数が設定されているときには、低い周波数が設定されているときよりも直流モータ33の発熱が多くなる。そのため、サンプリング期間STを長くしたり、サンプリング周期DPを短くしたりすると、直流モータ33の温度が上昇し易くなる。
【0052】
そこで、本実施形態では、温度センサ36による直流モータ33のブラシ温度の検出値に応じて、サンプリング期間ST、及びサンプリング周期DPを可変設定するようにしている。具体的には、直流モータ33のブラシ温度の検出値が既定の高温判定値以上の場合には、同検出値が高温判定値未満の場合よりも短い時間をサンプリング期間STとして設定している。また、ブラシ温度の検出値が高温判定値以上の場合には、同検出値が高温判定値未満の場合よりも長い周期をサンプリング周期DPとして設定している。ちなみに、サンプリング周期DPは、検知周期判定値τ1の値を変えることで変更できる。
【0053】
なお、図9(a)には、直流モータ33のブラシ温度が高温判定値未満のときの、指示回転数Ntが一定となっている期間の駆動周波数Fmの推移が示されている。また、図9(b)には、直流モータ33のブラシ温度が高温判定値以上のときの、指示回転数Ntが一定となっている期間の駆動周波数Fmの推移が示されている。
【0054】
ここで、駆動周波数Fmを第1周波数FLとした状態で直流モータ33を駆動している期間を低周波数駆動期間とし、駆動周波数Fmを第2周波数FHとした状態で直流モータ33を駆動している期間を高周波数駆動期間とする。図9(a)及び図9(b)の比較から明らかなように、直流モータ33のブラシ温度が高温判定値以上の場合には、同ブラシ温度が高温判定値未満の場合よりも、低周波数駆動期間に対する高周波数駆動期間の比率が小さくなる。そしてその結果、直流モータ33の温度上昇が抑えられる。そのため、本実施形態では、直流モータ33の温度が低いうちは、モータ回転数Nmの検知精度や検知頻度を高めつつも、直流モータ33の温度がある限度を超えて上昇し難くすることが可能となる。
【0055】
なお、サンプリング期間ST及びサンプリング周期DPのうちのいずれか一方のみを直流モータ33の温度に応じて可変とするようにしても良い。また、サンプリング期間ST及びサンプリング周期DPを、直流モータ33の温度に対して2段階以上の段階に分けて切り替えるようにしても良い。
【0056】
(他の実施形態)
上記のような整流子付きの直流モータ33では、その回転中の整流子間を流れる電流の変動が、いわゆる電流リップルが発生する。こうした電流リップルの周期はモータ回転数Nmに反比例し、電流リップルの周波数はモータ回転数Nmに比例する。そのため、電流計57によるモータ電流値Imの検知結果からそうした電流リップルの周期や周波数を求めてモータ回転数Nmを検知することも可能である。
【0057】
図10には、第2周波数FHを駆動周波数Fmとして設定した状態で直流モータ33を駆動しているときの駆動信号及びモータ電流値Imの波形を示す。このときのモータ電流値Imは、電流リップルが明確に表れた状態となっている。
【0058】
一方、図11には、第2周波数FHよりも低い第1周波数FLを駆動周波数Fmとして設定した状態で直流モータ33を駆動しているときの駆動信号及びモータ電流値Imの波形を示す。このときには、駆動信号のパルスのオン、オフ切替えに応じてモータ電流値Imが大きく変動しており、電流リップルの周期や周波数を確認し難い状態となっている。
【0059】
このようにパルス幅変調制御により直流モータ33を駆動する場合には、駆動周波数Fmにより電流リップルの周期や周波数の確認が困難となることがある。よって、電流リップルの周期や周波数を確認するためのモータ電流値Imの取得に際して、上記実施形態と同様の態様の駆動周波数Fmの切替えを行えば、モータ回転数Nmの検知精度の確保が可能である。
【0060】
さらに、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及びその変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・上記実施形態では、直流モータ33の温度上昇を抑制可能な周波数を第1周波数FLとして設定していたが、それ以外の要求に応じて第1周波数FLを設定するようにしても良い。いずれにせよ、その要求を満たす駆動周波数Fmがモータ回転数Nmの検知精度が低下する周波数となることがある。そうした場合にも、モータ回転数Nmの検知精度が低下しない第2周波数FHに駆動周波数Fmを切り替えた上で、モータ回転数Nmの検知のためのモータ電流値Imやモータ電圧値Emの取得を行い、その後に駆動周波数Fmを第1周波数FLに戻すようにすれば、モータ回転数Nmの検知精度の確保が可能である。
【0062】
・第1周波数FLを、車両が走行中の路面の摩擦係数等に応じて可変設定するようにしても良い。また、そうした場合には、モータ回転数Nmの検知精度が低下する周波数が第1周波数FLとして設定されているときにのみ、上記実施形態における駆動周波数Fmを第2周波数FHに切り替えてのモータ電流値Imやモータ電圧値Emの取得を実施するようにしても良い。このときの取得部51は、モータ回転数Nmの検知精度が低下しない周波数が第1周波数FLとして設定されている場合には、駆動周波数Fmをその第1周波数FLに維持したまま、モータ電流値Imやモータ電圧値Emの取得を実施することになる。
【0063】
・上記実施形態における取得部51は、指示回転数Ntの切替えに応じてモータ電流値Imやモータ電圧値Emの取得を実施していたが、指示回転数Ntの切替えに拘わらず、一定の周期毎に同取得を実施するようにしても良い。
【0064】
・上記実施形態における取得部51は、指示回転数Ntの切替えがない場合には一定の周期毎にモータ電流値Imやモータ電圧値Emの取得を実施していたが、そうした取得を不定期に実施するようにしても良い。例えば、モータ回転数Nmが変化すると、電圧計56によるモータ電圧値Emの検出値や電流計57によるモータ電流値Imの検出値にも変化が生じるため、そうした検出値の変化が確認されたときに、モータ電流値Imやモータ電圧値Emを取得することが考えられる。
【0065】
・直流モータ33として無整流子直流モータを採用しても良い。
・上記実施形態ではモータ回転数Nmの検知結果を、直流モータ33の駆動信号のデューティ比DUTYの決定に用いていたが、例えば指示回転数Ntの決定や制動機構40の作動制御などの他の用途に用いるようにしても良い。
【0066】
・上記実施形態におけるモータ回転数Nmの検知に係る制御技術は、車両の制動装置20のプレーキ液を吐出するポンプ32を駆動するもの以外の直流モータにも同様、あるいはそれに準じた態様で適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
20…制動装置、21…車輪、22…回転体、30…液圧調整回路、32…ポンプ、33…直流モータ、35…リザーブタンク、36…温度センサ、40…制動機構、41…ホイールシリンダ、42…摩擦材、50…制御装置、51…取得部、52…導出部、53…指示回転数決定部、54…デューティ比決定部、55…駆動回路、56…電圧計、57…電流計、58…車載電源。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11