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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】シート搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/00 20060101AFI20231212BHJP
   B65H 5/38 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65H5/00 B
B65H5/38
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019187655
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062938
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】上代 明儀
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-006950(JP,A)
【文献】特開平09-240870(JP,A)
【文献】特開2007-197215(JP,A)
【文献】特開2006-264838(JP,A)
【文献】特開2008-056434(JP,A)
【文献】特開2010-095372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧接離間可能で、圧接時には搬送経路に沿ってシートを搬送する搬送ローラー対と、
前記搬送ローラー対のうち、圧接位置から離間位置へと変位する可動ローラーの外周面に付着した異物を除去する異物除去機構と、
前記異物除去機構を前記可動ローラーとともに離間位置側へ移動させる移動手段と、
前記異物除去機構を前記搬送経路の経路外に位置させるために経路内と経路外との間を仕切る仕切り部材と、を備え、
前記仕切り部材は、前記搬送ローラー対の圧接離間状態に関わらず不動である
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記仕切り部材は、前記搬送ローラー対の圧接時には、前記可動ローラーの外周面のうち、回転方向に沿って、前記異物除去機構の除去作用位置から、前記搬送ローラー対の搬送ニップまでの間の外周面部分に当接して、当該外周面に付着した異物を除去し、
前記仕切り部材が前記可動ローラーに当接する当接位置は、前記シートの搬送を妨げない範囲内で前記搬送ニップに近い位置に設定調節されている
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記仕切り部材は、前記可動ローラーの回転方向における前記可動ローラーとの当接位置よりも上流側から下流側に向かう姿勢で、当該外周面に当接している
ことを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記移動手段は、シート搬送方向における前記搬送ローラー対よりも上流側を揺動中心として、前記可動ローラーを圧接位置と離間位置との間で揺動させ、かつ、
前記可動ローラーとともに前記異物除去機構を揺動させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記異物除去機構は、互いに材質が異なる複数の異物除去部材を備え、
前記複数の異物除去部材をそれぞれ前記可動ローラーの外周面に当接させることによって異物を除去する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記複数の異物除去部材は、薄肉フィルムと連泡の発泡スポンジであって、
前記薄肉フィルムの先端を前記可動ローラーの外周面に当接させて異物を掻き取るとともに、
前記発泡スポンジを前記外周面に圧接して異物を拭き取る
ことを特徴とする請求項5のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シートを前記搬送経路に沿って前記搬送ローラー対の搬送ニップに案内する板状の突入ガイドを備え、
前記仕切り部材は、前記突入ガイドの前記搬送経路とは反対側の面に固定されている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のシート搬送装置を備え、
前記シート搬送装置を用いて、画像形成に供するシートを搬送する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記シートに画像を転写する転写部を備え、
前記搬送ローラー対は、シート搬送方向における前記転写部の上流側に配設され、前記シートの搬送タイミングを調整するレジストローラーである
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート搬送装置および画像形成装置に関し、特に、用紙から発生する紙粉に起因する画像劣化を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、例えばスキュー補正のタイミングローラーとして、搬送ローラー対を用いて用紙を搬送し画像形成に供する。搬送中に用紙から発生した紙粉が、搬送ローラー表面に付着した後、搬送ローラー対の離間動作によって振り落とされ、用紙の搬送方向における下流側へ搬送されると、トナー像を用紙に転写する転写部で画像劣化を発生させる。また、タンデム方式の画像形成装置では中間転写ベルトに付着した紙粉が、中間転写ベルトと、中間転写ベルト上の残留トナーを清掃するクリーニングブレードとの間に詰まると、残留トナーがクリーニングブレードをすり抜け易くなるので、画像劣化を発生させることもある。
【0003】
このような問題に対して、例えば、搬送ローラー表面に付着した紙粉をフィルム状のスクレーパーにて除去する技術が知られている。
【0004】
また、近年では、画像形成装置で様々な用紙を使用することができるようになった結果、用紙から発生する紙粉の形状もまた微細な粉状や繊維状など多様化してきており、これに対応して様々な種類のスクレーパーが考案されている。例えば、発泡スポンジは、フィルム状のスクレーパーで掻き落とすことができない微細な紙粉を拭き取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-264838号公報
【文献】特開2004-161473号公報
【文献】特開2004-161409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡スポンジのうち、単泡の発泡スポンジは、気泡がそれぞれ独立しているので、各気泡から空気を出入りさせることができない。このため、単泡の発泡スポンジを弾性変形させるためには、気泡内の空気を圧縮しなければならないので、弾性率が高くなっている。このような特性から、発泡スポンジを搬送ローラーに圧接すると、高負荷によって搬送ローラー表面に傷を生じたり、トルクを上昇させたりし易い。
【0007】
これに対して、連泡の発泡スポンジは、気泡が互いに連通しており、弾性変形の際には、この連通経路を経由して気泡内の空気がスポンジの外部へ放出される。このため、連泡の発泡スポンジは単泡の発泡スポンジよりも弾性率が低いので、上述のような問題を回避することができる。
【0008】
しかしながら、気泡の連通経路は、空気を流通させるだけでなく、微細なものであれば紙粉もまた通り抜けることができるため、搬送ローラーから拭き取った紙粉を必ずしも保持することができず、拡散させてしまう。
【0009】
特に、圧接離間することができる搬送ローラー対に発泡スポンジを圧接させて紙粉を拭き取っている場合に、搬送ローラー対を離間させると、発泡スポンジから拡散した紙粉が用紙の搬送経路に進入し、上述のような画像劣化を引き起こす恐れがある。
【0010】
本開示は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、圧接離間可能な搬送ローラー対から回収した異物が、当該搬送ローラー対を離間させた際に搬送経路へ進入するのを防止することができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係るシート搬送装置は、圧接離間可能で、圧接時には搬送経路に沿ってシートを搬送する搬送ローラー対と、前記搬送ローラー対のうち、圧接位置から離間位置へと変位する可動ローラーの外周面に付着した異物を除去する異物除去機構と、前記異物除去機構を前記可動ローラーとともに離間位置側へ移動させる移動手段と、前記異物除去機構を前記搬送経路の経路外に位置させるために経路内と経路外との間を仕切る仕切り部材と、を備え、前記仕切り部材は、前記搬送ローラー対の圧接離間状態に関わらず不動であることを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記仕切り部材は、前記搬送ローラー対の圧接時には、前記可動ローラーの外周面のうち、回転方向に沿って、前記異物除去機構の除去作用位置から、前記搬送ローラー対の搬送ニップまでの間の外周面部分に当接して、当該外周面に付着した異物を除去し、前記仕切り部材が前記可動ローラーに当接する当接位置は、前記シートの搬送を妨げない範囲内で前記搬送ニップに近い位置に設定調節してもよい。
【0013】
更に、前記仕切り部材は、前記可動ローラーの回転方向における前記可動ローラーとの当接位置よりも上流側から下流側に向かう姿勢で、当該外周面に当接してもよい。
【0014】
また、前記移動手段は、シート搬送方向における前記搬送ローラー対よりも上流側を揺動中心として、前記可動ローラーを圧接位置と離間位置との間で揺動させ、かつ、前記可動ローラーとともに前記異物除去機構を揺動させてもよい。
【0015】
また、前記異物除去機構は、互いに材質が異なる複数の異物除去部材を備え、前記複数の異物除去部材をそれぞれ前記可動ローラーの外周面に当接させることによって異物を除去してもよい。
【0016】
更に、前記複数の異物除去部材は、薄肉フィルムと連泡の発泡スポンジであって、前記薄肉フィルムの先端を前記可動ローラーの外周面に当接させて異物を掻き取るとともに、前記発泡スポンジを前記外周面に圧接して異物を拭き取ってもよい。
【0017】
また、前記シートを前記搬送経路に沿って前記搬送ローラー対の搬送ニップに案内する板状の突入ガイドを備え、前記仕切り部材は、前記突入ガイドの前記搬送経路とは反対側の面に固定してもよい。
【0018】
また、本開示の一形態に係る画像形成装置は、本開示の一形態に係るシート搬送装置を備え、前記シート搬送装置を用いて、画像形成に供するシートを搬送することを特徴とする。
【0019】
この場合において、前記シートに画像を転写する転写部を備え、前記搬送ローラー対は、シート搬送方向における前記転写部の上流側に配設され、前記シートの搬送タイミングを調整するレジストローラーであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
このようにすれば、異物除去機構が搬送経路外になるように、搬送経路の内外を仕切り部材で仕切るので、可動ローラーの外周面から異物除去機構が除去した異物がシートの搬送経路に進入するのを防止して、画像品質の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置1の主要な構成を示す図である。
図2】レジストローラーユニット100の外観斜視図であって、(a)は従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接した状態を示し、(b)は従動ローラー101を駆動ローラー102から離間した状態を示し、(c)は(b)における矩形領域221の拡大図である。
図3】(a)は従動ローラー101並びに異物除去機構300の外観斜視図であり、(b)は従動ローラー101並びに異物除去機構300の分解斜視図である。
図4】従動ローラー101の外周面に対する薄肉フィルム302および仕切り部材201の当接角度を説明する図である。
図5】レジストローラーユニット100、仕切り部材201および異物除去機構300の断面斜視図であって、(a)は従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接した状態を示し、(b)は従動ローラー101を駆動ローラー102から離間した状態を示す。
図6】本開示の変形例に係る画像形成装置1の主要な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に係るシート搬送装置および画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
[1]画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、いわゆるタンデム方式のカラー複合機(MFP: Multi-Function Peripheral)であって、制御部111や作像部120Y、120M、120Cおよび120K、給紙トレイ131a、131b、画像読み取り部141、操作パネル151等を備えている。
【0025】
画像読み取り部141は、シートスルー方式で原稿を読み取る場合には、原稿トレイ143から自動原稿搬送装置(ADF: Automatic Document Feeder)142を用いて1枚ずつ送り出された原稿を読み取って、画像データを生成する。生成された画像データは、制御部111に記憶される。
【0026】
制御部111は、ユーザーが操作パネル151を用いて指示することによって画像形成ジョブを受け付けたり、不図示の通信ネットワーク110を経由して他の装置から画像形成ジョブを受け付けたりすると、画像形成装置1を制御して、画像読み取り部141が生成した画像データや他の装置から受け付けた画像データを用いた画像形成処理を実行させる。
【0027】
作像部120Y、120M、120Cおよび120Kはそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のトナー像を形成する。作像部120Y、120M、120Cおよび120Kは共通の構成を備えているので、作像部120Yを例にとって説明すると、作像部120Yは、感光体ドラム121Y、帯電装置122Y、露光装置123Y、現像装置124Y、一次転写ローラー125Yおよび清掃装置126Yを備えている。
【0028】
作像部120Yは、感光体ドラム121Yを矢印A方向に回転させながら、帯電装置122Yを用いて感光体ドラム121Yの外周面を一様に帯電させる。露光装置123Yは、画像データに応じて変調されたレーザー光を感光体ドラム121Yの外周面に照射することによって、静電潜像を形成する。現像装置124Yは、感光体ドラム121Yの外周面にY色のトナーを供給することによって、静電潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0029】
一次転写ローラー125Yは、一次転写バイアスを印加されることによって、感光体ドラム121Yの外周面上に担持されているトナー像を、中間転写ベルト112の外周面上へ静電転写する(一次転写)。清掃装置126Yは、一次転写後に、感光体ドラム121Yの外周面を露光することによって除電した後、当該外周面上に残留するトナーをクリーニングブレードにて掻き取る。
【0030】
中間転写ベルト112は、一次転写ローラー125Y等のローラーに掛け回されており、矢印B方向に周回走行しながら、YMCK各色のトナー像が互いに重なり合うように一次転写される。これによって、カラートナー像が形成される。カラートナー像は、中間転写ベルト112によって二次転写位置まで搬送される。
【0031】
以上のような、トナー像の形成処理と並行して、画像形成ジョブで指定された紙種の記録シートSが給紙される。例えば、給紙トレイ131aに収容されている記録シートは給紙機構132aによって1枚ずつ送り出され、給紙トレイ131bに収容されている記録シートは給紙機構132bによって1枚ずつ送り出される。また、図1においては、手差しトレイ131cが閉じられている状態が示されており、この手差しトレイ131cを矢印C方向に開くと、記録シートSを載置することができる。手差しトレイ131c上の記録シートSは給紙機構132cによって、やはり1枚ずつ送り出される。
【0032】
給紙トレイ131a、131bや手差しトレイ131cから二次転写位置に至る記録シートSの搬送経路上にはレジストローラーユニット100が配設されている。レジストローラーユニット100は、従動ローラー101と駆動ローラー102とを備えている。駆動ローラー102は、記録シートSの搬送経路104よりも鉛直方向における下方に配設され、回転軸が固定されている。一方、従動ローラー101は、記録シートSの搬送経路104よりも鉛直方向における上方に配設されている。従動ローラー101は、不図示の揺動軸回りに揺動する可動ローラーになっており、駆動ローラー102と圧接離間することができる。
【0033】
レジストローラーユニット100は、記録シートSを二次転写位置に搬送するタイミングを調節する。具体的には、駆動ローラー102を停止させた状態で、搬送ガイド103を用いて記録シートSを搬送経路104に沿って搬送し、従動ローラー101と駆動ローラー102とを圧接した搬送ニップ501(図5(a)を参照。)に記録シートSの先頭を突き当てる。この状態で、記録シートSを更に搬送してループを形成すると、記録シートSのスキューが補正される。その後、駆動ローラー102は、二次転写タイミングに合わせて回転を開始し、記録シートSを二次転写位置へ搬送する。
【0034】
二次転写位置においては、二次転写ローラー113が中間転写ベルト112に圧接されており、二次転写ローラー113に二次転写バイアスを印加することによって、中間転写ベルト112の外周面上に担持されているカラートナー像を記録シートSへ静電転写する(二次転写)。二次転写後に中間転写ベルト112の外周面上に残留するトナーは、中間転写ベルト112が周回走行することによって清掃装置117まで搬送される。清掃装置117は、クリーニングローラーやクリーニングブレードを用いて中間転写ベルト112の外周面から残留トナーを掻き取って、廃棄する。
【0035】
カラートナー像を二次転写された記録シートSは、定着装置114にてカラートナー像を熱定着された後、排紙ローラー対115によって排紙トレイ116上に排出される。
【0036】
[2]レジストローラーユニット100の構成
レジストローラーユニット100の構成について更に詳しく説明する。
【0037】
(2-1)レジストローラーユニット100
図2(a)に示すように、レジストローラーユニット100は、従動ローラー101と駆動ローラー102と圧接した状態では、カバー211に覆われており、外部から従動ローラー101等を見ることはできない。
【0038】
一方、図2(b)に示すように、従動ローラー101と駆動ローラー102とを離間した状態では、従動ローラー101とともにカバー211もまた揺動し、外部から従動ローラー101を見ることができるようになる。従動ローラー101は、制御部111が不図示の駆動モーターを制御することによって、後述する揺動軸212を中心として往復揺動し、カバー211とともに揺動し、駆動ローラー102と圧接離間する。
【0039】
また、従動ローラー101と駆動ローラー102とを離間させた状態では、図2(c)に示すように、従動ローラー101の他に、従動ローラー101から除去された紙粉などの異物が記録シートSの搬送経路に進入するのを防止する仕切り部材201を外部から見ることができる。
【0040】
(2-2)異物除去機構300
図3(a)に示すように、レジストローラーユニット100は、従動ローラー101の外周面に付着した紙粉などの異物を除去する異物除去機構300を備えている。異物除去機構300は、発泡スポンジ301、薄肉フィルム302および支持部材303からなり、発泡スポンジ301および薄肉フィルム302は支持部材303に固定、支持されている。
【0041】
発泡スポンジ301は、ウレタンやEPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)、PP(Poly Propylene)等の材料からなる連泡の発泡スポンジ部材である。薄肉フィルム302は、SUS(Steel Use Stainless)、PI(Poly Imide)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、PC(Poly Carbonate)シートやPET(Poly Ethylene Terephthalate)シート等の材料からなる薄肉のフィルム部材である。
【0042】
薄肉フィルム302は、従動ローラー101の軸方向に長尺なフィルム部材である。薄肉フィルム302の一方の長辺302aは、自由端になっており、従動ローラー101の外周面に当接している。薄肉フィルム302の他方の長辺302bは支持部材303に固定されている。従動ローラー101と支持部材303とは、従動ローラー101と駆動ローラー102との圧接離間状態の如何にかかわらず、互いに一定の位置関係になるように固定されており、固定された状態で一緒に揺動することができる。これによって、薄肉フィルム302の前記一方の長辺302aが従動ローラー101の外周面に押し付けられる。
【0043】
薄肉フィルム302は、図4に示すように、矢印D方向に回転する従動ローラー101の回転方向における薄肉フィルム302と従動ローラー101の当接位置よりも下流側から上流側に向かって、従動ローラー101の外周面に当接する。このため、薄肉フィルム302の従動ローラー101の外周面に対する当接位置を中心とした当接角度は鋭角になっている。
【0044】
画像形成装置1の装置内のスペースや部品構成上、従動ローラー101の回転方向における上流側から搬送ニップ501(図5(a)を参照。)に近くなるほど、薄肉フィルム302を配置するのが難しくなる。これは、例えば、薄肉フィルム302を支持する支持部材303と搬送ガイド103とが干渉するからである。このような理由から、本実施の形態においては、薄肉フィルム302が搬送ニップ501から遠い位置で従動ローラー101に当接する。
【0045】
薄肉フィルム302を用いて従動ローラー101の外周面から紙粉を除去する過程で、例えば、長い繊維状の紙粉が薄肉フィルム302と従動ローラー101の外周面との間に挟まると、薄肉フィルム302と従動ローラー101の外周面との間に隙間が生じることがある。
【0046】
このような隙間があると、粒径の細かい紙粉が薄肉フィルム302をすり抜けて記録シートSの搬送経路に進入し、画質を低下させるおそれがある。発泡スポンジ301は、薄肉フィルム302をすり抜けた粒径の細かい紙粉を拭き取ることを目的として設けられている。発泡スポンジ301は、弾性変形していない自由な状態では、従動ローラー101の軸方向に沿って長尺の四角柱形状になっており、当該四角柱の一側面が支持部材303に固定されている。
【0047】
発泡スポンジ301は、従動ローラー101の外周面に押し付けられると、連泡を経由して内部の空気が押し出されるとともに、弾性圧縮され、当該外周面に沿った形状になる。連泡の発泡スポンジ301は、上述のように弾性率が低いので、従動ローラー101の外周面を摩耗させ難く、従動ローラー101のトルクを上昇させ難い。
【0048】
従動ローラー101の回転方向における発泡スポンジ301よりも下流側には仕切り部材201が配設されている。仕切り部材201は、薄肉フィルム302と同様に、SUS(Steel Use Stainless)、PI(Poly Imide)、PPS(Poly Phenylene Sulfide)、PC(Poly Carbonate)シートやPET(Poly Ethylene Terephthalate)シート等の材料からなる薄肉のフィルム部材である。仕切り部材201は、記録シートSの搬送経路104の経路内と経路外とを仕切ることによって、異物除去機構300を搬送経路104の経路外に位置させる。
【0049】
(2-3)仕切り部材201
仕切り部材201は、従動ローラー101の軸方向に長尺なフィルム部材である。仕切り部材201の一方の長辺201aは、自由端になっており、従動ローラー101の外周面に当接している。長辺201aの当接位置は、従動ローラー101の回転方向における搬送ニップ501よりも上流側であって、記録シートSが搬送ニップ501に突入するのを妨げない範囲内で搬送ニップ501にできるだけ近い位置であるのが好適である。
【0050】
仕切り部材201の長辺201aは、少なくとも、記録シートSの搬送方向における搬送ガイド103の下流側端部よりも搬送ニップ501に近い位置にあるのが望ましい。このようにすれば、従動ローラー101を駆動ローラー102から離間させた場合に、異物除去機構300から搬送経路104へ紙粉が進入するのをより確実に防止することができる。
【0051】
仕切り部材201の他方の長辺201bは搬送ガイド103に固定されている。これによって、薄肉フィルム302の前記一方の長辺302aが従動ローラー101の外周面に押し付けられる。
【0052】
また、搬送ガイド103は、従動ローラー101と駆動ローラー102との圧接離間状態の如何にかかわらず、一定の位置になるように固定されており、揺動しない。従って、従動ローラー101を揺動させて、駆動ローラー102から離間させた際に、細かい紙粉が発泡スポンジ301の連泡を経由する等して、異物除去機構300から紙粉が落下しても、仕切り部材201が異物除去機構300と記録シートSの搬送経路との間を仕切るので、搬送経路に進入する紙粉の量が少なくなるように抑制される。
【0053】
なお、仕切り部材201として非導電性の樹脂フィルムを用いて、記録シートSを搬送ニップ501に案内する突入ガイドを兼ねさせると、非導電性の樹脂フィルムは記録シートSとの摩擦によって帯電するため、記録シートSを静電吸着することによって紙詰まりを発生させる恐れがある。
【0054】
このような問題に対し、搬送ガイド103として、導電性の金属板金ガイド板を用い、搬送ガイド103の搬送経路104とは反対側に仕切り部材201を固定すれば、記録シートSとの摩擦による仕切り部材201の帯電を低減するとともに、搬送ガイド103によって仕切り板201を除電することができる。従って、仕切り部材201の帯電による紙詰まりの発生を防止することができる。
【0055】
(2-4)揺動機構
図2(c)および図5(a)に示すように、従動ローラー101の軸受け部材214は、揺動軸212を中心として矢印E方向に揺動する揺動部材213に固定されている。従動ローラー101と駆動ローラー102とを圧接離間させるために、制御部111が不図示の駆動モーターを制御して、揺動部材213を矢印E方向に揺動させると、軸受け部材214もまた矢印E方向に揺動する。
【0056】
一方、仕切り部材201は、搬送ガイド103に固定されており、搬送ガイド103は不図示のハウジングに固定されているので、従動ローラー101と駆動ローラー102との圧接離間状態に関わらず一定の位置にある。
【0057】
従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接した状態では、仕切り部材201の先端201aが従動ローラー101の外周面に当接する。これによって、異物除去機構300から落下した紙粉が搬送経路104に進入するのが防止される。
【0058】
また、図5(b)に示すように、従動ローラー101を矢印E方向に揺動させて、駆動ローラー102から離間させた状態では、従動ローラー101は仕切り部材201からも離間する。このとき、異物除去機構300もまた揺動して、記録シートSの搬送方向における上流側へ移動するので、異物除去機構300から落下する紙粉の落下位置もまた上流側へ移動する。一方、仕切り部材201は搬送ガイド103に固定されており、移動しない。
【0059】
従動ローラー101が駆動ローラー102から離間することによって、記録シートSの搬送方向における仕切り部材201の先端201aよりも上流側において、記録シートSの搬送経路104が異物除去機構300に対して露出する。しかしながら、上述のように、紙粉の落下位置が記録シートSの搬送方向における上流側へ移動する一方、仕切り部材201は移動しないため、記録シートSの搬送経路104に紙粉が侵入するのを高い確度で防止することができる。
【0060】
[3]変形例
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0061】
(3-1)上記実施の形態においては、記録シートSを概ね水平方向に搬送しながら搬送ニップ501に突入させる画像形成装置1を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、図6に示すように、記録シートSを概ね鉛直方向に搬送しながら搬送ニップ501に突入させる画像形成装置1に本開示を適用してもよい。
【0062】
例えば、記録シートSを下方から上方へ搬送して、搬送ニップ501に突入させる場合には、鉛直方向における従動ローラー101よりも下方に従動ローラー101の揺動軸212を配設し、当該揺動軸212を揺動中心として従動ローラー101を揺動させることによって、従動ローラー101と駆動ローラー102とを圧接離間させる。異物除去機構(図示省略)300は、従動ローラー101とともに揺動する。
【0063】
搬送ガイド103は、搬送ニップ501に向かって、下方から上方へ記録シートSを案内する。仕切り部材(図示省略)201は、搬送ガイド103の搬送経路104とは反対側に固定されており、搬送ガイド103の上端から搬送ニップ501に向かって突出する。従って、従動ローラー101を駆動ローラー102から離間させると異物除去機構300が下方へ移動する。
【0064】
一方、仕切り部材201の長辺201aの位置は固定されているので、離間時に仕切り部材201は異物除去機構300と搬送経路104との間を仕切る。従って、仕切り部材201は、離間時に異物除去機構300から搬送経路104へ紙粉が飛散するのを防止することができる。
【0065】
従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接した状態では、離間時よりも異物除去機構300の位置が高くなる。しかしながら、圧接時には、仕切り部材201が異物除去機構300と搬送経路104との間を仕切るだけでなく、仕切り部材201の長辺201aが従動ローラー101の外周面に当接するので、従動ローラー101もまた異物除去機構300と搬送経路104との間を仕切ることになる。このため、異物除去機構300から搬送経路104へ紙粉が侵入するのを防止することができる。
【0066】
このように、記録シートSを縦搬送する場合にも、本開示を適用することによって、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(3-2)上記実施の形態においては、異物除去機構300が発泡スポンジ301と薄肉フィルム302との2つの異物除去部材を備える場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、異物除去機構300が備える異物除去部材の個数は1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0068】
また、発泡スポンジ301と薄肉フィルム302との位置関係が上記実施の形態における位置関係に限定されないのは言うまでもなく、上記実施の形態における位置関係とは異なる位置関係をとってもよい。また、異物除去ブラシ等、フィルムおよびスポンジ以外の異物除去部材を用いる場合であっても、本開示を適用することによって同様の効果を得ることができる。
【0069】
(3-3)上記実施の形態においては、仕切り部材201がフィルムである場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、仕切り部材201としてスポンジ等、フィルム以外の部材を用いてもよい。フィルム以外の部材を用いても紙粉等の異物が搬送経路104に進入するのを抑制することができる。
【0070】
(3-4)上記実施の形態においては、従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接した状態で、仕切り部材201の長辺201aが従動ローラー101の外周面に当接する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、長辺201aは従動ローラー101の外周面に当接していなくてもよい。
【0071】
ただし、圧接時における長辺201aと従動ローラー101の外周面との間隔が大きくなればなるほど搬送経路104への紙粉の進入を阻止することが難しくなる。このため、長辺201aと従動ローラー101の外周面との間隔はできるだけ狭い方が望ましいのは言うまでもない。
【0072】
(3-5)上記実施の形態においては、従動ローラー101のみが揺動し、駆動ローラー102は揺動しない場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、従動ローラー101と駆動ローラー102との圧接離間に合わせ、従動ローラー101に加えて駆動ローラー102も揺動させてもよい。
【0073】
また、従動ローラー101を揺動させるのに代えて、従動ローラー101を揺動させることなく、駆動ローラー102を揺動させることによって、従動ローラー101と駆動ローラー102とを圧接離間させてもよい。いずれの場合においても、揺動させるローラーの外周面から紙粉等の異物を除去する異物除去機構300と記録シートSの搬送経路104との間を仕切る仕切り部材201を設けることによって、紙粉等の異物が搬送経路104に進入して、画質を劣化させるのを防止することができる。
【0074】
(3-6)上記実施の形態においては、レジストローラーの外周面から紙粉を除去する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、レジストローラー以外の搬送ローラーであっても、本開示を適用することによって同様の効果を得ることができる。例えば、自動原稿搬送装置142が原稿を搬送するために備えている搬送ローラーに本開示を適用すれば、紙粉等の異物に起因して、FDすじ(FD: Feeding Direction。搬送方向に沿って発生するスジ状の画像ノイズ)が発生するのを防止することができる。
【0075】
(3-7)上記実施の形態においては、揺動軸212を中心として従動ローラー101を揺動させて駆動ローラー102に圧接離間する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて、揺動以外の方法によって従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接離間してもよい。例えば、従動ローラー101を平行移動させることによって駆動ローラー102に圧接離間させてもよい。
【0076】
例えば、従動ローラー101の回転軸を軸承する軸受け部材を、従動ローラー101が圧接位置と離間位置とで往復移動できるように、ガイド部材を用いて支持し、ばね等の弾性部材を用いて前記軸受け部材を付勢することによって、従動ローラー101を圧接位置に向かって付勢する。更に、偏心カムを用いて、前記軸受け部材を往復移動させても、従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接離間することができる。
【0077】
異物除去機構300についても同様に、揺動軸212を中心として揺動させるのに代えて、従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接離間する際に、揺動軸212以外の揺動軸を中心として揺動させてもよいし、平行移動させてもよい。このようにすれば、従動ローラー101と異物除去機構300との相対的な位置関係を一定に保持することができる。また、従動ローラー101と異物除去機構300とで個別の機構を用いて平行移動させる場合と比較して、装置を小型化し、低コスト化を図ることができる。
【0078】
なお、従動ローラー101を駆動ローラー102に圧接離間する際に、従動ローラー101と異物除去機構300との相対的な位置関係が変化して、発泡スポンジ301や薄肉フィルム302が従動ローラー101の外周面から離間すると、発泡スポンジ301や薄肉フィルム302と従動ローラー101の外周面との間に挟持されていた紙粉等の異物が落下し易くなる。
【0079】
これに対して、従動ローラー101と異物除去機構300との相対的な位置関係を一定に維持すれば、発泡スポンジ301や薄肉フィルム302が従動ローラー101の外周面に当接した状態を維持することができる。従って、紙粉等の異物の落下量を低減することができる。
【0080】
(3-8)上記実施の形態においては、異物除去機構300を用いて従動ローラー101の外周面に付着した紙粉等の異物を除去する場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、従動ローラー101に代えて、或いは従動ローラー101とともに、駆動ローラー102の外周面に付着した異物を異物除去機構300にて除去してもよい。
【0081】
この場合においては、駆動ローラー102側の搬送ガイド105の搬送経路104とは反対側に仕切り部材201を固定すれば、異物除去機構300から搬送経路104へ異物が進入するのを防止することができる。特に、駆動ローラー102が搬送経路104よりも鉛直方向における上方に配設されている場合に有効である。
【0082】
(3-9)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラー複合機である場合を例にとって説明したが、本開示がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外の方式のカラー複合機であってもよいし、モノクロ複合機であってもよい。また、プリンター装置やスキャナー装置、複写装置、ファクシミリ装置といった単機能機に本開示を適用してもよく、その場合にも上記実施の形態で説明した効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示に係るシート搬送装置および画像形成装置は、圧接離間可能な搬送ローラー対から回収した異物が、搬送ローラー対を離間させた際に搬送経路へ進入するのを防止することができる装置として有用である。
【符号の説明】
【0084】
1………画像形成装置
100…レジストローラーユニット
101…従動ローラー
102…駆動ローラー
103…搬送ガイド(従動ローラー101側)
104…記録シートSの搬送経路
105…搬送ガイド(駆動ローラー102側)
201…仕切り部材
300…異物除去機構
301…発泡スポンジ
302…薄肉フィルム
303…支持部材
501…搬送ニップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6