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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】タイムインジケーター用包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20231212BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
   B65D 75/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B65D81/26 J
B32B27/00 H
B65D75/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019187884
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062882
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】中田 清
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正直
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-044175(JP,A)
【文献】特開2015-091721(JP,A)
【文献】特開2014-237121(JP,A)
【文献】特開平08-053163(JP,A)
【文献】特開平02-057583(JP,A)
【文献】特開2005-003413(JP,A)
【文献】特開2018-203365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
B65D 81/24-81/26
B32B 1/00-43/00
B65D 30/00-33/38
B65D 65/00-65/46
C09D 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターに用いられるタイムインジケーター用包装体であって、
少なくとも吸湿性積層フィルムを有し、ガスバリア性を有しており、
前記吸湿性積層フィルムが、内層側から順にシーラント層およびガスバリア層を有し、さらに前記ガスバリア層の内層側に吸湿層を有し
前記吸湿層が、吸湿性樹脂を含み、
前記吸湿層が、前記シーラント層および前記ガスバリア層の間に配置されており、
前記吸湿層が、ヒートシール性を有さない、タイムインジケーター用包装体。
【請求項2】
2枚のフィルムが接合された包装体であり、
前記2枚のフィルムの少なくとも一方が前記吸湿性積層フィルムである、請求項1に記載のタイムインジケーター用包装体。
【請求項3】
1枚の前記吸湿性積層フィルムが接合された包装体である、請求項1に記載のタイムインジケーター用包装体。
【請求項4】
前記タイムインジケーターを収納する収納部およびフランジ部を有する容器本体と、蓋材とを有し、
前記容器本体および前記蓋材の少なくとも一方が前記吸湿性積層フィルムを有する、請求項1に記載のタイムインジケーター用包装体。
【請求項5】
タイムインジケーターが収納され、密封されており、
前記タイムインジケーターが、基材と、前記基材の一方の面に配置されたインジケーター層と、前記インジケーター層に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層と、
を有し、
前記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、前記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のタイムインジケーター用包装体。
【請求項6】
タイムインジケーター付外用貼付剤が収納され、密封されており、
前記タイムインジケーター付外用貼付剤が、インジケーター層と、支持層と、薬剤および粘着基剤を含む粘着剤層と、離型層と、をこの順に有し、前記インジケーター層に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層をさらに有し、
前記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、前記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のタイムインジケーター用包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイムインジケーター用包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
色調変化を利用して時間の経過を示すタイムインジケーターが実用化されている。タイムインジケーターとしては、例えば、温度履歴に伴い色調が変化する温度履歴インジケーター(特許文献1、2)、酸化還元色素が酸素を吸収して酸化することにより色調が変化する酸素インジケーター(特許文献3)、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化する二酸化炭素インジケーター(特許文献4)等がある。
【0003】
タイムインジケーターやタイムインジケーター付物品は、使用前にタイムインジケーターが変色するのを抑制するために、通常、使用するまで密封包装されて保管される。タイムインジケーターやタイムインジケーター付物品を包装する包装体としては、例えば、外層にガスバリア層を有し、内層にヒートシール層を有する包装材で形成された包装袋が知られている(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-516190号公報
【文献】特許第4397441号公報
【文献】特開2001-192592号公報
【文献】特開2019-44175号公報
【文献】特開2019-43860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような包装袋を用いてタイムインジケーターやタイムインジケーター付物品を密封包装することで、外部からの酸素、二酸化炭素、水蒸気等の気体の侵入を防止することはできる。しかしながら、密封された包装体の内部にも酸素、二酸化炭素、水蒸気等の気体は存在しており、これらの気体と反応してタイムインジケーターが変色してしまう場合がある。すなわち、タイムインジケーターの使用前に、包装体で密封して保管している状態で、タイムインジケーターが変色してしまう場合がある。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターに好適に用いられる包装体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターに用いられるタイムインジケーター用包装体であって、少なくとも吸湿性積層フィルムを有し、ガスバリア性を有しており、上記吸湿性積層フィルムが、内層側から順にシーラント層およびガスバリア層を有し、さらに上記ガスバリア層の内層側に吸湿層を有する、タイムインジケーター用包装体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターに好適に用いられる包装体を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略断面図である。
図2】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略断面図である。
図3】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略断面図である。
図4】本開示のタイムインジケーター用包装体における吸湿性積層フィルムを例示する概略断面図である。
図5】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略断面図である。
図6】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略断面図である。
図7】本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略平面図である。
図8】本開示に用いられるタイムインジケーターを例示する概略断面図である。
図9】本開示に用いられるタイムインジケーターを例示する概略断面図である。
図10】本開示に用いられるタイムインジケーターを例示する概略断面図である。
図11】本開示に用いられるタイムインジケーターを例示する概略断面図である。
図12】本開示に用いられるタイムインジケーターにおけるタイムインジケーター側吸湿層を例示する概略断面図である。
図13】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
図14】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
図15】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
図16】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
図17】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
図18】本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のタイムインジケーター用包装体について、それぞれ詳細に説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部材の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0012】
また、本明細書において、「フィルム」、「シート」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「フィルム」は、シートや板とも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
【0013】
本開示のタイムインジケーター用包装体は、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターに用いられる包装体であって、少なくとも吸湿性積層フィルムを有し、ガスバリア性を有しており、上記吸湿性積層フィルムが、内層側から順にシーラント層およびガスバリア層を有し、さらに上記ガスバリア層の内層側に吸湿層を有する。
【0014】
本開示のタイムインジケーター用包装体について図面を参照して説明する。図1は、本開示のタイムインジケーター用包装体の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、タイムインジケーター用包装体1Aは、吸湿性積層フィルム10を有し、ガスバリア性を有する。吸湿性積層フィルム10は、内層側から順にシーラント層4およびガスバリア層3を有し、さらにガスバリア層3の内層側に吸湿層5を有する。図1に示す例においては、シーラント層4が吸湿層5を兼ねているが、吸湿層5はガスバリア層3の内層側に配置されていればよく、この限りではない。また、吸湿性積層フィルム10は、ガスバリア層3の外層側に保護層2をさらに有することができる。タイムインジケーター用包装体1Aは、端部に接合部9を有し、接合部9では吸湿性積層フィルム10のシーラント層4同士が接合されている。
【0015】
図2は、本開示のタイムインジケーター用包装体の他の例を示す概略断面図である。図2に示すように、タイムインジケーター用包装体1Aは、吸湿性積層フィルム10および積層フィルム11を有し、ガスバリア性を有する。吸湿性積層フィルム10は、内層側から順にシーラント層4およびガスバリア層3を有し、さらにガスバリア層3の内層側に吸湿層5を有する。図2に示す例においては、シーラント層4が吸湿層5を兼ねているが、吸湿層5はガスバリア層3の内層側に配置されていればよく、この限りではない。また、吸湿性積層フィルム10は、ガスバリア層3の外層側に保護層2をさらに有することができる。また、積層フィルム11は、内層側から順にシーラント層14、ガスバリア層13および保護層12を有する。なお、積層フィルム11は、吸湿層を有さない。タイムインジケーター用包装体1Aは、端部に接合部9を有し、接合部9では吸湿性積層フィルム10のシーラント層4および積層フィルム11のシーラント層14が接合されている。
【0016】
図3は、本開示のタイムインジケーター用包装体の他の例を示す概略断面図である。図3に示すように、タイムインジケーター用包装体1Bは、インジケーターを収納する収納部32およびフランジ部33を有する容器本体31と、蓋材34とを有し、ガスバリア性を有する。このタイムインジケーター用包装体1Bは、ブリスター包装体である。蓋材34は、吸湿性積層フィルム10を有する。吸湿性積層フィルム10は、内層側から順にシーラント層4およびガスバリア層3を有し、さらにガスバリア層3の内層側に吸湿層5を有する。図3に示す例においては、シーラント層4が吸湿層5を兼ねているが、吸湿層5はガスバリア層3の内層側に配置されていればよく、この限りではない。また、吸湿性積層フィルム10は、ガスバリア層3の外層側に保護層2をさらに有することができる。また、容器本体31は、積層体21を有する。積層体21は、内層側から順に樹脂層24、ガスバリア層23および樹脂層22を有する。なお、積層体21は、吸湿層を有さない。タイムインジケーター用包装体1Bは、容器本体31のフランジ部33に接合部9を有し、接合部9では蓋材34の吸湿性積層フィルム10のシーラント層4と容器本体31のフランジ部33の積層体21の内層側の樹脂層24とが接合されている。
【0017】
ここで、本開示に用いられるタイムインジケーターは、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化するタイムインジケーターであり、例えば、二酸化炭素と反応することでpHの値が変化する塩基性化合物と、pHの値の変化によって色調が変化する指示染料とを少なくとも含むインジケーター層を有する。本開示に用いられるタイムインジケーターの色調が変化する過程について説明する。インジケーター層が二酸化炭素と接触すると、二酸化炭素とインジケーター層中の塩基性化合物とが反応する。二酸化炭素は水分と反応して炭酸が発生し、炭酸とインジケーター層中の塩基性化合物とで中和反応が起き、水酸化物イオンの濃度が低下し、インジケーター層内のpHの値が下がる。インジケーター層内のpHの値が下がることで、指示染料の色調が変化する。そして、中和反応において、その当量点から遠いときは二酸化炭素の吸収量に対するpHの値の変化は小さいものの、その当量点の付近では二酸化炭素の吸収量に対するpHの値の変化は大きい。そのため、タイムインジケーターは、二酸化炭素と接触してからしばらくは色調の変化はほとんど見られないが、二酸化炭素と接触してから経時で二酸化炭素を吸収して当量点の付近になると色調の変化は大きくなる。
【0018】
本開示に用いられるタイムインジケーターにおいては、二酸化炭素および水の少なくとも一方の量が少ない場合、上記の反応速度が非常に遅くなる。本開示によれば、吸湿性積層フィルムがガスバリア層の内層側に吸湿層を有するため、吸湿層によって本開示のタイムインジケーター用包装体の内部に存在する水分を吸湿することができ、包装体の内部に存在する水の量を少なくすることができる。このため、本開示のタイムインジケーター用包装体でタイムインジケーターを密封することにより、上記の反応速度を著しく遅くすることができ、タイムインジケーターが当量点付近で色調変化するのを抑制することができる。したがって、タイムインジケーターの使用前に、包装体で密封して保管している状態で、タイムインジケーターが変色するのを抑制することが可能である。
【0019】
以下、本開示のタイムインジケーター用包装体について、構成ごとに説明する。
【0020】
A.吸湿性積層フィルム
本開示における吸湿性積層フィルムは、内層側から順にシーラント層およびガスバリア層を有し、さらに上記ガスバリア層の内層側に吸湿層を有する。
【0021】
以下、本開示のタイムインジケーター用包装体における吸湿性積層フィルムについて、構成ごとに説明する。
【0022】
1.吸湿層
本開示のタイムインジケーター用包装体における吸湿層は、ガスバリア層の内層側に配置される部材である。
【0023】
本開示において、吸湿層は吸湿性を有する。ここで、吸湿層が吸湿性を有するとは、温度40℃、相対湿度100%における吸湿量が、0.1g/m以上であることをいう。吸湿層の吸湿性は、上記吸湿量が、好ましくは1g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上とすることができる。
【0024】
ここで、上記吸湿量は、重量法で測定することができる。重量法とは、吸湿前の検体を一定面積(例えば100cm)に切り出し、重量を測定し、その検体を40℃、100%RHの恒温恒湿槽中で7日間保管し、保管後の重量を測定し、その重量の差分を吸湿量とする測定法である。
【0025】
上記吸湿層は、吸湿性を有するものであればよく、例えば、分子間力により水を吸着する物理吸着型の吸湿層であってもよく、化学結合により水を吸着する化学吸着型の吸湿層であってもよい。すなわち、上記吸湿層は、可逆的な吸湿性を有するもの、つまり、可逆的に吸湿および放湿する吸放湿性を有するものであってもよく、不可逆的な吸湿性を有するものであってもよい。吸放湿性を有するものは、湿度が高い時には吸湿し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定に維持することができる。また、上記吸湿層は、吸湿により潮解しないことが好ましい。
【0026】
上記吸湿層の配置としては、上記吸湿層がガスバリア層の内層側に配置されていればよい。例えば図4(a)に示すように、吸湿層5がシーラント層4およびガスバリア層3の間に配置されていてもよく、図4(b)に示すように、吸湿性積層フィルム10が2層のシーラント層4a、4bを有しており、2層のシーラント層4a、4bの間に吸湿層5が配置されていてもよい。また、例えば図1図3に示すように、シーラント層4が吸湿層5を兼ねていてもよい。また、例えば図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されていてもよい。図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されている場合、通常、接合部9ではシーラント層4が最内層となることから、吸湿層5は接合部9以外の領域に配置されることが好ましい。
【0027】
中でも、上記吸湿層の配置としては、吸湿性積層フィルムが2層のシーラント層を有しており、2層のシーラント層の間に吸湿層が配置されていることが好ましい。吸湿層がタイムインジケーター用包装体の内容物やガスバリア層に接触しておらず、相互作用が少ないからである。
【0028】
上記吸湿層は、ガスバリア層の内層側の面の全面に配置されていてもよく、一部に配置されていてもよく、上記吸湿層の配置に応じて適宜選択される。上述したように、吸湿層がシーラント層の内層側に配置される場合には、吸湿層は、接合部以外の領域に配置されることが好ましい。
【0029】
上記吸湿層としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、吸湿性樹脂を含む吸湿層や、吸湿剤および樹脂を含む吸湿層が挙げられる。以下、吸湿層が吸湿性樹脂を含む第1態様と、吸湿層が吸湿剤および樹脂を含む第2態様とに分けて説明する。
【0030】
(1)吸湿層の第1態様
本態様の吸湿層は、吸湿性樹脂を含む。上記吸湿層に含まれる吸湿性樹脂としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)を用いることができる。具体的には、上記吸湿性樹脂としては、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアミン系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系、ポリグリコール系等が挙げられる。これらの吸湿性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
中でも、上記吸湿性樹脂は、吸湿性およびコストの観点から、ポリアクリル酸塩系が好ましい。特に、上記吸湿性樹脂は、ビニルアルコール-アクリル酸塩共重合体の架橋物であることが好ましい。強度および柔軟性に優れる吸湿層を得ることができるからである。
【0032】
なお、上記吸湿性樹脂において、アクリル酸には、アクリル酸だけでなくメタクリル酸も含まれる。
【0033】
上記吸湿層には、必要に応じて、例えば防腐剤、消泡剤、潤滑剤、浸透剤、平滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0034】
上記吸湿層の厚みとしては、十分な吸湿効果が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm以上10μm以下とすることができ、好ましくは0.5μm以上5μm以下、より好ましくは1μm以上3μm以下とすることができる。上記吸湿層の厚みが上記範囲内であることにより、良好な製膜性および吸湿性を得ることができる。
【0035】
本態様において、上記吸湿層の配置としては、上記吸湿層がガスバリア層の内層側に配置されていればよく、例えば図4(a)に示すように、吸湿層5がシーラント層4およびガスバリア層3の間に配置されていてもよく、図4(b)に示すように、吸湿性積層フィルム10が2層のシーラント層4a、4bを有しており、2層のシーラント層4a、4bの間に吸湿層5が配置されていてもよく、図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されていてもよい。図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されている場合、吸湿層5は接合部9以外の領域に配置されることが好ましい。
【0036】
上記吸湿層をガスバリア層の内層側に配置する方法としては、例えば、ガスバリア層またはシーラント層上に吸湿層を形成する方法や、支持基材上に上記吸湿層が配置された吸湿シートを別に作製し、この吸湿シートを接着剤層を介してガスバリア層またはシーラント層に積層する方法や、吸湿層として単層の吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介してガスバリア層またはシーラント層に積層する方法を挙げることができる。
【0037】
上記のガスバリア層またはシーラント層上に吸湿層を形成する方法の場合、上記吸湿層の形成方法としては、例えば、ガスバリア層またはシーラント層上に上記吸湿性樹脂の形成に用いられる単量体または重合体成分および架橋剤を含む組成物を塗布し、加熱する方法が挙げられる。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な塗布方法を用いることができる。また、加熱方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な加熱方法を用いることができる。加熱条件は、適宜選択される。加熱処理は、乾燥処理と併せて行ってもよい。
【0038】
また、上記の支持基材上に上記吸湿層が配置された吸湿シートを別に作製し、この吸湿シートを接着剤層を介してガスバリア層またはシーラント層に積層する方法の場合、上記吸湿層の形成方法としては、上述の方法を用いることができる。また、支持基材としては、上記吸湿層を支持することが可能であれば特に限定されず、例えば、プラスチックフィルム等を挙げることができる。
【0039】
また、上記の吸湿層として単層の吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介してガスバリア層またはシーラント層に積層する方法の場合、単層の吸湿シートは、例えば、上記吸湿性樹脂の形成に用いられる単量体または重合体成分および架橋剤を含む処理液を、織布、不織布、紙等の基体に塗布または含浸させ、加熱することにより得ることができる。また、単層の吸湿シートは、例えば、上記吸湿性樹脂の形成に用いられる単量体または重合体成分および架橋剤を含む処理液を、化学繊維や天然繊維の糸の表面に塗布し、加熱することにより、上記吸湿性樹脂で覆われた糸を得た後、この吸湿性樹脂で覆われた糸を製織することにより得ることもできる。
【0040】
上記吸湿層として吸湿シートを用いる場合には、上述したように、上記吸湿層はガスバリア層またはシーラント層上に接着剤層を介して配置することができる。接着剤層に用いられる接着剤としては、ガスバリア層またはシーラント層と吸湿層とを接着可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な接着剤を用いることができる。
【0041】
(2)吸湿層の第2態様
本態様の吸湿層は、吸湿剤および樹脂を含む。上記吸湿層に含まれる吸湿剤としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、無機系の吸湿剤および有機系の吸湿剤のいずれも用いることができる。
【0042】
無機系の吸湿剤としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、吸湿剤として公知の材料を用いることができる。具体的には、無機系の吸湿剤としては、シリカゲル、アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム等の酸化物;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、炭酸カルシウム等の金属塩;ゼオライト;活性炭等が挙げられる。これらは、水和物または無水物のいずれの形態であってもよい。
【0043】
有機系の吸湿剤としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、吸湿剤として公知の材料を用いることができる。具体的には、有機系の吸湿剤としては、一般的な高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)を用いることができる。高吸水性樹脂としては、上述したものが挙げられる。
【0044】
これらの吸湿剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
中でも、無機系の吸湿剤が好ましい。有機系の吸湿剤と比較して、熱安定性や化学的安定性が良いからである。
【0046】
上記吸湿剤の形状としては、例えば、ペレット、ビーズ、パウダー、粒子、繊維等、特に限定されるものではない。
【0047】
上記吸湿層において、上記吸湿剤は樹脂中に分散されることから、その粒径が小さいことが好ましい。上記吸湿剤の粒径が小さいことにより、樹脂中に均一に分散させることができ、かつ比表面積を大きくすることができるからである。具体的には、上記吸湿剤の平均粒径は、1μm以上40μm以下とすることができ、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上10μm以下とすることができる。上記平均粒径が小さすぎると、吸湿剤の樹脂への練り込みや分散が困難になり、コストがかかるおそれがある。また、上記平均粒径が大きすぎると、吸湿層の表面の平滑性が損なわれるおそれがあり、また吸湿層の厚みが制限される場合がある。
【0048】
ここで、上記平均粒径は、吸湿層の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真により観察される粒子20個の平均値をいう。
【0049】
上記吸湿層中の上記吸湿剤の含有量としては、目的とする吸湿性や、吸湿剤の種類、吸湿層の構成等に応じて適宜選択されるが、例えば、後述する樹脂100質量部に対して、5質量部以上400質量部以下で設定することができる。上記吸湿剤の含有量が上記範囲であれば、吸湿剤の樹脂中での分散性が良く、高い吸湿性を有し、成型性も良好な吸湿層とすることができる。
【0050】
また、シーラント層が吸湿層を兼ねる場合、上記吸湿層中の上記吸湿剤の含有量としては、例えば1質量%以上とすることができる。この場合、吸湿効果を示すことが可能である。中でも、良好な吸湿効果を得るためには、上記吸湿層中の上記吸湿剤の含有量は、3質量%以上であることが好ましい。また、良好な製膜性を得るためには、上記吸湿層中の上記吸湿剤の含有量は、55質量%未満であることが好ましい。具体的には、上記吸湿層中の上記吸湿剤の含有量は、1質量%以上50質量%以下とすることができ、好ましくは3質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0051】
また、例えば図4(a)に示すように、シーラント層4および吸湿層5が積層されている場合、共押出成形によりシーラント層および吸湿層の2層を同時に形成することができる。この場合、吸湿層中の吸湿剤の含有量を多くしても、吸湿層がシーラント層に支持されていることにより、成形性良く製膜することができる。また、例えば図4(b)に示すように、シーラント層4a、吸湿層5およびシーラント層4bが積層されている場合、共押出成形によりシーラント層、吸湿層およびシーラント層の3層を同時に形成することができる。この場合、吸湿層中の吸湿剤の含有量を多くしても、吸湿層が2つのシーラント層の間に挟まれていることにより、成形性良く製膜することができる。そのため、これらの場合は、吸湿層中の吸湿剤の含有量を多くすることができるため、吸湿性能を高めることができる。
【0052】
また、上記吸湿層に含まれる樹脂としては、上記吸湿剤を分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルメタクリル酸共重合体、エチレンプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、酸変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系や、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリル酸エステル、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリ乳酸、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
【0053】
中でも、加工性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ABS、ポリスチレン、ポリアミドが好ましい。特に、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0054】
また、シーラント層が吸湿層を兼ねる場合、上記樹脂は、上記吸湿剤を分散可能であり、ヒートシール性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的なヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、上記のポリオレフィン系等を挙げることができる。
【0055】
上記の場合、吸湿剤が分散された状態で優れたヒートシール性および吸湿性を発揮することができることから、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレンが好ましい。
【0056】
上記吸湿層には、必要に応じて、例えば発泡剤、可塑剤、安定剤、滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0057】
上記吸湿層の厚みとしては、十分な吸湿効果が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm以上200μm以下とすることができ、好ましくは20μm以上100μm以下、より好ましくは30μm以上70μm以下とすることができる。上記吸湿層の厚みが上記範囲内であることにより、良好な製膜性および吸湿性を得ることができる。
【0058】
また、シーラント層が吸湿層を兼ねる場合、上記吸湿層の厚みとしては、例えば5μm以上とすることができる。この場合、製膜が可能である。中でも、良好な製膜性および吸湿性を得るためには、上記吸湿層の厚みは、10μm以上200μm以下が好ましい。
【0059】
本態様において、上記吸湿層の配置としては、上記吸湿層がガスバリア層の内層側に配置されていればよい。例えば図4(a)に示すように、吸湿層5がシーラント層4およびガスバリア層3の間に配置されていてもよく、図4(b)に示すように、吸湿性積層フィルム10が2層のシーラント層4a、4bを有しており、2層のシーラント層4a、4bの間に吸湿層5が配置されていてもよい。また、例えば図1図3に示すように、シーラント層4が吸湿層5を兼ねていてもよい。また、例えば図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されていてもよい。図5図6に示すように、吸湿層5がシーラント層4の内層側に配置されている場合、吸湿層5は接合部9以外の領域に配置されることが好ましい。
【0060】
上記吸湿層をガスバリア層の内層側に配置する方法としては、例えば、ガスバリア層またはシーラント層上に吸湿層を形成する方法や、吸湿層として吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介してガスバリア層またはシーラント層に積層する方法を挙げることができる。
【0061】
上記吸湿層の形成方法としては、例えば、上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物を、ガスバリア層上に押出コーティングする方法が挙げられる。上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物の調製方法としては、吸湿剤を樹脂中に混練する方法を挙げることができ、一般的な混練方法を用いることができる。また、押出コーティングに際しては、通常、ガスバリア層上にアンカーコート層が配置される。アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ガスバリア層と吸湿層との密着性を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なアンカーコート剤を用いることができる。
【0062】
上記吸湿層として吸湿シートを用いる場合、吸湿シートは、例えば、上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物を成形することにより得ることができる。成形方法としては、例えば、押出成形、共押出成形、射出成形、中空成形、押出コーティング、架橋発泡成形等が挙げられる。
【0063】
上記吸湿層として吸湿シートを用いる場合、上記吸湿層はガスバリア層またはシーラント層上に接着剤層を介して配置することができる。接着剤層に用いられる接着剤としては、ガスバリア層またはシーラント層と吸湿シートとを接着可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な接着剤を用いることができる。
【0064】
また、例えば図4(a)に示すように、シーラント層4および吸湿層5が積層されている場合、共押出成形によりシーラント層および吸湿層の2層を同時に形成することができる。また、例えば図4(b)に示すように、シーラント層4a、吸湿層5およびシーラント層4bが積層されている場合、共押出成形によりシーラント層、吸湿層およびシーラント層の3層を同時に形成することができる。
【0065】
2.シーラント層
本開示のタイムインジケーター用包装体におけるシーラント層は、ガスバリア層の内層側に配置され、接合部を形成する部材である。
【0066】
上記シーラント層に含まれる樹脂としては、ヒートシール性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的なヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレンメチルメタクリル酸共重合体、エチレンプロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、酸変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系等を挙げることができる。これらの樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
【0067】
上記シーラント層には、必要に応じて、例えば酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃剤、充填剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0068】
上記シーラント層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、本開示のタイムインジケーター用包装体の包装形態等に応じて適宜選択されるが、例えば10μm以上200μm以下とすることができる。
【0069】
上記シーラント層は、例えば、ガスバリア層または吸湿層上に接着剤層を介して貼り合わせることができる。また、上記シーラント層は、例えば焼付コート等により、ガスバリア層上に直接形成してもよい。
【0070】
3.ガスバリア層
本開示のタイムインジケーター用包装体におけるガスバリア層は、上記吸湿層およびシーラント層の外層側に配置され、ガスバリア性を有する部材である。
【0071】
上記ガスバリア層のガスバリア性としては、水蒸気透過度が、例えば10g/m/day以下であることが好ましく、中でも1g/m/day以下であることが好ましく、特に0.1g/m/day以下であることが好ましい。上記ガスバリア層の水蒸気透過度が上記範囲であることにより、水分が透過しにくくなり、外部から侵入する水分を内部のタイムインジケーターまで浸透しにくくすることができる。
【0072】
上記水蒸気透過度は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、水蒸気透過度測定装置を用いてJIS K7129に従い測定することができる。上記水蒸気透過度測定装置としては、米国モコン(MOCON)社製、パーマトラン(PERMATRAN)を用いることができる。
【0073】
本開示のタイムインジケーター用包装体が上記シーラント層の外層側に印刷層を有しており、上記ガスバリア層が印刷層の外層側に配置される場合には、印刷層を視認できるように、通常、上記ガスバリア層は透明性を有する。
【0074】
上記ガスバリア層としては、ガスバリア性を有するものであればよく、例えば、金属箔、ガスバリア性樹脂膜、樹脂基材の片面または両面にバリア膜を有するガスバリア積層体が挙げられる。
【0075】
(1)金属箔
金属箔としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタン等の金属およびその合金を含む金属箔を挙げることができる。中でも、アルミニウムまたはその合金を含む金属箔が好適に用いられる。
【0076】
金属箔の厚みは、所望のガスバリア性能を発揮することができれば特に限定されるものではなく、金属箔の種類に応じて適宜設定される。例えば、アルミニウムまたはその合金を含む金属箔の場合、金属箔の厚みは、5μm以上50μm以下とすることができ、中でも、ガスバリア性およびコストの観点から、6μm以上12μmであることが好ましい。
【0077】
(2)ガスバリア性樹脂膜
ガスバリア性樹脂膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール等を含むガスバリア性樹脂膜が挙げられる。
【0078】
ガスバリア性樹脂膜の厚みは、所望のガスバリア性能を発揮することができれば特に限定されない。
【0079】
ガスバリア性樹脂膜としては、例えば、クラレ社 エバールフィルム「EF‐XL」、「EF‐F」等の市販品を用いることもできる。
【0080】
(3)ガスバリア積層体
ガスバリア積層体は、樹脂基材の片面または両面にバリア膜を有する。
【0081】
バリア膜としては、ガスバリア性を有するものであればよく、金属膜、無機化合物膜、有機-無機ハイブリッド膜、ガスバリア性樹脂膜等が挙げられる。
【0082】
金属膜としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、チタン等の金属または合金を含む金属膜が挙げられる。
【0083】
無機化合物膜としては、例えば、無機酸化物、無機酸化窒化物、無機窒化物、無機酸化炭化物、無機酸化炭化窒化物等を含む無機化合物膜が挙げられる。具体的には、ケイ素(シリカ)、アルミニウム、チタン、ニッケル、鉄、銅、マグネシウム、カルシウム、カリウム、錫、ナトリウム、ホウ素、鉛、亜鉛、ジルコニウム、イットリウム等を含む無機化合物膜が挙げられる。
【0084】
ガスバリア性樹脂膜としては、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、メタキシリレンジアミンとアジピン酸の共重合体等を含むガスバリア性樹脂膜が挙げられる。
【0085】
また、バリア膜は、単層であってもよく、2層以上を積層させて多層としたものであってもよい。
【0086】
バリア膜の厚みは、所望のガスバリア性能を発揮することができれば特に限定されるものではなく、バリア膜の種類に応じて適宜設定される。バリア膜がアルミニウム膜の場合、バリア膜の厚みは、例えば、20nm以上100nm以下とすることができ、ガスバリア性、樹脂基材との密着性、耐クラック性を考慮すると、30nm以上60nm以下であることが好ましい。また、バリア膜が酸化アルミニウム膜の場合、バリア膜の厚みは、例えば、10nm以上60nm以下とすることができ、ガスバリア性、樹脂基材との密着性、耐クラック性を考慮すると、15nm以上50nm以下であることが好ましい。
【0087】
バリア膜は、コーティングによる塗布膜であってもよく、蒸着膜であってもよい。バリア膜は、材料や種類に応じて塗布法、蒸着法、圧着法等の従来公知の方法を用いて成膜することができる。また、バリア膜がガスバリア性樹脂膜である場合には、バリア膜は、共押出により樹脂基材と積層されたものであってもよい。
【0088】
また、樹脂基材を構成する樹脂としては、バリア膜を支持することができれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール(PVA)やエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系、エチレンビニルエステル共重合体ケン化物、各種のナイロン等のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアセタール、セルロース樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。
【0089】
樹脂基材の厚みは、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0090】
ガスバリア積層体は、バリア膜の樹脂基材とは反対側の面に、さらにオーバーコート膜を有することができる。オーバーコート膜を有することで、ガスバリア積層体のガスバリア性能をさらに向上させることができるからである。オーバーコート膜の材料としては、一般にバリアコート剤やオーバーコート剤として用いられている材料を用いることができる。
【0091】
また、バリア膜がガスバリア性樹脂膜であり、ガスバリア積層体が共押出フィルムである場合には、ガスバリア積層体は、樹脂基材とバリア膜との2層をこの順に有していてもよく、樹脂基材とバリア膜と樹脂基材との3層をこの順に有していてもよい。このようなガスバリア積層体としては、例えば、三菱ケミカル社 スーパーニール「SP」、「EH」等の市販品を用いることもできる。
【0092】
ガスバリア積層体は、バリア膜がシーラント層側となるように配置されていてもよく、樹脂基材がシーラント層側となるように配置されていてもよい。
【0093】
本開示のタイムインジケーター用包装体は、ガスバリア層を少なくとも1つ有していればよく、2つ以上有していてもよい。ガスバリア層の数は、本開示のタイムインジケーター用包装体が所望の特性を具備することが可能な範囲内で、ガスバリア層の種類、仕様、ガスバリア性能等に応じて適宜設定することができる。
【0094】
4.保護層
本開示のタイムインジケーター用包装体における吸湿性積層フィルムは、上記ガスバリア層の外層側に保護層を有していてもよい。保護層は、通常、吸湿性積層フィルムにおいて最外に位置する層である。上記保護層は、本開示のタイムインジケーター用包装体の内部を保護するのに十分な機械的強度を有し、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性等に優れたものであることが好ましい。
【0095】
上記保護層の材料としては、シーラント層よりも高融点の樹脂が好ましく、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、セルロース樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0096】
また、上記保護層は、単層であってもよく、2層以上を積層させて多層としたものであってもよい。
【0097】
上記保護層は、上記ガスバリア層との密着性の向上が図れるという点から、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0098】
上記保護層の厚みは、上記の吸湿層、シーラント層およびガスバリア層を保護することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば5μm以上80μm以下とすることができる。
【0099】
5.その他の構成
本開示のタイムインジケーター用包装体における吸湿性積層フィルムは、上記シーラント層および上記保護層の間に印刷層を有していてもよい。
【0100】
B.包装形態
本開示のタイムインジケーター用包装体は、少なくとも上記吸湿性積層フィルムを有し、ガスバリア性を有しており、密封可能なものであればよく、その包装形態としては特に限定されない。包装形態としては、例えば、四方シール包装、三方シール包装、ピロータイプ包装、ストリップ包装、ブリスター包装等を挙げることができる。図7(a)~(d)は、本開示のタイムインジケーター用包装体を例示する概略平面図であり、図7(a)は四方シール包装体、図7(b)は三方シール包装体、図7(c)はピロータイプ包装体、図7(d)はストリップ包装体の例である。また、図3および図6はブリスター包装体の例である。
【0101】
四方シール包装の場合、本開示のタイムインジケーター用包装体は、2枚のフィルムが接合された包装体であり、この2枚のフィルムの少なくとも一方が上記吸湿性積層フィルムである。具体的には、2枚のフィルムが重ね合わされ、四辺が接合された四方シール包装体である。2枚のフィルムのうち、一方のみが上記吸湿性積層フィルムであってもよく、両方が上記吸湿性積層フィルムであってもよい。2枚のフィルムの一方のみが上記吸湿性積層フィルムである場合、他方はガスバリア性を有していればよく、例えば内層側から順にシーラント層とガスバリア層とを有する積層フィルムとすることができる。また、上記積層フィルムは、内層側から順にシーラント層とガスバリア層と保護層とを有していてもよい。上記積層フィルムにおけるシーラント層、ガスバリア層および保護層としては、上記吸湿性積層フィルムにおけるシーラント層、ガスバリア層および保護層とそれぞれ同様とすることができる。
【0102】
三方シール包装の場合、本開示のタイムインジケーター用包装体は、1枚のフィルムが接合された包装体であり、この1枚のフィルムが上記吸湿性積層フィルムである。具体的には、1枚のフィルムが二つ折りにされ、三辺が接合された三方シール包装体である。
【0103】
ピロータイプ包装の場合、本開示のタイムインジケーター用包装体は、1枚のフィルムが接合された包装体であり、この1枚のフィルムが上記吸湿性積層フィルムである。具体的には、1枚のフィルムが筒状にされて合掌貼りされ、上下端が接合されたピロータイプ包装体である。
【0104】
ストリップ包装の場合、本開示のタイムインジケーター用包装体は、2枚のフィルムが接合された包装体であり、この2枚のフィルムの少なくとも一方が上記吸湿性積層フィルムである。具体的には、2枚のフィルムが重ね合わされ、周囲が接合されたストリップ包装体である。2枚のフィルムのうち、一方のみが上記吸湿性積層フィルムであってもよく、両方が上記吸湿性積層フィルムであってもよい。2枚のフィルムの一方のみが上記吸湿性積層フィルムである場合、他方はガスバリア性を有していればよく、例えば内層側から順にシーラント層とガスバリア層とを有する積層フィルムとすることができる。また、上記積層フィルムは、内層側から順にシーラント層とガスバリア層と保護層とを有していてもよい。上記積層フィルムにおけるシーラント層、ガスバリア層および保護層としては、上記吸湿性積層フィルムにおけるシーラント層、ガスバリア層および保護層とそれぞれ同様とすることができる。
【0105】
ブリスター包装の場合、本開示のタイムインジケーター用包装体は、タイムインジケーターを収納する収納部およびフランジ部を有する容器本体と、蓋材とを有するブリスター包装体であり、この容器本体および蓋材の少なくとも一方が上記吸湿性積層フィルムを有する。
【0106】
上記蓋材が上記吸湿性積層フィルムを有する場合、上記容器本体は、ガスバリア性を有していればよく、例えばガスバリア性を有する樹脂シートや、樹脂層とガスバリア層と樹脂層とがこの順に積層された積層シートを有することができる。上記積層シートにおけるガスバリア層および樹脂層としては、一般にブリスター包装の容器本体に用いられる積層シートを構成するガスバリア層および樹脂層を採用することができる。上記積層シートにおけるガスバリア層としては、例えばアルミニウム箔等の金属箔を挙げることができる。また、上記積層シートにおける内層側の樹脂層としては、上記蓋材を構成する吸湿性積層フィルムのシーラント層と接着可能なものであればよく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等を含む樹脂層を挙げることができる。また、上記積層シートにおける外層側の樹脂層としては、例えば、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を含む樹脂層を挙げることができる。上記積層シートにおいて、樹脂層およびガスバリア層は接着剤層を介して積層されていてもよい。上記容器本体は、上記樹脂シートまたは積層シートを、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、冷間成形等、成形することにより得ることができる。
【0107】
一方、上記容器本体が上記吸湿性積層フィルムを有する場合、上記容器本体は、上記吸湿性積層フィルムを、例えば真空成形、圧空成形、真空圧空成形、冷間成形等、成形することにより得ることができる。この場合、上記蓋材は、ガスバリア性を有していればよく、一般的なブリスター包装の蓋材を用いることができる。例えば、上記蓋材は、基材層とシーラント層とがこの順に積層された積層シートを有することができる。上記積層シートにおける基材層およびシーラント層としては、一般にブリスター包装の蓋材に用いられる積層シートを構成する基材層およびシーラント層を採用することができる。
【0108】
本開示のタイムインジケーター用包装体は、例えば、上記吸湿性積層フィルムが製袋されたものであり、上記吸湿性積層フィルムをヒートシールすることにより製造することができる。また、本開示のタイムインジケーター用包装体は、例えば、上記樹脂シートまたは積層シートを成形して容器本体を作製し、容器本体に上記吸湿性積層フィルムを有する蓋材をヒートシールすることにより、あるいは、上記吸湿性積層フィルムを成形して容器本体を作製し、容器本体に蓋材をヒートシールすることにより、製造することができる。
【0109】
ヒートシールの方法としては、例えば、熱板シール、回転ロールシール、バンドシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方式を適用することができる。
【0110】
C.タイムインジケーター
本開示のタイムインジケーター用包装体は、タイムインジケーターが収納され、密封されていてもよい。本開示に用いられるタイムインジケーターは、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化する二酸化炭素インジケーターである。
【0111】
上記タイムインジケーターとしては、例えば、基材と、上記基材の一方の面に配置されたインジケーター層と、を有し、上記インジケーター層が、二酸化炭素と反応することでpHの値が変化する塩基性化合物と、pHの値の変化によって色調が変化する指示染料とを少なくとも含む、タイムインジケーターを挙げることができる。
【0112】
上記インジケーター層に含まれる塩基性化合物としては、塩基性の化合物であって、二酸化炭素と反応することでpHの値が変化する化合物であれば特に限定されない。例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0113】
上記インジケーター層に含まれる指示染料としては、pHの変化によって発色、消色または、色調が変化する化合物であれば特に限定されない。例えば、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエロー等が挙げられる。
【0114】
上記インジケーター層は、さらにバインダー樹脂を含有することができる。上記バインダー樹脂としては、上記塩基性化合物や指示染料を分散可能なものであれば特に限定されない。例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等を用いることができる。
【0115】
上記インジケーター層において、上記塩基性化合物の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して0.05質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.08質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましい。なお、塩基性化合物の含有量を調整することで、インジケーター層の色調が変化する時間を調整することができる。
【0116】
上記インジケーター層において、上記指示染料の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して0.005質量部以上0.1質量部以下であることが好ましく、0.008質量部以上0.05質量部以下であることがより好ましい。なお、指示染料の含有量を調整することで、インジケーター層の色調が変化する時間を調整することができる。
【0117】
上記インジケーター層は、上記中和反応を制御するために触媒をさらに含有してもよい。触媒の量や種類を調整することで、中和反応を制御し、インジケーター層の色調が変化する時間の制御が容易になる。
【0118】
中でも、上記タイムインジケーターは、基材と、上記基材の一方の面に配置されたインジケーター層と、を有し、上記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、上記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、タイムインジケーターであることが好ましい。
【0119】
上記タイムインジケーターは、以下の3点に着目して得られたものである。1つ目は、外気中の二酸化炭素量は変動しにくく、水酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収する速度は、外気の湿度の影響を受けるものの、外気の温度の変化の影響を受けにくい点である。2つ目は、水酸化カルシウムが、約5グラムで約1.5L以上の二酸化炭素を吸収する点である。そして3つ目は、水酸化カルシウムと、水酸化カルシウムが二酸化炭素を吸収してなる炭酸カルシウムとが共存する場合、炭酸カルシウムからの二酸化炭素の放出反応が遅いため、水酸化カルシウムの残存量が少なくなるまで、水酸化カルシウムによる二酸化炭素の吸収反応が優先的に進む点である。
【0120】
上記タイムインジケーターにおいては、インジケーター層が水酸化カルシウムおよび指示染料を含むことで、初期の着色が少なく、二酸化炭素の吸収による見かけ上の不可逆反応が進み、水酸化カルシウムの残量が少なくなったところで、指示染料により所定の色調に着色が顕著に生じ、その結果、色調変化が視覚的に容易に検知可能となる。また、インジケーター層が水酸化カルシウムおよび指示染料を含むことで、インジケーター層において水酸化カルシウムが一定の吸収速度で二酸化炭素を吸収することができることから、外気と接触してから二酸化炭素の吸収により所定の色調に顕著に変化するまでの時間を、上記所定の色調に達したことを視認により判断しやすい所定の時間に設定することができる。また、インジケーター層がバインダー樹脂を含んでおり、水酸化カルシウムおよび指示染料がバインダー樹脂に分散されるため、基材や対象物との密着性を良くすることができるとともに、均一な厚みを有し、かつ層全体で均一な色調に変化することができる。したがって、インジケーター層の顕著な色調の変化から、インジケーター層が外気と接触してから所定の時間が経過したことを、視覚的に容易に検知することができ、二酸化炭素の吸収による顕著な色調の変化を利用して、経過時間を精度良く管理することができる。
【0121】
特に、上記タイムインジケーターは、基材と、上記基材の一方の面に配置されたインジケーター層と、上記インジケーター層に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層と、を有し、上記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、上記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、タイムインジケーターであることが好ましい。
【0122】
以下、本開示に用いられるタイムインジケーターの好ましい態様について説明する。
【0123】
図8は、本開示に用いられるタイムインジケーターの一例を示す概略断面図である。図8に示すように、タイムインジケーター50は、基材51と、基材51の一方の面に配置されたインジケーター層52と、インジケーター層52に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層53とを有する。図8に示す例においては、タイムインジケーター側吸湿層53は基材51およびインジケーター層52の間に配置されているが、タイムインジケーター側吸湿層53はインジケーター層52に隣接して配置されていればよく、この限りではない。また、インジケーター層52は、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、インジケーター層52に含まれる指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である。
【0124】
上記タイムインジケーターの色調が変化する過程について説明する。上記タイムインジケーターにおいては、下記の反応(1)を利用している。また、反応(1)は下記の2段の反応(a)、(b)で表される。
反応(1) Ca(OH)+CO→CaCO+H
反応(a) CO+HO→HCO
反応(b) Ca(OH)+HCO→CaCO+H
インジケーター層が外気と接すると、水酸化カルシウムが、外気中等に含まれる二酸化炭素を吸収して、炭酸カルシウムが生成する(反応(1))。この際、二酸化炭素が、インジケーター層に含まれる水分と反応して、炭酸が生成する(反応(a))。そして、インジケーター層に含まれる水酸化カルシウムと、炭酸とで中和反応が起きる(反応(b))。このとき、水酸化物イオンの濃度が低下し、インジケーター層のpHの値が下がる。そして、インジケーター層のpHの値が下がることで、指示染料の色調が変化する。中和反応において、その当量点から遠いときは二酸化炭素の吸収量に対するpHの値の変化は小さいものの、その当量点の付近では二酸化炭素の吸収量に対するpHの値の変化は大きい。そのため、上記タイムインジケーターにおいては、外気と接してから暫くは、色調の変化がほとんど見られないが、外気と接触してから経時で二酸化炭素を吸収してpHが当量点の付近になると、色調が顕著に変化して所定の色調となり、視覚による変色の判断が容易となる。すなわち、上記タイムインジケーターにおける所定の色調とは、インジケーター層のpHが当量点付近であるときの色調をいう。後述するタイムインジケーター付外用貼付剤における所定の色調についても同様とすることができる。
【0125】
上記タイムインジケーターによれば、インジケーター層に隣接してタイムインジケーター側吸湿層が配置されていることにより、タイムインジケーター側吸湿層によってインジケーター層の近傍に水分を引き寄せることができ、インジケーター層の近傍において湿度が高い状態とすることができる。ここで、上記の反応(1)は、外気の湿度に大きく影響され、低湿度環境下では反応速度が非常に遅くなる。これに対し、上記タイムインジケーターにおいては、タイムインジケーター側吸湿層によってインジケーター層の近傍において湿度が高い状態とすることができるため、低湿度環境下であっても、十分な反応速度で上記反応(1)を進行させることができる。よって、上記タイムインジケーターは、環境湿度によらず、外気と接触してからの経過時間を安定して正確に示すことが可能である。
【0126】
一方で、上記タイムインジケーターにおいては、上述したように、タイムインジケーター側吸湿層によってインジケーター層の近傍に水分が引き寄せられるため、包装体で上記タイムインジケーターが密封されている場合、包装体の内部に存在する水分が、上記タイムインジケーターのタイムインジケーター側吸湿層によってインジケーター層の近傍に引き寄せられてしまう。そのため、インジケーター層に隣接してタイムインジケーター側吸湿層を有するタイムインジケーターは、タイムインジケーター側吸湿層を有さないタイムインジケーターと比較して、包装体の内部に存在する水分が上記反応に及ぼす影響が大きくなる。しかし、本開示によれば、本開示のタイムインジケーター用包装体の内部に存在する水分を、吸湿性積層フィルムの吸湿層によって吸湿することができる。よって、本開示のタイムインジケーター用包装体で上記タイムインジケーターを密封することにより、インジケーター層に隣接してタイムインジケーター側吸湿層が配置されている場合であっても、上記の反応速度を著しく遅くすることができ、タイムインジケーターが当量点付近で色調変化するのを抑制することができる。したがって、タイムインジケーターの使用前に、包装体で密封して保管している状態で、タイムインジケーターが変色するのを抑制することが可能である。
【0127】
上記タイムインジケーターにおいては、上述したように、外気に接して二酸化炭素を吸収することで、当量点付近で色調が顕著に変化し、所定の色調になる。色調が顕著に変化するとは、具体的には、外気に接触した後の所定の色調と、外気に接触する前の色調との色差が30以上であることをいう。色差は、L表色系で表される色度a及びbの距離により表される差(ΔEab)である。具体的には、色差(ΔEab)は、国際証明委員会(CIE)により勧告され、JIS Z8729に規定されたL表色系において、ΔEab=((ΔL+(Δa+(Δb1/2で表される値である。L、a、bの値は、例えば、分光測定器(グレタグマクベス社製、商品名:spectrolino)を使用することにより測定することができ、ΔL、Δa、Δbは、それぞれ、外気に接触前のインジケーター層のL、a、bの各値と外気に接触後のインジケーター層のL、a、bの各値との差である。
【0128】
また、上記タイムインジケーターは、上述したように色調変化が見かけ上不可逆であり、当量点付近で所定の色調に変化した後は、色調が顕著に変化した状態を維持することができる。
【0129】
上記タイムインジケーターにおいては、インジケーター層が水酸化カルシウムおよび指示染料を含んでおり、インジケーター層に隣接してタイムインジケーター側吸湿層が配置されていることで、外気と接触してから二酸化炭素の吸収により所定の色調に変化するまでの時間、すなわち変色時間を、上記所定の色調に達したことを視認により判断しやすい所定の時間に設定することができる。上記所定の色調に達したしたことを視認により判断しやすい所定の時間(単に、所定の時間とする場合がある。)としては、例えば、4時間以上60時間以下とすることができ、中でも20時間以上40時間以下とすることができる。なお、上記変色時間は、例えば、インジケーター層における水酸化カルシウムおよび指示染料の含有量やバインダー樹脂の含有量によって調整することができ、後述する触媒の添加量等によってさらに調整が可能となる。
【0130】
以下、本開示に用いられるタイムインジケーターの好ましい態様について、構成ごとに説明する。
【0131】
1.インジケーター層
本開示に用いられるタイムインジケーターにおけるインジケーター層は、上記基材の一方の面に配置され、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含む。また、インジケーター層に含まれる指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である。
【0132】
本開示におけるインジケーター層に含まれる水酸化カルシウム(消石灰)は、二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収剤として機能する。
【0133】
水酸化カルシウムは、市販の化学薬品、工業薬品、工業製品などを利用できるほか、生石灰を水や温水で消和して得られる石灰乳(水酸化カルシウムの懸濁液)や、その石灰乳をホモミキサー等で処理して微細化したものなどを利用できる。中でも、上記水酸化カルシウムは、純度が95%以上であることが好ましい。
【0134】
上記インジケーター層中の上記水酸化カルシウムの含有量は、例えば、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上とすることができる。また、上記インジケーター層中の上記水酸化カルシウムの含有量は、例えば、94質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは87質量%以下とすることができる。上記水酸化カルシウムの含有量を上記の範囲内とすることで、当量点付近で所定の色調に顕著に変化することができるため、色調変化の視覚的検知を容易化することができる。また、変色時間のバラツキを小さくすることができる。上記水酸化カルシウムの含有量は、上記範囲において、インジケーター層が外気と接してから当量点付近で色調が顕著に変化するまでの変色時間に応じて適宜設定することができる。
【0135】
本開示におけるインジケーター層に含まれる指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である。
【0136】
ここで、アルカリ性領域とは、pHが9.5以上14.0以下の範囲をいう。また、中性領域とは、指示染料の当量点を含むpHの範囲をいい、具体的にはpHが6.0以上9.5未満の範囲をいう。
【0137】
このような指示染料としては、当量点付近において色調の変化が特に顕著となる化合物が好ましく、例えば、エチルバイオレット、メチルバイオレット、ジエチルバイオレット、Kenazolイエロー、Claytonイエロー、directイエロー9、チタンイエロー、コンゴーレッドおよびチアゾールイエローからなる群から選択される1種または2種以上の染料とすることができる。
【0138】
上記インジケーター層中の上記指示染料の含有量は、例えば、0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上とすることができる。また、上記インジケーター層中の上記指示染料の含有量は、例えば、5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下とすることができる。上記指示染料の含有量を上記の範囲内とすることで、当量点付近で色調が変化したときの変色後の色濃度を濃くすることができ、色調変化の視覚的検知が容易になるからである。また、過剰量の指示染料を含有することによるコスト増加を抑えることができるからである。上記指示染料の含有量は、上記範囲において、所定の時間でインジケーター層の顕著な色調変化を視覚的に検知可能な濃度となるように設定することができる。
【0139】
本開示におけるインジケーター層に含まれるバインダー樹脂は、水酸化カルシウムおよび指示染料を分散する機能を有する。
【0140】
本開示におけるインジケーター層はバインダー樹脂を含むことから、水酸化カルシウム、指示染料およびバインダー樹脂を含むインク組成物を用いて基材や対象物上にインジケーター層を形成する際に、基材や対象物への密着性が高いインジケーター層を形成することができる。特に、基材や対象物が可撓性を有する場合、基材や対象物を屈曲させる等の取り扱いをしても、インジケーター層を剥がれにくくすることができる。
【0141】
また、バインダー樹脂の存在により、二酸化炭素の吸収反応速度を遅くすることができるため、バインダー樹脂の含有量を調整することで、変色時間を、上記所定の色調に達したことを視認により判断しやすい所定の時間に適宜設定することができる。
【0142】
上記バインダー樹脂は、pHの変化に影響を及ぼさず、指示染料による色調の変化を妨げないことが要求される。このようなバインダー樹脂としては、例えば酸およびアルカリに強く、溶媒に溶解または分散する性質を有する樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリビニルピロリドン(PVP)樹脂、無水マレイン酸系等の共重合体樹脂;ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;でんぷん、カゼイン等の天然高分子等が挙げられる。上記インジケーター層は、1種または2種以上のバインダー樹脂を含むことができる。
【0143】
上記インジケーター層中の上記バインダー樹脂の含有量は、例えば、0.9質量%以上であることが好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上とすることができる。また、上記インジケーター層中の上記バインダー樹脂の含有量は、例えば、49.9質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下とすることができる。バインダー樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、基材等への接着性、色調の顕色性、印刷の均一性、印刷適正、印刷物の曲げ性および伸び追随性等の各特性を高めることができる。
【0144】
上記インジケーター層は、上述した材料の他に、任意の材料を含むことができる。
【0145】
上記インジケーター層は、触媒として、アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物をさらに含むことができる。上記インジケーター層は、触媒をさらに含むことで、二酸化炭素の吸収感度を高め、吸収反応速度を速めることができ、当量点付近の所定の色調に変化するまでの変色時間の調整が可能となる。
【0146】
アルカリ金属の水酸化物およびアルカリ土類金属の水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物とは、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウムからなる群から選択される少なくとも1種以上の化合物を挙げることができる。なお、アルカリ土類金属の水酸化物に水酸化カルシウムは含まないものとする。これらは含水物であってもよく、無水物であってもよい。また、これらは純度95%以上であることが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用することもできる。中でも、上記触媒は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0147】
上記インジケーター層中の上記触媒の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上とすることができる。また、上記インジケーター層中の上記触媒の含有量は、例えば、7.0質量%以下とすることができ、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下とすることができる。上記触媒の含有量が上記範囲より多すぎると、所定の変色時間前に段階的に色調が変化しやすくなり、顕著な色調変化を視覚的に検知しにくくなる場合がある。一方、上記触媒の含有量が上記範囲より少なすぎると、所定の色調に変化するまでに過剰の時間を要する場合や、変色時間が一定とならない場合がある。
【0148】
上記インジケーター層は、賦形剤を含むことができる。上記賦形剤としては、インジケーター層の形成に用いられるインク組成物の取り得る形態に調製可能な公知の各種のものをいずれも用いることができ、例えば、シリカ、ゼオライト、活性白土、珪酸カルシウム、結晶セルロース、モレキュラシーブ、酸化チタン等が挙げられる。
【0149】
上記賦形剤の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状とすることができる。また、上記賦形剤は、インジケーター層の色調変化の視覚的検知を阻害しない色調であることが好ましく、例えば、無色ないし淡色であることが好ましい。上記インジケーター層中の賦形剤の含有量は、特に限定されず、適宜設定することができる。
【0150】
上記インジケーター層は、必要に応じて、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の公知の添加剤を適宜含むことができる。
【0151】
上記インジケーター層の厚みは、特に限定されず、適宜設定することができる。中でも当量点付近で生じる色調の変化を視覚的に十分に検知可能な厚みであることが好ましく、例えば0.3μm以上15.0μm以下とすることができる。
【0152】
上記インジケーター層は、基材の一方の面の全面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。また、上記インジケーター層は、平面視において文字や絵柄等を示すパターン形状を有していてもよい。
【0153】
上記インジケーター層の変色態様、すなわち、当量点付近で所定の色調に顕著に変化する態様は、上記インジケーター層に含まれる指示染料の種類や数に応じて適宜設定することができる。例えば、外気と接触する前は無色であり、外気との接触により当量点付近で有色に変化する、無色から有色への変色態様や、外気と接触する前は第1の有色であり、外気との接触により当量点付近で第2の有色に変化する、第1の有色から第2の有色への変色態様等が挙げられる。第1の有色から第2の有色への変色態様としては、例えば、白色から濃青色(バイオレット)色への変色態様、白色から黄色への変色態様、黄色から緑色への変色態様等が挙げられる。具体的には、指示染料がエチルバイオレットである場合、水酸化カルシウムが所望の量の二酸化炭素を吸収してpHが中性領域になると、当量点付近において白色または薄水色から濃青色に変色することができる。
【0154】
上記インジケーター層は、上述した材料の種類や含有量等を調整し、これらのパラメータと、インジケーター層が外気と接触してから二酸化炭素の吸収により当量点付近で色調が顕著に変化するまでの変色時間との相関を取ることで、色調や色差等のインジケーター層の色調変化の程度から、外気と接触してからの経過時間を計測することができる。
【0155】
上記インジケーター層は、例えば、上述の材料を溶剤に分散または溶解したインク組成物を用い、基材の一方の面に、上記インク組成物を印刷またはコーティングすることにより形成することができる。上記インジケーター層の形成方法は特に限定されず、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等の各種印刷方法を挙げることができる。また、上記インジケーター層は、例えば、コーティング方法、転写法、成型法、賦型法等の、上述した印刷法やコーティング法以外の方法で形成してもよい。
【0156】
2.タイムインジケーター側吸湿層
本開示に用いられるタイムインジケーターにおけるタイムインジケーター側吸湿層は、上記インジケーター層に隣接して配置される。
【0157】
なお、本明細書において、「タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層に隣接して配置される」とは、タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層に直接隣接している場合だけなく、タイムインジケーター側吸湿層が、接着剤層、粘着剤層、アンカーコート層、押出ラミネート樹脂層、吸湿シートを構成する支持基材等を介してインジケーター層に隣接している場合も含むものである。
【0158】
本開示において、タイムインジケーター側吸湿層は吸湿性を有する。ここで、タイムインジケーター側吸湿層が吸湿性を有するとは、温度40℃、相対湿度100%における吸湿量が、0.1g/m以上であることをいう。タイムインジケーター側吸湿層の吸湿性としては、上記吸湿量が、好ましくは1g/m以上、さらに好ましくは3g/m以上とすることができる。上記吸湿量が上記範囲であれば、高湿度環境および低湿度環境のいずれにおいても十分な吸湿効果を得ることができる。
【0159】
ここで、上記吸湿量は、上述の吸湿性積層フィルムにおける吸湿層の吸湿量と同様に、重量法で測定することができる。
【0160】
上記タイムインジケーター側吸湿層は、吸湿性を有するものであればよく、例えば、分子間力により水を吸着する物理吸着型の吸湿層であってもよく、化学結合により水を吸着する化学吸着型の吸湿層であってもよい。すなわち、上記タイムインジケーター側吸湿層は、可逆的な吸湿性を有するもの、つまり、可逆的に吸湿および放湿する吸放湿性を有するものであってもよく、不可逆的な吸湿性を有するものであってもよい。吸放湿性を有するものは、湿度が高い時には吸湿し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定に維持することができる。また、上記タイムインジケーター側吸湿層は、吸湿により潮解しないことが好ましい。
【0161】
上記タイムインジケーター側吸湿層の配置としては、上記タイムインジケーター側吸湿層が上記インジケーター層に隣接して配置されていればよく、例えば図8に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53が基材51およびインジケーター層52の間に配置され、インジケーター層52の下面に隣接していてもよく、図9(a)に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53がインジケーター層52の基材51とは反対側の面に配置され、インジケーター層52の上面に隣接していてもよく、図9(b)に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53がインジケーター層52と同一面上に配置され、インジケーター層52の側面に隣接していてもよい。また、図示しないが、例えば、上記タイムインジケーター側吸湿層が、インジケーター層の両面(上面および下面)にそれぞれ隣接して配置されていてもよく、上記タイムインジケーター側吸湿層が、インジケーター層を覆うように配置されている、すなわちインジケーター層の上面および側面に隣接して配置されていてもよい。
【0162】
上記タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層の基材とは反対側の面に配置されている場合には、インジケーター層の色調変化が視覚的に検知可能となるように、通常、上記タイムインジケーター側吸湿層は、透明性および二酸化炭素透過性を有する。
【0163】
上記タイムインジケーター側吸湿層の配置としては、中でも、上記タイムインジケーター側吸湿層が、基材およびインジケーター層の間に配置されている、あるいはインジケーター層の側面に配置されていることが好ましい。この場合、上記タイムインジケーター側吸湿層が透明性や二酸化炭素透過性を有する必要がないからである。特に、上記タイムインジケーター側吸湿層は、基材およびインジケーター層の間に配置されていることが好ましい。上記タイムインジケーター側吸湿層の配置が容易となるからである。
【0164】
上記タイムインジケーター側吸湿層は、基材の一方の面の全面に配置されていてもよく、一部に配置されていてもよく、上記タイムインジケーター側吸湿層の配置に応じて適宜選択される。また、上記タイムインジケーター側吸湿層は、上記インジケーター層の平面視形状に応じてパターン形状を有していてもよい。
【0165】
また、上記タイムインジケーター側吸湿層が、基材およびインジケーター層の間に配置されている場合、および、インジケーター層の基材とは反対側の面に配置されている場合には、上記タイムインジケーター側吸湿層の平面視面積が上記インジケーター層の平面視面積よりも大きいことが好ましい。タイムインジケーター側吸湿層とインジケーター層とが隣接する部分を多くすることができ、タイムインジケーター側吸湿層による吸湿効果を高めることができるからである。
【0166】
上記タイムインジケーター側吸湿層としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、吸湿性樹脂を含む吸湿層や、吸湿剤および樹脂を含む吸湿層が挙げられる。以下、タイムインジケーター側吸湿層が吸湿性樹脂を含む第1態様と、タイムインジケーター側吸湿層が吸湿剤および樹脂を含む第2態様とに分けて説明する。
【0167】
(1)タイムインジケーター側吸湿層の第1態様
本態様のタイムインジケーター側吸湿層は、吸湿性樹脂を含む。上記タイムインジケーター側吸湿層に含まれる吸湿性樹脂としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な高吸水性樹脂(SAP;Super Absorbent Polymer)を用いることができる。具体的には、上記吸湿性樹脂としては、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層に用いられる吸湿性樹脂と同様とすることができる。
【0168】
上記タイムインジケーター側吸湿層には、必要に応じて、例えば防腐剤、消泡剤、潤滑剤、浸透剤、平滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0169】
上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みとしては、十分な吸湿効果が得られる厚みであれば特に限定されるものではない。具体的には、上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みは、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層の厚みと同様とすることができる。上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みが薄すぎると、十分な吸湿効果が得られない場合がある。また、上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みが厚すぎると、例えばインジケーター層上にタイムインジケーター側吸湿層が配置されている場合には、インジケーター層の変色が見えにくくなる場合がある。
【0170】
上記タイムインジケーター側吸湿層を上記インジケーター層に隣接して配置する方法としては、例えば、基材またはインジケーター層上にタイムインジケーター側吸湿層を形成する方法や、支持基材上に上記タイムインジケーター側吸湿層が配置された吸湿シートを別に作製し、この吸湿シートを接着剤層を介して基材またはインジケーター層に積層する方法や、タイムインジケーター側吸湿層として単層の吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介して基材またはインジケーター層に積層する方法を挙げることができる。
【0171】
上記の基材またはインジケーター層上にタイムインジケーター側吸湿層を形成する方法の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層の形成方法としては、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層の形成方法と同様とすることができる。
【0172】
また、上記の支持基材上に上記タイムインジケーター側吸湿層が配置された吸湿シートを別に作製し、この吸湿シートを接着剤層を介して基材またはインジケーター層に積層する方法の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層の形成方法としては、上述の方法を用いることができる。また、支持基材としては、後述の基材と同様とすることができる。このようなタイムインジケーター側吸湿層の配置方法は、例えば基材が不織布、織布、紙等である場合に、タイムインジケーター側吸湿層を基材上に密着性良く配置することができる。
【0173】
また、上記のタイムインジケーター側吸湿層として単層の吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介して基材またはインジケーター層に積層する方法の場合、吸湿シートとしては、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層として単層の吸湿シートを用いる場合と同様とすることができる。
【0174】
上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合には、上述したように、上記タイムインジケーター側吸湿層は基材またはインジケーター層上に接着剤層を介して配置することができる。例えば図10においては、タイムインジケーター側吸湿層53(吸湿シート)は接着剤層54を介して基材51上に配置されている。接着剤層に用いられる接着剤としては、基材またはインジケーター層と吸湿シートとを接着可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な接着剤を用いることができる。なお、吸湿シートが支持基材上にタイムインジケーター側吸湿層が配置されたものである場合であって、吸湿シートをインジケーター層上に接着剤層を介して積層する場合、吸湿シートは、吸湿シートの吸湿層側が接着剤層側になるように配置されていてもよく、吸湿シートの支持基材側が接着剤層側になるように配置されていてもよいが、中でも、吸湿シートの吸湿層側が接着剤層側になるように配置されていることが好ましい。
【0175】
また、上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合には、例えば図11に示すように、基材51がタイムインジケーター側吸湿層53を兼ねていてもよい。
【0176】
(2)タイムインジケーター側吸湿層の第2態様
本態様のタイムインジケーター側吸湿層は、吸湿剤および樹脂を含む。上記タイムインジケーター側吸湿層に含まれる吸湿剤としては、上述の吸湿性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層に用いられる吸湿剤と同様とすることができる。
【0177】
上記タイムインジケーター側吸湿層中の上記吸湿剤の含有量としては、目的とする吸湿性や、吸湿剤の種類、タイムインジケーター側吸湿層の層構成等に応じて適宜選択されるが、例えば、後述する樹脂100質量部に対して、5質量部以上400質量部以下で設定することができる。上記吸湿剤の含有量が上記範囲であれば、吸湿剤の樹脂中での分散性が良く、高い吸湿性を有し、成型性も良好なタイムインジケーター側吸湿層とすることができる。
【0178】
また、上記タイムインジケーター側吸湿層に含まれる樹脂としては、上記吸湿剤を分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、上述の吸湿性積層フィルムの吸湿層に用いられる熱可塑性樹脂と同様とすることができる。
【0179】
上記タイムインジケーター側吸湿層には、必要に応じて、例えば発泡剤、可塑剤、安定剤、滑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0180】
上記タイムインジケーター側吸湿層は、吸湿剤および樹脂を含んでいればよく、例えば、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0181】
単層構造の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層は、吸湿剤および樹脂を含む単層である。
【0182】
多層構造の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層は、少なくとも、吸湿剤および樹脂を含む吸湿剤含有樹脂膜と、樹脂を含む樹脂膜とを有する。また、多層構造の場合、例えば、2層構造または3層構造とすることができる。
【0183】
2層構造の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層は、吸湿剤および樹脂を含む吸湿剤含有樹脂膜と、吸湿剤を含まず、樹脂を含む樹脂膜とを有することができる。例えば、共押出成形により2層構造のタイムインジケーター側吸湿層を形成する場合、吸湿剤含有樹脂膜中の吸湿剤の含有量を多くしても、吸湿剤含有樹脂膜が樹脂膜に支持されていることにより、成形性良く製膜することができる。そのため、2層構造の場合は、吸湿剤含有樹脂膜中の吸湿剤の含有量を多くすることができるため、吸湿性能を高めることができる。2層構造の場合、吸湿剤含有樹脂膜および樹脂膜のいずれがインジケーター層に隣接して配置されてもよい。
【0184】
また、3層構造の場合、上記タイムインジケーター側吸湿層53は、例えば図12に示すように、吸湿剤を含まず、樹脂を含む樹脂53aと、吸湿剤および樹脂を含む吸湿剤含有樹脂膜53bと、吸湿剤を含まず、樹脂を含む樹脂膜53cとを有することができる。例えば、共押出成形により3層構造のタイムインジケーター側吸湿層を形成する場合、吸湿剤含有樹脂膜中の吸湿剤の含有量を多くしても、吸湿剤含有樹脂膜が2つの樹脂膜の間に挟まれていることにより、成形性良く製膜することができる。そのため、3層構造の場合は、吸湿剤含有樹脂膜中の吸湿剤の含有量を多くすることができるため、吸湿性能を高めることができる。
【0185】
上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みとしては、十分な吸湿効果が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm以上200μm以下とすることができ、好ましくは20μm以上100μm以下、より好ましくは30μm以上70μm以下とすることができる。上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みが薄すぎると、十分な吸湿効果が得られない場合がある。また、上記タイムインジケーター側吸湿層の厚みが厚すぎると、コストが高くなったり、コシが強くなりすぎて製品適性が損なわれたりする場合がある。
【0186】
上記タイムインジケーター側吸湿層を上記インジケーター層に隣接して配置する方法としては、例えば、基材またはインジケーター層上にタイムインジケーター側吸湿層を形成する方法や、タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用い、この吸湿シートを接着剤層を介して基材またはインジケーター層に積層する方法を挙げることができる。
【0187】
上記タイムインジケーター側吸湿層の形成方法としては、例えば、上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物を、基材またはインジケーター層上に押出コーティングする方法が挙げられる。上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物の調製方法としては、吸湿剤を樹脂中に混練する方法を挙げることができ、一般的な混練方法を用いることができる。また、押出コーティングに際しては、上記樹脂組成物が押出コーティングされる基材やインジケーター層の種類に応じて、基材またはインジケーター層上にアンカーコート層が配置されていてもよい。アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、基材またはインジケーター層とタイムインジケーター側吸湿層との密着性を得ることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なアンカーコート剤を用いることができる。
【0188】
上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合、吸湿シートは、例えば、上述の吸湿剤および樹脂を含む樹脂組成物を成形することにより得ることができる。成形方法としては、例えば、押出成形、共押出成形、射出成形、中空成形、押出コーティング、架橋発泡成形等が挙げられる。
【0189】
上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合、上記タイムインジケーター側吸湿層は基材またはインジケーター層上に接着剤層を介して配置することができる。例えば図10においては、タイムインジケーター側吸湿層53(吸湿シート)は接着剤層54を介して基材51上に配置されている。接着剤層に用いられる接着剤としては、基材と吸湿シートとを接着可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的な接着剤を用いることができる。
【0190】
また、上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合、例えば図11に示すように、基材51がタイムインジケーター側吸湿層53を兼ねていてもよい。
【0191】
3.基材
本開示に用いられるタイムインジケーターにおける基材は、特に限定されないが、インジケーター層を支持することが可能なものであることが好ましい。このような基材としては、例えば、プラスチックフィルム、織布、不織布、紙等を挙げることができる。上記プラスチックフィルム、織布及び不織布の材料としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル等のポリマー、及びこれらを構成する単量体が共重合してなるポリマー(エチレン酢酸ビニル共重合体等)からなる樹脂が挙げられる。
【0192】
上記基材は、後述する「D.タイムインジケーター付外用貼付剤」における支持層とすることができる。また、上記基材の種類に応じて、本開示に用いられるタイムインジケーターを、インジケーター付きラベル等として用いることもできる。
【0193】
上記基材の厚みは特に限定されず、本開示に用いられるタイムインジケーターの使用態様に応じて適宜設定することができる。
【0194】
4.色見本層
本開示に用いられるタイムインジケーターは、上記基材の上記インジケーター層を有する面に、上記インジケーター層の色調から経過時間を判別するための色見本層をさらに有することができる。上記色見本層は、pHの変化により色調が変化しない非変色層である。経過時間とインジケーター層の色調との相関を示す色見本層を、基材のインジケーター層が配置された面に配置することで、インジケーター層の色調と色見本層の色とを比較して経過時間を容易に特定することが可能となる。
【0195】
図13は、本開示に用いられるタイムインジケーターの他の例を示す概略平面図であり、インジケーター層52と色見本層55とが、基材51の同一面上に配置されている例を示している。図6に例示する色見本層55は、0時間から24時間までの6時間ごとのインジケーター層52の色調と同じ色調を有する5つの領域を有する。
【0196】
上記色見本層は、本開示に用いられるタイムインジケーターが外気と接触して二酸化炭素の吸収により当量点付近でインジケーター層の色調が顕著に変化したときの、変色後のインジケーター層の所定の色調と同じ色調の領域を少なくとも有する。また、上記色見本層は、外気と接触してから当量点付近に達するまでの時間を所望の間隔に区切り、区切られた時間におけるインジケーター層の色調と同じ色調を有する1つ以上の領域をさらに有することができる。
【0197】
上記色見本層は、例えば、水性インク、油性インク、無溶剤型インク等のインクに含まれる成分を含むことができる。色見本層は、例えば、色材、樹脂バインダー等、公知のインクに配合されている成分を含むことができる。
【0198】
本開示に用いられるインジケーターにおいて、上記色見本層が配置される位置は特に限定されないが、上記基材の上記インジケーター層を有する面において、インジケーター層の色調と比較可能な位置であることが好ましい。上記色見本層は、インジケーター層と並列して配置されていてもよく、インジケーター層の外周を囲むように配置されていてもよい。
【0199】
また、上記色見本層は、上記基材の上記インジケーター層を有する面において、上記インジケーター層の配置領域以外の領域の全面に形成されていてもよく、一部に形成されていてもよい。また、上記色見本層は、平面視において文字や絵柄等を示すパターン形状を有していてもよい。
【0200】
上記色見本層の形成は、例えば、上述した成分を溶剤に分散または溶解したインク組成物を用い、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法に従って行うことができる。
【0201】
5.透明保護層
本開示に用いられるタイムインジケーターは、インジケーター層を覆う透明保護層を有することができる。インジケーター層を覆う透明保護層を有することで、本開示に用いられるタイムインジケーターの使用環境において、インジケーター層の表面を保護することができる。
【0202】
図14(a)、(b)は、本開示に用いられるタイムインジケーターの他の例を示す概略断面図であり、インジケーター層52を覆う透明保護層56を有する例を示している。図14(b)に示すように、インジケーター層52が基材51の一部に設けられている場合は、透明保護層56は、少なくともインジケーター層52を覆うように配置されていることが好ましく、インジケーター層52および基材51のインジケーター層52が配置されている側の面の全域を覆うように配置されていてもよい。
【0203】
上記透明保護層は、インジケーター層の色調変化が視覚的に検知可能となるように、通常、透明性を有し、二酸化炭素を透過するものが用いられる。このような透明保護層の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂等の透明樹脂が挙げられる。
【0204】
上記透明保護層は、少なくとも透明性および二酸化炭素透過性を有するが、本開示に用いられるタイムインジケーターの使用用途に応じて、防水性、耐磨耗性、製造時の試薬汚染防止等を有することが好ましい。例えば、本開示に用いられるタイムインジケーターが、後述する外用貼付剤と共に用いられる場合、上記透明保護層は、防水性を有することが好ましい。上記外用貼付剤は、使用者の皮膚に貼付されるものであり、インジケーター層が水に晒されてその機能に不具合が生じるのを防ぐことができるからである。
【0205】
上記透明保護層は、上記透明樹脂のフィルムを熱ラミネートしたものであってもよく、上記透明樹脂を塗布形成したものであってもよい。
【0206】
6.その他の構成
本開示に用いられるタイムインジケーターは、上述した構成の他に、任意の構成を有することができる。例えば、上記基材のインジケーター層とは反対側の面に接着層または粘着層を有することで、本開示のタイムインジケーターを所望の場所に固定することができる。
【0207】
7.用途
本開示に用いられるタイムインジケーターの用途としては、例えば、他の部材に貼付するためのインジケーター機能付きラベル、シール、ステッカー等として用いることもできる。
【0208】
また、本開示に用いられるタイムインジケーターにおける基材が、外用貼付剤の支持層として機能する場合、本開示に用いられるタイムインジケーターは、外用貼付剤の粘着剤層上に貼付して用いることができる。外用貼付剤に本開示に用いられるタイムインジケーターを用いることで、外用貼付剤の使用者がタイムインジケーターの色調の変化を視覚的に検知して、外用貼付剤の剥がし忘れや貼り替え忘れを防止することができ、外用貼付剤の貼付時間を精度よく管理することができるからである。
【0209】
D.タイムインジケーター付外用貼付剤
本開示のタイムインジケーター用包装体は、タイムインジケーター付外用貼付剤が収納され、密封されていてもよい。本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤としては、二酸化炭素および水と反応し、二酸化炭素を吸収した時間履歴に応じて色調が変化する二酸化炭素インジケーターを有するものであればよい。
【0210】
上記タイムインジケーター付外用貼付剤としては、例えば、インジケーター層と、支持層と、薬剤および粘着基剤を含む粘着剤層と、離型層と、をこの順に有し、上記インジケーター層が、二酸化炭素と反応することでpHの値が変化する塩基性化合物と、pHの値の変化によって色調が変化する指示染料とを少なくとも含む、タイムインジケーター付外用貼付剤を挙げることができる。
【0211】
上記インジケーター層については、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0212】
中でも、上記タイムインジケーター付外用貼付剤は、インジケーター層と、支持層と、薬剤および粘着基剤を含む粘着剤層と、離型層と、をこの順に有し、上記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、上記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、タイムインジケーター付外用貼付剤であることが好ましい。
【0213】
特に、上記タイムインジケーター付外用貼付剤は、インジケーター層と、支持層と、薬剤および粘着基剤を含む粘着剤層と、離型層と、をこの順に有し、上記インジケーター層に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層をさらに有し、上記インジケーター層が、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、上記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である、タイムインジケーター付外用貼付剤であることが好ましい。
【0214】
図15は、本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤の一例を示す概略断面図である。図15に示すように、本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤20は、インジケーター層52と、支持層61と、薬剤および粘着基剤を含む粘着剤層62と、離型層63と、をこの順に有し、インジケーター層52に隣接して配置されたタイムインジケーター側吸湿層53をさらに有する。また、インジケーター層52は、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、インジケーター層52に含まれる指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である。
【0215】
また、図16は、本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤の他の例を示す概略断面図であり、図15において、基材51のインジケーター層52を有する面に色見本層55を配置し、さらにインジケーター層52を覆う透明保護層56を配置した例である。
【0216】
薬剤投与の手段として、パップ剤、プラスター剤等と呼ばれる、薬剤を含有する外用貼付剤を皮膚に貼付する方法が一般的に知られており、含有される薬剤によって消炎鎮痛効果等の局所作用を目的とするものや、虚血性心疾患治療効果、喘息治療効果など全身作用を目的とするものなど、多種多様に汎用されている。外用貼付剤は、一定時間皮膚に貼付後、剥がされるものであるが、中でも、全身作用を目的とする場合においては、所定量の薬剤を経皮吸収するための貼付時間が決められており、上記貼付時間に応じて皮膚から剥がし、新たな外用貼付剤に貼り替える必要がある。しかし、使用者が外用貼付剤を貼付してからの経過時間を失念し、規定の貼付時間よりも早く剥がしてしまうと、必要量の薬剤が経皮吸収されず、薬効が十分に得られない場合がある。また、外用貼付剤を貼付していることや外用貼付剤を剥がすことを使用者が失念し、既に貼付している外用貼付剤を剥がさずに新たな外用貼付剤を貼付してしまうと、薬剤の過剰投与となり安全性に問題がある。
【0217】
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤によれば、上記「C.タイムインジケーター」の項に記載したインジケーター層が、外用貼付剤と共に使用者の皮膚上に配置されて外気と接触する。このため、外用貼付剤を皮膚に貼付した使用者は、二酸化炭素の吸収によるインジケーター層の色調の変化を、視覚的に容易に検知することが可能となる。そして、使用者は、上記インジケーター層の色調の変化から、外用貼付剤を皮膚に貼付してからの経過時間を確認することができる。また、インジケーター層の変色時間を外用貼付剤において決められた貼付時間とすることで、インジケーターの色調から、貼付時間を超えて皮膚に外用貼付剤が貼付されていることを認識することができる。これにより、外用貼付剤の剥がし忘れや貼り替え忘れを防止することができ、外用貼付剤の貼付時間を精度良く管理することができる。
【0218】
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤は、外用貼付剤に設けられるタイムインジケーターが、二酸化炭素インジケーターであることを特長とする。以下、タイムインジケーター付外用貼付剤におけるタイムインジケーターとして二酸化炭素インジケーターが好適である理由について説明する。
【0219】
外用貼付剤は、通常、包装袋に密封されており、使用時に包装袋から取り出して、使用者の皮膚に貼付して用いられる。このため、外用貼付剤に設けられるタイムインジケーターは、包装袋から取り出されることで外気と接し、使用者の皮膚上で様々な環境に曝されることになる。
【0220】
ここで、外用貼付剤に設けることが可能なタイムインジケーターとして、例えば、酸素の吸収により色調が変化する酸素インジケーターがある。しかし、酸素インジケーターは、周囲の環境等によって酸素の吸収量や酸化速度が容易に変動するため、色調の変化から経過時間を精度良く管理することは困難である。
【0221】
また、他のタイムインジケーターとして、温度履歴により色調が変化する温度履歴インジケーターもある。しかし、温度履歴インジケーターは、一定の温度以上の環境下で使用することで経過時間の管理が可能となるが、変色時間が長く、環境の変化、特に温度の変化を伴う用途においては変色時間が変動しやすいため、特定の時間経過を精度よく管理することが難しい。さらに、温度履歴インジケーターは、徐々に色調が変化するため、時間経過による色調差が生じにくい。このため、色調変化の判断に個人差が生じ、視覚により外用貼付剤を貼付してからの経過時間を判断するのが困難である。
【0222】
これに対し、外気中の二酸化炭素量は変動が小さく、二酸化炭素インジケーターに二酸化炭素が吸収される速度は、外気の温度等の影響を受けにくい。また、二酸化炭素インジケーターに二酸化炭素が吸収される速度は、外気の湿度の影響を受けやすいものの、インジケーター層に隣接してタイムインジケーター側吸湿層が配置されている場合には、環境湿度によらず、水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応を十分な反応速度で進行させることができる。このため、外用貼付剤に二酸化炭素インジケーターを設けることで、インジケーター層が外気と接する限り、皮膚上でインジケーター層が曝される環境によらず、二酸化炭素の吸収速度を一定に保つことができる。これにより、外用貼付剤を皮膚に貼付してからの時間を、二酸化炭素の吸収による色調の変化から視覚的に精度良く管理することができる。また、インジケーター層を上述した構成とし、さらにはタイムインジケーター側吸湿層を上述した配置とすることで、設定された外用貼付剤の貼付時間に応じた変色時間で、特定の色調への変化を顕著に生じさせることができる。これにより、使用者が、設定された外用貼付剤の貼付時間が経過したことを視覚により容易に判断することが可能となる。
【0223】
以下、本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤の好ましい態様について、構成ごとに説明する。
【0224】
1.インジケーター層
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤におけるインジケーター層は、上記支持層の粘着剤層とは反対側の面に配置される層であり、水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂を含み、上記指示染料は、アルカリ性領域から中性領域へpHが変化したときに色調が変化する化合物である。
【0225】
外用貼付剤おける一般的な貼付時間は、数時間から数十時間の範囲内で設定されることから、インジケーター層が水酸化カルシウムおよび指示染料を含み、タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層に隣接して配置されていることで、変色時間を外用貼付剤に規定される貼付時間に合わせて設定することができる。そして、上記インジケーター層は、外用貼付剤に規定される貼付時間に合わせて、色調を顕著に変化することができる。また、上記インジケーター層は、均一な厚みを有することができ、かつ層全体で均一な色調に変化することができる。これにより、外用貼付剤の貼付時間を精度良く管理することができる。さらに、上記インジケーター層は、支持層との密着性を良好とすることができるため、外用貼付剤を貼付した使用者の動き等によりインジケーター層が剥離するのを防ぐことができる。
【0226】
上記インジケーター層の変色時間は、上記所定の色調に達したことを視認により判断しやすい所定の時間であり、粘着剤層に含まれる薬剤の種類により規定される外用貼付剤の貼付時間に応じて適宜設定することができる。上記変色時間としては、例えば4時間以上60時間以下の範囲内で設定することができ、中でも20時間以上40時間以下の範囲内で設定することができる。薬剤が局所作用薬剤の場合であっても全身作用薬剤の場合であっても、外用貼付剤の貼付時間は大凡上記の範囲内で規定されるからである。具体的には、薬剤がリドカイン等の局所麻酔剤であれば、上記変色時間としては、例えば4時間以上6時間以下の間で設定することができる。また、全身作用薬剤であれば、上記変色時間としては、例えば24時間以上48時間以下の間で設定することができ、就寝時間等を考慮して、例えば12時間以上18時間以下の間で設定することも可能である。
【0227】
上記インジケーター層については、上記「C.タイムインジケーター」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0228】
2.タイムインジケーター側吸湿層
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤におけるタイムインジケーター側吸湿層は、上記インジケーター層に隣接して配置される層である。
【0229】
上記タイムインジケーター側吸湿層の配置としては、上記タイムインジケーター側吸湿層が上記インジケーター層に隣接して配置されていればよく、例えば図15に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53が支持層61およびインジケーター層52の間に配置され、インジケーター層52の下面に隣接していてもよく、図17(a)に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53がインジケーター層52の支持層61とは反対側の面に配置され、インジケーター層52の上面に隣接していてもよく、図17(b)に示すように、タイムインジケーター側吸湿層53がインジケーター層52と同一面上に配置され、インジケーター層52の側面に隣接していてもよい。なお、図17(a)に示す例においては、タイムインジケーター側吸湿層53が、インジケーター層52を覆うように配置されている、すなわちインジケーター層52の上面および側面に隣接して配置されているが、タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層の上面のみに配置されていてもよい。また、図示しないが、例えば、上記タイムインジケーター側吸湿層が、インジケーター層の両面(上面および下面)にそれぞれ隣接して配置されていてもよい。
【0230】
上記タイムインジケーター側吸湿層がインジケーター層の基材とは反対側の面に配置されている場合には、インジケーター層の色調変化が視覚的に検知可能となるように、通常、上記タイムインジケーター側吸湿層は、透明性および二酸化炭素透過性を有する。
【0231】
上記タイムインジケーター側吸湿層の配置としては、中でも、上記タイムインジケーター側吸湿層が、支持層およびインジケーター層の間に配置されている、あるいはインジケーター層の側面に配置されていることが好ましい。この場合、上記タイムインジケーター側吸湿層が透明性や二酸化炭素透過性を有する必要がないからである。特に、上記タイムインジケーター側吸湿層は、支持層およびインジケーター層の間に配置されていることが好ましい。上記タイムインジケーター側吸湿層の配置が容易となるからである。
【0232】
上記タイムインジケーター側吸湿層は、支持層の一方の面の全面に配置されていてもよく、一部に配置されていてもよく、上記タイムインジケーター側吸湿層の配置に応じて適宜選択される。
【0233】
また、上記タイムインジケーター側吸湿層として吸湿シートを用いる場合には、例えば図18に示すように、支持層61がタイムインジケーター側吸湿層53を兼ねていてもよい。
【0234】
上記タイムインジケーター側吸湿層が吸湿剤および樹脂を含む場合であって、支持層がタイムインジケーター側吸湿層を兼ねる場合には、上記タイムインジケーター側吸湿層は多層構造を有することが好ましい。多層構造を有する場合、上記タイムインジケーター側吸湿層は、少なくとも、吸湿剤および樹脂を含む吸湿剤含有樹脂膜と、吸湿剤を含まず、樹脂を含む樹脂膜とを有することができる。この場合、樹脂膜が粘着剤層側に配置されることが好ましい。ここで、粘着剤層に含まれる薬剤の種類によっては、タイムインジケーター側吸湿層に含まれる吸湿剤と接触すると、薬剤が変質するおそれがある。そのため、支持層がタイムインジケーター側吸湿層を兼ねる場合には、上記タイムインジケーター側吸湿層が多層構造を有し、上記タイムインジケーター側吸湿層において上記樹脂膜が粘着剤層側に配置されていることにより、上記吸湿剤含有樹脂膜が粘着剤層に接しないようにすることができ、タイムインジケーター側吸湿層に含まれる吸湿剤によって粘着剤層に含まれる薬剤が変質するのを防ぐことができる。
【0235】
図18に示す例においては、タイムインジケーター側吸湿層53が、樹脂膜53aと吸湿剤含有樹脂膜53bと樹脂膜53cとが順に積層された3層構造を有しており、樹脂膜53aが粘着剤層62側に配置されている。
【0236】
上記タイムインジケーター側吸湿層については、上記「C.タイムインジケーター」の項で詳細に説明したため、ここでの説明は省略する。
【0237】
3.支持層
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤における支持層としては、特に限定されないが、粘着剤層を支持することが可能な強度を有し、貼付剤の皮膚に対する粘着性を高める観点から適度な柔軟性を有するものが好ましい。また、粘着剤層中の薬剤に対し非透過性を有することが好ましい。このような支持層としては、プラスチックフィルム、織布、不織布、紙を挙げることができる。上記プラスチックフィルム、織布及び不織布の材料としては、公知の外用貼付剤における支持層の材料と同様とすることができ、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、酢酸ビニル、塩化ビニル等のポリマー、及びこれらを構成する単量体が共重合してなるポリマー(エチレン-酢酸ビニル共重合体等)からなる樹脂が挙げられる。
【0238】
上記支持層の厚みとしては特に制限されないが、貼付剤の取り扱い性から、通常2μm以上2000μm以下とすることができる。
【0239】
上記支持層は、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理がされていてもよい。また、上記支持層は、コート層を有していてもよい。上記コート層の材料としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
【0240】
上記支持層は、その材質等に応じて、上述した「C.タイムインジケーター」の項で説明した基材を支持層として用いることができる。すなわち、本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤は、粘着剤層の離型層とは反対側の面に、上述した「C.タイムインジケーター」の項で説明したタイムインジケーターが配置されたものとすることができる。
【0241】
4.粘着剤層
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤における粘着剤層は、離型層と支持層との間に配置され、薬剤および粘着基剤を含む層である。上記粘着剤層は、上記離型層側の面が使用者の皮膚に貼付される。
【0242】
上記粘着剤層は、粘着基剤に薬剤を混合して、薬剤を分散、可溶化又は乳化させたものであり、上記粘着基剤の種類に応じて、本開示における外用貼付剤をプラスター剤(テープ剤)またはハップ剤とすることができる。
【0243】
(1)薬剤
上記粘着剤層に含まれる薬剤は、経皮吸収性を示すものであれば特に制限はなく、従来公知の外用貼付剤に用いられる各種薬剤を用いることができる。上記薬剤としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0244】
・催眠・鎮静剤(塩酸フルラゼパム、塩酸リルマザホン、フェノバルビタール、アモバルビタール等)
・解熱消炎鎮痛剤(酒石酸ブトルファノール、クエン酸ペリソキサール、アセトアミノフェン、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、アスピリン、アルクロフェナク、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ペンタゾシン、インドメタシン、サリチル酸グリコール、アミノピリン、ロキソプロフェン等)
・ステロイド系抗炎症剤(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン等)
・興奮・覚醒剤(塩酸メタンフェタミン、塩酸メチルフェニデート等)
・精神神経用剤(塩酸イミプラン、ジアゼパム、塩酸セルトラリン、マレイン酸フルボキサミン、塩酸パロキセチン、臭化水素酸シタロプラム、塩酸フルオキセチン、アルプラゾラム、ハロペリドール、クロミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、アモクサピン、マプロチリン、ミアンセリン、セチプチリン、トラザドン、ロヘプラミン、ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラフェキシン、塩酸クロルプロマジン、チオリダジン、ジアゼパム、メプロバメート、エチゾラム、リスペリドン、ミルタザピン等)
・ホルモン剤(エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、酢酸ノルエチステロン、酢酸メテロノン、テストステロン等)
【0245】
・局所麻酔剤(塩酸リドカイン、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ジブカイン、塩酸プロピトカイン等)
・泌尿器官用剤(塩酸タムスロシン、塩酸プロピベリン、酒石酸トルテロジン、フェソテロジン、イミダフェナシン、塩酸オキシブチニン、塩酸テロリジン等)
・骨格筋弛緩剤(塩酸チザニジン、塩酸エペリゾン、メシル酸プリジノール、塩酸スキサメトニウム等)
・生殖器官用剤(塩酸リトドリン、酒石酸メルアドリン等)
・抗てんかん剤(バルプロ酸ナトリウム、クロナゼパム、カルバマゼピン等)
・自律神経用剤(塩化カルプロニウム、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等)
・抗パーキンソン病剤(メシル酸ペルゴリド、メシル酸ブロモクリプチン、塩酸トリヘキシフェニジル、塩酸アマンタジン、塩酸ロピニロール、塩酸タリペキソール、カベルゴリン、ドロキシドパ、ピペリデン、塩酸セレギリン等)
・利尿剤(ヒドロフルメチアジド、フロセミド等)
・呼吸促進剤(塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等)
・抗片頭痛剤(メシル酸ジヒドロエルゴタミン、スマトリプタン、酒石酸エルゴタミン、塩酸フルナリジン、塩酸サイプロヘプタジン等)
・抗ヒスタミン剤(フマル酸クレマスチン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェニルピラリン、プロメタジン等)
・気管支拡張剤(塩酸ツロブテロール、塩酸プロカテロール、硫酸サルブタモール、塩酸クレンブテロール、臭化水素酸フェノテロ-ル、硫酸テルブタリン、硫酸イソプレナリン、フマル酸ホルモテロール等)
・強心剤(塩酸イソプレナリン、塩酸ドパミン等)
【0246】
・冠血管拡張剤(塩酸ジルチアゼム、塩酸ベラパミル、硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニコランジル等)
・末梢血管拡張剤(クエン酸ニカメタート、塩酸トラゾリン等)
・禁煙補助薬(ニコチン等)
・循環器官用剤(塩酸フルナリジン、塩酸ニカルジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、フェロジピン、ベシル酸アムロジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、塩酸マニジピン、塩酸ベニジピン、マレイン酸エナラプリル、塩酸デモカプリル、アラセプリル、塩酸イミダプリル、シラザプリル、リシノプリル、カプトプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン、アテノロール、ピンドロール、フマル酸ビソプロロール、酒石酸メトプロロール、塩酸ベタキソロール、マレイン酸チモロール、マロン酸ボピンドロール、ニプラジロール、塩酸アロチノロール、塩酸セリプロロール、カルベジロール、塩酸アモスラロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベバントロール、塩酸テラゾシン、塩酸ブナゾシン、塩酸プラゾシン、メシル酸ドキサゾシン、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、ロサルタンカリウム、塩酸クロニジン、塩酸グアンファシン、酢酸グアナベンズ等)
・不整脈用剤(塩酸プロプラノロール、塩酸アルプレノロール、塩酸プロカインアミド、塩酸メキシチレン、ナドロール、ジソピラミド等)
・抗悪性潰瘍剤(シクロフォスファミド、フルオロウラシル、デガフール、塩酸プロカルバジン、ラニムスチン、塩酸イリノテカン、フルリジン等)
・抗脂血症剤(プラバスタチン、シンバスタチン、ベザフィブレート、プロブコール等)、
・血糖降下剤(グリベンクラミド、クロルプロパミド、トルブタミド、グリミジンナトリウム、グリブゾール、塩酸ブホルミン等)
・消化性潰瘍治療剤(プログルミド、塩酸セトラキサート、スピゾフロン、シメチジン、臭化グリコピロニウム等)
【0247】
・利胆剤(ウルソデスオキシコール酸、オサルミド等)
・消化管運動改善剤(ドンペリドン、シサプリド等)
・肝臓疾患用剤(チオプロニン等)
・抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン等)
・抗ウイルス剤(アシクロビル等)
・鎮暈剤(メシル酸ベタヒスチン、塩酸ジフェニドール等)
・抗生剤(セファロリジン、セフジニル、セフポドキシムプロキセチル、セファクロル、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、メチルエリスロマイシン、硫酸カナマイシン、サイクロセリン、テトラサイクリン、ベンジルペニシリンカリウム、プロピシリンカリウム、クロキサシンナトリウム、アンピシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、カルベニシリンナトリウム、クロラムフェニコール等)
・習慣性中毒用剤(シアナミド等)
・食欲抑制剤(マジンドール等)
・化学療法剤(イソニアシド、エチオナミド、ピラジナミド等)
・血液凝固促進剤(塩酸チクロピジン、ワルファリンカリウム等)
・抗アルツハイマー剤(フィゾスチグミン、塩酸ドネペジル、タクリン、アレコリン、キサノメリン、リバスチグミン、ガランタミン、等)
・セロトニン受容体拮抗制吐剤(塩酸オンダンセトロン、塩酸グラニセトロン、塩酸ラモセトロン、塩酸アザセトロン、パロノセトロン等)
・痛風治療剤(コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン等)
・麻薬系の鎮痛剤(クエン酸フェンタニル、硫酸モルヒネ、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等)
・抗パーキンソン剤(ベンズトロピン、レボドパ等)
・鎮痙剤(臭化メチルアトロピン、スコポラミン等)
【0248】
上記薬剤は、局所作用薬剤であってもよく、全身作用薬剤であってもよいが、中でも全身作用薬剤であることが好ましい。全身作用薬剤を含む外用貼付剤は、規定される貼付時間が比較的長いことから、インジケーター層の色調変化により貼付時間の管理を精度よく行うことができるからである。また、上記薬剤は、一種または二種以上を適宜配合することができる。
【0249】
上記粘着剤層中の薬剤の含有量は、特に限定されず、薬剤の経皮吸収速度や外用貼付剤に規定される貼付時間等に応じて適宜設定することができる。
【0250】
(2)粘着基剤
上記粘着剤層に含まれる粘着基剤は、薬剤との相溶性に優れ、かつ貼付剤を皮膚表面に長時間固定しうる粘着力を有するものが好ましい。上記粘着基剤は、親水性であってもよく疎水性であってもよい。疎水性の粘着基剤は、プラスター剤(テープ剤)に使用される。また、親水性の粘着基剤は、パップ剤に使用される。
【0251】
疎水性の粘着基剤としては、プラスター剤(テープ剤)に使用される公知の粘着基剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらはエマルジョン化されていてもよい。なかでも、薬剤の放出性に優れているという観点から、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤を好適に用いることができる。
【0252】
親水性の粘着基剤としては、パップ剤に使用される公知の粘着基剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム等に加えて、これらをアルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム等の金属塩で架橋したものが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0253】
(3)添加剤
上記粘着剤層は、必要に応じ、様々な添加剤を添加することができる。添加剤の例としては、例えば、放出促進剤、精油、経皮吸収促進剤、可塑剤、粘着付与剤、安定化剤、軟化剤、充填剤、抗酸化剤、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤、溶性・水膨潤性高分子、高級アルコール等が挙げられる。これらは、公知の外用貼付剤において用いられる添加剤と同様とすることができる。
【0254】
(4)その他
上記粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、所望の量の薬剤を含むことができ、所望の粘着力を発揮可能な厚みであることが好ましい。上記厚みとしては、例えば、10μm以上300μm以下とすることができる。
【0255】
5.離型層
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤における離型層は、粘着剤層の支持層とは反対側の面に配置される層であり、タイムインジケーター付外用貼付剤の使用時に、剥離除去される層である。
【0256】
上記離型層は、粘着剤層から剥離可能なフィルム等が用いられる。上記離型層としては、例えば、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等の剥離フィルム、薬添規ポリエチレンテレフタレートセパレータ、剥離紙(離型紙)等が挙げられる。上記離型層は、粘着剤層と接する面に対し、シリコーン表面処理等の表面処理がされていてもよい。
【0257】
6.任意の構成
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤は、上記支持層の上記インジケーター層を有する面に、上記インジケーター層が呈する色から経過時間を判別するための色見本層をさらに有することができる。色見本層を有することの効果および色見本層については、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0258】
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤は、インジケーター層を覆う透明保護層を有することができる。透明保護層を有することの効果および透明保護層については、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
【0259】
7.製造方法
本開示に用いられるタイムインジケーター付外用貼付剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着基剤および薬剤を含む粘着剤組成物と溶剤とを混合した塗工液を調製する調製工程と、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したタイムインジケーターを用い、上記タイムインジケーターの基材を支持層とし、上記支持層のインジケーター層とは反対側の面に、上記塗工液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、上記粘着剤層の上記支持層とは反対側の面に離型層を配置する離型層配置工程とを有する製造方法を挙げることができる。
【0260】
また、上記製造方法として、上述した調製工程と、離型層の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、上記粘着剤層の上記離型層とは反対側の面に、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したタイムインジケーターを配置するタイムインジケーター配置工程とを有する製造方法も挙げることができる。
【0261】
なお、上記製造方法は、上記「C.タイムインジケーター」の項で説明したタイムインジケーターを用いず、離型層の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、上記粘着剤層の上記離型層とは反対側の面に、支持層を配置する支持層配置工程と、上記支持層の上記粘着剤層とは反対側の面に、インジケーター層を形成するインジケーター層形成工程と、を有していてもよい。
【0262】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例
【0263】
以下に実施例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0264】
[参考例1]
(タイムインジケーター側吸湿層の形成)
水189g、2-プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセファイマーZ-200、平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌し、次いで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した後、昇温し重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液200gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩系重合体水溶液を得た。このアクリル酸塩系共重合体水溶液を7.5質量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)を上記アクリル酸塩系共重合体水溶液の固形分に対し2%添加し、充分に撹拌して処理液を調製した。
【0265】
次いで、基材として厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、E5102)を用い、基材上に、上記処理液をワイヤーバーNo.14でコーティングし、135℃で5分間乾燥することで架橋し、タイムインジケーター側吸湿層を形成した。
【0266】
(インジケーター層の形成)
水酸化カルシウム(和光純薬製)50gと、指示染料としてエチルバイオレット(東京化成製)0.5gと、バインダー樹脂としてブチラール樹脂(積水化学製 BL-2)10gとを混合し、これらを溶媒として0.01mоl水酸化ナトリウムプロパノール液(岸田化学製)100Lに溶解して、ホモミキサー(トミー精工製)で懸濁させて、インク組成物を調製した。上記インク組成物の全固形分中の水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂の各含有量はそれぞれ、82.6質量%、0.8質量%、16.5質量%であった。なお、上記インク組成物には、0.01mol水酸化ナトリウムプロパノール液中の水酸化ナトリウム分が、インク組成物の全固形分中0.1質量%~0.2質量%程度含まれる。
【0267】
次に、上記タイムインジケーター側吸湿層上に、上記インク組成物をワイヤーバーNo.4でコーティングし、ドライヤーで乾燥してインジケーター層を形成した。これにより、タイムインジケーターを得た。
【0268】
[参考例2]
(タイムインジケーター側吸湿層の形成)
基材として、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、E5102)を用いた。また、接着剤として、主剤(ロックペイント社製、アドロックRU‐77T)と硬化剤(ロックペイント社製、ロックボンドJ H‐7)とが重量混合比で主剤:硬化剤=10:1で混合された接着剤を用いた。また、タイムインジケーター側吸湿層として、吸湿フィルム(佐々木化学薬品工業社製、ドライキープSPES48-231Y、厚み60μm、吸湿量:6g/m)を用いた。上記PETフィルムと上記吸湿フィルムとを上記接着剤を介して接着させ、基材上に吸湿層を配置した。
【0269】
(インジケーター層の形成)
次に、上記タイムインジケーター側吸湿層上に、上記実施例1で用いたインク組成物をワイヤーバーNo.4でコーティングし、ドライヤーで乾燥してインジケーター層を形成した。これにより、タイムインジケーターを得た。
【0270】
[参考例3]
参考例1においてタイムインジケーター側吸湿層を形成しなかったこと以外は、参考例1と同様にしてタイムインジケーターを作製した。
【0271】
[評価1]
参考例1~3で得たタイムインジケーターを5cm角に切断し、温度25℃、湿度45%RHの環境条件あるいは温度25℃、湿度95%RHの環境条件で保管した。この状態で12時間、24時間、48時間の各時間が経過したときの、インジケーター層の色差を確認した。結果を表1に示す。
【0272】
【表1】
【0273】
表1に示すように、参考例1~2のタイムインジケーターは、25℃95%RHの高湿度環境下に置いた場合および25℃45%RHの低湿度環境下に置いた場合のいずれも、12時間が経過するまでの間で、経過時間に対する色差の上昇勾配が急になっており、インジケーター層の色調が急激に変化したことが示された。
【0274】
一方、表1に示すように、参考例3のタイムインジケーターは、25℃95%RHの高湿度環境下に置いた場合には、12時間が経過するまでの間で、経過時間に対する色差の上昇勾配が急になっており、色調が急激に変化したことが示されたが、25℃45%RHの低湿度環境下に置いた場合には、インジケーター層の色調はあまり変化しなかった。これは、低湿度環境下では、インジケーター層中の水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応の反応速度が非常に遅いためであると考えられる。
【0275】
[実施例1]
(1)タイムインジケーター付外用貼付剤の作製
(貼付剤の準備)
ホクナリンテープ2mg(マイランEPD社製、32mm角)を評価用サンプルとして準備した。
【0276】
(タイムインジケーター側吸湿層の形成)
水189g、2-プロパノール27g、アクリル酸108g、過硫酸アンモニウム0.045g、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、ゴーセファイマーZ-200、平均重合度1000、ケン化度95モル%のアセトアセチル基変性PVA)の10%水溶液45gを仕込み撹拌し、次いで窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した後、昇温し重合を開始させ、温度90℃で2時間保持し重合を完結させた。そして、60℃まで冷却し、15%濃度の水酸化ナトリウム水溶液200gで除々に中和した。これを冷却し、アクリル酸塩系重合体水溶液を得た。このアクリル酸塩系共重合体水溶液を7.5質量%濃度に調整し、架橋剤としてポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(官能基当量200)を上記アクリル酸塩系共重合体水溶液の固形分に対し2%添加し、充分に撹拌して処理液を調製した。
【0277】
上記ホクナリンテープの支持フィルム上に、上記処理液をワイヤーバーNo.14でコーティングし、135℃で5分間乾燥することで架橋し、タイムインジケーター側吸湿層を形成した。
【0278】
(インジケーター層の形成)
水酸化カルシウム(和光純薬製)50gと、指示染料としてエチルバイオレット(東京化成製)0.5gと、バインダー樹脂としてブチラール樹脂(積水化学製 BL-2)10gとを混合し、これらを溶媒として0.01mоl水酸化ナトリウムプロパノール液(岸田化学製)100Lに溶解して、ホモミキサー(トミー精工製)で懸濁させて、インク組成物を調製した。上記インク組成物の全固形分中の水酸化カルシウム、指示染料、およびバインダー樹脂の各含有量はそれぞれ、82.6質量%、0.8質量%、16.5質量%であった。なお、上記インク組成物には、0.01mol水酸化ナトリウムプロパノール液中の水酸化ナトリウム分が、インク組成物の全固形分中0.1質量%~0.2質量%程度含まれる。
【0279】
上記タイムインジケーター側吸湿層上に、上記インク組成物をワイヤーバーNo.4でコーティングし、ドライヤーで乾燥してインジケーター層を形成した。これにより、タイムインジケーター付外用貼付剤を得た。
【0280】
(2)吸湿性積層フィルムの作製
保護層として、厚み12μmのPETフィルム(東洋紡社製、E5102)を用いた。また、ガスバリア層として、厚み9μmのアルミニウム箔(東洋アルミ社製、A8079)を用いた。また、吸湿層を兼ねるシーラント層として、吸湿性ポリエチレンフィルム(佐々木化学薬品工業社製、ドライキープSPES48-231Y、厚み60μm、吸湿量:6g/m)を用いた。また、接着剤として、主剤(ロックペイント社製、アドロックRU‐77T)と硬化剤(ロックペイント社製、ロックボンドJ H‐7)とが重量混合比で主剤:硬化剤=10:1で混合された接着剤を用いた。上記PETフィルムと上記アルミニウム箔と上記吸湿フィルムとをそれぞれ上記接着剤を介して接着させ、保護層(PETフィルム)/接着剤層/ガスバリア層(アルミニウム箔)/接着剤層/吸湿層を兼ねるシーラント層(吸湿性ポリエチレンフィルム)の層構成を有する吸湿性積層フィルムを得た。
【0281】
(3)タイムインジケーター用包装体の作製
2枚の上記吸湿性積層フィルムをシーラント層を内側にして重ね合わせ、ヒートシーラー(テスター産業株式会社社製、TP-701-B ヒートシールテスター)を用いて、150℃で1秒間、圧力0.1MPaでヒートシールし、外寸80mm角、シール幅10mmの包装袋を作製した。次に、温度25℃、湿度70%RHの環境下で、上記包装袋の中に上記タイムインジケーター付外用貼付剤を入れて、ヒートシーラー(テスター産業株式会社社製、TP-701-B ヒートシールテスター)を用いて、150℃で1秒間、圧力0.1MPaで密封シールした。これにより、タイムインジケーター用包装体を得た。
【0282】
[実施例2]
下記に示すように吸湿性積層フィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にしてタイムインジケーター用包装体を作製した。
【0283】
(吸湿性積層フィルムの作製)
ガスバリア層として、厚み12μmのPETフィルム上に物理蒸着法によりアルミナが蒸着された透明蒸着バリアフィルム(大日本印刷社製、IB-PET-PXB2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして吸湿性積層フィルムを作製した。
【0284】
[比較例1]
実施例1において吸湿性積層フィルムに代えて下記に示すように積層フィルムを作製したこと以外は、実施例1と同様にしてタイムインジケーター用包装体を作製した。
【0285】
(積層フィルムの作製)
シーラント層として、厚み60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ社製、TUX-FCD-NP)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。
【0286】
[評価]
実施例1~2および比較例1で得たタイムインジケーター用包装体を、温度25℃、湿度45%RHの環境条件で保管した。この状態で12時間、24時間、48時間の各時間が経過したときの、インジケーター層の色差を確認した。結果を表2に示す。
【0287】
【表2】
【0288】
表2に示すように、比較例1のタイムインジケーター用包装体では、インジケーター層が変色した。これは、包装体内部に存在する水分および二酸化炭素により、インジケーター層中の水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応が進行し、インジケーター層が変色したと考えられる。
【0289】
これに対し、実施例1、2のタイムインジケーター用包装体では、インジケーター層は変色しなかった。これは、包装体内部に存在する水分が、吸湿性積層フィルムにより吸湿されることにより、インジケーター層中の水酸化カルシウムの二酸化炭素吸収反応が起こりにくくなるためであると考えられる。
【符号の説明】
【0290】
1A、1B … タイムインジケーター用包装体
2、12 … 保護層
3、13 … ガスバリア層
4、4a、4b、14 … シーラント層
5 … 吸湿層
9 … 接合部
10… 吸湿性積層フィルム
11 … 積層フィルム
31 … 容器本体
32 … 収納部
33 … フランジ部
34 … 蓋材
50… タイムインジケーター
51 … 基材
52 … インジケーター層
53 … タイムインジケーター側吸湿層
55 … 色見本層
56 … 透明保護層
60 … タイムインジケーター付外用貼付剤
61 … 支持層
62 … 粘着剤層
63 … 離型層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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