(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】防曇コート剤
(51)【国際特許分類】
C09D 201/08 20060101AFI20231212BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20231212BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20231212BHJP
C09D 179/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09D201/08
C09D5/00 Z
C09D133/02
C09D179/00
(21)【出願番号】P 2019192003
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 真一
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137342(JP,A)
【文献】特開2002-080833(JP,A)
【文献】特開2005-075878(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021458(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/022905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性ポリマー及び(B)ポリカルボジイミド化合物を含む防曇コート剤であって、
(A)水溶性ポリマーが、カルボキシ基を有する繰り返し単位を
全繰り返し単位中80モル%以上含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリマーをアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物で中和して得られるポリマーであって、その中和度が0.5~1であり、
(B)ポリカルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリマー中のカルボキシ基に対する(B)ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の比が、モル比で0.005を超え、0.6以下となる量である防曇コート剤。
【請求項2】
前記カルボキシ基を有する繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸に由来するものである請求項
1記載の防曇コート剤。
【請求項3】
前記カルボキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマーの重量平均分子量が、300,000以上である請求項
2記載の防曇コート剤。
【請求項4】
(B)ポリカルボジイミド化合物が、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物である請求項1~
3のいずれか1項記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
(B)ポリカルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリマー中のカルボキシ基に対する(B)ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の比が、モル比で0.01以上0.1未満となる量である請求項1~
4のいずれか1項記載の防曇コート剤。
【請求項6】
プラスチック用である請求項1~
5のいずれか1項記載の防曇コート剤。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項記載の防曇コート剤から得られる防曇性皮膜。
【請求項8】
プラスチック基材と、該プラスチック基材上に請求項
7記載の防曇性皮膜とを備える防曇性物品。
【請求項9】
請求項1記載の防曇コート剤の製造方法であって、
カルボキシ基を有する繰り返し単位を
全繰り返し単位中80モル%以上含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリマーをアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物で中和し、中和度が0.5~1である(A)水溶性ポリマーの溶液を調製する工程、及び前記工程後、(B)ポリカルボジイミド化合物を(A)水溶性ポリマーの溶液に添加する工程を含む防曇コート剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇コート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス用の防曇コート剤として、水溶性ポリマー及び架橋剤を含むものが提案されている(特許文献1)。しかし、このような防曇コート剤は、防曇持続性が低いため、例えば農業用ビニールハウス等のプラスチック基材に対し、長期で使用される用途には実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、特にプラスチック基材に対する防曇持続性が良好な防曇コート剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルボキシ基を有する水溶性ポリマー及びポリカルボジイミド化合物を含む防曇コート剤であって、該水溶性ポリマーの中和度及びカルボジイミド化合物の添加量が所定の値であるものを使用することで、プラスチック基材に対する防曇持続性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記防曇コート剤を提供する。
1.(A)水溶性ポリマー及び(B)ポリカルボジイミド化合物を含む防曇コート剤であって、
(A)水溶性ポリマーが、カルボキシ基を有する繰り返し単位を含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリマーをアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物で中和して得られるポリマーであって、その中和度が0.5~1であり、
(B)ポリカルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリマー中のカルボキシ基に対する(B)ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の比が、モル比で0.005を超え、0.6以下となる量である防曇コート剤。
2.前記カルボキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマー中、前記カルボキシ基を有する繰り返し単位が80モル%以上含まれる1の防曇コート剤。
3.前記カルボキシ基を有する繰り返し単位が、(メタ)アクリル酸に由来するものである1又は2の防曇コート剤。
4.前記カルボキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマーの重量平均分子量が、300,000以上である3の防曇コート剤。
5.(B)ポリカルボジイミド化合物が、水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物である1~4のいずれかの水性塗料組成物。
6.(B)ポリカルボジイミド化合物の含有量が、(A)ポリマー中のカルボキシ基に対する(B)ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基の比が、モル比で0.01以上0.1未満となる量である1~5のいずれかの防曇コート剤。
7.プラスチック用である1~6のいずれかの防曇コート剤。
8.1~7のいずれかの防曇コート剤から得られる防曇性皮膜。
9.プラスチック基材と、該プラスチック基材上に8の防曇性皮膜とを備える防曇性物品。
10.1の防曇コート剤の製造方法であって、
カルボキシ基を有する繰り返し単位を含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリマーをアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物で中和し、中和度が0.5~1である(A)水溶性ポリマーの溶液を調製する工程、及び前記工程後、(B)ポリカルボジイミド化合物を(A)水溶性ポリマーの溶液に添加する工程を含む防曇コート剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防曇コート剤は、特にプラスチック基材に対する防曇持続性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[防曇コート剤]
本発明の防曇コート剤は、(A)水溶性ポリマー及び(B)ポリカルボジイミド化合物を含む。
【0009】
[(A)水溶性ポリマー]
(A)成分の水溶性ポリマーは、カルボキシ基を有する繰り返し単位を含み、重量平均分子量が10,000以上であるポリマー(以下、ポリマーAともいう。)をアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属で中和して得られるポリマーであって、その中和度が0.5~1であるものである。
【0010】
前記カルボキシ基を有する繰り返し単位を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;イタコン酸モノブチル等のイタコン酸モノC1~C8アルキルエステル;マレイン酸モノブチル等のマレイン酸モノC1~C8アルキルエステル;ビニル安息香酸等のビニル基含有芳香族カルボン酸等が挙げられる。これらのうち、前記モノマーとしては、(メタ)アクリル酸が好ましい。なお、「C1~C8」とは、炭素数が1~8であることを意味する。
【0011】
また、ポリマーAは、前記カルボキシ基を有する繰り返し単位以外の繰り返し単位(以下、その他の繰り返し単位ともいう。)を含んでもよい。その他の繰り返し単位を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0012】
ポリマーAは、前記カルボキシ基を有する繰り返し単位を、全繰り返し単位中80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましく、90モル%以上含むことがより一層好ましく、95モル%以上含むことが更に好ましく、100モル%含むことが最も好ましい。
【0013】
ポリマーAは、その重量平均分子量(Mw)が10,000以上である。Mwが10,000以上であれば、防曇効果の持続性に優れたコート剤になる。同様の観点から、Mwは、50,000以上が好ましく、150,000以上がより好ましく、300,000以上がより一層好ましく、500,000以上が更に好ましい。また、Mwの上限は、特に限定されないが、通常3,000,000以下であり、2,000,000以下が好ましく、1,500,000以下がより好ましい。なお、本発明においてMwは、水系ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレンオキサイド換算測定値である。
【0014】
ポリマーAは、市販品を使用することができ、その具体例としては、富士フイルム和光純薬(株)ポリアクリル酸250,000、ポリアクリル酸1,000,000、東亞合成(株)製ジュリマー(登録商標)AC-10H、AC-10L、アロン(登録商標)A-20L等が挙げられる。
【0015】
(A)水溶性ポリマーは、ポリマーAがアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物で中和されたものである。前記アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が好ましく、前記アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。(A)水溶性ポリマーは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムで中和されたものが好ましい。
【0016】
(A)水溶性ポリマーは、その中和度が0.5~1である。本発明において中和度とは、(A)水溶性ポリマー中のカルボキシ基のモル当量に対する、中和に使用したアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物のモル当量の比として定義される。なお、前記定義に従う場合、使用する水酸化物の量によっては中和度が1を超えることがあるが、この場合は中和度を1とする。
【0017】
中和は、例えば、ポリマーAの水溶液に、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の水酸化物を添加することで行うことができる。具体的には、予め水に溶解させた水溶性ポリマーの水溶液を反応容器中で攪拌しながら、前記水酸化物の水溶液をゆっくり添加することによって行うことができる。また、中和度の異なる水溶性ポリマーを数種組み合わせることで、目標の中和度へ調整することもできる。例えば、中和度1のポリマーと中和度0のポリマーを8:2の割合で混合することで中和度0.8の水溶性ポリマーを得ることもできる。
【0018】
(A)水溶性ポリマーは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
[(B)ポリカルボジイミド化合物]
(B)成分のポリカルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(-N=C=N-)を2以上有する化合物であり、特に水溶性又は水分散性のポリカルボジイミド化合物が好ましい。(B)ポリカルボジイミド化合物は、(A)水溶性ポリマーの架橋剤として機能する。
【0020】
前記ポリカルボジイミド化合物は、公知の合成方法を用いて、ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により得ることができる。例えば、カルボジイミド化触媒の存在下、ポリイソシアネートを加熱し、脱炭酸反応を行うことで製造できる。
【0021】
前記ポリイソシアネートは、鎖状又は脂環状の脂肪族ジイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、複素環ポリイソシアネートのいずれでもよい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環状ポリイソシアネートとしては、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2'-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4'-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4'-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルベンゼン-1,3-ジイルジイソシアネート等が挙げられる。また、芳香族環を含む脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性やポリカルボジイミドの合成の容易さ等の観点から、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが好ましく、特に、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネートが好ましい。
【0023】
前記カルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド及びこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等を使用することができる。これらのうち、反応性の面から、3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシドが好ましい。前記カルボジイミド化触媒の使用量は、特に限定されないが、通常、ポリイソシアネート100質量部に対し、0.1~5質量部である。
【0024】
また、脱炭酸反応における加熱条件も特に限定されないが、通常、60~200℃である。
【0025】
前記ポリカルボジイミド化合物は、その末端がイソシアネート基でもよく、イソシアネート基との反応性を有する官能基を有する公知の末端封止剤を用いて末端イソシアネート基が封止されたものでもよいが、末端イソシアネート基が封止されていることが好ましい。
【0026】
前記官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する化合物としては、メタノール、エタノール、フェノール、シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、ポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテル等が挙げられる。カルボキシ基を有する化合物としては、プロピオン酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。アミノ基を有する化合物としては、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。イソシアネート基を有する化合物としては、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、ジメチルフェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等のモノイソシアネートが挙げられる。
【0027】
また、(B)ポリカルボジイミド化合物を(A)水溶性ポリマーの架橋剤として用いる観点から、前記官能基は、親水性基であることが好ましい。前記親水世紀を有する末端封止剤としては、ポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテルが好ましく、特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。前記ポリアルキレングリコールモノヒドロカルビルエーテルのMwは、ポリカルボジイミド化合物の親水性や、(A)水溶性ポリマーとの混和性等の観点から、180~2,100であることが好ましく、より好ましくは200~2,000、更に好ましくは250~1,000である。
【0028】
(B)ポリカルボジイミド化合物の重合度は、得られる塗膜の架橋密度及びポリカルボジイミド化合物の水溶液の取扱性の観点から、3~13が好ましく、4~10がより好ましい。なお、本発明において重合度とは、分子中のカルボジイミド基の平均含有個数を意味する。
【0029】
本発明の防曇コート剤中、(B)ポリカルボジイミド化合物の含有量は、(A)水溶性ポリマーのカルボキシ基に対し、(B)ポリカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基が、モル比で0.005を超え、0.6以下となる量であるが、0.006~0.5となる量が好ましく、0.007~0.3となる量がより好ましく、0.008~0.2となる量が更に好ましく、0.01以上0.1未満となる量が最も好ましい。なお、(A)水溶性ポリマーのカルボキシ基は、中和されていないカルボキシ基(-COOH)のほか、中和されたカルボキシ基(-COO-)を含むものとする。(B)ポリカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
[(C)溶媒]
本発明の防曇コート剤は、溶媒を含んでもよい。前記溶媒としては、水、親水性有機溶媒及び水と親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。前記親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶媒等が挙げられる。これらのうち、溶媒としては、水がより好ましい。
【0031】
本発明の防曇コート剤中、(C)溶媒の含有量は、固形分濃度が3~30質量%となる量が好ましく、5~20質量%となる量がより好ましい。なお、本発明において固形分とは、(C)溶媒以外の成分を意味する。
【0032】
[その他の成分]
また、本発明の防曇コート剤は、必要に応じて、コロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機化合物等を含んでもよい。その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、通常(A)成分100質量部に対し、1~20質量部程度である。
【0033】
[防曇コート剤の製造方法]
本発明の防曇コート剤は、まず、前述した方法でポリマーAを中和して(A)水溶性ポリマーの溶液を調製し、その後、(B)ポリカルボジイミド化合物及び必要に応じてその他の成分を、同時に又は任意の順で(A)水溶性ポリマーの溶液に添加し、溶解又は分散させることで製造することができる。
【0034】
[防曇性皮膜、防曇性物品]
本発明の防曇コート剤を、基材上に塗布し、乾燥させることで、防曇性皮膜を備える防曇性物品を製造することができる。
【0035】
前記基材としては、ガラス、金属、セラミックス、プラスチック等を使用することができる。本発明の防曇コート剤は、特にプラスチック基材に対する防曇持続性に優れるため、プラスチックを基材として使用することが好ましい。
【0036】
前記プラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン等を使用することができる。
【0037】
塗布方法としては、従来公知の方法を使用することができ、例えば、バーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、グラビアコート法、転写印刷法、刷毛塗り等の公知の方法から適宜選択すればよい。
【0038】
乾燥は、常温で行ってもよく、加熱して行ってもよいが、生産性の点から加熱して行うことが好ましい。このとき、加熱温度は、基材に悪影響を与えない限り特に限定されないが、通常、40~100℃程度である。
【実施例】
【0039】
以下、調製例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0040】
[1]ポリアクリル酸水溶液の調製
[調製例1]ポリアクリル酸水溶液Aの調製
ポリアクリル酸1,000,000(富士フイルム和光純薬(株)製、Mw=1,000,000)10gを、水90gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を55.5g加え、室温で24時間攪拌し、中和度1のポリアクリル酸を6.4質量%含むポリアクリル酸水溶液Aを調製した。
【0041】
[調製例2]ポリアクリル酸水溶液Bの調製
ポリアクリル酸1,000,000(富士フイルム和光純薬(株)製、Mw=1,000,000)10gを、水90gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を44.4g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.8のポリアクリル酸を6.9質量%含むポリアクリル酸水溶液Bを調製した。
【0042】
[調製例3]ポリアクリル酸水溶液Cの調製
ポリアクリル酸1,000,000(富士フイルム和光純薬(株)製、Mw=1,000,000)10gを、水90gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を33.3g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.6のポリアクリル酸を7.5質量%含むポリアクリル酸水溶液Cを調製した。
【0043】
[調製例4]ポリアクリル酸水溶液Dの調製
ポリアクリル酸1,000,000(富士フイルム和光純薬(株)製、Mw=1,000,000)10gを、水90gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を22.2g加え、室温で24時間攪拌し、、中和度0.4のポリアクリル酸を8.2質量%含むポリアクリル酸水溶液Dを調製した。
【0044】
[調製例5]ポリアクリル酸水溶液Eの調製
ジュリマーAC-10H(東亜合成(株)製、Mw=800,000)50gを、水50gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を44.4g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.8のポリアクリル酸を6.9質量%含むポリアクリル酸水溶液Eを調製した。
【0045】
[調製例6]ポリアクリル酸水溶液Fの調製
ポリアクリル酸250,000(富士フイルム和光純薬(株)製、Mw=250,000)10gを、水90gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を44.4g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.8のポリアクリル酸を6.9質量%含むポリアクリル酸水溶液Fを調製した。
【0046】
[調製例7]ポリアクリル酸水溶液Gの調製
ジュリマーAC-10L(東亜合成(株)製、Mw=50,000)25gを、水75gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を44.4g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.8のポリアクリル酸を6.9質量%含むポリアクリル酸水溶液Gを調製した。
【0047】
[調製例8]ポリアクリル酸水溶液Hの調製
ジュリマーAC-10P(東亜合成(株)製、Mw=9,000)10gを、水10gに溶解した、そこへ、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を44.4g加え、室温で24時間攪拌し、中和度0.8のポリアクリル酸を6.9質量%含むポリアクリル酸水溶液Hを調製した。
【0048】
[2]ポリカルボジイミド水溶液の調製
[調製例9]
ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート1000質量部とカルボジイミド化触媒(3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド)5質量部とを、還流管及び攪拌機付き反応容器に入れ、窒素気流下190℃で16時間攪拌した後、テフロン(登録商標)シートに取り出し、ポリカルボジイミド樹脂を得た。イソシアネート基残存量(質量%)を測定した結果、5.28質量%(すなわち、重合度=6.10)であった。得られたポリカルボジイミド樹脂42.0質量部を、還流管及び攪拌機付き反応容器に入れ、150℃まで加熱し、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)を21.1質量部加え、150℃で加熱攪拌しながら2時間反応させた。
IR測定によりイソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、70℃まで冷却した後、イオン交換水94.7g加えて1時間攪拌することで樹脂を溶解させ、室温まで冷却することで、40質量%ポリカルボジイミド水溶液を得た。
【0049】
[3]防曇コート剤の調製及び防曇試験
[実施例1~8、比較例1~5]
(1)防曇コート剤の調製
表1に記載した組成になるよう、ポリアクリル酸水溶液A~Hに前記ポリカルボジイミド水溶液を加え、室温で1時間攪拌し、防曇コート剤A~Hを調製した。なお、防曇コート剤Jは、混合した時点でゲル化した。
【0050】
(2)防曇試験
防曇コート剤A~Hを、それぞれバーコーターを用いてポリエチレンフィルムに塗布し、60℃で30秒間乾燥させることで防曇性皮膜付きフィルムを作製した。
水温40℃に設定したウォーターバスの上面に蓋をするように、作製したフィルムを防曇性皮膜がウォーターバス内に向くように設置した。発生する水蒸気に最大で1週間さらし、フィルムの曇り度合い(防曇性)を5段階で評価した。結果を表1に併記する。
5:防曇効果1週間保持
4:防曇効果5日間保持
3:防曇効果3日間保持
2:防曇効果1日間持続
1:防曇効果1日未満
【0051】