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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】織編物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/47 20210101AFI20231212BHJP
   D01F 8/14 20060101ALI20231212BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20231212BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20231212BHJP
   D03D 15/37 20210101ALI20231212BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20231212BHJP
   D06M 11/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
D03D15/47
D01F8/14 B
D02G3/04
D03D15/283
D03D15/37
D04B1/16
D06M11/00 111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019196347
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070877
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川原 慎也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】増田 正人
(72)【発明者】
【氏名】松浦 知彦
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-001354(JP,A)
【文献】特開昭61-146809(JP,A)
【文献】特開平08-013273(JP,A)
【文献】国際公開第2021/070740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 15/47
D01F 8/14
D02G 3/04
D03D 15/283
D03D 15/37
D04B 1/16
D06M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を満たす混繊糸を含む織編物であり、伸長率が混繊糸の糸状方向で3%以上である織編物。
(1)混繊糸は2種類の熱可塑性フィラメントからなる
(2)混繊糸を構成する単糸が単独糸である。
(3)混繊糸を構成する単糸の繊維横断面が凸部を3個以上6個以下有する多葉形状である。
(4)混繊糸を構成する2種の熱可塑性フィラメントの糸長差が3%以上20%以下である。
【請求項2】
混繊糸を構成する単糸の繊維横断面において、凸部の各頂点付近に溝を1つ有する請求項1に記載の織編物。
【請求項3】
混繊糸を構成する熱可塑性フィラメントがポリエステルからなる請求項1または2に記載の織編物。
【請求項4】
織編物の伸長率が混繊糸の糸状方向の3%以上25%以下である請求項1~3のいずれかに記載の織編物。
【請求項5】
混繊糸は、アルカリ減量処理により2種類の熱可塑性フィラメントを生成し得る2個の島を有する海島複合繊維をアルカリ減量処理することによって得られたものである請求項1~4のいずれかに記載の織編物。
【請求項6】
混繊糸を構成する単糸が微捲縮を有する請求項1~5のいずれかに記載の織編物。
【請求項7】
混繊糸を構成する単糸の単糸繊度が0.5dtex以上、2dtex以下である請求項1~6のいずれかに記載の織編物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。しかし、人々の生活が多様化し、より良い生活を求めるようになった昨今では、従来の合成繊維にはない高度な感性・機能を有する衣料が求められている。
【0003】
合成繊維に関わる技術開発の変遷を紐解くと、天然素材が有する特長の模倣をモチベーションとして各要素技術が進化したといっても過言ではない。これは麻、羊毛、綿、絹などの天然繊維の持つ風合いや機能が大変優れたものであり、これらが織り成す複雑な光沢や風合いを人間は魅力的でかつ高級であると感じるからである。
【0004】
このように天然素材を模倣してきた合成繊維の歴史の中でも、特に天然素材の最高級品種である絹(以下、シルクと記載)の特性を達成することを目的としたシルキー素材に関しては、ポリマー技術から繊維断面形状を設計するなどの製糸技術まで幅広い繊維技術に関する提案がある。
【0005】
例えば、比較的高度に光を反射するポリエステル繊維の断面形状を多葉形状の異型断面とすると、多葉形状の凹凸により光の反射が増幅され、シルクのような高輝度でありながらマイルドな光沢を有した繊維及び織編物になることが知られており、シルキー素材の代表例として多量に生産されている。しかしながら、単純な異型断面とするだけでは光沢以外のシルク風合い(ドライ感、軽やか、柔軟、反発感、絹鳴りなど)を満たすことは困難な場合があり、断面形状を更に複雑化させることにより、シルク風合い等を追求した複合繊維に関する繊維技術が種々開示されている。
【0006】
特許文献1では、繊維横断面において、多葉形状であると共に、多葉様形状の頂点に易溶出成分を繊維内部方向へ先細り状に配置させた複合繊維が提案されている。該複合繊維においては、易溶出成分を溶出処理した際に、多葉形状の頂点に溝が配されることで、多葉形状による光の反射と溝部による摩擦力の増加により、シルクのような高級感のある光沢とドライ感のある触感、さらにはシルクからなる織編物の特長である絹鳴りを再現できるとしている。
【0007】
特許文献2では、繊維横断面において、易溶出性成分が難溶出性成分を複数個に分割した複合繊維が提案されている。該複合繊維においては、易溶出成分を溶出処理した際に1本の複合繊維が複数の異形断面繊維に分割されることで、細繊維径化による効果と異形断面化による効果が相まって、シルクのような高級感のある光沢やドライ感のある触感に加えて、柔軟な風合いを付与することが可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平2-145825号公報
【文献】特開2010-222771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、溶出成分を利用した特殊断面形状の形成により、光の反射や摩擦力を制御することで、シルク特有の高級感のある光沢やドライ感のある触感、特異な絹鳴りなどを再現できる可能性はある。しかしながら、特許文献1においては、織編物中の繊維間空隙が不十分になる場合があり、布帛において単繊維が密集した形で形成されることとなり、衣服として着用した場合に、快適と感じる軽やかで柔軟な風合いは不足する場合があった。また、特許文献1では熱収縮率の異なる繊維を用いて糸長差を生じ、生地にシルク調のふくらみ感を再現できる可能性はあるが、熱処理によって糸を過剰に収縮させるため芯が残る風合いとなり、織編物とした際の伸度が乏しく、着心地の悪化や衣料に用いる際の縫製が困難となる場合がある。
【0010】
一方、特許文献2のように、溶出分割等の細繊維径化により単繊維1本1本の曲げ剛性を低下させることで、布帛に柔軟性を付与する方法は、柔軟性を付与するという観点では有効であるものの、糸束内に形成される空隙は限られたものであり、また、糸径を細めたことにより布帛の組織によっては単繊維が最密充填されたものとなるため、シルク特有の軽やかな風合いを奏でるとは言い難い。
【0011】
以上のように、合成繊維を活用したシルキー素材として、これまで種々の技術提案がなされてきたものの、天然シルクの有した高級感のある光沢や反発感のあるドライな触感を有しつつ、軽やかで柔軟な風合いのバランス良く発現し、かつ、適度な伸度を有し着心地と衣料への仕立てやすさを兼ね備える技術が存在するとは言い難い。
【0012】
したがって、本発明は、上記した従来技術の問題点を解消し、天然シルクに迫る良好な織編物、具体的には天然シルクのような高級感のある光沢やドライな触感、ふくらみ感、軽やかで柔軟な風合いを有しつつ、適度な伸度により着心地や服の仕立てやすさに優れた織編物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の課題は、以下の手段によって達成される。すなわち、
[I]
下記(1)~(4)を満たす混繊糸を含む織編物であり、伸長率が混繊糸の糸状方向で3%以上である織編物。
(1)混繊糸は2種類以上の熱可塑性フィラメントからなる
(2)混繊糸を構成する単糸が単独糸である。
(3)混繊糸を構成する単糸の繊維横断面が凸部を3個以上6個以下有する多葉形状である。
(4)混繊糸を構成する2種以上の熱可塑性フィラメントの糸長差が3%以上20%以下である。
【0014】
[II]
混繊糸を構成する単糸の繊維横断面において、凸部の各頂点付近に溝を1つ有する[I]に記載の織編物。
【0015】
[III]
混繊糸を構成する熱可塑性フィラメントがポリエステルからなる[I]または[II]に記載の織編物。
【0016】
[IV]
織編物の伸長率が混繊糸の糸状方向の3%以上25%以下である[I]~[III]のいずれかに記載の織編物。
【0017】
[V]
混繊糸は、アルカリ減量処理により2種類以上の熱可塑性フィラメントを生成し得る2以上の島を有する海島複合繊維をアルカリ減量処理することによって得られたものである[I]~[IV]いずれかに記載の織編物。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、天然シルク調の高級感のある光沢や反発感のあるドライな触感を有しつつ、軽やかで柔軟な風合いのバランス良く発現し、かつ、適度な伸度を有し着心地と衣料への仕立てやすさを兼ね備えた織編物を提供することができる。また、本発明の織編物が衣料用として用いられた場合は、天然シルク調の特徴を有しながら、天然シルクにはない快適な着心地と合成繊維特有のイージケア性や吸汗速乾性、防しわ性に優れた衣料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の海島複合繊維の横断面構造の概略図である。
図2】本発明の芯鞘複合繊維の製造方法を説明するための横断面図である。
図3】比較例2に係る島成分が凸部を有さない海島複合繊維の横断面構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
本発明は、下記(1)~(4)を満たす混繊糸を含む織編物であり、伸長率が混繊糸の糸状方向で3%以上である。
(1)混繊糸は2種類以上の熱可塑性フィラメントからなる
(2)混繊糸を構成する単糸が単独糸である。
(3)混繊糸を構成する単糸の繊維横断面が凸部を3個以上6個以下有する多葉形状である。
(4)混繊糸を構成する2種以上の熱可塑性フィラメントの糸長差が3%以上20%以下である。
【0021】
すなわち、本発明の織編物は2種類以上の熱可塑性フィラメントからなる混繊糸を含むみ、混繊糸を構成する2種以上の熱可塑性フィラメントの糸長差が3%以上20%以下である。ここでいう2種類以上の熱可塑性フィラメントとはフィラメントを構成する成分が異なるものを言う。糸長差が3%より小さいと糸状のふくらみが小さく、ペーパーライクな織編物となる。また、糸長差が20%よりも大きいと低収縮成分が大きく飛び出すため、摩擦によるフィブリルが生じやすくなる場合がある。糸長差を3%以上20%以下とすることで単繊維間に適度な空隙が生じ、織編物としたときに適度なふくらみが生じる。好ましくは10%以上20%以下である。
【0022】
また、上記の混繊糸を構成する単糸は単独糸である。ここでいう単独糸とは糸状全体の構成成分が均一であるもののことを言い、構成成分が1つのポリマーであってもよいし、アロイ等2種以上のポリマーを溶融混練等の方法で混合して得られる組成物であっても良く、粒子や添加剤等を溶融混練等の方法で添加した組成物であっても良い。単独糸とすることで製糸性が良く欠点の少ない織編物を得ることができる。繊維長手方向に対し、直角方向の断面(横断面)が2以上の異なる構成成分で構成されるサイドバイサイド型や芯鞘型の単糸では、製糸性の悪化や単糸割れを生じて外観を損ねる場合がある。
【0023】
シルクに近い曲げ剛性とできるのみならず、染色した際に良好な発色性が得られるという観点から、混繊糸を構成する熱可塑性フィラメントはポリエステルであることが特に好ましい範囲として挙げられる。
【0024】
また、上述した混繊糸を構成する単糸の横断面は凸部を3個以上6個以下含む多葉形状である。繊維表面に3個以上の凸部を有することで、光の反射増幅効果も得られることから、シルクのような高輝度かつマイルドな光沢といった高級感のある光沢が発現できる。ただし、凸部の数が多くなりすぎると、凹凸部の間隔が細かくなっていき、その効果は徐々に丸断面へと近似してしまうため、本発明における混繊糸を構成する多葉形状単糸横断面の凸部の実質的な上限は6個である。
【0025】
本発明の織編物は、シルク調のドライ感のある触感や絹鳴り効果を発現できるという観点から、混繊糸を構成する単糸の繊維横断面において、凸部の各頂点付近に溝を1つ有することが好ましい。
【0026】
また、本発明の織編物は衣料として着用した際の着心地や衣料への仕立てやすさを付与する観点から、伸長率が混繊糸の糸状方向で3%以上である。ここで、「混繊糸の糸状方向」とは、織編物中に含まれる混繊糸の長手方向を指し、織物の場合は、経(緯)糸のみに混繊糸が含まれる場合は、経(緯)方向、両方に含まれる場合は伸長率の大きい方向のことを指す。経編物の場合はタテ方向(ループが縦に並ぶ方向)を指し、緯編物の場合は、ヨコ方向(ループが横に並ぶ方向)を指す。伸長率が3%よりも小さいと衣料として着用した際に生地が突っ張ってしまい着心地が低下する場合があり、また、衣料向けに縫製する際にミシン糸によるパッカリング現象が発生し仕立て映えを低下させる場合がある。伸長率の更に好ましい範囲は3%以上25%以下で、伸長率が25%よりも大きいとハリ・腰が低下し仕立て映えを低下させる場合がある。より好ましくは8%以上13%以下である。
【0027】
伸長率を上記の範囲とするためには、用いる混繊糸としては、アルカリ減量処理等海成分を溶出する処理により2種類以上の熱可塑性フィラメントを生成し得る2以上の島を有する海島複合繊維からアルカリ減量等海成分を除去することによって得られたものであることがさらに好ましい。
【0028】
天然のシルクの場合、シルクの元となる蚕の繭からとれた生糸の時点では、2つの三角断面の難溶出成分からなるフィブロインが易溶出成分からなるセリシンで覆われた繊維断面形状からなっている。そしてセリシンを溶出除去することにより生糸が分割して2つのフィブロインからなる繊維を生成する。隣り合った繊維間での空隙は、シルクのマルチフィラメント中の単繊維の配置に寄らずに、常にセリシン溶出の割合のみで制御されており、これがシルク特有の単繊維一本一本の間にμmオーダーの繊維間空隙が均一に存在している状態を生み出していると理解できる。本発明において、2種類以上の熱可塑性フィラメントを生成し得る2以上の島を有する海島複合繊維からアルカリ減量等海成分を除去することによって混繊糸を得ることは、その状態をより忠実に再現することになる。この観点から、上記の海島複合繊維は、島成分の周囲がアルカリに対する溶出性が高い海成分によって覆われているものが好ましい。
【0029】
加えて、2種類以上の熱可塑性フィラメントを生成し得る2以上の島を有する海島複合繊維とすることで、織編物として加工する際、精練時や、アルカリ減量処理等海成分の溶出時もしくはその前にリラックス工程等の湿熱処理をすることで構成する島成分の熱収縮率差によりフィラメントに微捲縮が生じ、海成分を溶出した織編物に対し、この微捲縮に由来するストレッチ性を付与することができる。優れたストレッチ性を得る観点からは、海成分の溶出前に湿熱処理を行うことがより好ましい。このストレッチ性は天然シルクでは得られない性質であり、これにより得られる織編物にシルクを超える機能を付与することができる。織編物の伸長率は、上記湿熱処理後、海成分の溶出前に中間セットを適宜な条件で行うことで、制御することができる。織編物の伸長率を3%以上25%以下、さらには8%以上13%以下の好ましい範囲とすることにより、シルクの様なナチュラルな光沢感をより一層効果的に付与することができるのみならず、縫製加工性もより一層改良し得るため好ましい。
【0030】
島成分数については、2個以上であれば特に限定されるものではないが分割数が増えるに伴い、得られる繊維間空隙が小さくなることに加えて、織編物として加工する際、アルカリ減量前に湿熱処理をすることでフィラメントに生じる微捲縮が低下する観点から2個が好ましく、実質的な分割数の上限値は10個となる。
【0031】
本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維を構成する島成分および海成分としては、熱可塑性ポリマー同士であると加工性に優れるため、繊維を構成するポリマー群としては、例えばポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などのポリマー群およびその共重合体が好ましい。特に高い界面親和性を付与することができ、複合断面異常のない繊維が得られるという観点から、該海島複合繊維に用いる熱可塑性ポリマーは全て同ポリマー群およびその共重合体であることが好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
【0032】
ここで本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維は、織り編み等の高次加工を施した後、海成分を溶出して島成分に由来する2種以上の異形断面を有する熱可塑性フィラメントからなる混繊糸を得るものである。このため、海成分の溶出に用いる溶剤に対して、島成分が難溶出、海成分が易溶出となることが好ましく、用途に応じて島成分の組み合わせを選定しておき、そこから用いることができる溶剤を鑑みて前述のポリマーの中から海成分を選定すると好適である。この際、難溶出成分(島成分)と易溶出成分(海成分)の溶剤に対する溶出速度比が大きいほど好適な組み合わせと言え、溶出速度比が3000倍までの範囲を目安にポリマーを選択すると良い。
【0033】
海成分としては、例えば、ポリエステルおよびその共重合体、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリエチレン、ポリビニールアルコールなどの溶融成形可能で、他の成分よりも易溶出性を示すポリマーから選択することが好適である。また、海成分の溶出工程を簡易化するという観点では、海成分は、水系溶剤あるいは熱水などに易溶出性を示す共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリビニールアルコールなどが好ましい。特に、結晶性を維持しながらもアルカリ水溶液などの水系溶剤に対して易溶出性を示し、かつ加熱下で擦過が付与される仮撚り加工等においても、複合繊維間の融着等が起こらず高次加工通過性がよいという観点から、5-ナトリウムスルホイソフタル酸が全ジカルボン酸に対し5mol%から15mol%が共重合されたポリエステルおよび前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500から3000のポリエチレングリコールが5wt%から15wt%の範囲で共重合されたポリエステルが特に好ましい海成分として挙げられる。
【0034】
本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維においては、分割された島成分の収縮差を利用して膨らみを発現することが目的であるため、島成分の熱可塑性ポリマーの組合せとしては、島成分1を高収縮の低融点ポリマーとし、島成分2を低収縮の高融点ポリマーとして使用することが好ましく、このような低融点ポリマーと高融点ポリマーの組合せとしては、例えばポリエステル系として共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性ポリウレタン/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー/ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系としてナイロン6-ナイロン66共重合体/ナイロン6または610、PEG共重合ナイロン6/ナイロン6または610、熱可塑性ポリウレタン/ナイロン6または610、ポリオレフィン系としてエチレン-プロピレンゴム微分散ポリプロピレン/ポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体/ポリプロピレンなどの種々の組み合わせが挙げられるが、本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維において、シルクに近い曲げ剛性とできるのみならず、染色した際に良好な発色性が得られるという観点から、分割される島成分はポリエステル系の組合せとすることが特に好ましいものとして挙げられる。また共重合ポリエチレンテレフタレートにおける共重合成分としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートとの収縮差を最大化できるという観点からは、イソフタル酸を全ジカルボン酸に対し5mol%から15mol%が共重合されたポリエチレンテレフタレートとすることが好ましい。
【0035】
また、本発明において植物由来のバイオポリマーやリサイクルポリマーを用いることも好適なことであり、上記した本発明に用いられるポリマーは、ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクルおよびサーマルリサイクルのいずれの手法で再資源化されたリサイクルポリマーを用いることができる。バイオポリマーやリサイクルポリマーを用いる場合にも、ポリエステル系樹脂はそのポリマー特性として、本発明の特徴を顕著化することができ、上記した通り、天然シルクに近い曲げ剛性や良好な発色性が得られるという観点からリサイクルポリエステルは本発明に好適に用いることができる。
【0036】
本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維において、島成分を溶出した後の風合いをより柔軟にするという観点から、本発明の織編物に含まれる混繊糸を形成し得る海島複合繊維の海成分を溶出して得られる異形断面を有する熱可塑性フィラメントの単糸繊度は3dtex以下とすることが好ましい。ここで言う単糸繊度(dtex)とは、繊維の単位長さの重量を複数回測定した平均値から、10000m当たりの重量を算出した値を、該繊維のフィラメント数で割った値を意味する。
【0037】
さらに単糸繊度を2dtex以下とすることで、シルクの単糸繊度である約1dtexに近づき、よりシルクに近い肌触りを得ることができるため、肌に触れるインナーやシャツ、ブラウス等の一般衣料用途に好適な範囲となる。ただし、単糸繊度が0.5dtex未満になると、繊維径が細すぎることから曲げ剛性や曲げ回復性が低下し、シルク風合いの一つである反発感が損なわれる場合があることから、単糸繊度の下限値は0.5dtexであることが好ましい。
【0038】
本発明の織編物は、上記のようにして得られた混繊糸を形成し得る海島複合繊維を用いて製編織し、必要に応じて精練し、その後海成分を溶出することにより、得ることができる。また、上記のとおり、海成分の溶出前に湿熱処理をすることで構成する2以上の島成分の熱収縮率差によりフィラメントに微捲縮が生じる。この湿熱処理は、液流染色機等を用いて行うことができる。温度時間は含まれるポリマーの潜在的な収縮率を拡大できるように設定すればよく、処理温度を上げるほどまた、処理時間が長いほどポリマーの潜在的な収縮率を拡大し微捲縮が発現する。この湿熱処理の後、海島複合繊維の海成分を溶出する前に、中間セットを行うことが好ましい。この中間セットをおこなうことにより、得られる織編物の伸長率を制御することができる。
中間セットは、ピンテンター等の設備で行うことができ、張力、温度及び幅を適宜変更して織編物の表面状態や伸長率を制御することができる。張力を高くすると布帛が伸長されるため伸長率は低下するが、しわが伸ばされ表面品位は向上する傾向にある。また、処理温度を高くするとセット性が向上するが、布帛の熱収縮も大きくなるので伸長率は低下する傾向にある。よって、これらを適宜制御して所望の伸長率とすればよい。
【0039】
海成分の溶出は、液流染色機等を用いて水酸化ナトリウム等の海成分を溶出させる液体中で加工することで行うことができる。
【0040】
さらに本発明の織編物は染色、機能加工、仕上げセットを行ってもよい。本発明の織編物は、これらの後加工工程を経ても湿熱処理で生じた微捲縮が維持されて、織編物にストレッチ性を付与することができる。
【0041】
本発明において上記(1)~(4)を満たす混繊糸を形成し得る海島複合繊維を製織編する際、全ての織編糸が上記海島複合繊維であることが好ましいが、20重量%以上であっても十分な効果を発揮する。例えば織物の場合、本発明で規定する範囲を満たす限り、経糸、緯糸の少なくとも一部、もしくは全部で用いることが可能である。経糸のみ、緯糸のみで用いてもよいが、好ましくは経糸および緯糸の少なくとも一部もしくは全部が上記海島複合繊維を用いることが好ましい。
【0042】
本発明の織編物を繊維製品とすると、シルク特有の様々な風合いを再現した繊維製品を得ることができるのみならず、シルクでは得られない伸長性を付与することも可能であり、これにより天然シルク調の高級感のある光沢や反発感のあるドライな触感を有しつつ、軽やかで柔軟な風合いのバランス良く発現し、かつ、適度な伸度を有し着心地に優れた繊維製品を得ることができさらには、衣料等の繊維製品への仕立てやすさをも兼ね備える。このことから、従来シルクが主に用いられていた洋装や和装はもちろんのこと、合成繊維ならではの取扱い性の容易性も相まって、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
【実施例
【0043】
以下実施例を挙げて、本発明の織編物について具体的に説明する。
【0044】
実施例および比較例については下記の評価を行った。
【0045】
A.糸長差
染色、仕上加工を経た織編物の経方向または緯方向から一定間隔(織編物ベースで5cm採取)の混繊糸を20本採取する。採取した混繊糸を分解し、糸条をガラス板にのせ、グリセリンを微量滴下し、織編構造から形成されるクリンプを伸ばして糸長を測定する。最も長い繊維群と、最も短い繊維群を群分けし、単繊維の長さの差がそれぞれ2%以内のものを同属の繊維群とし、最も短い繊維群の平均長L1最も長い繊維群の平均長L2とし、次の式より算出する。
糸長差(%)=〔(L2-L1)/L1〕×100
【0046】
B.伸長率
カトーテック社製の引張せん断試験機(FB-1)を用いて測定する。
測定条件:織編物から20cm×20cmの試料を採取し、幅20cm、長さ5cmの条件における500g/cm荷重下の伸長率を算出する。
【0047】
C.キシミ感
カトーテック製自動化表面試験機(KES-FB4)を用いて、織編物から採取した20cm×20cmの試料の10cm×10cmの範囲をピアノ線で巻かれた1cm×1cmの端子に50gの荷重をかけて、1.0mm/secの速さで滑らすことで平均摩擦係数MIUを求めた。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を摩擦係数とした。得られた摩擦係数からドライ感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
A:優れたドライ感(0.6≦摩擦係数)
B:良好なドライ感(0.3≦摩擦係数<0.6)
C:ドライ感に劣る(摩擦係数<0.3)
【0048】
D.光沢感
光沢感は、村上色彩技術研究所製 自動変角光度計(GONIOPHOTOMETER GP―200型)を用いて、入射角60°の条件で織編物から5cm×5cmで採取した試料に光を入射し、0.1°毎に受光角0°~90°での光強度を二次元反射光分布測定にて求め、受光角60°付近における最大光強度(鏡面反射)を受光角0°付近における最小光強度(拡散反射)で割った値を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値を対比光沢度とした。得られた対比光沢度から光沢感をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
A:優れた光沢(対比光沢度<1.6)
B:良好な光沢(1.6≦対比光沢度<2.0)
C:光沢に劣る(2.0≦対比光沢度)
【0049】
E.しなやかさ
柔軟性は、カトーテック製純曲げ試験機(KES-FB2)を用いて、織編物から採取した20cm×20cmの試料を有効試料長20cm×1cmで把持し、緯糸方向に曲げたときの、曲率Kが±0.5と±1.5cm-1の単位幅当たりの曲げモーメント(gf・cm/cm)を曲率(cm-1)で除した値を算出した。この動作を1箇所あたり3回行い、これを合計10箇所について行った結果の単純な数平均を求め、小数点第4位を四捨五入した後に100で割った値を曲げ硬さB×10-2(gf・cm/cm)とした。得られた曲げ硬さB×10-2から柔軟性をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。

A:優れた柔軟性(曲げ硬さB×10-2≦1.0)
B:良好な柔軟性(1.0<曲げ硬さB×10-2≦2.0)
C:柔軟性に劣る(2.0<曲げ硬さB×10-2
【0050】
F.可縫性
織編物を2枚重ねて、ミシンで縫製した際のパッカリング(縫い縮み)の状態をそれぞれ次の基準に基づき3段階判定した。
A:優れた可縫性(パッカリングが確認されない)
B:良好な可縫性(ややパッカリングしている)
C:可縫性に劣る(パッカリングが目立つ)
【0051】
G.ふくらみ感
実施例で作成した織編物のふくらみ感について、次のとおりの判定を行い、無作為に選んだ10人による評価において、その評価結果の最も多い判定を結果とした。最も多い判定結果が複数ある場合、その中間の評価とした。
A:ふくらみ感をとても感じる
B:ふくらみ感をある程度感じる
C:ふくらみ感をほとんど感じない
【0052】
H.耐摩耗性
織編物を黒色に染色し、染色後の織物を直径10cmの円形に切り出し、蒸留水で湿潤させて円盤に取り付けた。更に30cm角に切り出した織物を乾いたまま水平の板の上に固定した。蒸留水で湿潤させた織物が取り付けられた円盤を水平な板の上に固定された織物に対して水平に接触させ、円盤の中心が直径10cmの円を描くように、50rpmの速度で10分間円盤を円運動させ、2枚の織物を摩擦させた。摩擦終了後4時間放置してから、円盤に取り付けた織物の変褪色の程度を、変褪色用グレースケールを用い、0.5級刻みで1~5級の級判定を実施した。得られたフロスティング級数の結果から耐摩耗性を次の基準に基づき3段階判定した。
A:優れた耐摩耗性(フロスティング級数:4級以上)
B:良好な耐摩耗性(フロスティング級数:3級または3-4級)
C:耐摩耗性に劣る(フロスティング級数:3級未満)
【0053】
[実施例1]
ポリマーAとして、5-ナトリウムスルホイソフタル酸を全ジカルボン酸成分に対し8mol%、ポリエチレングリコールを全重量に対し9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:100Pa・s、融点:233℃)、ポリマーBとしてイソフタル酸を全ジカルボン酸成分に対し7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマーCとしてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0054】
これらのポリマーを290℃で別々に溶融後、ポリマーA/ポリマーB/ポリマーCを重量比で30/35/35となるように計量して、図2に示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、図1に示すような楕円形状の海島複合繊維であって、難溶出成分から構成される島成分b1,b2を易溶出成分から構成される海成分aが完全に被膜しており、島成分b1、b2が海成分aにより分断され、分断された島成分b1と島成分b2がそれぞれ三葉断面の凸部先端に溝を有した複合構造となるように、吐出孔から流入ポリマーを吐出した。この時、海成分aがポリマーA、島成分b1がポリマーB、島成分b2がポリマーCとなるように配置した。図2は上記複合口金の断面概念図であり、計量プレート1で計量されたポリマー1~3がそれぞれ分配プレート2によって、単繊維の断面における複合断面およびその断面形状を制御され、吐出プレート3によって、分配プレート2で形成された複合ポリマー流を圧縮して、吐出する。
【0055】
吐出された複合ポリマー流を冷却固化した後、紡出糸に油剤を付与し、紡糸速度1500m/minで巻取り、90℃と130℃に加熱したローラー間で延伸を行うことで、56dtex-18フィラメントの海島複合繊維を製造した。
【0056】
得られた海島複合繊維をS方向に1300T/Mの撚りを施し、この繊維を経糸及び緯糸としてウォータージェットルームを用いて、経糸密度185本/2.54cm、緯糸密度110本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物を連続精練し、液流染色機で130℃、30分のリラックス加工を施し、180℃、1分間、幅出し率1%の条件の中間セットを経て、液流染色機で1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて100℃に加熱し海成分を除去した(減量率33%)。その後通常の染色仕上げ加工を施し、経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
実施例1と同様の方法でサテン織物を得た後、液流染色機で130℃、30分のリラックス加工を行わないこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で海島複合繊維を製造した。緯糸としてS方向に1300T/Mの撚りを施した56dtex-48フィラメントのセミダルポリエステル糸であるポリエチレンテレフタレート繊維を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度125本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で海島複合繊維を製造し、その繊維を用いて40Gの丸編み機を用いてスムース組織の編物を得た。得られた編物を連続精練し、液流染色機で1重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて100℃に加熱し海成分を除去した(減量率33%)。その後、液流染色機で130℃30分のリラックス加工を施し中間セットした後、通常の染色仕上げ加工を施してスムース編物を得た。得られた編物の評価結果を表1に示す。
【0060】
[実施例5]
図1に示すような楕円形状の海島複合繊維から、島成分の凸部頂点の溝をなくしたこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0061】
[実施例6]
ポリマーCとしてケミカルリサイクルポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例1]
ポリマーBとしてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度205本/2.54cm、緯糸密度120本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例2]
図3に示すように断面形状を楕円形状とした海島複合繊維で、島成分が凸部を有さない円形の断面としたこと以外は実施例1と同様の方法で経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0064】
[比較例3]
ポリマーAとしてイソフタル酸を7mol%共重合したポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET、溶融粘度:140Pa・s、融点:232℃)、ポリマーBとしてポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:130Pa・s、融点:254℃)を準備した。
【0065】
これらA、Bの各ポリマーをそれぞれ単独で用いて、290℃溶融後、実施例1と同様の紡糸機を用いて図1のb1に示すような三葉断面の凸部先端に溝を有した19.6dtex-18フィラメントの単成分繊維(単独糸)をそれぞれ製造した。
【0066】
上記の単成分繊維をそれぞれインターレース混繊し39.2dtex-36フィラメントの複合繊維を得た。
【0067】
得られた複合繊維を用いて実施例1と同様の方法で撚糸、製織し経糸密度185本/2.54cm、緯糸密度110本/2.54cmのサテン織物を得た。また、得られた織物を実施例1と同様の方法で加工して経糸密度235本/2.54cm、緯糸密度135本/2.54cmのサテン織物を得た。得られた織物の評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すとおり、実施例1~3、5、6の織物、あるいは実施例4の編物については、キシミ感、光沢感、可縫性、ふくらみ感、耐摩耗性が優れていることが分かる。中でも、実施例1及び実施例6の織物は、海島複合繊維を経糸および緯糸に用い、かつ伸長率を好ましい範囲に制御していることから、キシミ感、光沢感、可縫性、ふくらみ感、耐摩耗性のすべてにおいて優れる、極めて実用性の高い、優れた織物であった。一方、比較例1の織物は、糸長差が2%と低いことから、ふくらみ感に劣るペーパーライクなものであった。また、比較例1、3の織物は、伸長率が2%、1%と衣料に用いた際には快適な着心地が得られる水準のものではなく、さらに伸長率が低いことから可縫性、つまり、衣料への仕立てやすさについて劣るものであった。また、比較例2の織物は、シルク調の高級感の光沢及び、シルク調のドライ感のある触感や絹鳴り効果に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の織編物は、天然シルクのような高級感のある光沢やドライな触感、ふくらみ感、軽やかで柔軟な風合いを有しつつ、適度な伸度により着心地や服の仕立てやすさに優れているため、従来天然シルクが主に用いられていた洋装や和装はもちろんのこと、ジャケット、スカート、パンツ、下着などの一般衣料から、スポーツ衣料、衣料資材、カーペット、ソファー、カーテンなどのインテリア製品、カーシートなどの車輌内装品、化粧品、化粧品マスク、ワイピングクロス、健康用品などの生活用途など多岐に渡る繊維製品に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
a 海成分
b1 島成分
b2 島成分
1 計量プレート
2 分配プレート
3 吐出プレート
図1
図2
図3