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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ソーラーパネル及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G04C 10/02 20060101AFI20231212BHJP
   G04G 19/00 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 31/0352 20060101ALI20231212BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20231212BHJP
【FI】
G04C10/02 A
G04G19/00 B
H01L31/04 340
H01L31/04 240
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019196874
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071330
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 雄太
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/031596(WO,A1)
【文献】特開2019-164112(JP,A)
【文献】特開2001-250971(JP,A)
【文献】特開2000-187204(JP,A)
【文献】特開2001-267604(JP,A)
【文献】特開昭56-077885(JP,A)
【文献】国際公開第2005/071760(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 10/02
G04G 19/00
H01L 31/0352
H01L 31/0216
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの視認側に重畳配置されるソーラーパネルであって、
光を透過させる透過領域と、
光によって発電し、前記表示パネルの表示領域に対応する部分に透過発電領域を少なくとも有する第1の発電部と、前記透過発電領域を有しない第2の発電部で構成される発電部と、
前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成され、前記透過領域を通り前記表示パネルで反射した光のうち、前記発電部へ入射する光の反射を防ぐ反射防止部と、
を備え
前記第1の発電部の面積は、前記第2の発電部の面積より大きいことを特徴とするソーラーパネル。
【請求項2】
前記第1の発電部における前記透過発電領域内には、線状に形成された電部である細線発電部が設けられ
前記反射防止部は、前記細線発電部における前記表示パネルに対向する面に形成されていることを特徴とする請求項に記載のソーラーパネル。
【請求項3】
前記第1の発電部と前記第2の発電部との間には、それぞれの発電部を分割する分割領域が設けられ、
前記分割領域の幅は、前記透過領域の幅と略等しいことを特徴とする請求項1または2に記載のソーラーパネル。
【請求項4】
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成された光吸収体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項5】
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面に光を拡散させる加工を施した光拡散部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項6】
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面で光が鏡面反射することを防ぐ加工を施してあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項7】
前記反射防止部は、400nmから800nmの光の反射率を40%以下とする加工を施してあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルの非視認側に配置される表示パネルと、
前記ソーラーパネル及び前記表示パネルを収容する本体ケースと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
表示パネルの視認側に重畳配置されるソーラーパネルであって、
光を透過させる透過領域と、
光によって発電する発電部と、
前記発電部における前記表示パネルに対向する面にのみ形成され、前記透過領域を通り前記表示パネルで反射した光のうち、前記発電部へ入射する光の反射を防ぐ反射防止部と、
を備えていることを特徴とするソーラーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネル及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光を受光して発電するソーラーパネルを備える時計等の電子機器(電子時計)が広く知られている。
この場合に、ソーラーパネルによる発電量を多く確保するため、電子機器における表示部が設けられている位置等にも発電部を配置して、効率よく発電を行うことが考えられる。
具体的には例えば、細線化された発電部と光を透過させる光透過部とを交互に配置して外部から視認されにくく構成したソーラーパネルを配置する。これにより、ソーラーパネルが電子機器の外観を損ねることがないとともに、ソーラーパネルの下方に配置された表示部の視認性も確保することができる。
【0003】
このようなソーラーパネルでは、細線化された発電部の、表示部に対向する側の面には金属の電極層が配置され鏡面反射が起こりやすい状態となっている。
また例えば、特許文献1には、細線化された発電部の、表示部に対向する側の面を、あえて白インキや白ペンキ、又はミラー効果をもつアルミニウムやクロムの金属メッキのような、光を反射する層で被覆することで表示部の画像の光度を増大させる技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2015-527605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように発電部の裏面で鏡面反射が起こるような構成を採った場合、光の反射により位置の異なる画像が重なって表示される領域が発生したり、暗くなっている領域のすぐ隣に他の領域よりも光の密度が高くなり明るくなる領域が発生したりする。
このため、表示部に表示されている情報の視認性が低下し、ユーザにとって見づらく違和感のある表示になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、表示パネルに重畳配置された場合にも表示部の視認性を損なわず、かつ効率よく発電を行うことができるソーラーパネル及び電子機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るソーラーパネルは、
表示パネルの視認側に重畳配置されるソーラーパネルであって、
光を透過させる透過領域と、
光によって発電し、前記表示パネルの表示領域に対応する部分に透過発電領域を少なくとも有する第1の発電部と、前記透過発電領域を有しない第2の発電部で構成される発電部と、
前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成され、前記透過領域を通り前記表示パネルで反射した光のうち、前記発電部へ入射する光の反射を防ぐ反射防止部と、
を備え
前記第1の発電部の面積は、前記第2の発電部の面積より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ソーラーパネルが表示パネルに重畳配置された場合にも表示部の視認性を損なわず、かつ効率よく発電を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における時計の正面図である。
図2】本実施形態におけるソーラーパネルの平面図である。
図3図2に示すソーラーパネルにおける電荷の移動方向の例を示す説明図である。
図4図2におけるIV-IV線に沿う断面図である。
図5】従来の構成のソーラーパネルに光が入射した場合の反射状況を説明する説明図である。
図6】本実施形態の構成のソーラーパネルに光が入射した場合の反射状況を説明する説明図である。
図7】本実施形態の一変形例の構成においてソーラーパネルに光が入射した場合の反射状況を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図6を参照しつつ、本発明に係るソーラーパネル及びこれを適用した電子機器としての電子時計の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態における電子機器としての電子時計(以下単に「時計」とする。)を示す正面図である。
図1に示すように、本実施形態における時計100は、ケース(以下、実施形態において「本体ケース1」とする。)を備えている。本体ケース1は、例えば硬質の合成樹脂又はチタニウムやステンレス鋼(SUS)等の金属等、硬質な材料で形成されている。なお、本体ケース1を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
本実施形態の本体ケース1は、ケース厚み方向における上下(時計における表裏)に開口する中空の短柱形状に形成されている。
【0012】
本体ケース1の図1における上下両端部、つまりアナログ方式の時計における12時方向側の端部及び6時方向側の端部には、図示しない時計バンドが取り付けられるバンド取付け部11が設けられている。
また、時計100は、本体ケース1の側部等に操作ボタン12を備えている。図1に示す例では、本体ケース1の左側部に2つ、右側部に3つ、計5つの操作ボタン12が配置されている。
本体ケース1の表面側(時計における視認側、上側)の開口には、透明なガラス等で形成され、光透過性を有する風防部材3が開口部分を覆うように設けられている。
また、本体ケース1の裏面側には、開口部分を閉塞する図示しない裏蓋が取り付けられている。
【0013】
本実施形態において風防部材3の下面(本体ケース1の内側に配置される面)側の外周部はリング状の装飾部(図示せず)となっていることが好ましい。装飾部として、光透過性を阻害しない手法により全体に総柄模様や着色等を施し、各種のロゴ等の文字や記号、目盛等を設けることで、本体ケース1の内部に収容される表示部4やソーラーパネル5等の外周部の接続部等を覆って外部から視認されないようにする目隠しの機能を持たせることができる。
なお、装飾部の形成の仕方は特に限定されず、例えば風防部材3の下面に印刷や各種蒸着等を施すことで形成される。
【0014】
また、本実施形態における本体ケース1の内部には、電子機器としての時計100の各部を動作させるモジュール(計時処理を実行する計時部である計時回路等を含む時計モジュール、図示せず)が収容されている。
モジュールの上方(時計における視認側、表面側)であって風防部材3との間には、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成される表示パネル41(図6参照)を備える表示部4が設けられている。表示パネル41は、後述するソーラーパネル5の下側(すなわち非視認側)に配置される。
【0015】
なお、表示パネル41の構成は特に限定されない。例えば表示パネル41は反射型の液晶ディスプレイでもよいし、バックライトによる透過型の液晶ディスプレイでもよい。
図1では図示を省略しているが、表示部4には、時刻や各種の情報等が表示されるようになっている。
また、表示部4の構成は、特に限定されず、文字板及び指針等を備えるアナログ方式の表示手段を有するものであってもよい。また、液晶パネル等を備えて構成されるデジタル方式の表示手段とアナログ方式の表示手段とを両方を有するものでもよい。
なお、前述のように、表示部4の外周部(外周端縁等)は装飾部によって被覆されており、外部から視認されないようになっている。
本実施形態では、装飾部の内側の領域(図1において白抜きで示すほぼ円形の領域)が、表示部4において外部から視認される視認領域VArとされる。
【0016】
表示部4(表示パネル41)と風防部材3との間にはソーラーパネル5が配置されている。すなわち、ソーラーパネル5は、図1に破線で示すように、表示部4(表示部4の表示パネル41)の視認側(時計100における表面側)に重畳配置されている。例えば、ソーラーパネル5は、図示しない両面テープ等により風防部材3の裏面側に配置される。
図2は、本実施形態におけるソーラーパネルの平面図である。
ソーラーパネル5は、光を受光することで発電する太陽電池として機能する発電部51(細線発電部51aを含む)を備えており、ソーラーパネル5により光発電を行って得られた発電電力は図示しない二次電池に蓄えられる。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のソーラーパネル5は、板形状の面方向に延在する帯状に形成されたセル(ソーラーセルC)が、延在方向Lに直交するセル幅方向Wに複数並列配置されて構成されている。
ソーラーセルC同士は、分割領域53によって分けられている。本実施形態では、分割領域53は延在方向Lの一端から他端に亘って後述の透過領域52の幅と等しい幅の帯状に形成されている。
【0018】
ソーラーパネル5は、ソーラーセルCの延在方向Lの端部においてソーラーセルC同士を直列に電気的に接続する接続部54を有している。
接続部54は、ソーラーセルC同士を分ける分割領域53を跨ぐように配置されている。
各ソーラーセルCがそれぞれ接続部54において接続されることで、一体としてソーラーパネル5が構成される。
本実施形態において、接続部54は、前述の視認領域VArよりも外側に配置され、外部から視認されないようになっている。
また、ソーラーパネル5は、2つの端子部55を備えている。一方側の端子部55は、モジュール等に設けられた図示しない基板上の+電極と電気的に接続され、他方側の端子部55は、基板上の-電極と電気的に接続される。
端子部55の配置は特に限定されないが、図2等ではソーラーセルC2とソーラーセルC4の端部にそれぞれ配置されている例を示している。
【0019】
ソーラーパネル5がいくつのセル(ソーラーセルC)で構成されるかは特に限定されない。図2では、8つのセルC(図2においてソーラーセルC1~C8)を直列接続してソーラーパネル5が構成される例を示している。
直列接続されるソーラーセルCの数が多いほどソーラーパネル5全体としての電圧が高くなる。このため、ソーラーパネル5を構成するソーラーセルCの数は、ソーラーパネル5によって発電された発電電力を蓄える二次電池の電圧等、必要とされる電圧レベルに応じて適宜設定されることが好ましい。
【0020】
ソーラーセルC1~C8のうち、少なくとも一部のソーラーセルCは、光によって発電する発電部51と光を透過させる透過領域52とが延在方向Lに沿って延在し交互に配列された透過発電領域SArを含んでいる。
本実施形態では、ソーラーセルCのうち、少なくとも外部から視認される前述の視認領域VArに対応して配置される部分が、透過発電領域SArとして構成される。
透過発電領域SAr内において発電部51は、一定のピッチで配列されている。
例えば、発電部51のうち、透過発電領域SAr内に配置される発電部51は、透過領域52よりも幅の狭い細線状に形成されている細線発電部51aとなっている。
透過発電領域SAr内に配置される細線発電部51aのピッチを揃えることで、外部から表示部4を目視した際に、ソーラーセルCが表示部4の表示パネル41(図6参照)よりも上側(視認側、表面側)に配置されていても面全体として均一の明るさになるため細線発電部51aが目立たず、表示部4の視認性がよく、見栄えのよい外観を実現することができる。
なお、実施形態において、単に「発電部51」と記載したときは、細線発電部51a及びこれ以外の発電部51の両方を含むものとする。
【0021】
細線発電部51aの細さ(セル幅方向Wの寸法)は特に限定されないが、例えば、透過領域52の細さ(セル幅方向Wの寸法)が70μm程度であるときに、10μm程度である。
なお、細線発電部51aの幅(セル幅方向Wの寸法)を小さく(細く)し、透過領域52の幅(セル幅方向Wの寸法)を大きく(太く)するほどソーラーパネル5の透過発電領域SArにおける透過度が高くなり表示部4の視認領域VArの視認性は向上する。一方で細線発電部51aの幅が小さくなるほど発電量が少なくなるとともにソーラーセルC内を電荷が移動する際の抵抗が大きくなり発電効率が低下する。
このため、細線発電部51aの幅及び透過領域52の幅は、表示部4の視認領域VArに求められる視認性の程度(すなわち、視認領域VArに対応して設けられる透過発電領域SArの透過性の程度)とソーラーパネル5に求められる発電量、発電効率の程度との兼ね合いから適宜設定される。
【0022】
なお、複数のソーラーセルCを直列接続して1つのソーラーパネル5を構成する場合、各ソーラーセルC間の出力電流値に差が生じると、ソーラーパネル5の出力電流値は各ソーラーセルCのうち最も出力電流値の小さいソーラーセルCに合せて小さくなってしまう。
このため、発電効率を上げるために、各ソーラーセルCの発電部51の面積ができるだけ等しくなるように構成することが好ましい。
本実施形態では、図2に示すように、例えば、ソーラーセルCのほぼ全体に発電部51が形成されているソーラーセルC1,C8の面積は小さく、ソーラーセルCのうち多くの領域が透過発電領域SArにあたり、細線発電部51aが多いソーラーセルC4,C5の面積は比較的大きくなっており、細線発電部51aを含むソーラーセルC内の発電部51全体の面積が各ソーラーセルC1~C8でほぼ等しくなるように調整されている。
【0023】
なお、例えば装飾部の一部に金属パーツで形成されたロゴマーク等を設ける等、発電部51の一部が光透過性の低い部材等で覆われるような場合、光透過性が低くなった部分の発電部51の発電量が低下する。
この場合に、透過発電領域SAr内の細線発電部51aのピッチ等を変えて対応すると、目視した際に縞が目立ってしまう等外観や視認性への影響が大きい。
このため、透過発電領域SAr以外の発電部51(視認領域VArに対応する部分の外側に配置される発電部51)の形状を変更する等により、ソーラーセルC間の発電部51全体の面積がほぼ等しくなるように調整することが好ましい。この場合、ソーラーセルCは、端部において先細り形状となったり、先太り形状となったり、湾曲形状となる等、ソーラーセルCの全体形状が本実施形態に図示したような完全な帯状や短冊状とはならない場合もありうる。
【0024】
また、図3は、本実施形態における電荷の移動方向を模式的に示す説明図である。
本実施形態では、図3に示すように、ソーラーセルC1からC8まで、ソーラーセルCの延在方向Lの一端から他端に向かって電荷が交互に移動するように、各ソーラーセルC間を繋ぐ接続部54が延在方向Lにおける一側の端部及び他側の端部のいずれかに交互に配置されている。
なお、図3に示す配置、構成は一例であり、接続部54は、その全てが延在方向Lにおける一側の端部及び他側の端部のいずれかに交互に配置されている必要はない。接続部54は、少なくとも一部に透過発電領域SArがセル幅方向Wの全体に亘って設けられている部分を有するソーラーセルC同士が連続して配置される場合に、延在方向Lにおける一側の端部及び他側の端部のいずれかに交互に配置されていればよい。
【0025】
図4は、図2におけるIV-IV線に沿う断面図である。
図4に示すように、ソーラーパネル5は、基材50の上に発電部51、透過領域52及び各ソーラーセルCを分割する分割領域53が設けられたものである。
このうち発電部51は、基材50の上に透過電極511が形成され、その上に半導体層512、裏面電極513が順に積層された積層構造となっている。なお、この積層構造の上から基材50の全体を被覆するように透過な封止材(保護層)が設けられていてもよい。
また本実施形態において、裏面電極513の上側(すなわち、ソーラーパネル5を時計100に組み込んだ際に、発電部51における表示パネル41に対向する面側)には、表示パネル41側から発電部51に入射する光の反射を防ぐ反射防止部として光吸収層515が設けられている。なお、上述の保護層を設ける場合、光吸収層515は保護層の上下どちらに配置されてもよい。
【0026】
透過領域52及び分割領域53は、透過電極511、半導体層512、裏面電極513がなく、基材50のみの状態となっている領域である。
透過領域52及び分割領域53は、基材50の上に透過電極511、半導体層512、裏面電極513を積層しない領域を残すことで形成してもよいし、基材50の上に透過電極511、半導体層512、裏面電極513を積層した後に適宜これらの層を除去してもよい。透過電極511等を除去する場合、その手法は特に限定されず、例えばレーザーによる加工処理等が用いられる。
【0027】
基材50は、光透過性を有する薄板状の基板であり、例えばフレキシブルなフィルム状の透過プラスチック等である。基材50を形成する材料はここに例示したものに限定されないが、例えば各種の透明な樹脂、ガラス等が適用される。
また、透過電極511は、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等を結晶化させることで形成されている。なお、透過電極511を形成する材料や形成手法はこれに限定されない。
半導体層512は、例えばアモルファスシリコン(a-Si:H)等で形成されている。半導体層512としては、例えばp型半導体とn型半導体とが接合されたpn接合型の半導体が用いられる。
裏面電極513は、例えばアルミニウム導体等の金属材料を含んで形成されている。なお、裏面電極513を形成する材料はこれに限定されない。
半導体層512や裏面電極513は、例えば、基材50の上に蒸着等の手法により積層形成される。なお、基材50上に半導体層512や裏面電極513を設ける手法はこれに限定されない。
【0028】
また、反射防止部である光吸収層515は、発電部51における表示パネル41に対向する面に形成された光吸収体であり、例えば黒色等、光を吸収する効果が認められる濃い色のインクや金属皮膜等で構成される。光吸収層515は表示パネル41側から入射した光の反射を防ぐことのできるものであればよく、光吸収層515を形成する材料は特に限定されない。また、例えば、人間の可視光線とされるおおよそ400nm~800nmの光の反射率を40%以下とするように光を吸収する効果がある光吸収体であればよい。
図4に示すように、光吸収層515は、発電部51のうち、透過発電領域SAr内に設けられている細線発電部51aの裏面電極513の上に配置される。裏面電極513は、例えばアルミニウムやSUS等で形成されているため、何も加工しない状態では鏡面状態であり、裏面電極513に入射した光が鏡面反射する。光吸収層515は細線発電部51aの裏面電極513に入射する光を吸収することで裏面電極513で光が反射することを防止し、ユーザが表示部4を見たときの違和感や見え辛さを解消する。
なお、光吸収層515を形成する手法は特に限定されない。光吸収層515は細線発電部51aに対応して設けられるものであり、当該領域をはみ出して形成されると表示パネル41の視認性を損ねたり、黒っぽい線が現れて目立ってしまう。このため、細い領域内に正確に施されることが好ましく、例えばフォトリソグラフィやナノインプリント等、細かいパターニングにより生成することのできる膜であることが好ましい。
【0029】
次に、本実施形態におけるソーラーパネル5及びこれを備える電子機器としての時計100の作用について説明する。
本実施形態においてソーラーパネル5は、時計100の視認側に配置された表示部4(表示部4の表示パネル41)の上側に載置される。このとき、表示部4の視認領域VArに透過発電領域SArが対応するようにソーラーパネル5を配置する。
透過発電領域SArは、細線発電部51aと透過領域52の長手方向をそろえて配列することで構成されている。このため、表示部4の上側にソーラーパネル5を配置しても表示部4の視認性が損なわれないとともに、表示部4の上側にも発電部51を確保できるため、表示部4の外周部にのみ発電部を配置する場合に比べて、発電量を増大させることができる。
【0030】
時計100の視認側であって表示部の上側にソーラーパネル5を配置することで、風防部材3を介して光が入射した際、ソーラーセルC1~C8の発電部51において効率よく光発電が行われる。各ソーラーセルCは接続部で接続されて1つのソーラーパネル5として構成され、ソーラーパネル5全体としての発電により得られた電力は二次電池に蓄えられる。そして、二次電池からモジュールのモータ等の各種動作部に十分な電力が供給されて時計100が駆動する。
【0031】
さらに、本実施形態では、細線発電部51aにおいて表示パネル41と対向する面に、光を吸収する光吸収層515が設けられる。
これにより、細線発電部51aの裏面側(表示パネル41と対向する面側)に配置された裏面電極513に入射した光が裏面電極513で反射して表示部4の見え辛さを生じさせることを防止する。
ここで、光吸収層515を設けない場合と設けた場合との光の反射状況の差異を図5及び図6を参照しつつ説明する。
図5及び図6では、図2において領域VIとして囲った部分の光の反射状況を模式的に示している。
【0032】
図5は、ソーラーパネル5aの裏面電極513に反射を防止する加工を施さず、裏面電極513における表示パネル41と対向する面が白色又は銀色の鏡面又はそれに近い平滑な面状態となっている場合を示している。なお、図5における左横の太線下向き矢印は光の入射方向を示している。また、図5において入射する光を実線、反射光を破線で示している。
この場合、表示パネル41上に表示される画像を図中左側から模式的に点A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N,Oとして表したとすると、例えば図5におけるD点近傍では、入射した光が表示パネル41の表面(D点)で反射した本来の反射光RD1の他に、一旦表示パネル41の表面(C点)で反射した反射光が裏面電極513の裏面で反射し、さらに表示パネル41の表面(D2点)で反射した反射光RD2(再反射光)が現れる。
この場合、ユーザの目には反射光RD1と反射光RD2とが届き、表示が重なった状態で視認される。
【0033】
また、例えば図5におけるM点近傍では、入射した光は細線発電部51aに阻まれて表示パネル41の表面(M点)に到達せず本来の反射光は発生しないが、一旦表示パネル41の表面(L点)で反射した反射光が裏面電極513の裏面で反射し、さらに表示パネル41の表面(M2点)で反射した反射光RM2(再反射光)が現れる。
この場合、本来の反射光が現れずに暗くなる領域の隣に、本来現れないはずの反射光RM2によって明るくなる領域が現れる。このため、ユーザの目には不自然な明度差が視認される。
【0034】
これに対して図6は、裏面電極513に光吸収層515を設けた場合を示している。なお、図6における左横の太線下向き矢印や、図中における実線・破線の別等は図5と同様である。
図6に示すように、裏面電極513に光吸収層515を設けた場合には、表示パネル41側から裏面電極513に入射した光が光吸収層515によって吸収され、本来発生すべき反射光以外の反射光(例えば図5における反射光RD2や反射光RM2)を発生させない。
このため、本来の表示位置の表示を偽ることなくユーザに届けることでき、自然で視認性のよい表示を行うことができる。なお入射した光が細線発電部51aに阻まれて表示パネル41に届かない箇所では画像の一部に欠けが生じるが、自然な表示を行うことができるため、ユーザは欠けた表示のイメージ補完がしやすくなり、結果として表示部4の視認性が向上する。
また、光吸収層515を設けることによって本来現れない箇所に反射光が現れることも防止できる。このため、細線発電部51aの裏面の裏面電極513による反射によって発生していた光の密度の明暗差も緩和される。図5に示す構成では、前述のように本来の反射光が現れずに暗くなる領域の隣に、本来現れないはずの反射光RM2によって明るくなる領域が現れることで、暗い領域と明るい領域が交互に発生して縞模様等が視認されるが、本実施形態の構成では、縞模様等が発生せず、違和感のない視認性の高い表示画面をユーザに提供することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、表示パネル41の視認側に重畳配置されるソーラーパネル5に、光を透過させる透過領域52と、光によって発電する発電部51と、発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41に対向する面に形成され、光を透過させる透過領域52を通り、表示パネル41で反射したのち、発電部51(細線発電部51a)に入射する光の反射を防ぐ反射防止部としての光吸収層515を設けている。
このように、ソーラーパネル5を表示パネルの視認側に重畳配置するため、ソーラーパネル5の発電効率を向上させ発電量を増大させることができる。
そして、ソーラーパネル5を表示パネル41に重畳した場合にも、光吸収層515によって本来の入射光に対応しない反射光が発生するのを防止するため、表示パネル41において良好な視認性を確保することができる。
これにより、ソーラーパネル5の発電効率と表示パネル41の視認性とを両立させることが可能である。
【0036】
また、本実施形態では、発電部51のうち、表示パネル41の表示領域(視認領域VAr)に対応する部分は、外部から発電部51が視認されにくい透過発電領域SArとなっており、反射防止部としての光吸収層515は、透過発電領域SAr内の発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41に対向する面に形成されている。
このように、表示パネル41の表示領域(視認領域VAr)には透過発電領域SArが重畳されるため、表示パネル41の視認性を犠牲にすることなく、ソーラーパネル5の発電効率の向上を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、透過発電領域SAr内の発電部51は細線発電部51aとなっており、反射防止部としての光吸収層515は、細線発電部51aにおける表示パネル41に対向する面に形成される。
このため、発電部51を視認領域VArに対応する部分の上に重畳しても、表示部4の視認性を損なわず、外観にも優れたものとすることができる。そしてこの場合に細線発電部51aに光吸収層515を設けることで、良好な視認性を実現することができる。
【0038】
また、本実施形態では、反射防止部としての光吸収層515は、発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41とに対向する面に形成された光吸収体である光吸収層515である。
これにより、発電部51(細線発電部51a)に表示パネル41側から入射した光が表示パネル41で再反射して視認されるのを効果的に防ぐことができ、優れた視認性を実現することができる。
【0039】
また、反射防止部(本実施形態では、光吸収層515)を、人間の可視光線とされるおおよそ400nmから800nmの光の反射率を40%以下とするように構成した場合には、反射光がユーザに視認されるのを効果的に防ぐことができ、優れた視認性を実現することができる。
【0040】
また、本実施形態のソーラーパネル5を電子機器としての時計100に適用した場合には、表示部4の視認性確保とソーラーパネル5の発電効率の向上とを両立させることができる。
このため、時刻や各種の機能表示等を視認しやすい時計100(電子機器)を実現できるとともに、時計100(電子機器)が多くの電力を必要とする機能部を備える場合にも、ソーラーパネル5により十分な発電量を確保することができる。
【0041】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、反射防止部は、発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41に対向する面に形成され、表示パネル41側から発電部51に入射した光の反射を防ぐことのできるものであればよい。
例えば、反射防止部は、鏡面反射を防止する加工や、発電部51における表示パネル41に対向する面に光を拡散させる加工を施した光拡散部であってもよい。
図7に、発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41に対向する面に反射防止部として光拡散部516を設けた場合を例示する。
光拡散部516は、例えば鏡面状態である発電部51(細線発電部51a)の裏面電極513の表示パネル41に対向する面に表面加工を施すことで、その表面に細かい凹凸を形成する。なお、表面加工の具体的な手法は特に限定されない。例えば光拡散部516は、表面加工を施さない部分にマスクをした上で、層表面を荒らす加工を施すことで形成される。
【0043】
反射防止部をこのような構成とした場合にも、裏面電極513の表示パネル41に対向する面が鏡面状態でなくなり、入射した光を拡散(乱反射)させて、ユーザが表示パネル41を視認したときに影響を与えるような反射光を生じさせないようにすることができる。
これにより、上記の実施形態と同様に、表示部4の表示領域にも発電部51を配置することでソーラーパネル5の発電効率を向上させつつ、表示部4(表示パネル41)の視認性にも影響を与えないソーラーパネル5及びそれを組み込んだ時計100を実現することができる。
【0044】
また、ソーラーパネル5の形状は、上記実施形態に示したほぼ円形状のものに限定されない。
例えば、楕円形状等でもよいし、多角形状等でもよい。
【0045】
さらに、ソーラーパネル5を構成する各ソーラーセルCの形状も、上記実施形態に示したものに限定されない。本実施形態では、図2に示すように、ソーラーセルCが所定方向Lに延在する短冊状である場合を例示したが、ソーラーセルCの分割の仕方はこれに限定されない。
各ソーラーセルCをどのような形状とする場合にも、表示パネル41の視認領域VArと重なる領域に配置される発電部51における表示パネル41に対向する面に反射防止部(例えば光吸収層515)を設ける。
【0046】
また、本実施形態では、細線発電部51aが一定の方向Lに沿って延在する細い直線状に形成された発電部51である場合を例示したが、細線発電部51aの形状はこれに限定されない。
例えば、細線発電部51a同心円状や渦巻き形状、放射線状等に形成されていてもよい。いずれの形状とする場合にも、発電部51(細線発電部51a)における表示パネル41とに対向する面に反射防止部(例えば光吸収層515)を設ける。
【0047】
また、本実施形態では、ソーラーパネル5を時計100に組み込む場合を例示したが、ソーラーパネル5を組み込む電子機器は時計100に限定されない。
ソーラーパネル5により発電を行い、発電された電力を駆動源として動作する機器であれば広く適用することが可能であり、例えば、歩数計、心拍計や脈拍計等の生体情報表示装置、移動距離や移動ペース情報、高度情報や気圧情報等の各種の情報を表示させる電子機器等であってもよい。
【0048】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
表示パネルの視認側に重畳配置されるソーラーパネルであって、
光を透過させる透過領域と、
光によって発電する発電部と、
前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成され、前記透過領域を通り前記表示パネルで反射した光のうち、前記発電部へ入射する光の反射を防ぐ反射防止部と、
を備えていることを特徴とするソーラーパネル。
<請求項2>
前記発電部は、前記表示パネルの表示領域に対応する部分に透過発電領域を有し、
前記反射防止部は、前記透過発電領域内の前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネル。
<請求項3>
前記透過発電領域内の前記発電部は細線状に形成された線状の発電部であり、
前記反射防止部は、前記線状の発電部における前記表示パネルに対向する面に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のソーラーパネル。
<請求項4>
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面に形成された光吸収体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
<請求項5>
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面に光を拡散させる加工を施した光拡散部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
<請求項6>
前記反射防止部は、前記発電部における前記表示パネルに対向する面で光が鏡面反射することを防ぐ加工を施してあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
<請求項7>
前記反射防止部は、400nmから800nmの光の反射率を40%以下とする加工を施してあることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のソーラーパネル。
<請求項8>
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルの非視認側に配置される表示パネルと、
前記ソーラーパネル及び前記表示パネルを収容する本体ケースと、
を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項9>
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のソーラーパネルと、
前記ソーラーパネルの非視認側に配置される表示パネルと、
前記ソーラーパネル及び前記表示パネルを収容する本体ケースと、
を備えることを特徴とする電子時計。
【符号の説明】
【0049】
4 表示部
5 ソーラーパネル
41 表示パネル
51 発電部
52 透過領域
100 時計
C ソーラーセル
L 延在方向
W セル幅方向
SAr 透過発電領域
VAr 視認領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7