(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231212BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231212BHJP
H02K 5/04 20060101ALI20231212BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K7/116
H02K5/04
H02K5/20
(21)【出願番号】P 2019203387
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019025797
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中松 修平
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-112210(JP,A)
【文献】特開2019-004598(JP,A)
【文献】特開2014-054108(JP,A)
【文献】特開2018-043682(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030343(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/116
H02K 5/04
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びるモータ軸を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、
前記モータを収容する収容空間を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容されるオイルと、
前記収容空間内において前記オイルを循環させ前記モータを冷却する油路と、
前記モータ軸の軸方向一方側において前記ロータのシャフトに接続されるギヤ部と、を備え、
前記ステータは、
ステータコアと、
前記ステータコアに巻き付けられるコイルと、を有し、
前記コイルは、前記ステータコアから軸方向両側にそれぞれ突出する一対のコイルエンドを有し、
前記ハウジングは、
前記モータを収容するモータ室が内部に設けられたモータ収容部と、
前記ギヤ部を収容するギヤ室が内部に設けられたギヤ収容部と、
前記ギヤ室と前記モータ室とを区画する隔壁と、を有し、
前記油路は、
前記ハウジングの内部に設けられた流路と、
前記モータの上側に位置し前記ステータコアまたは前記コイルエンドに前記オイルを供給するオイル供給構造と、を有し、
前記オイル供給構造には、軸方向に沿って延びた前記流路の部分から前記オイルが供給され、
前記流路は、
前記隔壁内に位置する第1隔壁内流路と、
前記隔壁内に位置し、前記第1隔壁内流路から分岐して軸方向に延びる第2隔壁内流路と、
前記隔壁に設けられ、前記第1隔壁内流路とは異なる方向に直線状に延び、前記第1隔壁内流路に接続される直線部と、を有し、
前記第2隔壁内流路は前記オイル供給構造に繋がる、モータユニット。
【請求項2】
前記オイル供給構造は、前記オイルを貯留するリザーバを有し、
前記リザーバは、前記ステータコアまたは前記コイルエンドに向けて開口する流出口を有する、請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記オイル供給構造は、前記オイルが内部を流れる供給管を有し、
前記供給管は、前記ステータコアまたは前記コイルエンドに向けて開口する噴射孔を有する、請求項1または2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記供給管は、複数設けられ、
複数の前記供給管は、
第1供給管と、
前記第1供給管と間隔をあけて配置される第2供給管と、を有する、請求項3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記ロータは、前記モータ軸を中心として軸方向に沿って延びる前記シャフトを有し、
前記シャフトは、
前記シャフト内に位置し軸方向に延びる中空部と、
径方向に延びて前記中空部と前記シャフトの外部とを連通させる連通孔と、を有し、
前記油路は、前記中空部に位置するシャフト内経路を有し、
前記流路の部分を前記オイルが流れる向きと、前記シャフト内経路を前記オイルが流れる向きとが、互いに同じである、請求項1から4のいずれか1項に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。本願は、2019年2月15日に出願された日本国特許出願第2019-025797号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
モータは、駆動時に発熱するため、従来から冷却構造を備えるモータユニットが周知である。特許文献1のモータユニットは、ステータコアの径方向外側に位置する冷媒流入口からモータに冷媒を供給してモータを冷却する構造を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、コイルは、ステータコアの軸方向両側にそれぞれ突出する一対のコイルエンドを有する。しかしながら、特許文献1のモータユニットでは、冷媒の流れがステータコアに依存するため一対のコイルエンドに十分にオイルを供給することができないおそれがある。したがって、コイルを十分に冷却できないおそれがあり、ひいてはモータを十分に冷却できないおそれがある。また、モータユニットが車両に搭載される場合に、ステータの上側にオイルを貯留するリザーバを設け、リザーバの流出口からステータにオイルを滴下することが考えられる。しかしながら、リザーバに対して径方向外側、つまり重力方向上側からオイルを供給すると、例えば車両が坂道等で傾斜した場合にリザーバの底面が傾斜するため、オイルが供給された場所よりも重力方向上側に位置する部位についてはオイルが流れず、ステータへのオイルの供給が不安定になるおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、モータを効率的に冷却できるモータユニットの提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータユニットの一つの態様は、水平方向に延びるモータ軸を中心として回転するロータおよび前記ロータの径方向外側に位置するステータを有するモータと、前記モータを収容する収容空間を有するハウジングと、前記ハウジング内に収容されるオイルと、前記収容空間内において前記オイルを循環させ前記モータを冷却する油路と、前記モータ軸の軸方向一方側において前記ロータのシャフトに接続されるギヤ部と、を備え、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに巻き付けられるコイルと、を有し、前記コイルは、前記ステータコアから軸方向両側にそれぞれ突出する一対のコイルエンドを有し、前記ハウジングは、前記モータを収容するモータ室が内部に設けられたモータ収容部と、前記ギヤ部を収容するギヤ室が内部に設けられたギヤ収容部と、前記ギヤ室と前記モータ室とを区画する隔壁と、を有し、前記油路は、前記ハウジングの内部に設けられた流路と、前記モータの上側に位置し前記ステータコアまたは前記コイルエンドに前記オイルを供給するオイル供給構造と、を有し、前記オイル供給構造には、軸方向に沿って延びた前記流路の部分から前記オイルが供給され、前記隔壁は、前記オイル供給構造に前記オイルを供給する前記流路の一部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一つの態様によれば、モータを効率的に冷却できるモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のモータユニットの概念図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のモータユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のモータユニットの側面模式図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のハウジングの分解図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態のモータユニットの側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態のモータユニットを下側から見た下面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態のモータユニットの
図6のA-A断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態のモータユニットの
図6のB-B断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態のモータユニットにおける一部拡大断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態のモータユニットを模式的に示す概略構成図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態のステータおよび冷媒供給管ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るモータユニット1について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示す。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示す。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。なお、前後方向の位置関係は、本実施形態の位置関係に限られず、+X側が車両の後側であり、-X側が車両の前側であってもよい。この場合には、+Y側は、車両の右側であり、-Y側は、車両の左側である。
【0011】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J2に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J2を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J2の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0012】
また、本明細書において、所定の方向(又は平面)に「沿って延びる」とは、厳密に所定の方向に延びる場合に加えて、厳密な方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0013】
以下、本発明の例示的な一実施形態に係るモータユニット1について説明する。本実施形態のモータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0014】
図1および
図2を用いてモータユニット1を説明する。
モータユニット1は、モータ(メインモータ)2と、減速装置4および差動装置5を含むギヤ部3と、ハウジング6と、ハウジング6内に収容されるオイルOと、油路90と、インバータユニット8と、を備える。
【0015】
<ハウジング>
ハウジング6の内部には、モータ2およびギヤ部3を収容する収容空間80が設けられる。つまり収容空間80は、モータ2を収容する。ハウジング6は、収容空間80においてモータ2およびギヤ部3を保持する。収容空間80は、モータ2を収容するモータ室81と、ギヤ部3を収容するギヤ室82と、に区画される。
【0016】
ハウジング6は、隔壁61cを有する。収容空間80は、隔壁61cによってモータ室81とギヤ室82とに区画される。また、ハウジング6は、モータ室81を囲み隔壁61cと対向する閉塞部63を有する。閉塞部63は、ハウジング6から取り外すことができる。組み立て工程において、作業者は、閉塞部63を取り外した状態でモータ2をモータ室81に格納する。なお、本実施形態においてハウジング6は、例えばアルミダイカスト製であるが、鉄等を鋳造したものでもよい。なお、ハウジング6の上側にモータ室81の内圧を調整するブリーザ装置(ブリーザ)7を設けてもよい。
【0017】
収容空間80内の下部領域には、オイルOが溜るオイル溜りPが設けられる。本実施形態では、モータ室81の底部81aは、ギヤ室82の底部82aより上側に位置する。また、モータ室81とギヤ室82とを区画する隔壁61cには、隔壁開口68が設けられる。隔壁開口68は、モータ室81とギヤ室82とを連通させる。隔壁開口68は、モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOをギヤ室82に移動させる。したがって、本実施形態においてオイル溜りPは、ギヤ室82の下部領域に位置する。
【0018】
ハウジング6は、複数のリブを有している。ハウジング6は、後述するモータ2の水平方向に延びるモータ軸J2と平行な、つまり水平の第1のリブ64と、モータ軸J2の周方向に延びる第2のリブ65を有している。これにより、モータ2の回転により生じる振動と音がハウジング6により増幅することを抑制することができる。また、第1のリブ64は、製造時の湯切り壁としても作用する。湯切り壁とは、アルミダイカストをする際の型同士の整合部分である。
【0019】
<モータ>
モータ2は、ハウジング6のモータ室81に収容される。モータ2は、水平方向に延びるモータ軸J2を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、ロータ20を回転可能に支持する一対のベアリング26,27と、を備える。本実施形態のモータ2は、インナーロータ型モータである。本実施形態では、軸方向のうち、モータ2からギヤ部3へ向かう方向を軸方向一方側(+Y側)と呼び、ギヤ部3からモータ2へ向かう方向を軸方向他方側(-Y側)と呼ぶ。
【0020】
ロータ20は、図示略のバッテリからインバータユニット8を介してステータ30に交流電流が供給されることで回転する。ロータ20は、シャフト21と、ロータコア24と、複数のロータマグネット25と、を有する。ロータ20(すなわち、シャフト21、ロータコア24およびロータマグネット25)は、水平方向かつ車両の幅方向に延びるモータ軸J2を中心として回転する。ロータ20のトルクは、ギヤ部3に伝達される。
【0021】
シャフト21は、モータ軸J2を中心として軸方向に沿って延びる。シャフト21は、モータ軸J2を中心として回転する。シャフト21は、内部に軸方向に延びる空洞である中空部22を有する中空シャフトである。つまり中空部22は、シャフト21内に位置し軸方向に延びる。シャフト21には、連通孔23が設けられる。連通孔23は、径方向に延びて中空部22とシャフト21の外部とを連通させる。
【0022】
シャフト21は、ハウジング6のモータ室81とギヤ室82とを跨って延びる。シャフト21の一方の端部、つまり軸方向一方側の端部は、ギヤ室82側に突出する。ギヤ室82側に突出するシャフト21には、ギヤ部3の第1のギヤ41が固定されている。
【0023】
シャフト21は、一対のベアリング(第1のベアリング26および第2のベアリング27)により回転可能に支持される。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、モータ室81に位置する。また、第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ロータコア24を挟んでシャフト21の軸方向両側にそれぞれ位置する。第1のベアリング26および第2のベアリング27は、ハウジング6に保持される。より具体的には、第1のベアリング26は閉塞部63に保持され、第2のベアリング27は隔壁61cに保持される。
【0024】
ロータコア24は、珪素鋼板を積層して構成される。ロータコア24は、軸方向に沿って延びる円柱体である。
図7に示すように、ロータコア24には、複数のロータマグネット25が固定される。複数のロータマグネット25は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0025】
図1に示すように、ステータ30は、ステータコア32と、コイル31と、ステータコア32とコイル31との間に介在するインシュレータ(図示略)とを有する。ステータ30は、ハウジング6に保持される。ステータコア32は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に突出する複数の磁極歯(図示略)を有する。磁極歯には、コイル線が巻かれている。磁極歯に掛けまわされたコイル線は、コイル31を構成する。すなわち、コイル31は、インシュレータを介してステータコア32に巻き付けられる。コイル31から延び出るコイル線は、図示略のバスバーを介してインバータユニット8に接続される。なお、インシュレータは絶縁紙でもよい。
【0026】
コイル31は、第1のコイルエンド31aと、第2のコイルエンド31bと、を有する。第1のコイルエンド31aは、ステータコア32の軸方向他方側に突出する。第2のコイルエンド31bは、ステータコア32の軸方向一方側に突出する。すなわち、コイル31は、ステータコア32の軸方向両側にそれぞれ突出する一対のコイルエンド31a、31bを有する。
【0027】
<ギヤ部>
ギヤ部3は、ハウジング6のギヤ室82に収容される。ギヤ部3は、モータ軸J2の軸方向一方側においてシャフト21に接続される。ギヤ部3は、減速装置4と差動装置5とを有する。モータ2から出力されるトルクは、減速装置4を介して差動装置5に伝達される。
【0028】
<減速装置>
減速装置4は、モータ2のロータ20に接続される。減速装置4は、モータ2の回転速度を減じて、モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置4は、モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。
【0029】
減速装置4は、第1のギヤ(中間ドライブギヤ)41と、第2のギヤ(中間ギヤ)42と、第3のギヤ(ファイルナルドライブギヤ)43と、中間シャフト45と、を有する。モータ2から出力されるトルクは、モータ2のシャフト21、第1のギヤ41、第2のギヤ42、中間シャフト45および第3のギヤ43を介して差動装置5のリングギヤ(ギヤ)51へ伝達される。各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて種々変更可能である。減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0030】
第1のギヤ41は、モータ2のシャフト21の外周面に設けられる。第1のギヤ41は、シャフト21とともに、モータ軸J2を中心に回転する。中間シャフト45は、モータ軸J2と平行な中間軸J4に沿って延びる。中間シャフト45は、中間軸J4を中心として回転する。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間シャフト45の外周面に設けられる。第2のギヤ42と第3のギヤ43は、中間シャフト45を介して接続される。第2のギヤ42および第3のギヤ43は、中間軸J4を中心として回転する。第2のギヤ42は、第1のギヤ41に噛み合う。第3のギヤ43は、差動装置5のリングギヤ51と噛み合う。
【0031】
<差動装置>
差動装置5は、減速装置4を介しモータ2に接続される。差動装置5は、モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える機能を有する。差動装置5は、リングギヤ51と、ギヤハウジング(不図示)と、一対のピニオンギヤ(不図示)と、ピニオンシャフト(不図示)と、一対のサイドギヤ(不図示)と、を有する。
【0032】
リングギヤ51は、モータ軸J2と平行な差動軸J5を中心として回転する。リングギヤ51には、モータ2から出力されるトルクが減速装置4を介して伝えられる。すなわち、リングギヤ51は、他のギヤを介してモータ2に接続される。
【0033】
<ハウジング>
図4は、ハウジング6の分解図である。
第1のハウジング部材61は、モータ2を径方向外側から囲む筒状の周壁部61aと、周壁部61aの軸方向一方側に位置する側板部61bと、を有する。周壁部61aの内側の空間は、モータ室81を構成する。側板部61bは、隔壁61cと突出板部61dとを有する。隔壁61cは、周壁部61aの軸方向一方側の開口を覆う。隔壁61cには、上述の隔壁開口68に加えて、モータ2のシャフト21を挿通させる挿通孔61fが設けられる。側板部61bは、隔壁61cと、周壁部61aに対して径方向外側に突出する突出板部61dと、を有する。突出板部61dには、車輪を支持するドライブシャフト(図示略)が通過する第1の車軸通過孔61eが設けられる。
【0034】
閉塞部63は、第1のハウジング部材61の周壁部61aに固定される。閉塞部63は、筒状の第1のハウジング部材61の開口を塞ぐ。閉塞部63は、閉塞部本体63aと、蓋部材63bと、を有する。閉塞部本体63aには、軸方向に貫通する窓部63cが設けられる。蓋部材63bは、収容空間80の外側から窓部63cを塞ぐ。
【0035】
第2のハウジング部材62は、第1のハウジング部材61の側板部61bに固定される。第2のハウジング部材62の形状は、側板部61b側に開口する凹形状である。第2のハウジング部材62の開口は、側板部61bに覆われる。第2のハウジング部材62と側板部61bの間との空間は、ギヤ部3を収容するギヤ室82を構成する。第2のハウジング部材62には、第2の車軸通過孔62eが設けられる。第2の車軸通過孔62eは、軸方向から見て第1の車軸通過孔61eと重なる。
【0036】
第1のハウジング部材61の周壁部61aと閉塞部63とは、モータ室81を構成し、モータ2を囲み、モータ2を収容する。すなわち、周壁部61aと閉塞部63とは、
図1に示すモータ収容部6aを構成する。
同様に、第1のハウジング部材61の側板部61bと第2のハウジング部材62とは、ギヤ室82を構成し、ギヤ部3を囲み、ギヤ部3を収容する。すなわち、側板部61bと第2のハウジング部材62とは、
図1に示すギヤ収容部6bを構成する。このように、ハウジング6は、モータ2を収容するモータ室81を内部に設けるモータ収容部6aと、ギヤ部3を収容するギヤ室82を内部に設けるギヤ収容部6bと、を有する。
【0037】
図5は、モータユニット1の側面図である。また、
図6は、モータユニット1を下側から見た下面図である。
【0038】
図5および
図6に示すように、ギヤ収容部6bは、軸方向から見てモータ収容部6aに対し径方向外側に張り出す張出部6dを有する。本実施形態において、張出部6dは、モータ収容部6aに対し車両後方側および下側に張り出す。張出部6dは、ギヤ部3の一部を収容する。より具体的には、張出部6dの内側には、第2のギヤ42の一部と、リングギヤ51の一部が収容される。
【0039】
<オイル>
図1に示すように、オイルOは、ハウジング6に設けられた油路90内を循環する。油路90は、オイル溜りPからオイルOをモータ2に供給するオイルOの経路である。油路90は、収容空間80内においてオイルOを循環させモータ2を冷却する。
【0040】
オイルOは、減速装置4、差動装置5および各ベアリングの潤滑用として使用される。また、オイルOは、モータ2の冷却用として使用される。オイルOは、ギヤ室82内の下部領域、すなわちオイル溜りPに溜る。オイルOは、潤滑油および冷却油の機能を奏するため、粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のものを用いることが好ましい。
【0041】
<油路>
図1に示すように、油路90は、ハウジング6に設けられる。油路90は、ハウジング6内の収容空間80に位置する。油路90は、収容空間80のモータ室81とギヤ室82とに跨って構成される。油路90は、オイルOをモータ2の下側のオイル溜りP(すなわち、収容空間80内の下部領域)からモータ2を経て、再びモータ2の下側のオイル溜りPに導くオイルOの経路である。
【0042】
なお、本明細書において、「油路」とは、収容空間80を循環するオイルOの経路を意味する概念である。したがって、「油路」とは、定常的に一方向に向かうオイルが流れる「流路」のみならず、オイルを一時的に滞留させる経路(例えばリザーバ)およびオイルが滴り落ちる経路をも含む概念である。
【0043】
油路90は、モータ2の内部を通る第1の油路91と、モータ2の外部を通る第2の油路(油路)92と、を有する。第1の油路91および第2の油路92は、それぞれハウジング6の内部でオイルOを循環させる。オイルOは、第1の油路91および第2の油路92において、モータ2を内部および外部から冷却する。
【0044】
(第1の油路と第2の油路の共通部分)
まず、第1の油路91と第2の油路92の共通部分について説明する。第1の油路91および第2の油路92は、ともにオイル溜りPからオイルOをモータ2に供給して、再びオイル溜りPに回収する経路である。第1の油路91および第2の油路92において、オイルOは、モータ2の上側から滴下して、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁開口68を介して、ギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)に移動する。すなわち、第1の油路91および第2の油路92は、オイルOをモータ室81内の下部領域からギヤ室82内の下部領域に移動させる経路を含む。
【0045】
図7および
図8は、モータユニット1の断面図である。
図7および
図8において、インバータユニット8の図示を省略する。モータ室81の下部領域に溜るオイルOの液位OLを一点鎖線で図示する。
【0046】
隔壁開口68は、隔壁61cを軸方向に貫通し、モータ室81とギヤ室82とを連通させる。隔壁開口68は、軸方向から見て、上側に向かうに従い水平方向の幅が広くなる。隔壁開口68の下端68aの上下方向位置は、ステータ30の下端の近傍に位置する。隔壁開口68の上端68bの上下方向位置は、ロータ20の下端より若干上側に位置する。隔壁開口68の上端68bは、下端68aに対して水平方向の幅が大きい。
【0047】
モータ2が駆動することで、油路90(すなわち、第1の油路91および第2の油路92)からモータ2に供給されるオイルOの単位時間当たりの供給量が増加する。これにより、モータ室81の下側の領域に溜るオイルOの液位OLが上昇する。上述したように、隔壁開口68は、軸方向から見て、上側に向かうに従い水平方向の幅が広くなる。このため、モータ室81のオイルOの液位OLが上昇するとともに、隔壁開口68を介してモータ室81からギヤ室82へのオイルOの移動量は多くなる。結果的に、モータ室81内のオイルOの液位OLが高くなり過ぎることが抑制される。すなわち、モータ室81内のロータ20が、オイルOに浸かったり過剰にオイルOをかき上げたりすることを抑制できる。したがって、モータ2の回転効率が、オイルOの流動抵抗により低下することを抑制できる。
【0048】
(第1の油路)
図1に示すように、第1の油路91において、オイルOは、オイル溜りPから差動装置5によりかき上げられてロータ20の内部に導かれる。オイルOには、ロータ20の内部で、ロータ20の回転に伴う遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20を径方向外側から囲むステータ30に向かって均等に拡散されステータ30を冷却する。
【0049】
第1の油路91は、かき上げ経路91aと、シャフト供給経路91bと、シャフト内経路91cと、ロータ内経路91dと、を有する。また、第1の油路91の経路中には、第1のリザーバ93が設けられる。第1のリザーバ93は、ギヤ室82に設けられている。なお、第1のリザーバ93は、オイルOの所定量を一時的に溜める機能も有する。
【0050】
かき上げ経路91aは、差動装置5のリングギヤ51の回転によってオイル溜りPからかき上げられたオイルOが、第1のリザーバ93で受けられる経路である。
図3に示すように、第1のリザーバ93は、中間軸J4と差動軸J5との間に配置される。具体的に、第1のリザーバ93は、前後方向において、中間軸J4と差動軸J5との間に位置する。第1のリザーバ93は、上側に開口する。第1のリザーバ93は、リングギヤ51がかき上げたオイルOを受ける。また、モータ2の駆動直後などオイル溜りPの液面が高い場合等には、第1のリザーバ93は、リングギヤ51に加えて第2のギヤ42および第3のギヤ43によってかき上げられたオイルOも受ける。
【0051】
シャフト供給経路91bは、第1のリザーバ93からシャフト21の中空部22にオイルOを誘導する。
図1に示すように、シャフト内経路91cは、シャフト21の中空部22内をオイルOが通過する経路である。つまり油路90は、中空部22に位置するシャフト内経路91cを有する。ロータ内経路91dは、オイルOが、シャフト21の連通孔23からロータコア24の内部を通過して径方向外側に飛散し、ステータ30に至る経路である。
【0052】
シャフト内経路91cにおいて、ロータ20の内部のオイルOには、ロータ20の回転に伴い遠心力が付与される。これにより、オイルOは、ロータ20から径方向外側に連続的に飛散する。また、オイルOの飛散に伴い、ロータ20内部の経路が負圧となり、第1のリザーバ93に溜るオイルOが、ロータ20の内部に吸引され、ロータ20内部の経路にオイルOが満たされる。
【0053】
ステータ30に到達したオイルOは、ステータ30から熱を奪う。ステータ30を冷却したオイルOは、ステータ30の下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ室82に移動する。
【0054】
(第2の油路)
第2の油路(流路)92は、第1の油路(流路)92aと、第2の油路(流路)92bと、第3の油路(流路)92cと、第4の油路(流路)92dと、を有する。すなわち、第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路92dと、を有する。第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、第2のリザーバ(オイル供給構造)98と、が設けられる。すなわち、第2の油路92つまり油路90は、ハウジング6の内部に設けられた流路と、オイル供給構造と、を有する。本実施形態では、ハウジング6の内部(ハウジング6の壁部の内部を含む)の流路として、少なくとも第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dが設けられる。またオイル供給構造は、ハウジング6の内部に収容される。オイル供給構造は、オイルOを貯留するリザーバを有し、本実施形態ではこのリザーバが、第2のリザーバ98である。オイル供給構造は、モータ2の上側に位置しステータコア32またはコイルエンド31a,31bにオイルOを供給する。ポンプ96は、オイルOをモータ2に供給する。また、クーラー97は、第2の油路92を通過するオイルOを冷却する。第2の油路92において、オイルOは、第1の流路92a、ポンプ96、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92d、第2のリザーバ98の順で各部を通過して、モータ2に供給される。
【0055】
第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dは、収容空間80を囲むハウジング6の壁部を通過する。第1の流路92aは、収容空間80の下部領域のオイル溜りPとポンプ96とを繋ぐ。第2の流路92bは、ポンプ96とクーラー97とを繋ぐ。第3の流路92cは、クーラー97と第4の流路92dを繋ぐ。第4の流路92dは第3の流路92cと収容空間80の上部領域とを繋ぐ。
【0056】
本実施形態において、第1の流路92a、第2の流路92b、第3の流路92cおよび第4の流路92dは、収容空間80を囲むハウジング6の壁部の内部を通過する。したがって、流路を形成する際に、別途管材を設ける必要がないので、部品点数の減少に寄与することができる。
【0057】
ポンプ96は、電気により駆動する電動ポンプである。ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92d、および第2のリザーバ98を介してモータ2にオイルOを供給する。すなわち、ポンプ96は、第2の油路92中でオイルOを循環させるために設けられる。
【0058】
図6に示すように、ポンプ96は、ポンプ機構部96pと、ポンプモータ96mと、吸入口96aと吐出口96bとを有する。本実施形態において、ポンプ機構部96pは、図示略の外歯車と内歯車とがかみ合って回転するトロコイダルポンプである。ポンプ機構部96pの内歯車は、ポンプモータ96mによって回転させられる。ポンプ機構部96pの内歯車と外歯車との間の隙間は、吸入口96aおよび吐出口96bに繋がる。
【0059】
ポンプ96の吸入口96aは、第1の流路92aに繋がる。また、ポンプ96の吐出口96bは、第2の流路92bに繋がる。ポンプ96は、第1の流路92aを介してオイル溜りPからオイルOを吸い上げて、第2の流路92b、クーラー97、第3の流路92c、第4の流路92dおよび第2のリザーバ98を介してモータ2に供給する。
【0060】
ポンプモータ96mは、ポンプ機構部96pの内歯車を回転させる。ポンプモータ96mの回転軸J6は、モータ軸J2と平行である。ポンプモータ96mを有するポンプ96は、回転軸J6方向に長尺となり易い。本実施形態によれば、ポンプモータ96mの回転軸J6をモータ軸J2と平行とすることで、モータユニット1の径方向の寸法を小型化することができる。また、モータユニット1の径方向寸法を小型化することで、軸方向から見てポンプ96をハウジング6の張出部6dに重ねて配置しやすい。結果的に、モータユニット1は、軸方向の投影面積が大きくなることが抑制されるので、モータユニット1を小型化しやすい。
【0061】
ポンプ96は、モータ室81の下側に位置する。また、ポンプ96は、張出部6dのモータ収容部6a側を向く面に固定される。ポンプ96の吸入口96aは、張出部6dに対向して配置される。ポンプ96の吸入口96aに繋がる第1の流路92aは、張出部6dの壁面を軸方向に直線的に貫通して、ギヤ室82内の下部領域に開口する。すなわち、張出部6dには、軸方向に沿って延びギヤ室82内の下部領域(すなわち、オイル溜りP)からポンプ96に繋がる第1の流路92aが設けられる。
【0062】
本実施形態によれば、ポンプ96がモータ室81の下側に配置されるため、吸入口96aをオイル溜りPの近くに配置しやすい。結果的に、オイル溜りPと吸入口96aとを繋ぐ第1の流路92aを短くすることができる。また、オイル溜りPと吸入口96aとの距離が近いために、第1の流路92aを直線的な流路とすることができる。第1の流路92aを直線的な短い流路とすることで、オイル溜りPからポンプ96に至る経路の圧力損失を低減し、効率的なオイルOの循環を実現することができる。
【0063】
図1に示すように、クーラー97には、第2の流路92bおよび第3の流路92cが接続される。第2の流路92bおよび第3の流路92cは、クーラー97の内部流路を介して繋がる。クーラー97には、ラジエーター(図示略)で冷却された冷却水を通過させる冷却水用配管97jが接続される。クーラー97の内部を通過するオイルOは、冷却水用配管97jを通過する冷却水との間で熱交換されて冷却される。なお、冷却水用配管97jの経路中には、インバータユニット8が設けられる。冷却水用配管97jを通過する冷却水は、インバータユニット8を冷却する。
【0064】
図7に示すように、クーラー97は、モータ室81の鉛直方向下側に位置する。クーラー97は、モータ収容部6aの径方向外側を向く外周面に固定される。クーラー97は、モータ収容部6aの外周面と接触する接触面97aを有する。接触面97aは、モータ室81の鉛直方向下側に位置する。
図1に示すように、モータ2に供給されたオイルOは、モータ室81内の下部領域に一時的に溜った後に、隔壁開口68を介してギヤ室82内の下部領域に移動する。すなわち、第1の油路91および第2の油路92は、モータ室81の下部領域を通過する。本実施形態によれば、モータ収容部6aに対するクーラー97の接触面97aがモータ室81の下側に位置する。これにより、第1の油路91および第2の油路92は、モータ室81の下部領域においてモータ2と接触面97aとの間を通過する経路を含む。このため、モータ収容部6aの壁面を介してモータ室81内の下部領域を通過するオイルOを接触面97aによって冷却することができる。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOが冷却されることで、オイルOに浸かったモータ2のステータ30が下側から冷却される。これにより、モータ2を効果的に冷却できる。また、クーラー97の接触面97aおよび隔壁開口68は、モータ軸J2の径方向において少なくとも一部が互いに重なる。モータ室81の下部領域からギヤ室82側に流入するオイルOは、隔壁開口68を通過する。本実施形態によれば、隔壁開口68を通過するオイルOをクーラー97の接触面97aによって冷却することができる。
【0065】
図5に示すように、クーラー97およびポンプ96は、軸方向から見て少なくとも一部がギヤ収容部6bの張出部6dに重なる。張出部6dの内部には、ギヤ部3が収容される。張出部6dの軸方向の投影面積は、ギヤ部3の各ギヤの大きさに依存して決まる。本実施形態によれば、軸方向においてクーラー97およびポンプ96を張出部6dに重ねて配置することで、モータユニット1の軸方向の投影面積が、クーラー97およびポンプ96によって大きくなることを抑制できる。これにより、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化することができる。
【0066】
本実施形態によれば、クーラー97およびポンプ96は、軸方向から見て、少なくとも一部がギヤ部3の第2のギヤ42に重なる。このため、張出部6dの軸方向から見た投影面積をギヤ部3の各ギヤの外形に沿ってできるだけ小さくした場合であっても、軸方向から見てクーラー97およびポンプ96が張出部6dに重なる構成が実現できる。結果的に、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化することができる。
【0067】
本実施形態によれば、クーラー97の下端およびポンプ96下端は、張出部6dの下端と略同じ位置である。すなわち、クーラー97およびポンプ96が、張出部6dの下端からさらに下側に飛び出していない。このため、上下方向において、モータユニット1を小型化することができる。また、本実施形態によれば、クーラー97は径方向の寸法に対して軸方向の寸法が長い。
【0068】
クーラー97の鉛直方向の位置は、差動軸J5の鉛直方向の位置に重なる。これにより、クーラー97が、鉛直方向上側又は下側に突出して配置されることを抑制し、モータユニット1の鉛直方向の小型化を実現することができる。
【0069】
図5に示すように、クーラー97およびポンプ96は、モータ室81の鉛直方向下側に位置する。モータユニット1は、例えば車両のボンネット内に配置される。また、モータユニット1において、クーラー97およびポンプ96は、ハウジング6に対して突出する突起物である。本実施形態によれば、クーラー97およびポンプ96をモータ室81の鉛直方向下側に配置することで、車両が事故などによって対象物に衝突した場合であっても、突起物であるクーラー97およびポンプ96が、対象物に突き刺さることを抑制できる。
【0070】
本実施形態によれば、ポンプ96およびクーラー97が、ハウジング6の外周面に固定される。このため、ポンプ96およびクーラー97が、ハウジング6の外部の構造物に固定される場合と比較して、モータユニット1の小型化に寄与できる。
【0071】
図7に示すように、第2の流路92bは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第2の流路92bは、直線部92baと、接続孔部92bbと、を含む。第2の流路92bにおいて、オイルOは、直線部92ba、接続孔部92bbの順で流れる。
【0072】
直線部92baは、モータ軸J2の周方向に沿って直線状に延びる。直線部92baの上流側の一端は、ポンプ96の吐出口96bに接続される。また、直線部92baの下流側の他端は、クーラー97の径方向内側まで延び、接続孔部92bbに接続される。
【0073】
接続孔部92bbは、径方向に沿って延びる。接続孔部92bbは、モータ収容部6aの外周面に開口する。接続孔部92bbの開口は、クーラー97の流入口97bに接続される。
【0074】
本実施形態によれば、第2の流路92bは、モータ収容部6aの壁部の内部をモータ軸J2の周方向に沿って延びる。また、第2の流路92bの軸方向位置は、ステータ30の軸方向位置と重なる。すなわち、第2の流路92bおよびステータ30は、軸方向における位置が互いに重なる。このため、第2の流路92bを通過するオイルOによって、ステータ30を冷却することができる。
【0075】
図7および
図8に示すように、第3の流路92cは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第3の流路92cは、第1の接続孔部92caと、第1の直線部92cbと、第2の直線部92cbcと、第3の直線部92ccと、第2の接続孔部92cdと、を含む。第3の流路92cにおいて、オイルOは、第1の接続孔部92ca、第1の直線部92cb、第2の直線部92cbc、第3の直線部92cc、第2の接続孔部92cdの順で流れる。
【0076】
第1の接続孔部92caは、径方向に沿って延びる。第1の接続孔部92caは、モータ収容部6aの外周面に開口する。第1の接続孔部92caの開口は、クーラー97の流出口97cに接続される。
【0077】
第1の直線部92cbは、モータ軸J2の周方向に沿って直線状に延びる。第1の直線部92cbの上流側の一端は、第1の接続孔部92caに接続される。また、第1の直線部92cbの下流側の他端は、第2の直線部92cbcに接続される。第1の直線部92cbの一端は、モータ収容部6aの外周面に開口し、キャップ部材により覆われる。
【0078】
第2の直線部92cbcは、モータ軸J2の軸方向に沿って直線状に延びる。第2の直線部92cbcの上流側の一端は、第1の直線部92cbに接続される。また、第2の直線部92cbcの下流側の他端は、第3の直線部92ccに接続される。第2の直線部92cbcの一端は、モータ収容部6aの外周面に開口し、キャップ部材により覆われる。
【0079】
第3の直線部92ccは、モータ軸J2の周方向に沿って直線状に延びる。第3の直線部92ccの上流側の一端は、第2の直線部92cbcに接続される。また、第3の直線部92ccの下流側の他端は、第2の接続孔部92cdに接続される。第3の直線部92ccの一端は、モータ収容部6aの外周面に開口し、キャップ部材により覆われる。第3の直線部92ccは隔壁61cに設けられる。
【0080】
第2の接続孔部92cdの上流側の一端は、第3の直線部92ccに接続される。また、第2の接続孔部92cdの下流側の他端は、第4の流路92dに接続される。第2の接続孔部92cdはモータ収容部6aの外周面の上側に開口し、キャップ部材により覆われる。第2の接続孔部92cdはモータ収容部6aの+X軸側つまり前側に開口し、キャップ部材により覆われる。第2の接続孔部92cdは隔壁61cに設けられる。
【0081】
本実施形態によれば、第3の流路92cは、モータ収容部6aの壁部の内部をモータ軸J2の周方向および軸方向に沿って延びる。また、第3の流路92cの軸方向位置は、ステータ30の軸方向位置と重なる。また、第3の流路92cの径方向位置は、ステータ30の径方向位置と重なる。すなわち、第3の流路92cおよびステータ30は、軸方向における位置が互いに重なる。このため、第3の流路92cを通過するオイルOによって、ステータ30を冷却することができる。特に、第3の流路92cには、クーラー97を通過した直後のオイルOが流れる。したがって、本実施形態によれば、第3の流路92cを流れるオイルOによって、ステータ30を効率的に冷却できる。なお、本実施形態では、第2の油路92において、クーラー97は、ポンプ96の下流側に配置されている。しかしながら、クーラー97は、第2の油路92においてポンプ96の上流側に配置されていてもよい。この場合、クーラー97と収容空間80の上部領域とを繋ぐ流路(本実施形態の第3の流路92cに相当)中にポンプ96が配置される構成となる。この場合であっても、クーラー97と収容空間80の上部領域とを繋ぐ流路の軸方向位置が、ステータ30の軸方向位置と重なる場合に、クーラー97を通過した直後のオイルOでステータ30を効率的に冷却できる。
【0082】
図8および
図9に示すように、第4の流路92dは、モータ収容部6aの壁部の内部を通過する。第4の流路92dは、第1の接続孔部92daと、第1の直線部92dbと、第2の接続孔部92dcと、を含む。第4の流路92dにおいて、オイルOは、第1の接続孔部92da、第1の直線部92db、第2の接続孔部92dcの順で流れる。なお第1の接続孔部92daは、第3の接続孔部92daと言い換えてもよい。第1の直線部92dbは、第4の直線部92dbと言い換えてもよい。第2の接続孔部92dcは、第4の接続孔部92dcと言い換えてもよい。第4の流路92dは隔壁61cに設けられる。つまり隔壁61cは、第2のリザーバ98にオイルOを供給する流路の一部として、第4の流路92dを有する。
【0083】
第1の接続孔部92daは、第3の流路92cの第2の接続孔部92cdに開口する。第1の接続孔部92daは、第3の流路92cと第4の流路92dを接続する。
【0084】
第1の直線部92dbは、モータ軸J2の周方向に沿って直線状に延びる。第1の直線部92dbの上流側の一端は、第1の接続孔部92daに接続される。また、第1の直線部92dbには複数の第2の接続孔部92dcが接続される。つまり第2の接続孔部92dcは、第4の流路92dに複数設けられる。本実施形態では、第1の直線部92dbに2つの第2の接続孔部92dcが接続される。
【0085】
図9は
図1における、破線で囲った部分の詳細を示す部分拡大断面図である。なお、
図9の向きは
図7および
図8とはX方向およびY方向が異なっている。すなわち、
図9はX軸と垂直な断面図であり、
図7および
図8はY軸と垂直な断面図である。さて、第2の接続孔部92dcは、軸方向に沿って延びる。第2の接続孔部92dcは、モータ収容部6aの壁部を内側に貫通する。第2の接続孔部92cdの一端は、第2のリザーバ98の上側でモータ室81に開口する。すなわち、第2のリザーバ98には、軸方向に沿って延びた第2の接続孔部92dcから、オイルOが供給される。第2の接続孔部92dcは、流路の部分である。つまりオイル供給構造には、軸方向に沿って延びた流路の部分からオイルOが供給される。本実施形態ではオイルOが、第2の接続孔部92dc内を軸方向他方側(-Y側)へ流れて、第2のリザーバ98に供給される。
【0086】
本実施形態によれば、モータ軸J2の軸方向に沿って第2の接続孔部92dcが開口される。これにより、モータ軸J2の径方向から第2のリザーバ98に対してオイルOを供給する場合に比べて、モータユニット1が搭載された車両(不図示)が坂道等で傾斜した場合においても、第2のリザーバ98に対して確実にオイルOを供給することができる。すなわち、例えば、第2のリザーバ98に対して重力方向上側からオイルOを供給したときのことを考える。この場合、第2のリザーバ98の底面が傾斜していると、オイルOが供給された場所よりも重力方向上側に位置する部位については、オイルOが流れない。これに対して、本実施形態のように重力方向に対して水平方向側からオイルOを供給した場合、オイルOは水平方向に流れる勢いがついた状態で第2のリザーバ98に供給される。そのため、オイルOは第2のリザーバ98の底面に沿って勢いよく流れる。これにより、第2のリザーバ98の底面が多少傾斜していたとしても、オイルOは第2のリザーバ98の底面および壁面に沿って流れる。そのため、オイルOは第2のリザーバ98の底面全体に供給されやすい。したがって、坂道等で傾斜した際の影響を受けづらく、モータ2に確実にオイルOを供給することができる。また本実施形態では、第2の接続孔部(流路の部分)92dcをオイルOが流れる向きと、シャフト内経路91cをオイルOが流れる向きとが、互いに同じである。具体的に、第2の接続孔部92dcのオイルOは軸方向他方側(-Y側)へ流れ、シャフト内経路91cのオイルOは軸方向他方側へ流れる。このため、オイル溜りPから第2の接続孔部92dcを介して第2のリザーバ98にオイルOを導く油路の長さと、オイル溜りPからシャフト内経路91cにオイルOを導く油路の長さとを、ともに短く抑えることができる。また、第1のハウジング部材61に対して取り外し可能な閉塞部63に油路を設ける必要がないことから、閉塞部63に油路を設ける場合に比べて、ハウジング6の構造を簡素化できる。
【0087】
また
図8に示すように、本実施形態によれば、第2の接続孔部92dcはモータ軸J2の径方向において、具体的には水平方向において、モータ軸J2を中心に+X軸側と-X軸側の各々に設けられる。すなわち、複数の第2の接続孔部92dcは、前後方向においてモータ軸J2の両側、つまりモータ軸J2の前側および後側にそれぞれ配置される。これにより、モータユニット1が搭載された車両(不図示)が坂道等で傾斜した場合でも、第2のリザーバ98の+X軸側、-X軸側にオイルOを均等に供給することができるため、モータ2全体を均等に冷却することができる。
【0088】
図7および
図8に示すように、第3の流路92cの第1の直線部92cbと、第3の直線部92ccと、第4の流路92dの第1の直線部92dbとは、それぞれモータ軸J2の周方向に沿って異なる方向に直線状に延びる。第3の流路92cの第2の直線部92cbcはモータ軸J2の軸方向に沿って直線状に延びる。一般的に、金属材料からなるハウジング6の壁部に、湾曲する流路を構成することは困難である。しかし、直線状の流路であれば、切削加工によりハウジング6の壁部に容易に設けることができる。
【0089】
図6に示すように、本実施形態によれば、軸方向におけるポンプ96の位置とクーラー97の位置とは、互いに重なる。クーラー97とポンプ96とは、第2の流路92bを介して繋がる。すなわち、第2の油路92には、ポンプ96とクーラー97とを繋ぐ第2の流路92bが設けられる。本実施形態によれば、ポンプ96およびクーラー97の軸方向位置が互いに重なることで、第2の流路92bを軸方向と直交する方向に直線的に延ばす構造を実現できる。すなわち、第2の流路92bを直線的な短い流路とすることができ、ポンプ96からクーラー97に至る経路の圧力損失を低減し、効率的なオイルOの循環を実現することができる。
【0090】
図1に示すように、第2のリザーバ98は、収容空間80のモータ室81に位置する。第2のリザーバ98は、モータ2の上側に位置する。第2のリザーバ98は、第3の流路92cおよび第4の流路92dを介してモータ室81に供給されたオイルOを貯留する。第2のリザーバ98は、複数の流出口98aを有する。各流出口98aは、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bに向けて開口する。すなわち、第2のリザーバ98つまりリザーバは、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bに向けて開口する流出口98aを有する。第2のリザーバ98内に溜ったオイルOは、各流出口98aからモータ2に供給される。第2のリザーバ98の流出口98aから流出したオイルOは、上側から下側に向かってモータ2の外周面を伝って流れてモータ2の熱を奪う。これにより、モータ2全体を冷却することができる。
【0091】
第2のリザーバ98は、軸方向に沿って延びる。また、第2のリザーバ98の流出口98aは、第2のリザーバ98の軸方向の両端部に設けられる。流出口98aは、コイルエンド31a,31bの上側に位置する。これにより、ステータ30の軸方向両端に位置するコイルエンド31a,31bにオイルOをかけてコイル31を直接的に冷却できる。
【0092】
コイル31を冷却したオイルOは、下側に滴下され、モータ室81内の下部領域に溜る。モータ室81内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁61cに設けられた隔壁開口68を介してギヤ室82に移動する。
【0093】
本実施形態によれば、第2の油路92の経路中には、オイルOを冷却するクーラー97が設けられる。第2の油路92を通過しクーラー97により冷却されたオイルOは、オイル溜りPにおいて第1の油路91を通過したオイルOと合流する。オイル溜りPにおいて、第1の油路91および第2の油路92を通過したオイルOは、互いに混ざりあって熱交換が行われる。このため、第2の油路92の経路中に配置されるクーラー97の冷却の効果を第1の油路91を通過するオイルOにも及ぼすことができる。
【0094】
また、本実施形態によれば、第2の油路92の一部は、ハウジング6の隔壁61cに設けられている。すなわち、隔壁61cは、オイル供給構造にオイルOを供給する流路の一部を有する。隔壁61cは、第2のベアリング27を保持する為、軸方向に対して一定の厚みを有している。そのため隔壁61c内に、第2のリザーバ98に対して、オイルOを供給する第2の油路92を形成する場合でも、隔壁61cを厚肉にする必要がなく、モータユニット1を小型化することができる。詳しくは、本実施形態では流路が、隔壁61c内に位置する第1隔壁内流路と、隔壁61c内に位置し、第1隔壁内流路から分岐して軸方向に延びる複数の第2隔壁内流路と、を有する。複数の第2隔壁内流路は、第1隔壁内流路の下流側に配置される。具体的に、第1隔壁内流路は、第4の流路92dの第1の直線部92dbを含む。複数の第2隔壁内流路は、第4の流路92dの複数の第2の接続孔部92dcを含む。そして複数の第2隔壁内流路から、第2のリザーバ98つまりオイル供給構造にオイルOが供給される。本実施形態によれば、隔壁61c内で流路を分岐させることにより、分岐用の管材等を別途設ける必要がなくなり、部品点数を減らして構造を簡素化できる。また、複数の第2隔壁内流路から第2のリザーバ98へ広範囲に効率よくオイルOを供給できる。
【0095】
<インバータユニット>
インバータユニット8は、モータ2と電気的に接続される。インバータユニット8は、モータ2に供給される電流を制御する。
図5に示すように、インバータユニット8は、ハウジング6に固定される。より具体的には、インバータユニット8は、モータ収容部6aの径方向外側を向く外周面に固定される。
【0096】
インバータユニット8は、軸方向から見て、少なくとも一部がギヤ収容部6bの張出部6dに重なる。本実施形態によれば、軸方向から見て、インバータユニット8を張出部6dに重ねて配置することで、モータユニット1の軸方向の投影面積が、インバータユニット8によって大きくなることを抑制できる。これにより、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化することができる。
【0097】
本実施形態によれば、インバータユニット8は、軸方向から見て、少なくとも一部がギヤ部3のリングギヤ51に重なる。このため、張出部6dの軸方向から見た投影面積をギヤ部3の各ギヤの外形に沿ってできるだけ小さくした場合であっても、軸方向から見てインバータユニット8が張出部6dに重なる構成が実現できる。結果的に、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化することができる。
【0098】
本実施形態によれば、インバータユニット8は、鉛直方向から見て、モータ軸J2を挟んでクーラー97と反対側に位置する。このため、軸方向から見て張出部6dと重なる領域を有効的に活用して、モータユニット1の水平方向に沿う寸法を小さくすることが可能となり、モータユニット1の小型化を図ることができる。
【0099】
図1に示すように、インバータユニット8には、図示略のラジエータから延びる冷却水用配管97jが接続される。これにより、インバータユニット8を効率的に冷却できる。また、冷却水用配管97jを流れる冷却水は、インバータユニット8の筐体部を介して筐体部に接触するモータ収容部6aをも冷却する。
【0100】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態のモータユニット100について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成要素については同じ名称および同じ符号を付して、その説明を省略する場合がある。本実施形態では、周方向のうち、所定方向を周方向一方側θ1と呼び、所定方向とは反対の方向を周方向他方側θ2と呼ぶ。本実施形態では、周方向一方側θ1は、モータ軸J2よりも上側において前側(+X側)へ向かう方向であり、周方向他方側θ2は、モータ軸J2よりも上側において後側(-X側)へ向かう方向である。
【0101】
図10に示すように、モータユニット100は、モータ2と、減速装置4および差動装置5を含むギヤ部3と、ハウジング6と、ブリーザ7と、ハウジング6内に収容されるオイルOと、冷媒供給管ユニット110と、油路90と、を備える。本実施形態において、モータユニット100はインバータユニットを含まない。言い換えると、モータユニット100はインバータユニットと別体構造となっている。なお、モータユニット100はインバータユニットを含んでいてもよい。言い換えると、モータユニット100がインバータユニットと一体構造となっていてもよい。
【0102】
ステータコア32は、モータ収容部6aの内周面に固定される。
図11に示すように、ステータコア32は、ステータコア本体32aと、固定部32bと、を有する。つまりステータ30は、固定部32bを有する。ステータコア本体32aは、軸方向に延びる円筒状のコアバック32dと、コアバック32dから径方向内側に延びる複数のティース32eと、を有する。複数のティース32eは、周方向に互いに間隔をあけて配置される。複数のティース32eは、周方向の全周にわたって等間隔に配置される。
【0103】
固定部32bは、ステータコア本体32aの外周面から径方向外側に突出する。すなわち、固定部32bは、ステータ30の外周面から径方向外側に突出する。固定部32bは、モータ収容部6aと固定される。つまり固定部32bは、ハウジング6と固定される。固定部32bは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。固定部32bは、例えば、4つ設けられる。4つの固定部32bは、周方向の全周にわたって等間隔に配置される。
【0104】
固定部32bのうちの1つは、ステータコア本体32aから上側に突出する。固定部32bのうちの他の1つは、ステータコア本体32aから下側に突出する。固定部32bのうちのさらに他の1つは、ステータコア本体32aから前側(+X側)に突出する。固定部32bのうちの残りの1つは、ステータコア本体32aから後側(-X側)に突出する。
【0105】
なお、以下の説明においては、ステータコア本体32aから上側に突出する固定部32bを単に「上側の固定部32b」と呼び、ステータコア本体32aから前側に突出する固定部32bを単に「前側の固定部32b」と呼び、ステータコア本体32aから下側に突出する固定部32bを単に「下側の固定部32b」と呼び、ステータコア本体32aから後側に突出する固定部32bを単に「後側の固定部32b」と呼ぶ。
【0106】
固定部32bは、軸方向に延びる。本実施形態では固定部32bが、ステータコア32の左側(+Y側)の端部からステータコア32の右側(-Y側)の端部まで延びる。つまり固定部32bは、ステータコア32の軸方向の全長にわたって延びる。固定部32bは、固定部32bを軸方向に貫通する貫通孔32cを有する。貫通孔32cには、軸方向に延びる図示しないボルトが通される。ボルトは、右側(-Y側)から貫通孔32cに通され、モータ収容部6aまたは隔壁61cに設けられた図示しない雌ネジ穴に締め込まれる。ボルトが雌ネジ穴に締め込まれることで、固定部32bは、モータ収容部6aまたは隔壁61cと固定される。またステータコア本体32aの外周面は、少なくとも周方向の1箇所以上において、モータ収容部6aの内周面と接触する。すなわち、ステータコア本体32aの外周面のうち、周方向に隣り合う一対の固定部32b間に位置する部分と、モータ収容部6aの内周面のうち周方向の一部とが、互いに接触する。本実施形態では、ステータコア本体32aの外周面とモータ収容部6aの内周面とが、周方向に間隔をあけて複数箇所で、例えば4箇所において、互いに接触する。このためモータ収容部6aの内周面とステータコア本体32aの外周面とは、嵌め合わされる。上記構成によりステータ30は、ハウジング6と固定される。
【0107】
図11に示すように、本実施形態においてコイルエンド31a,31bは、モータ軸J2を中心とする円環状である。図示は省略するが、コイルエンド31a,31bは、各コイル31を結束する結束部材等を含んでもよいし、各コイル31同士を繋ぐ渡り線を含んでもよい。
【0108】
図10に示すように、ハウジング6は、内部に冷媒としてのオイルOを収容する。つまり本実施形態において、冷媒はオイルOである。オイルOは、モータ収容部6aの内部およびギヤ収容部6bの内部に収容される。なお、本明細書において「ある部分の内部にオイルが収容される」とは、モータが駆動している最中の少なくとも一部において、ある部分の内部にオイルが位置していればよく、モータが停止している際には、ある部分の内部にオイルが位置していなくてもよい。例えば、本実施形態においてモータ収容部6aの内部にオイルOが収容されるとは、モータ2が駆動している最中の少なくとも一部において、モータ収容部6aの内部にオイルOが位置していればよく、モータ2が停止している際においては、モータ収容部6aの内部のオイルOがすべて隔壁開口68を通ってギヤ収容部6bに移動してしまっていてもよい。なお、油路90によってモータ収容部6aの内部へと送られたオイルOの一部は、モータ2が停止した状態において、モータ収容部6aの内部に残っていてもよい。
【0109】
ブリーザ7は、ハウジング6の内部と外部とを連通可能に構成される。例えばハウジング6の内圧が外圧よりも高まり、内圧と外圧との圧力差が所定値以上になった場合や、モータユニット100が振動した場合などに、ブリーザ7は、ハウジング6の内部と外部とを連通させる。本実施形態ではブリーザ7が、ハウジング6の頂壁部つまり上側の壁部に設けられる。ブリーザ7は、例えばモータ収容部6aの頂壁部に設けられる。
【0110】
冷媒供給管ユニット110は、モータ収容部6aの内部に収容される。つまり冷媒供給管ユニット110は、ハウジング6の内部に収容される。冷媒供給管ユニット110は、ハウジング6の内周面とステータ30の外周面との間に配置される。冷媒供給管ユニット110は、ステータ30の上側に位置する。具体的に、冷媒供給管ユニット110は、モータ収容部6aの頂壁部と、ステータコア本体32aの外周面の上端部との間に配置される。冷媒供給管ユニット110の左側(+Y側)の端部は、モータ収容部6aの壁部または隔壁61cに固定される。冷媒供給管ユニット110の左側の端部は、第4の流路92dと接続される。冷媒供給管ユニット110の右側(-Y側)の端部は、モータ収容部6aの頂壁部または閉塞部63に固定される。つまり冷媒供給管ユニット110は、ハウジング6に固定される。
【0111】
図11に示すように、冷媒供給管ユニット110は、第1供給管(供給管)111と、第2供給管(供給管)112と、連結部119と、第1弾性リング部材(図示省略)と、第2弾性リング部材(図示省略)と、を備える。つまりモータユニット100は、第1供給管111と、第2供給管112と、連結部119と、第1弾性リング部材(図示省略)と、第2弾性リング部材(図示省略)と、を備える。
【0112】
第1供給管111および第2供給管112は、軸方向に延びる筒状である。本実施形態では第1供給管111および第2供給管112が、軸方向に沿って直線状に延びる円筒状のパイプである。第1供給管111と第2供給管112とは、前後方向に互いに間隔をあけて配置される。つまり第2供給管112は、第1供給管111と間隔をあけて配置される。第1供給管111と第2供給管112とは、互いに平行である。第1供給管111および第2供給管112は、ステータ30の径方向外側に位置する。本実施形態では、第1供給管111の径方向位置と第2供給管112の径方向位置とが、互いに同じである。第1供給管111および第2供給管112は、ステータコア本体32aの上側に配置される。第1供給管111の上下方向の位置と、第2供給管112の上下方向の位置とは、互いに同じである。
【0113】
軸方向から見て、第1供給管111と第2供給管112との間には、上側の固定部32bが配置される。すなわち、軸方向から見て、第1供給管111の中心軸と第2供給管112の中心軸とを通る仮想直線(図示省略)は、上側の固定部32bと交わる。前後方向から見て、第1供給管111、第2供給管112および上側の固定部32bは、互いに重なる。第1供給管111と第2供給管112とは、上側の固定部32bの前後方向の両側に配置される。第1供給管111は、上側の固定部32bの前側(+X側)に位置し、第2供給管112は、上側の固定部32bの後側(-X側)に位置する。また第1供給管111は、上側の固定部32bの周方向一方側θ1に位置し、第2供給管112は、上側の固定部32bの周方向他方側θ2に位置する。
【0114】
径方向から見て、具体的には上側から見て、上側の固定部32bは、第1供給管111と第2供給管112との間に位置する。つまり固定部32bは、径方向から見て、第1供給管111と第2供給管112との間に配置される。第1供給管111は、固定部32bが延びる方向に沿って延びる。第2供給管112は、固定部32bが延びる方向に沿って延びる。本実施形態によれば、第1供給管111から噴射する冷媒および第2供給管112から噴射する冷媒により、上側の固定部32bの両側で、固定部32bが延びる方向つまり軸方向において広範囲にステータ30を冷却することができる。
【0115】
図10および
図11に示すように、第1供給管111は、第1供給管本体部111aと、第1供給管本体部111aの左側(+Y側)の端部に接続する小径部111bと、第1供給管本体部111aの周壁を貫通する第1噴射孔(噴射孔)111cと、を有する。つまり第1供給管111は、第1供給管111の周壁を貫通する第1噴射孔111cを有する。第1噴射孔111cは、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bに向けて開口する。
【0116】
第1供給管本体部111aは、軸方向に延びる円筒状である。小径部111bは、軸方向に延びる円筒状である。小径部111bの外径は、第1供給管本体部111aの外径よりも小さい。第1供給管111は、小径部111bがモータ収容部6aの壁部または隔壁61cに設けられた穴部(図示省略)に右側(-Y側)から挿し込まれて、モータ収容部6aの壁部または隔壁61cに取り付けられる。小径部111bは、左側(+Y側)に開口する。小径部111bは、第4の流路92dと連通する。これにより、第1供給管111の内部つまり後述する供給管内流路192dは、第4の流路92dと繋がる。
【0117】
第1噴射孔111cは、第1供給管111の中心軸と直交する管径方向に延び、第1供給管111の内部と外部とを連通する。第1噴射孔111cは、例えば円孔状である。第1噴射孔111cは、ハウジング6の内周面とステータ30の外周面との間に位置する。第1噴射孔111cは、ハウジング6の内周面とステータ30の外周面との間にオイルOつまり冷媒を噴射する。第1噴射孔111cは、少なくともステータ30の外周面に冷媒を噴射する。すなわち、第1供給管111は、少なくともステータ30の外周面に冷媒を噴射する。第1供給管111は、ステータ30の外周面のうち少なくとも上端部に、冷媒を供給する。
【0118】
第1噴射孔111cは、複数設けられる。第1噴射孔111cは、軸方向(Y軸方向)に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、軸方向に並ぶ複数の第1噴射孔111cから噴射されるオイルOによって、ステータ30を軸方向において広範囲に冷却できる。また第1噴射孔111cは、周方向にも互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、周方向に並ぶ複数の第1噴射孔111cから噴射されるオイルOによって、ステータ30を周方向においても広範囲に冷却できる。
【0119】
第2供給管112は、第2供給管本体部112aと、第2供給管本体部112aの左側(+Y側)の端部に接続する小径部112bと、第2供給管本体部112aの周壁を貫通する第2噴射孔(噴射孔)112cと、を有する。つまり第2供給管112は、第2供給管112の周壁を貫通する第2噴射孔112cを有する。第2噴射孔112cは、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bに向けて開口する。
【0120】
第2供給管本体部112aは、軸方向に延びる円筒状である。小径部112bは、軸方向に延びる円筒状である。小径部112bの外径は、第2供給管本体部112aの外径よりも小さい。第2供給管112は、小径部112bがモータ収容部6aの壁部または隔壁61cに設けられた穴部(図示省略)に右側(-Y側)から挿し込まれて、モータ収容部6aの壁部または隔壁61cに取り付けられる。小径部112bは、左側(+Y側)に開口する。小径部112bは、第4の流路92dと連通する。これにより、第2供給管112の内部つまり後述する供給管内流路192dは、第4の流路92dと繋がる。
【0121】
第2噴射孔112cは、第2供給管112の中心軸と直交する管径方向に延び、第2供給管112の内部と外部とを連通する。第2噴射孔112cは、例えば円孔状である。第2噴射孔112cは、ハウジング6の内周面とステータ30の外周面との間に位置する。第2噴射孔112cは、ハウジング6の内周面とステータ30の外周面との間にオイルOつまり冷媒を噴射する。第2噴射孔112cは、少なくともステータ30の外周面に冷媒を噴射する。すなわち、第2供給管112は、少なくともステータ30の外周面に冷媒を噴射する。第2供給管112は、ステータ30の外周面のうち少なくとも上端部に、冷媒を供給する。
【0122】
第2噴射孔112cは、複数設けられる。第2噴射孔112cは、軸方向(Y軸方向)に互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、軸方向に並ぶ複数の第2噴射孔112cから噴射されるオイルOによって、ステータ30を軸方向において広範囲に冷却できる。また第2噴射孔112cは、周方向にも互いに間隔をあけて複数設けられる。本実施形態によれば、周方向に並ぶ複数の第2噴射孔112cから噴射されるオイルOによって、ステータ30を周方向においても広範囲に冷却できる。
【0123】
連結部119は、第1供給管111および第2供給管112を連結する。本実施形態によれば、第1供給管111および第2供給管112が連結部119により連結されるので、第1供給管111と第2供給管112との相対的な位置精度を確保でき、第1供給管111、第2供給管112および連結部119をハウジング6内に取り付けやすくすることができる。連結部119は、第1供給管111の端部と第2供給管112の端部とに接続される。連結部119は、モータ収容部6aの頂壁部と固定される。本実施形態によれば、連結部119が、第1供給管111の端部と第2供給管112の端部とを連結するため、径方向から見て、連結部119と固定部32bとをずらして配置しやすい。また、第1供給管111の両端部が、連結部119およびハウジング6により両持ち状態で支持され、第2供給管112の両端部が、連結部119およびハウジング6により両持ち状態で支持される。このため、第1供給管111および第2供給管112のハウジング6への取り付け姿勢が安定する。また、第1供給管111および第2供給管112から噴射される冷媒が、連結部119によって遮られにくい。第1供給管111および第2供給管112からそれぞれ広範囲に冷媒を噴射でき、ステータ30の冷却効率を高めることができる。また、第1供給管111および第2供給管112から噴射される冷媒を、ステータ30の外周面だけでなく、例えば閉塞部63のベアリング26等にも供給可能である。
【0124】
連結部119は、第1供給管111の軸方向の両端部のうち、小径部111bが位置する端部とは異なる端部、つまり右側(-Y側)の端部に接続されて、第1供給管111の右側の端部を塞ぐ。連結部119は、第2供給管112の軸方向の両端部のうち、小径部112bが位置する端部とは異なる端部、つまり右側の端部に接続されて、第2供給管112の右側の端部を塞ぐ。すなわち、連結部119は、第1供給管111の両端部のうち下流側の端部に接続され、第2供給管112の両端部のうち下流側の端部に接続される。本実施形態によれば、連結部119により第1供給管111および第2供給管112の各下流側の端部を支持しつつ、各下流側の端部を閉塞することができる。本実施形態と異なり、例えば、第1供給管と第2供給管とを連結する連結部材と、第1供給管の下流側の端部を塞ぐ栓部材と、第2供給管の下流側の端部を塞ぐ栓部材と、を別々に設ける場合と比べて、本実施形態によれば、部品点数が削減され、構成が簡素化され、組み立てが容易である。
【0125】
図11に示すように、連結部119は、板状である。連結部119は、前後方向(X軸方向)に延びる。連結部119は、取付孔119dを有する。取付孔119dは、例えば円孔状であり、本実施形態では連結部119の前後方向の両端部に一対設けられる。各取付孔119dには、右側(-Y側)から図示しないボルトが通される。各取付孔119dに挿入されたボルトが、モータ収容部6aの頂壁部の図示しない雌ネジ穴に締め込まれることにより、冷媒供給管ユニット110がハウジング6に固定される。
【0126】
冷媒供給管ユニット110のうち、第1供給管111、第2供給管112および連結部119は、単一の部材の部分である。第1供給管111、第2供給管112および連結部119は、例えば樹脂製である。本実施形態と異なり、例えば、第1供給管、第2供給管および連結部が別々の部材により構成される場合と比べて、本実施形態によれば、部品点数を削減でき、第1供給管111、第2供給管112および連結部119を組み付ける作業工程を削減できる。また、第1供給管111と第2供給管112との相対的な位置精度が安定して確保されるため、冷媒供給管ユニット110をハウジング6に組み付けやすい。
【0127】
特に図示しないが、第1弾性リング部材は、弾性変形可能な環状の部材であり、例えばOリング等である。第1弾性リング部材は、第1供給管111の小径部111bの外周面に嵌め合わされる。つまり第1弾性リング部材は、第1供給管111の両端部のうち、連結部119に接続される端部とは異なる端部、つまり上流側の端部の外周面に嵌合する。本実施形態によれば、第1供給管111の上流側の端部とモータ収容部6aの壁部または隔壁61cに設けられた穴部(図示省略)との間に、第1弾性リング部材が配置される。これにより、第1供給管111の上流側の端部と穴部との間のシール性が確保され、第1供給管111からステータ30の外周面に冷媒が効率よく供給される。また、第1弾性リング部材により防振機能が得られるため、第1供給管111と穴部との間で振動による騒音等が発生することが抑制される。
【0128】
特に図示しないが、第2弾性リング部材は、弾性変形可能な環状の部材であり、例えばOリング等である。第2弾性リング部材は、第2供給管112の小径部112bの外周面に嵌め合わされる。つまり第2弾性リング部材は、第2供給管112の両端部のうち、連結部119に接続される端部とは異なる端部、つまり上流側の端部の外周面に嵌合する。本実施形態によれば、第2供給管112の上流側の端部とモータ収容部6aの壁部または隔壁61cに設けられた穴部(図示省略)との間に、第2弾性リング部材が配置される。これにより、第2供給管112の上流側の端部と穴部との間のシール性が確保され、第2供給管112からステータ30の外周面に冷媒が効率よく供給される。また、第2弾性リング部材により防振機能が得られるため、第2供給管112と穴部との間で振動による騒音等が発生することが抑制される。
【0129】
図10に示すように、油路90は、第1の油路91と、第2の油路92と、を有する。第2の油路92は、第1の流路92aと、第2の流路92bと、第3の流路92cと、第4の流路92dと、供給管内流路192dと、を有する。第2の油路92の経路中には、ポンプ96と、クーラー97と、供給管(オイル供給構造)111,112と、が設けられる。すなわち、第2の油路92つまり油路90は、ハウジング6の内部に設けられた流路と、オイル供給構造と、を有する。オイル供給構造は、オイルOが内部を流れる供給管111,112を有し、供給管111,112は、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bに向けて開口する噴射孔111c,112cを有する。本実施形態では、オイル供給構造である供給管111,112が、冷媒供給管ユニット110の一部を構成する。オイル供給構造は、モータ2の上側に位置しステータコア32またはコイルエンド31a,31bにオイルOを供給する。
【0130】
第4の流路92dは、隔壁61cに設けられる。第4の流路92dは、冷媒供給管ユニット110の第1供給管111と第2供給管112とに繋がる。つまり第4の流路92dは、第3の流路92cと冷媒供給管ユニット110とを繋ぐ。隔壁61cは、供給管111,112にオイルOを供給する流路の一部として、第4の流路92dを有する。第4の流路92dは、第1の直線部92dbと、第2の接続孔部(流路の部分)92dcと、を有する。本実施形態では、供給管111,112つまりオイル供給構造に、軸方向に沿って延びた第2の接続孔部92dcつまり流路の部分から、オイルOが供給される。したがって、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、供給管111,112の噴射孔111c,112cを通してオイルOが供給されるため、例えば車両が坂道を走行する場合であっても、ステータコア32またはコイルエンド31a,31bにオイルOを安定して供給できる。
【0131】
本実施形態では、オイル供給構造として供給管111,112が複数設けられる。複数の供給管111,112は、第1供給管111と、第2供給管112と、を有する。これにともない第2の接続孔部92dcも、複数設けられる。第2の接続孔部92dcは、第1の直線部92dbから分岐して一対設けられる。各第2の接続孔部92dcは、各供給管111,112と接続される。本実施形態においても、ハウジング6の壁部の内部で流路を分岐させているので、分岐用の管材等を別途設ける必要がなく、部品点数を減らして構造を簡素化できる。また、複数の供給管111,112からステータ30へ広範囲に効率よくオイルOを供給できる。
【0132】
供給管内流路192dは、冷媒供給管ユニット110の内部に配置される冷媒の流路である。つまり供給管内流路192dは、冷媒供給管ユニット110内に位置する。供給管内流路192dは、軸方向に延びる。供給管内流路192dは、第4の流路92dと繋がる。
図11に示すように、供給管内流路192dは、冷媒供給管ユニット110に複数設けられ、本実施形態では一対設けられる。一対の供給管内流路192dは、第4の流路92dとそれぞれ接続される。一対の供給管内流路192dは、第2の油路92のうち、第4の流路92dの下流側に位置する流路である。本実施形態によれば、油路90の一部を冷媒供給管ユニット110により構成できるので、油路90の形状の自由度が増し、かつ油路90の構造を簡素化できる。一対の供給管内流路192dのうち一方は、第1供給管111の内部に位置し、第1供給管111の周壁に開口する第1噴射孔111cと繋がる。一対の供給管内流路192dのうち他方は、第2供給管112の内部に位置し、第2供給管112の周壁に開口する第2噴射孔112cと繋がる。つまり供給管内流路192dは、噴射孔111c,112cと繋がる。
【0133】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。
【0134】
第2実施形態では、第1供給管111および第2供給管112が、軸方向に沿って直線状に延びる円筒状のパイプである例を挙げたが、これに限らない。第1供給管111および第2供給管112は、パイプ以外の配管やブロック状の管等であってもよい。第1供給管111および第2供給管112の少なくともいずれかが、直線状以外の例えば曲線状に延びていてもよい。
【0135】
ポンプ96は、電動ポンプに限らず、例えば、シャフト21に連結される部分を有し、シャフト21のモータ軸J2回りの回転にともなってオイルOを送液可能な機械式ポンプでもよい。
【0136】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0137】
1,100…モータユニット、2…モータ、3…ギヤ部、5…差動装置、6…ハウジング、6a…モータ収容部、6b…ギヤ収容部、6d…張出部、8…インバータユニット、20…ロータ、21…シャフト(モータシャフト)、22…中空部、23…連通孔、30…ステータ、31…コイル、31a,31b…コイルエンド、32…ステータコア、51…リングギヤ、61c…隔壁、68…隔壁開口、80…収容空間、81…モータ室、82…ギヤ室、90…油路、91c…シャフト内経路、92…第2の油路、92a…第1の流路、92b…第2の流路、92c…第3の流路、92d…第4の流路、96…ポンプ、97…クーラー、97a…接触面、92db…第1の直線部(第1隔壁内流路)、92dc…第2の接続孔部(流路の部分。第2隔壁内流路)、98…第2のリザーバ(オイル供給構造)、98a…流出口、111…第1供給管(オイル供給構造)、111c…第1噴射孔、112…第2供給管(オイル供給構造)、112c…第2噴射孔、J2…モータ軸、J5…差動軸、O…オイル