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特許7400366多孔性ポリオレフィンフィルム、それを用いた電池用セパレータおよび二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】多孔性ポリオレフィンフィルム、それを用いた電池用セパレータおよび二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/489 20210101AFI20231212BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20231212BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20231212BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/417
H01M50/491
C08J9/26 CES
C08J9/26 102
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019203474
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2020079391
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2018211518
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛子
(72)【発明者】
【氏名】久万 琢也
(72)【発明者】
【氏名】石原 毅
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 龍太
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-268118(JP,A)
【文献】特開平8-034873(JP,A)
【文献】特開2015-170394(JP,A)
【文献】特開2016-072155(JP,A)
【文献】特開2012-092302(JP,A)
【文献】特表2002-503621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、C08J
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔率50%換算の突刺強度が350mN/μm以上であり、かつ幅方向(TD方向)の最大溶融収縮率が1%以上25%以下であることを特徴とする多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
空孔率が40%以上であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
平均孔径が40nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
機械方向(MD方向)の引張破断伸度及び幅方向(TD方向)の引張破断伸度がともに80%以上200%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
膜厚が15μm以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
機械方向(MD方向)の引張破断強度と幅方向(TD方向)の引張破断強度の平均値である平均引張破断強度が150MPa以上であり、かつMD方向の引張破断伸度とTD方向の引張破断伸度の平均値である平均引張破断伸度が90%以上であり、さらに前記平均引張破断強度(MPa)×前記平均引張破断伸度(%)が15000(MPa×%)以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項7】
ポリエチレン樹脂を主成分としてなることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルムを用いた電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項8に記載の電池用セパレータを用いた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性に優れた多孔性ポリオレフィンフィルム、それを用いた電池用セパレータおよび二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性ポリオレフィンフィルムは、電池用セパレータや、各種分離膜、水処理膜、コンデンサー用セパレータ等幅広い分野で使用されている。多孔性ポリオレフィンフィルムは、特に、有機溶媒に不溶であり、機械特性に優れ、異常発熱時に孔閉塞をして電流を遮断し過度の昇温を抑制する優れたシャットダウン特性を有することから、リチウムイオン電池用セパレータに好適に使用されている。
【0003】
近年、リチウムイオン電池は、車載用途を中心に高エネルギー密度化、高容量化、高出力化が進んでおり、それに伴い、高強度化、低熱収縮率化、高耐熱化、高安全性化等、セパレータへの要求特性もより一層高いレベルで求められるようになっている。特に、セパレータは張力をかけた状態で捲回されるので、捲回時の破膜防止のために、高強度化が求められる。
【0004】
また、シャットダウン温度よりも高温となりセパレータが溶融状態となった際に起こる収縮により、電極の横方向(TD方向)への短絡を招き、電池の熱暴走を加速化させる恐れがあるため、溶融時の低熱収縮率化も電池の安全性を確保する上で重要である。一般に、セパレータの製造においては、延伸等によりセパレータに配向性を付与して、強度を高めることが知られているが、高倍率延伸により高強度化するほど高温時の収縮率は高くなり、高強度化と低熱収縮率化の両立は難しかった。
【0005】
例えば、特許文献1には、樹脂濃度を高くすることで高強度化を図り、さらに縦方向への延伸倍率を横方向よりも高くすることで、横方向への収縮率を低くする手法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、強度や収縮率、シャットダウン特性等のセパレータとしての物性バランスを向上させるために、原料の分子量や樹脂濃度、延伸条件を調節する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、耐熱性向上と低熱収縮率化を目的に、ポリエチレンを架橋する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5595459号公報
【文献】特許第4808935号公報
【文献】特許第4189961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の方法及び特許文献2に開示の方法においては、樹脂濃度の高濃度化には限界があり、延伸条件も限定的であるため、高強度と低熱収縮率化の両立は不十分であった。また、特許文献3に開示の方法においては、溶融時の収縮力は小さいものの、安全性を確保できる十分な低収縮率化を実現した場合においての強度は低く、高強度と低熱収縮率化の両立は十分ではなかった。
【0010】
本発明の課題は、従来技術では達成し得なかった高強度、低熱収縮率を両立し、さらに安全性を兼ね備えた多孔性ポリオレフィンフィルム、それを用いた電池用セパレータおよび二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)空孔率50%換算の突刺強度が350mN/μm以上であり、かつ幅方向(TD方向)の最大溶融収縮率が1%以上25%以下であることを特徴とする多孔性ポリオレフィンフィルム。
(2)空孔率が40%以上であることを特徴とする(1)に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(3)平均孔径が40nm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(4)機械方向(MD方向)の引張破断伸度及び幅方向(TD方向)の引張破断伸度がともに80%以上200%以下であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(5)膜厚が15μm以下であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(6)機械方向(MD方向)の引張破断強度と幅方向(TD方向)の引張破断強度の平均値である平均引張破断強度が150MPa以上であり、かつMD方向の引張破断伸度とTD方向の引張破断伸度の平均値である平均引張破断伸度が90%以上であり、さらに前記平均引張破断強度(MPa)×前記平均引張破断伸度(%)が15000(MPa×%)以上であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(7)ポリエチレン樹脂を主成分としてなることを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルム。
(8)(1)~(7)のいずれかに記載の多孔性ポリオレフィンフィルムを用いた電池用セパレータ。
(9)(8)に記載の電池用セパレータを用いた二次電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、高強度と低熱収縮率を両立し、従来技術により得られる多孔性ポリオレフィンフィルムに比べて、電池用セパレータとして用いた際のメルトダウン時の短絡を効果的に防ぐことができる。
【0013】
さらに、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは平均孔径が小さいために、デンドライトが貫通しにくく、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを用いた電池用セパレータは、安全性に優れた電池用セパレータである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、空孔率50%換算の突刺強度が350mN/μm以上であり、かつ幅方向(TD方向)の最大溶融収縮率が1%以上25%以下であるものである。
【0015】
空孔率50%換算の突刺強度とは、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)、空孔率P1(%)の多孔性ポリオレフィンフィルムを2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重L1(N)を測定し、式:L2=L1/T1×50/(100-P1)により求められる値(空孔率を50%としたときの膜厚1μmあたりの最大荷重L2に換算した値)である。
【0016】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの空孔率50%換算の突刺強度は350mN/μm以上であり、好ましくは380mN/μm以上、より好ましくは400mN/μm以上、さらに好ましくは420mN/μm以上である。また、当該突刺強度の上限値としては2500mN/μm以下であり、より好ましくは2000mN/μm以下である。
【0017】
空孔率50%換算の突刺強度が350mN/μm以上であると、電池用セパレータとして使用した際に、捲回時や異物によりセパレータが破膜し短絡が生じ難くなることから、電池の安全性を高めることができる。空孔率50%換算の突刺強度が350mN/μm未満であると、電池用セパレータとして使用した際に、捲回時や異物によりセパレータが破膜し短絡が生じやすくなり、電池の安全性が劣るようになる。
【0018】
また、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、TD方向の最大溶融収縮率が1%以上25%以下である。
【0019】
なお、本明細書おいて、MD方向(機械方向)とは、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムを製膜する際にフィルムを押し出す方向(製膜方向)を意味し、TD方向(幅方向)とは、フィルム上でMD方向に直交する方向を意味する。
【0020】
最大溶融収縮率は、熱機械的分析装置を用いて以下の方法で求めた値である。すなわち、サンプル形状;幅3mm×長さ10mm、初期荷重;19.6mN、温度走査範囲;30~210℃、昇温速度;5℃/minの条件で、温度を昇温走査する。同じ多孔性ポリオレフィンフィルム中で、異なる任意の複数の領域を無作為に抽出する。複数の領域の各々において、3点ずつTD方向の収縮量測定を実施し、最も寸法が収縮した点での収縮率を最大溶融収縮率とする。各々の領域で求めた最大溶融収縮率の平均値を、「TD方向の最大溶融収縮率」とする。
【0021】
TD方向の最大溶融収縮率は1%以上25%以下であり、好ましくは1%以上23%以下であり、より好ましくは1%以上20%以下であり、さらに好ましくは1%以上15%以下であり、最も好ましくは1%以上10%以下である。TD方向の最大溶融収縮率が上記範囲であると、電池用セパレータとして使用した際に、電池内で局所的に異常発熱した場合においても、内部短絡を防ぐことができ、安全性に優れたセパレータとなる。
【0022】
さらに本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの空孔率は、電池用セパレータとして使用した際のイオン透過性、電解液含有量の観点から、好ましくは40%以上であり、より好ましくは43%以上であり、さらに好ましくは46%以上である。また空孔率の上限値としては、機械的強度の確保の観点から、60%以下であることが好ましい。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの空孔率は、製膜時の樹脂の濃度、延伸時の延伸温度により調整することができる。
【0023】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの平均孔径は、40nm以下であることが好ましく、より好ましくは38nm以下であり、さらに好ましくは35nm以下である。平均孔径が40nm以下であると、デンドライトが貫通し難くなり、電池の短絡を防止できる。平均孔径が40nmよりも大きい場合は、デンドライトが貫通しやすく、電池の短絡に繋がるため安全性の観点から平均孔径は40nm以下であることが好ましい。
【0024】
また、平均孔径の好ましい下限値としては5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。平均孔径がこの範囲よりも小さい場合は電池用セパレータとして使用した際に、イオンが通過しにくく電池特性の悪化に繋がるため、レート特性の観点から平均孔径は5nm以上であることが好ましい。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの平均孔径は、原料となるポリオレフィンの分子量や樹脂濃度、混練時の混練条件、延伸時の延伸温度により調整することができる。
【0025】
また、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは機械的強度に優れており、引張試験により得られる引張破断強度および引張破断伸度がともに高い値であることが好ましい。
【0026】
引張破断伸度に関しては、MD方向、TD方向ともに80%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。MD方向の引張破断伸度およびTD方向の引張破断伸度をそれぞれ80%以上とすることで捲回時等、高いテンションがかかった際でも破膜し難くなり、短絡を防ぐことができる。また、引張破断伸度の上限値は、MD方向、TD方向ともに200%以下であることが好ましい。引張判断伸度が200%以下であると、捲回した状態で長期保存した際に変形しにくい傾向にあり長期保存性に優れるため好ましい。
【0027】
また、MD方向の引張破断伸度およびTD方向の引張破断伸度の平均値((MD方向の引張破断伸度+TD方向の引張破断伸度)/2)(以下、「平均引張破断伸度」と呼ぶ。)は90%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上、さらに好ましくは110%以上である。平均引張破断伸度を90%以上とすることで、捲回時等、高いテンションがかかった際でも破膜し難くなり、短絡を防ぐことができる。また、平均引張破断伸度の上限値としては300%以下であることが好ましい。平均引張判断伸度が300%以下であると、捲回した状態で長期保存した際に変形しにくい傾向にあり長期保存性に優れるため好ましい。
【0028】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの引張破断伸度は、ポリオレフィンの分子量や樹脂濃度、結晶性、延伸時の延伸倍率により調整することができる。
【0029】
また、引張破断強度に関しては、MD方向の引張破断強度およびTD方向の引張破断強度の平均値((MD方向の引張破断強度+TD方向の引張破断強度)/2)(以下、「平均引張破断強度」と呼ぶ。)が150MPa以上であることが好ましく、より好ましくは170MPa以上であり、さらに好ましくは200MPa以上であり、最も好ましくは220MPa以上である。また、平均引張破断強度の上限値は1500MPa以下であることが好ましく、1200MPa以下であることがより好ましい。平均引張破断強度が150MPa以上であることにより、電池製造工程において高圧力で熱プレスされた際に破膜するのを防止できる。平均引張破断強度がこの範囲よりも低い場合は、電池製造工程において高圧力で熱プレスされた際に破膜する恐れがあるため、平均引張破断強度は高い方が好ましい。本発明における平均引張破断強度は、使用する樹脂の分子量や結晶性、延伸時の延伸倍率により調整することができる。
【0030】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、上述のとおり平均引張破断強度および引張破断伸度がともに高い値であることが好ましく、平均引張破断強度(MPa)×平均引張破断伸度(%)の値は15000(MPa×%)以上であることが好ましく、より好ましくは17500(MPa×%)以上、さらに好ましくは20000(MPa×%)以上である。またこの値の上限は、750000(MPa×%)以下であることが好ましく、700000(MPa×%)以下であることがより好ましい。この値が高いほど高タフネス性を発揮することができ、平均引張破断強度(MPa)×平均引張破断伸度(%)の値が15000(MPa×%)未満の場合は、コーティングや電池の作成時にかかる張力に耐え切れず、フィルムが破膜し短絡する恐れが高くなるため好ましくない。
【0031】
また、平均引張破断強度と平均引張破断伸度はトレードオフの関係にあり、従来技術では平均引張破断強度、平均引張破断伸度ともに高い値を取る高タフネスフィルムを得ることができていなかった。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの平均引張破断強度と平均引張破断伸度の積は、原料となるポリオレフィンの分子量や樹脂濃度、結晶性、延伸時の延伸倍率により調整することができる。
【0032】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの膜厚は、その上限値としては15μm以下であることが好ましく、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。膜厚の下限値としては1μm以上であり、より好ましくは3μm以上である。膜厚が15μm以下であることにより、イオン透過性が向上し、電池の高容量化につながる。膜厚が1μm未満であると強度が低くなり破膜しやすく、またデンドライトのような針状異物に対する抵抗力が低くなるために好ましくない。また膜厚が厚いとイオン透過性が悪くなり、高容量化することができない。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの膜厚は、未延伸シートの幅や製膜速度、延伸時の延伸倍率により調整することができる。
【0033】
また本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、ポリオレフィン樹脂を主成分とすることが好ましい。ここで言う主成分とは、全成分量中に占める割合が50質量%以上であることを指す。
【0034】
本発明におけるポリオレフィン樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-ペンテン-1)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン等が挙げられ、単独で用いても、2種以上をブレンドして用いてもよい。特に、電池用セパレータとして用いる場合は、シャットダウン特性等の観点からポリエチレン樹脂であることが好ましく、ポリエチレン樹脂の含有量は、ポリオレフィン樹脂中の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0035】
ここで、ポリエチレン樹脂の種類としては、密度が0.94g/cmを超えるような高密度ポリエチレン樹脂、密度が0.93~0.94g/cmの範囲の中密度ポリエチレン樹脂、密度が0.93g/cmより低い低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等が挙げられ、これらを単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0036】
また、ポリエチレン樹脂としては、(I)エチレンホモポリマー、または(II)エチレンと、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1等のコモノマーとのコポリマーおよびそれらの混合物を用いることができるが、経済性および膜強度の観点から、エチレンホモポリマーが好ましい。
【0037】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの主原料としては、2種以上のポリオレフィン樹脂をブレンドしたものを用いることが好ましい。本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの副原料としては、重量平均分子量(Mw)が1.0×10以上の超高分子量ポリエチレン樹脂(UHPE)を用いることが、機械的強度の向上や孔径微細化、高耐熱化の観点から好ましい。超高分子量ポリエチレン樹脂の詳細は後述する。
【0038】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムに主原料として用いられるポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量(Mw)が1.0×10以上であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は1.5×10以上がより好ましく、1.8×10以上が更に好ましい。重量平均分子量(Mw)の上限としては1.0×10未満が好ましく、5.0×10以下がより好ましく、3.5×10以下がさらに好ましい。
【0039】
Mwが1.0×10以上であることにより、分子量が大きく、延伸時の配向による高融点化や、原料の低融点化による熱処理時などの孔閉塞を防止でき、空孔率の低下や、出力特性の低下を防ぐことができる。Mwが1.0×10未満であると、分子量が小さく、延伸時の配向による高融点化や、原料の低融点化による熱処理時などの孔閉塞が起こり、空孔率が低くなり、出力特性が低下する場合がある。Mwが1.0×10未満であることにより、分子量増加による高融点化でシャットダウン温度が上昇することを防ぐことができる。
【0040】
また、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムに含有させる超高分子量ポリエチレン樹脂の具体的なMwとしては、好ましくは1.5×10以上であり、さらに好ましくは1.8×10以上である。またその上限値は、5.0×10以下であることが好ましく、より好ましくは4.0×10以下である。Mwが1.5×10以上であることにより、機械的強度を高くすることができる。Mwが5.0×10以下であることにより、混練時の溶融粘度が高くなり成形性が悪くなることを防ぐことができる。
【0041】
また、ポリオレフィン樹脂中の超高分子量ポリエチレン樹脂の含有量は、上限値が、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレン樹脂の含有量を50質量%以下とすることにより、製膜時における成形性の悪化を防ぐことができる。また、超高分子量ポリエチレン樹脂の含有量の下限値としては2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。超高分子量ポリエチレン樹脂の含有量を2質量%以上とすることにより、機械的強度の向上、孔径の微細化、高耐熱化の実効を得ることができる。
【0042】
前記超高分子量ポリエチレン樹脂の結晶性は、得られる多孔性ポリオレフィンフィルムの強度や収縮性に寄与している。本発明で用いられる超高分子量ポリエチレン樹脂は高結晶性であり、かつ融点が140℃以上であることが好ましい。融点は、より好ましくは141℃以上、さらに好ましくは143℃以上である。また融点が上記範囲内であると、高強度と低熱収縮を両立することが可能であり、高融点であるほど好ましい。
【0043】
また、超高分子量ポリエチレン樹脂の結晶性は以下に示す融解熱ΔHmにより判断することができ、ΔHmが大きいほど高結晶性となり、高強度化、低熱収縮率化につながる。本発明で用いられる超高分子量ポリエチレン樹脂のΔHmは170J/g以上であることが好ましく、180J/g以上であることがより好ましく、185J/g以上であることがさらに好ましい。また、ΔHmの上限は、理論上、結晶化度100%となる293J/gである。
【0044】
前記融解熱ΔHmは、走査型示差熱量計(DSC)にて求めることができる。試料をDSCのサンプルホルダー内に静置し、窒素雰囲気中にて30℃で1分間保持し、10℃/分の速度で230℃まで加熱する。昇温過程で得られたDSC曲線(溶融曲線)上の60℃における点と180℃における点とを通る直線をベースラインとして引き、ベースラインとDSC曲線とで囲まれる部分の面積から熱量(単位:J)を算出し、これを試料の重量(単位:g)で割ることにより、融解熱ΔHm(単位:J/g)を求めることができる。
【0045】
また、前記ポリオレフィン樹脂は、必要に応じて、前記ポリエチレン樹脂以外のその他の樹脂成分を含むことができる。その他の樹脂成分としては、耐熱性樹脂であることが好ましく、耐熱性樹脂としては、例えば、融点が150℃以上の結晶性樹脂(部分的に結晶性である樹脂を含む)、及び/又はガラス点移転(Tg)が150℃以上の非晶性樹脂が挙げられる。ここでTgはJIS K7121に準拠して測定した値である。
【0046】
その他の樹脂成分の具体例としては、ポリエステル、ポリメチルペンテン[PMP又はTPX(トランスパレントポリマーX)、融点:230~245℃]、ポリアミド(PA、融点:215~265℃)、ポリアリレンスルフィド(PAS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ化ビニリデン単独重合体やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ化オレフィンおよびこれらの共重合体などの含フッ素樹脂、ポリスチレン(PS、融点:230℃)、ポリビニルアルコール(PVA、融点:220~240℃)、ポリイミド(PI、Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(PAI、Tg:280℃)、ポリエーテルサルフォン(PES、Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、融点:334℃)、ポリカーボネート(PC、融点:220~240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:300℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(融点:216℃)等が挙げられる。その他の樹脂成分は、単一樹脂成分からなるものに限定されず、複数の樹脂成分からなるものでもよい。
【0047】
その他の樹脂成分の好ましい重量平均分子量(Mw)は、樹脂の種類により異なるが、一般的に1×10~1×10であり、より好ましくは1×10~7×10である。また、前記ポリオレフィン樹脂中のその他の樹脂成分の含有量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜、調節されるが、前記ポリオレフィン樹脂中おおよそ10質量%以下の範囲で含有される。
【0048】
また、その他の樹脂成分として、必要に応じて、前記ポリエチレン樹脂以外の他のポリオレフィンを含んでもよく、Mwが1.0×10~4.0×10のポリブテン-1ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1及びMwが1.0×10~1.0×10のポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種を用いてもよい。
【0049】
前記ポリエチレン樹脂以外のポリオレフィン樹脂の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜調節できるが、前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0050】
さらに、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などの各種添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0051】
ポリオレフィン樹脂に添加剤を配合する場合、その配合量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.01質量部~10質量部であることが好ましい。添加剤の配合量が0.01質量部以上であることにより、十分な効果が得られ、製造時の添加量制御を容易にできる。また、添加剤の配合量が10質量部以下であることにより経済性の点で有利となる。
【0052】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムが具備するような高い機械的強度、低熱収縮率、高空孔率、小孔径は、例えば、材料に融点が高い重量平均分子量1.0×10以上の超高分子量ポリエチレン樹脂を用い、さらに分散性の悪い高融点超高分子量ポリエチレン樹脂を均一に分散させるような混練をし、高倍率延伸することにより、得ることができる。
【0053】
本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの製造方法としては、下記の工程(1)~(5)を含むことが好ましく、下記の工程(6)をさらに含んでもよく、さらに下記の工程(7)及び/又は(8)を含むこともできる。
【0054】
(1)前記ポリオレフィン樹脂、成膜用溶剤を溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を調製する工程
(2)前記ポリオレフィン樹脂組成物を押出し、冷却しゲル状シートを形成する工程
(3)前記ゲル状シートを延伸する第1の延伸工程
(4)前記延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する工程
(5)前記製膜用溶剤除去後のシートを乾燥する工程
(6)前記乾燥後のシートを延伸する第2の延伸工程
(7)前記乾燥後のシートを熱処理する工程
(8)前記延伸工程後のシートに対して架橋処理及び/又は親水化処理する工程
【0055】
以下、各工程についてそれぞれ説明する。
(1)ポリオレフィン樹脂組成物の調製工程
ポリオレフィン樹脂を溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を調製する。調製方法としては、高結晶性の超高分子量ポリオレフィン樹脂の分散性を高めることが重要であり、例えば高せん断混練が可能であるバッチ式混練機を用いて原料を混練することができる。
【0056】
混練時の温度の下限値としては、170℃以上であることが好ましく、より好ましくは175℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。混練時の温度を170℃以上とすることにより、溶融樹脂の粘度を低くし、均一混錬が難しい超高分子量ポリオレフィン樹脂を均一に分散させることができる。また、混練時の温度の上限値としては、250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましく、185℃以下であることが特に好ましい。混練時の温度を250℃以下とすることにより、樹脂が分解して得られる多孔性ポリオレフィンフィルムの強度が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0057】
また混練時の回転数の下限値としては、100rpm以上であることが好ましく、120rpm以上であることがより好ましく、130rpm以上であることがさらに好ましく、150rpm以上であることが特に好ましい。混練時の回転数を100rpm以上とすることで、十分なせん断を樹脂に加えることができ、超高分子量ポリオレフィン樹脂を均一に分散させることができる。そのため、得られる多孔ポリオレフィンフィルム中の原料樹脂の未溶融樹脂の発生を抑制、すなわち突刺強度および引張破断強度の低下を防ぐことができる。また、混練時の回転数の上限値としては250rpm以下であることが好ましく、230rpm以下であることがより好ましく、200rpm以下であることがさらに好ましい。混練時の回転数を250rpm以下とすることで、混練中に原料の分子鎖が切れて、得られるポリオレフィンフィルムの強度が低下するのを防ぐことができる。
【0058】
混練時間の下限値としては、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましく、15分以上であることがさらに好ましい。混練時間を5分以上とすることで、超高分子量ポリオレフィン樹脂を均一に分散させることができる。また、混練時間の上限値としては、25分以下であることが好ましく、20分以下であることがより好ましい。混練時間を25分以下とすることで、混練中に原料が分解、劣化して得られる多孔性ポリオレフィンフィルムの強度が低下してしまうのを防ぐことができる。
【0059】
さらに原料は一括で添加するよりも、2回以上に分割して添加する方が好ましい。超高分子量ポリオレフィン樹脂と製膜用溶剤を予め混練した後に、他の成分を追添することにより、超高分子量ポリオレフィン樹脂が均一に分散し、得られる多孔性ポリオレフィンフィルムの低収縮率化、高強度化、高空孔率化、小径化につながる。
【0060】
前記製膜用溶剤は、ポリオレフィン樹脂を十分に溶解できる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、製膜用溶剤は室温で液体であることが好ましい。製膜用溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステルが挙げられる。
【0061】
液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、製膜用溶剤は、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。溶融混練状態では、ポリオレフィン樹脂と混和するが室温では固体の溶剤を液体溶剤に混合してもよい。このような固体溶剤として、ステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等が挙げられる。ただし、固体溶剤のみを使用すると、延伸ムラ等が発生するおそれがある。
【0062】
液体溶剤の粘度は40℃において20~200cStであることが好ましい。40℃における粘度を20cSt以上とすれば、ダイからポリオレフィン樹脂溶液を押し出したシートが不均一になりにくい。一方、40℃における粘度を200cSt以下とすれば液体溶剤の除去が容易である。なお、液体溶剤の粘度は、ウベローデ粘度計を用いて40℃で測定した粘度である。
【0063】
ポリオレフィン樹脂組成物中、ポリオレフィン樹脂と製膜用溶剤との配合割合は、ポリオレフィン樹脂と製膜用溶剤の合計100質量部に対して、ポリオレフィン樹脂含有量が15質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、22質量部以上であることがさらに好ましく、25質量部以上であることが最も好ましい。また、当該含有量は、60質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、45質量部以下であることがさらに好ましい。
【0064】
当該含有量を15質量部以上とすることにより、得られる多孔性ポリオレフィンフィルムの空孔率を低くすることができ、フィルムとしての強度を高くすることができる。また、当該含有量を60質量部以下とすることにより、溶剤のブリードアウトを防ぎ、均一に製膜、延伸することができるようになる。
【0065】
(2)ゲル状シートの形成工程
ポリオレフィン樹脂組成物を押出機からダイに送給し、シート状に押し出す。同一または異なる組成の複数のポリオレフィン樹脂組成物を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層し、シート状に押出してもよい。
【0066】
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。押出し温度は140~250℃好ましく、押出速度は0.2~15m/分が好ましい。ポリオレフィン樹脂組成物の各押出量を調節することにより、膜厚を調節することができる。
【0067】
押出し方法としては、例えば特許第2132327号明細書および特許第3347835号明細書に開示の方法を利用することができる。
【0068】
得られた押出し成形体を冷却することによりゲル状シートを形成する。ゲル状シートの形成方法として、例えば特許第2132327号明細書および特許第3347835号明細書に開示の方法を利用することができる。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましく、より好ましくは100℃/分以上、さらに好ましくは150℃/分以上である。ゲル状シートの冷却は50℃以下まで行うのが好ましく、より好ましくは40℃以下、さらに好ましくは30℃以下、特に好ましくは20℃以下まで行うのがよいとされる。
【0069】
(3)第1の延伸工程
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸する。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、高強度化、高生産性の観点から二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
【0070】
本工程における延伸倍率(面積延伸倍率)は、一軸延伸の場合、5倍以上が好ましく、10~100倍がより好ましい。二軸延伸の場合、25倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましく、45倍以上がさらに好ましく、75倍以上が特に好ましい。
【0071】
また、機械方向及び幅方向(MD方向及びTD方向)のいずれでも、延伸倍率は5倍以上が好ましく、6倍以上がより好ましい。MD方向とTD方向での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。
【0072】
延伸倍率が25倍以上であることにより、機械的強度を高めることができ好ましい。また、延伸倍率が150倍以上となると破膜の可能性が高くなり、好ましくない。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前の多孔性ポリオレフィンフィルムを基準として、次工程に供される直前の多孔性ポリオレフィンフィルムの面積延伸倍率のことをいう。
【0073】
本工程の延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(TCD)~TCD+30℃の範囲内にするのが好ましく、結晶分散温度(TCD)+5℃~結晶分散温度(TCD)+28℃の範囲内にするのがより好ましく、TCD+10℃~TCD+26℃の範囲内にするのが特に好ましい。延伸温度が前記範囲内であるとポリオレフィン樹脂延伸による破膜が抑制され、高倍率の延伸ができる。
【0074】
結晶分散温度(TCD)は、ASTM D4065による動的粘弾性の温度特性測定により求められる。超高分子量ポリエチレン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂以外のポリエチレン樹脂及びポリエチレン樹脂組成物は約100~110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度を90~130℃とするのが好ましく、より好ましくは110~120℃にし、さらに好ましくは114~117℃にする。
【0075】
以上のような延伸によりポリエチレン樹脂の結晶ラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン樹脂相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。
【0076】
(4)成膜用溶剤の除去工程
洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば特許第2132327号明細書や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
【0077】
(5)乾燥工程
成膜用溶剤を除去した多孔性ポリオレフィンフィルムを、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(TCD)以下であることが好ましく、特にTCDより5℃以上低いことが好ましい。乾燥は、多孔性ポリオレフィンフィルムを100質量部(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量部以下になるまで行うことが好ましく、3質量部以下になるまで行うのがより好ましい。
【0078】
(6)第2の延伸工程
乾燥後の多孔性ポリオレフィンフィルムを、少なくとも一軸方向に延伸することが好ましい。多孔性ポリオレフィンフィルムの延伸は、加熱しながら前記と同様にテンター法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次延伸のいずれでもよい。
【0079】
本工程における延伸温度は、特に限定されないが、通常90~135℃であり、好ましくは95~130℃である。
【0080】
本工程における多孔性ポリオレフィンフィルムの延伸の一軸方向への延伸倍率(面積延伸倍率)は、下限が1.0倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上である。また、一軸方向への延伸倍率の上限を5.0倍以下とするのが好ましい。一軸延伸の場合、延伸倍率はMD方向又はTD方向に1.0~5.0倍とする。
【0081】
二軸延伸の場合、面積延伸倍率は、下限が1.0倍以上であることが好ましく、より好ましくは1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上である。二軸延伸の場合、面積延伸倍率の上限は16.0倍以下が好適であり、MD方向及びTD方向に各々1.0~4.0倍とし、MD方向とTD方向での延伸倍率が互いに同じでも異なってもよい。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前の多孔性ポリオレフィンフィルムを基準として、次工程に供される直前の多孔性ポリオレフィンフィルムの延伸倍率のことをいう。
【0082】
(7)熱処理工程
また、乾燥後の多孔性ポリオレフィンフィルムは、熱処理を行うことができる。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法があげられる。熱処理温度はポリオレフィン樹脂のTCD~融点の範囲内が好ましい。
【0083】
(8)架橋処理工程、親水化処理工程
また、接合後又は延伸後の多孔性ポリオレフィンフィルムに対して、さらに、架橋処理及び/又は親水化処理を行うこともできる。
【0084】
例えば、多孔性ポリオレフィンフィルムに対して、Α線、Β線、Γ線、電子線等の電離放射線の照射することに、架橋処理を行う。電子線の照射の場合、0.1~100MRADの電子線量が好ましく、100~300KVの加速電圧が好ましい。架橋処理により多孔性ポリオレフィンフィルムのメルトダウン温度が上昇する。
【0085】
親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
【0086】
また、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムの少なくとも一方の表面に、多孔層を設け、積層多孔性ポリオレフィンフィルムとしてもよい。多孔層としては、例えば、フィラーと樹脂バインダとを含むフィラー含有樹脂溶液や耐熱性樹脂溶液を用いて形成される多孔層を挙げることができる。
【0087】
さらに、本発明の多孔性ポリオレフィンフィルムは、水系電解液を使用する電池、非水系電解質を使用する電池のいずれにも好適に使用できる。具体的には、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-亜鉛電池、銀-亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。中でも、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが好ましい。
【0088】
リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層されており、セパレータが電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、従来公知の構造を用いることができ、例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が交互に積層された電極構造(積層型)、積層された帯状の正極及び負極が巻回された電極構造(捲回型)等にすることができる。
【0089】
リチウムイオン二次電池に使用される、集電体、正極、正極活物質、負極、負極活物質および電解液は、特に限定されず、従来公知の材料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0090】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【実施例
【0091】
本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明の実施態様は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
【0092】
(1)膜厚
多孔性ポリオレフィンフィルムの95mm×95mmの範囲内における任意の無作為に抽出した箇所で5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、5点の膜厚の平均値を求めた。
【0093】
(2)空孔率
5cm角の試料を多孔性ポリオレフィンフィルムから切り取り、その体積(cm)と重量(g)を求め、それらとポリマー密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。以上の測定を同じフィルム中の異なる任意の無作為に抽出した箇所3点で行い、3点の空孔率の平均値を求めた。
空孔率=[(体積-重量/ポリマー密度)/体積]×100
【0094】
(3)最大孔径及び平均孔径
パームポロメーター(PMI社製、CFP-1500A)を用いて、Dry-up、Wet-upの順で、最大孔径及び平均孔径を測定した。Wet-upには表面張力が15.6dynes/cmのPMI社製Galwick(商品名)で十分に浸した多孔性ポリオレフィンフィルムに圧力をかけ、空気が貫通し始める圧力から換算される孔径を最大孔径とした。
【0095】
平均孔径については、Dry-up測定で圧力、流量曲線の1/2の傾きを示す曲線と、Wet-up測定の曲線が交わる点の圧力から平均孔径を換算した。圧力と平均孔径の換算は下記の数式を用いた。
d=C・γ/P
【0096】
上記式中、「d(μm)」は多孔性ポリオレフィンフィルムの平均孔径、「γ(mN/m)」は液体の表面張力、「P(Pa)」は圧力、「C」は定数とした。
【0097】
(4)空孔率50%、膜厚1μm換算の突刺強度
MARUBISHI社製の突刺計を用い、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1(μm)、空孔率P1(%)の多孔性ポリオレフィンフィルムを2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した。最大荷重の測定値L1(N)を、式:L2=L1/T1×50/(100-P1)により、膜厚を1μmとしたときの最大荷重L2に換算し、空孔率50%、膜厚1μm換算とした。以上の測定を同じ多孔性ポリオレフィンフィルム中の異なる任意の無作為に抽出した箇所3点で行い、空孔率50%、膜厚1μm換算の突刺強度の平均値を求めた。
【0098】
(5)重量平均分子量(Mw)
超高分子量ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂の重量平均分子量は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
【0099】
・測定装置:WATERS CORPORATION製GPC-150C
・カラム:昭和電工株式会社製SHODEX UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):O-ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0mL/分
・試料濃度:0.1wt%(溶解条件:135℃/1H)
・インジェクション量:500μL
・検出器:WATERS CORPORATION製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
【0100】
(6)最大溶融収縮率
熱機械的分析装置(セイコーインスルメンツ社製 TMA/SS 6100)を用いて以下の方法で最大溶融収縮率を求めた。すなわち、サンプル形状;幅3mm×長さ10mm、初期荷重;19.6mN、温度走査範囲;30~210℃、昇温速度;5℃/minの条件で、温度を昇温走査した。同じ多孔性ポリオレフィンフィルム中で、異なる任意の複数の領域を無作為に抽出した。複数の領域の各々において、3点ずつTD方向の収縮量測定を実施し、最も寸法が収縮した点での収縮率を最大溶融収縮率とした。各々の領域で求めた最大溶融収縮率の平均値を、「TD方向の最大溶融収縮率」とした。また、同様の方法で「MD方向の最大溶融収縮率」を求めた。
【0101】
(7)引張破断強度
引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。以上の測定をMD方向とTD方向について同じフィルム中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で、各3点ずつ測定を実施し、その3点ずつの平均値を各方向の引張破断強度(MD引張破断強度、TD引張破断強度)、全6点の平均値を平均引張破断強度とした。
【0102】
(8)引張破断伸度
引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、引張破断伸度は、試験前の試験片の標点間距離L0(mm)、破断時の標点距離L(mm)から以下の式より算出した。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。以上の測定をMD方向とTD方向について同じフィルム中の異なる任意の無作為に抽出した箇所で、各3点ずつ測定を実施し、その3点ずつの平均値を各方向の引張破断伸度(MD引張破断伸度、TD引張破断伸度)、全6点の平均値を平均引張破断伸度とした。
引張破断伸度(%)=[(L-L0)/L]×100
【0103】
(9)結晶化度、融点
試料を走査型示差熱量計(Perkin Elmer,Inc.製、DSC-System7型)のサンプルホルダー内に静置し、窒素雰囲気中にて30℃で1分間保持し、10℃/分の速度で230℃まで加熱した。昇温過程で得られたDSC曲線(溶融曲線)上の60℃における点と180℃における点とを通る直線をベースラインとして引き、ベースラインとDSC曲線とで囲まれる部分の面積から熱量(単位:J)を算出し、これを試料の重量(単位:g)で割ることにより、融解熱ΔHm(単位:J/g)を求めた。
また、同様にして融解熱ΔHmと吸熱融解曲線における極小値の温度を融点として測定した。
【0104】
(10)外観
多孔性ポリオレフィンフィルムの外観は目視にて評価した。目視により厚みまたは色味の変動が小さいものについて「○」、目視により厚みまたは色味の変動が大きいものについて「×」とした。
【0105】
(11)透気抵抗度(sec/100cm/20μm)
膜厚T1(μm)の孔性ポリオレフィンフィルムに対して、JIS P-8117に準拠して、透気抵抗度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で測定した透気抵抗度P1(sec/100cm)を、式:P2=(P1×20)/T1により、膜厚を20μmとしたときの透気抵抗度P2に換算した。
【0106】
(実施例1)
重量平均分子量(Mw)が1.5×10、融点が140.5℃、融解熱ΔHmが175J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂(UHPE)4.5質量部と、流動パラフィン75質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの東洋精機製作所製“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、180℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)20.5質量部を“ラボプラストミル”に追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。
【0107】
得られたポリエチレン樹脂組成物を、シート状成形体となるように180℃で5分間、10MPaでプレス機にて成形した。得られた成形体を、15℃に温調したプレス機で1MPaにて冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃でMD方向に7倍、TD方向に7倍となるように延伸速度1000mm/minにて同時二軸延伸を行った。延伸後の膜を20℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を20℃に調整された乾燥炉で乾燥し、電気オーブン内にて125℃で10分間熱固定処理することにより多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表1に、得られたフィルムの特性を表3に示した。
【0108】
(実施例2)
重量平均分子量(Mw)が2.0×10、融点が141.0℃、融解熱ΔHmが174J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂5.1質量部と、流動パラフィン71.5質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、190℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂23.4質量部をラボプラストミルに追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表1に、得られたフィルムの特性を表3に示した。
【0109】
(実施例3)
重量平均分子量(Mw)が2.0×10、融点が140.5℃、融解熱ΔHmが188J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂7.5質量部と、流動パラフィン75質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、180℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂17.5質量部をラボプラストミルに追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表1に、得られたフィルムの特性を表3に示した。
【0110】
(実施例4)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が141.7℃、融解熱ΔHmが186J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂7.5質量部と、流動パラフィン75質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、180℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂17.5質量部をラボプラストミルに追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表1に、得られたフィルムの特性を表3に示した。
【0111】
(比較例1)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が138.0℃、融解熱ΔHmが178J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂7.5質量部と、流動パラフィン75質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、180℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂17.5質量部をラボプラストミルに追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は、実施例1と同様の方法により、多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0112】
(比較例2)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が140.5℃、融解熱ΔHmが175J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂7.5質量部と、流動パラフィン75質量部からなる組成物をブレンドし、混合物を得た。得られた混合物を高せん断タイプの“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、180℃の温度で1分間溶融混練し、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂17.5質量部をラボプラストミルに追添し、上記条件にて9分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。
【0113】
得られたポリエチレン樹脂組成物を、シート状成形体となるように180℃で5分間、10MPaでプレス機にて成形した。得られた成形体を、15℃に温調したプレス機で1MPaにて冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃でMD方向に5倍、TD方向に5倍となるように延伸速度1000mm/minにて同時二軸延伸を行った。延伸後の膜を20℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を20℃に調整された乾燥炉で乾燥し、電気オーブン内にて125℃で10分間熱固定処理することにより多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0114】
(比較例3)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が133.9℃、融解熱ΔHmが147J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂30質量部と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂70質量部とからなるポリエチレン樹脂(PE)組成物100質量部をドライブレンドし混合物を得た。得られた混合物25質量部を高せん断タイプの東洋精機製作所製“ラボプラストミル”に投入し、スクリュー回転数150rpmに保持しながら、流動パラフィン75質量部を“ラボプラストミル”に追添し、10分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は実施例1と同様の方法により多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0115】
(比較例4)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が140.5℃、融解熱ΔHmが179J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂30質量部と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂70質量部とからなるポリエチレン樹脂(PE)組成物100質量部をドライブレンドし混合物を得た。得られた混合物25質量部と流動パラフィン75質量部をブレンドしラボプラストミルに投入し、スクリュー回転数を50rpmに保持しながら、190℃の温度で10分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。
【0116】
得られたポリエチレン樹脂組成物を、シート状成形体となるように180℃で5分間、10MPaでプレス機にて成形した。得られた成形体を、15℃に温調したプレス機で1MPaにて冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃でMD方向に7倍、TD方向に7倍となるように延伸速度1000mm/minにて同時二軸延伸を行った。延伸後の膜を20℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去した。洗浄した膜を20℃に調整された乾燥炉で乾燥し、電気オーブン内にて125℃で10分間熱固定処理することにより多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0117】
(比較例5)
重量平均分子量(Mw)が3.3×10、融点が143.7℃、融解熱ΔHmが205J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂30質量部と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂70質量部とからなるポリエチレン樹脂(PE)組成物100質量部をドライブレンドし混合物を得た。得られた混合物20質量部と流動パラフィン80質量部をブレンドしラボプラストミルに投入し、スクリュー回転数を50rpmに保持しながら、190℃の温度で10分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。
【0118】
得られたポリエチレン樹脂組成物を、シート状成形体となるように180℃で5分間、10MPaでプレス機にて成形した。得られた成形体を、15℃に温調したプレス機で1MPaにて冷却し、ゲル状シートを形成した。得られたゲル状シートを延伸温度115℃でMD方向に6倍、TD方向に6倍となるように延伸速度1000mm/minにて同時二軸延伸を行った。それ以外は、実施例1と同様の方法により多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0119】
(比較例6)
重量平均分子量(Mw)が2.5×10、融点が138.0℃、融解熱ΔHmが178J/gの超高分子量ポリエチレン樹脂30質量部と、Mwが2.8×10の高密度ポリエチレン樹脂70質量部とからなるポリエチレン樹脂(PE)組成物100質量部をドライブレンドし混合物を得た。得られた混合物25質量部と流動パラフィン75質量部をブレンドしラボプラストミルに投入し、スクリュー回転数を150rpmに保持しながら、180℃の温度で10分間溶融混練して、ポリエチレン樹脂組成物を調製した。それ以外は、比較例2と同様の方法により多孔性ポリオレフィンフィルムを得た。樹脂組成や製膜条件を表2に、得られたフィルムの特性を表4に示した。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
【表3】
【0123】
【表4】
【0124】
表3、4に示すとおり、実施例1~4においては、樹脂を分割添加することにより、高結晶性かつ高融点である超高分子量ポリエチレン樹脂を含む、外観が良好であり、強度および収縮率のバランスが優れた多孔性ポリオレフィンフィルムが得られた。
【0125】
一方、比較例1、3および6においては、使用する超高分子量ポリエチレン樹脂の結晶性が低く、融点が低いため、外観が良好な多孔性ポリオレフィンフィルムが得られたが、強度と収縮率の両立ができていなかった。比較例2においても、低倍率延伸をしているため強度と収縮率の両立ができなかった。比較例4および5においては、高結晶性かつ高融点の超高分子量ポリエチレン樹脂を用いているが、原料を一括添加し混練が不十分であるため、未溶融の樹脂が点在しており外観が不良であった。また、平均流量孔径が明らかに小さく、多孔性ポリオレフィンフィルムの孔径が小孔径化したことが認められた。