(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】異常検出手段、異常検出方法、および、異常検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G02F 1/133 20060101AFI20231212BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20231212BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
G02F1/133
G02F1/13 505
E06B9/24 C
(21)【出願番号】P 2019205420
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 正則
(72)【発明者】
【氏名】大久保 航
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132908(WO,A1)
【文献】特開2019-053290(JP,A)
【文献】特開2007-147903(JP,A)
【文献】特開2012-053308(JP,A)
【文献】特開2015-219383(JP,A)
【文献】特開2018-041139(JP,A)
【文献】特開2017-189027(JP,A)
【文献】特開2019-113799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0308448(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/13
G09G 3/18
G09G 3/36
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光装置に用いられる異常検出手段であって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を前記透明電極間に印加する駆動電圧発生回路を有し、
前記異常検出手段は、
判定対象期間における前記透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かを判断し、過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する異常判定手段と、
前記電圧パルスの印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが前記過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間が非対象期間であり、前記電圧パルスの印加タイミングから前記非対象期間が経過したときを前記判定対象期間の開始タイミングとするタイミング制御部と、
を備え
、
漏電異常検出手段をさらに備え、
前記漏電異常検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流を検出するソース電流検出回路と、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流を検出するシンク電流検出回路を有し、
前記非対象期間における前記ソース電流と前記シンク電流の差分を検出する差分検出回路と、
検出した差分の値を漏電判定用閾値と比較して漏電を検出する漏電判定回路を有する
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項2】
請求項1記載の異常検出手段であって、前記タイミング制御部は、前記電圧パルスの印加タイミングを制御する
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項3】
請求項1または2に記載の異常検出手段であって、
前記異常判定手段は、
前記透明電極間の電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路の検出信号に対し一部をマスクする電流検出マスク回路と、
前記電流検出マスク回路によるマスク後の検出信号が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する判定回路と、を備え、
前記タイミング制御部は、
前記電流検出マスク回路がマスクする期間を前記非対象期間とする
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項4】
請求項3記載の異常検出手段であって、
前記異常判定手段は、前記判定対象期間の検出信号での最大値を保持するピークホールド回路をさらに備え、
前記判定回路は、前記ピークホールド回路が保持する前記最大値が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の最大値が検出されることを異常であると判定し、
前記タイミング制御部は、前記印加タイミングの直前に前記ピークホールド回路をリセットする
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の異常検出手段であって、
前記調光装置は、定電圧電源の電圧レベルを前記電圧パルスの電圧レベルに変換する昇圧回路と、前記昇圧回路の出力レベルから前記駆動電圧を生成する前記駆動電圧発生回路を備え、
前記タイミング制御部は、前記駆動電圧発生回路の出力タイミングを制御して前記駆動電圧を前記透明電極間に印加すると共に、前記異常であると判定されたときに、前記駆動電圧の印加を停止させる
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項6】
請求項5記載の異常検出手段であって、
前記異常判定手段は、前記透明電極間の電流を検出する電流検出回路を備え、
前記駆動電圧発生回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチから成るフルブリッジ回路を備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第3スイッチと、直列接続された前記第2スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部が前記昇圧回路の出力レベルに接続され、
前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部が前記電流検出回路を介して接地レベルに接続され、
前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部が一方の前記透明電極に接続され、
前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部が他方の前記透明電極に接続され、
前記タイミング制御部は、前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオフすることと、前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオンすることとを交互に繰り返して、前記駆動電圧を前記透明電極間に印加し、
前記電流検出回路は、前記透明電極間の電流として、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部から接地レベルに流れる電流を検出する
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項7】
請求項5または6に記載の異常検出手段であって、
前記定電圧電源の出力電流が所定値以上であるとき、ヒューズを溶断して前記昇圧回路と前記定電圧電源との接続を断つ過電流保護回路をさらに備える
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の異常検出手段であって、
前記異常であると判定されたときに、前記調光装置に異常が発生した旨を外部に報知する異常報知手段をさらに備える
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項9】
請求項
1記載の異常検出手段であって、
前記漏電判定用閾値を可変にして自在に設定できる回路を有する
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項10】
請求項
1又は9に記載の異常検出手段であって、
異常な過電流による異常判定と、
前記漏電異常検出手段による漏電判定と、を区別して通知する異常報知手段を有する
ことを特徴とする異常検出手段。
【請求項11】
調光装置に発生した異常を検出する異常検出方法であって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、駆動電圧発生回路が相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を前記透明電極間に印加し、
前記電圧パルスの印加タイミングから、当該印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間である非対象期間が経過したときに、前記透明電極間の電流が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定
し、
漏電異常検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流を検出し、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流を検出し、
前記非対象期間における前記ソース電流と前記シンク電流の差分を検出した値を漏電判定用閾値と比較することで漏電異常を判定する
ことを特徴とする異常検出方法。
【請求項12】
調光装置に発生した異常を異常検出手段に検出させる異常検出プログラムであって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、
前記透明電極間に相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を駆動電圧発生回路に印加させるタイミングを制御するプログラムと、
前記電圧パルスの印加タイミングから、当該印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間である非対象期間が経過したときに、前記透明電極間の電流が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定する判定対象期間の開始タイミングとするタイミングを制御するプログラムと、
前記異常検出手段に、前記判定対象期間における前記透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かを判定させ、過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常である
と判定させるプログラム
と、を有
し、
前記異常検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流をソース電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流をシンク電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記非対象期間における前記ソース電流のデジタルデータと前記シンク電流のデジタルデータの差分データを演算するプログラムと、
該差分データを、漏電判定用閾値データと比較し、該差分データが前記漏電判定用閾値データを越えた場合に漏電判定処理を行うプログラムと、を有する
ことを特徴とする異常検出プログラム。
【請求項13】
請求項
12記載の異常検出プログラムであって、
前記異常検出手段が、前記透明電極間の電流を電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記電圧パルスの印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが前記過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間の非対象期間と前記非対象期間以外の判定対象期間を区別するプログラムと、
前記透明電極間の電流のデジタルデータから、前記判定対象期間の電流のデジタルデータのみを処理するマスク処理を行うプログラムと、
前記判定対象期間の電流のデジタルデータの最大値を抽出して記憶するピークホールド処理を行うプログラムと、
前記最大値を過電流判定用閾値と比較し、前記最大値が過電流判定用閾値以上である場合に異常判定処理を行うプログラム
と、を有する
ことを特徴とする異常検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光装置に用いられる異常検出手段、異常検出方法、および、異常検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
調光装置は、一対の透明電極に挟まれた調光層を備える。調光層は、液晶組成物を含み、透明電極間の電圧の変化に応じて、透明と不透明とに変わる。調光層を駆動する駆動回路は、透明電極間に交流電圧を印加して調光層の長寿命化を図る(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
調光層を駆動する型式は、ノーマル型とリバース型とに分類される。ノーマル型の駆動では、非通電時の調光層が不透明であり、通電時の調光層が透明である。ノーマル型の駆動は、光の遮蔽性を頻繁に必要とするスクリーン等への適用に好適である。リバース型の駆動では、非通電時の調光層が透明であり、通電時の調光層が不透明である(例えば、特許文献2を参照)。リバース型の駆動は、透明による安全性を非常時に必要とする建材等への適用に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-091986号公報
【文献】特開2000-321562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した調光装置には、透明電極間に印加される電圧レベルが10ボルト以上に達する場合もあるため、駆動回路を保護する観点や省電力化を図る観点から、調光装置に異常が生じた場合には、異常が生じていることを即座に検出することが求められている。
【0006】
本発明は、調光装置の異常を検出可能にした異常検出手段、異常検出方法、および、異常検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、調光装置に用いられる異常検出手段であって、前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を前記透明電極間に印加する駆動電圧発生回路を有し、前記異常検出手段は、判定対象期間における前記透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かを判断し、過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する異常判定手段と、前記電圧パルスの印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが前記過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間が非対象期間であり、前記電圧パルスの印加タイミングから前記非対象期間が経過したときを前記判定対象期間の開始タイミングとするタイミング制御部と、を備えることを特徴とする異常検出手段である。
【0008】
本発明は、この構成により、非対象期間の初めのタイミングに生じた電流のスパイクが、異常判定手段による判定の対象から除外され、電流のスパイクに起因した誤判定が抑制されるので、調光装置に発生した異常の検出精度が向上する効果がある。
【0009】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、前記タイミング制御部は、前記電圧パルスの印加タイミングを制御することを特徴とする異常検出手段である。
【0010】
本発明は、この構成により、共通する単一のタイミング制御部が、電流のスパイクが生じはじめるタイミング(電圧パルスの印加タイミング)と、スパイク以外を検出しはじめるタイミング(判定対象期間の開始タイミング)とを制御するため、電圧パルスの印加による電流のスパイクを判定の対象から除外することの精度向上が可能となる効果がある。
【0011】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、前記異常判定手段は、
前記透明電極間の電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路の検出信号に対し一部をマスクする電流検出マスク回路と、
前記電流検出マスク回路によるマスク後の検出信号が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する判定回路と、を備え、
前記タイミング制御部は、
前記電流検出マスク回路がマスクする期間を前記非対象期間とする
ことを特徴とする異常検出手段である。
【0012】
本発明は、この構成により、調光装置での異常が非対象期間を跨いで発生する場合にも、調光装置の異常が検出可能となる効果がある。
【0013】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
前記異常判定手段は、前記判定対象期間の検出信号での最大値を保持するピークホールド回路をさらに備え、
前記判定回路は、前記ピークホールド回路が保持する前記最大値が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の最大値が検出されることを異常であると判定し、
前記タイミング制御部は、前記印加タイミングの直前に前記ピークホールド回路をリセットする
ことを特徴とする異常検出手段である。
【0014】
本発明は、この構成により、判定対象期間に検出された検出信号での最大値がピークホールド回路に保持される。そのため、検出信号が過電流判定用閾値以上であるか否かの判定を検出順に逐次実行する構成と比べて、判定の回数が低減可能である効果がある。
【0015】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
前記調光装置は、定電圧電源の電圧レベルを前記電圧パルスの電圧レベルに変換する昇圧回路と、前記昇圧回路の出力レベルから前記駆動電圧を生成する前記駆動電圧発生回路を備え、
前記タイミング制御部は、前記駆動電圧発生回路の出力タイミングを制御して前記駆動電圧を前記透明電極間に印加すると共に、前記異常であると判定されたときに、前記駆動電圧の印加を停止させる
ことを特徴とする異常検出手段である。
【0016】
本発明は、この構成により、調光装置の異常に起因した消費電力の増大を抑制できる効果がある。
【0017】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
前記異常判定手段は、前記透明電極間の電流を検出する電流検出回路を備え、
前記駆動電圧発生回路は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチか
ら成るフルブリッジ回路を備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第3スイッチと、直列接続された前記第2スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部が前記昇圧回路の出力レベルに接続され、
前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部が前記電流検出回路を介して接地レベルに接続され、
前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部が一方の前記透明電極に接続され、
前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部が他方の前記透明電極に接続され、
前記タイミング制御部は、前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオフすることと、前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオンすることとを交互に繰り返して、前記駆動電圧を前記透明電極間に印加し、
前記電流検出回路は、前記透明電極間の電流として、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部から接地レベルに流れる電流を検出する
ことを特徴とする異常検出手段である。
【0018】
本発明は、この構成により、第1スイッチと第3スイッチとの接続部は、一方の透明電極に接続される。第2スイッチと第4スイッチとの接続部は、他方の透明電極に接続される。そして、第3スイッチと第4スイッチとの接続部の接続先は、一方の透明電極と、他方の透明電極とに切り替わる。すなわち、検出回路が検出する電流の流れる経路は、一方の透明電極と接地レベルとを接続する経路と、他方の透明電極と接地レベルとを接続する経路とに切り替わる。
【0019】
ここで、透明電極間に印加される電圧パルスの極性が変わると、透明電極間の電流が流れる方向も反転する。この点、上記構成であれば、検出回路が検出する対象は、電圧パルスの極性が変わることに合わせて上記のように変わる。結果として、透明電極間で電流の流れる方向が反転するとしても、検出回路が検出する電流の流れる方向は接地レベルに向けて一定の方向に流れるので、片方向に流れる電流を検出する簡素な構成が、検出回路に採用可能である効果がある。
【0020】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
前記定電圧電源の出力電流が所定値以上であるとき、ヒューズを溶断して前記昇圧回路と前記定電圧電源との接続を断つ過電流保護回路をさらに備えることを特徴とする異常検出手段である。
【0021】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
前記異常であると判定されたときに、前記調光装置に異常が発生した旨を外部に報知する異常報知手段をさらに備えることを特徴とする異常検出手段である。
【0022】
本発明は、この構成により、調光装置に異常が発生していることが外部に報知される。そのため、外部から視認される程度の異常に対し、調光装置を駆動するための回路に生じた異常と、調光装置自体に生じた異常とのいずれが要因であるかが把握される。結果として、調光装置に関わる異常に対し対処が容易になる効果がある。
【0023】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、
漏電異常検出手段を備え、前記漏電異常検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流を検出するソース電流検出回路と、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流を検出するシンク電流検出回路を有し、
前記ソース電流と前記シンク電流の差分を検出する差分検出回路と、
検出した差分の値を漏電判定用閾値と比較して漏電を検出する漏電判定回路を有する
ことを特徴とする異常検出手段である。
【0024】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、前記漏電判定用閾値を可変にして自在に設定できる回路を有することを特徴とする異常検出手段である。
【0025】
また、本発明は、上記の異常検出手段であって、異常な過電流による異常判定と、漏電異常検出手段による漏電判定と、を区別して通知する異常報知手段を有することを特徴とする異常検出手段である。
【0026】
また、本発明は、調光装置に発生した異常を検出する異常検出方法であって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、駆動電圧発生回路が相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を前記透明電極間に印加し、
前記電圧パルスの印加タイミングから、当該印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間である非対象期間が経過したときに、前記透明電極間の電流が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、前記過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定することを特徴とする異常検出方法である。
【0027】
また、本発明は、調光装置に発生した異常を検出する異常検出方法であって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、駆動電圧発生回路が相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を前記透明電極間に印加し、
漏電検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流を検出し、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流を検出し、
前記ソース電流と前記シンク電流の差分を検出した値を漏電判定用閾値と比較することで漏電異常を判定することを特徴とする異常検出方法である。
【0028】
また、本発明は、調光装置に発生した異常を異常検出手段に検出させる異常検出プログラムであって、
前記調光装置は、透明電極間に位置する調光層を備え、
前記透明電極間に相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧を駆動電圧発生回路に印加させるタイミングを制御するプログラムと、
前記電圧パルスの印加タイミングから、当該印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間である非対象期間が経過したときに、前記透明電極間の電流が前記過電流判定用閾値以上であるか否かを判定する判定対象期間の開始タイミングとするタイミングを制御するプログラムと、
前記異常検出手段に、前記判定対象期間における前記透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かを判定させ、過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する判定させるプログラム
を有することを特徴とする異常検出プログラムである。
【0029】
また、本発明は、上記の異常検出プログラムであって、
前記異常検出手段が、前記透明電極間の電流を電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記電圧パルスの印加タイミングに生じた前記透明電極間の電流のスパイクが前記過電流判定用閾値未満になるまでの所定期間の非対象期間と前記非対象期間以外の判定対象期間を区別するプログラムと、
前記透明電極間の電流のデジタルデータから、前記判定対象期間の電流のデジタルデータ
のみを処理するマスク処理を行うプログラムと、
前記判定対象期間の電流のデジタルデータの最大値を抽出して記憶するピークホールド処理を行うプログラムと、
前記最大値を過電流判定用閾値と比較し、前記最大値が過電流判定用閾値以上である場合に異常判定処理を行うプログラムを有する
ことを特徴とする異常検出プログラムである。
【0030】
また、本発明は、上記の異常検出プログラムであって、
前記異常検出手段が、
前記駆動電圧発生回路の電源側の端子に流れ込むソース電流をソース電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記駆動電圧発生回路の接地レベル側の端子から流れ出すシンク電流をシンク電流検出回路で検出してA/D変換器でデジタルデータに変換する回路を有し、
前記ソース電流のデジタルデータと前記シンク電流のデジタルデータの差分データを演算するプログラムと、
該差分データを、漏電判定用閾値データと比較し、該差分データが前記漏電判定用閾値データを越えた場合に漏電判定処理を行うプログラムを有する
ことを特徴とする異常検出プログラムである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、電圧パルスの印加タイミングに生じたスパイク状電流は、異常判定手段による判定の対象から除外される。そして、電圧パルスの印加によるスパイク状電流は、調光装置に発生した異常による電流とは判定されず、正常な電流として取り扱われる。
【0032】
本発明は、この構成により、非対象期間の初めのタイミングに生じた電流のスパイクが、異常判定手段による判定の対象から除外され、電流のスパイクに起因した誤判定が抑制されるので、調光装置に発生した異常の検出精度が向上する効果がある。
【0033】
また、上記構成によれば、電圧パルスが透明電極間に印加される都度、タイミング制御部が判定対象期間を設定する。各判定対象期間では、透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かが判定されて、透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であることが異常であると判定される。そして、調光装置における異常の有無が、電圧パルスの印加周期で判定されるため、調光装置に異常が生じた場合には、異常が生じていることが即座に検出される効果がある。
【0034】
また、本発明は、ソース電流検出回路とシンク電流検出回路を有し、ソース電流検出回路が検出したソース電流と、シンク電流検出回路が検出したシンク電流を比較する差分検出回路を有し、差分検出回路の出力により漏電の有無を判定する漏電判定回路を有する漏電異常検出手段を備える。
【0035】
この構成により、漏電発生時の異常電流も検出して調光装置の異常を判定できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態の異常検出手段の構成を調光装置と共に示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態の異常検出手段を組み込んだ回路図である。
【
図3】(a)(b)(c)本発明の第1の実施形態の異常検出手段が行う異常検出方法の作用を検出信号の推移を用いて示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第2の実施形態の漏電異常検出手段の一実施形態での構成を調光装置と共に示すブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態の漏電異常検出手段を組み込んだ回路ブロック図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の漏電異常検出手段を組み込んだ回路図である。
【
図7】(a)(b)(c)本発明の第2の実施形態の漏電異常検出手段が行う漏電検出方法の作用を検出信号の推移を用いて示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1の実施形態>
以下で、
図1から
図3を参照して本発明の調光装置の第1の実施形態を説明する。本実施形態の調光装置は、
図1のように、調光フィルム10と、調光フィルムを駆動する駆動回路20を備え、駆動回路20が異常検出手段30を含む。
【0038】
(調光フィルム10)
本実施形態の調光装置が用いる調光フィルム10は、車両や航空機などの移動体が備える窓に貼り付けられる。また、調光フィルム10は、住宅、駅、空港などの建物が備える窓、オフィスなどに設置されたパーティション、店舗などに設置されたショーウインドウに貼り付けられる。
【0039】
調光フィルム10が貼り付けられる対象は、平面状、曲面状、不定形状などの各種の形状を有する。調光フィルム10の形状は、矩形以外の幾何学形状、不定形状などのシート状、あるいは、板状に変更可能である。
【0040】
調光フィルム10の型式は、液晶型、あるいは、エレクトロクロミック型である。液晶型は、液晶分子に印加される電場の大きさに応じて、光を散乱する状態と、光を透過する状態との間で、液晶分子の配向を可逆的に変える。エレクトロクロミック型は、調光フィルム10に印加される電圧の大きさに応じて可逆的に酸化還元反応を進めると共に、その酸化還元反応の進行に伴って光の吸収率を変える。液晶型の調光フィルム10に対する異常検出と、エレクトロクロミック型の調光フィルム10に対する異常検出とは、同様であるため、以下では、調光フィルム10の型式が液晶型である例を示す。
【0041】
調光フィルム10は、
図1の様に、第1透明電極11、第2透明電極12、および、調光層13を備える。各透明電極11,12は、可視光透過性と電気伝導性とを備える。各透明電極11,12を構成する材料は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、銀合金薄膜からなる群から選択されるいずれか一種である。
【0042】
調光層13は、液晶組成物を含む。液晶組成物に含まれる液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系からなる群から選択される一種である。
【0043】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか一種である。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した高分子ネットワークを備えて、高分子ネットワークが有する空隙に液晶組成物を保持する。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を高分子層のなかに備えて、高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を高分子層のなかに保持する。
【0044】
調光層13は、容量成分と抵抗成分との並列回路として見なされる。調光層13は、駆
動電圧の印加を受けて、液晶分子の配向方向を変える。配向方向の変更は、調光層13に入射する可視光の散乱度合い、吸収度合い、および、透過度合いを変える。
【0045】
調光フィルム10の型式は、ノーマル型とリバース型とのいずれか一種である。ノーマル型は、駆動電圧の印加によって、高透過率を実現する。また、ノーマル型は、駆動電圧の印加停止によって、低透過率を実現する。これに対して、リバース型は、駆動電圧の印加によって、低透過率を実現する。また、リバース型は、駆動電圧の印加停止によって、高透過率を実現する。
【0046】
(駆動回路20)
調光装置は、駆動回路20を備える。駆動回路20は、定電圧電源21、過電流保護回路22、昇圧回路23、制御用電源回路24、タイミング制御回路26、入力手段25、および、フルブリッジ回路から成る駆動電圧発生回路27、異常検出手段30を備える。
【0047】
駆動回路20は、調光フィルム10に加える印加電圧を変更するか、又は、調光フィルム10に加える印加電圧を加える時間を変更する事で、調光フィルム10の調光層13の透過率を変更する。
【0048】
調光フィルム10の故障モードは調光フィルム10の端部あるいは面内での上下フィルム間のショートまたはリード線やフィルム接続部のオープン等が考えられる。オープンの故障であれば故障電流は流れず所定の電圧のみが出力されることになり特に大きな事故には至らない。しかしショートの故障の場合、過大な短絡電流が流れ調光フィルム10の調光層13や各透明電極11,12、あるいは近傍の可燃物等が焼損する可能性がある。
【0049】
故障が発生した場合、駆動回路20の過電流保護回路22に設けたヒューズが溶断し回路に過大な電流が流れぬよう遮断する。しかし溶断型ヒューズは正常電流のスパイク電流などにより容易に溶断しないように溶断電流を大きく設定するのが一般的である。
【0050】
しかし、調光フィルム10に故障が発生した場合に、過電流保護回路22に設けたヒューズによっては、即時に回路を遮断することが出来ないという欠点があり、それを改善するべき課題があった。
【0051】
本実施形態は、その課題を解決するために、
図1に示すような異常検出手段30を加えた調光装置を用いる。本実施形態は、
図2の回路図の様に様に、駆動回路20に異常検出手段30を加えた構成を持つ。異常検出手段30は、
図2の様に、タイミング制御回路26で制御される駆動電圧発生回路27に電流検出回路31を接続し、電流検出回路31が測定した電流の検出信号Iaの信号を処理して過電流異常を検出する。
【0052】
図3に示すような異常時に発生する電流の波形を鑑み、異常検出手段30が電流検出マスク回路32を用いて正常時に流れる電流と、ショート故障によって調光フィルム10透明電極11,12間に短絡がある場合等に流れる過電流を識別し、確実に調光フィルムの故障を判定する。
【0053】
(タイミング制御回路26と異常検出手段30)
駆動回路20の制御手段は、中央演算処理装置、および、メモリを備える。制御手段は、各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、制御手段が、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。制御手段は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路として構成される。
【0054】
駆動回路20の制御手段は、読み取り可能な可読媒体に、タイミング制御回路26に駆動電圧を制御させるプログラムと、異常検出手段30の異常検出プログラムを記憶し、駆動電圧を制御させるプログラムと異常検出プログラムが、タイミング制御回路26の動作を制御する。
【0055】
制御手段が、可読媒体の記憶する異常検出プログラムを読み出して異常検出手段30を動作させて異常検出処理を行う。異常検出手段30は、タイミング制御回路26に、非対象期間を定めるためのマスク信号SIGMを発生させ、発生させたマスク信号SIGMを電流検出マスク回路32に入力させる。
【0056】
異常検出手段30は、タイミング制御回路26にマスク信号SIGMを発生させる機能の他に、電流検出回路31、電流検出マスク回路32、ピークホールド回路33、異常判定回路34、異常報知手段35を備える。
【0057】
(駆動回路20の各回路)
定電圧電源21は、移動体が搭載する電源、あるいは、建物が備える電源である。定電圧電源21は、直流定電圧を出力する。直流定電圧は、例えば、12Vである。
【0058】
過電流保護回路22は、定電圧電源21と昇圧回路23とに接続されて、定電圧電源21が出力する直流定電圧を昇圧回路23に入力する。過電流保護回路22は、定電圧電源21と制御用電源回路24とに接続されて、定電圧電源21が出力する直流定電圧を制御用電源回路24に入力する。過電流保護回路22は、定電圧電源21の出力電流が所定値以上であるとき、ヒューズを溶断して、定電圧電源21と、昇圧回路23および制御用電源回路24との接続を断つ。過電流保護回路22が備えたヒューズは、正常電流のスパイクでは溶断されないように、大きな溶断電流を備える。
【0059】
過電流保護回路22が備えたヒューズは、正常な電流のスパイクでは溶断されないように、溶断電流を大きく設定される。一方、溶断電流が大きいヒューズは、定電圧電源21が過電流を出力する際に、定電圧電源21と昇圧回路23との接続を即座には断ち難い。この点、上述した構成であれば、調光装置が異常であると判定されたときに、駆動電圧の印加が停止する。すなわち、調光装置を駆動するための各種の回路は、タイミング制御回路26が行う制御によって、調光装置自体の異常に対し保護される。そして、調光装置を駆動するための各種の回路は、溶断電流が大きいヒューズを備えた過電流保護回路22によって、他の回路の異常に対し適切に保護される効果がある。
【0060】
昇圧回路23は、定電圧電源21が出力する直流定電圧の電圧レベルを、駆動電圧を生成するための電圧レベルに昇圧する。第1透明電極11と第2透明電極12との間に印加する駆動電圧は、駆動電圧発生回路27が、相互に異なる極性の電圧パルス(
図3を参照)を交互に繰り返して印加する。駆動電圧を生成するための電圧レベルは、駆動電圧の印加によって液晶分子の配向を変えることができる電圧レベルであり、例えば、50Vである。
【0061】
制御用電源回路24は、定電圧電源21が出力する直流定電圧の電圧レベルを、タイミング制御回路26と異常検出手段30を駆動するための電圧レベルに降圧する。タイミング制御回路26と異常検出手段30を駆動するための電圧レベルは、例えば、3.3Vである。
【0062】
入力手段25は、オルタネイト型の機械的スイッチ、あるいは、静電容量式のタッチパ
ネルスイッチなどの入力インターフェースを備える。入力手段25は、調光装置を駆動させるためのスイッチ操作を受けて、当該操作に対応する操作信号をタイミング制御回路26に入力する。入力手段25は、調光装置の駆動を停止させるためのスイッチ操作を受けて、当該操作に対応する操作信号をタイミング制御回路26に入力する。タイミング制御回路26は、各操作信号の入力を受けて、各操作信号に準じた処理を実行する。
【0063】
(駆動電圧発生回路27)
駆動電圧発生回路27は、
図2の様に、第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第3スイッチQ3、第4スイッチQ4から成るフルブリッジ回路を備える。第1スイッチQ1は、pチャンネル型トランジスタである。第3スイッチQ3は、nチャンネル型トランジスタである。第1スイッチQ1と第3スイッチQ3とが、CMOSトランジスタを構成する。また、第2スイッチQ2は、pチャンネル型トランジスタである。第4スイッチQ4は、nチャンネル型トランジスタである。第2スイッチQ2と第4スイッチQ4とが、CMOSトランジスタを構成する。
【0064】
なお、トランジスタのゲート信号の電圧レベルを、第1スイッチQ1、および、第2スイッチQ2のソース端子のレベルにまでシフト可能な専用ICなどをタイミング制御回路26に内蔵した場合には、第1スイッチQ1、および、第2スイッチQ2は、nチャンネル型トランジスタを使用することも可能である。
【0065】
第1スイッチQ1と第3スイッチQ3とは、直列接続されている。第2スイッチQ2と第4スイッチQ4とは、直列接続されている。直列接続された第1スイッチQ1、および、第3スイッチQ3と、直列接続された第2スイッチQ2、および、第4スイッチQ4とは、並列接続されている。
【0066】
昇圧回路23の出力端に接続する駆動電圧発生回路27の電源側の端子には、第1スイッチQ1と第2スイッチQ2の第1の端子が接続され、接地レベル側に設置する電流検出回路31の端子に接続する駆動電圧発生回路27の端子には、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4の第2の端子が接続されている。
【0067】
そして、第1スイッチQ1の第2の端子と第3スイッチQ3の第1の端子は、第1透明電極11に接続されている。第2スイッチQ2の第2の端子と第4スイッチQ4の第1の端子は、第2透明電極12に接続されている。
【0068】
こうして、駆動電圧発生回路27の第3スイッチQ3と第4スイッチQ4の第2の端子が接続する接地レベル側の端子は、電流検出回路31を介して接地レベルに接続されている。
【0069】
タイミング制御回路26は、駆動電圧発生回路27の出力タイミングを制御して、第1透明電極11と第2透明電極12との間に駆動電圧を印加する。
【0070】
すなわち、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンし、かつ、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフし、それによって、第1透明電極11が接地レベルであって、かつ、第2透明電極12が昇圧回路23の出力レベルとなる電圧パルスを、透明電極11,12間に印加する。
【0071】
また、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフし、かつ、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンし、それによって、第1透明電極11が昇圧回路23の出力レベルであって、かつ、第2透明電極12が接地レベルである電圧パルスを、透明電極11,12間に印加する。
【0072】
そして、タイミング制御回路26は、昇圧回路23の出力レベルを、第1透明電極11と第2透明電極12とに交互に繰り返して印加する。また、タイミング制御回路26は、第1透明電極11が昇圧回路23の出力レベルである期間と、第2透明電極12が昇圧回路23の出力レベルである期間との間に、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフし、各透明電極11,12がフローティング状態である期間とする。
【0073】
(透明電極11,12間の電流のスパイク)
本実施形態の駆動電圧発生回路27がスイッチQ1,Q2,Q3,Q4を切り替えて、透明電極11,12間に相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返して印加する場合の電圧パルスの立上り、あるいは立下りの際に、調光フィルム10の透明電極11,12間に容量が有る事によって、
図3(b)の様に、第1透明電極11の電圧レベルV11の正電圧への切り替えの際と、負電圧への切り替えの際とで、スパイク状電流を生じる。
【0074】
(異常検出手段30の電流検出回路31)
電流検出回路31は、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部と、接地レベルとに接続されている。電流検出回路31は、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部から接地レベルに流れる電流を検出する。第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部から接地レベルに流れる電流は、第1透明電極11と第2透明電極12との間に流れる電流として取り扱われる。
【0075】
なお、上述したように、第2スイッチQ2と第4スイッチQ4との接続部は、第1透明電極に接続される。第1スイッチQ1と第3スイッチQ3との接続部は、第2透明電極12に接続される。そして、駆動電圧が調光フィルム10に印加されるとき、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4との接続部の接続先は、第1透明電極11と、第2透明電極12とに切り替わる。すなわち、電流検出回路31が検出する電流の流れる経路は、第1透明電極11と接地レベルとを接続する経路と、第2透明電極12と接地レベルとを接続する経路とに切り替わる。
【0076】
ここで、透明電極11,12間に印加される電圧パルスの極性が変わると、透明電極11,12間の電流が流れる方向も反転する。この点、電流検出回路31が検出する対象は、電圧パルスの極性が変わることに合わせて上記のように変わる。結果として、透明電極11,12間で電流の流れる方向が反転するとしても、電流検出回路31が検出する電流の流れる方向は一定となる。そのため、片方向に流れる電流を検出する簡素な構成が、電流検出回路31に採用可能である。
【0077】
(異常検出手段30の電流検出マスク回路32)
電流検出マスク回路32は、電流検出回路31に接続されている。電流検出マスク回路32は、電流検出回路31が逐次出力する検出信号Ia(検出電流)に対し一部をマスクし、マスク後の検出信号Iaである抽出信号Imを出力する。電流検出マスク回路32は、マスクを行う期間中は、透明電極11,12間の電流が過電流判定用閾値Ith未満であることを示す抽出信号Imを出力する。電流検出マスク回路32は、マスクを行わない期間中、検出信号Iaに相当する抽出信号Imを出力する。
【0078】
異常検出手段30は、タイミング制御回路26に発生させるマスク信号SIGMを用いて、電流検出マスク回路32がマスクを行う期間を制御する。電流検出マスク回路32がマスクする期間は、非対象期間である。電流検出マスク回路32がマスクしない期間は、判定対象期間である。電流検出マスク回路32がマスクする期間である非対象期間は、スパイクが閾値未満になる期間を推定して定める。
【0079】
異常検出手段30は、非対象期間を定めるためのマスク信号SIGMを、タイミング制御回路26に発生させて電流検出マスク回路32に入力させる。マスク信号SIGMの立ち上がりは、非対象期間が始まるタイミングであって、判定対象期間が終わるタイミングである。マスク信号SIGMの立ち下がりは、非対象期間が終わるタイミングであって、判定対象期間が始まるタイミングである。
【0080】
タイミング制御回路26は、電圧パルスを印加するタイミング(印加タイミング)から非対象期間を開始する。タイミング制御回路26は、印加タイミングに生じた透明電極11,12間の電流のスパイクが閾値Ith未満になった後に非対象期間を終了する。すなわち、タイミング制御回路26は、電圧パルスの印加タイミングに判定対象期間を終了し、その判定対象期間の終了時点から非対象期間を開始し、次に非対象期間が終了した時点から、判定対象期間を再度開始する。
【0081】
電圧パルスの印加のタイミングにおいて、透明電極11,12間に流れる電流が生じるスパイクは、正常電流による波形の乱れである。正常電流によるスパイクが過電流判定用閾値Ith未満になるまでの期間は、例えば、調光フィルム10が有する容量成分と抵抗成分とに基づいて予め定められる。あるいは、正常電流によるスパイクが過電流判定用閾値Ith未満になるまでの期間は、例えば、調光フィルム10を用いた試験研究に基づいて予め定められる。
【0082】
過電流判定用閾値Ith以上の電流は、正常電流でのスパイクを除いて、透明電極11,12間に流れる異常な過電流である。透明電極11,12間に流れる過電流は、第1透明電極11と第2透明電極12との接触などによって生じる。過電流判定用閾値Ithは、透明電極11,12間に過電流が流れていると推定される値であって、透明電極11,12間に短絡が生じている状態などに基づいて予め定められる。
【0083】
(異常検出手段30のピークホールド回路33)
ピークホールド回路33は、電流検出マスク回路32に接続されている。ピークホールド回路33は、電流検出マスク回路32が出力する抽出信号Imのなかで最大値を保持する。ピークホールド回路33は、保持している最大値をサンプル信号Isとして出力する。ピークホールド回路33が保持する最大値は、ピークホールド回路33にリセット信号SIGRが入力されてから、ピークホールド回路33に再度リセット信号SIGRが入力されるまで、更新され続ける。
【0084】
タイミング制御回路26は、ピークホールド回路33をリセットするタイミングを制御する。タイミング制御回路26は、ピークホールド回路33をリセットするタイミングを、タイミング制御回路26が定める非対象期間内とする。
【0085】
これらの、電流検出回路31、電流検出マスク回路32、および、ピークホールド回路33は、アナログ回路で構成する事が望ましい。これらの回路をアナログ回路で構成することで、検出信号Iaの出力からサンプル信号Isの出力までに要する時間が短縮できる効果があり、結果として、調光装置における異常の検出を実時間で行える効果がある。
【0086】
(異常検出手段30の異常判定回路34)
異常判定回路34は、ピークホールド回路33に接続されている。異常判定回路34は、ピークホールド回路33が出力するサンプル信号Isを用い、ピークホールド回路33が保持する最大値が過電流判定用閾値Ith以上か否かを判定する。すなわち、異常判定回路34は、判定対象期間における透明電極11,12間の電流が過電流判定用閾値Ith以上であるか否かを判定する。そして、異常判定回路34は、過電流判定用閾値Ith以上の電流が検出されることを異常であると判定する。
【0087】
異常判定回路34は、調光装置が異常であると判定した判定データを、タイミング制御回路26と異常報知手段35に送信する。例えば、異常判定回路34は、A/D変換器を備え、サンプル信号Isであるアナログ信号を、デジタル信号の判定データに変換する。
【0088】
この構成によれば、電流検出回路31は、非対象期間を含めて透明電極11、12間の電流を検出し、かつ、電流検出マスク回路32は、検出信号Iaに対し非対象期間の検出信号Iaがマスクされた、検出信号Iaに相当する抽出信号Imを出力する。その抽出信号Imのなかで最大値をピークホールド回路33が保持し、保持している最大値をサンプル信号Isとして出力する。これにより、調光装置での異常が非対象期間を跨いで発生する場合にも、調光装置の異常が検出可能となる効果がある。
【0089】
このサンプル信号Isを、異常判定回路34が、過電流判定用閾値Ithと比較し、過電流判定用閾値Ith以上のサンプル信号Isが検出されることを異常であると判定する。
【0090】
この構成によれば、判定対象期間に検出された電流の抽出信号Imの最大値がサンプル信号Isとしてピークホールド回路に保持される。そのため、検出信号が過電流判定用閾値Ith以上であるか否かの判定を検出順に逐次実行する構成と比べて、判定の回数が低減可能である効果がある。
【0091】
例えば、検出信号Iaであるアナログ信号を判定用のデジタル信号に変換する構成では、検出信号IaのA/D変換に時間を要する。検出信号Iaと過電流判定用閾値Ithとの比較を検出順に逐次実行する構成では、各検出信号Iaの判定に際し、A/D変換の時間が必要となる。結果として、A/D変換の所要時間以上の周期で判定が実行されてしまい、検出信号Iaの最大値が判定の対象から外れるおそれがある。この点、検出信号Iaの最大値がサンプル信号Isとして保持される構成であれば、判定対象期間に検出された全ての検出信号Iaに対しA/D変換が1回で足りるため、検出信号Iaの最大値が判定の対象から外れることが抑制可能となる。
【0092】
(調光装置が正常である場合)
タイミング制御回路26は、異常判定回路34から、調光装置が正常であるという判定結果が入力された場合は、第1透明電極11と第2透明電極12との間に駆動電圧を印加し続ける。
【0093】
(調光装置が異常である場合)
他方、タイミング制御回路26は、異常判定回路34から、調光装置が異常であるという判定結果が入力された場合は、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフにすることで、第1透明電極11と第2透明電極12間へ印加していた駆動電圧の印加を停止する。こうする事で、調光装置の異常に起因した消費電力の増大を抑制できる効果がある。
【0094】
(異常検出手段30の異常報知手段35)
異常報知手段35は、調光装置が異常であるという判定結果が入力された場合は、調光装置が異常である旨のメッセージを出力する。
【0095】
[作用]
上記異常検出手段30が行う異常検知方法を、マスク信号SIGM、リセット信号SIGR、検出信号Ia、抽出信号Im、および、サンプル信号Isの推移を用いて説明する。
【0096】
なお、
図3(a)は、タイミング制御回路26が出力するマスク信号SIGM、第1透明電極11の電圧レベルV11、第2透明電極12の電圧レベルV12、および、リセット信号SIGRの推移を示す。
図3(b)は、透明電極11,12間に流れる正常電流と、ピークホールド回路33のサンプル信号Isとの推移を示す。
図3(c)は、透明電極11,12間に流れる正常電流、および、異常な過電流と、ピークホールド回路33のサンプル信号Isとの推移を示す。
【0097】
図3が示すように、まず、タイミング制御回路26は、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフした状態で待機する。すなわち、タイミング制御回路26は、各透明電極11,12をフローティング状態で待機する。
【0098】
次いで、タイミング制御回路26は、タイミングtaにマスク信号SIGMを立ち上げて、電流検出マスク回路32にマスクを開始させる。また、タイミング制御回路26は、タイミングtaに、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンし、かつ、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフする。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11が接地レベルであって、かつ、第2透明電極12が昇圧回路23の出力レベルとなる電圧パルスの印加を開始する。
【0099】
次いで、タイミング制御回路26は、タイミングtaが経過した後にリセット信号SIGRを立ち上げて、ピークホールド回路33をリセットする。続いて、タイミング制御回路26は、非対象期間の終わりのタイミングtbまでの間にリセット信号SIGRを立ち下げる。また、タイミング制御回路26は、タイミングtaに立ち上げたマスク信号SIGMを、非対象期間が経過したタイミングtbに立ち下げて、電流検出マスク回路32にマスクを終了させる。そして、タイミング制御回路26は、非対象期間の終わりのタイミングtbを、判定対象期間の開始タイミングとする。
【0100】
ここで、タイミングtaは、透明電極11,12間に電圧パルスの印加が開始される印加タイミングである。透明電極11,12間の電流は、タイミングtaの直後にスパイクを生じる。電流検出回路31が検出したスパイクは、過電流判定用閾値Ith以上である。
【0101】
一方、タイミングtaからタイミングtbまでは、非対象期間である。タイミング制御回路26は、スパイクが閾値未満になると推定して定めた非対象期間のタイミングtbまで、電流検出マスク回路32にマスクを継続させる。すなわち、タイミング制御回路26は、スパイクが生じるタイミングtaからタイミングtbまで、電流検出マスク回路32にマスクをさせる。また、スパイクが生じているタイミングtaからタイミングtbの間に、リセット信号SIGRを立ち上げてピークホールド回路33のリセットも行う。
【0102】
結果として、電流検出マスク回路32は、タイミングtaからタイミングtbまでの間は、透明電極11,12間の電流が過電流判定用閾値Ith未満であることを示す抽出信号Imを出力する。また、ピークホールド回路33は、タイミングtaの後のリセット信号SIGRによってリセットされたタイミングからタイミングtbまでの間は、過電流判定用閾値Ith未満の最大値を示すサンプル信号Isを、GNDレベルの値で出力する。それにより、異常判定回路34は、タイミングtaからタイミングtbまでの間は、透明電極11,12間の電流が過電流判定用閾値Ith未満であると判定し、調光装置が正常であると判定する。
【0103】
また、タイミング制御回路26は、タイミングtaから、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンし、かつ、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフする。そして、タイミング制御回路26は、第1透明電極11が接地レベルであって、か
つ、第2透明電極12が昇圧回路23の出力レベルとなる電圧パルスを印加し続ける。
【0104】
次いで、タイミング制御回路26は、タイミングtbの後のタイミングtcに、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフし、各透明電極11,12をフローティング状態とする。そして、タイミング制御回路26は、タイミングtcの後の次のタイミングtaを、判定対象期間の終了のタイミングとする。タイミング制御回路26は、タイミングtcからtaまで、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフした状態で待機する。判定対象期間は、タイミングtbから次のタイミングtaまでの期間である。
【0105】
また、タイミング制御回路26は、タイミングtaまで、リセット信号SIGRを下げ続けて、抽出信号Imの最大値を更新し続けてピークホールド回路33に保持させる最大値を更新し続ける。そして、タイミング制御回路26は、タイミングtaが経過した後に、リセット信号SIGRを立ち上げて、ピークホールド回路33をリセットする。また、タイミング制御回路26は、タイミングtaにマスク信号SIGMを立ち上げて、電流検出マスク回路32にマスクを開始させ、タイミングtbにマスク信号SIGMを立ち下げて、電流検出マスク回路32にマスクを停止させる。
【0106】
(正常時)
ここで、
図3(b)が示すように、透明電極11,12間に正常電流が流れている場合、電流検出マスク回路32が出力する抽出信号Imは過電流判定用閾値Ith未満である。ピークホールド回路33は、過電流判定用閾値Ith未満の最大値を示すサンプル信号Isを出力する。透明電極11,12間に正常電流が流れている場合は抽出信号Imが過電流判定用閾値Ith未満であるのでサンプル信号Isは最低値から変わらない。異常判定回路34は、最低値から変わらないサンプル信号Isの値に基づき、透明電極11,12間の電流が過電流判定用閾値Ith未満であると判定し、調光装置が正常であると判定する。
【0107】
(異常時)
これに対し、
図3(c)が示すように、透明電極11,12間に異常な過電流が流れている場合、電流検出マスク回路32が出力する抽出信号Imが過電流判定用閾値Ith以上になる。その場合に、ピークホールド回路33は、過電流判定用閾値Ith以上の最大値を持つサンプル信号Isを出力する。異常判定回路34は、過電流判定用閾値Ith以上の最大値を持つサンプル信号Isの値に基づき、透明電極11,12間に過電流判定用閾値Ith以上の電流が流れたと判定し、調光装置が異常であると判定する。
【0108】
そして、異常報知手段35は、調光装置が異常であると判定した結果の入力を受けて、調光装置が異常である旨のメッセージを出力する。また、タイミング制御回路26は、タイミングtbの後のタイミングtcに、全てのスイッチQ1,Q2,Q3,Q4をオフする。それによって、第1透明電極11、および、第2透明電極12がタイミング制御回路26から分離され、第1透明電極11と第2透明電極12との間への駆動電圧の印加が停止され続ける。
【0109】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)電圧パルスが透明電極11,12間に印加される都度、タイミング制御回路26が判定対象期間を設定する。そして、調光装置における異常の有無が、電圧パルスの印加周期で判定されるため、調光装置に異常が生じた場合には、異常が生じていることが即座に検出される。
【0110】
(2)タイミングtaに生じた電流のスパイクは、異常判定回路34による判定の対象から除外される。結果として、スパイクに起因した誤判定が抑制されて、調光装置に発生
した異常の検出精度が向上可能ともなる。
【0111】
(3)共通する単一のタイミング制御回路26が、スパイクが生じはじめるタイミングtaと、スパイク以外を検出しはじめるタイミングtbとを制御する。そのため、電圧パルスの印加による電流のスパイクを判定の対象から除外することの精度向上が可能ともなる。
【0112】
(4)電流検出回路31は、非対象期間を含めて透明電極11,12間の電流を検出し、かつ、電流検出マスク回路32は、検出信号Iaに対し非対象期間の検出信号Iaをマスクする。結果として、調光装置での異常が非対象期間を跨いで発生する場合にも、調光装置の異常が検出可能となる。
【0113】
(5)判定対象期間に検出された電流の最大値が、ピークホールド回路33に保持される。そのため、抽出信号Imが閾値以上であるか否かの判定を検出順に逐次実行する構成と比べて、判定の回数を低減可能でもある。
【0114】
(6)特に、アナログ信号である抽出信号Imをデジタル信号の判定データに変換する異常判定回路34では、抽出信号ImのA/D変換に時間を要する。
【0115】
従来の技術の様に、抽出信号Imと過電流判定用閾値Ithとを検出順に逐次実行する構成では、抽出信号Imの判定に際し、A/D変換の時間が必要となる。そして、A/D変換の所要時間以上の周期で判定が実行されてしまい、抽出信号Imの最大値が判定の対象から外れるおそれがある。
【0116】
本実施形態では、ピークホールド回路33が、抽出信号Imの最大値を保持するため、判定対象期間に検出された全ての抽出信号Imに対しA/D変換が1回で足りる。そのため、本実施形態によれば、抽出信号Imの最大値が判定の対象から外れる事が無くなる効果がある。
【0117】
(7)本実施形態では、調光装置が異常であると異常判定回路34が判定したときに、タイミング制御回路26が駆動電圧の印加を停止する。そのため、調光装置の異常による消費電力の増大を防ぐ事ができる効果がある。
【0118】
(8)透明電極11,12間で電流の流れる方向が反転するとしても、電流検出回路31が検出する電流の流れる方向は一定である。そのため、片方向に流れる電流を検出する簡素な構成が、電流検出回路31に採用可能である。
【0119】
(9)溶断電流が大きいヒューズは、定電圧電源21が過電流を出力する際に、定電圧電源21と昇圧回路23との接続を即座には断ち難い。一方、上述した構成であれば、調光装置が異常であると判定されたときに、駆動電圧の印加が停止する。すなわち、調光装置を駆動するための各種の回路は、タイミング制御回路26が行う制御によって、調光装置自体の異常に対し保護される。そして、調光装置を駆動するための各種の回路は、溶断電流が大きいヒューズを備えた過電流保護回路22によって、他の回路の異常に対し適切に保護される。
【0120】
(10)調光装置に異常が発生していることが外部に報知される。そのため、外部から視認される程度の異常に対し、調光装置を駆動するための回路に生じた異常と、調光装置自体に生じた異常とのいずれが要因であるかが把握される。結果として、調光装置に関わる異常に対し対処が容易ともなる。
【0121】
こうして、本実施形態では、異常検出手段30が回路の短絡、地絡などによる過電流を検出することで、調光装置の異常を検出する。
【0122】
なお、本実施形態は、以下のように変更可能である。
(変形例1)
変形例1として、タイミング制御回路26は、マスク信号SIGMが立ち上がるタイミングtaを、電圧パルスの印加タイミングよりも所定時間前に設定可能である。この際、非対象期間は、電圧パルスの印加タイミングの所定時間前から、マスク信号SIGMが立ち下がるタイミングtbまでの期間である。この構成によれば、電圧パルスの印加による電流のスパイクが生じる前に、電流検出マスク回路32が検出信号Iaをマスクする。そのため、スパイクに起因した誤判定がさらに抑制可能ともなる。
【0123】
(変形例2)
変形例2として、タイミング制御回路26は、リセット信号SIGRが立ち上がるタイミングを、マスク信号SIGMが立ち上がるタイミング、あるいは、電圧パルスの印加タイミングに変更可能である。また、タイミング制御回路26は、リセット信号SIGRが立ち下がるタイミングを、マスク信号SIGMが立ち下がるタイミングに変更可能である。
【0124】
(変形例3)
変形例3として、調光装置は、駆動電圧発生回路27の各スイッチQ1,Q2,Q3,Q4を駆動するためのフルブリッジ制御部を別途備え、タイミング制御回路26は、電流検出マスク回路、および、ピークホールド回路33の駆動に特化した構成に変更可能である。この際、タイミング制御回路26は、非対象期間の開始タイミングと、非対象期間の終了タイミングとを、フルブリッジ制御部が制御信号を出力するタイミングに基づいて定める。フルブリッジ制御部は、調光装置が異常であると判定された結果を受けて、駆動電圧の印加を停止する。
【0125】
(変形例4)
変形例4として、異常検出手段30は、電流検出マスク回路32、ピークホールド回路33、および、異常判定回路34を割愛されて、A/D変換器、中央演算処理装置、および、メモリに記憶した異常検出プログラムにそれらの回路の機能を担わせる異常判定手段を構成し、ソフトウェアで各種の処理を行うものに変更可能である。
【0126】
すなわち、電流検出回路31の検出信号IaをA/D変換器がデジタルデータに変換して異常判定手段に送信する。また、異常検出プログラムは、電圧パルスの印加タイミングに生じた透明電極11、12間の電流のスパイクが過電流判定用閾値Ith未満になるまでの所定期間の非対象期間と、非対象期間以外の判定対象期間を区別する。
【0127】
そして、検出信号Iaのデジタルデータを受信した異常判定手段は、検出信号Iaのデジタルデータに対して、検出信号Iaのデジタルデータから、非対象期間におけるデータを除外し、判定対象期間の検出信号Iaのデジタルデータのみを処理するマスク処理を行う。また、判定対象期間の検出信号Iaのデジタルデータの最大値を抽出して記憶するピークホールド処理を行う。そして、その最大値を、デジタルデータで記憶した過電流判定用閾値Ithと比較し、その最大値が過電流判定用閾値Ith以上である場合に異常判定処理を行う。
【0128】
(変形例5)
変形例5として、タイミング制御回路26は、電流検出回路31が判定対象期間にのみ電流を検出するように、電流検出回路31の検出タイミングを制御してもよい。この際、
異常検出手段30は、電流検出マスク回路32を割愛可能である。
【0129】
<第2の実施形態>
以下、
図4から
図7を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。第2の実施形態は、異常検出手段30に加えて漏電異常検出手段40を有する点が第1の実施形態と相違する。
【0130】
図4の様に、漏電異常検出手段40は、調光フィルム10を駆動する駆動電圧発生回路27のソース電流I1を検出するソース電流検出回路41とシンク電流I2を検出するシンク電流検出回路42の2つの電流検出回路を有し、検出したソース電流I1とシンク電流I2の差分を検出する差分検出回路43を有し、その差分の大きさから漏電を判定する漏電判定回路44を有する。
【0131】
また、第2の実施形態は、第1の実施形態では電流検出マスク回路32がスパイク状電流の影響をマスクしている非対象期間に、スパイク状電流を利用して漏電電流を検出する。
【0132】
詳しくは、
図5の様に、駆動電圧発生回路27が、第1の実施形態と同様にして、第1スイッチQ1,第2スイッチQ2,第3スイッチQ3,第4スイッチQ4を切り替えて、相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返して調光フィルム10の第1透明電極11と第2透明電極12間に印加する。
【0133】
第2の実施形態では、その電圧パルスの立上り、あるいは立下りの際に、透明電極11,12間に容量がある事によって生じるスパイク状電流のソース電流I1とシンク電流I2を検出して、それらの差分を検出する。
【0134】
(ソース電流I1)
昇圧回路23の出力端子をソース電流検出回路41を介して駆動電圧発生回路27の電源側の端子に接続する。これにより、ソース電流検出回路41が、駆動電圧発生回路27の電源側の端子に流れ込むソース電流I1を検出する。
【0135】
(シンク電流I2)
駆動電圧発生回路27の接地レベル側の端子は、シンク電流検出回路42を介して接地レベルに接続する。これにより、シンク電流検出回路42が、駆動電圧発生回路27の接地レベル側の端子から流れ出るシンク電流I2を検出する。
【0136】
(漏電異常検出手段40)
図4と
図5と
図6に本実施形態の漏電異常検出手段40の構成を示す。漏電異常検出手段40は、ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42を有し、ソース電流I1とシンク電流I2の差分を検出する差分検出回路43と、検出した差分の値をしきい値と比較する漏電判定回路44を有する。
【0137】
漏電異常検出手段40は、駆動電圧発生回路27の第1スイッチQ1と第2スイッチQ2の上流側に漏電異常検出手段40のソース電流検出回路41を設置し、第3スイッチQ3と第4スイッチQ4の下流側に漏電異常検出手段40のシンク電流検出回路42を設置する。
【0138】
(漏電異常検出手段40の動作原理)
以下で、本実施形態の漏電異常検出手段40の動作原理を説明する。
【0139】
駆動電圧発生回路27がスイッチ第1スイッチQ1、第2スイッチQ2、第3スイッチQ3、第4スイッチQ4を交互に切り替えて、調光フィルム10へ流れる電流の向きを交互に切換えても、ソース電流検出回路41へ流れるソース電流I1、及び、シンク電流検出回路42へ流れるシンク電流I2の向きは同じ向きであり、向きが変わらない電流を測定する事ができる。
【0140】
タイミング制御回路26は、駆動電圧発生回路27の出力タイミングを制御して、第1透明電極11と第2透明電極12との間に駆動電圧を印加する。
【0141】
(第1の駆動状態)
タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオンし、かつ、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオフし、それによって、第2透明電極12が昇圧回路23の出力レベルとなり、第1透明電極11が接地レベルとなる電圧パルスを、透明電極11,12間に印加する。
【0142】
このとき、調光フィルム10の第2透明電極12に接続している駆動電圧発生回路27の端子2を経由して調光フィルム10へソース電流I1が流れ込む。そして、調光フィルム10の第1透明電極11に接続している駆動電圧発生回路27の端子1を経由して調光フィルム10からシンク電流I2が流れ出す。
【0143】
(第2の駆動状態)
また、タイミング制御回路26は、第1スイッチQ1、および、第4スイッチQ4をオフし、かつ、第2スイッチQ2、および、第3スイッチQ3をオンし、それによって、第1透明電極11が昇圧回路23の出力レベルとなり、かつ、第2透明電極12が接地レベルとなる電圧パルスを、透明電極11,12間に印加する。
【0144】
このとき、調光フィルム10の第1透明電極11に接続している駆動電圧発生回路27の端子1を経由して調光フィルム10へソース電流I1が流れ込む。そして、調光フィルム10の第2透明電極12に接続している駆動電圧発生回路27の端子2を経由して 調光フィルム10からシンク電流I2が流れ出す。
【0145】
ここで、透明電極11,12間に印加される電圧パルスの極性が変わると、透明電極11,12間の電流が流れる方向も反転する。この点、ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42が検出する電流は、電圧パルスの極性が変わることに合わせて上記のように変わる。結果として、透明電極11,12間で電流の流れる方向が反転するとしても、ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42が検出する電流の流れる方向は一定となる。そのため、ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42は、それぞれに片方向に流れる電流を検出する。
【0146】
(漏電の検出)
調光フィルム10の周辺で漏電が発生した場合は、調光フィルム10から流れ出すシンク電流I2が、調光フィルム10に流れ込むソース電流I1に比べ少なくなる。本実施形態の異常検出手段30は、((ソース電流I1)-(シンク電流I2))の値を検出し、その値が大きい場合を判定して、その場合に漏電が発生していると判定して故障と判定する。
【0147】
以下で、
図6を参照して、本実施形態の異常検出手段30の、ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42と、ソース電流I1とシンク電流I2の差分を検出する差分検出回路43と、検出した差分の値をしきい値と比較して漏電を検出する漏電判定回路44の具体的構成を説明する。
【0148】
(ソース電流検出回路41)
ソース電流検出回路41は、
図6の様に、ソース電流I1を、シャント抵抗R5の両端に発生する電位差を、オペアンプ1で構成した差動増幅回路で増幅することで検出する。
【0149】
(シンク電流検出回路42)
シンク電流検出回路42は、同様にして、シンク電流I2を、シャント抵抗R10の両端に発生する電位差を、オペアンプ2で構成した差動増幅回路で増幅することで検出する。
【0150】
(差分検出回路43)
差分検出回路43では、オペアンプ3で構成した差動増幅回路を用いて、ソース電流検出回路41が検出したソース電流I1と、シンク電流検出回路42が検出したシンク電流I2の差分に応じた差分出力電圧Vdを出力する。
【0151】
(漏電判定回路44)
漏電判定回路44では、差分検出回路43が検出したソース電流I1とシンク電流I2の差分出力電圧Vdに応じた電圧値を、比較回路44aで、抵抗R17、可変抵抗Rv、抵抗R18で作成した漏電判定用閾値Vthと比較し、差分出力電圧Vdが漏電判定用閾値電圧Vthを越えた場合に、比較回路44aの出力端子に漏電検出信号のパルス電圧を発生する。ここで、この漏電判定用閾値Vthは、可変抵抗Rvによって可変にすることで、自在に設定できる。
【0152】
この漏電検出信号のパルス電圧を発生させた比較回路44aの出力端子をラッチ回路44bのセット端子(S)へ接続する。それにより、一度でも漏電検出信号のパルス電圧がラッチ回路44bへ入力された場合にラッチ回路44bの出力端子が漏電記録信号を出力する。
【0153】
こうして、ラッチ回路44bが、漏電検出信号のパルス電圧を監視し、漏電が発生した時点以降はラッチ回路44bの出力端子に漏電記録信号を出力することで、漏電の発生の有無が判定可能になる。
【0154】
なおラッチ回路44bのリセットは、例えば電源投入時に実施し、リセット信号SIGR毎にはリセットしない。また、漏電検出をある周期で実施したい場合に、漏電検出を開始する周期の期間の開始の都度、ラッチ回路44bのリセットを実施する。
【0155】
(漏電異常検出手段40の動作)
次に、
図7の波形図を参照して、本実施形態の漏電異常検出手段40の動作を説明する。
【0156】
駆動電圧発生回路27の端子1、端子2が接続する調光フィルム10の透明電極11,12間に容量が有る。そのため、駆動電圧発生回路27の端子1、端子2に印加される駆動電圧Vdcの正電圧への切り替えの際と、負電圧への切り替えの際とで、ソース電流検出回路41の出力=ソース電流I1 及び シンク電流検出回路42の出力=シンク電流I2は、スパイク状の電流波形になる。
【0157】
(正常時)
回路が正常の場合は、ソース電流I1とシンク電流I2は同じ電流波形となるため、差分検出回路43の差分出力電圧VdはGNDレベルとなる。
【0158】
(異常時)
一方、調光フィルム10周辺部で電流が漏れて回路に漏電を生じている場合は、駆動電圧発生回路27から調光フィルム10の透明電極11又は12に流れ出たソース電流I1よりも、調光フィルム10の透明電極11又は12から駆動電圧発生回路27に戻ってくるシンク電流I2が小さくなる。
【0159】
その様に漏電している場合は、差分検出回路43の出力の差分出力電圧Vdの波形はスパイク状となる。その差分検出回路43の差分出力電圧Vdを漏電判定回路44の比較回路44aで漏電判定用閾値Vthと比べる。その結果、比較回路44aの出力としてパルス状の比較結果信号Vpが出力される。
【0160】
このパルス状の比較回路44aが出力する比較結果信号Vpを漏電判定回路44のラッチ回路44bが、漏電記録信号Vmemとして、SIGRのリセットが掛かるまで出力し続ける。この漏電記録信号Vmemを監視することで、漏電が発生したか否かが判定できる。
【0161】
(変形例6)
第2の実施形態の変形例6として、第1の実施形態の変形例4と同様にして、異常検出手段30は、A/D変換器、中央演算処理装置、および、メモリに記憶した異常検出プログラムで異常判定手段を構成し、ソフトウェアに各種の回路の機能を担わせた処理を行うものに変更可能である。
【0162】
すなわち、ソース電流検出回路41の出力のソース電流I1を、A/D変換器がデジタルデータに変換して異常判定手段に送信する。また、シンク電流検出回路42の出力のシンク電流I2を、A/D変換器がデジタルデータに変換して異常判定手段に送信する。
【0163】
ソース電流I1とシンク電流I2のデジタルデータを受信した異常判定手段は、ソース電流I1とシンク電流I2の差分データを演算する。そして、異常判定手段は、その差分データを、漏電判定用閾値データと比較し、その漏電判定用閾値データを越えた場合に漏電判定処理を行う。こうして、異常検出プログラムで構成した異常判定手段によるデジタル処理に、差分検出回路43と漏電判定回路44の機能を担わせることも可能である。
【0164】
第2の実施形態では、以上で説明した漏電異常検出手段40と、第1の実施形態で説明した異常検出手段30を有する。そして、異常報知手段35は、異常検出手段30が、過電流による異常があると判定した結果の入力を受けて、調光装置が過電流による異常である旨のメッセージを出力する。また、異常報知手段35は、漏電異常検出手段40により調光装置が漏電していると判定した結果の入力を受けて、調光装置が漏電している旨のメッセージを出力する。そのように、異常報知手段35は、異常な過電流による異常判定と、漏電異常検出手段40による漏電判定を区別して通知する。
【0165】
上記実施形態、および、変更例から導き出される技術的思想を以下に付記する。
[付記]
調光装置に用いられる異常検出手段30であって、
前記調光装置は、
透明電極間に位置する調光層を備え、相互に異なる極性の電圧パルスを交互に繰り返す駆動電圧が前記透明電極間に印加されることによって前記調光層の透過率を変更し、
定電圧電源の電圧レベルを前記電圧パルスの電圧レベルに変換する昇圧回路と、
前記昇圧回路の出力レベルから前記駆動電圧を生成する駆動電圧発生回路27と、をさらに備え、
前記駆動電圧発生回路27は、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイ
ッチから成るフルブリッジ回路を備え、直列接続された前記第1スイッチおよび前記第3スイッチと、直列接続された前記第2スイッチおよび前記第4スイッチとが並列接続され、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続部が前記昇圧回路に接続され、
前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部が前記検出回路を介して接地レベルに接続され、
前記第1スイッチと前記第3スイッチとの接続部に一方の前記透明電極が接続され、
前記第2スイッチと前記第4スイッチとの接続部に他方の前記透明電極が接続され、
前記調光装置は、
前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオンし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオフすることと、前記第1スイッチ、および、前記第4スイッチをオフし、かつ、前記第2スイッチ、および、前記第3スイッチをオンすることとを交互に繰り返して、前記駆動電圧を前記透明電極間に印加するタイミング制御部をさらに備え、
前記異常検出手段30は、
前記透明電極間の電流が過電流判定用閾値以上であるか否かを判定し、過電流判定用閾値以上の電流が検出されることを異常であると判定する異常判定手段を備え、
前記異常判定手段は、前記透明電極間の電流を検出する検出回路を備え、
前記検出回路は、前記透明電極間の電流として、前記第3スイッチと前記第4スイッチとの接続部から接地レベルに流れる電流を検出する、
異常検出手段30。
【0166】
上記付記に記載の構成によれば、第1スイッチと第3スイッチとの接続部は、一方の透明電極に接続される。第2スイッチと第4スイッチとの接続部は、他方の透明電極に接続される。そして、第3スイッチと第4スイッチとの接続部の接続先は、一方の透明電極と、他方の透明電極とに切り替わる。すなわち、検出回路が検出する電流の流れる経路は、一方の透明電極と接地レベルとを接続する経路と、他方の透明電極と接地レベルとを接続する経路とに切り替わる。
【0167】
ここで、透明電極間に印加される電圧パルスの極性が変わると、透明電極間の電流が流れる方向も反転する。この点、上記付記に記載の構成であれば、検出回路が検出する対象は、電圧パルスの極性が変わることに合わせて上記のように変わる。結果として、透明電極間で電流の流れる方向が反転するとしても、検出回路が検出する電流の流れる方向は一定となる。そして、片方向に流れる電流を検出する簡素な構成が検出回路に採用可能であるから、異常検出手段30の構成が簡素化可能である。
【0168】
また、調光装置に用いられる漏電異常検出手段40であって、
ソース電流検出回路41とシンク電流検出回路42を備え、
ソース電流検出回路41が検出したソース電流I1と、シンク電流検出回路42が検出したシンク電流I2を比較する差分検出回路43を備え、差分検出回路43の出力により漏電の有無を判定する漏電判定回路44を備えた漏電異常検出手段40。
【0169】
また、漏電判定回路44は、漏電の有無を判定する際、漏電と判定する漏電判定用閾値を、抵抗R17、可変抵抗Rv、抵抗R18で可変にして自在に設定できる回路を備えている。
【0170】
また、異常報知手段35は、異常検出手段30による過電流による異常判定と、漏電異常検出手段40による漏電判定を区別して通知する。
【符号の説明】
【0171】
Ia・・・検出信号
Ith・・・過電流判定用閾値
I1・・・ソース電流
I2・・・シンク電流
R1~R18・・・抵抗
Rv・・・可変抵抗
SIGM・・・マスク信号
SIGR・・・リセット信号
Q1・・・第1スイッチ
Q2・・・第2スイッチ
Q3・・・第3スイッチ
Q4・・・第4スイッチ
V11・・・第1透明電極の電圧レベル
V12・・・第2透明電極の電圧レベル
Vd・・・差分出力電圧
Vmem・・・漏電記録信号
Vp・・・比較結果信号
Vth・・・漏電判定用閾値
10・・・調光フィルム
11・・・第1透明電極
12・・・第2透明電極
13・・・調光層
20・・・駆動回路
21・・・定電圧電源
22・・・過電流保護回路
23・・・昇圧回路
24・・・制御用電源回路
25・・・入力手段
26・・・タイミング制御回路
27・・・駆動電圧発生回路
30・・・異常検出手段
31・・・電流検出回路
32・・・電流検出マスク回路
33・・・ピークホールド回路
34・・・異常判定回路
35・・・異常報知手段
40・・・漏電異常検出手段
41・・・ソース電流検出回路
42・・・シンク電流検出回路
43・・・差分検出回路
44・・・漏電判定回路