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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】自動二輪車用シートレール構造
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/30 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B62K19/30
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019207159
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021079754
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】生駒 恭平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039484(JP,A)
【文献】国際公開第2012/090848(WO,A1)
【文献】特開2006-240345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の車体に設置されるシートレールを備え、
前記シートレールが、その車体幅方向の両側側方に位置する2つの側方壁を有し、前記2つの側方壁の上端を連結する連結部材を有する、自動二輪車用シートレール構造であって、
前記側方壁のそれぞれが、その車体前方かつ車体上方に位置する前方上側領域に形成される膨出部を有し、
前記膨出部が、その周囲に位置する周辺部に対して車体幅方向の外方に膨出しており、
前記シートレールが、
前記側方壁のそれぞれの車体上下方向の上端に位置し、かつ前記膨出部の車体上下方向の上端から車体幅方向の内方に突出する前方フランジと、
前記側方壁のそれぞれの車体上下方向の上端かつ前記前方フランジに対して車体後方に位置する後方フランジと、
前記前方フランジ及び前記後方フランジを連結する移行フランジとを有し
前記連結部材は、シートを取り付け可能に構成され、
前記前方フランジの車体上下方向の上面が、前記連結部材を取り付けるために用いられる取付座面を含み、
前記前方フランジの車体幅方向の長さが、前記後方フランジの車体幅方向の長さよりも大きくなっており、
前記移行フランジは、前記膨出部の上端に位置し、前記移行フランジの車体幅方向の両側方縁が、これら両側方縁の車体幅方向の間隔を前記後方フランジから前記前方フランジに向かうに従って拡大するように形成され、
前記シートの前端部分は、その下方に位置する前記連結部材を介して、前記前方フランジの上面の前記取付座面に取り付けられ、
前記シートの後端部分は、その下方に位置する前記後方フランジの上方のシート係合部材に取り付けられている、自動二輪車用シートレール構造。
【請求項2】
前記前方フランジの上の前記取付座面は、さらに燃料タンクを取り付けるために用いられる、請求項1に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項3】
前記前方フランジが、前記シートの車体前後方向の前端部分を支持し、
前記側方壁のそれぞれの車体上下方向の上端に、前記シートの車体前後方向の後端部分に係合する前記シート係合部材が配置され、
前記膨出部の車体前後方向の後端が、前記シート係合部材よりも車体前方寄りに配置されている、請求項1又は2に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項4】
前記側方壁のそれぞれの車体前後方向の前端領域が、前記車体のメインフレームに取り付けられるように構成され、かつ車体上方寄りに位置する上方取付部を有し、
前記膨出部の車体上下方向の下端が、前記上方取付部の車体上下方向の上端よりも車体下方寄りに配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項5】
前記側方壁のそれぞれの前端領域が、前記車体のメインフレームに取り付けられるように構成され、かつ車体下方寄りに位置する下方取付部を有し、
前記膨出部の下端が、前記下方取付部の車体上下方向の上端よりも車体上方寄りに配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項6】
前記膨出部が、車体幅方向の外方からアウターパネルに覆われ、
前記側方壁のそれぞれが、前記膨出部及び前記アウターパネルに対して車体下方に隣接し、かつ車体幅方向の外方から見て外部に露出する露出部を有している、請求項1~5のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項7】
前記側方壁のそれぞれの車体前後方向の前端領域が、前記車体のメインフレームに取り付けられるように構成され、かつ車体上方寄りに位置する上方取付部を有し、
前記膨出部の車体前後方向の前端が、前記上方取付部よりも車体後方寄りに配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項8】
前記膨出部が、その車体幅方向の最外方に位置する最外方区域を有し、
前記最外方区域が、前記前方フランジよりも車体下方に位置している、請求項1~のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【請求項9】
前記側方壁のそれぞれが、その車体上下方向の上端よりも車体下方にて前記膨出部及び前記膨出部の周辺部間に形成される境界縁を有し、
前記境界縁に形成される角部が、円弧状に延びている、請求項1~のいずれか一項に記載の自動二輪車用シートレール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に設置されるシートレールの構造、すなわち、自動二輪車用シートレール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、自動二輪車に設置されるシートレールは、シート、燃料タンク等を支持する役割を担うことがある。このようなシートレールは、シート、燃料タンク等を支持するために強度を高めることが要求される。そのため、このような要求を満たすために、種々のシートレールの構造、すなわち、種々の自動二輪車用シートレール構造が提案されている。
【0003】
自動二輪車用シートレール構造の一例としては、リヤフレーム(シートレール)が、繊維強化樹脂により形成され、さらに、リヤフレームが、左右一対の側方壁と、これらの側方壁とは別に形成されると共に一対の側方壁の上端部間を連結する上部クロス部材とを有し、各側方壁が、車体幅方向の外方から同内方に向かって凹むように湾曲形状に形成され、一対の側方壁間における車体幅方向の間隔が、車体上方から車体下方に向かうに従って拡大している、構造が挙げられる。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/033425号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的に、ライダー、ピリオンライダー、荷物等が自動二輪車上に載せられた場合、シートレール(リヤフレーム)における一対の側方壁の上端部に車体上方から荷重が加えられる。しかしながら、上記自動二輪車用シートレール構造の一例においては、一対の側方壁間の間隔が車体上方から車体下方に向かうに従って拡大している。そのため、一対の側方壁は、このような荷重によって車体幅方向の外方から同内方に向かって変形し易い。さらに、これらの側方壁の変形時においては、上部クロス部材は、車体幅方向の圧縮によって車体上下方向に撓むように変形し易い。そのため、自動二輪車用シートレール構造の一例においては、シートレールの強度を向上させるという観点において改善の余地がある。
【0006】
また、一対の側方壁間に形成されるシートレールの内部空間には、バッテリ、ケーブル等の電装部品が配置される。そのため、上記自動二輪車用シートレール構造の一例においては、このようなシートレールの内部空間を効率的に拡大したいという要望がある。
【0007】
上述のような観点によれば、自動二輪車用シートレール構造においては、シートレールの強度を効率的に向上させ、バッテリ、ケーブル等の電装部品等を配置するためのシートレールの内部空間を効率的に拡大することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するために、一態様に係る自動二輪車用シートレール構造は、 自動二輪車の車体に設置されるシートレールを備え、前記シートレールが、その車体幅方向の両側側方に位置する2つの側方壁を有し、前記2つの側方壁の上端を連結する連結部材を有する、自動二輪車用シートレール構造であって、前記側方壁のそれぞれが、その車体前方かつ車体上方に位置する前方上側領域に形成される膨出部を有し、前記膨出部が、その周囲に位置する周辺部に対して車体幅方向の外方に膨出しており、前記シートレールが、前記側方壁のそれぞれの車体上下方向の上端に位置し、かつ前記膨出部の車体上下方向の上端から車体幅方向の内方に突出する前方フランジと、前記側方壁のそれぞれの車体上下方向の上端かつ前記前方フランジに対して車体後方に位置する後方フランジと、前記前方フランジ及び前記後方フランジを連結する移行フランジとを有し、前記連結部材は、シートを取り付け可能に構成され、前記前方フランジの車体上下方向の上面が、前記連結部材を取り付けるために用いられる取付座面を含み、前記前方フランジの車体幅方向の長さが、前記後方フランジの車体幅方向の長さよりも大きくなっており、前記移行フランジは、前記膨出部の上端に位置し、前記移行フランジの車体幅方向の両側方縁が、これら両側方縁の車体幅方向の間隔を前記後方フランジから前記前方フランジに向かうに従って拡大するように形成され、前記シートの前端部分は、その下方に位置する前記連結部材を介して、前記前方フランジの上面の前記取付座面に取り付けられ、前記シートの後端部分は、その下方に位置する前記後方フランジの上方のシート係合部材に取り付けられている。
【発明の効果】
【0009】
一態様に係る自動二輪車用シートレール構造においては、シートレールの強度を効率的に向上させることができ、バッテリ、ケーブル等の電装部品等を配置するためのシートレールの内部空間を効率的に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るシートレール構造を有する自動二輪車を概略的に示す側面図である。
図2図2は、一実施形態に係るシートレール構造のシートレール及びその周辺部品を概略的に示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態に係るシートレール構造のシートレールを概略的に示す斜視図である。
図4図4は、図3のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一実施形態に係る自動二輪車用シートレール構造について、それを適用する自動二輪車と共に以下に説明する。ここで、自動二輪車用シートレール構造(以下、必要に応じて、単に「シートレール構造」という)を適用する自動二輪車は、典型的には、1つの前輪及び1つの後輪を有するものである。しかしながら、自動二輪車は、2つの前輪及び1つの後輪を有するものも含むことができる。
【0012】
本実施形態において、図1図3では、自動二輪車の車体Mの前方(以下、必要に応じて、単に「前方」という)は片側矢印Fによって示され、かつ車体Mの後方(以下、必要に応じて、単に「後方」という)は片側矢印Rによって示される。そのため、車体Mの前後方向(以下、必要に応じて、単に「前後方向」という)は片側矢印F及び片側矢印Rによって示される。図2図4では、車体Mの幅方向(以下、必要に応じて、単に「幅方向」という)は両側矢印Wによって示される。図1図4では、車体Mの上方(以下、必要に応じて、単に「上方」という)は片側矢印Uによって示され、かつ車体Mの下方(以下、必要に応じて、単に「下方」という)は片側矢印Dによって示される。車体Mの上下方向(以下、必要に応じて、単に「上下方向」という)は片側矢印U及び片側矢印Dによって示される。
【0013】
「シートレール構造及び自動二輪車の概略について」
図1図4を参照して、本実施形態に係るシートレール構造1及び自動二輪車の概略について説明する。すなわち、シートレール構造1及び自動二輪車は概略的には次のように構成される。図1に示すように、シートレール構造1は自動二輪車に適用される。図1図4に示すように、シートレール構造1は、自動二輪車の車体Mに設置されるシートレール10を有する。
【0014】
図2及び図3に示すように、シートレール10は、その幅方向の両側側方にそれぞれ位置する2つの側方壁11を有する。2つの側方壁11は、互いに幅方向に間隔を空けて配置される。本実施形態に係るシートレール構造1は、2つの側方壁11の両方が、以下に詳細を述べる構成要素を有するように構成される。2つの側方壁11における構成要素は幅方向にて略対称になっている。しかしながら、シートレールは、2つの側方壁の一方のみが以下の構成要素を有するように構成することもできる。これらを踏まえた上で、以下においては、特に、2つの側方壁11及びこれら2つの側方壁11に関連する構成要素を説明しない限り、2つの側方壁11の一方における構成要素を代表的に説明しているものとする。
【0015】
図2及び図3に示すように、側方壁11は、その前方かつ上方に位置する前方上側領域11aに形成される膨出部12を有する。膨出部12は、その周囲に位置する周辺部13に対して幅方向の外方に膨出している。図3及び図4に示すように、シートレール10は、このような側方壁11の上下方向の上端に位置する前方フランジ14を有する。前方フランジ14は、膨出部12の上下方向の上端から幅方向の内方に突出する。
【0016】
さらに、シートレール構造1及び自動二輪車は概略的には次のように構成することもできる。図1に示すように、自動二輪車の車体Mはシート2及び燃料タンク3を有する。前方フランジ14の上下方向の上面14aが、シート2及び燃料タンク3を取り付けるために用いられる取付座面14bを含んでいる。図2に示すように、このような前方フランジ14が、シート2の前後方向の前端部分2aを支持する。側方壁11の上端に、シート2の前後方向の後端部分2bに係合するシート係合部材4が配置される。膨出部12の前後方向の後端は、シート係合部材4よりも前方寄りに配置される。
【0017】
図1及び図2に示すように、車体Mはメインフレーム5(図2では仮想線により示す)を有する。図2及び図3に示すように、側方壁11の前後方向の前端領域11bは、メインフレーム5に取り付けられるように構成される上方取付部15を有する。上方取付部15は、前端領域11bの上方寄りに位置する。膨出部12の上下方向の下端は、上方取付部15の上下方向の上端よりも下方寄りに配置される。さらに、このような側方壁11の前端領域11bは、メインフレーム5に取り付けられるに構成される下方取付部16を有する。下方取付部16は、前端領域11bの下方寄りに位置する。膨出部12の下端は、下方取付部16の上下方向の上端よりも上方寄りに配置される。膨出部12の前後方向の前端はまた、上方取付部15よりも後方寄りに配置される。
【0018】
図1に示すように、車体Mはアウターパネル6を有する。膨出部12は、車体Mの幅方向の外方からアウターパネル6によって覆われる。図1図4に示すように、側方壁11は、車体Mの幅方向の外方から見て車体Mの外部に露出する露出部11cを有する。露出部11cは、膨出部12及びアウターパネル6に対して下方に隣接する。
【0019】
図2及び図3に示すように、シートレール10は、側方壁11の上端かつ前方フランジ14に対して後方に位置する後方フランジ17を有する。シートレール10はまた、前方及び後方フランジ14,17を連結する移行フランジ18を有する。前方フランジ14の幅方向の長さは、後方フランジ17の幅方向の長さよりも大きくなっている。移行フランジ18の幅方向の両側方縁18aは、これら両側方縁18aの幅方向の間隔を後方フランジ17から前方フランジ14に向かうに従って拡大するように形成されている。
【0020】
膨出部12は、幅方向の最外方に位置する最外方区域12aを有する。かかる最外方区域12aは前方フランジ14よりも下方に位置する。さらに、側方壁11は、その上端よりも下方にて膨出部12及びこの膨出部12の周辺部13間に形成される境界縁12bを有する。かかる境界縁12bに形成される角部は略円弧状に延びる。なお、かかる境界縁12bは、膨出部12及び前方フランジ14間の境界縁を含まない。
【0021】
「自動二輪車の詳細について」
図1及び図2を参照して、自動二輪車の詳細について説明する。すなわち、自動二輪車は詳細には次のように構成することができる。図1に示すように、自動二輪車のシート2は、シートレール10に対して上方に位置する。シート2は、少なくともライダーが着座できるように構成されるシートクッション7を有する。
【0022】
図2に示すように、シート2はまた、シートクッション7に対して下方に位置するシートベース8を有する。シートベース8は、シートクッション7を下方から支持する。シートベース8の前後方向の前端部分8a及び後端部分8bは、シート2の前端部分2a及び後端部分2bにそれぞれ設けられる。シートベース8の前端部分8aは、その下方に位置するブラケット9を介して、前方フランジ14の上面14aの取付座面14bに取り付けられる。
【0023】
ブラケット9は、シート2の前端部分2a、特に、シートベース8の前端部分8aを取り付け可能に構成されるシート取付部9aを有する。2つの側方壁11の上端に2つのシート係合部材4がそれぞれ配置される場合において、シートベース8の後端部分8bは、これら2つのシート係合部材4にそれぞれ係合可能に構成される2つの被係合部8cを有する。シート係合部材4は、この被係合部8cに係合可能に構成される係合部4aを有する。係合部4aは、後方フランジ17に対して上方に配置される。
【0024】
図1に示すように、自動二輪車の燃料タンク3は、メインフレーム5に対して上方に位置する。メインフレーム5は、燃料タンク3を下方から支持する。さらに、燃料タンク3は、シート2に対して前方に位置する。燃料タンク3は、シート2に対して前後方向にて隣接する。特に明確に図示はしないが、燃料タンク3はまた、ブラケット9を介して前方フランジ14の上面14aの取付座面14bに取り付けられる。図2に示すように、ブラケット9は、燃料タンク3を取り付け可能に構成されるタンク取付部9bを有する。タンク取付部9bは、シート取付部9aに対して前方に位置する。
【0025】
図1及び図2に示すように、自動二輪車のメインフレーム5(図2にて仮想線により示す)は、シートレール10に対して前方に位置する。メインフレーム5はまた、シートレール10に前後方向にて隣接する。図2に示すように、メインフレーム5の前後方向の後端領域5aが、シートレール10における側方壁11の前端領域11bの上方及び下方取付部15,16に取り付けられる。特に明確に図示はしないが、このようなメインフレーム5及びシートレール10の取付は、ボルト及びナットを用いた締結手段による締結によってもたらされる。しかしながら、締結手段は、ボルト及びナットに限定されない。また、メインフレーム及びシートレールの取付は、締結手段以外の取付手段によってもたらすこともできる。
【0026】
図1に示すように、アウターパネル6は、シート2に対して下方に位置する。アウターパネル6の上下方向の下端縁6aは、部分的に膨出部12の上下方向の下端縁12cに沿って配置される。なお、膨出部12の下端縁12cは、膨出部12の境界縁12bの一部となっている。
【0027】
「シートレール構造の詳細について」
図1図4を参照して、シートレール構造1の詳細について説明する。すなわち、シートレール構造1は詳細には次のように構成することができる。シートレール10は、繊維強化樹脂を用いて構成されている。しかしながら、シートレール10は、繊維強化樹脂以外の樹脂、金属等の素材を用いて構成することもできる。
【0028】
図2及び図3に示すように、シートレール構造1において、側方壁11は、前方上側領域11aに対して下方に隣接する前方下側領域11dを有する。側方壁11の前端領域11bは、その前方上側領域11a及び前方下側領域11dに対して前方に隣接する。側方壁11はまた、前方上側領域11a及び前方下側領域11dに対して後方に隣接する後方領域11eを有する。
【0029】
前方上側領域11a及び前方下側領域11dの前後方向の長さは、後方領域11eの前後方向の長さよりも小さくなっている。膨出部12の後端は、シート2の前後方向の中央よりも後方に位置する。図3及び図4に示すように、膨出部12の下端は、側方壁11の上下方向の中央よりも下方に位置する。しかしながら、膨出部の後端は、シートの前後方向の中央に略一致するか、又はシートの前後方向の中央よりも前方に位置することもできる。また、膨出部の下端は、側方壁の上下方向の中央に略一致するか、又は側方壁の上下方向の中央よりも上方に位置することができる。
【0030】
図2及び図3に示すように、膨出部12の境界縁12bは、尖った角部を有さないように滑らかに延びている。かかる境界縁12は、特に、円弧状部分のみによって形成することができるか、又は円弧状部分及び略直線部分のみによって形成することができる。膨出部12の下端縁12cは、前方上側領域11a又は膨出部12と前方下側領域11dとの間に位置する。
【0031】
図4に示すように、膨出部12は、その上端と最外方区域12aとの間で延びる上側移行区域12dを有する。膨出部12はまた、その下端と最外方区域12aとの間で延びる下側移行区域12eを有する。図4においては、幅方向及び上下方向に沿って切断した断面視にて、最外方区域12aは略直線状に形成されている。上側移行区域12dは略円弧状に形成されている。下側移行区域12eは略直線状に形成されている。
【0032】
しかしながら、膨出部の最外方区域、上側移行区域、及び下側移行区域は、これらに限定されない。例えば、幅方向及び上下方向に沿って切断した断面視にて、最外方区域は、略楔形状、略円弧形状等に形成することもできる。上側移行区域は、略直線形状、略楔形状等に形成することもできる。下側移行区域は、略円弧形状、略楔形状等に形成することもできる。
【0033】
膨出部12の周辺部13は、前端領域11b、前方下側領域11d、及び後方領域11eに跨って配置される。前方フランジ14の取付座面14bは、前方フランジ14における上面14aの前後方向の中央を基準として前方寄りに位置する。
【0034】
前端領域11bの上方取付部15は、前方上側領域11aから前方に突出する。前端領域11bの下方取付部16は、前方上側領域11aに対して下方に隣接する前方下側領域11dから前方に突出する。上方及び下方取付部15,16は上下方向に間隔を空けている。
【0035】
図2及び図3に示すように、前方フランジ14は、側方壁11における前方上側領域11aの上下方向の上端に位置する。後方フランジ17は、側方壁11にて前方上側領域11a及び前方下側領域11dに対して後方に隣接する後方領域11eにおける上下方向の上端に位置する。移行フランジ18は、前方上側領域11aの上端、特に、膨出部12の上端に位置する。図3に示すように、前方及び後方フランジ14,17の前後方向の長さは、移行フランジ18の前後方向の長さよりも大きくなっている。後方フランジ17の前後方向の長さは、前方フランジ14の前後方向の長さよりも大きくなっている。
【0036】
以上、本実施形態に係るシートレール構造1においては、シートレール10の側方壁11が、その前方上側領域11aに形成される膨出部12を有する。この膨出部12は、その周囲に位置する周辺部13に対して幅方向の外方に膨出する。シートレール10はまた、側方壁11の上端に位置し、かつ膨出部12の上端から幅方向の内方に突出する前方フランジ14を有する。このようなシートレール構造1においては、シートレール10の内部空間を、幅方向の外方に膨出する側方壁11の膨出部12によって拡大することができる。例えば、膨出部12の内部にケーブル等を通過させることができる。そのため、電装部品等を配置するためのシートレール10の内部空間を、膨出部12によって効率的に拡大することができる。また、ピリオンライダー、荷物等が自動二輪車上に載せられ、これによって、シートレール10の前後方向の後方部分に上方から荷重が加えられた場合において、側方壁11の前方上側領域11aは、かかる荷重に起因して前後方向に引張負荷を受ける。これに対して、本実施形態に係るシートレール構造1においては、膨出部12によって、かかる引張負荷に対する前方上側領域11aの強度を効率的に向上させることができる。さらに、ライダー、ピリオンライダー、荷物等が自動二輪車上に載せられ、これによって、側方壁11の上端に上方から荷重が加えられた場合において、側方壁11が、上記膨出部12によって幅方向の内方から同外方に向かって変形しようとする。これに対して、本実施形態に係るシートレール構造1においては、例えば、2つの側方壁11の上端を連結する連結部材、例えば、ブラケット9等を設置すれば、かかる変形時に、連結部材には幅方向の引張負荷が作用し、かつ連結部材は、かかる引張負荷に対しては十分な強度を有する。そのため、シートレール10の強度を効率的に向上させることができる。よって、シートレール10の強度を効率的に向上させることができ、バッテリ、ケーブル等の電装部品等を配置するためのシートレール10の内部空間を効率的に拡大することができる。
【0037】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、前方フランジ14の上面14aが、シート2及び/又は燃料タンク3を取り付けるために用いられる取付座面14bを含む。このようなシートレール構造1においては、シート2及び/又は燃料タンク3を介して前方フランジ14の上面14aに上方から荷重が加えられた場合であっても、かかる荷重が側方壁11の膨出部12の上端に効率的に伝わることとなる。そのため、上述のように、シートレール10の強度を効率的に向上させることができる。
【0038】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、前方フランジ14が、シート2の前端部分2aを支持し、側方壁11の上端に、シート2の後端部分2bに係合するシート係合部材4が配置され、かつ膨出部12の後端が、シート係合部材4よりも前方寄りに配置されている。このようなシートレール構造1においては、シート2を介してシートレール10に加えられる上下方向の荷重を、膨出部12の上端に位置する前方フランジ14と、膨出部12に対して後方に位置する後方領域11eとに分散させることができる。そのため、シートレール10にて生じる応力集中を低減することができる。
【0039】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、側方壁11の前端領域11bが、車体Mのメインフレーム5に取り付けられるように構成され、かつ上方寄りに位置する上方取付部15を有し、膨出部12の下端が、上方取付部15の上端よりも下方寄りに配置されている。このようなシートレール構造1においては、高い剛性を有する上方取付部15によって膨出部12を効率的に補強することができる。また、上方取付部の15介在によって膨出部12の上端及び下端間の距離が必然的に離れる。そのため、膨出部12を緩やかな湾曲形状に形成することができ、その結果、膨出部12の応力集中を防ぐことができる。
【0040】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、側方壁11の前端領域11bが、メインフレーム5に取り付けられるように構成され、かつ下方寄りに位置する下方取付部16を有し、膨出部12の下端が、下方取付部16の上端よりも上方寄りに配置されている。このようなシートレール構造1においては、高い剛性を有する上方及び下方取付部15,16間に膨出部12の下端が位置し、これによって、上方及び下方取付部15,16によって、膨出部12の下端の周辺領域を効率的に補強することができる。
【0041】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、膨出部12が、幅方向の外方からアウターパネル6に覆われ、側方壁11が、膨出部12及びアウターパネル6に対して下方に隣接し、かつ幅方向の外方から見て車体Mの外部に露出する露出部11cを有している。このようなシートレール構造1においては、アウターパネル6の下端縁6a及びシートレール10の側方壁11間の隙間から雨水等が侵入しようとした場合であっても、バッテリ、ケーブル等の電装部品等を配置したシートレール10の内部空間に雨水等がさらに侵入することを、膨出部12によって効率的に防ぐことができる。さらには、雨水等に起因するシートレール10の劣化を防止でき、その結果、かかる劣化に起因するシートレール10の強度低下を防止できる。付随的には、膨出部12をアウターパネル6によって隠すことができ、その結果、シートレール10の意匠性の低下を防ぐことができる。
【0042】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、膨出部12の前端が、上方取付部15よりも後方寄りに配置されている。このようなシートレール構造1においては、膨出部12を、荷重を吸収するように弾性を持たせながら、膨出部12を上方取付部15によって膨出部12の周囲から補強することができる。
【0043】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、シートレール10が、側方壁11の上端かつ前方フランジ14に対して後方に位置する後方フランジ17と、前方及び後方フランジ14,17を連結する移行フランジ18とを有し、前方フランジ14の幅方向の長さが、後方フランジ17の幅方向の長さよりも大きくなっており、移行フランジ18の両側方縁18aが、これら両側方縁18aの幅方向の間隔を後方フランジ17から前方フランジ14に向かうに従って拡大するように形成されている。このようなシートレール構造1においては、特に、ピリオンライダー、荷物等が自動二輪車に載せられた場合に、後方フランジ17に加えられる荷重に起因して前方及び後方フランジ14,17間で生じる応力集中を、移行フランジ18によって低減することができる。
【0044】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、膨出部12が、その幅方向の最外方に位置する最外方区域12aを有し、この最外方区域12aが、前方フランジ14よりも下方に位置している。このようなシートレール構造1においては、膨出部12を緩やかな湾曲形状に形成することができ、その結果、膨出部12の応力集中を防ぐことができる。付随的には、膨出部12の上端及び最外方区域12a間に生じる曲がりと、膨出部12の最外方区域12a間及び下端間に生じる曲がりとが鋭くなることを防止でき、その結果、シートレール10を繊維強化樹脂の成形によって作製する場合であっても、膨出部12を成形し易くできる。
【0045】
本実施形態に係るシートレール構造1においては、側方壁11が、その上端よりも下方にて膨出部12及びこの膨出部12の周辺部13間に形成される境界縁12bを有し、境界縁12bに形成される角部が円弧状に延びている。このようなシートレール構造1においては、シートレール10を繊維強化樹脂の成形によって作製する場合に、膨出部12周辺において境界縁12bを境に生じる樹脂の流動性の差異を低減することができる。そのため、繊維のうねり等を低減することができ、その結果、膨出部12周辺における応力集中を低減することができる。
【0046】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…シートレール構造(自動二輪車用シートレール構造)、2…シート、2a…前端部分、2b…後端部分、3…燃料タンク、4…シート係合部材、5…メインフレーム、6…アウターパネル、10…シートレール、11…側方壁、11a…前方上側領域、11b…前端領域、11c…露出部、12…膨出部、12a…最外方区域、12b…境界縁、13…周辺部、14…前方フランジ、14a…上面、14b…取付座面、15…上方取付部、16…下方取付部、17…後方フランジ、18…移行フランジ、18a…側方縁、M…車体
図1
図2
図3
図4