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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B65D1/02 233
B65D1/02 250
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019208268
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021079975
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永春 利佳
(72)【発明者】
【氏名】岡部 高規
(72)【発明者】
【氏名】勝田 秀彦
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-229544(JP,A)
【文献】特開2016-216093(JP,A)
【文献】特開平08-217043(JP,A)
【文献】実開昭62-152910(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、
前記脚部は、
前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、
前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、
前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、
前記外周面部の下端側の外周面端縁部は、縦断面が、前記連接部における接線が中心軸と垂直に交わる容器外方に凸の円弧状に形成され、
前記連接部に連なる前記脚底面部の脚底面端縁部は、縦断面が、前記連接部における接線が中心軸と垂直に交わり、かつ、前記外周面端縁部よりも曲率半径が小さい容器外方に凸の円弧状に形成されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、
前記脚部は、
前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、
前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、
前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、
前記脚底面部は、前記連接部側の脚底面端縁部に連なる傾斜面部を有し、前記傾斜面部は、縦断面が、少なくとも前記脚底面端縁部に連なる側において、容器内方に凸の円弧状とされ、前記脚底面端縁部との交点で、それぞれに接する接線が一致するように前記脚底面端縁部に連続することを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項3】
複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、
前記脚部は、
前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、
前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、
前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、
前記外周面部の周方向に沿った長さは、前記脚部の上端側において、前記外周面部の周方向両端縁が、前記外周面部の周方向中央に向かって左右対称に弧を描くようにして徐々に狭められながら、少なくとも前記脚部の高さの1/2よりも下端側の部位における周方向に沿った長さが、前記脚部の上端における周方向に沿った長さの15~50%となるように狭められていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記外周面部の周方向両端縁に連接する側面部の側面端縁部は、横断面が、前記外周面部よりも曲率半径が小さい容器外方に凸の円弧状に形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
少なくとも前記脚部の高さの1/2よりも下端側の部位において、前記側面端縁部の曲率半径が、同じ横断面における前記外周面部の曲率半径の10~50%である請求項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記脚底面部は、少なくとも前記底部の中心側の部位において、前記底部の中心を通って前記脚底面部を周方向に等分する中心線と中心軸とを含む面に直交し、かつ、中心軸に平行な面で切断した断面が、容器外方に凸の円弧状に形成されている請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器に関し、特に、炭酸飲料を内容物とする耐圧ボトルとしての用途に好適な合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いてプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
このような合成樹脂製容器のうち、炭酸飲料を内容物とする飲料用容器にあっては、炭酸ガスによる圧力に耐え得る耐圧性を備えるとともに、容器内が陽圧になっても自立安定性が損なわれることなく、自立可能であることが要求される。このため、例えば、特許文献1が開示するような、いわゆるペタロイド形状に形成された底部を備える耐圧ボトルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-112395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、ボトル軸を中心とする同一の仮想円に沿って接地部を延在させるとともに、それぞれの接地部がなすボトル軸を中心とした中心角の合計角度を規定しており、そのようにすることで、ボトルの全高に対する接地部の接地径の比を低く抑えても、転倒を抑制することができるとしている。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1が開示する技術を適用しても、ボトルの転倒を抑制するには限界があることが見出された。
【0007】
すなわち、ボトルが転倒し難いか否かの指標として、転倒角が用いられるが、転倒角は、ボトルを正立させた面を傾けていったときに、ボトルが転倒する当該面の傾斜角度として求められる。ペタロイド形状に形成された底部を備える耐圧ボトルにあっては、隣接する脚部の間の方向に倒れ易いことから、隣接する脚部の間を等分する中心線が、当該面を傾ける軸に直交するようにボトルを正立させて、隣接する脚部の間の方向にボトルが転倒する当該面の傾斜角度を転倒角としており、その際、隣接する脚部のそれぞれの接地部の端部どうしを結ぶ線分を軸にボトルが転倒する。したがって、特許文献1のように、ボトル軸を中心とする同一の仮想円に沿って接地部を延在させたのでは、隣接する脚部のそれぞれの接地部の端部どうしを結ぶ線分が、接地径よりもボトル軸側に寄ってしまうため、ボトルの転倒を抑制するには限界があった。
【0008】
本発明者らは、このような知見に基づいて、さらなる検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る合成樹脂製容器は、複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、前記脚部は、前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、前記外周面部の下端側の外周面端縁部は、縦断面が、前記連接部における接線が中心軸と垂直に交わる容器外方に凸の円弧状に形成され、前記連接部に連なる前記脚底面部の脚底面端縁部は、縦断面が、前記連接部における接線が中心軸と垂直に交わり、かつ、前記外周面端縁部よりも曲率半径が小さい容器外方に凸の円弧状に形成されている構成としてある。
また、本発明に係る合成樹脂製容器は、複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、前記脚部は、前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、前記脚底面部は、前記連接部側の脚底面端縁部に連なる傾斜面部を有し、前記傾斜面部は、縦断面が、少なくとも前記脚底面端縁部に連なる側において、容器内方に凸の円弧状とされ、前記脚底面端縁部との交点で、それぞれに接する接線が一致するように前記脚底面端縁部に連続する構成とすることができる。
また、本発明に係る合成樹脂製容器は、複数の脚部が中心軸周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された底部を備え、前記脚部は、前記底部の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部と、前記底部の最下端で前記外周面部と連接し、前記外周面部との連接部から前記底部の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部とを有し、前記底部の中心から前記連接部の長手方向中央までの距離に対して、前記底部の中心から前記連接部の一端までの距離が長く、前記外周面部の周方向に沿った長さは、前記脚部の上端側において、前記外周面部の周方向両端縁が、前記外周面部の周方向中央に向かって左右対称に弧を描くようにして徐々に狭められながら、少なくとも前記脚部の高さの1/2よりも下端側の部位における周方向に沿った長さが、前記脚部の上端における周方向に沿った長さの15~50%となるように狭められている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、いわゆるペタロイド形状に形成された底部を備える合成樹脂製容器の転倒をより有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す背面図である。
図3】本発明の実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す拡大底面図である。
図4図1のA-A端面図である。
図5図1のB-B端面図である。
図6図1のC-C端面図である。
図7図3のD-D端面図である。
図8図3のE-E端面図である。
図9図3のF-F端面図である。
図10図3のG-G端面図である。
図11図3のH-H端面図である。
図12図3のI-I端面図である。
図13図7~12を重ねて示す説明図である。
図14図3の要部拡大図である。
図15図3のJ-J端面図である。
図16図3のK-K端面図である。
図17図15の要部拡大図である。
図18図16の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の概略を示す正面図、図2は、同背面図であり、図3は、本実施形態に係る合成樹脂製容器の底面の概略を拡大して示す拡大底面図である。
【0014】
これらの図に示す容器1は、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えており、胴部4が概ね円筒状に形成された、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有している。
なお、図1及び図2では、胴部4の一部を省略している。
【0015】
このような容器1は、熱可塑性樹脂を使用して射出成形や圧縮成形などにより有底筒状のプリフォームを成形し、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などにより所定の容器形状に成形することによって製造される。
【0016】
容器1を製造するにあたり、使用する熱可塑性樹脂としては、ブロー成形が可能な任意の樹脂を使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,非晶ポリアリレート,ポリ乳酸,ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などの熱可塑性ポリエステル,これらの樹脂あるいは他の樹脂とブレンドされたものなどが好適である。特に、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルが、好適に使用される。また、ポリカーボネート,アクリロニトリル樹脂,ポリプロピレン,プロピレン-エチレン共重合体,ポリエチレンなども使用することができる。
【0017】
口部2は、内容物の注ぎ口となる円筒状の部位であり、かかる口部2には、容器内を密封する図示しない蓋体が取り付けられる。
また、口部2の下端は、胴部4に向かって円錐台状に拡径して口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3に連接している。
【0018】
胴部4は、容器1の高さ方向の大半を占める部位であり、上端が肩部3に連接し、下端が底部5に連接している。
【0019】
ここで、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(図1に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
また、図1に、符号Cで中心軸を示しているが、特に断りのない限り、中心軸Cを含む面で切断した断面を縦断面、中心軸Cに直交する面で切断した断面を横断面というものとする。
【0020】
本実施形態において、容器1は、炭酸飲料を内容物とする耐圧ボトルとして好適に利用できるように構成される。そのため、容器内が陽圧になっても自立安定性が損なわれないように、複数(図示する例では、五つ)の脚部51が中心軸C周りに回転対称に、かつ、均等な間隔で放射状に配設された、いわゆるペタロイド形状の底部5を備えている。
【0021】
このような形状とされた底部5において、その中央部は、容器内方にドーム状に窪んだ底板部50とされ、この底板部50の周囲に脚部51が配設されている。そして、隣接する脚部51の間には、最深部の縦断面が容器外方に凸の円弧状となるように、容器内方に嵌入してなる底溝部56が、底板部50の周縁から放射状に延在するようにして形成されている。換言すれば、底板部50の周囲に配設された脚部51は、底溝部56の最深部を母線とする中心軸C周りの回転面からなる概ね半球状の仮想面から、周方向に沿って所定の間隔で部分的に膨出するようにして形成されている。
【0022】
脚部51は、胴部4と連接する底部5の上端から垂下(図示する例では、容器内方にやや傾斜しながら垂下)して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さ(横幅)が下端側で狭められた外周面部52を有している。かかる外周面部52の周方向両端縁は、底溝部56に向かって滑らかに湾曲しながら連続する側面部55に連接している。
【0023】
外周面部52の横幅は、脚部51の上端側において、外周面部52の周方向両端縁が、外周面部52の周方向中央に向かって左右対称に弧を描くようにして徐々に狭められながら、少なくとも脚部51の高さHの1/2よりも下端側の部位における横幅Wが、脚部51の上端における横幅Wの15~50%となるように狭められているのが好ましい。
【0024】
このようにすることで、外周面部52の周方向両端縁に連接する側面部55が、より大きな曲率半径を以て滑らかに湾曲しながら底溝部56に連続するように脚部51を形成することが可能になる。脚部51がこのように形成されるようにすることで、ブロー成形時の賦形性が良好になることに加え、容器1に炭酸飲料が内容物として充填、密封され、容器内が陽圧になった際に、底部5の内面側に加わる圧力に起因する応力亀裂を抑制することもできる。
【0025】
側面部55が、より滑らかに湾曲しながら底溝部56に連続するように脚部51を形成する上で、側面部55の外周面部52に連接する端縁部(以下、「側面端縁部」という)55aは、横断面が、外周面部52よりも曲率半径が小さい容器外方に凸の円弧状に形成されているのが好ましい(図4図6参照)。少なくとも脚部51の高さHの1/2よりも下端側の部位において、側面端縁部55aの曲率半径が、同じ横断面における外周面部52の曲率半径の10~50%であるのがより好ましい。
【0026】
ここで、外周面部52の横断面における曲率半径は、底部5の上端(すなわち、胴部4の下端)の横断面における曲率半径と概ね等しく、横断面において曲率が変化する部位を外周面部52と側面部55との境界とする。
また、底溝部56の上端縁を周方向に延長してつないだ部位を胴部4と底部5との境界とする。
【0027】
なお、図4は、図1のA-A端面図、図5は、図1のB-B端面図、図6は、図1のC-C端面図である。これらの図では、横断面における底部5の端面を、肉厚を省略して示しており、中心から延びる補助線(鎖線)で、外周面部52と側面部55との境界を示している。
【0028】
また、脚部51は、その最下端で外周面部52と連接し、外周面部52との連接部54から底部5の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部53を有している。
【0029】
脚底面部53は、少なくとも底部5の中心側の部位において、底部5の中心を通って脚底面部53を周方向に等分する中心線と中心軸Cとを含む面に直交し、かつ、中心軸Cに平行な面で切断した断面が、容器外方に凸の円弧状に形成されているのが好ましい。当該断面は、それ以外の部位では直線状に形成されているのが好ましく、脚底面部53は、当該断面において容器内方に凸となる部位が存在しないように形成するのが好ましい(図7図13参照)。
【0030】
なお、図7は、図3のD-D端面図、図8は、図3のE-E端面図、図9は、図3のF-F端面図、図10は、図3のG-G端面図、図11は、図3のH-H端面図、図12は、図3のI-I端面図、図13は、図7図12を重ねて示す説明図である。これらの図では、底部5の中心を通って脚底面部53を周方向に等分する中心線と中心軸Cとを含む面に直交し、かつ、中心軸Cに平行な面で切断した脚底面部53を含む端面を、肉厚を省略して示している。
【0031】
このようにすることで、容器1に炭酸飲料が内容物として充填、密封され、容器内が陽圧になった際に、脚底面部53の中心側の部位への応力集中を避けて、当該部位及びその近傍における応力亀裂をより有効に抑制することができる。
【0032】
本実施形態において、外周面部52と脚底面部53との連接部54は、底部5の中心から連接部54の長手方向中央までの距離Lに対して、底部5の中心から連接部54の一端までの距離Lが長い線状(図示する例では、概ね直線状)に形成されている(図3参照)。連接部54の長さは、連接部54における外周面部52の横幅に等しい。
【0033】
このようにすることで、容器1を正立させたときに、外周面部52と脚底面部53との連接部54に沿って脚部51が接地する。その際、連接部54に沿った部分が接地部となり、隣接する脚部51の接地部の端部どうしを結ぶ線分が、底部5の中心から径方向外側により離れて位置することになる(図14参照)。
【0034】
なお、図14は、図3の鎖線で囲む部分を拡大して示す要部拡大図であり、連接部54に沿った接地部となる部分を網掛けで示し、接地部の端部どうしを結ぶ線分を鎖線αで示している。
【0035】
ペタロイド形状に形成された底部5を備える容器1は、隣接する脚部51の間の方向に倒れ易く、隣接する脚部51のそれぞれの接地部の端部どうしを結ぶ線分を軸に転倒することから、当該線分が底部5の中心に近いほど、容器1は転倒し易い。したがって、本実施形態によれば、隣接する脚部51の接地部の端部どうしを結ぶ線分が、底部5の中心から径方向外側により離れて位置することになるため、容器1の転倒をより有効に抑制することができる。
本実施形態は、容器1が、比較的細身で重心位置が高い場合に、そのような容器1の転倒を抑制するのに特に好適である。
【0036】
また、容器1に炭酸飲料が内容物として充填、密封され、容器内が陽圧になった際に、底部5の内面側には圧力が加わる。この底部5の内面側に加わる圧力によって、脚部51の脚底面部53が押し下げられるように変形するなどして、連接部54に沿って脚部51が接地しなくなり、接地部が底部5の中心側に寄ってしまうのは、容器1の転倒を抑制する上で好ましくない。
【0037】
内容物を充填、密封する前後で、容器1の転倒を同等に抑制できるようにする上で、図15図18に示すように、容器内方に湾曲しながら終端する外周面部52の下端側の端縁部(以下、「外周面端縁部」という)52aは、縦断面が、連接部54における接線が中心軸Cと垂直に交わる容器外方に凸の円弧状に形成されているのが好ましく、その曲率半径は、0.5~12mmであるのが好ましく、2~6mmであるのがより好ましい。一方、外周面部52との連接部54に連なる脚底面部53の端縁部(以下、「脚底面端縁部」という)53aは、縦断面が、連接部54における接線が中心軸Cと垂直に交わり、かつ、外周面端縁部52aよりも曲率半径が小さい容器外方に凸の円弧状に形成されているのが好ましく、その曲率半径は、0.5~12mmであるのが好ましく、1~4mmであるのがより好ましい。
外周面端縁部52aの縦断面における曲率半径が大きくなるほど、より底部5の中心側に寄った位置に連接部54が形成される。このため、外周面端縁部52aの縦断面における曲率半径が大き過ぎるのは、自立安定性の観点から好ましくない。一方、外周面端縁部52aと脚底面端縁部53aのそれぞれの縦断面における曲率半径が小さくなるほど、賦形不良が生じ易くなる傾向にある。このため、外周面端縁部52aと脚底面端縁部53aのそれぞれの縦断面における曲率半径が小さ過ぎると、延伸不足により耐圧強度に劣ってしまう虞がある。
【0038】
なお、図15は、図3のJ-J端面図、図16は、図3のK-K端面図であり、それぞれ縦断面における脚部51を含む端面を、肉厚を省略して示している。図17は、図15の鎖線で囲む部分を拡大して示す要部拡大図、図18は、図16の鎖線で囲む部分を拡大して示す要部拡大図である。
【0039】
このようにすることで、底部5の内面側に加わる圧力によって、外周面部52と脚底面部53との連接部54の周辺、特に、その脚底面部53側が、押し下げられるように変形してしまうのを抑制することができる。その結果、内容物を充填、密封した後も概ね同様に、容器1を正立させたときに、連接部54に沿った部分が接地部となり、接地部が底部5の中心側に寄ってしまうのを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態において、脚部51の脚底面部53は、連接部54側の脚底面端縁部53aに連なる傾斜面部53bを有している。
底部5の内面側に加わる圧力によって、連接部54の周辺が押し下げられるように変形してしまうのを抑制する上で、傾斜面部53bは、縦断面が、少なくとも脚底面端縁部53aに連なる側において、容器内方に凸の円弧状とされるのが好ましく、その曲率半径は、15mm以上であるのが好ましい。さらに、傾斜面部53bは、脚底面端縁部53aとの交点で、それぞれに接する接線が一致するように脚底面端縁部53aと滑らかに連続するように形成されているのが好ましい。
なお、傾斜面部53bの縦断面は、少なくとも脚底面端縁部53aに連なる側において、容器内方に凸の円弧状になっていれば、概ね直線状になっていてもよい。
【0041】
なお、図17図18では、脚底面端縁部53aがなす円弧の中心から延びる補助線(鎖線)で、脚底面端縁部53aと傾斜面部53bとの交点を示しており、脚底面端縁部53aがなす円弧を傾斜面部53b側に延長した仮想線と、傾斜面部53bがなす円弧を脚底面端縁部53a側に延長した仮想線とをそれぞれ鎖線で示している。
【0042】
このような態様とする場合、連接部54から中心軸Cに下した垂線の長さRと、脚底面端縁部53aと傾斜面部53bとの交点から中心軸Cに下した垂線の長さRとの差が、0.5~3mmの範囲で、連接部54の長手方向に沿って概ね一定となるようにするのがより好ましい。
【0043】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0044】
例えば、前述した実施形態では、五つの脚部51を底部5に配設した例を示したが、底部5に配設される脚部51の数は、これに限定されない。
また、前述した実施形態では、口部2の下端から胴部4に向かって円錐台状に拡径する肩部3を備える例を示したが、これに限定されない。口部2と胴部4との間をつなぐ肩部3は、例えば、いわゆるつる首状に形成することもできる。同様に、胴部4の形態も図示する例には限定されない。
【0045】
要するに、本発明に係る合成樹脂製容器は、底部5に配設された脚部51が、底部5の上端から垂下して、下端側が容器内方に湾曲しながら終端するとともに、周方向に沿った長さが下端側で狭められた外周面部52と、底部5の最下端で外周面部52と連接し、外周面部52との連接部54から底部5の中心に向かって上向きに傾斜する脚底面部53とを有し、底部5の中心から連接部54の長手方向中央までの距離に対して、底部5の中心から連接部54の一端までの距離が長くなるように形成されていれば、これ以外の細部の構成は、前述した実施形態に限定されることなく適宜変更することができる。
また、前述した実施形態で説明した細部の構成を適宜取捨選択して組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 容器
5 底部
51 脚部
52 外周面部
52a 外周面端縁部
53 脚底面部
53a 脚底面端縁部
53b 傾斜面部
54 連接部
55 側面部
55a 側面端縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図17
図18