(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】車両用スライドレール装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20231212BHJP
【FI】
B60N2/07
(21)【出願番号】P 2019208274
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 明弘
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西田 晃洋
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-039129(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間と、前記内部空間と外部とを連通するとともに第1の方向に延びた開口と、が設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に互いに離間するとともに互いに近付く方向に延びる二つの第1の壁と、前記二つの第1の壁の内側の端から前記内部空間に向かう第3の方向に突出するとともに、間に前記開口を形成する、二つの第2の壁と、を有する、レールと、
少なくとも部分的に前記開口に位置し、前記第1の方向に移動可能に前記レールに取り付けられる、スライダと、
前記スライダに取り付けられ、前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部に接触する二つの接触部材と、
を具備
し、
前記二つの接触部材は、前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部で前記第1の方向に転動可能な二つの転動体を有する、
車両用スライドレール装置。
【請求項2】
前記二つの第2の壁はそれぞれ、前記第3の方向における当該第2の壁の端に位置する縁を有し、
前記二つの接触部材はそれぞれ、前記縁に接触する、
請求項1の車両用スライドレール装置。
【請求項3】
前記スライダに
は、第1の取付部と、第2の取付部と、が設けられ、
前記第1の取付部は、前記二つの接触部材のうち一方を取り付け可能
であり、
前記第2の取付部は、前記第1の方向に前記第1の取付部から離間し、前記二つの接触部材のうち前記一方を取り付け可能であり、前記第1の取付部よりも前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部から前記第3の方向に離間し
ており、
前記二つの接触部材のうち前記一方は、前記第1の取付部又は前記第2の取付部に取り付けられる、
請求項1
又は請求項
2の車両用スライドレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用スライドレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロアに固定されるロアレールと、シートに固定されるアッパレールと、を備える車両用スライドレール装置が知られる。アッパレールは、ロアレールに取り付けられ、シートと共にロアレールに沿って移動することができる。
【0003】
アッパレールに、当該アッパレールのガタツキを抑制するための抑え部材が取り付けられることがある。抑え部材は、ロアレールの内面に接触することで、アッパレールのガタツキを抑制する。
【0004】
アッパレールは、例えば、上壁と、上壁の両端から下方に延びて開口を通る側壁と、側壁の下端から外側略上方に延びる返し壁とを有する。抑え部材は、例えば、返し壁に取り付けられ、ロアレールの上方の内面に接触する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の構成では、外側略上方に延びる返し壁に抑え部材が取り付けられるため、当該抑え部材を収容するロアレールが大型化してしまう虞がある。
【0007】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、レールを小型化可能な車両用スライドレール装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係る車両用スライドレール装置は、一例として、内部空間と、前記内部空間と外部とを連通するとともに第1の方向に延びた開口と、が設けられ、前記第1の方向と直交する第2の方向に互いに離間するとともに互いに近付く方向に延びる二つの第1の壁と、前記二つの第1の壁の内側の端から前記内部空間に向かう第3の方向に突出するとともに、間に前記開口を形成する、二つの第2の壁と、を有する、レールと、少なくとも部分的に前記開口に位置し、前記第1の方向に移動可能に前記レールに取り付けられる、スライダと、前記スライダに取り付けられ、前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部に接触する二つの接触部材と、を備える。よって、一例としては、接触部材がロアレールのより内側に配置され、レールを小型化することが可能になる。
【0009】
上記車両用スライドレール装置では、一例として、前記二つの第2の壁はそれぞれ、前記第3の方向における当該第2の壁の端に位置する縁を有し、前記二つの接触部材はそれぞれ、前記縁に接触する。よって、一例としては、例えば、第2の壁を曲げて接触部材と面接触する部分を形成する場合に比べ、ロアレールの構造が複雑化することが抑制される。
【0010】
上記車両用スライドレール装置では、一例として、前記二つの接触部材は、前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部で前記第1の方向に転動可能な二つの転動体を有する。よって、一例としては、スライダが第1の方向に滑らかに移動することができる。
【0011】
上記車両用スライドレール装置では、一例として、前記スライダに、前記二つの接触部材のうち一方を取り付け可能な第1の取付部と、前記第1の方向に前記第1の取付部から離間し、前記二つの接触部材のうち前記一方を取り付け可能であり、前記第1の取付部よりも前記第3の方向における前記二つの第2の壁の端部から前記第3の方向に離間した第2の取付部と、が設けられ、前記二つの接触部材のうち前記一方は、前記第1の取付部又は前記第2の取付部に取り付けられる。よって、一例としては、レール及びスライダの寸法公差に応じて、接触部材を第3の方向における第2の壁の端部に接触する位置に配置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一つの実施形態のシート装置を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のスライドレール装置の一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のロアレール及びアッパレールを示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態のアッパレールを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態のアッパレールと、走行ローラと、抑えローラと、ブッシュとを分解して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態のスライダを分解して示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態のスライダを示す正面図である。
【
図8】
図8は、実施形態のスライドレール装置の一部を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態のスライドレール装置の一部を
図8と異なる方向から示す斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態の取付具及び複数のカバーを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態のロアレール及び複数のカバーを示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の延壁が開放位置に位置するスライドレール装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図12を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明について、複数の表現が記載されることがある。複数の表現がされた構成要素及び説明は、記載されていない他の表現がされても良い。さらに、複数の表現がされない構成要素及び説明も、記載されていない他の表現がされても良い。
【0014】
図1は、一つの実施形態のシート装置10を概略的に示す側面図である。シート装置10は、四輪自動車のような車両1に搭載され、スライドレール装置11と、複数のシート12とを有する。シート12はそれぞれ、シートクッション12aと、当該シートクッション12aに回動可能に取り付けられたシートバック12bとを有する。
【0015】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、車両1の左右方向に沿って設けられる。Y軸は、車両1の前後方向に沿って設けられる。Z軸は、車両1の上下方向に沿って設けられる。
【0016】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向(右方向)と、X軸の矢印の反対方向である-X方向(左方向)とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向(前方向)と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向(後方向)とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向(上方向)と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向(下方向)とを含む。
【0017】
スライドレール装置11は、二つのロアレール21と、四つのスライダ22とを有する。ロアレール21は、レールとも称され得る。
図1は、一つのロアレール21と、二つのスライダ22とを示す。
【0018】
ロアレール21は、Y方向に延びるように車両1のフロア1aに取り付けられる。フロア1aは、略+Z方向に向く。なお、フロア1aは、他の方向に向く部分を有しても良い。二つのロアレール21は、X方向に互いに離間して配置される。
【0019】
図2は、実施形態のスライドレール装置11の一部を示す断面図である。
図2に示すように、スライダ22はそれぞれ、アッパレール25と、ガイド部材26とを有する。アッパレール25は、Y方向に延びるとともに、Y方向にスライド移動可能に、ロアレール21に取り付けられる。Y方向は、第1の方向とも称され得る。なお、+Y方向又は-Y方向が第1の方向と称されても良い。
【0020】
Y方向は、ロアレール21の長手方向であるとともに、アッパレール25の長手方向である。また、X方向は、ロアレール21の幅方向であるとともに、アッパレール25の幅方向である。
【0021】
左右一対のスライダ22が、一つのシート12を支持する。さらに、
図1に示すように、Y方向に並べられた二つのスライダ22が、Y方向に移動可能に一つのロアレール21に取り付けられる。以下、Y方向に並べられた二つのスライダ22を、スライダ22A,22Bと個別に称することがある。
【0022】
スライダ22A,22Bは、略同一の形状及び機能を有する。このため、以下の記載では、特段の記載がある場合を除き、スライダ22A,22Bをスライダ22としてまとめて説明する。
【0023】
また、以下の説明において、X方向に並ぶ二つのロアレール21のうち一方と、X方向に並ぶ左右一対のスライダ22のうち一方と、について代表的に説明する。X方向に並ぶ二つのロアレール21のうち他方と、X方向に並ぶ左右一対のスライダ22のうち他方とは、例えば、説明されるロアレール21及びスライダ22に対し、X方向に鏡面対称に形成される。
【0024】
X方向に並ぶ二つのロアレール21のうち説明される一方は、他方から-X方向に離間している。また、X方向に並ぶ左右一対のスライダ22のうち説明される一方は、他方から-X方向に離間している。このため、以下の説明において、+X方向を幅方向内側、-X方向を幅方向外側と称することがある。すなわち、幅方向内側は、X方向のうち他方のロアレール21及びスライダ22に向く方向である。幅方向外側は、X方向のうち他方のロアレール21及びスライダ22に向く方向の反対方向である。
【0025】
図3は、実施形態のロアレール21及びアッパレール25を示す断面図である。
図3に示すように、ロアレール21は、例えば、曲げ加工された一つの板金により作られ、略C字状の断面を有する。なお、ロアレール21はこの例に限られない。ロアレール21は、底壁31と、二つの外側壁32と、二つの上側壁33と、二つの内側壁34とを有する。上側壁33は、壁、又は第1の壁とも称され得る。内側壁34は、第2の壁とも称され得る。
【0026】
底壁31は、X‐Y平面上に広がるとともにY方向に延びる略矩形の板状に形成される。底壁31は、
図2及び
図3に示すようなY方向と直交する断面において、X方向に延びている。底壁31は凹凸を有しても良い。
【0027】
底壁31は、ロアレール21の内部に向く内面31aと、ロアレール21の外部に向く外面31bとを有する。内面31aは、第1の内面とも称され得る。内面31aは、略平坦に形成され、+Z方向に向く。外面31bは、略平坦に形成され、-Z方向に向く。外面31bは、内面31aの反対側に位置する。
【0028】
図2に示すように、底壁31は、例えばボルトにより、フロア1aの窪み1bに取り付けられる。底壁31は、例えば、ブラケットを介してフロア1aの窪み1bに取り付けられても良い。
【0029】
図3に示すように、二つの外側壁32は、X方向における底壁31の両端に接続され、略Z方向に延びている。言い換えると、二つの外側壁32は、Y方向と直交する断面において、底壁31が延びる方向と略直交する方向に延びている。本実施形態では、底壁31と外側壁32との間に、斜めに延びる角部分が介在する。外側壁32はそれぞれ、ロアレール21の内部に向く内面32aを有する。
【0030】
二つの上側壁33は、X方向に互いに離間している。上側壁33は、X-Y平面上に広がるとともに、Y方向に延びる略矩形の板状に形成される。Y方向と直交する断面において、二つの上側壁33は、+Z方向における外側壁32の端に接続され、互いに近付く方向に延びている。X方向は、Y方向と直交しており、第2の方向とも称され得る。なお、+X方向又は-X方向が第2の方向と称されても良い。
【0031】
上側壁33は、ロアレール21の内部に向く内面33aと、ロアレール21の外部に向く外面33bとを有する。言い換えると、上側壁33は、ロアレール21の内面である内面33aを形成する。内面33aは、第2の内面とも称され得る。
【0032】
上側壁33の内面33aは、略平坦に形成され、-Z方向に向く。上側壁33の内面33aは、間隔を介して、底壁31の内面31aと向かい合う。外面33bは、略平坦に形成され、+Z方向に向く。外面33bは、内面33aの反対側に位置する。
【0033】
二つの内側壁34は、X方向に互いに離間している。内側壁34は、Y-Z平面上に広がるとともに、Y方向に延びる略矩形の板状に形成される。Y方向と直交する断面において、二つの内側壁34は、二つの上側壁33の内側の端から、-Z方向に延びている。-Z方向は、第3の方向とも称され得る。
【0034】
二つの内側壁34はそれぞれ、縁34aを有する。縁34aは、-Z方向における内側壁34の端に位置し、板状の内側壁34の端縁である。言い換えると、縁34aは、-Z方向における内側壁34の端部である。
【0035】
縁34aは、-Z方向に向くとともに、Y方向に略直線状に延びている。なお、例えば内側壁34が曲げられることで、縁34aと異なる部分が-Z方向における内側壁34の端部となっていても良い。
【0036】
二つの内側壁34は、二つの外側壁32の間に位置する。X方向において、二つの内側壁34は、二つの外側壁32から離間している。内側壁34の縁34aは、底壁31の内面31aから離間している。
【0037】
ロアレール21に、内部空間36と、開口37とが設けられる。開口37は、溝とも称され得る。内部空間36は、ロアレール21の内部に設けられる。例えば、内部空間36は、底壁31、二つの外側壁32、及び二つの上側壁33に囲まれている。Y方向と直交する断面において、内側壁34は、上側壁33の端から、内部空間36に向かう方向である-Z方向に延びている。
【0038】
開口37は、二つの内側壁34により、当該二つの内側壁34の間に形成(規定)される。このため、開口37は、二つの上側壁33の間に設けられるとともに、Y方向に延びている。開口37は、内部空間36と、ロアレール21の外部とを連通する。さらに、内部空間36は、Y方向におけるロアレール21の両端で外部に連通している。
【0039】
アッパレール25は、例えば、曲げ加工された一つの板金により作られる。なお、アッパレール25はこの例に限られない。アッパレール25は、上壁41と、二つの側壁42と、二つの返し壁43とを有する。上壁41は、外壁とも称され得る。
【0040】
上壁41は、X‐Y平面上に広がるとともにY方向に延びる略矩形の板状に形成される。上壁41は、Y方向と直交する断面において、X方向に延びている。上壁41は、ロアレール21の外部に位置する。
【0041】
上壁41は、アッパレール25の内部に向く内面41aと、アッパレール25の外部に向く外面41bとを有する。内面41aは、略平坦に形成され、-Z方向に向く。外面41bは、略平坦に形成され、+Z方向に向く。外面41bは、内面41aの反対側に位置する。
【0042】
二つの側壁42は、X方向における上壁41の両端から、略-Z方向に延びている。二つの側壁42は、略平行に延びており、互いに離間している。側壁42は、ロアレール21の開口37を通って延びている。このため、アッパレール25は、少なくとも部分的に開口37に位置している。
【0043】
二つの側壁42はそれぞれ、アッパレール25の内部に向く内面42aと、アッパレール25の外部に向く外面42bとを有する。内面42aは、内側面とも称され得る。外面42bは、外側面とも称され得る。
【0044】
内面42aは、略平坦に形成され、間隔を介して二つの側壁42のうち他方に向く。外面42bは、内面42aの反対側に位置する。外面42bの少なくとも一部と、ロアレール21の内側壁34とは、互いに向かい合う。
【0045】
図2に示すように、Y方向と直交する断面において、二つの返し壁43は、ロアレール21の内部空間36において、二つの側壁42から互いに遠ざかる方向に延びている。具体的には、二つの返し壁43はそれぞれ、張出壁45と、起立壁46とを有する。
【0046】
Y方向と直交する断面において、張出壁45は、側壁42の外面42bから略X方向に延びている。このため、二つの返し壁43の張出壁45は、互いに遠ざかる方向に延びている。Y方向と直交する断面において、起立壁46は、張出壁45の先端から+Z方向に延びている。以上の張出壁45及び起立壁46により、返し壁43は、返し(Barb)状の部分を形成する。なお、返し壁43の形状は、この例に限られない。
【0047】
起立壁46は、ロアレール21の外側壁32と内側壁34との間に位置する。ロアレール21の内側壁34の縁34aは、間隔を介して張出壁45に向く。例えば車両1に衝撃が作用した場合、シート12及びアッパレール25が+Z方向に動くことがある。この場合、返し壁43がロアレール21の上側壁33及び内側壁34に受け止められる。これにより、アッパレール25がロアレール21から望まぬ外れ方をすることが抑制される。
【0048】
スライドレール装置11は、駆動装置50をさらに有する。駆動装置50は、スライダ22をロアレール21に対してY方向に移動させる。駆動装置50は、スクリューロッド51と、モータ52と、変換機構53とを有する。
図2は、モータ52を模式的に示す。
【0049】
スクリューロッド51は、例えば、ロアレール21に固定され、Y方向に延びている。スクリューロッド51は、内部空間36又は開口37に位置し、且つアッパレール25の内部に位置する。スクリューロッド51の外面に、雄ネジが形成される。
【0050】
モータ52は、スライダ22から幅方向内側に離間した位置で、種々の部材を介してスライダ22に取り付けられる。モータ52は、例えば、サーボモータであり、車両1のECU(Electronic Control Unit)の制御に応じて駆動させられる。本実施形態では、一つのスライダ22に一つのモータ52が取り付けられる。しかし、左右一対のスライダ22のために、共通の一つのモータ52が設けられても良い。
【0051】
変換機構53は、スライダ22に取り付けられる。変換機構53は、例えば、スクリューロッド51に取り付けられたナットと、当該ナットとモータ52との間で回転を伝達するシャフト、ギヤ、ウォーム、及びウォームホイールのような種々の部品と、を有する。
【0052】
モータ52により、変換機構53のナットが回転駆動されると、スライダ22がロアレール21に対してY方向に相対的に移動する。このように、変換機構53は、モータ52により生じる回転を、スライダ22の直動に変換する。
【0053】
上述のように、本実施形態のシート装置10は、モータ52により駆動されるパワーシートである。しかし、シート装置10は、ユーザにより手動でスライダ22をY方向に移動させることが可能であっても良い。
【0054】
図4は、実施形態のアッパレール25を示す斜視図である。
図4に示すように、アッパレール25の二つの側壁42はそれぞれ、基部61と、少なくとも一つの装着部62と、少なくとも一つの曲部63とを有する。例えば、一方の側壁42は二つの装着部62及び二つの曲部63を有し、他方の側壁42は一つの装着部62及び一つの曲部63を有する。なお、側壁42は、この例に限られない。例えば、二つの側壁42がそれぞれ、二つの装着部62及び二つの曲部63を有しても良い。
【0055】
基部61は、X方向における上壁41の両端から、-Z方向に延びる部分である。Y方向と直交する断面において、返し壁43は、-Z方向における基部61の端から互いに遠ざかる方向に延びている。なお、返し壁43は、基部61の他の位置から延びても良い。
【0056】
装着部62は、Y方向において、返し壁43と異なる位置に設けられる。例えば、装着部62が設けられることにより、返し壁43が分割される。装着部62及び曲部63は、例えば、アッパレール25をプレス加工で曲げることにより形成される。装着部62は、曲部63を介して基部61に接続されている。
【0057】
図3に示すように、Y方向と直交する断面において、装着部62は、当該装着部62が接続された基部61よりも、アッパレール25の内側に位置する。すなわち、二つの側壁42は、装着部62及び曲部63において、互いに近付くように曲げられている。X方向において、二つの装着部62は、二つの基部61の間に位置する。装着部62は、曲部63から-Z方向に延びている。装着部62は、返し壁43よりも-Z方向に延びている。
【0058】
側壁42は、装着部62によって形成される凹面42cを有する。凹面42cは、外面42bから窪み、略平坦に形成される。なお、凹面42cは、内面42aから窪んでも良い。この場合、二つの側壁42は、装着部62及び曲部63において、互いに遠ざかるように曲げられる。
【0059】
図4に示すように、側壁42に、複数の切欠き64が設けられる。切欠き64は、Y方向における装着部62と返し壁43との間に位置する。切欠き64は、-Z方向における基部61の端から、+Z方向に窪んだ部分である。
【0060】
複数の装着部62のそれぞれに、第1の装着孔65と、複数の第2の装着孔66とが設けられる。第1の装着孔65と、複数の第2の装着孔66とは、Y方向に間隔を介して並べられ、装着部62をX方向に貫通する。
【0061】
複数の第2の装着孔66は、互いに略同一形状に形成される。本実施形態において、複数の第2の装着孔66は、三つの第2の装着孔66A,66B,66Cを含む。第2の装着孔66Aは、第1の取付部とも称され得る。第2の装着孔66Bは、第2の取付部とも称され得る。
【0062】
第2の装着孔66Bは、Y方向に第2の装着孔66Aから離間するとともに、第2の装着孔66Aよりも下方に位置する。別の表現によれば、第2の装着孔66Bは、第2の装着孔66Aよりもロアレール21の内側壁34の縁34aから-Z方向に離間している。また、第2の装着孔66Cは、Y方向に第2の装着孔66Bから離間するとともに、第2の装着孔66Bよりも下方に位置する。
【0063】
スライドレール装置11は、複数の走行ローラ71と、複数の抑えローラ72と、複数のブッシュ73とをさらに有する。走行ローラ71は、ローラとも称され得る。抑えローラ72は、接触部材、又は第1の制限部材とも称され得る。ブッシュ73は、第2の制限部材とも称され得る。
【0064】
図5は、実施形態のアッパレール25と、走行ローラ71と、抑えローラ72と、ブッシュ73とを分解して示す斜視図である。
図5に示すように、複数の走行ローラ71はそれぞれ、例えば、軸71aと、当該軸71aに回転可能に取り付けられた車輪71bと、を有する。なお、走行ローラ71は、この例に限らず、他の転動体を有しても良い。
【0065】
複数の走行ローラ71は、二つの側壁42の凹面42cに取り付けられる。言い換えると、走行ローラ71が取り付けられる側壁42の表面(外面42b)は凹んでいる。例えば、軸71aが、第1の装着孔65にカシメにて取り付けられる。これにより、走行ローラ71は、車輪71bがX方向に延びる軸71aまわりに回転可能に、凹面42cに取り付けられる。なお、軸71aは他の手段(例えば、圧入)にて第1の装着孔65に取り付けられても良い。また、走行ローラ71は、二つの側壁42のうち少なくとも一方に取り付けられれば良い。
【0066】
図3に示すように、走行ローラ71は、ロアレール21の内部空間36に位置する。走行ローラ71は、Y方向に転動可能に、底壁31の内面31aに支持される。また、走行ローラ71は、間隔を介して内側壁34と-Z方向に並ぶ。言い換えると、内側壁34の縁34aが、間隔を介して走行ローラ71に向く。このため、内側壁34は、走行ローラ71から離間しており、走行ローラ71の転動を妨げない。
【0067】
複数の抑えローラ72はそれぞれ、例えば、軸72aと、当該軸72aに回転可能に取り付けられた車輪72bと、を有する。なお、抑えローラ72は、この例に限らず、他の形状を有しても良い。
【0068】
複数の抑えローラ72は、二つの側壁42の凹面42cに取り付けられる。言い換えると、抑えローラ72が取り付けられる側壁42の表面(外面42b)は凹んでいる。例えば、軸72aが、第2の装着孔66にカシメにて取り付けられる。これにより、抑えローラ72は、車輪72bがX方向に延びる軸72aまわりに回転可能に、凹面42cに取り付けられる。なお、軸72aは他の手段(例えば、圧入)にて第2の装着孔66に取り付けられても良い。また、抑えローラ72は、二つの側壁42のうち少なくとも一方に取り付けられれば良い。
【0069】
抑えローラ72は、第2の装着孔66A,66B,66Cのいずれにも取り付け可能である。抑えローラ72は、第2の装着孔66A、第2の装着孔66B、又は第2の装着孔66Cに取り付けられる。抑えローラ72が第2の装着孔66A,66B,66Cのいずれに取り付けられるかにより、Z方向における抑えローラ72の位置が調整される。
【0070】
抑えローラ72は、ロアレール21の内部空間36に位置する。抑えローラ72は、-Z方向における内側壁34の端部である縁34aに接触する。これにより、抑えローラ72は、スライダ22が底壁31の内面31aから遠ざかることを制限する。抑えローラ72の車輪72bは、縁34a上でY方向に転動可能である。なお、抑えローラ72の代わりに、滑りやすい部材が凹面42cに取り付けられ、縁34aに接触しても良い。
【0071】
走行ローラ71が底壁31の内面31aに接触し、抑えローラ72が内側壁34の縁34aに接触する。このため、走行ローラ71及び抑えローラ72は、スライダ22がロアレール21に対してZ方向に移動することを制限し、スライダ22のガタツキを抑制する。
【0072】
X方向において、走行ローラ71及び抑えローラ72は、返し壁43の起立壁46よりも、アッパレール25の内側に位置する。言い換えると、X方向において、走行ローラ71及び抑えローラ72は、二つの返し壁43の起立壁46の間に位置する。
【0073】
Z方向において、走行ローラ71の軸71aの中心軸Ax1と、抑えローラ72の軸72aの中心軸Ax2とは、返し壁43よりも下方に位置する。言い換えると、Z方向において、走行ローラ71の軸71aの中心軸Ax1と、抑えローラ72の軸72aの中心軸Ax2とは、返し壁43と、ロアレール21の底壁31との間に位置する。
【0074】
ブッシュ73は、例えば、合成樹脂によって作られる。なお、ブッシュ73は、金属のような他の材料によって作られても良い。複数のブッシュ73はそれぞれ、嵌合部73aと、複数のリブ73bとを有する。
【0075】
複数のブッシュ73の嵌合部73aは、二つの返し壁43の起立壁46に取り付けられる。例えば、嵌合部73aは、+Z方向における起立壁46の先端に設けられた凹部に嵌め込まれる。このため、ブッシュ73は、走行ローラ71及び抑えローラ72よりも上方に位置する。なお、ブッシュ73は、二つの返し壁43のうち少なくとも一方に取り付けられれば良い。
【0076】
複数のリブ73bは、嵌合部73aから、外側壁32の内面32aに向かって突出する。リブ73bは、外側壁32の内面32aに接触しても良い。複数のリブ73bは、Y方向に延びる。このため、リブ73bは、外側壁32の内面32aでY方向に滑りやすくなっている。
【0077】
複数のブッシュ73は、二つの返し壁43に取り付けられることで、スライダ22がロアレール21に対してX方向に相対的に移動することを制限する。例えば、スライダ22がロアレール21に対してX方向に相対的に移動すると、ブッシュ73のリブ73bが、外側壁32の内面32aに接触する。これにより、ブッシュ73は、スライダ22がロアレール21に対してさらに移動することを抑制する。
【0078】
外側壁32は、ブッシュ73を介して、返し壁43にX方向の力を作用させることがある。この場合、返し壁43が弾性変形することにより、返し壁43を介して側壁42に作用する力が低減される。このため、外側壁32から返し壁43に力が作用しても、側壁42が変形することが抑制され、走行ローラ71及び抑えローラ72が傾くことが抑制される。側壁42に切欠き64が設けられることで、返し壁43を介して側壁42に作用する力が更に低減され得る。
【0079】
図6は、実施形態のスライダ22を分解して示す斜視図である。
図6に示すように、アッパレール25は、第1の部分25aと、二つの第2の部分25bと、二つの第3の部分25cとを有する。
【0080】
第1の部分25aは、アッパレール25の一部であり、上壁41と、二つの側壁42の一部と、二つの返し壁43の一部と、を有する。二つの第2の部分25bはそれぞれ、アッパレール25の一部であり、一方の側壁42の一部と、一方の返し壁43の一部と、を有する。二つの第3の部分25cはそれぞれ、アッパレール25の一部であり、他方の側壁42の一部と、他方の返し壁43の一部と、を有する。
【0081】
一方の第2の部分25bは、Y方向における第1の部分25aの一方の端部からY方向に突出する。他方の第2の部分25bは、Y方向における第1の部分25aの他方の端部からY方向に突出する。
【0082】
一方の第3の部分25cは、Y方向における第1の部分25aの一方の端部からY方向に突出する。他方の第3の部分25cは、Y方向における第1の部分25aの他方の端部からY方向に突出する。
【0083】
第3の部分25cは、第2の部分25bからX方向に離間している。スライダ22Aにおいて、一方の第2の部分25b及び一方の第3の部分25cは、第1の部分25aからスライダ22Bに向かって突出する。スライダ22Bにおいて、一方の第2の部分25b及び一方の第3の部分25cは、第1の部分25aからスライダ22Aに向かって突出する。
【0084】
ガイド部材26は、例えば合成樹脂によって作られた、アッパレール25と別の部材である。なお、ガイド部材26は、他の材料によって作られても良い。ガイド部材26は、取付壁80と、第1のガイド壁81と、二つの第2のガイド壁82と、二つの第1の押部83と、二つの第2の押部84とを有する。第1のガイド壁81は、第2の当接部とも称され得る。第2のガイド壁82は、第1の当接部とも称され得る。
【0085】
取付壁80は、X‐Y平面上に広がるとともにY方向に延びる略矩形の板状に形成される。取付壁80は、アッパレール25の上壁41の外面41b上に配置される。取付壁80は、上壁41に、例えばボルト85によって取り付けられる。別の表現によれば、取付壁80は、アッパレール25の第1の部分25aに取り付けられる。なお、ガイド部材26は、他の位置でアッパレール25に取り付けられても良い。
【0086】
第1のガイド壁81は、アッパレール25から遠ざかるように取付壁80から突出する。例えば、第1のガイド壁81は、X方向における取付壁80の幅方向外側の端80aから、幅方向外側に突出する。なお、第1のガイド壁81は、取付壁80から、+Z方向のような他の方向に突出しても良い。
【0087】
第1のガイド壁81は、第1の支持縁81aと、二つの第2の支持縁81bとを有する。第1の支持縁81a及び第2の支持縁81bは、第1のガイド壁81の幅方向外側の縁である。第1の支持縁81aは、Y方向に直線状に延びる。二つの第2の支持縁81bは、Y方向における第1の支持縁81aの両端と、二つの第2のガイド壁82との間で延びている。X方向における第2の支持縁81bと取付壁80との間の距離は、第1の支持縁81aから遠ざかるに従って短くなる。
【0088】
二つの第2のガイド壁82は、Y方向における取付壁80の両端から突出する。第2のガイド壁82の少なくとも一部は、X方向において、アッパレール25の二つの側壁42の間に位置する。
【0089】
二つの第2のガイド壁82はそれぞれ、支持面82aを有する。Z方向における支持面82aとロアレール21の底壁31との間の距離は、取付壁80から遠ざかるに従って短くなる。言い換えると、支持面82aは、取付壁80から、斜め下方に延びている。
【0090】
第1の押部83及び第2の押部84は、例えば、Y方向における第2のガイド壁82の端から、Y方向に延びる。第1の押部83及び第2の押部84は、互いに離間するとともに、略平行に延びている。第1の押部83と第2の押部84との間に、駆動装置50のスクリューロッド51が位置する。
【0091】
図7は、実施形態のスライダ22を示す正面図である。
図7に示すように、第1の押部83は、アッパレール25の第2の部分25bと第3の部分25cとの間に位置する。第1の押部83は、例えば、弾性力により、第2の部分25bを第3の部分25cから遠ざかる方向に押す。
【0092】
第2の押部84は、アッパレール25の第2の部分25bと第3の部分25cとの間に位置する。第2の押部84は、例えば、弾性力により、第3の部分25cを第2の部分25bから遠ざかる方向に押す。
【0093】
例えば、第1の押部83及び第2の押部84は、アッパレール25の第2の部分25bと第3の部分25cとの間の空間に圧入される。これにより、第1の押部83及び第2の押部84は、第2の部分25bと第3の部分25cとを、互いに遠ざかるように押す。
【0094】
例えば、第1の押部83及び第2の押部84が第2の部分25b及び第3の部分25cを押す力は、第2の部分25b及び第3の部分25cに弾性変形を生じさせる力よりも低い。しかし、第1の押部83及び第2の押部84は、第2の部分25b及び第3の部分25cを内側から支持し、第2の部分25b及び第3の部分25cが互いに近付くように変形することを抑制する。
【0095】
図8は、実施形態のスライドレール装置11の一部を示す斜視図である。
図9は、実施形態のスライドレール装置11の一部を
図8と異なる方向から示す斜視図である。
図8及び
図9に示すように、スライドレール装置11は、二つの取付具91と、複数のカバー92とをさらに有する。
図8及び
図9は、一つの取付具91を示す。
【0096】
取付具91は、対応するロアレール21の底壁31の外面31bに取り付けられる。取付具91は、複数のカバー92を、ロアレール21に取り付ける。なお、カバー92は、フロア1aに取り付けられても良い。複数のカバー92は、ロアレール21の開口37を覆い塞ぐことができる。
【0097】
図10は、実施形態の取付具91及び複数のカバー92を示す斜視図である。
図10に示すように、取付具91はそれぞれ、支持軸95と、複数の支持部材96とを有する。
図10は、一つの支持部材96を示す。支持部材96は、ブラケットとも称され得る。支持軸95と支持部材96とは、例えば、金属によって作られる。なお、支持軸95と支持部材96とは、他の材料によって作られても良い。
【0098】
支持軸95は、例えば、円柱形に形成され、Y方向に延びる。支持部材96は、ロアレール21に取り付けられるとともに、支持軸95を支持する。支持部材96は、例えば、第1の延部96aと、第2の延部96bと、筒部96cとを有する。
【0099】
図2に示すように、第1の延部96aは、例えば溶接により、底壁31の外面31bに取り付けられる。第1の延部96aは、ロアレール21の底壁31から幅方向外側に延びている。
【0100】
第2の延部96bは、第1の延部96aの端部から、略+Z方向に延びている。第2の延部96bは、フロア1aの窪み1bの幅方向外側の側面1cと、ロアレール21の幅方向外側の外側壁32との間に位置する。第2の延部96bは、側面1cと外側壁32とから離間している。
【0101】
窪み1bの側面1cは、幅方向内側に向く。幅方向外側の側面1cは、間隔を介して窪み1bの幅方向内側の側面1dに向く。幅方向内側の側面1dは、幅方向外側に向く。側面1c,1dは、略平行にY方向に延びている。
【0102】
筒部96cは、+Z方向における第2の延部96bの端に設けられ、略円筒状に形成される。筒部96cの内側に、支持軸95が配置される。これにより、支持部材96は、支持軸95を支持する。
【0103】
支持軸95は、ロアレール21から離間している。Z方向において、支持軸95の中心軸Ax3は、ロアレール21の上側壁33よりも上方に位置するとともに、フロア1aよりも下方に位置する。なお、中心軸Ax3の位置は、この例に限られない。
【0104】
上述のように、支持部材96の第2の延部96bは、フロア1aの窪み1bの幅方向外側の側面1cと、ロアレール21の幅方向外側の外側壁32との間に位置する。しかし、支持部材96は、フロア1aの窪み1bの幅方向内側の側面1dと、ロアレール21の幅方向内側の外側壁32との間には設けられない。このため、ロアレール21は、窪み1bにおいて、幅方向内側に偏って配置される。すなわち、ロアレール21と側面1cとの間の距離は、ロアレール21と側面1dとの間の距離よりも長い。これにより、窪み1bの内部にロアレール21及び取付具91を配置するための設計が容易となる。
【0105】
カバー92は、例えば、ナイロンのような合成樹脂によって作られる。なお、カバー92は、他の材料によって作られても良い。
図10に示すように、複数のカバー92はそれぞれ、取付部101と、延壁102と、突出部103とを有する。
【0106】
取付部101は、Y方向に延びる略半円筒状に形成される。別の表現によれば、取付部101は、Y方向に延びる略円柱状に形成され、挿通孔101aと、挿通溝101bとが設けられる。
【0107】
挿通孔101aは、取付部101をY方向に貫通する略円形の孔である。挿通孔101aに支持軸95が通されることで、取付部101は、支持軸95(中心軸Ax3)まわりに回動可能に当該支持軸95に取り付けられる。これにより、取付部101は、ロアレール21の外部において、取付具91を介してロアレール21に間接的に取り付けられる。なお、例えば支持軸95がロアレール21と一体に形成されることで、取付部101がロアレール21に直接的に取り付けられても良い。
【0108】
取付部101、延壁102、及び突出部103は、一体に形成される。このため、取付部101が支持軸95まわりに回動することで、延壁102及び突出部103は、取付部101と一体に支持軸95まわりに回動する。
【0109】
挿通溝101bは、挿通孔101aと取付部101の外部とを、挿通孔101aの中心軸(中心軸Ax3)と直交する方向に連通する。挿通溝101bは、Y方向における取付部101の両端の間で延びる。挿通孔101aの中心軸Ax3まわりにおいて、挿通溝101bの一方の縁と他方の縁との間の距離は、支持軸95の直径よりも短い。
【0110】
取付部101は、支持軸95にスナップフィットによって取り外し可能に取り付けられる。例えば、挿通溝101bが広がるように取付部101が弾性変形することで、取付部101は、支持軸95の中心軸Ax3と直交する方向に、支持軸95に着脱可能となる。これにより、取付部101は、複数のカバー92のそれぞれの位置から取り外し可能なように、ロアレール21に間接的に取り付けられる。すなわち、他の全てのカバー93が支持軸95に取り付けられた状態で、複数のカバー93のうち一つだけを支持軸95から取り外すことが可能となっている。なお、取付部101は、スナップフィットに限らず、ネジ留め、ピン留め、又は磁石のような種々の手段によって、複数のカバー92のそれぞれの位置から取り外し可能なように、ロアレール21に取り付けられても良い。
【0111】
支持軸95に取り付けられた複数のカバー92は、Y方向に並べられる。すなわち、複数のカバー92は、ロアレール21、開口37、及び支持軸95が延びる方向であり且つスライダ22が移動可能な方向であるY方向に並べられる。
【0112】
複数のカバー92のうち少なくとも一つの取付部101に、切欠き101cが設けられる。支持部材96の筒部96cが、切欠き101cに嵌め込まれる。これにより、支持部材96の筒部96cが配置された位置にも、カバー92を配置することが可能となる。
【0113】
延壁102は、取付部101から、Y方向と交差する方向に延びている。本実施形態では、延壁102は、Y方向における取付部101の略全域から延び、略矩形の板状に形成される。なお、延壁102は、この例に限られない。
【0114】
図2に示すように、延壁102は、第1の面102aと、第2の面102bと、第1の曲縁102cと、第2の曲縁102dとを有する。第1の面102aは、Y方向と直交する断面において、略円柱状の取付部101の外周面に連続し、当該外周面の接線方向に延びる。なお、第1の面102aは、この例に限られない。第2の面102bは、第1の面102aの反対側に位置する。
【0115】
第1の曲縁102cは、例えば、第1の面102aの+X方向における縁及びY方向における縁に接続される。第2の曲縁102dは、例えば、第2の面102bの+X方向における縁及びY方向における縁に接続される。第1の曲縁102c及び第2の曲縁102dは、曲面状に形成される。第1の曲縁102cと第2の曲縁102dとは、直接的に、又は略平面状の端面を介して間接的に、互いに接続される。第2の曲縁102dの曲率半径は、第1の曲縁102cの曲率半径よりも大きい。
【0116】
図10に示すように、延壁102の第2の面102bに、複数の窪み102eが形成される。本実施形態において、複数の窪み102eはそれぞれ、略六角形状の有底の穴である。第2の面102bに複数の窪み102eが形成されることで、複数の窪み102eの間に、略六角形の格子状のリブ102fが形成される。なお、窪み102e及びリブ102fは、他の形状であっても良い。
【0117】
窪み102e及びリブ102fは、いわゆるハニカム構造を形成する。窪み102e及びリブ102fが設けられることで、例えばカバー92を射出成型することによるヒケ(Sink Marks)が生じることが抑制される。さらに、カバー92が軽量化される。
【0118】
図11は、実施形態のロアレール21及び複数のカバー92を示す平面図である。
図11に示すように、突出部103は、Y方向における取付部101の少なくとも一方の端から、複数のカバー92のうち隣接する他の一つに向かって突出する。なお、突出部103は、カバー92の他の部分から突出しても良い。
【0119】
本実施形態では、突出部103は、延壁102を越えて取付部101を延長させることで形成される。別の表現によれば、Y方向において、突出部103を含む取付部101の長さは、延壁102の長さよりも長く設定される。なお、突出部103は、この例に限られず、取付部101と異なる形状を有しても良い。
【0120】
本実施形態では、突出部103が取付部101の一方の端から突出する場合、全ての突出部103が略同一方向に突出する。例えば、全ての突出部103が-Y方向に突出する。なお、突出部103はこの例に限られない。
【0121】
突出部103は、複数のカバー92のうち隣接する他の一つに当接し、複数のカバー92のうち隣り合う二つの延壁102が互いに近付くことを制限する。これにより、複数のカバー92のうち隣り合う二つにおいて、一方の延壁102と、他方の延壁102とは、間隔Gを介して互いに離間する。
【0122】
二つの延壁102の間の間隔Gは、例えば、突出部103のY方向における突出量と略同一であり、Y方向における延壁102の長さ(幅)よりも短い。間隔Gの幅は、例えば、人間の指、ペン、ライター、及びハイヒールが通過することを防ぐことが可能なように設定される。なお、間隔Gは、この例に限られない。
【0123】
以上の複数のカバー92のうち、少なくとも二つが互いに同一の形状を有する。例えば、切欠き101cが設けられた複数のカバー92は、互いに同一の形状を有する。また、切欠き101cが設けられていない複数のカバー92は、互いに同一の形状を有する。
【0124】
図8及び
図9に示すように、複数のカバー92の延壁102は個別に、閉塞位置Pcと、開放位置Poとに移動可能である。本実施形態では、カバー92は、延壁102が閉塞位置Pcと開放位置Poとに、中心軸Ax3まわりに回動することができる。別の表現によれば、延壁102は、取付部101の中心軸Ax3まわりの回動により、閉塞位置Pcと開放位置Poとに移動可能である。
【0125】
図2は、閉塞位置Pcに位置するカバー92の延壁102を示す。
図2に示すように、閉塞位置Pcにおいて、延壁102は、ロアレール21の開口37を少なくとも部分的に覆い、例えばロアレール21の内部に位置するスクリューロッド51を覆い隠す。以下、閉塞位置Pcの延壁102について詳しく説明する。
【0126】
閉塞位置Pcの延壁102は、取付部101から幅方向内側に延びている。このため、閉塞位置Pcにおいて、延壁102の第1の面102aは、フロア1aと略同一平面を形成する。これにより、フロア1aに凹凸が生じることが抑制される。なお、延壁102は、フロア1aに対して若干傾いても良い。
【0127】
閉塞位置Pcにおいて、取付部101と窪み1bの側面1cとは、隙間を介してX方向に並んでいる。また、閉塞位置Pcにおいて、延壁102と窪み1bの側面1dとは、隙間を介してX方向に並んでいる。カバー92と、窪み1bの二つの側面1c,1dの間の距離は、例えば、人間の指、ペン、ライター、及びハイヒールが通過することを防ぐことが可能なように設定される。
【0128】
本実施形態では、X方向において、延壁102の長さは、ロアレール21の長さ(幅)よりも長い。延壁102は、X方向において、幅方向外側の上側壁33及び開口37を越えて、ロアレール21の端である幅方向内側の上側壁33の端まで延びる。言い換えると、延壁102は、X方向に開口37を横断する。このため、閉塞位置Pcの延壁102は、X方向における二つの上側壁33の全域と、X方向における開口37の全域と、を覆い塞ぐ。なお、Y方向においては、一つの延壁102は、二つの上側壁33の一部と、開口37の一部とを覆う。
【0129】
閉塞位置Pcの延壁102は、X方向における開口37の全域を覆えば、幅方向外側の上側壁33を覆い、幅方向内側の上側壁33を露出させても良い。この場合、延壁102は、X方向において、幅方向外側の上側壁33を越えて、開口37と幅方向内側の上側壁33との境界まで延びる。なお、X方向における延壁102の先端と、露出された上側壁33との間に、隙間が形成されても良い。
【0130】
ロアレール21の二つの上側壁33の外面33bのそれぞれに、緩衝材105が取り付けられる。緩衝材105は、例えば、不織布のシートと、当該不織布と外面33bとの間に介在する合成ゴムのシートと、を有する。なお、緩衝材105は、この例に限られず、例えば発泡材料のような他の材料によって作られても良い。また、緩衝材105は省略されても良い。
【0131】
閉塞位置Pcの延壁102は、二つの上側壁33を覆うとともに、緩衝材105を介して当該二つの上側壁33に支持される。これにより、延壁102は、第1の面102aがフロア1aと略同一平面を形成するように保たれる。なお、閉塞位置Pcの延壁102は、二つの上側壁33を覆うとともに、当該二つの上側壁33のうち一方に支持されても良い。
【0132】
上側壁33及び緩衝材105は、延壁102を、取付部101から遠ざかるに従って第1の面102aが上側壁33に近付くように支持しても良い。これにより、幅方向内側の上側壁33が、より確実に延壁102を支持することができる。幅方向内側の上側壁33は、二つの上側壁33のうち、取付部101から遠い方である。従って、延壁102の先端がフロア1aから浮き上がることが抑制される。
【0133】
図11に示すように、閉塞位置Pcの複数のカバー92のそれぞれにおいて、Y方向の長さはX方向の長さよりも短い。なお、カバー92の寸法はこれに限らず、Y方向の長さは、X方向の長さと同じかより長くても良い。
【0134】
図12は、実施形態の延壁102が開放位置Poに位置するスライドレール装置11の一部を示す断面図である。
図12に示すように、開放位置Poにおいて、延壁102は、ロアレール21の開口37から離間している。
【0135】
開放位置Poの延壁102は、取付部101から遠ざかるに従って上側壁33及び開口37から遠ざかるように延びている。言い換えると、延壁102は、取付部101から斜め上方に延びている。このため、延壁102は、開口37を覆わずに露出させる。
【0136】
本実施形態では、例えば、Y方向においてスライダ22が位置する範囲内にあるカバー92の延壁102は、開放位置Poに位置する。ガイド部材26の第1のガイド壁81及び第2のガイド壁82は、Y方向においてスライダ22が位置する範囲内にある延壁102を、開放位置Poに支持する。言い換えると、第1のガイド壁81及び第2のガイド壁82は、スライダ22とX方向で対向する(隣接する、並ぶ)延壁102を、開放位置Poに支持する。複数のカバー92を一体として表現すれば、第1のガイド壁81及び第2のガイド壁82は、Y方向における延壁102の一部が配置された位置において開放位置Poで当該延壁102の一部を支持する。これにより、第1のガイド壁81及び第2のガイド壁82は、延壁102が自重により開放位置Poから閉塞位置Pcへ戻ることを抑制する。
【0137】
開放位置Poにおいて、延壁102は、開口37から離間するとともに、ガイド部材26に支持される。また、開放位置Poにおいて、延壁102は、シート12や駆動装置50のような、ガイド部材26と異なる部材に対し、干渉することなく離間している。言い換えると、開放位置Poは、延壁102がガイド部材26と異なる部材に干渉しない位置に設定される。なお、開放位置Poは、この例に限られない。
【0138】
Y方向において延壁102が開放位置Poに位置する範囲では、開口37が露出されるため、アッパレール25が少なくとも部分的に開口37に位置することができる。別の表現によれば、延壁102は、開放位置Poに位置することで、開口37に位置するアッパレール25を避けている。
【0139】
図8及び
図9に示すように、スライダ22がY方向に移動することにより、ガイド部材26の第2のガイド壁82が、複数のカバー92のうち一部(幾つか)の延壁102を閉塞位置Pcから開放位置Poに移動させる。以下、一つのカバー92に注目して、延壁102の閉塞位置Pcから開放位置Poへの移動について説明する。
【0140】
まず、カバー92に近付くようにスライダ22がY方向に移動することで、当該カバー92の延壁102に、第2のガイド壁82の支持面82aが接触する。上述のように、支持面82aは、取付壁80から斜め下方へ延びている。このため、スライダ22がY方向へさらに移動すると、延壁102は支持面82aによって上方へ押される。
【0141】
第2のガイド壁82は、延壁102の第2の曲縁102dに接触する。第2の曲縁102dは、曲率半径が大きい曲面状に形成される。このため、第2のガイド壁82及び延壁102が、互いの動きを妨げることが抑制される。
【0142】
支持面82aにより延壁102が押されることで、カバー92に、支持軸95(中心軸Ax3)まわりの回転力が生じる。これにより、カバー92が回動し、延壁102が閉塞位置Pcから開放位置Poへ向かって移動する。
【0143】
延壁102は、支持面82aに沿って第2のガイド壁82上を摺動し、第1のガイド壁81に到達する。少なくとも延壁102が第1のガイド壁81に接触した時点で、延壁102は、開放位置Poに到達し、開口37から離間している。
【0144】
スライダ22がY方向へさらに移動すると、延壁102は、第2の支持縁81b及び第1の支持縁81aに沿って第1のガイド壁81上を摺動する。上側壁33に対する延壁102の傾斜角は、延壁102が第2のガイド壁82に支持されるとき、延壁102が第2の支持縁81bに支持されるとき、及び延壁102が第1の支持縁81aに支持されるとき、に順に増大する。
【0145】
以上のように、第2のガイド壁82は、スライダ22がカバー92の延壁102に近付くように移動することで、当該延壁102を閉塞位置Pcから開放位置Poへ押し上げる。第1のガイド壁81は、延壁102が開放位置Poに保たれるように、当該延壁102を支持する。
【0146】
一方、
図8及び
図9に示すように、スライダ22がY方向に移動することにより、複数のカバー92のうち他の一部(幾つか)が開放位置Poから閉塞位置Pcに移動させられる。以下、一つのカバー92に注目して、延壁102の開放位置Poから閉塞位置Pcへの移動について説明する。
【0147】
まず、延壁102が開放位置Poに位置するカバー92から遠ざかるようにスライダ22がY方向に移動する。これにより、当該カバー92の延壁102は、第1の支持縁81aから、第2の支持縁81bを通り、第2のガイド壁82の支持面82aに到達する。カバー92には、自重により、支持軸95(中心軸Ax3)まわりの回転力が生じている。これにより、延壁102は、第1の支持縁81a、第2の支持縁81b、及び支持面82aに順に支持されながら、開放位置Poから閉塞位置Pcに近付く。
【0148】
延壁102が閉塞位置Pcに到達し、ロアレール21の上側壁33に支持されると、スライダ22はカバー92から離間する。このように、スライダ22がカバー92の延壁102から遠ざかるように移動することで、延壁102が開放位置Poから閉塞位置Pcへ移動する。
【0149】
延壁102は、閉塞位置Pcに到達するとき、緩衝材105に当接する。緩衝材105の不織布が延壁102に当接するため、緩衝材105は当接時の騒音を低減する。カバー92がナイロンのような合成樹脂によって作られることで、当接時の騒音が更に低減される。
【0150】
また、緩衝材105の合成ゴムは、当該緩衝材105の不織布よりも硬い。これにより、閉塞位置Pcのカバー92が下方に押されたとしても、カバー92が下方に移動することが抑制される。
【0151】
緩衝材105は、延壁102の第2の面102bに設けられても良い。また、緩衝材105は、例えば二色成型により、延壁102と一体に形成され、延壁102の第2の面102bを形成しても良い。
【0152】
図12に示すように、スライダ22は、シールド110をさらに有する。シールド110は、制限部材とも称され得る。シールド110は、例えば、アッパレール25及びガイド部材26を幅方向外側から覆う。シールド110は、制限壁111と、押壁112とを有する。押壁112は、第3の当接部とも称され得る。
【0153】
制限壁111は、カバー92の延壁102を、少なくとも部分的に覆う。開放位置Poの延壁102の少なくとも一部はZ方向において、ガイド部材26と、制限壁111との間に位置する。制限壁111は、ガイド部材26に支持される延壁102から離間している。
【0154】
制限壁111は、Y方向においてスライダ22が位置する範囲内にあるカバー92の延壁102が、開放位置Poよりもさらに閉塞位置Pcから遠ざかることを制限する。複数のカバー92を一体として表現すれば、制限壁111は、Y方向における延壁102の一部が配置された位置で開放位置Poの当該延壁102の一部が開放位置Poよりもさらに閉塞位置Pcから遠ざかることを制限する。
【0155】
例えば、慣性や振動により、延壁102が開放位置Poよりもさらに閉塞位置Pcから遠ざかることがある。この場合、制限壁111は、延壁102に当接することで、延壁102がさらに閉塞位置Pcから遠ざかることを制限する。
【0156】
押壁112は、Y方向における制限壁111の端に接続される。押壁112は、制限壁111から遠ざかるに従ってロアレール21の上側壁33に近付くように延びている。言い換えると、押壁112は、制限壁111から斜め下方に延びている。なお、押壁112は、この例に限られない。
【0157】
延壁102は、例えば摩擦により、ガイド部材26から離間し支持されない状態で、開放位置Poに留まることがある。この場合、押壁112は、スライダ22がカバー92の延壁102から遠ざかるように移動することで、当該延壁102を開放位置Poから閉塞位置Pcへ押す。複数のカバー92を一体として表現すれば、押壁112は、スライダ22が延壁102の一部から遠ざかるように移動することで当該延壁102の一部を開放位置Poから閉塞位置Pcへ押す。これにより、延壁102が開放位置Poから閉塞位置Pcへ移動することができる。
【0158】
以上のように、カバー92は、延壁102が閉塞位置Pcと開放位置Poとの間で移動するように開閉する。X方向において、カバー92の回転の中心となる支持軸95と、駆動装置50のモータ52との間に、ロアレール21が位置する。この配置により、延壁102がモータ52や変換機構53に干渉することが抑制される。
【0159】
以上説明された実施形態に係るスライドレール装置11において、複数のカバー92が、Y方向に並べられている。それぞれのカバー92の延壁102が開口37を少なくとも部分的に覆う。これにより、Y方向におけるロアレール21の長さに応じたカバー92の個数を設定することで、Y方向におけるロアレール21の長さが異なる複数種類の車両1で、カバー92を共通化することができる。さらに、Y方向に長い一つのカバーが開口37を覆う場合に比べ、Y方向において開放位置Poに位置する延壁102の全体的な長さを短くすることができる。従って、開放位置Poに位置する延壁102が、シート12や変換機構53のような他の部材に干渉することが抑制される。
【0160】
複数のカバー92はそれぞれ、隣接する他の一つのカバー92に向かって突出する、突出部103を有する。複数のカバー92のうち隣接する二つにおいて、一方の延壁102と、他方の延壁102とは、Y方向における延壁102の長さよりも短い間隔Gを介して、互いに離間しており、間隔Gは突出部103のY方向における突出量と略同一である。これにより、一つのカバー92が、他のカバー92に乗り上げることが抑制される。従って、開口37が望まれぬにもかかわらず外部に開放されることが抑制される。
【0161】
Y方向において、突出部103の長さは、延壁102の長さよりも短い。これにより、隣り合う二つの延壁102の間の間隔Gが比較的短くなる。従って、間隔Gからロアレール21の内部に異物が入り込むことが抑制される。
【0162】
複数のカバー92のそれぞれの取付部101は、他の複数のカバー92がロアレール21に取り付けられた状態でロアレール21から取り外し可能なように、ロアレール21に取り付けられる。これにより、例えばカバー92の交換時に、全てのカバー92をロアレール21から取り外す必要が無く、カバー92を容易にロアレール21から取り外すことが可能となる。
【0163】
開口37は、X方向に並べられた二つの上側壁33の間に位置する。閉塞位置Pcの複数のカバー92のそれぞれにおいて、Y方向の長さはX方向の長さよりも短い。すなわち、Y方向における個々のカバー92の長さが短くなり、開放位置Poに位置する延壁102が、シート12や他の部材に干渉することが更に抑制される。
【0164】
複数のカバー92のうち少なくとも二つが互いに同一の形状を有する。これにより、スライドレール装置11のコストが低減される。
【0165】
ロアレール21は、Y方向に延びるとともにX方向に互いに離間した二つの上側壁33を有する。二つの上側壁33の間にY方向に延びる開口37が設けられる。カバー92の延壁102は、閉塞位置Pcと開放位置Poとに移動可能である。閉塞位置Pcにおいて、カバー92の延壁102は、X方向における開口37の全域を覆う。開放位置Poにおいて、延壁102は、開口37から離間している。これにより、開口37からロアレール21の内部に異物が入り込むことが抑制される。さらに、一つのカバー92により開口37を覆うことができるため、スライドレール装置11の部品点数が低減され得る。
【0166】
閉塞位置Pcの延壁102は、二つの上側壁33を覆うとともに、当該二つの上側壁33によって支持される。これにより、X方向におけるロアレール21の全体をカバー92によって覆うことが可能となる。さらに、閉塞位置Pcの延壁102が垂れ下がることが抑制される。さらに、閉塞位置Pcの延壁102が踏まれて変形することが抑制される。
【0167】
取付具91は、Y方向に延びる支持軸95と、ロアレール21に取り付けられるとともに支持軸95を支持する支持部材96と、を有する。取付部101は、支持軸95まわりに回動可能に支持軸95に取り付けられることで取付具91を介してロアレール21に取り付けられる。延壁102は、閉塞位置Pcと開放位置Poとに回動可能である。これにより、カバー92を剛体で作ることができ、閉塞位置Pcの延壁102が踏まれて変形することが抑制される。
【0168】
取付部101は、支持軸95にスナップフィットによって取り外し可能に取り付けられる。これにより、カバー92が、支持軸95に対し、容易に着脱可能となる。
【0169】
スライダ22は、第1のガイド壁81と、第2のガイド壁82と、押壁112とを有する。第2のガイド壁82は、スライダ22が延壁102の一部に近付くように移動することで、当該延壁102の一部を閉塞位置Pcから開放位置Poへ押す。第1のガイド壁81は、Y方向における延壁102の一部が配置された位置で開放位置Poの延壁102の一部を支持する。押壁112は、スライダ22が延壁102の一部から遠ざかるように移動することで当該延壁102の一部を開放位置Poから閉塞位置Pcへ押す。これにより、スライダ22の移動に応じて延壁102を閉塞位置Pcと開放位置Poとに容易に移動させることができる。
【0170】
ガイド部材26は、取付壁80と第1のガイド壁81とを有する。取付壁80は、アッパレール25に取り付けられる。第1のガイド壁81は、アッパレール25から遠ざかるように取付壁80から突出するとともに、アッパレール25とX方向で対向する(隣接する、並ぶ)延壁102の一部を開放位置Poに支持する。すなわち、ガイド部材26の第1のガイド壁81の形状(例えば、長さ及び突出方向の角度)により、開放位置Poにおいて当該第1のガイド壁81に支持される延壁102の形状(例えば傾斜角)を調整することができる。これにより、アッパレール25に開放位置Poの延壁102を支持する部分を設ける必要が無く、アッパレール25の大型化や形状の複雑化を抑制可能となる。例えば、一般的に、大きいカバー92をアッパレール25で適切な姿勢に支持する場合、アッパレール25が大型化する。しかし、本実施形態では、アッパレール25の形状にかかわらず、ガイド部材26の形状を適切に設定することで、カバー92をガイド部材26で適切な姿勢に支持することができる。
【0171】
ガイド部材26は、アッパレール25が延壁102の一部に近付くように移動することで、当該延壁102の一部を閉塞位置Pcから開放位置Poへ押す、第2のガイド壁82を有する。これにより、スライダ22の移動に応じて延壁102を閉塞位置Pcから開放位置Poへ容易に移動させることができる。
【0172】
シールド110は、開放位置Poの延壁102の一部が開放位置Poよりもさらに閉塞位置Pcから遠ざかることを制限する。これにより、延壁102が望まれない大きい移動をすることが抑制され、延壁102がより確実に閉塞位置Pcへ戻ることができる。
【0173】
アッパレール25は、第1の部分25aと、第2の部分25bと、第3の部分25cとを有する。第1の部分25aに、取付壁80が取り付けられる。第2の部分25bは、Y方向における第1の部分25aの一方の端部からY方向に突出する。第3の部分25cは、Y方向における第1の部分25aの上記一方の端部からY方向に突出するとともに、第2の部分25bからX方向に離間している。ガイド部材26は、第1の押部83と第2の押部84とを有する。第1の押部83は、第2の部分25bと第3の部分25cとの間に位置するとともに第2の部分25bを第3の部分25cから遠ざかる方向に押す。第2の押部84は、第2の部分25bと第3の部分25cとの間に位置するとともに第3の部分25cを第2の部分25bから遠ざかる方向に押す。これにより、アッパレール25の第2の部分25bと第3の部分25cとが互いに近付くように変形することが抑制される。さらに、ガイド部材26が当該変形を抑制することで、当該機能を有する他の部材が不要となり、スライドレール装置11の部品点数の増加が抑制される。
【0174】
第2の部分25b及び第3の部分25cは、第1の部分25aから他のスライダ22に向かって突出する。これにより、二つのスライダ22が近づいた場合に、例えば二つのシート12が衝突することなく、第2の部分25b及び第3の部分25cが他のスライダ22に接触する。これにより、シート12同士が衝突することが抑制される。
【0175】
ロアレール21に、内部空間36と、内部空間36と外部とを連通する開口37と、が設けられる。ロアレール21は、二つの上側壁33の内側の端から内部空間36に向かう-Z方向に突出するとともに、間に開口37を形成する、二つの内側壁34を有する。二つの抑えローラ72は、スライダ22に取り付けられ、-Z方向における二つの内側壁34の端部に接触する。すなわち、抑えローラ72は、上側壁33に接触する場合に比べ、X方向においてより内側に配置されることができる。さらに、抑えローラ72は、上側壁33に接触する場合に比べ、Z方向においてより下側、具体的には底壁31の内面31a側に配置されることができる。また、抑えローラ72がスライダ22の返し壁43に取り付けられる場合に比べ、上側壁33をより-Z方向に移動させることができる。従って、ロアレール21を小型化することが可能になる。
【0176】
二つの内側壁34はそれぞれ、-Z方向における内側壁34の端に位置する縁34aを有する。二つの抑えローラ72はそれぞれ、当該縁34aに接触する。これにより、例えば、内側壁34を曲げて抑えローラ72と面接触する部分を形成する場合に比べ、ロアレール21の構造が複雑化することが抑制される。
【0177】
二つの抑えローラ72は、-Z方向における二つの内側壁34の端部でY方向に転動可能な二つの車輪72bを有する。これにより、スライダ22がY方向に滑らかに移動することができる。
【0178】
スライダ22に、第2の装着孔66A,66Bが設けられる。第2の装着孔66Aに、二つの抑えローラ72のうち一方を取り付け可能である。第2の装着孔66Bは、Y方向に第2の装着孔66Aから離間し、二つの抑えローラ72のうち上記一方を取り付け可能であり、第2の装着孔66Aよりも-Z方向における内側壁34の端部から-Z方向に離間している。二つの抑えローラ72のうち上記一方は、第2の装着孔66A又は第2の装着孔66Bに取り付けられる。これにより、ロアレール21及びスライダ22の寸法公差に応じて、抑えローラ72を-Z方向における内側壁34の端部に接触する位置に配置することが可能となる。
【0179】
ロアレール21は、内面31aと、内面31aと向かい合う内面33aと、内面33aを形成する二つの上側壁33と、を有する。スライダ22は、上壁41と、二つの側壁42と、二つの返し壁43とを有する。上壁41は、ロアレール21の外部に位置する。二つの側壁42は、X方向における上壁41の両端から開口37を通って延びるとともに互いに離間している。二つの返し壁43は、ロアレール21の内部において二つの側壁42から互いに遠ざかる方向に延びている。走行ローラ71が、二つの側壁42のうち少なくとも一方に取り付けられ、Y方向に転動可能に内面31aに支持される。すなわち、走行ローラ71は、返し壁43に取り付けられる場合よりも、X方向において内側に配置される。これにより、X方向においてロアレール21を小型化することが可能となる。さらに、走行ローラ71が、ロアレール21の底壁31と外側壁32との角部分から離間し、底壁31の略平坦な内面31aに接触することができる。また、走行ローラ71が返し壁43に取り付けられる場合に比べ、Z方向における走行ローラ71の位置を自由に設定することができる。
【0180】
側壁42はそれぞれ、二つの側壁42のうち他方に向く内面42aと、内面42aの反対側に位置する外面42bと、内面42a又は外面42bから窪む凹面42cと、を有する。走行ローラ71は、凹面42cに取り付けられる。凹面42cが外面42bから窪むことで、走行ローラ71は、X方向において更に内側に配置される。これにより、X方向においてロアレール21を小型化することが可能となる。また、凹面42cが内面42aから窪むことで、走行ローラ71は、二つの側壁42の間に位置する障害物を避けることができる。
【0181】
抑えローラ72は、二つの側壁42のうち少なくとも一方に取り付けられ、スライダ22が内面31aから遠ざかることを制限する。抑えローラ72は、返し壁43に取り付けられる場合よりも、X方向において内側に配置される。これにより、X方向においてロアレール21を小型化することが可能となる。さらに、抑えローラ72が返し壁43に取り付けられる場合に比べ、Z方向における抑えローラ72の位置を自由に設定することができる。
【0182】
ブッシュ73は、二つの返し壁43のうち少なくとも一方に取り付けられ、スライダ22がロアレール21に対してX方向に相対的に移動することを制限する。例えば、ブッシュ73は、ロアレール21のX方向に向く内面32aに接触することで、スライダ22がロアレール21に対してX方向に相対的に移動することを制限する。このため、ブッシュ73が取り付けられる返し壁43は、ロアレール21からX方向の力を受けることがある。返し壁43は、側壁42から延びるが、例えば、側壁42とは別に弾性変形することができる。このため、返し壁43は、弾性変形することで、ブッシュ73を介してロアレール21から受けた力が側壁42に作用することを抑制できる。これにより、側壁42の変形により走行ローラ71が移動してしまうことが抑制され、走行ローラ71が内面31aを滑らかに転動することができる。
【0183】
走行ローラ71は、間隔を介して二つの内側壁34のうち少なくとも一方と-Z方向に並ぶ。これにより、例えば走行ローラ71がX方向において内側壁34よりも外側に位置する場合に比べ、X方向においてロアレール21を小型化することが可能となる。
【0184】
以上の実施形態において、カバー92が剛体である合成樹脂により作られ、延壁102が取付部101の回動によって閉塞位置Pcと開放位置Poとに移動する。しかし、延壁102が弾性体により作られ、弾性変形により閉塞位置Pcと開放位置Poとに移動しても良い。また、この場合、スライドレール装置11は、複数のカバー92の代わりに、Y方向に長い一つのカバー92を有しても良い。
【0185】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態及び変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0186】
1…車両、11…スライドレール装置、21…ロアレール、22,22A,22B…スライダ、25…アッパレール、25a…第1の部分、25b…第2の部分、25c…第3の部分、26…ガイド部材、31a,33a…内面、33…上側壁、34…内側壁、34a…縁、36…内部空間、37…開口、41…上壁、42…側壁、43…返し壁、66,66A,66B,66C…第2の装着孔、71…走行ローラ、72…抑えローラ、72b…車輪、73…ブッシュ、80…取付壁、81…第1のガイド壁、82…第2のガイド壁、83…第1の押部、84…第2の押部、91…取付具、92…カバー、95…支持軸、96…支持部材、101…取付部、102…延壁、103…突出部、110…シールド、112…押壁、G…間隔、Pc…閉塞位置、Po…開放位置。