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  • 特許-熱電変換材料及び熱電変換素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】熱電変換材料及び熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/851 20230101AFI20231212BHJP
   H10N 10/856 20230101ALI20231212BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20231212BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231212BHJP
【FI】
H10N10/851
H10N10/856
H10K85/00
H10K85/60
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209278
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021082719
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 貫
(72)【発明者】
【氏名】倉内 啓輔
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-538321(JP,A)
【文献】国際公開第2014/133029(WO,A1)
【文献】特開2012-025716(JP,A)
【文献】特開2016-042508(JP,A)
【文献】国際公開第2015/050113(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069304(US,A1)
【文献】国際公開第2015/036075(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180590(US,A1)
【文献】国際公開第2012/014466(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02599780(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211433(US,A1)
【文献】特表2012-530158(JP,A)
【文献】特開2009-246355(JP,A)
【文献】特開2012-530158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/851
H10N 10/856
H10K 10/00
H10K 85/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物(A)と、炭素材料、金属材料及び導電性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の導電材料(B)と、を含有してなり、
前記化合物(A)の含有率が、前記導電材料(B)の全量に対して400質量%以下であり、
前記導電材料(B)が、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェンナノプレート及びグラフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、熱電変換材料。
【化1】
[一般式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ナトリウムスルホナト基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、又は、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。R1~R8は、隣接する基同士が結合して環を形成しても良い。ただし、R1~R8の内、少なくとも一つは、水素原子以外の基である。]
【請求項2】
前記導電材料(B)が、カーボンナノチューブを含む、請求項に記載の熱電変換材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱電変換材料を含んでなる熱電変換膜と、電極とを有し、前記熱電変換膜と、前記電極とが電気的に接続されている熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱電変換材料及び該材料を用いた熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換できる熱電変換材料は、熱電発電素子やペルチェ素子のような熱電変換素子に用いられている。熱電変換素子は、熱を電力に変換する素子であり、半導体や金属の組合せによって構成される。代表的な熱電変換素子としては、p型半導体単独、n型半導体単独、又はp型半導体とn型半導体との組合せ、に分類される。熱電変換素子では、半導体の両端に温度差が生じるように熱を加えると起電力が生じるゼーベック効果を利用する。より大きな電位差を得るために、熱電変換素子では、一般的に、材料としてp型半導体とn型半導体とを組合せて使用する。
【0003】
また、熱電変換素子は、多数の素子を板状、又は円筒状に組合せてなる熱電モジュールとして使用される。熱エネルギーを直接電力に変換することが出来、例えば、体温で作動する腕時計、地上用発電及び人工衛星用発電における電源として利用できる。熱電変換素子の性能は、熱電変換材料の性能、及びモジュールの耐久性等に依存する。
【0004】
非特許文献1に記載されているとおり、熱電変換材料の性能を表す指標として、無次元熱電性能指数(ZT)が用いられる。また、熱電変換材料の性能を表す指標として、パワーファクターPF(=S2・σ)を用いる場合もある。
上記無次元熱電性能指数「ZT」は、下式(1)により表される。
ZT=(S2・σ・T)/κ 式(1)
ここで、Sはゼーベック係数(V/K)、σは導電率(S・m)、Tは絶対温度(K)、及びκは熱伝導率(W/(m・K))である。熱伝導率κは下式(2)で表される。
κ=α・ρ・C 式(2)
ここで、αは熱拡散率(m2/s)、ρは密度(kg/m3)、及びCは比熱容量(J/(kg・K))である。
つまり、熱電変換の性能(以下、熱電特性とも称す)を向上させるには、ゼーベック係数又は導電率を向上させ、その一方で熱伝導率を低下させることが重要である。
【0005】
代表的な熱電変換材料として、例えば、常温から500Kまではビスマス・テルル系(Bi-Te系)、常温から800Kまでは鉛・テルル系(Pb-Te系)、及び常温から1000Kまではシリコン・ゲルマニウム系(Si-Ge系)などの無機材料が使用されている。
【0006】
しかし、これらの無機材料を含む熱電変換材料は、しばしば希少元素を含み高コストであるか、又は有害物質を含む場合がある。また、無機材料は加工性に乏しいため、製造工程が複雑となる。そのため、無機材料を含む熱電変換材料については、製造エネルギー及び製造コストが高くなり、汎用化が困難である。さらに、無機材料は剛直であるため、平面ではない形状にも設置可能な、フルキシブル性を有する熱電変換素子を形成することは困難である。
【0007】
これに対し、従来の無機材料に代えて、有機材料を用いた熱電変換素子に関する検討が進められている。有機材料は、優れた成形性を有し、かつ無機材料よりも優れた可撓性を有するため、それ自身が分解しない温度範囲での汎用性が高い。また、印刷技術等を容易に活用できるため、製造エネルギーや製造コストの面でも無機材料より有利である。
【0008】
例えば、特許文献1には、有機色素骨格を有する高分子分散剤とカーボンナノチューブ(CNT)とを含有する熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子が開示されている。また、特許文献2には、キャリア輸送特性を有する多環芳香族環とアルキル基を含む置換基とが結合した導電性化合物を含む熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子が開示されている。しかしながら、特許文献1の発明では、熱電変換素子として十分な性能が得られてはいなかった。また、特許文献2の発明では、導電率が10-8~10-7S/cmと低く、熱電変換素子として実用的な値を得ることはできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2015/050113号
【文献】国際公開第2015/129877号
【非特許文献】
【0010】
【文献】梶川武信著、「熱電変換技術ハンドブック(初版)」、エヌ・ティー・エス出版、19頁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、優れたゼーベック係数と導電性とを両立できる熱電変換材料及びそれを用いた熱電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、一般式(1)で表される化合物(A)と、炭素材料、金属材料及び導電性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の導電材料(B)とを含有してなる熱電変換材料に関する。
【0013】
【化1】
【0014】
[一般式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、ナトリウムスルホナト基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環基、又は、置換もしくは未置換のアミノ基を表す。R1~R8は、隣接する基同士が結合して環を形成しても良い。ただし、R1~R8の内、少なくとも一つは、水素原子以外の基である。]
【0015】
また、本発明は、上記化合物(A)の含有率が、上記導電材料(B)の全量に対して400質量%以下である、上記熱電変換材料に関する。
【0016】
また、本発明は、上記導電材料(B)が、カーボンナノチューブ、ケッチェンブラック、グラフェンナノプレート及びグラフェンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む上記熱電変換材料に関する。
【0017】
また、本発明は、上記導電材料(B)が、カーボンナノチューブを含む上記熱電変換材料に関する。
【0018】
また、本発明は、上記熱電変換材料を含んでなる熱電変換膜と、電極とを有し、上記熱電変換膜と、上記電極とが電気的に接続されている熱電変換素子に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、ゼーベック係数と導電性との両立を達成する熱電変換材料を提供することができる。また、当該材料を用いて、優れた熱電性能を発揮する熱電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態である熱電変換素子の一例の構造を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態である熱電変換素子の起電力の測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<熱電変換材料>
本発明の熱電変換材料は、化合物(A)と導電材料(B)とを含有することが特徴であり、高いゼーベック係数と導電性とを両立し、優れた熱電性能を発揮することができる。これは、化合物(A)から導電材料(B)へ効率的に正孔または電子(キャリア)が移動し、その正孔または電子(キャリア)が導電材料中を移動することで、高いゼーベック係数と導電率が得られるものと推察される。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0022】
<化合物(A)>
【0023】
<化合物(A)>
熱電変換のメカニズムは以下のように考えられる。熱励起をした化合物(A)内に、正孔又は電子(キャリア)が生じ、その正孔又は電子(キャリア)が導電材料(B)へと移動し、導電材料(B)内での電位差が生じ、電流が流れる。つまり、化合物(A)及び導電材料(B)間のキャリア移動が効率的になるほど、導電材料(B)内での電位差が大きくなり、ゼーベック係数が向上する。キャリア移動を効率的にする具体的な方法は明確にはわかっていないが、化合物(A)と導電材料(B)間の親和性からくる距離の近さ、化合物(A)と導電材料(B)間のエネルギー準位の関係、化合物(A)の励起状態の長さ(励起寿命)などが影響していると考えられる。
【0024】
上記条件を要因などにより、化合物(A)及び導電材料(B)間のキャリア移動が効率的になるような化合物(A)は、一般式(1)で表される。まず、一般式(1)の置換基R1~R8について説明する。
【0025】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
【0026】
置換もしくは未置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基といった炭素数1~30の未置換のアルキル基、
2-フェニルイソプロピル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、α-フェノキシベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基、α,α-メチルフェニルベンジル基、α,α-ビス(トリフルオロメチル)ベンジル基、トリフェニルメチル基、α-ベンジルオキシベンジル基等の炭素数1~30の置換アルキル基等が挙げられる。
【0027】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、オクチルオキシ基、tert-オクチルオキシ基といった炭素数1~20の未置換のアルコキシ基、
3,3,3-トリフルオロエトキシ基、ベンジルオキシ基といった炭素数1~20の置換アルコキシ基が挙げられる。
【0028】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、4-tert-ブチルフェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、9-アンスリルオキシ基といった炭素数6~20の未置換のアリールオキシ基、4-ニトロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、3-トリフルオロメチルフェノキシ基等の炭素数6~20の置換アリールオキシ基が挙げられる。
【0029】
置換もしくは未置換のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、tert-ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基といった炭素数1~20の未置換のアルキルチオ基、べンジルチオ基、トリフルオロメチルチオ基といった炭素数1~20の置換アルキルチオ基等が挙げられる。
【0030】
置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、2-メチルフェニルチオ基、4-tert-ブチルフェニルチオ基といった炭素数6~20の未置換のアリールチオ基、3-フルオロフェニルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基、3-トリフルオロメチルフェニルチオ基等の炭素数6~20の置換アリールチオ基が挙げられる。
【0031】
置換もしくは未置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,4-キシリル基、p-クメニル基、メシチル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アンスリル基、9-フェナントリル基、1-アセナフチル基、2-アズレニル基、1-ピレニル基、2-トリフェニレル基等の炭素数6~30の未置換のアリール基、p-シアノフェニル基、p-ジフェニルアミノフェニル基、p-スチリルフェニル基、4-[(2-トリル)エテニル]フェニル基、4-[(2,2-ジトリル)エテニル]フェニル基等の炭素数6~30の置換アリール基が挙げられる。
【0032】
置換もしくは未置換の複素環基としては、例えば、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、1-ピローリル基、2-ピローリル基、3-ピローリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピラジル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、2-イミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-キノリル基、3-キノリル基、4-キノリル基、5-キノリル基、6-キノリル基、7-キノリル基、8-キノリル基、1-イソキノリル基、2-キノキサリニル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、N-インドリル基、N-カルバゾリル基、N-アクリジニル基といった炭素数3~20の未置換の芳香族複素環基、2-(5-フェニル)フリル基、2-(5-フェニル)チエニル基、2-(3-シアノ)ピリジル基といった炭素数3~20の置換芳香族複素環基が挙げられる。
【0033】
置換もしくは未置換のアミノ基としては、例えば、アミノ基の他、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、N-ベンジルアミノ基、N,N-ジベンジルアミノ基、N-フェニルアミノ基、N-フェニル-N-メチルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基、N,N-ビス(m-トリル)アミノ基、N,N-ビス(p-トリル)アミノ基、N,N-ビス(p-ビフェニリル)アミノ基、ビス[4-(4-メチル)ビフェニリル]アミノ基、N-p-ビフェニリル-N-フェニルアミノ基、N-1-ナフチル-N-フェニルアミノ基、N-2-ナフチル-N-フェニルアミノ基、N-フェナントリル-N-フェニルアミノ基、N,N-ビス(m-フルオロフェニル)アミノ基、N,N-ビス(3-(9-フェニル)カルバゾール)アミノ基、N,N-ビス(p-シアノフェニル)アミノ基、ビス[4-(1,1’-ジメチルベンジル)フェニル]アミノ基等の炭素数1~30の置換アミノ基が挙げられる。
【0034】
一般式(1)のR1~R8は、隣接する基同士が結合して環を形成しても良い。
具体的な一般式(1)で表される化合物(A)の具体例を、表1~9に挙げる。表中において、「C37」とはプロピル基を表す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
【表9】
【0044】
化合物(A)は、1種類のみ用いても、2種類以上を同時に使用しても良い。
【0045】
化合物(A)の三重項励起状態の寿命としては、1μs以上が好ましく、より好ましくは100μs以上であり、より好ましくは1ms以上であり、更に好ましくは100ms以上である。
【0046】
一重項励起状態から三重項励起状態への項間移動の速度の指標である項間交差速度定数としては、106-1以上が好ましく、より好ましくは107-1以上であり、より好ましくは108-1以上であり、より好ましくは109-1以上であり、更に好ましくは1010-1以上1011-1以下である。
【0047】
一重項励起状態から三重項励起状態への項間移動の効率の指標である量子収率としては、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.7以上であり、特に好ましくは0.8以上であり、更に特に好ましくは0.9以上である。尚、量子収率の上限値は1である。
【0048】
また、上記メカニズムにおけるキャリア移動の効率は、化合物(A)と導電材料(B)との間の距離が近い方が好ましい。したがって、両者の親和性が優れている方が好ましい。例えば、導電材料(B)としてCNT等のπ平面があるものに対しては、化合物(A)としては、芳香環、複素環又は、酸性官能基を有する化合物が好ましい。
【0049】
また、導電材料(B)に対する表面吸着及び均一化を促進し、さらに分子割合を増加させるために、化合物(A)の分子量は、小さいほうが好ましい。分子量は、好ましくは2,000以下であり、より好ましくは1,000以下である。
【0050】
<導電材料(B)>
導電材料(B)は、導電性向上に寄与するものである。導電材料(B)の含有量を増やすことで導電性を向上させることができる。
導電材料(B)は、導電性を有する材料(炭素材料、金属材料、導電性高分子等)であれば、特に制限されず、例えば、炭素材料としては、黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)等が挙げられ、金属材料としては、金、銀、銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ゲルマニウム、ガリウム及び白金等の金属粉、並びに ZnSe、CdS、InP、GaN、SiC、SiGeこれらの合金、並びにこれらの複合粉が挙げられる。また、核体と、前記核体物質とは異なる物質で被覆した微粒子、具体的には、例えば、銅を核体とし、その表面を銀で被覆した銀コート銅粉等が挙げられる。また、例えば酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、及びGZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)等の金属酸化物の粉末、並びにこれらの金属酸化物で表面被覆した粉末等が挙げられ、導電性高分子としては、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸から成る複合物)、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン等が挙げられる。
使用する導電材料の種類は1種でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
導電性材料(B)の形状は、特に限定されず、不定形、凝集状、鱗片状、微結晶状、球状、フレーク状、ワイヤー状等を適宜用いることができる。
【0052】
ゼーベック係数と導電率との両立の観点で、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン(グラフェンナノプレートを含む)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはカーボンナノチューブであり、特に好ましくは単層カーボンナノチューブである。
【0053】
炭素材料としては、例えば、薄片状黒鉛として、日本黒鉛工業社製のCMX、UP-5、UP-10、UP-20、UP-35N、CSSP、CSPE、CSP、CP、CB-150、CB-100、ACP、ACP-1000、ACB-50、ACB-100、ACB-150、SP-10、SP-20、J-SP、SP-270、HOP、GR-60、LEP、F#1、F#2、F#3、中越黒鉛工業所社製のBF-3AK、FBF、BF-15AK、CBR、CPB-6S、CPB-3、96L、96L-3、K-3、SC-120、SC-60、HLP、CP-150、SB-1、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50、西村黒鉛社製の10099M、PB-99等が挙げられる。球状天然黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のCGC-20、CGC-50、CGB-20、CGB-50が挙げられる。土状黒鉛としては、日本黒鉛工業社製の青P、AP、AOP、P#1、中越黒鉛社製のAPR、K-5、AP-2000、AP-6、300F、150Fが挙げられる。人造黒鉛としては、日本黒鉛工業社製のPAG-60、PAG-80、PAG-120、PAG-5、HAG-10W、HAG-150、中越黒鉛社製のG-4AK、G-6S、G-3G-150、G-30、G-80、G-50、SMF、EMF、SFF、SFF-80B、SS-100、BSP-15AK、BSP-100AK、WF-15C、SECカーボン社製のSGP-100、SGP-50、SGP-25、SGP-15、SGP-5、SGP-1、SGO-100、SGO-50、SGO-25、SGO-15、SGO-5、SGO-1、SGX-100、SGX-50、SGX-25、SGX-15、SGX-5、SGX-1が挙げられる。
【0054】
市販の導電性炭素繊維やカーボンナノチューブとしては、昭和電工社製のVGCF等の気相法炭素繊維、名城ナノカーボン社製のEC1.5,EC1.5-P、ОCSiAl社製のTUBALL、ゼオンナノテクノロジー社製のZEONANO等の単層カーボンナノチューブ、CNano社製のFloTube9000、FloTube7000、FloTube2000、Nanocyl社製のNC7000、Knano社製の100T、200P等が挙げられる。
【0055】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製のトーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500、デグサ社製のプリンテックスL、コロンビヤン社製のRaven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA、PUERBLACK100、115、205、三菱化学社製の#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B、キャボット社製のMONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、TIMCAL社製のEnsaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP-Li等のファーネスブラック)、ライオン社製のEC-300J、EC-600JD等のケッチェンブラック、電気化学工業社製のデンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35等のアセチレンブラックが挙げられる。これらは特に限定されることはない。
【0056】
また、前記化合物(A)は、熱電変換材料中でゼーベック係数の向上に寄与する。化合物(A)の含有量を増やすことでゼーベック係数を向上させることができるが、化合物(A)の含有量を増やすと絶縁性が増して導電性が低下するため、ゼーベック係数と導電率との両立の観点から、前記化合物(A)の含有率は、前記炭素材料(B)の全量に対して、上限値が、400質量%以下が好ましく、200質量%以下より好ましく、120質量%以下が更に好ましく、100質量%以下が特に好ましい。また、下限値は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。
【0057】
本発明の熱電変換材料は、熱電特性を維持する上で、ラジカルを発生する化合物を含有しないことが好ましく、前記化合物(A)と前記導電材料(B)のみからなることがより好ましいが、塗工、膜形成の観点から、必要に応じて、その他成分を含んでよい。
【0058】
(溶剤)
溶剤は、前記化合物(A)と導電材料(B)の混合する際の媒体として使用され、インキ化による塗工性向上が可能とする。使用できる溶剤としては、導電材料(B)と化合物(A)とを溶解又は良分散できれば特に限定されず、有機溶剤や水を挙げることができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1、3-ブチレングリコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリフルオロエタノール、m-クレゾール、及びチオジグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、N-メチルピロリドン等から、必要に応じて適宜選択することができる。
化合物(A)と導電材料(B)を分散する溶剤としては、N-メチルピロリドンが特に好ましい。
【0059】
(助剤)
使用可能な助剤は、特に限定されず、例えば、ラクタム類、アルコール類、アミノアルコール類、カルボン酸類、酸無水物類、及びイオン性液体が挙げられる。具体例は以下のとおりである。
ラクタム類:、ピロリドン、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、及びN-オクチルピロリドン等。
アルコール類:ショ糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等。
アミノアルコール類:ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミン等。
カルボン酸類:2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、ジクロロ酢酸、及びトリフルオロ酢酸等。
酸無水物類:無水酢酸、無水プロピオン酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水安息香酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(別名:シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物)、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ハイミック酸、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、及び9,9-フルオレニリデンビス無水フタル酸等。スチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、イソブチレン-無水マレイン酸コポリマー、アルキルビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー等の、無水マレイン酸と他のビニルモノマーとを共重合したコポリマー等。
【0060】
導電性及び熱電特性の観点から、助剤として、ラクタム類及びアルコール類の少なくとも一方を使用することが好ましい。助剤の含有量は、熱電変換材料の全質量を基準として、0.1~30質量%の範囲が好ましく、1~10質量%の範囲がより好ましく、1~5質量%の範囲がさらに好ましい。助剤の含有量を0.1質量%以上にすることで、導電性及び熱電特性の向上効果を容易に得ることができる。また、助剤の含有量を50質量%以下にした場合、膜物性の低下を抑制することができる。
【0061】
(樹脂)
本発明の熱電変換材料は、成膜性や膜強度の調整等を目的として、導電性及び熱電特性に影響しない範囲で、樹脂を含んでもよい。
樹脂は、熱電変換材料の各成分に相溶又は混合分散するものであればよい。熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれを用いても良い。使用可能な樹脂の具体例として、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、アクリルアミド樹脂、及びこれらの共重合樹脂等が挙げられる。特に限定するものではないが、一実施形態において、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、及びアクリルアミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0062】
導電性の観点から、樹脂の含有量は、前記化合物(A)と導電材料(B)との全質量を基準として、0~90質量%の範囲が好ましく、0~50質量%の範囲がより好ましく、0~20質量%の範囲がさらに好ましい。
【0063】
(無機熱電変換材料)
本発明の熱電変換材料は、熱電変換性能を高めるために、必要に応じて、無機熱電変換材料を含んでもよい。 無機熱電材料の一例として、Bi-(Te、Se)系、Si-Ge系、Mg-Si系、Pb-Te系、GeTe-AgSbTe系、(Co、Ir、Ru)-Sb系、(Ca、Sr、Bi)Co25系等を挙げることができる。より具体的には、Bi2Te3、PbTe、AgSbTe2、GeTe、Sb2Te3、NaCo24、CaCoO3、SrTiO3、ZnO、SiGe、Mg2Si、FeSi2、Ba8Si46、MnSi1.73、ZnSb、Zn4Sb3、GeFe3CoSb12、及びLaFe3CoSb12からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。このとき、上記無機熱電変換材料に不純物を加えて極性(p型、n型)や導電率を制御して利用してもよい。無機熱電変換材料を使用する場合、その使用量は、成膜性や膜強度に影響しない範囲で調整する。
【0064】
熱電変換用分散液の製造方法は、本発明の条件を満たす熱電変換用分散液が得られれば
特に限定されず、適宜選択することができる。例えば、熱電変換材料と分散媒と必要に応じてその他成分とを混合した後、分散機や超音波を用いて分散することで得られる。
【0065】
分散機としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスビーズやジルコニアビーズ等を使用したサンドミル、スキャンデックス、アイガーミル、ペイントコンディショナー、ペイントシェイカー等のメディア分散機、コロイドミル等を使用することができる。
【0066】
<熱電変換素子>
本発明の熱電変換素子は、上記熱電変換材料を用いて形成された熱電変換膜と、電極とを有し、上記熱電変換膜及び上記電極は互いに電気的に接続されているものである。熱電変換膜は、導電性及び熱電特性に加えて、耐熱性及び可撓性の点でも優れる。そのため、高品質な熱電変換素子を容易に作製することができる。
【0067】
熱電変換膜は、基材上に熱電変換材料を塗布して得られる膜であってもよい。熱電変換材料は優れた成形性を有するため、塗布法によって良好な膜を得ることが容易である。熱電変換膜の形成には、主に湿式製膜法が用いられる。具体的には、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、ロールコート法、カーテンコート法、バーコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、シルクスクリーン印刷、フレキソ印刷等の各種手段を用いた方法が挙げられる。塗布する厚み、及び材料の粘度等に応じて、上記方法から適宜選択することができる。
【0068】
熱電変換膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、後述するように、熱電変換膜の厚さ方向又は面方向に温度差を生じ、かつ伝達できるように、一定以上の厚みを有するように形成されることが好ましい。熱電特性の点から、熱電変換膜の膜厚は、0.1~200μmの範囲が好ましく、1~100μmの範囲が好ましく、1~50μmの範囲がさらに好ましい。
【0069】
基材としては、特に制限はないが、不織布、紙、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、ポリイミド、ボリカーボネート、及びセルローストリアセテートなどの材料からなるプラスチックフィルム、又はガラス等を用いることができる。
【0070】
基材と熱電変換膜との密着性を向上させる目的で、基材表面に様々な処理を行うことができる。具体的には、熱電変換材料の塗布に先立ち、UVオゾン処理、コロナ処理、プラズマ処理、又は易接着処理を行ってもよい。
【0071】
本発明の実施形態である熱電変換素子は、上記熱電変換材料を用いて構成されることを除き、当技術分野で周知の技術を適用して構成することができる。熱電変換素子のより具体的な構成、及びその製造方法について説明する。
【0072】
熱電変換素子は、熱電変換膜と電極とが電気的に接続している。ここで、「電気的に接続する」とは、互いに接合しているか、又はワイヤー等の他の構成部材を介して通電できる状態であることを意味する。
【0073】
電極の材料は、金属、合金、及び半導体から選択することができる。一実施形態において、導電率が高く、熱電変換膜の接触抵抗が低いことが好ましいことから、金属及び合金が好ましい。具体例として、電極は、金、銀、銅、及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。電極は、銀を含むことがさらに好ましい。
【0074】
電極は、真空蒸着法、電極材料箔や電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料の微粒子を分散したペーストの塗布等の方法によって形成することができる。プロセスが簡便な観点で、電極材料箔や電極材料膜を有するフィルムの熱圧着、電極材料を分散したペーストの塗布による方法が好ましい。
【0075】
熱電変換素子の構造の典型例としては、熱電変換膜と一対の電極との位置関係から、(1)本発明による熱電変換膜の両端に電極が形成されている構造、(2)本発明の熱電変換膜が2つの電極で挟持されている構造に大別される。
例えば、上記(1)の構造を有する熱電変換素子は、基材上に熱電変換膜を形成した後に、その両端にそれぞれ銀ペーストを塗布して第1及び第2の電極を形成することによって得ることができる。このように熱電変換膜の両端に電極が形成された熱電変換素子は、2つの電極間の距離を広くすることが容易である。そのため、2つの電極間で大きな温度差を発生させて、効率良く熱電変換を行うことが容易である。
【0076】
上記(2)の構造を有する熱電変換素子は、例えば、基材上に銀ペーストを塗布して第1の電極を形成し、その上に本発明の熱電変換膜を形成し、さらにその上に銀ペーストを塗工して第2の電極を形成することによって得ることができる。このように2つの電極で本発明の熱電変換膜を挟持する熱電変換素子では、二つの電極間の距離を広くすることは難しい。そのため、2つの電極間に大きな温度差を発生させることは難しいが、熱電変換膜の膜厚を大きくすることによって、温度差を大きくすることが可能である。また、このような構造を有する熱電変換素子は、基材に対して垂直な方向の温度差を利用できることから、発熱体に貼り付ける形態での利用が可能である。そのため、熱源の広い面積の活用が容易となる点で好ましい。
【0077】
熱電変換素子は、直列に接続することで高い電圧を発生させることが可能であり、並列に接続することで大きな電流を発生させることが可能である。また、熱電変換素子は、2つ以上の熱電変換素子を接続したものであってもよい。本発明によれば、熱電変換素子が優れた可撓性を有するため、平面ではない形状を有する熱源に対しても追随して良好に設置することが可能である。
【0078】
一実施形態において、本発明の熱電変換素子を他の熱電材料から成る熱電変換素子と組み合わせることも有効である。例えば、無機熱電材料として、Bi-(Te、Se)系、Si-Ge系、Mg-Si系、Pb-Te系、GeTe-AgSbTe系、(Co、Ir、Ru)-Sb系、(Ca、Sr、Bi)Co25系等を挙げることができ、具体的には、Bi2Te3、PbTe、AgSbTe2、GeTe、Sb2Te3、NaCo24、CaCoO3、SrTiO3、ZnO、SiGe、Mg2Si、FeSi2、Ba8Si46、MnSi1.73、ZnSb、Zn4Sb3、GeFe3CoSb12、及びLaFe3CoSb12などからなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。このとき、上記無機熱電材料に、不純物を加えて、極性(p型、n型)や導電率を制御して利用しても良い。その他、有機熱電材料として、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、フラーレン、及びそれらの誘導体からなる群から選択される少なく1種を使用することができる。これら材料から構成される他の熱電変化素子を組合せる場合、素子のフレキシブル性を損なわない範囲内で、他の熱電変換素子を作製することが好ましい。
【実施例
【0079】
以下、実験例により、本発明をより具体的に説明する。なお、例中、「部」とあるのは「質量部」を、「%」とあるのは「質量%」をそれぞれ意味するものとする。また、NMPは、N-メチルピロリドンを示す。
【0080】
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
Mwの測定は、東ソー株式会社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC-8020」を用いた。本発明における測定は、カラムに「LF-604」(昭和電工株式会社製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を直列に2本接続して用い、展開溶媒(溶離液)THF(テトラヒドロフラン)、流量0.6ml/分、カラム温度40℃の条件で行いた。質量平均分子量(Mw)の決定は、標準物質としてポリスチレンを用いた換算で行った。
【0081】
<側鎖に有機色素を導入したポリマーの合成>
(合成例1:色素導入ポリマー1)
国際公開第2015/050113号の段落[0074]及び[0075]を参考にして、質量平均分子量(Mw)が約21,000の、下記構造で表される側鎖にペリレン骨格導入したアクリルポリマーである色素導入ポリマー1を得た。
【0082】
【化2】
【0083】
<樹脂成分の合成>
(合成例2:樹脂1)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、テレフタル酸とアジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとから得られるポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールP-2011」、Mn=2,011)455.5部、ジメチロールブタン酸16.5部、イソホロンジイソシアネート105.2部、トルエン140部を仕込み、窒素雰囲気下90℃3時間反応させ、これにトルエン360部を加えてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、イソホロンジアミン19.9部、ジ-n-ブチルアミン0.63部、2-プロパノール294.5部、トルエン335.5部を混合したものに、得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー溶液969.5部を添加し、50℃で3時間続いて70℃2時間反応後、100℃の真空乾燥を行い、質量平均分子量(Mw)=61,000の、ウレタンウレア樹脂である樹脂1を得た。
【0084】
(合成例3:樹脂2)
撹拌機、水分定量受器を付けた還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコに、炭素数36の多塩基酸化合物としてプリポール1009(クローダジャパン株式会社製、酸価194mgKOH/g)を70.78部、フェノール性水酸基を有する多塩基酸化合物として5-ヒドロキシイソフタル酸(スガイ化学社製、以下「5-HIPA」ともいう)を5.24部、炭素数36のポリアミン化合物としてプリアミン1074(クローダジャパン株式会社製、酸価210KOHmg/g)を82.84部、トルエンを4.74部仕込み、撹拌しながら、温度を220℃まで昇温し、水を留去しながら脱水反応を続けた。1時間ごとにサンプリングを行い質量平均分子量が50000になったことを確認し、冷却後、Mw50432を有するフェノール性水酸基含有ポリアミド樹脂である樹脂2を得た。
【0085】
<化合物(A)の合成>
【0086】
(合成例4:A13)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、フェナントロリン(東京化成工業社製)5部、67%硝酸(東京化成工業社製)100部を仕込み、窒素雰囲気下100℃3時間反応させた。冷却後、水3000部へ注ぎ、析出した個体を濾過により収集後、カラムクロマトグラフィーで精製し、A13を0.5部得た。
【0087】
(合成例5:A35)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、4,7-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)1部、ブロモベンゼン(東京化成工業社製)2部、水酸化カリウム(東京化成工業社製)2部、エタノール200部を仕込み、窒素雰囲気下50℃12時間反応させた。冷却後、エバポレータで乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製し、A35を0.59部得た。
【0088】
(合成例6:A34)
4,7-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリン及びブロモベンゼンを9-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリン及び2-ブロモ-2-メチルプロパンに変更した以外は、合成例5と同様の方法で、A34を得た。
【0089】
(合成例7:A38)
ブロモベンゼンを2-ブロモエチルエチルエーテルに変更した以外は、合成例5と同様の方法で、A38を得た。
【0090】
(合成例8:A41)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)5部、メルカプトエタン(東京化成工業社製)4部、水酸化ナトリウム(東京化成工業社製)1部、DMF100部を仕込み、窒素雰囲気下80℃3時間反応させた。冷却後、水洗し、濾過により固体を得た。カラムクロマトグラフィーで精製し、A41を3.7部得た。
【0091】
(合成例9:A42)
4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びメルカプトエタンを3,6-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び4-メルカプトピリジンに変更した以外は、合成例8と同様の方法で、A42を得た。
【0092】
(合成例10:A114)
4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びメルカプトエタンを3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及びメルカプトベンゼンに変更した以外は、合成例8と同様の方法で、A114を得た。
【0093】
(合成例11:A115)
4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びメルカプトエタンを3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及び4-フルオロベンゼンチオールに変更した以外は、合成例8と同様の方法で、A115を得た。
【0094】
(合成例12:A53)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)2部、フェニルボロン酸(東京化成工業社製)2部、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(東京化成工業社製)0.25部、炭酸カリウム(東京化成工業社製)3部、水30部、エタノール5部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下100℃3時間反応させた。冷却後、エバポレータで乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製し、A53を0.29部得た。
【0095】
(合成例13:A54)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及び1-ナフタレンボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A54を得た。
【0096】
(合成例14:A56)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び4-(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A56を得た。
【0097】
(合成例15:A60)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び3-ピリジルボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A60を得た。
【0098】
(合成例16:A62)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及び3-ピリジルボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A62を得た。
【0099】
(合成例17:A65)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び2-フリルボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A65を得た。
【0100】
(合成例18:A68)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び2-チオフェンボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A68を得た。
【0101】
(合成例19:A71)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び2-チオフェンボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A71を得た。
【0102】
(合成例20:A74)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びフェニルボロン酸を4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及び9-エチルカルバゾール-3-ボロン酸に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A74を得た。
【0103】
(合成例21:A110)
3,8-ジブロモ-1,10-フェナントロリンを3,5,6,8-テトラブロモ-1,10-フェナントロリンに、フェニルボロン酸を4-ビフェニルボロン酸、9-アントラセンボロン酸、2-フリルボロン酸及びベンゾ[b]チオフェン-2-ボロン酸の混合物に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A110を得た。
【0104】
(合成例22:A75)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、マグネシウム(東京化成工業社製)0.5部、THF20部を仕込み、窒素雰囲気下25℃で撹拌させた。滴下装置にヨウ素(東京化成工業社製)0.1部、3-ブロモ-1,10-フェナントロリン2.5部、THF100mlを入れて、滴下をし、6h撹拌した。その後、3-ブロモ-1,10-フェナントロリン2.5部、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロニッケル(II)(シグマアルドリッチ社製)0.3部を加え、60℃で12h反応させた。冷却後、エバポレータで乾固し、カラムクロマトグラフィーで精製し、A75を0.98部得た。
【0105】
(合成例23:A82)
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、3-ブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)3部、ジプロピルアミン(東京化成工業社製)1.57部、酢酸パラジウム(II)(東京化成工業社製)0.13部、トリ-tert-ブチルホスフィン(東京化成工業社製)0.18部、tert-ブトキシナトリウム(東京化成工業社製)1.73部、トルエン50部を仕込み、窒素雰囲気下70℃5時間反応させた。冷却後、水とメタノールで洗浄し、濾過により固体を得た。カラムクロマトグラフィーで精製し、A82を1.39部得た。
【0106】
(合成例24:A89)
3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及びジプロピルアミンを,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン及びp,p‘-ジトリルアミンに変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A89を得た。
【0107】
(合成例25:A109)
3-ブロモ-1,10-フェナントロリン及びジプロピルアミンを,2,3,4,5,6,7,8,9-オクタブロモ-1,10-フェナントロリン及びピぺリジン、ピロール及びジメチルアミンの混合物に変更した以外は、合成例12と同様の方法で、A109を得た。
【0108】
<熱電変換材料の製造>
[実施例1]
(分散液1)
1,10-phenanthroline(東京化成工業社製)0.4部、GNP(XGSciences社製グラフェンナノプレートレット「xGNP-M-5」)0.4部、NMP79.2部をそれぞれ秤量して混合した。更にジルコニアビーズ(φ1.25mm)を140部加え、スキャンデックスで4時間振とう後、ろ過してジルコニアビーズを取り除き、熱電変換材料の分散液1を得た。
【0109】
[実施例2~72、比較例1]
(分散液2~72、101)
材料の種類及び配合量を表10に示す内容にそれぞれ変更した以外は、分散液1の製造方法と同様にして、熱電変換材料の分散液2~72、101をそれぞれ得た。
【0110】
【表10】
【0111】
上記合成例で説明した以外に使用した表10に挙げた材料を以下に示す。
化合物(A)
A1:2,9-ジメチル-5-ピクリルアミノ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A3:4,7-ジブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A4:3-ブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A5:2-ブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A6:2-クロロ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A7:5-クロロ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A8:4,7-ジクロロ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A9:2,9-ジクロロ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A10:3,5,6,8-テトラブロモ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A11:4,7-ジヒドロキシ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A17:1,10-フェナントロリン-2-カルボン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
A20:5-メチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A21:4,7-ジメチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A22:2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A23:5,6-ジメチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A24:2-メチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A26:3,4,7,8-テトラメチル-1,10-フェナントロリン ハイドレート(東京化成工業社製)
A27:2,9-ジブチル-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A46:2,9-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A48:バソフェナントロリン(東京化成工業社製)
A49:バソクプロイン(東京化成工業社製)
A51:バソフェナントロリンジスルホン酸二ナトリウム水和物(東京化成工業社製)
A78:5-アミノ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A103:バソクプロインジスルホン酸二ナトリウム(東京化成工業社製)
A104:2,9-ジブチル-5-ピクリルアミノ-1,10-フェナントロリン(東京化成工業社製)
A105:(1S)-3-(1,10-フェナントロリン-2-イル)-2‘-フェニル-[1,1’-ビナフタレン]-2-オール(東京化成工業社製)
A106:ジピリド[3,2-a:2‘,3’-c]フェナジン(東京化成工業社製)
A112:2-シアノ-1,10-フェナントロリン(ATK CHEMICAL社製)
A113:3-ベンジル-1,10-フェナントロリン
【0112】
導電材料(B)
GNP(XGSciences社製グラフェンナノプレートレット「xGNP-M-5」)
CB(ライオン社製 ケッチェンブラック「EC-300J」)
黒鉛(中越黒鉛社製 膨張黒鉛SMF)
MWCNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製多層カーボンナノチューブ「Knanos100P」)
SWCNT(OCSiAl社製 単層カーボンナノチューブ「TUBALL」)
PEDOT/PSS Heraeus社製 「Clevios PH1000」
Ag粉 DOWA社製 「FA-D-5」
Cu粉 DOWA社製 「2.5μm-TypeA」
【0113】
樹脂
樹脂3 ポリメチルメタクリレート樹脂(楠本化成株式会社製 NeoCryl B-728)
【0114】
<熱電変換材料の評価>
得られた分散液1~72、及び101を、シート状基材である厚さ75μmのPETフィルム上にアプリケータを用いて塗布した後、120℃で30分間加熱乾燥して、PET基材上に、膜厚5μmの熱電変換膜を有する積層体を得た。分散液を基材に塗工した際の塗工適性を以下に示す方法に従って評価した。また、得られた熱電変換膜(以下、塗膜ともいう)を有する積層体について、以下の方法に従って導電性(導電率)及びゼーベック係数を評価した。結果を表10に示す。
【0115】
(導電率(抵抗率))
得られた積層体を2.5cm×5cmの大きさに切り取り、JIS-K7194に準じて、ロレスタGX MCP-T700(三菱化学アナリテック社製)を用いて4探針法で導電率を測定した。比較例1の導電率を1としたときの相対値を表10に示す。
【0116】
(ゼーベック係数)
得られた積層体を3mm×10mmの大きさに切り取り、アドバンス理工株式会社製のZEM-3LWを用いて、80℃におけるゼーベック係数(μV/K)を測定した。比較例1のゼーベック係数の絶対値を1としたとき、各実施例におけるゼーベック係数の絶対値との相対値を表10に示す。
【0117】
(塗工適性)
分散液の塗工適性は、グラインドゲージ(溝の深さ50μm)を用いて評価した。
◎:10μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子がない(非常に良好)
〇:10μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子はあるが、20μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子がない(良好)
△:20μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子はあるが、30μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子がない(使用可能)
×:30μm以上の粗大粒子による筋引きや粗大粒子がある(使用不可)
【0118】
表10が示すように、本発明の熱電変換材料は、高い導電率とゼーベック係数を示した。
さらに、本発明の熱電変換材料を含有する分散液は、いずれも良好な塗工適性(塗膜状態)を示した。これに対して、色素導入ポリマー1を用いた比較例1では、低い導電率とゼーベック係数を示した。
【0119】
<熱電変換素子の製造>
[実施例73]
(熱電変換素子1)
厚さ50μmのPETフィルム上に、実施例1で調製した分散液1を塗布し、厚さ20μm、5mm×30mmの形状を有する導電層を、それぞれ10mm間隔に5つ作製した(図1の符号2を参照)。次いで、各導電層がそれぞれ直列に接続されるように、銀ペーストを用いて、厚さ10μm、5mm×33mmの形状を有する銀回路(電極)を4つ作製し(図1の符号3を参照)、熱電変換素子1を得た。上記銀ペーストとしては、トーヨーケム株式会社製のREXALPHA RA FS 074を使用した。
【0120】
[実施例74~144、比較例2]
(熱電変換素子2~72、101)
熱電変換素子1で使用した分散液1を、表11に示す分散液にそれぞれ変更した以外は、熱電変換素子1と同様にして、熱電変換素子2~72、101をそれぞれ得た。
<熱電変換素子の評価>
得られた熱電変換素子について、以下のようにして起電力を評価した。結果を表11に示す。
【0121】
(起電力の測定)
各熱電変換素子について、熱電変換膜及び銀回路が内側になるように(図2に示すA-A’線に沿うように)折り曲げ、その状態のまま、100℃に加熱したホットプレート上に設置した。なお、折り曲げの程度は、図2のB-B’間の距離が10mmになるようにそれぞれ調整した。上記のように折り曲げたサンプルをホットプレート上に設置して10分後の塗膜間の起電力について電圧計を用いて測定した。測定は、室温下(20℃)で実施した。以下の基準に従い、測定値から熱電特性について評価した。
◎:起電力が1mV以上である(良好)
〇:起電力が500μV以上、1mV未満である(実用可能)
×:起電力が500μV未満である(不良)
【0122】
【表11】
【0123】
表11が示すように、本発明の熱電変換素子は、比較例2の熱電変換素子に比べて優れた熱電特性を有していた。以上のことから、本願発明の実施形態によれば、ゼーベック係数及び導電性に優れ、高いPFを示す、優れた熱電特性を有する熱電変換材料を実現することができ、高効率の熱電変換素子を実現できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の実施形態である熱電変換材料は、導電性及びゼーベック係数を両立し、熱電特性にも優れるため、上記材料を使用して、高性能の熱電変換素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0125】
1:基材
2:熱電変換膜
3:回路
10:熱電変換素子の試験サンプル
20:ホットプレート
図1
図2