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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】重荷重用空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20231212BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20231212BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231212BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C11/03 300B
B60C11/13 D
B60C11/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019210284
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021079872
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 義明
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-060805(JP,A)
【文献】特開平03-273906(JP,A)
【文献】特表2011-514268(JP,A)
【文献】特開2003-211455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/01
B60C 11/03
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向において外側に位置する一対のショルダー周方向溝を含む、少なくとも3本の周方向溝が刻まれたトレッドを備え、
前記トレッドに、軸方向において外側に位置する一対のショルダー陸部を含む、少なくとも4本の陸部が構成され、
前記ショルダー陸部が周方向に並ぶ複数のショルダーブロックを含み、一のショルダーブロックと前記一のショルダーブロックの隣に位置する他のショルダーブロックとの間がショルダー軸方向溝であり、
前記ショルダー軸方向溝の深さが前記ショルダー周方向溝の深さよりも浅く、
前記ショルダーブロックに、外側面から前記ショルダー周方向溝に向かって延びる複数の非貫通穴が設けられ、
前記複数の非貫通穴が第一非貫通穴と第二非貫通穴とを含み、
径方向において、前記第一非貫通穴の外端と内端との間に、前記ショルダー軸方向溝の底が位置し、
径方向において、前記第二非貫通穴の外端と内端との間に、前記第一非貫通穴の内端が位置する、重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
軸方向において、前記第二非貫通穴の底が前記第一非貫通穴の底よりも内側に位置する、請求項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
周方向において、前記第一非貫通穴と、前記第二非貫通穴とが、交互に並ぶ、請求項1又は2に記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第二非貫通穴の径方向幅が前記第二非貫通穴の周方向幅よりも広い、請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第一非貫通穴の径方向幅が前記第一非貫通穴の周方向幅よりも広い、請求項1からのいずれかに記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス等の車両に装着される、重荷重用空気入りタイヤのトレッドは、大きなボリュームを有する。大きなボリュームを有するトレッドには熱が伝わりにくい。このタイヤの製造では、サイドウォール等の部材を過剰に加硫することがないよう、加熱状態がコントロールされる(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-326706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、トレッドを効果的に加熱することで生産性の向上を図りながら、耐トレッドグルーブクラッキング(TGC)性、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される、重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る重荷重用空気入りタイヤは、軸方向において外側に位置する一対のショルダー周方向溝を含む、少なくとも3本の周方向溝が刻まれたトレッドを備える。前記トレッドに、軸方向において外側に位置する一対のショルダー陸部を含む、少なくとも4本の陸部が構成される。前記ショルダー陸部は周方向に並ぶ複数のショルダーブロックを含み、一のショルダーブロックと前記一のショルダーブロックの隣に位置する他のショルダーブロックとの間がショルダー軸方向溝である。前記ショルダー軸方向溝の深さは前記ショルダー周方向溝の深さよりも浅い。前記ショルダーブロックに、外側面から前記ショルダー周方向溝に向かって延びる複数の非貫通穴が設けられる。前記複数の非貫通穴は第一非貫通穴を含み、径方向において、前記第一非貫通穴の外端と内端との間に、前記ショルダー軸方向溝の底が位置する。
【0006】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記複数の非貫通穴は第二非貫通穴を含み、径方向において、前記第二非貫通穴の外端と内端との間に、前記第一非貫通穴の内端が位置する。
【0007】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、軸方向において、前記第二非貫通穴の底が前記第一非貫通穴の底よりも内側に位置する。
【0008】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、周方向において、前記第一非貫通穴と、前記第二非貫通穴とは、交互に並ぶ。
【0009】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第二非貫通穴の径方向幅は前記第二非貫通穴の周方向幅よりも広い。
【0010】
好ましくは、この重荷重用空気入りタイヤでは、前記第一非貫通穴の径方向幅は前記第一非貫通穴の周方向幅よりも広い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重荷重用空気入りタイヤでは、トレッドが効果的に加熱される。このタイヤでは、生産性の向上が図られるとともに、耐TGC性、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図2は、図1に示されたタイヤのトレッド面の展開図である。
図3図3は、図1に示されたタイヤのショルダー陸部が示された拡大断面図である。
図4図4は、図1のタイヤの製造状況を説明する図である。
図5図5は、ショルダー陸部の外側面に設けられた非貫通穴が示された側面図である。
図6図6は、図5に示された非貫通穴の変形例が示された側面図である。
図7図7は、本発明の他の実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0014】
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
【0015】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0016】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0017】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の重荷重車両に装着される。このタイヤ2は、トラック及びバス用タイヤである。
【0019】
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組み込まれている。
【0020】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対の補強層20を備える。
【0021】
トレッド4は、その外面22(すなわちトレッド面22)において路面と接触する。符号PCはトレッド面22と赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道である。
【0022】
図示されないが、トレッド4は、ベース部と、このベース部の径方向外側に位置するキャップ部とを備える。ベース部は低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。
【0023】
このタイヤ2のトレッド4には、周方向に連続して延びる溝24(すなわち、周方向溝24)が刻まれる。これにより、このトレッド4には、軸方向に並列した複数の陸部26が構成される。このトレッド4は、周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。
【0024】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
【0025】
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア28と、エイペックス30とを備える。
【0026】
コア28は、周方向に延びる。コア28は、巻き回されたスチール製のワイヤを含む。エイペックス30は、コア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は、コア28から径方向外向きに延びる。
【0027】
エイペックス30は、内側エイペックス30uと外側エイペックス30sとを備える。外側エイペックス30sは径方向において内側エイペックス30uの外側に位置する。内側エイペックス30u及び外側エイペックス30sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス30sは内側エイペックス30uに比して軟質である。
【0028】
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。チェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
【0029】
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード8と他方のビード8とを架け渡す。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ32を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ32からなる。
【0030】
このタイヤ2では、カーカスプライ32はそれぞれのビード8のコア28の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このカーカスプライ32は、一方のコア28から他方のコア28に向かって延びるプライ本体32aと、このプライ本体32aに連なりそれぞれのコア28の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される一対の折り返し部32bとを有する。
【0031】
図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
【0032】
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
【0033】
ベルト14は、径方向に積層された複数の層34で構成される。このタイヤ2では、ベルト14は4枚の層34で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層34の数に特に制限はない。ベルト14の構成はタイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
【0034】
図示されないが、それぞれの層34は並列された多数のベルトコードを含む。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0035】
このタイヤ2では、4枚の層34のうち、第一層34Aと第三層34Cとの間に位置する第二層34Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層34Dが、最小の軸方向幅を有する。
【0036】
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
【0037】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。
【0038】
それぞれの補強層20は、ビード8の部分に位置する。軸方向において、補強層20はビード8の外側に位置する。補強層20は、カーカスプライ32とチェーファー10との間に位置する。補強層20の内端は、コア28の径方向内側に位置する。補強層20の外端は、径方向において、折り返し部32bの端とコア28との間に位置する。この補強層20はショートフィラーとも称される。
【0039】
図示されないが、補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。フィラーコードの材質はスチールである。
【0040】
図2は、トレッド面22の展開図を示す。図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
【0041】
図2において、符号PEはトレッド面22の端である。タイヤ2において、外観上、トレッド面22の端PEの識別が不能な場合、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面22の端PEとして定められる。
【0042】
図2において、両矢印RTはトレッド面22の幅である。この幅RTは、一方のトレッド面22の端PEから他方のトレッド面22の端PEまでの距離で表される。この幅RTは、トレッド面22に沿って計測される。
【0043】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は、周方向溝24によって区画された複数の陸部26を有する。このタイヤ2では、軸方向に並列した、少なくとも3本の周方向溝24がトレッド4に刻まれる。これにより、トレッド4には少なくとも4本の陸部26が構成される。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝24がトレッド4に刻まれ、このトレッド4に5本の陸部26が構成される。
【0044】
4本の周方向溝24のうち、軸方向において外側に位置する周方向溝24s、すなわち、トレッド面22の端PEに近い周方向溝24sは、ショルダー周方向溝である。このタイヤ2は、軸方向において外側に位置する一対のショルダー周方向溝24sを含む、4本の周方向溝24が刻まれたトレッド4を備える。
【0045】
このタイヤ2では、トレッド4に刻まれた、4本の周方向溝24のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝24c、すなわち赤道PCに近い周方向溝24cはセンター周方向溝である。トレッド4に刻まれた周方向溝24に、赤道PC上に位置する周方向溝24が含まれる場合、赤道PC上に位置する周方向溝24がセンター周方向溝である。さらにセンター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとの間に周方向溝24が存在する場合、この周方向溝24がミドル周方向溝である。
【0046】
それぞれのセンター周方向溝24cは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このセンター周方向溝24cが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
【0047】
それぞれのショルダー周方向溝24sは、周方向にジグザグ状に連続して延在する。このショルダー周方向溝24sが、周方向にストレートに延びる溝で構成されてもよい。
【0048】
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、周方向溝24の幅はトレッド面22の幅RTの1%以上10%以下が好ましい。この周方向溝24の深さは、13mm以上25mm以下が好ましい。
【0049】
このタイヤ2では、周方向溝24の幅は一方の縁から他方の縁までの距離で表される。後述する、軸方向溝の幅も、一方の縁から他方の縁までの距離で表される。このタイヤ2では、周方向溝24の深さは一方の縁と他方の縁とを結ぶ直線から底までの距離で表される。後述する、軸方向溝の深さも、一方の縁と他方の縁とを結ぶ直線から底までの距離で表される。
【0050】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの幅はセンター周方向溝24cの幅よりも広い。ショルダー周方向溝24sの幅が、センター周方向溝24cの幅よりも狭くてもよいし、センター周方向溝24cの幅と同等であってもよい。周方向溝24の幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0051】
このタイヤ2では、ショルダー周方向溝24sの深さはセンター周方向溝24cの深さと同等である。ショルダー周方向溝24sが、センター周方向溝24cよりも深くてもよいし、センター周方向溝24cよりも浅くてもよい。周方向溝24の深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0052】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4には5本の陸部26が構成される。これら陸部26は、軸方向に並列され、周方向に延びる。
【0053】
5本の陸部26のうち、軸方向において外側に位置する陸部26s、すなわち、トレッド面22の端PEを含む陸部26sがショルダー陸部である。このタイヤ2では、軸方向において外側に位置する一対のショルダー陸部26sを含む、5本の陸部26が、トレッド4に構成される。
【0054】
このタイヤ2では、トレッド4に構成された、5本の陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26c、すなわち赤道PC上に位置する陸部26cがセンター陸部である。さらにセンター陸部26cとショルダー陸部26sとの間に位置する陸部26mが、ミドル陸部である。トレッド4に構成された陸部26のうち、軸方向において内側に位置する陸部26が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合、この赤道PCの近くに位置する陸部26、すなわち赤道PC側に位置する陸部26がセンター陸部である。
【0055】
このタイヤ2では、5本の陸部26は、センター陸部26cと、一対のミドル陸部26mと、一対のショルダー陸部26sとで構成される。センター陸部26cとミドル陸部26mとの間はセンター周方向溝24cである。ミドル陸部26mとショルダー陸部26sとの間は、ショルダー周方向溝24sである。このタイヤ2の陸部26には、陸部26を横切る軸方向溝36が刻まれる。
【0056】
センター陸部26cには、このセンター陸部26cを横切る軸方向溝36cが刻まれる。この軸方向溝36c(以下、センター軸方向溝とも称される。)は、一方のセンター周方向溝24cと他方のセンター周方向溝24cとを架け渡す。
【0057】
センター陸部26cには、複数のセンター軸方向溝36cが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のセンターブロック38cがセンター陸部26cに構成される。このセンター陸部26cは、周方向に並ぶ複数のセンターブロック38cを含む。一のセンターブロック38cと、この一のセンターブロック38cの隣に位置する他のセンターブロック38cとの間はセンター軸方向溝36cである。このタイヤ2では、センター陸部26cが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。
【0058】
このタイヤ2では、センター軸方向溝36cの幅は、センター周方向溝24cの幅と同等であってもよく、このセンター周方向溝24cの幅よりも狭くてもよく、このセンター周方向溝24cの幅よりも広くてもよい。このセンター軸方向溝36cの幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0059】
このタイヤ2では、センター軸方向溝36cの深さは、センター周方向溝24cの深さと同等であってもよく、このセンター周方向溝24cの深さよりも深くてもよく、このセンター周方向溝24cよりも浅くてもよい。このセンター軸方向溝36cの深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0060】
それぞれのミドル陸部26mには、このミドル陸部26mを横切る軸方向溝36mが刻まれる。この軸方向溝36m(以下、ミドル軸方向溝とも称される。)は、センター周方向溝24cとショルダー周方向溝24sとを架け渡す。
【0061】
ミドル陸部26mには、複数のミドル軸方向溝36mが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のミドルブロック38mがミドル陸部26mに構成される。このミドル陸部26mは、周方向に並ぶ複数のミドルブロック38mを含む。一のミドルブロック38mと、この一のミドルブロック38mの隣に位置する他のミドルブロック38mとの間はミドル軸方向溝36mである。このタイヤ2では、ミドル陸部26mが周方向に連続する凸条で構成されてもよい。
【0062】
このタイヤ2では、ミドル軸方向溝36mの幅は、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの幅と同等であってもよく、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの幅よりも狭くてもよく、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの幅よりも広くてもよい。このミドル軸方向溝36mの幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0063】
このタイヤ2では、ミドル軸方向溝36mの深さは、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの深さと同等であってもよく、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの深さよりも深くてもよく、センター周方向溝24c又はショルダー周方向溝24sの深さよりも浅くてもよい。このミドル軸方向溝36mの深さは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0064】
それぞれのショルダー陸部26sには、このショルダー陸部26sを横切る軸方向溝36sが刻まれる。この軸方向溝36s(以下、ショルダー軸方向溝とも称される。)は、ショルダー周方向溝24sとトレッド面22の端PEとを架け渡す。
【0065】
ショルダー陸部26sには、複数のショルダー軸方向溝36sが刻まれる。これにより、周方向に間隔をあけて配置される、複数のショルダーブロック38sがショルダー陸部26sに構成される。このショルダー陸部26sは、周方向に並ぶ複数のショルダーブロック38sを含む。一のショルダーブロック38sと、この一のショルダーブロック38sの隣に位置する他のショルダーブロック38sとの間は、ショルダー軸方向溝36sである。
【0066】
このタイヤ2では、ショルダー軸方向溝36sの幅は、ショルダー周方向溝24sの幅と同等であってもよく、ショルダー周方向溝24sの幅よりも狭くてもよく、ショルダー周方向溝24sの幅よりも広くてもよい。このショルダー軸方向溝36sの幅は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0067】
このタイヤ2では、ショルダー軸方向溝36sの深さはショルダー周方向溝24sの深さよりも浅い。浅いショルダー軸方向溝36sは、ショルダー陸部26sの剛性を高める。荷重の作用によるショルダーブロック38sの変形が抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー軸方向溝36sの底におけるクラック(トレッドグルーブクラッキング:TGC)、及び、ショルダーブロック38sにおける摩耗(例えば、ヒールアンドトゥ摩耗)の発生が抑えられる。そして、ショルダー陸部26sが全体として適度な剛性を有するので、ショルダー軸方向溝36sがエッジ成分として効果的に機能する。このタイヤ2では、耐TGC性、耐摩耗性及びトラクション性能の向上が図られる。
【0068】
図1において、実線ELは、トレッド面22の端PEを通るカーカス12(詳細には、プライ本体32a)の外面の法線である。両矢印TEは、このカーカス12の法線ELに沿って計測される、このタイヤ2の厚さである。この法線ELはタイヤ2のショルダー陸部26sの部分を横切る。この厚さTEは、ショルダー陸部26sにおけるタイヤ2の厚さである。
【0069】
このタイヤ2では、カーカス12の法線に沿って計測される厚さは、トレッド面22の端PEを通るカーカス12の法線ELにおいて、最大を示す。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの部分が最も厚い。
【0070】
図1において、両矢印TCは、赤道PCを通るカーカス12の法線に沿って計測される、タイヤ2の厚さである。この厚さTCは、赤道PCにおけるタイヤ2の厚さである。このタイヤ2では、この赤道PCにおける厚さTCに対する、ショルダー陸部26sにおける厚さTEの比は、好ましくは、1.2以上1.5以下である。
【0071】
図3には、図1に示されたタイヤ2の一部が示される。この図3は、タイヤ2のショルダー陸部26s、詳細には、ショルダーブロック38sを示す。この図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0072】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに、複数の非貫通穴40が設けられる。複数の非貫通穴40は、ショルダーブロック38sの外側面からショルダー周方向溝24sに向かって延びる。非貫通穴40は、ショルダーブロック38sの内部に端部(すなわち、底)を有し、ショルダーブロック38sを貫通していない穴である。
【0073】
図3において、一点鎖線TLは非貫通穴40の中心線である。実線BLは、ショルダーブロックの外面における、軸方向外端、すなわち、トレッド面22の端PEと、軸方向内端とを結ぶ直線である。この直線BLは、基準線とも称される。
【0074】
このタイヤ2では、非貫通穴40の中心線TLは基準線BLと平行である。具体的には、非貫通穴40の中心線TLが基準線BLに対してなす角度は0°以上1°以下である。このタイヤ2では、非貫通穴40はショルダーブロック38sの外面に沿って延びる。
【0075】
次に、このタイヤ2の製造方法について説明する。このタイヤ2の製造では、成形機(図示されず)において、トレッド4、サイドウォール6等の部材を組み合わせて、未架橋状態のタイヤ2、すなわち、生タイヤが準備される。後述する加硫機において、この生タイヤを加硫することでタイヤ2が得られる。このタイヤ2の製造方法は、生タイヤを準備する工程、及び、この生タイヤを加硫する工程を含む。
【0076】
このタイヤ2の製造では、図4に示された加硫機42が用いられる。この加硫機42において、生タイヤ2rは加硫される。この加硫機42は、モールド44とブラダー46とを備える。
【0077】
モールド44は、その内面にキャビティ面48を備える。このキャビティ面48は、生タイヤ2rの外面に当接し、タイヤ2の外面を形づける。
【0078】
モールド44は、割モールドである。このモールド44は、構成部材として、トレッドリング50と、一対のサイドプレート52と、一対のビードリング54とを備える。このモールド44では、これら構成部材を組み合わせることにより、前述のキャビティ面48が構成される。図4のモールド44は、これら構成部材が組み合わされた状態、言い換えれば、閉じられた状態にある。
【0079】
このモールド44では、トレッドリング50はタイヤ2のトレッド4の部分を形作る。このトレッドリング50は、多数のセグメント56で構成される。なお、サイドプレート52はタイヤ2のサイドウォール6の部分を形作り、ビードリング54はタイヤ2のビード8の部分を形作る。
【0080】
ブラダー46は、モールド44の内側に位置する。ブラダー46は、架橋ゴムからなる。このブラダー46の内部には、スチーム等の加熱媒体が充填される。これにより、ブラダー46は膨張する。図4に示されたブラダー46は、加熱媒体が充填され膨張した状態にある。このブラダー46は、生タイヤ2rの内面に当接し、タイヤ2の内面を形づける。なお、このタイヤ2の製造では、ブラダー46に代えて金属製の剛性中子(図示されず)が用いられてもよい。剛性中子は、トロイダル状の外面を備える。この外面の形状は、空気が充填され内圧が正規内圧の5%に保持された状態にあるタイヤ2の内面の形状に近似される。
【0081】
このタイヤ2の製造では、所定の温度に設定されたモールド44に生タイヤ2rは投入される。投入後、モールド44は閉じられる。加熱媒体の充填により膨張したブラダー46が、キャビティ面48に生タイヤ2rを内側から押し付ける。生タイヤ2rは、モールド44内で所定時間加圧及び加熱される。これにより、生タイヤ2rのゴム組成物が架橋し、タイヤ2が得られる。
【0082】
図1から明らかなように、タイヤ2のトレッド4の部分はサイドウォール6の部分のボリュームよりも大きなボリュームを有する。前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの部分が最大の厚さTEを有する。ショルダー陸部26sに刻まれるショルダー軸方向溝36sは浅い。このタイヤ2では、ショルダー陸部26sの部分が特に大きなボリュームを有する。
【0083】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rには、モールド44及びブラダー46によって熱が伝えられる。生タイヤ2rには、小さなボリュームを有する部分と、大きなボリュームを有する部分とが混在する。小さなボリュームを有する部分には熱は伝わりやすいが、大きなボリュームを有する部分には熱は伝わりにくい。
【0084】
熱が伝わりやすい部分を基準に、生タイヤ2rを加圧及び加熱する時間、すなわち加硫時間を設定すると、熱が伝わりにくい部分における、加硫の進行が不十分になることが懸念される。一方、熱が伝わりにくい部分を基準に加硫時間を設定すると、熱が伝わりやすい部分において加硫が過剰に進むことが懸念される。
【0085】
ところで、環境への配慮から、車両に対しては燃費に関する規制が導入されている。この規制をクリアするために、タイヤにおいては転がり抵抗の低減が強く求められている。
【0086】
加硫温度を通常よりも低い温度に設定すると、過剰な加硫の進行を抑えることができ、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、長い加硫時間が設定されるため、タイヤの生産性が低下することが懸念される。
【0087】
低発熱性のゴムを採用すれば、生産性を維持しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。しかしこの場合、低発熱性が考慮されていないゴムが採用されたタイヤに比べて、耐摩耗性が低下することが懸念される。
【0088】
前述したように、このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに非貫通穴40が設けられる。このため、図4に示されるように、このタイヤ2のモールド44には、この非貫通穴40の形成のために、突起58が設けられる。
【0089】
前述したように、非貫通穴40は、ショルダーブロック38sの外側面からショルダー周方向溝24sに向かって延びるように構成される。モールド44からタイヤ2を取り出す際、ショルダーブロック38sから突起58を容易に引き抜くことができるよう、突起58はサイドプレート52に設けられる。
【0090】
このタイヤ2の製造では、生タイヤ2rをモールド44内で加圧及び加熱するとき、生タイヤ2rの、ショルダーブロック38sに対応する部分(以下、ショルダーブロック対応部分60)に、前述の突起58が差し込まれる。
【0091】
このタイヤ2の製造では、ショルダーブロック対応部分60に突起58が差し込まれるので、このショルダーブロック対応部分60はその内部からも加熱される。このタイヤ2の製造では、ショルダー陸部26sの形成に要する時間が短縮される。このタイヤ2の製造は、加硫時間の短縮を図ることができる。このタイヤ2は、生産性の向上に寄与する。
【0092】
前述したように、このタイヤ2では、大きなボリュームを有するショルダー陸部26sの形成に要する時間が短縮される。この時間の短縮は、熱が伝わりやすい、小さなボリュームを有する部分での、過剰な加硫の進行を抑える。過加硫による損失正接(tanδ)の増大が抑制されるので、このタイヤ2は、耐摩耗性に劣る低発熱性のゴムに依存せずとも、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0093】
図5には、ショルダー陸部26s、詳細には、ショルダーブロック38sの外側面が示される。この図5において、左右方向はタイヤ2の周方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図5の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の軸方向である。この図5において、点線SLはショルダー周方向溝24sの底を表す。
【0094】
前述したように、ショルダーブロック38sには複数の非貫通穴40が設けられる。このタイヤ2では、複数の非貫通穴40は第一非貫通穴62を含む。図5に示されるように、径方向において、第一非貫通穴62の外端62gと内端62nとの間に、ショルダー軸方向溝36sの底36bが位置する。言い換えれば、第一非貫通穴62の外端62gの部分とショルダー軸方向溝36sの底36bの部分とにおいて、第一非貫通穴62とショルダー軸方向溝36sとは重複する。
【0095】
トレッド4は路面と接触するので、タイヤが走行することにより、トレッド4は摩耗する。ショルダー陸部26sにおいては、ショルダーブロック38sが摩耗するので、ショルダー軸方向溝36sはやがて消失する。
【0096】
このタイヤ2では、径方向において、第一非貫通穴62はショルダー軸方向溝36sよりも内側に位置する。このため、ショルダーブロック38sが摩耗することで、第一非貫通穴62が露出する。露出した第一非貫通穴62が、ショルダー軸方向溝36sに代わって、エッジ成分として機能するので、このタイヤ2では、ショルダーブロック38sが摩耗し、ショルダー軸方向溝36sが消失しても、良好なトラクション性能が維持される。特に、このタイヤ2では、第一非貫通穴62の外端62gの部分とショルダー軸方向溝の底36bの部分とが重複するので、良好なトラクション性能の発揮が途切れることなく継続される。
【0097】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに複数の非貫通穴40が設けられるとともに、ショルダー陸部26sに刻んだ浅いショルダー軸方向溝36sの底36bが径方向において第一非貫通穴62の外端62gと内端62nとの間に配置される。このタイヤ2では、トレッド4が効果的に加熱される。このタイヤ2では、生産性の向上が図られるとともに、耐TGC性、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。
【0098】
図5において、両矢印SDは、ショルダー周方向溝24sの深さである。両矢印ADは、ショルダー軸方向溝36sの深さである。
【0099】
前述したように、ショルダー軸方向溝36sの深さADはショルダー周方向溝24sの深さSDよりも浅い。トラクション性能の向上にショルダー軸方向溝36sが効果的に貢献できる観点から、ショルダー軸方向溝36sの深さADの、ショルダー周方向溝24sの深さSDに対する比は、0.4以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。耐TGC性及び耐摩耗性の向上にショルダー軸方向溝36sが効果的に貢献できる観点から、この比は、0.7以下が好ましく、0.6以下がより好ましい。
【0100】
図5において、符号C1は第一非貫通穴62の中心である。ショルダーブロック38sの剛性が確保され、良好な耐摩耗性が適切に維持される観点から、径方向において、第一非貫通穴62の外端62gと中心C1との間に、ショルダー軸方向溝36sの底36bが位置するのが好ましい。
【0101】
図5において、両矢印K1は第一非貫通穴62の外端62gからショルダー軸方向溝36sの底36bまでの径方向距離である。この距離K1は、第一非貫通穴62とショルダー軸方向溝36sとの重複長さである。
【0102】
このタイヤ2では、良好なトラクション性能の発揮が途切れることなく継続される観点から、第一非貫通穴62とショルダー軸方向溝36sとの重複長さK1は0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。良好な耐摩耗性が適切に維持される観点から、この重複長さK1は1.5mm以下が好ましく、1.3mm以下がより好ましい。
【0103】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに設けた複数の非貫通穴40は、第二非貫通穴64を含むことができる。この場合、図5に示されるように、径方向において、第二非貫通穴64の外端64gと内端64nとの間に、第一非貫通穴62の内端62nが位置するように、この第二非貫通穴64は構成される。言い換えれば、第二非貫通穴64の外端64gの部分と第一非貫通穴62の内端62nの部分とにおいて、第二非貫通穴64と第一非貫通穴62とが重複するように、第二非貫通穴64は構成される。
【0104】
このタイヤ2では、径方向において、第二非貫通穴64が第一非貫通穴62よりも内側に位置するので、ショルダーブロック38sがさらに摩耗し、第一非貫通穴62が消失しても、第二非貫通穴64が露出し、この露出した第二非貫通穴64が、第一非貫通穴62に代わって、エッジ成分として機能する。このタイヤ2では、摩耗末期においても十分なトラクション性能が確保される。そして、第二非貫通穴64の外端64gの部分と第一非貫通穴62の内端62nの部分とが重複するので、このタイヤ2では、良好なトラクション性能の発揮が途切れることなく継続される。この観点から、このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに設けた複数の非貫通穴40は第二非貫通穴64を含み、この第二非貫通穴64の外端64gと内端64nとの間に、第一非貫通穴62の内端62nが位置するのが好ましい。
【0105】
図5において、符号C2は第二非貫通穴64の中心である。ショルダーブロック38sの剛性が確保され、良好な耐摩耗性が適切に維持される観点から、径方向において、第二非貫通穴64の外端64gと中心C2との間に、第一非貫通穴62の内端62nが位置するのがより好ましい。
【0106】
図5において、両矢印K2は第二非貫通穴64の外端64gから第一非貫通穴62の内端62nまでの径方向距離である。この距離K2は、第二非貫通穴64と第一非貫通穴62との重複長さである。
【0107】
このタイヤ2では、良好なトラクション性能の発揮が途切れることなく継続される観点から、第二非貫通穴64と第一非貫通穴62との重複長さK2は0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましい。良好な耐摩耗性が適切に維持される観点から、この重複長さK2は1.5mm以下が好ましく、1.3mm以下がより好ましい。
【0108】
図5に示されるように、このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに設けられる非貫通穴40の数は2である。このタイヤ2では、このショルダーブロック38sに、3以上の非貫通穴40が設けられてもよい。トレッド4を効果的に加熱でき、ショルダーブロック38sの剛性を適切に維持できる観点から、ショルダーブロック38sに設けられる非貫通穴40の数は2以上が好ましく、3以下が好ましい。
【0109】
このタイヤ2では、ショルダー陸部26sにおける第一非貫通穴62及び第二非貫通穴64の配置に特に制限はない。この配置によるタイヤ2のユニフォミティへの影響が効果的に抑えられる観点から、図5に示されるように、このタイヤ2では、第一非貫通穴62と第二非貫通穴64とは、周方向において、交互に並ぶのが好ましい。
【0110】
図5において、両矢印Daはショルダーブロック38sの一方の縁から第一非貫通穴62の中心C1までの周方向距離である。両矢印Dbは、第一非貫通穴62の中心C1から第二非貫通穴64の中心C2までの周方向距離である。両矢印Dcは、第二非貫通穴64の中心C2からショルダーブロック38sの他方の縁までの周方向距離である。距離Da、距離Db及び距離Dcはトレッド面22に沿って計測される。
【0111】
このタイヤ2では、トレッド4を効果的に加熱でき、ショルダーブロック38sの剛性を適切に維持できる観点から、ショルダーブロック38sの一方の縁から第一非貫通穴62の中心C1までの周方向距離Da、第一非貫通穴62の中心C1から第二非貫通穴64の中心C2までの周方向距離Db、及び、第二非貫通穴64の中心C2からショルダーブロック38sの他方の縁までの周方向距離Dcは、同等であるのが好ましい。言い換えれば、非貫通穴40の中心に対応するトレッド面22上の位置が周方向において等間隔になるように、複数の非貫通穴40がショルダーブロック38sに配置されるのが好ましい。
【0112】
このタイヤ2では、ショルダーブロック38sに設けられる、非貫通穴40の形状に、特に制限はない。図5に示されるように、非貫通穴40の形状は長円形(トラック状の形状)であってもよい。図示されないが、この非貫通穴40の形状は楕円形であってもよい。図6に示されるように、この非貫通穴40の形状は円形であってもよい。非貫通穴40による、ショルダーブロック38sの剛性への影響を効果的に抑えつつ、非貫通穴40がトラクション性能の発揮に貢献できる観点から、この非貫通穴40の形状としては、径方向に長い、長円形又は楕円形が好ましい。トラクション性能の変動が効果的に抑えられる観点から、この非貫通穴40の形状としては、図5に示されるように、径方向に長い長円形がより好ましい。
【0113】
図5において、両矢印R1は第一非貫通穴62の径方向幅である。両矢印P1は、この第一非貫通穴62の周方向幅である。この径方向幅R1は、中心C1を通り径方向に延びる直線に沿って計測される。周方向幅P1は、中心C1を通り、この中心C1における向きが周方向である直線に沿って計測される。
【0114】
図5に示されるように、このタイヤ2では、第一非貫通穴62の径方向幅R1はこの第一非貫通穴62の周方向幅P1よりも広い。径方向に長い第一非貫通穴62は、ショルダーブロック38sの剛性確保に貢献できるとともに、トラクション性能の継続した発揮に貢献できる。この観点から、第一非貫通穴62の径方向幅R1の、この第一非貫通穴62の周方向幅P1に対する比は、1.5以上が好ましい。トレッド4が効果的に加熱されるとともに、第一非貫通穴62がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、この比は3.0以下が好ましい。
【0115】
このタイヤ2では、第一非貫通穴62がトラクション性能の継続した発揮に貢献できる観点から、第一非貫通穴62の径方向幅R1は2.0mm以上が好ましい。良好な耐摩耗性が得られるとの観点から、この幅R1は6.0mm以下が好ましい。
【0116】
図5において、両矢印R2は第二非貫通穴64の径方向幅である。両矢印P2は、この第二非貫通穴64の周方向幅である。この径方向幅R2は、中心C2を通り径方向に延びる直線に沿って計測される。周方向幅P2は、中心C2を通り、この中心C2における向きが周方向である直線に沿って計測される。
【0117】
図5に示されるように、このタイヤ2では、第二非貫通穴64の径方向幅R2はこの第二非貫通穴64の周方向幅P2よりも広い。径方向に長い第二非貫通穴64は、ショルダーブロック38sの剛性確保に貢献できるとともに、トラクション性能の継続した発揮に貢献できる。この観点から、第二非貫通穴64の径方向幅R2の、この第二非貫通穴64の周方向幅P2に対する比は、1.5以上が好ましい。トレッド4が効果的に加熱されるとともに、第二非貫通穴64がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、この比は3.0以下が好ましい。
【0118】
このタイヤ2では、第二非貫通穴64がトラクション性能の継続した発揮に貢献できる観点から、第二非貫通穴64の径方向幅R2は2.0mm以上が好ましい。良好な耐摩耗性が得られるとの観点から、この幅R2は6.0mm以下が好ましい。
【0119】
図2及び3に示されるように、このタイヤ2では、第二非貫通穴64の底は、軸方向において第一非貫通穴62の底よりも内側に位置する。言い換えれば、第二非貫通穴64の長さは、第一非貫通穴62の長さよりも長い。図示されないが、このタイヤ2では、第二非貫通穴64の底の位置が、軸方向において第一非貫通穴62の底の位置と一致していてもよい。図7に示されるように、第二非貫通穴64の底が、軸方向において第一非貫通穴62の底よりも外側に位置してもよい。言い換えれば、第二非貫通穴64の長さが、第一非貫通穴62の長さよりも短くてもよい。
【0120】
タイヤ2の製造において、ショルダーブロック38sが効果的に加熱され、このショルダーブロック38sの剛性が適切に確保できる観点から、このタイヤ2では、第二非貫通穴64の底は、軸方向において第一非貫通穴62の底よりも内側に位置する、又は、この第二非貫通穴64の底が、軸方向において第一非貫通穴62の底よりも外側に位置するのが好ましい。良好な耐摩耗性及びトラクション性能が得られる観点から、このタイヤ2では、第二非貫通穴64の底は、軸方向において第一非貫通穴62の底よりも内側に位置するのがより好ましい。
【0121】
図3において、符号B1は、第一非貫通穴62の底を通る基準線BLの法線と、この基準線BLとの交点である。この交点B1は、基準線BLにおける第一非貫通穴62の底に対応する位置である。符号B2は、第二非貫通穴64の底を通る基準線BLの法線と、この基準線BLとの交点である。この交点B2は、基準線BLにおける第二非貫通穴64の底に対応する位置である。両矢印W1は、ショルダーブロック38sの外面における、軸方向外端、すなわち、トレッド面22の端PEから、第一非貫通穴62の底に対応する位置B1までの距離である。このタイヤ2では、この距離W1が、第一非貫通穴62の長さである。両矢印W2は、トレッド面22の端PEから第二非貫通穴64の底に対応する位置B2までの距離である。このタイヤ2では、この距離W2が、第二非貫通穴64の長さである。第一非貫通穴62の長さW1及び第二非貫通長さW2は、基準線BLに沿って計測される。
【0122】
両矢印WBは、ショルダーブロック38sの外面における、軸方向外端、すなわち、トレッド面22の端PEから、軸方向内端までの距離である。この距離WBは、基準線BLに沿って計測される、ショルダーブロック38sの幅である。図2に示されるように、このタイヤ2では、ショルダーブロックの幅は周方向において変化する。このタイヤ2では、ショルダーブロック38sの最小幅が、ショルダーブロック38sの幅WBとして用いられる。
【0123】
タイヤ2の製造においてショルダーブロック38sが効果的に加熱され、タイヤ2において良好なトラクション性能が得られる観点から、第一非貫通穴62の長さW1の、ショルダーブロック38sの幅WBに対する比は0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。ショルダーブロック38sの剛性が確保され、良好な耐摩耗性が得られる観点から、この比は0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましい。
【0124】
タイヤ2の製造においてショルダーブロック38sが効果的に加熱され、摩耗末期において良好なトラクション性能が得られる観点から、第二非貫通穴64の長さW2の、ショルダーブロック38sの幅WBに対する比は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。タイヤ2の製造において、第二非貫通穴64を形成するための突起58がショルダー周方向溝を形成するための凸条66との干渉が防止できるとともに、タイヤ2においてショルダーブロック38sの剛性が確保できる観点から、この比は0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
【0125】
以上の説明から明らかなように、本発明の重荷重用空気入りタイヤ2では、トレッドが効果的に加熱される。このタイヤ2では、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。
【0126】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【実施例
【0127】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
[実施例1]
図1-3及び5に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=295/80R22.5)が実施例1のタイヤとして準備される。
【0129】
この実施例1では、ショルダー軸方向溝の深さADの、ショルダー周方向溝の深さSDに対する比(AD/SD)は0.5である。第一非貫通穴とショルダー軸方向溝との重複長さは1.0mmであり、第二非貫通穴と第一非貫通穴との重複長さK2は1.0mmである。非貫通穴の形状は長円形であり、第一非貫通穴の径方向幅R1の、この第一非貫通穴の周方向幅P1に対する比(R1/P1)、及び、第二非貫通穴の径方向幅R2の、この第二非貫通穴の周方向幅P2に対する比(R2/P2)は3.0である。第一非貫通穴の長さW1の、ショルダーブロックの幅WBに対する比(W1/WB)は0.4であり、第二非貫通穴の長さW2の、ショルダーブロックの幅WBに対する比(W2/WB)は0.9である。
【0130】
[比較例1-2]
この比較例1-2では、ショルダーブロックに非貫通穴は設けられない。比較例1-2は、従来のタイヤである。比較例1の比(AD/SD)は0.8であり、比較例2の比(AD/SD)は0.5である。
【0131】
[実施例2及び比較例3]
重複長さK1及び重複長さK2を下記の表1に示される通りにする他は実施例1と同様にして、実施例2及び比較例3のタイヤが準備される。
【0132】
[実施例3-5]
第一非貫通穴の周方向幅P1及び第二非貫通穴の周方向幅P2を変えて、比(R1/P1)及び比(R2/P2)を下記の表2に示される通りにする他は実施例1と同様にして、実施例3-5のタイヤが準備される。
【0133】
[実施例6-8]
比(W1/WB)及び比(W2/WB)を下記の表2に示される通りにする他は実施例1と同様にして、実施例6-8のタイヤが準備される。
【0134】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、各試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)が測定される。この結果が、指数で、下記の表1及び表2に示される。数値が大きいほど、転がり抵抗が小さく優れる。
リム:8.25×22.5
内圧:900kPa
縦荷重:28.76kN
【0135】
[生産性]
各試作タイヤについて、生タイヤの加硫に要した時間(すなわち、加硫時間)が測定される。この結果が、指数で、下記の表1及び表2に示される。数値が大きいほど、加硫時間は短く生産性に優れる。
【0136】
[耐TGC性及び耐摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×8.25)に組み込み空気を充填し、タイヤの内圧が850kPaに調整される。このタイヤが、試験車両(10t積みトラック)のフロント軸又はドライブ軸に装着される。荷台全体に標準積載量の80%の荷物を積載した状態で、一般道路においてこの試験車両が走行される。走行後、ショルダー軸方向溝の底におけるTGCの発生状況と、ヒールアンドトゥ摩耗の発生状況とが確認される。この結果が、指数で、下記の表1及び表2に示される。耐TGC性については、数値が大きいほど、TGCの発生が抑えられ耐TGC性に優れることを表す。耐摩耗性については、数値が大きいほど、ヒールアンドトゥ摩耗の発生が抑えられ耐摩耗性に優れることを表す。
【0137】
[トラクション]
75%摩耗させた試作タイヤをリム(サイズ=22.5×8.25)に組み込み空気を充填し、タイヤの内圧が850kPaに調整される。このタイヤが、試験車両(10t積みトラック)の全輪に装着される。この試験車両を、厚さ5mmの水膜を有するウェットアスファルト路面に持ち込み、変速ギアを2速、エンジン回転数を1500rpmにそれぞれ固定してクラッチを繋いだ瞬間から10m通過するまでの時間が測定され、この通過時間の逆数が得られる。この結果が、指数で、下記の表1及び表2に示される。数値が大きいほど、摩耗末期におけるトラクション性能に優れる。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
表1及び2に示されるように、実施例では、生産性の向上が図られるとともに、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とが達成される。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上説明された生産性の向上を図りつつ、耐TGC性、耐摩耗性及びトラクション性能の向上と、転がり抵抗の低減とを達成させる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0142】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
22・・・トレッド面
24、24s、24c・・・周方向溝
26、26s、26c、26m・・・陸部
36、36c、36c、36m・・・軸方向溝
36b・・・ショルダー軸方向溝36sの底
38s・・・ショルダーブロック
40・・・非貫通穴
62・・・第一非貫通穴
62g・・・第一非貫通穴62の外端
62n・・・第一非貫通穴62の内端
64・・・第二非貫通穴
64g・・・第二非貫通穴64の外端
64n・・・第二非貫通穴64の内端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7