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特許7400393インク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】インク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231212BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B41J2/165 301
B41J2/165 401
B41J2/165 307
B41J2/01 129
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019211923
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021084226
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽平
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154123(JP,A)
【文献】特開2012-051137(JP,A)
【文献】特開2014-083713(JP,A)
【文献】特開2017-013240(JP,A)
【文献】特開2016-155354(JP,A)
【文献】特開2003-231265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を含浸可能なクリーニング部材を有し、前記洗浄液を含浸した前記クリーニング部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面のクリーニングを行うクリーニング部と、
前記インク吐出面の各位置に対する前記クリーニング部材の当接時間が、所定の基準時点から前記クリーニングの開始までの経過時間の増大に応じて長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる制御部と、
前記インク吐出ヘッドの周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部と、
を備え
前記制御部は、前記オゾン濃度検出部による検出濃度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせるインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項2】
前記基準時点は、最後に行われた前記クリーニングが終了した時点である、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項3】
前記基準時点は、最後に行われた前記クリーニングの終了後に最初に前記インク吐出ヘッドの前記インク吐出面からインクが吐出された時点である、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項4】
前記クリーニングは、前記クリーニング部材により前記インク吐出面を払拭する工程を含み、
前記制御部は、前記経過時間の増大に応じて前記クリーニング部材による払拭の速度が遅くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項5】
前記クリーニングは、前記クリーニング部材を前記インク吐出面に当接させた状態で所定時間静止させる工程を含み、
前記所定時間は、前記経過時間の増大に応じて長くなるように定められている、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項6】
前記クリーニングは、前記クリーニング部材を前記所定時間静止させた後に、前記クリーニング部材により前記インク吐出面を払拭する工程を含む、請求項5に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項7】
前記インク吐出面の温度、又は当該温度と対応する温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部による検出温度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項8】
前記経過時間の増大に応じて前記クリーニング部材の温度が高くなるように前記クリーニング部材を加熱する加熱部を有し、
前記クリーニング部は、前記加熱部により加熱された前記クリーニング部材により前記クリーニングを行う、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項9】
前記クリーニング部材は布帛であり、
前記クリーニング部は、弾性部材を有し、前記布帛が前記弾性部材により前記インク吐出面に押し付けられた状態で前記クリーニングを行う、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項10】
前記クリーニング部材はスポンジである、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項11】
前記クリーニング部材は、帯状の布帛であり、
前記クリーニング部は、前記クリーニングにおいて、前記布帛を所定のクリーニング部材供給部から引き出して前記インク吐出面に当接させ、前記布帛のうち前記インク吐出面に当接した部分を順次所定のクリーニング部材排出部に排出させる、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項12】
前記クリーニング部は、弾性部材を有し、前記布帛が前記弾性部材により前記インク吐出面に押し付けられた状態で前記クリーニングを行う、請求項11に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項13】
前記クリーニング部は、前記クリーニング部材に前記洗浄液を供給する洗浄液供給部を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記経過時間の増大に応じて供給量が多くなるように洗浄液供給部により前記クリーニング部材に対して前記洗浄液を供給させる、請求項13に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項15】
前記洗浄液は、前記インク吐出ヘッドから吐出されるインクに含まれる溶媒と同一の液体である、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項16】
前記インク吐出ヘッドは、紫外線により硬化するインクを前記インク吐出面から吐出し、
前記クリーニング部は、前記クリーニングにおいて、前記インク吐出面に付着した前記インクを除去する、請求項1~15のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置。
【請求項17】
インク吐出面を有するインク吐出ヘッドと、
請求項1~16のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置と、
を備える、インクジェット記録装置。
【請求項18】
洗浄液を含浸可能なクリーニング部材を有し、前記洗浄液を含浸した前記クリーニング部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面のクリーニングを行うクリーニング部と、前記インク吐出ヘッドの周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部と、を備えたメンテナンス装置によるインク吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記インク吐出面の各位置に対する前記クリーニング部材の当接時間が、所定の基準時点から前記クリーニングの開始までの経過時間の増大に応じて長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせるステップを含
前記ステップにおいて、前記オゾン濃度検出部による検出濃度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる、インク吐出ヘッドのメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク吐出ヘッドのノズルからインクを吐出して記録媒体の所望の位置に着弾させることで画像を記録するインクジェット記録装置がある。インク吐出ヘッドのインク吐出面(ノズルの開口部が形成されたノズル開口面)にインクが付着すると、付着したインクがノズルの開口部の一部を塞いだ状態で固化してインクの吐出不良が生じる。このため、インクジェット記録装置では、洗浄液を含浸させたクリーニング部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面をクリーニングするメンテナンス方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-24625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インク吐出面に付着したインクは、時間が経過するに従って増粘し、クリーニング部材による通常の払拭では除去しにくくなっていく。このように増粘したインクを除去するために、クリーニング部材をインク吐出面に当接させる圧力を増大させると、クリーニング部材の擦過によりインク吐出面が損傷しやすくなる。他方で、クリーニング部材による払拭回数を増大させると、メンテナンスに要する時間が長くなる。
このように、上記従来の技術では、増粘したインクが付着したインク吐出面を短時間で効果的にクリーニングすることが困難であるという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、インク吐出面をより短時間で効果的にクリーニングすることができるインク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置の発明は、
洗浄液を含浸可能なクリーニング部材を有し、前記洗浄液を含浸した前記クリーニング部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面のクリーニングを行うクリーニング部と、
前記インク吐出面の各位置に対する前記クリーニング部材の当接時間が、所定の基準時点から前記クリーニングの開始までの経過時間の増大に応じて長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる制御部と、
前記インク吐出ヘッドの周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部と、
を備え
前記制御部は、前記オゾン濃度検出部による検出濃度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記基準時点は、最後に行われた前記クリーニングが終了した時点である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記基準時点は、最後に行われた前記クリーニングの終了後に最初に前記インク吐出ヘッドの前記インク吐出面からインクが吐出された時点である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニングは、前記クリーニング部材により前記インク吐出面を払拭する工程を含み、
前記制御部は、前記経過時間の増大に応じて前記クリーニング部材による払拭の速度が遅くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニングは、前記クリーニング部材を前記インク吐出面に当接させた状態で所定時間静止させる工程を含み、
前記所定時間は、前記経過時間の増大に応じて長くなるように定められている。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニングは、前記クリーニング部材を前記所定時間静止させた後に、前記クリーニング部材により前記インク吐出面を払拭する工程を含む。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記インク吐出面の温度、又は当該温度と対応する温度を検出する温度検出部を備え、
前記制御部は、前記温度検出部による検出温度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記経過時間の増大に応じて前記クリーニング部材の温度が高くなるように前記クリーニング部材を加熱する加熱部を有し、
前記クリーニング部は、前記加熱部により加熱された前記クリーニング部材により前記クリーニングを行う。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニング部材は布帛であり、
前記クリーニング部は、弾性部材を有し、前記布帛が前記弾性部材により前記インク吐出面に押し付けられた状態で前記クリーニングを行う。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニング部材はスポンジである。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1~のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニング部材は、帯状の布帛であり、
前記クリーニング部は、前記クリーニングにおいて、前記布帛を所定のクリーニング部材供給部から引き出して前記インク吐出面に当接させ、前記布帛のうち前記インク吐出面に当接した部分を順次所定のクリーニング部材排出部に排出させる。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニング部は、弾性部材を有し、前記布帛が前記弾性部材により前記インク吐出面に押し付けられた状態で前記クリーニングを行う。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項1~12のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記クリーニング部は、前記クリーニング部材に前記洗浄液を供給する洗浄液供給部を備える。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記制御部は、前記経過時間の増大に応じて供給量が多くなるように洗浄液供給部により前記クリーニング部材に対して前記洗浄液を供給させる。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記洗浄液は、前記インク吐出ヘッドから吐出されるインクに含まれる溶媒と同一の液体である。
【0022】
請求項16に記載の発明は、請求項1~15のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置において、
前記インク吐出ヘッドは、紫外線により硬化するインクを前記インク吐出面から吐出し、
前記クリーニング部は、前記クリーニングにおいて、前記インク吐出面に付着した前記インクを除去する。
【0023】
また、上記目的を達成するため、請求項17に記載のインクジェット記録装置の発明は、
インク吐出面を有するインク吐出ヘッドと、
請求項1~16のいずれか一項に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置と、
を備える。
【0024】
また、上記目的を達成するため、請求項18に記載のインク吐出ヘッドのメンテナンス方法の発明は、
洗浄液を含浸可能なクリーニング部材を有し、前記洗浄液を含浸した前記クリーニング部材によりインク吐出ヘッドのインク吐出面のクリーニングを行うクリーニング部と、前記インク吐出ヘッドの周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部と、を備えたメンテナンス装置によるインク吐出ヘッドのメンテナンス方法であって、
前記インク吐出面の各位置に対する前記クリーニング部材の当接時間が、所定の基準時点から前記クリーニングの開始までの経過時間の増大に応じて長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせるステップを含
前記ステップにおいて、前記オゾン濃度検出部による検出濃度が高いほど前記当接時間が長くなるように前記クリーニング部により前記クリーニングを行わせる
【発明の効果】
【0025】
本発明に従うと、インク吐出面をより短時間で効果的にクリーニングすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
図2】ヘッドユニットの構成を示す模式図である。
図3】ヘッドユニットをX方向に移動させている様子を示す図である。
図4】ヘッドユニットのX方向の移動可能位置を示す図である。
図5】クリーニング部の構成及びクリーニング部によるクリーニングを説明する図である。
図6】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】払拭速度制御を行う場合のメンテナンス処理の制御手順を示すフローチャートである。
図8】払拭速度設定テーブルの内容例を示す図である。
図9】静止時間制御を行う場合のメンテナンス処理の制御手順を示すフローチャートである。
図10】静止時間設定テーブルの内容例を示す図である。
図11】変形例1に係るクリーニング部の構成及びクリーニング部によるクリーニングを説明する図である。
図12】変形例1に係るクリーニング部の拡大図である。
図13】クリーニング部によるクリーニングの他の例を示す図である。
図14】クリーニング部によるクリーニングの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のインク吐出ヘッドのメンテナンス装置、インクジェット記録装置及びインク吐出ヘッドのメンテナンス方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、クリーニング部40(図4図5参照)と、制御部50(図6参照)などを備える。インクジェット記録装置1は、制御部50による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Mを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Mに画像を記録し、画像が記録された記録媒体Mを排紙部30に搬送する。記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0029】
給紙部10は、記録媒体Mを格納する給紙トレー11と、給紙トレー11から画像形成部20に記録媒体Mを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Mを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Mを給紙トレー11から画像形成部20へ搬送する。
【0030】
画像形成部20は、搬送ドラム21と、受け渡しユニット22と、記録媒体加熱部23と、ヘッドユニット24と、定着部25と、デリバリー部26などを有する。
【0031】
搬送ドラム21は、円柱面状の外周面である搬送面21a上に記録媒体Mを保持した状態で図1の図面に垂直なX方向に延びた回転軸の周りで回転することで記録媒体Mを搬送面21aに沿った搬送方向に搬送する。搬送ドラム21は、搬送面21a上で記録媒体Mを保持するための爪部211(図3参照)及び吸気部212(図3参照)を備える。記録媒体Mは、爪部211により端部が押さえられ、かつ吸気部212により搬送面21aに吸い寄せられることで搬送面21aに保持される。
搬送ドラム21は、搬送ドラム21を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターに接続されており、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0032】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Mを搬送ドラム21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Mの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送ドラム21に引き渡す。
【0033】
記録媒体加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Mが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Mを加熱する。記録媒体加熱部23は、例えば、赤外線ヒーターを有し、制御部50から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電してヒーターを発熱させる。
【0034】
ヘッドユニット24は、記録媒体Mが保持された搬送ドラム21の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム21の搬送面21aに対向するインク吐出面(後述するインク吐出ヘッド241のインク吐出面241a(図2参照))から記録媒体Mに対してインクを吐出する記録動作を行うことにより画像を記録する。ヘッドユニット24は、インク吐出面241aと搬送面とが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Mの搬送方向上流側からY,M,C,Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0035】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す模式図であり、ヘッドユニット24を搬送ドラム21の搬送面21aに相対する側から見た平面図である。
ヘッドユニット24は、板状の支持部24aと、支持部24aに設けられた貫通孔に篏合した状態で支持部24aに固定された複数の(ここでは8つの)インク吐出ヘッド241とを有する。インク吐出ヘッド241は、ノズルNの開口部が設けられたインク吐出面241aが支持部24aの貫通孔から搬送面21a側に向けて露出した状態で支持部24aに固定されている。
【0036】
インク吐出ヘッド241では、複数のノズルNがX方向に等間隔にそれぞれ配列されている。本実施形態では、各インク吐出ヘッド241は、X方向に等間隔に一次元配列されたノズルNの列(ノズル列)を4つ有している。これらの4つのノズル列は、ノズルNのX方向についての位置が重ならないようにX方向の位置が互いにずらされて配置されている。なお、インク吐出ヘッド241が有するノズル列の数は4つに限られず、3つ以下又は5つ以上であってもよい。
【0037】
ヘッドユニット24における8つのインク吐出ヘッド241は、ノズルNのX方向についての配置範囲が連続するように千鳥格子状に配置されている。ヘッドユニット24に含まれるノズルNのX方向についての配置範囲は、記録媒体Mのうち画像が記録可能な領域のX方向の幅をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像の形成時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向についての所定間隔の各位置に対してノズルNからインクを吐出することで、シングルパス方式で画像を形成する。各ノズルNからインクを吐出させるためのインク吐出機構は、圧電素子を用いたピエゾ式のものであってもよいし、インクを加熱して噴出させるサーマル式のものであってもよい。
【0038】
ヘッドユニット24のノズルNから吐出されるインクとしては、ゲル状とゾル状との間で相変化するインクが用いられる。ここで、ゲルは固体に含まれ、ゾルは液体に含まれる。ヘッドユニット24は、このような特性のインクを液化温度以上に加熱してゾル状とするための図示略のインク加熱部を内部に有する。ヘッドユニット24は、加熱によりゲル状となったインクをノズルNから吐出し、記録媒体M上に着弾したインクは、冷却されることで速やかにゲル状となって記録媒体M上で凝固する。ただし、これに限られず、記録媒体Mに着弾後にゲル状に相変化しない、通常の液体のインクを用いてもよい。
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化する性質を有するインク(紫外線硬化型インク)が用いられる。このインクとしては、光重合性化合物(モノマー)、光重合開始剤、ゲル化剤及び着色剤を含むものが用いられる。このうち光重合性化合物は、紫外線が照射されることにより重合反応が進行して高分子化する化合物である。この高分子化により、インクが硬化する。光重合開始剤は、上記重合反応を開始させるための化合物である。ゲル化剤は、インクが加熱されてゾル化温度以上になるとインク中に溶解してインクをゾル化させ、インクが冷却されてゲル化温度以下になると架橋構造を形成したり繊維状会合体を形成したりすることによりインクをゲル化させる性質を有する化合物である。また、着色剤は、当該インクに係る色の顔料又は染料を含む。
【0039】
ヘッドユニット24は、それぞれX方向に沿って個別に移動可能に設けられている。
図3は、ヘッドユニット24をX方向に移動させている様子を示す図である。
また、図4は、ヘッドユニット24のX方向の移動可能位置を示す図である。
ヘッドユニット24は、ヘッドユニット移動部62(図6参照)により駆動されることで、図3及び図4に示すように、記録位置及びクリーニング位置の間でX方向に移動することができる。
【0040】
このうち記録位置は、インク吐出ヘッド241のインク吐出面241aが搬送ドラム21の搬送面21aに対向する位置であり、搬送面21a上の記録媒体Mに対してインクを吐出して画像を記録する場合の位置である。
また、クリーニング位置は、インク吐出ヘッド241のインク吐出面241aをクリーニングする場合にヘッドユニット24が移動する位置である。クリーニング位置では、インク吐出ヘッド241のインク吐出面241aがクリーニング部40と対向するようになっている。
【0041】
クリーニング部40は、クリーニング対象のヘッドユニット24に応じて、クリーニング部移動部63(図6参照)によりX方向と垂直なY方向に移動可能であり、任意のヘッドユニット24のインク吐出面241aに対向できるようになっている。なお、これに代えて、クリーニング部40を、4つのヘッドユニット24に対するクリーニングを同時に行える構成とし、クリーニング部40の位置を固定してもよい。
【0042】
なお、ヘッドユニット24は、記録位置及びクリーニング位置と異なる図示略の吐出メンテナンス位置にさらに移動可能とされていてもよい。この場合における吐出メンテナンス位置には、インク吐出ヘッド241のノズルNから吐出されたインクを捕集するインク受容部が設けられており、ノズルNからインク受容部に対してインクを吐出させる(吐き捨てさせる)吐出メンテナンスを行うことができる。この吐出メンテナンスを行うことで、ノズルNの内部に混入している空気や異物をノズルNから外部に排出させることができる。
【0043】
図5は、クリーニング部40の構成及びクリーニング部40によるクリーニングを説明する図である。
クリーニング部40は、基部42と、基部42に取り付けられたクリーニング部材41などを備える。クリーニング部40は、洗浄液を含浸したクリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させて、当該クリーニング部材41によりインク吐出面241aのクリーニング(本実施形態では、クリーニング部材41を動かすクリーニング動作)を行う。
【0044】
クリーニング部材41は、X方向についてヘッドユニット24におけるノズルNの配置範囲をカバーする長さを有し、インク吐出面241aに当接することでインク吐出面241aに付着したインクを吸収及び/又は除去する。クリーニング部材41は、ワイピング部材(払拭部材)とも呼ばれる。
【0045】
クリーニング部材41の材質は、洗浄液を含浸可能であり、インク吐出面241aを傷付けにくい柔軟なもの、例えばスポンジや布帛等を用いることができる。スポンジとしては、プラスチックポリマー等からなる連続気泡を有するもの、例えばポリウレタンなどを用いることができる。布帛を用いる場合には、ゴムやスポンジ等の弾性部材の外面に布帛を巻き付け、弾性部材により布帛をインク吐出面241aに押し付けた状態で使用してもよい。これにより、適度な弾性力で布帛をインク吐出面241aに押し付けた状態で払拭することができる。本実施形態では、クリーニング部材41としてスポンジが用いられている。
また、クリーニング部材41に含浸させる洗浄液としては、ヘッドユニット24から吐出されるインクに含まれる溶媒と同一の液体が用いられている。
【0046】
クリーニング部材41は、クリーニング部40が有するクリーニング部材駆動部43(図6参照)により駆動されてY方向に移動可能となっている。詳しくは、クリーニング部材41は、図5(a)に示すようにインク吐出面241aに所定の圧力で当接した状態から、-Y方向側(図5(b))及び+Y方向側(図5(c)に往復移動することができる。クリーニング部40は、このようにクリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させながら往復移動させることで、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭してクリーニングを行う。このクリーニングにおけるクリーニング部材41の往復回数は予め定められており、本実施形態では2往復である。
【0047】
クリーニング部材41をインク吐出面241aに所定の圧力で当接させる動作は、クリーニング部材駆動部43がクリーニング部材41を基部42に対してX方向及びY方向に垂直なZ方向(ここでは鉛直方向)に移動させる動作により実現してもよいし、クリーニング部移動部63がクリーニング部40の全体をZ方向に移動させる動作により実現してもよい。
クリーニング部40によるクリーニングの詳細については後述する。
【0048】
図1に戻り、定着部25は、搬送ドラム21の幅方向の幅に亘って配置された紫外線照射部を有し、搬送ドラム21に載置された記録媒体Mに対して紫外線照射部から紫外線を照射して記録媒体M上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25の紫外線照射部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部26の受け渡しドラム261の配置位置までの間において搬送面と対向して配置される。
【0049】
デリバリー部26は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ262と、記録媒体Mを搬送ドラム21からベルトループ262に受け渡す円筒状の受け渡しドラム261とを有し、受け渡しドラム261により搬送ドラム21からベルトループ262上に受け渡された記録媒体Mをベルトループ262により搬送して排紙部30に送出する。
【0050】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Mが載置される板状の排紙トレー31を有する。
【0051】
図6は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部50と、記録媒体加熱部23と、インク吐出ヘッド241及びヘッド駆動部242を有するヘッドユニット24と、定着部25と、クリーニング部材駆動部43、洗浄液供給部44、温度検出部45、オゾン濃度検出部46及びクリーニング部材加熱部47(加熱部)を有するクリーニング部40と、搬送駆動部61と、ヘッドユニット移動部62と、クリーニング部移動部63と、操作表示部64と、通信部65と、バス66などを備える。このうちクリーニング部40及び制御部50によりメンテナンス装置100が構成される。以下では、既に説明した構成については記載を省略する。
【0052】
制御部50は、メンテナンス装置100を含むインクジェット記録装置1の全体動作を統括制御するプロセッサーである。制御部50は、CPU51(Central Processing Unit)と、RAM52(Random Access Memory)と、ROM53(Read Only Memory)と、記憶部54などを備える。
【0053】
CPU51は、ROM53に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM52に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。
【0054】
RAM52は、CPU51に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM52は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0055】
ROM53は、CPU51により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM53に代えてフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0056】
記憶部54には、通信部65を介して外部装置から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データなどが記憶される。記憶部54としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0057】
ヘッド駆動部242は、制御部50から供給される制御信号及び画像データに基づいて、インク吐出ヘッド241の記録素子に対して適切なタイミングで圧電素子を変形動作させる駆動信号を供給することにより、インク吐出ヘッド241のノズルNから画像データの画素値に応じた量のインクを吐出させる。
【0058】
クリーニング部材駆動部43は、制御部50から供給される制御信号に基づいて、クリーニング部材41を所定方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力し、クリーニング部材41を移動させる。
【0059】
洗浄液供給部44は、クリーニング部材41に対して洗浄液を供給することで、クリーニング部材41に洗浄液を含浸させる。洗浄液供給部44の具体的な構成は特には限られないが、例えばクリーニング部材41と当接可能な外周面を有し、当該外周面に洗浄液を含浸する塗布ローラーとしてもよいし、クリーニング部材41に対して洗浄液の液滴を吐出するノズルを有するものとしてもよい。あるいは、クリーニング部材41の一部が浸漬する量の洗浄液を貯留する貯留部としてもよい。
【0060】
温度検出部45は、インク吐出面241aの温度、又は当該温度と対応する温度を検出し、検出結果を制御部50に出力する。温度検出部45は、ヘッドユニット24がクリーニング位置に移動したときにインク吐出面241aから所定の近傍範囲内となる位置、例えばインク吐出面241aと対向する位置に設けることができる。
【0061】
オゾン濃度検出部46は、インク吐出ヘッド241の周囲のオゾン濃度を検出し、検出結果を制御部50に出力する。
【0062】
クリーニング部材加熱部47は、クリーニング部材41を所定温度に加熱する。クリーニング部材加熱部47は、例えば基部42内に設けられた赤外線ヒーターを有し、制御部50から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電してヒーターを発熱させ、クリーニング部材41を加熱する。
【0063】
搬送駆動部61は、制御部50から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム21の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム21を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部61は、制御部50から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22、及びデリバリー部26を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Mの搬送ドラム21への供給及び搬送ドラム21からの排出を行わせる。
【0064】
ヘッドユニット移動部62は、制御部50から供給される制御信号に基づいて、ヘッドユニット24を幅方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力し、上述の記録位置、クリーニング位置及びインク捕集位置の間でヘッドユニット24を移動させる。
【0065】
クリーニング部移動部63は、制御部50から供給される制御信号に基づいて、クリーニング部40をY方向に移動させる移動機構のモーターやブレーキに駆動信号を出力し、クリーニングを行うヘッドユニット24の位置に合わせて、当該ヘッドユニット24に対向する位置にクリーニング部40を移動させる。
【0066】
操作表示部64は、制御部50からの制御信号に応じてインクジェット記録装置1のステータスや操作メニューなどの表示を行い、またユーザーの操作を受け付けて制御部50に出力する。操作表示部64は、例えば、操作受付手段としてのタッチセンサーが表示手段としての表示画面と重ねて設けられた液晶表示部を備える。
【0067】
通信部65は、外部機器との間での通信動作を制御する通信インターフェースである。通信インターフェースとしては、例えば、LANボードやLANカードなど、各種通信プロトコルに対応したものが一又は複数含まれる。通信部65は、制御部50の制御に基づいて外部機器から記録対象の画像データや画像記録に係る設定データ(ジョブデータ)を取得し、また、外部機器に対してステータス情報などを送信する。
【0068】
バス66は、上記の各構成間を電気的に接続して信号のやり取りを行う経路である。
【0069】
次に、インク吐出ヘッド241のメンテナンスを行う場合のメンテナンス装置100の動作について説明する。
【0070】
画像形成や吐出メンテナンスが行われてインク吐出ヘッド241のノズルNからインクが吐出されると、吐出されたインクの一部がインク吐出面241aに付着する場合がある。付着したインクがノズルNの開口部の一部を塞いだ状態で固化すると、ノズルNからのインクの吐出量や吐出方向に異常が生じ、インクの吐出不良に繋がる。このため、インクジェット記録装置1では、定期的に、又はユーザーからの指示に応じて、メンテナンス装置100によるインク吐出ヘッド241のメンテナンスが行われる。このメンテナンスでは、上述したクリーニング部40によるクリーニングが行われる。
【0071】
ここで、インク吐出面241aに付着したインクは、時間が経過するに従って増粘し、クリーニング部材41による通常の払拭では除去しにくくなっていく。このように増粘したインクを除去するために、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させる圧力を増大させると、クリーニング部材41の擦過によりインク吐出面241aが損傷しやすくなる。他方で、クリーニング部材41による払拭回数を増大させると、インク吐出ヘッド241のメンテナンスに要する時間が長くなる。
【0072】
そこで、本実施形態では、クリーニング部40は、クリーニングにおけるインク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が、所定の基準時点からクリーニングの開始までの経過時間Tの増大に応じて長くなるようにクリーニングを行う。
インク吐出面241aに対するクリーニング部材41の当接時間を長くするほど、クリーニング部材41に含浸されている洗浄液によって、インク吐出面241aに付着している増粘したインクが溶解して柔らかくなり、クリーニング部材41によりインクを除去しやすくなる。上記の経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の当接時間を長くすることで、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させることができ、効果的にインクを除去することが可能となる。
【0073】
本明細書において、「経過時間Tの増大に応じて当接時間が長くなるように」又は「経過時間Tが長いほど当接時間が長くなるように」とは、経過時間Tが長くなるに従って当接時間が単調非減少となる態様をいう。すなわち、経過時間Tが長くなるに従って当接時間が単調増加する態様の他、経過時間Tが長くなるに従って当接時間が段階的に増大する態様も含む。
【0074】
上記の基準時点は、インク吐出面241a上に付着したインクが増粘する期間が、基準時点からクリーニングの開始までの期間に含まれるように定められる。例えば、基準時点は、最後に行われたクリーニングが終了した時点とすることができる。また、クリーニングの直後にインク吐出が開始されない場合などでは、基準時点は、最後に行われたクリーニングの終了後に最初にインク吐出ヘッド241のインク吐出面241aからインクが吐出された時点とすることができる。
【0075】
基準時点からの経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の当接時間を長くする方法としては、(1)経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41による払拭の速度が遅くなるようにクリーニングを行う方法(以下では「払拭速度制御」とも記す)、(2)払拭開始前に、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で所定の静止時間(所定時間)だけ静止させ、この静止時間を経過時間Tの増大に応じて長くする方法(以下では「静止時間制御」とも記す)、及び(3)払拭速度制御及び静止時間制御を組み合わせた方法の3つがある。以下、これらの方法を順に説明する。
【0076】
(1)払拭速度制御
図7は、払拭速度制御を行う場合のメンテナンス処理の制御部50による制御手順を示すフローチャートである。
メンテナンス処理が開始されると、制御部50は、ヘッドユニット移動部62に制御信号を送出して、ヘッドユニット24をクリーニング位置に移動させる(ステップS101)。
【0077】
制御部50は、基準時点からの経過時間Tを特定し、特定した経過時間Tに基づいて、クリーニング部材41によるインク吐出面241aの払拭速度、すなわちクリーニング部材41の移動速度を設定する(ステップS102)。経過時間Tは、「所定の基準時点からクリーニングの開始までの経過時間」に含まれる。
ステップS102では、制御部50は、記憶部54に記憶されている払拭速度設定テーブルに基づいて払拭速度を設定する。
【0078】
図8は、払拭速度設定テーブルの内容例を示す図である。
払拭速度設定テーブルは、経過時間Tの長さの区分ごとに、クリーニング部材41の払拭速度が対応付けられて記憶されているデータである。図8の例では、経過時間Tが3時間未満である場合の払拭速度は80mm/secとされており、経過時間Tが3時間以上6時間未満である場合の払拭速度は30mm/secとされており、経過時間Tが6時間以上24時間未満である場合の払拭速度は10mm/secとされており、経過時間Tが24時間以上である場合の払拭速度は5mm/secとされている。
制御部50は、ステップS102では、基準時点からの経過時間Tを特定し、払拭速度設定テーブルを参照して経過時間Tに対応する払拭速度を特定し、当該払拭速度をクリーニング部材41の移動速度として設定する。
【0079】
制御部50は、クリーニング部材駆動部43に制御信号を送出して、ステップS102で設定した払拭速度で、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭させる(ステップS103)。ここでは、制御部50は、クリーニング部材41がインク吐出面241a上を所定回数往復するように(本実施形態では2往復するように)、クリーニング部材駆動部43を制御する。インク吐出面241aの払拭が終了すると、制御部50は、クリーニング部材41をインク吐出面241aから離間させる。
【0080】
制御部50は、ヘッドユニット移動部62に制御信号を送出して、ヘッドユニット24を記録位置に移動させる(ステップS104)。
【0081】
制御部50は、クリーニング部40のクリーニングが終了すると、基準時点を新たに設定し、当該基準時点からの経過時間Tのカウントを開始する(ステップS105)。
この後、別のヘッドユニット24に搭載されているインク吐出ヘッド241のメンテナンスを行う場合には、当該ヘッドユニット24に対してステップS101~S105の処理が実行される。
【0082】
このように払拭速度制御を行うメンテナンス処理によれば、経過時間Tが長いほど払拭速度が遅くなり、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が長くなる。よって、経過時間Tが長く、インクの増粘が進んでいる場合には、当接時間を長くしてインクを十分に溶解しつつ、所定の払拭回数でインクを除去することができる。また、経過時間Tが短くインクの増粘があまり進んでいない場合には、所定の払拭回数でインクを除去できる範囲で払拭速度を大きくして、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
【0083】
(2)静止時間制御
静止時間制御を行う場合には、払拭開始前に、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で所定時間静止させ、その後、クリーニング部材41による払拭を開始させる。この場合におけるクリーニングは、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させて静止させる工程と、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭する工程とを含む。
【0084】
図9は、静止時間制御を行う場合のメンテナンス処理の制御部50による制御手順を示すフローチャートである。図9のフローチャートは、図7のフローチャートのステップS102を削除してステップS106~S108を追加したものに相当する。以下では、図7のフローチャートとの相違点について説明する。
【0085】
図9のフローチャートでは、ステップS101の処理が終了すると、制御部50は、基準時点からの経過時間Tに基づいて、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で静止させる静止時間を設定する(ステップS106)。ここでは、制御部50は、記憶部54に記憶されている静止時間設定テーブルに基づいて静止時間を設定する。
【0086】
図10は、静止時間設定テーブルの内容例を示す図である。
静止時間設定テーブルは、経過時間Tの長さの区分ごとに静止時間が対応付けられて記憶されているデータである。図10の例では、経過時間Tが3時間未満である場合の静止時間は0secとされており、経過時間Tが3時間以上6時間未満である場合の静止時間は3secとされており、経過時間Tが6時間以上24時間未満である場合の静止時間は6secとされており、経過時間Tが24時間以上である場合の静止時間は10secとされている。
制御部50は、基準時点からの経過時間Tを取得し、静止時間設定テーブルを参照して経過時間Tに対応する静止時間を特定して設定する。
【0087】
制御部50は、クリーニング部材駆動部43に制御信号を送出して、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させて静止させ(ステップS107)、当接開始後、ステップS106で設定した静止時間が経過したか否かを判別する(ステップS108)。設定した静止時間が経過していないと判別された場合には(ステップS108で“NO”)、制御部50は、再度ステップS108の処理を実行する。
【0088】
設定した静止時間が経過したと判別された場合には(ステップS108で“YES”)、制御部50は、クリーニング部材駆動部43に制御信号を送出して、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを所定の払拭速度で払拭させる(ステップS103)。ここでは、制御部50は、クリーニング部材41がインク吐出面241a上を所定回数往復するように(本実施形態では2往復するように)、クリーニング部材駆動部43を制御する。
【0089】
このような静止時間制御を行うメンテナンス処理によれば、経過時間Tが長いほど、払拭開始前にクリーニング部材41がインク吐出面241aに当接した状態で長く静止する。よって、経過時間Tが長く、インクの増粘が進んでいる場合には、静止時間を長くして、所定の払拭回数でインクを除去できるようにインクを十分に溶解させることができる。また、経過時間Tが短くインクの増粘があまり進んでいない場合には、所定の払拭回数でインクを除去できる範囲で静止時間を短くして、クリーニング全体に要する時間を短縮することができる。
【0090】
(3)払拭速度制御及び静止時間制御の組み合わせ
払拭速度制御及び静止時間制御を組み合わせてもよい。すなわち、まず払拭開始前にクリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で、経過時間Tに応じた静止時間だけ静止させた後、経過時間Tに応じた払拭速度でクリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭してもよい。
【0091】
この場合には、図9のステップS106の処理において、図7のステップS102の処理を併せて実行する。すなわち、経過時間Tに基づいて、静止時間及び払拭速度の双方を設定する。また、図9のステップS103の処理において、設定した払拭速度で払拭を行う。
【0092】
このように払拭速度制御及び静止時間制御を組み合わせることで、増粘したインクをより確実に溶解させ、より効果的にインク吐出面241aをクリーニングすることが可能となる。
【0093】
続いて上記実施形態の各種変形例について説明する。以下の各変形例では、上記実施形態との相違点について説明し、上記実施形態と共通する内容については説明を省略する。また、各変形例は、互いに組み合わされてもよい。
【0094】
(変形例1)
変形例1は、クリーニング部材41として、スポンジに代えて帯状の布帛を用いる点で上記実施形態と異なる。
図11は、変形例1に係るクリーニング部40の構成及びクリーニング部40によるクリーニングを説明する図である。
本変形例のクリーニング部40は、帯状の布帛からなるクリーニング部材41と、洗浄液供給部44と、巻き出しローラー48a(クリーニング部材供給部)と、巻き取りローラー48b(クリーニング部材排出部)と、弾性部材49などを備える。
【0095】
帯状の布帛からなるクリーニング部材41は、巻き出しローラー48aに予め巻き取られており、その先端が弾性部材49の上面を通されて巻き取りローラー48bに架け渡されている。この状態で、巻き取りローラー48bがクリーニング部材駆動部43により駆動されて回転することで、クリーニング部材41が巻き出しローラー48aから引き出され、弾性部材49の上面を通ってインク吐出面241aに当接した部分が順次巻き取りローラー48bに巻き取られて排出される。これにより、クリーニング部材41のうち未使用の部分が順次引き出されてインク吐出面241aの払拭に用いられるため、効果的にインク吐出面241aのインクを除去することができる。
【0096】
巻き出しローラー48aと弾性部材49との間には、クリーニング部材41に当接して回転するローラー状の洗浄液供給部44が設けられている。洗浄液供給部44は、洗浄液を含浸するスポンジ状の外周面を有しており、クリーニング部材41の表面に当接しながら回転することで、クリーニング部材41の表面に洗浄液を供給する。
【0097】
弾性部材49は、ゴム又はスポンジなどからなり、クリーニング部材41を+Z方向に押圧して、所定の圧力でインク吐出面241aに押し当てて当接させる。また、弾性部材49のうち少なくとも上面(インク吐出面241aと対向する面)には、樹脂フィルム491が貼り付けられている。樹脂フィルム491としては、クリーニング部材41を構成する布帛との摩擦係数が小さいものが用いられる。これにより、弾性部材49上でクリーニング部材41を円滑に摺動させることができる。クリーニング部材41は、弾性部材49によりインク吐出面241aに押し付けられた状態でインク吐出面241aを払拭する。
【0098】
このように弾性部材49によりクリーニング部材41を下方から押圧することで、図12に示すようにインク吐出面241aが凹凸を有している場合においても、クリーニング部材41がインク吐出面241aの形状に追随した状態で払拭が行われる。よって、インク吐出面241aの全体を略均等な圧力でクリーニングすることができる。
【0099】
本変形例の構成によっても、巻き取りローラー48bの回転開始タイミング及び回転速度をクリーニング部材駆動部43により調整することで、上述した払拭速度制御及び静止時間制御を行うことができる。
【0100】
(変形例2)
続いて上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、温度検出部45による検出温度に応じてさらにクリーニング部材41の当接時間を調整する点で上記実施形態と異なる。
【0101】
紫外線硬化型インクが用いられている場合などにおいては、インク吐出面241aに付着したインクは、環境温度が高いほど増粘(変性)が進行しやすい。このため、本変形例の制御部50は、温度検出部45による検出温度が高いほど、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が長くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる。ここで、「検出温度が高いほど当接時間が長くなるように」とは、検出温度が高くなるに従って当接時間が単調非減少となる態様をいう。
【0102】
具体的には、インク吐出ヘッド241のメンテナンスが行われる場合には、制御部50は、まず温度検出部45から温度の検出結果を取得する。そして、払拭速度制御を行う場合には、制御部50は、図8の払拭速度設定テーブルに基づいて特定された払拭速度を、検出温度が高いほど払拭速度が遅くなるように補正し、補正された払拭速度でクリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭させる。
一方、静止時間制御を行う場合には、制御部50は、図10の払拭速度設定テーブルに基づいて特定された払拭速度を、検出温度が高いほど静止時間が長くなるように補正する。制御部50は、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で、補正された静止時間だけ静止させた後に、インク吐出面241aをクリーニング部材41により払拭させる。
これにより、環境温度に応じてインクの増粘の進行速度が変化した場合であっても、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させることができ、効果的にインクを除去することができる。
【0103】
(変形例3)
続いて上記実施形態の変形例3について説明する。本変形例は、オゾン濃度検出部46によるオゾン濃度の検出結果に応じてさらにクリーニング部材41の当接時間を調整する点で上記実施形態と異なる。
【0104】
紫外線硬化型インクが用いられている場合などにおいては、インク吐出面241aに付着したインクは、雰囲気中のオゾン濃度が高いほど増粘(変性)が進行しやすい。オゾンは、例えば記録媒体Mの表面を除電する除電装置などから発生し得る。このため、本変形例の制御部50は、オゾン濃度検出部46によるオゾンの検出濃度が高いほど、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が長くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる。ここで、「検出濃度が高いほど当接時間が長くなるように」とは、検出濃度が高くなるに従って当接時間が単調非減少となる態様をいう。
【0105】
具体的には、インク吐出ヘッド241のメンテナンスが行われる場合には、制御部50は、まずオゾン濃度検出部46からオゾン濃度の検出結果を取得する。そして、払拭速度制御を行う場合には、制御部50は、図8の払拭速度設定テーブルに基づいて特定された払拭速度を、オゾンの検出濃度が高いほど払拭速度が遅くなるように補正し、補正された払拭速度でクリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭させる。
一方、静止時間制御を行う場合には、制御部50は、図10の払拭速度設定テーブルに基づいて特定された払拭速度を、オゾンの検出濃度が高いほど静止時間が長くなるように補正する。そして、制御部50は、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で、補正された静止時間だけ静止させた後に、インク吐出面241aをクリーニング部材41により払拭させる。
これにより、雰囲気中のオゾン濃度に応じてインクの増粘の進行速度が変化した場合であっても、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させることができ、効果的にインクを除去することができる。
【0106】
(変形例4)
続いて上記実施形態の変形例4について説明する。本変形例は、クリーニング部材加熱部47により、クリーニング部材41を経過時間Tに応じた温度に加熱する点で上記実施形態と異なる。
【0107】
インク吐出面241a上で増粘したインクは、当接させるクリーニング部材41の温度が高いほど効果的に、すなわちより短時間で溶解させることができる。そこで、本変形例では、クリーニング部材加熱部47により、基準時点からの経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の温度が高くなるようにクリーニング部材41が加熱され、当該加熱されたクリーニング部材41によりクリーニングが行われる。ここで、「経過時間Tの増大に応じて温度が高くなるように」とは、経過時間Tが長くなるに従って温度が単調非減少となる態様をいう。
【0108】
具体的には、インク吐出ヘッド241のメンテナンスが行われる場合には、制御部50は、まず基準時点からの経過時間Tを取得する。そして、経過時間Tが長いほどクリーニング部材41が高温となるようにクリーニング部材加熱部47を制御して、クリーニング部材41を加熱させる。制御部50は、クリーニング部材41が経過時間Tに応じた温度に達した段階で、クリーニングを開始させる。
これにより、インク吐出面241a上におけるインクの増粘の程度に応じたメンテナンス時間の変動幅を小さく抑えることができる。
【0109】
(変形例5)
続いて上記実施形態の変形例5について説明する。本変形例は、経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41に対する洗浄液の供給量を調整する点で上記実施形態と異なる。
【0110】
インク吐出面241a上で増粘したインクは、より多くの洗浄液を含浸したクリーニング部材41を当接させることで、より効果的に、すなわちより短時間で溶解させることができる。そこで、本変形例では、制御部50は、経過時間Tの増大に応じて供給量が多くなるように洗浄液供給部44によりクリーニング部材41に対して洗浄液が供給させる。ここで、「経過時間Tの増大に応じて供給量が多くなるように」とは、経過時間Tが長くなるに従って供給量が単調非減少となる態様をいう。
【0111】
具体的には、インク吐出ヘッド241のメンテナンスが行われる場合には、制御部50は、まず基準時点からの経過時間Tを取得する。そして、経過時間Tが長いほどクリーニング部材41に対する単位時間当たりの洗浄液の供給量が多くなるように洗浄液供給部44を制御して、クリーニング部材41に対して洗浄液を供給する。例えば、クリーニング部材41に対して洗浄液の液滴を吐出するノズルを有する洗浄液供給部44では、各ノズルからの洗浄液の吐出量を調整する。また、洗浄液供給部44として、図11に示すような洗浄液の塗布ローラーを用いる場合には、塗布ローラーの外周面に含ませる洗浄液の量を調整する。制御部50は、このようにして洗浄液が供給されたクリーニング部材41によりクリーニングを行わせる。
これにより、インク吐出面241a上におけるインクの増粘の程度に応じたメンテナンス時間の変動幅を小さく抑えることができる。
【0112】
以上のように、本実施形態に係るメンテナンス装置100は、洗浄液を含浸可能なクリーニング部材41を有し、洗浄液を含浸したクリーニング部材41によりインク吐出ヘッド241のインク吐出面241aのクリーニングを行うクリーニング部40と、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が、所定の基準時点からの経過時間Tの増大に応じて長くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる制御部50と、を備える。
インク吐出面241aに対するクリーニング部材41の当接時間を長くするほど、クリーニング部材41に含浸されている洗浄液によって、インク吐出面241aに付着している増粘したインクが溶解して柔らかくなり、クリーニング部材41によりインクを除去しやすくなる。上記のように経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の当接時間を長くすることで、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させてインクを溶解させることができ、メンテナンスに要する時間の増大を必要な範囲に抑えつつ、効果的にインク吐出面241aのインクを除去することができる。また、インクが適切に溶解されることで、所望の回数の払拭で十分にインク吐出面241aをクリーニングすることが可能となるため、インク吐出面241aの損傷を抑えることができる。
【0113】
また、基準時点を、最後に行われたクリーニングが終了した時点とすることで、インク吐出面241a上に付着したインクが増粘する期間に応じて当接時間を長くすることができる。
【0114】
また、基準時点を、最後に行われたクリーニングの終了後に最初にインク吐出ヘッド241のインク吐出面241aからインクが吐出された時点とすることで、クリーニングの直後にインク吐出が開始されない場合であっても、インク吐出面241a上に付着したインクが増粘する期間に応じて当接時間を長くすることができる。
【0115】
また、クリーニングは、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭する工程を含み、制御部50は、経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41による払拭の速度が遅くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる。これによれば、経過時間Tが長いほど払拭速度が遅くなり、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間を長くすることができる。よって、経過時間Tが長く、インクの増粘が進んでいる場合には、当接時間を長くしてインクを十分に溶解しつつ、所定の払拭回数でインクを除去することができる。また、経過時間Tが短くインクの増粘があまり進んでいない場合には、所定の払拭回数でインクを除去できる範囲で払拭速度を大きくして、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
【0116】
また、クリーニングは、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で所定時間(静止時間)静止させる工程を含み、静止時間は、経過時間Tの増大に応じて長くなるように定められている。これによれば、経過時間Tが長く、インクの増粘が進んでいる場合には、静止時間を長くして、所定の払拭回数でインクを除去できるようにインクを十分に溶解させることができる。また、経過時間Tが短くインクの増粘があまり進んでいない場合には、所定の払拭回数でインクを除去できる範囲で静止時間を短くして、クリーニング全体に要する時間を短縮することができる。
【0117】
また、クリーニングは、クリーニング部材41を所定時間静止させた後に、クリーニング部材41によりインク吐出面241aを払拭する工程を含む。これによれば、より確実にインク吐出面241aのインクを除去することができる。
【0118】
また、変形例2に係るメンテナンス装置100は、インク吐出面241aの温度、又は当該温度と対応する温度を検出する温度検出部45を備え、制御部50は、温度検出部による検出温度が高いほど当接時間が長くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる。これによれば、環境温度に応じてインクの増粘の進行速度が変化した場合であっても、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させることができ、効果的にインクを溶解させて除去することができる。
【0119】
また、変形例3に係るメンテナンス装置100は、インク吐出ヘッド241の周囲のオゾン濃度を検出するオゾン濃度検出部46を備え、制御部50は、オゾン濃度検出部による検出濃度が高いほど当接時間が長くなるようにクリーニング部40によりクリーニングを行わせる。これによれば、雰囲気中のオゾン濃度に応じてインクの増粘の進行速度が変化した場合であっても、増粘の程度に応じた必要かつ十分な時間だけクリーニング部材41をインクに当接させることができ、効果的にインクを溶解させて除去することができる。
【0120】
また、変形例4に係るメンテナンス装置100は、経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の温度が高くなるようにクリーニング部材41を加熱するクリーニング部材加熱部47を有し、クリーニング部40は、加熱部により加熱されたクリーニング部材41によりクリーニングを行う。これによれば、インクの増粘が進んでいる場合には、高温のクリーニング部材41を当接させてインクの溶解効率を上げることができるため、当接時間が必要以上に長くなるのを抑えることができる。よって、インク吐出面241a上におけるインクの増粘の程度に応じたメンテナンス時間の変動幅を小さく抑えることができる。
【0121】
また、クリーニング部材41として布帛を用いる場合に、クリーニング部40に弾性部材を設け、布帛が弾性部材によりインク吐出面241aに押し付けられた状態でクリーニングを行うことで、より効率よくインク吐出面241aのインクを除去することができる。
【0122】
また、クリーニング部材41としてスポンジを用いることで、十分な量の洗浄液を含浸した状態でインク吐出面241aをクリーニングすることができ、インクを効率よく除去することができる。
【0123】
また、変形例1に係るメンテナンス装置100では、クリーニング部材41は、帯状の布帛であり、クリーニング部40は、クリーニングにおいて、布帛を所定の巻き出しローラー48aから引き出してインク吐出面241aに当接させ、布帛のうちインク吐出面241aに当接した部分を順次巻き取りローラー48bに排出させる。これによれば、クリーニング部材41のうち未使用の部分が順次引き出されてインク吐出面241aの払拭に用いられるため、効果的にインク吐出面241aのインクを除去することができる。
【0124】
また、変形例1に係るクリーニング部40は、弾性部材49を有し、布帛が弾性部材49によりインク吐出面241aに押し付けられた状態でクリーニングを行う。これによれば、インク吐出面241aが凹凸を有している場合においても、クリーニング部材41をインク吐出面241aの形状に追随させた状態で払拭を行うことができる。よって、インク吐出面241aの全体を略均等な圧力でクリーニングすることができる。
【0125】
また、クリーニング部40は、クリーニング部材41に洗浄液を供給する洗浄液供給部44を備える。これによれば、クリーニング部材41が必要な量の洗浄液を含浸した状態を維持することができる。
【0126】
また、変形例5に係る洗浄液供給部44は、経過時間Tの増大に応じて供給量が多くなるようにクリーニング部材41に洗浄液を供給する。これによれば、インクの増粘が進んでいる場合には、洗浄液の含浸量を増大させてインクの溶解効率を上げることができるため、当接時間が必要以上に長くなるのを抑えることができる。よって、インク吐出面241a上におけるインクの増粘の程度に応じたメンテナンス時間の変動幅を小さく抑えることができる。
【0127】
また、洗浄液として、インク吐出ヘッド241から吐出されるインクに含まれる溶媒と同一の液体を用いることで、インク吐出面241a上で増粘したインクを効率よく溶解させることができる。
【0128】
また、インク吐出ヘッド241は、紫外線により硬化するインクをインク吐出面241aから吐出し、クリーニング部40は、クリーニングにおいて、インク吐出面241aに付着したインクを除去する。紫外線硬化型インクは、時間の経過とともに増粘しやすいところ、本実施形態のように経過時間Tの増大に応じてクリーニング部材41の当接時間が長くなるようにクリーニングを行うことで、インク吐出面241a上に付着したこのようなインクを効果的に除去することができる。
【0129】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、インク吐出面241aを有するインク吐出ヘッド241と、上記のメンテナンス装置100と、を備える。これによれば、インク吐出面241aをより短時間で効果的にクリーニングすることができる。
【0130】
また、本実施形態に係るインク吐出ヘッド241のメンテナンス方法は、インク吐出面241aの各位置に対するクリーニング部材41の当接時間が、所定の基準時点からクリーニングの開始までの経過時間Tの増大に応じて長くなるようにクリーニング部材41によりクリーニングを行わせるステップを含む。このような方法によれば、インク吐出面241aをより短時間で効果的にクリーニングすることができる。
【0131】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、クリーニング部40によって、インクの他に、インク吐出面241aに付着した異物などを除去してもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、クリーニング部材41をノズルNの配列方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に移動させてインク吐出面241aを払拭する例を用いて説明したが、これに限られず、例えば図13に示すように、ノズルNの配列方向と平行な方向にクリーニング部材41を移動させてインク吐出面241aを払拭してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、インク吐出ヘッド241を固定し、クリーニング部材41を移動させることでクリーニングを行ったが、これに限られず、クリーニング部材41を固定してインク吐出ヘッド241(ヘッドユニット24)を移動させることでクリーニングを行ってもよい。すなわち、本発明のクリーニングには、能動的な動作を行わないクリーニング部40が受動的にインク吐出面241aを払拭する態様が含まれる。
例えば、図14(a)及び図14(b)に示すように、ノズルNの配列方向(X方向)についてヘッドユニット24より長いクリーニング部材41を用いて、クリーニング部材41にインク吐出面241aを接触させた状態でヘッドユニット24をX方向に往復移動させることでインク吐出面241aを払拭してもよい。この構成によれば、X方向についてのクリーニング部材41の幅の範囲内でヘッドユニット24を動かすようにすることで、ヘッドユニット24の移動距離を小さく抑えつつ、インク吐出面241aの各部を均等に払拭することができる。
図14のように、クリーニング部材41を固定してインク吐出ヘッド241(ヘッドユニット24)を移動させることでクリーニングを行う場合には、クリーニング部40、制御部50、及びヘッドユニット移動部62によりメンテナンス装置100が構成される。
なお、図14の構成において、ヘッドユニット24を固定し、クリーニング部材41をX方向に動かしてクリーニングを行ってもよい。
【0134】
また、洗浄液は、インクの溶媒と同一の液体に限られず、インク吐出面241a上で増粘したインクを溶解可能な任意の液体を用いることができる。
【0135】
また、上記実施形態では、インク吐出ヘッド241から吐出されるインクとして紫外線硬化型インクを例示したが、これに限られない。例えば、水を溶媒とする水系インクを用いてもよい。この場合には、洗浄液として水を用いることで、インク吐出面241aに付着したインクを効果的に溶解させることができる。
【0136】
また、上記実施形態では、静止時間制御を行う場合に、所定の静止時間が経過した後にクリーニング部材41による払拭を行ったが、これに限られず、クリーニング部材41をインク吐出面241aに当接させた状態で静止させることにより十分にインクを除去(吸収)できる場合には、払拭工程は省略してもよい。
【0137】
また、上記実施形態では、ヘッドユニット24に固定された複数のインク吐出ヘッド241をクリーニング対象とする例を用いて説明したが、単一のインク吐出ヘッド241をクリーニング対象としてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、インクジェット記録装置1の制御部50がメンテナンス装置100の各部の動作を制御する例を用いて説明したが、これに限られず、クリーニング部40内に別個の制御部を設け、この制御部によりクリーニング部40の各部の動作を制御するようにしてもよい。
【0139】
また、インクジェット記録装置1がメンテナンス装置100を有する例を用いて説明したが、メンテナンス装置100は、インクジェット記録装置1とは別個に設けられていてもよい。
【0140】
また、上記実施形態では、搬送ドラム21により記録媒体Mを搬送する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、2本のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトにより記録媒体Mを搬送するインクジェット記録装置1に本発明を適用してもよい。
【0141】
また、上記実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、インク吐出ヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0143】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
20 画像形成部
21 搬送ドラム
21a 搬送面
24 ヘッドユニット
241 インク吐出ヘッド
241a インク吐出面
242 ヘッド駆動部
25 定着部
30 排紙部
40 クリーニング部
41 クリーニング部材
42 基部
43 クリーニング部材駆動部
44 洗浄液供給部
45 温度検出部
46 オゾン濃度検出部
47 クリーニング部材加熱部(加熱部)
48a 巻き出しローラー(クリーニング部材供給部)
48b 巻き取りローラー(クリーニング部材排出部)
49 弾性部材
491樹脂フィルム
50 制御部
61 搬送駆動部
62 ヘッドユニット移動部
63 クリーニング部移動部
64 操作表示部
65 通信部
100 メンテナンス装置
M 記録媒体
N ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14