(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】成形型
(51)【国際特許分類】
B29C 49/48 20060101AFI20231212BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20231212BHJP
B29C 49/62 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
B29C49/48
B29C33/10
B29C49/62
(21)【出願番号】P 2019215086
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創哉
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522100(JP,A)
【文献】特開2018-001492(JP,A)
【文献】米国特許第04865206(US,A)
【文献】特開平06-166064(JP,A)
【文献】特開2015-085625(JP,A)
【文献】特開平04-276424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/48
B29C 49/62
B29C 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形により容器の形状を成形するための成形型であって、
前記成形型の成形面に設けられた第1の口と前記成形型の前記成形面以外に設けられた第2の口とをつなぐ通気穴を備え、
前記通気穴の少なくとも前記第1の口に面する部分は、前記成形型の本体に設けられた第1の断面積を有する
細孔と、前記
細孔の内部に配置された前記第1の断面積よりも狭い第2の断面積を有する
柱形状を有して前記細孔よりも長いピンである内部部材とによって形成されて
おり、
前記成形型は、前記細孔と、前記細孔と通じる太孔とを有し、
前記通気穴の前記第2の口は、前記太孔によって形成されており、
前記内部部材は、前記成形型の外部から貫くように配置され、その一部が前記細孔の内部に配置されている、
成形型。
【請求項2】
前記第1の口を含む面における前記孔の重心位置と前記内部部材の重心位置とは一致している、請求項1に記載の成形型。
【請求項3】
前記第1の口を含む面における前記孔の形状と前記内部部材の形状とは円形である、請求項1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
前記成形型は、前記容器の底部の形状を成形するための底型である、請求項1~3の何れかに記載の成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器の製造に用いる成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて形成された容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広く利用されている。このような合成樹脂製の容器は、まず、有底筒状のプリフォームが形成され、次いで、このプリフォームが金型内で二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形されることで製造される。
【0003】
延伸される合成樹脂と金型との間に存在する空気は、合成樹脂の延伸と共に金型の外に抜けていく必要がある。割型が用いられる場合、型と型との隙間から空気は排出される。また、例えば特許文献1に開示されているように、延伸された合成樹脂が最後に接触する例えば底型には、金型外に空気を排出するための通気穴が設けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、通気穴が設けられた成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ブロー成形により容器の形状を成形するための成形型は、前記成形型の成形面に設けられた第1の口と前記成形型の前記成形面以外に設けられた第2の口とをつなぐ通気穴を備え、前記通気穴の少なくとも前記第1の口に面する部分は、前記成形型の本体に設けられた第1の断面積を有する孔と、前記孔の内部に配置された前記第1の断面積よりも狭い第2の断面積を有する内部部材とによって形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、通気穴が設けられた成形型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る容器の構成例の概略を示す正面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る容器の二軸延伸ブロー工程に用いられる金型の構成例の概略を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る排気穴の周辺の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る細孔の、ピンの中心軸と直交する断面を模式的に示す図である。
【
図5A】
図5Aは、変形例に係る細孔の、ピンの中心軸と直交する断面を模式的に示す図である。
【
図5B】
図5Bは、変形例に係る細孔の、ピンの中心軸と直交する断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態は、合成樹脂製容器の製造に関する。特に、合成樹脂製容器の製造に用いる成形型に関する。
【0010】
[容器の構造]
本実施形態に係る合成樹脂製の容器1の構成例について、図を参照して説明する。
図1は、容器1の構成例の概略を示す正面図である。容器1の説明では、
図1に示すように、口部2を上に底部5を下にして容器1を水平面に正立させた状態で、容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。容器1は、口部2、肩部3、胴部4、及び底部5を備えている。容器1は、胴部4が概ね円筒状に形成された、一般に、丸形ボトルと称される容器形状を有している。口部2は、内容物の注ぎ口となる円筒状の部位である。口部2には、図示しない蓋を取り付けるためのねじが形成されている。口部2の下端は、肩部3に連なっている。肩部3は、胴部4に向かって円錐台状に拡径した形状を有しており、口部2と胴部4との間をつなぐ。胴部4の上端は肩部3に連なっており、胴部4の下端は底部5に連なっている。底部5は、ペタロイドと呼ばれる構造を備える。容器1の材料には、ブロー成形が可能な任意の熱可塑性樹脂が使用され得る。
【0011】
なお、
図1に示した容器1の形状などは一例であり、容器1は種々の形状であり得る。例えば、肩部3及び胴部4の上下方向の長さや、水平断面の直径、形状などは適宜に変更され得る。また、底部5の形状は、ペタロイド形状に限らず、種々の形状であり得る。
【0012】
[容器の製造方法]
上述のような容器1は、次のように製造される。まず、熱可塑性樹脂を使用して、射出成形又は圧縮成形などにより、有底筒状のプリフォームが形成される。次に、二軸延伸ブロー成形などによりこのプリフォームを延伸し、所定の容器形状に容器1が成形される。
【0013】
図2は、容器1の二軸延伸ブロー工程に用いられる金型30の構成例の概略を示す模式図である。金型30は、ネックインサート31と、胴型34と、底型40とを有する。ネックインサート31は、プリフォーム10の口部下側を固定するための金型である。ネックインサート31は、一対の割型となっており、第1のネックインサート32と第2のネックインサート33とを有する。胴型34は、容器1の肩部3及び胴部4を成形する。胴型34は、一対の割型となっており、第1の胴型35と第2の胴型36とを有する。底型40は、底部5を成形する。底型40は、形成される容器1の軸方向に移動可能である。なお、金型は、金属製に限らず、他の材料を用いて形成された各種の成形型に置換され得る。
【0014】
延伸温度に加熱されたプリフォーム10は、金型30内に設置される。プリフォーム10は、ストレッチロッド38によって軸方向に延伸されると共に、内部にブローエアが吹き込まれることで周方向に延伸される。容器1については、延伸された合成樹脂が、胴型34の表面に接触することで肩部3及び胴部4が成形されるとともに、底型40に接触することで底部5が成形される。このとき、プリフォーム10と金型30との間を満たしていた空気は、合成樹脂が延伸されるのに伴って、各型の隙間などから排出される。また、底型40と延伸されていく容器との間にある空気が排出されるように、底型40には、排気穴45が設けられている。
【0015】
容器1が形成された後、型開きされ、形成された容器1が、金型30から取り出される。
【0016】
[底型の排気穴の構造]
本実施形態に係る底型40の排気穴45の構造について、
図3を参照して説明する。
図3は、排気穴45の周辺の構成例を模式的に示す断面図である。この図に示すように、排気穴45は、合成樹脂が接する底型40の成形面41と、底型40の外部の面42とをつなぐ穴である。排気穴45は、細孔47と太孔48とを有する。細孔47は、底型40の成形面41に形成された第1の口43を一端とし、太孔48と通じる孔である。太孔48は、底型40の外部の面42に形成された第2の口44を一端とし、細孔47と底型40の外部とを通じさせる孔である。
【0017】
細孔47は、円筒形の空間である円筒孔51の内部に、円筒孔51よりも直径がわずかに小さい円柱形のピン55が配置されることで形成されている。ピン55は、その断面積が円筒孔51の断面積よりも小さい、円筒孔51の内部に配置された内部部材として機能する。本実施形態では、円筒孔51の中心軸とピン55の中心軸とは一致するように円筒孔51とピン55とは配置されている。
図4は、細孔47の、ピン55の中心軸と直交する断面を模式的に示す図である。この図に示すように、円筒孔51の内壁52とピン55の外壁56との間に形成される空間59が、排気のための空気の流路となる。
【0018】
本実施形態に係る排気穴45の構成によれば、小さい間隙を有しながら大きな断面積が得られる。例えばピン55が配置されていない円筒孔51のように、内壁52の対向する面の間隔が広いと、延伸された容器の一部が当該穴に流れ込み、容器1の表面に角のようなでっぱり(バリ)が形成されてしまう。一方で、断面積が小さいと、十分に排気ができない。本実施形態の排気穴45の構成によれば、間隔の狭さと断面積の大きさとが両立し得る。
【0019】
直径1.3 mmの円筒形の穴に、直径1.2 mmのピンを配置することで、間隙の幅は0.05 mmとなる。この場合、ピンを配置しない場合と比較して、間隔は1.3 mmから0.05 mmへと96%減少している一方で、断面積は、1.33 mm2から0.20 mm2へと85%の減少に留まる。このように、本実施形態の細孔47の構成によれば、狭い間隙の幅と広い断面積とが得られることになる。断面積がさらに必要な場合には、細孔47の円筒孔51及びピン55の径を大きくしたり、細孔47の数を増やしたりすればよい。
【0020】
円筒孔51の直径とピン55の直径との差が0.1 mmであるときの、円筒孔51及びピン55の直径と、断面積との関係を表1に示す。この表に示すような関係に基づいて、必要な断面積が得られるように、直径は決定され得る。
【表1】
本実施形態に係る排気穴45の構成によれば、底型40の作製も容易である。すなわち、細い隙間を切削加工などによって形成することは困難である。一方で、本実施形態の排気穴45は、円筒孔51をドリルによって形成した後に、円柱形のピン55を当該円筒孔51内に配置することで、容易に作製され得る。
【0021】
円筒孔51内にピン55を固定する方法はどのような方法であってもよい。空気の流れを妨げない程度に小さい、ピン55を支持するための支持部材を用いて、ピン55を円筒孔51の内壁に対して固定したり、太孔48の内壁に対して固定したりすることができる。また、
図3に示すよりも長いピン55を、底型40の外部から貫くように配置することで、底型40に対して固定したり、底型40の外部に設けられた部材に対して固定したりすることができる。
【0022】
[適用例]
本実施形態に係る金型30は、これに限らないが、特に容器本体の周囲を被覆層で覆った複合容器の形成に好適である。複合容器は、例えば、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂を用いて形成された容器本体が、ポリオレフィン系樹脂等の被覆層で覆われた構成を有する。容器本体に用いられるエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、非晶ポリアリレート、ポリ乳酸、ポリエチレンフラノエート又はこれらの共重合体などが用いられ得る。また、これらの樹脂の混合物、あるいは、これらの樹脂と他の樹脂との混合物などが用いられてもよい。被覆層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のポリアミド系樹脂などが用いられ得る。容器本体を形成する樹脂と、被覆層を形成する樹脂とは、非相溶性であることが好ましい。非相溶性の熱可塑性樹脂を用いることで、被覆層は容器本体から容易に剥がされ得る。このことは、容器のリサイクルを容易にする。
【0023】
被覆層は、着色されたり、加飾されたり、種々の機能が持たされたりする。例えば着色のため、顔料又は着色剤などが添加されてもよい。被覆層は、例えば遮光性を有していてもよい。容器本体と被覆層とを容易に分離できることで、着色された被覆層にかかわらず、無色透明の容器本体のリサイクル性が維持される。
【0024】
このような複合容器の形成には、容器本体となる樹脂と被覆層となる樹脂との2層の樹脂を有するプリフォームが用いられる。このようなプリフォームは、例えば、いわゆる、ダブルモールド成形(二色成形)法によって作製され得る。2層の樹脂を有するプリフォームが、二軸延伸ブロー成形などによって、一体として延伸される。
【0025】
容器本体を形成するエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂に対して、被覆層を形成するポリオレフィン系樹脂の融点は低い。このため、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂を延伸できる温度において、被覆層を形成するポリオレフィン系樹脂が極めて軟らかくなることがある。このような場合、排気穴にポリオレフィン系樹脂が流れ込みやすく、結果としてバリが形成されやすい。
【0026】
このため、間隙が狭く、樹脂が流れ込みにくい構成を有する本実施形態に係る排気穴45は、このような複合容器の製造において特に効を奏する。
【0027】
[変形例]
上述の実施形態では、円筒孔51とピン55とを用いて形成する通気穴の用途として、排気穴45を例に挙げて説明した。しかしながら、円筒孔51とピン55とを用いて形成する通気穴の用途は、これに限らない。例えば、離型時に、金型と容器との貼り付きを防止するために、金型にあけられた小孔から容器へと気体を吹き付けることがある。本実施形態に係る円筒孔51とピン55とを用いて形成する通気穴は、容器に気体を吹き付けるための小孔にも適用され得る。
【0028】
また、細孔47の形状は、上述したように断面形状がリング形状であるに限らず、断面形状がスリット形状などであってもよい。また、例えば
図5Aに細孔47aの断面形状を示すように、第1の口43における円筒孔51aの中心とピン55aの中心とは一致しておらず、ピン55aが偏って配置されてもよい。この場合、円筒孔51aの内壁52aとピン55aの外壁56aとの間に形成される空間59aの幅は、円周方向の位置によって異なることになる。合成樹脂の延伸方向などに応じて、孔への合成樹脂の侵入しやすさに方向による偏りがある場合には、その偏りに応じて上記の空間59aの幅に差異を持たせてもよい。
【0029】
また、例えば
図5Bに細孔47bの第1の口43における形状を示すように、孔51bとピン55bとの断面形状は、円形に限らず、四角形など任意の形状であってもよい。孔51bの中にピン55bが配置されるので、ピン55bは、断面積などを含めて、当然、孔51bよりも小さい。この例のように、円形でなくても、間隙を狭くしつつ断面積を大きくするという、上述の実施形態の目的は達成され得る。
図5Bに示す例では、第1の口43を含む面における孔51bの重心とピン55bの重心とは一致している。しかしながら、これに限らない。第1の口43を含む面における孔の重心とピンの重心とは、例えば
図5Aに示す例のように、一致していなくてもよい。ただし、それらの形状にもよるが、重心位置が一致していることで、ピンの周囲にできる間隙の幅が周方向に均一に狭く構成されやすい。
【0030】
上述のような排気穴は、底型に限らず胴型など、他の成形型にも適用され得る。ただし、排気穴は、延伸に伴って空気の逃げ道が制限されやすい底型において特に重要である。
【0031】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 容器
2 口部
3 肩部
4 胴部
5 底部
10 プリフォーム
30 金型
31 ネックインサート
34 胴型
38 ストレッチロッド
40 底型
41 成形面
42 外部の面
43 第1の口
44 第2の口
45 排気穴
47 細孔
48 太孔
51 円筒孔
52 内壁
55 ピン
56 外壁
59 空間