(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
G01P 15/08 20060101AFI20231212BHJP
G01P 15/10 20060101ALI20231212BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20231212BHJP
G01P 15/00 20060101ALI20231212BHJP
G01C 19/5783 20120101ALI20231212BHJP
【FI】
G01P15/08 102Z
G01P15/10
G01P15/18
G01P15/00 E
G01C19/5783
(21)【出願番号】P 2019215944
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2019178183
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100187539
【氏名又は名称】藍原 由和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰史
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0316683(US,A1)
【文献】特開2019-128304(JP,A)
【文献】特開2000-304763(JP,A)
【文献】米国特許第5003824(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-15/18
G01C19/00-19/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニットと、
前記慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部及び前記検出情報に基づく表示を行う表示部の少なくとも一方が設けられる基板と、
前記センサーユニットと前記基板とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材と、
を含
み、
前記基板には、慣性計測装置のモード切り替えを行うためのモード切り替えスイッチ、慣性計測装置のリセットを行うためのリセットスイッチ、及び慣性計測装置の計測を開始するための計測開始スイッチの少なくとも1つが設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項2】
少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニットと、
前記慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部及び前記検出情報に基づく表示を行う表示部の少なくとも一方が設けられる基板と、
前記センサーユニットと前記基板とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材と、
保護板と、
を含
み、
前記基板は、前記センサーユニットと前記保護板との間に設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項3】
少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニットと、
前記慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部及び前記検出情報に基づく表示を行う表示部の少なくとも一方が設けられる基板と、
前記センサーユニットと前記基板とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材と、
を含
み、
前記基板として第1基板と第2基板を含み、
前記第1基板には、前記処理部が設けられ、
前記第2基板には、表示パネルを有する前記表示部が設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の慣性計測装置において、
第1保護板と、
第2保護板と、
を含み、
前記第1基板は、前記センサーユニットと前記第1保護板との間に設けられ、
前記第2基板は、前記第1保護板と前記第2保護板との間に設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項5】
請求項
3又は4に記載の慣性計測装置において、
前記第1基板には、発光素子群を有する前記表示部が設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項6】
請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
少なくとも1つの前記固定部材として、複数の柱状部材を含み、
前記複数の柱状部材が、前記基板に設けられる複数の穴部、及び前記センサーユニットに設けられる複数の穴部に嵌合することで、前記センサーユニットと前記基板とが着脱可能に固定されることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の慣性計測装置において、
前記複数の柱状部材はネジ部材であることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
慣性計測装置を取り付け面に取り付けるためのベースを含み、
前記センサーユニットは、前記ベースと前記基板との間に設けられ、
前記ベースは、少なくとも1つの前記固定部材により前記センサーユニットに固定されることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の慣性計測装置において、
前記ベースは、前記取り付け面側の面に、磁石である固定部を有することを特徴とする慣性計測装置。
【請求項10】
請求項
8又は9に記載の慣性計測装置において、
前記ベースは、前記取り付け面側の面に窪み部を有することを特徴とする慣性計測装置。
【請求項11】
請求項1乃至
10のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
前記基板には、前記慣性センサーの前記検出情報に基づく情報を無線により送信する無線通信部が設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
前記基板には、外部との間で有線で通信するためのインターフェース部が設けられることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
前記センサーユニットは、前記基板に対向する面にセンサー側のコネクターを有し、
前記基板は、前記センサーユニットに対向する面に基板側のコネクターを有し、
前記センサーユニットと前記基板とが前記固定部材により固定された状態において、前記センサー側のコネクターと前記基板側のコネクターは電気的に接続されることを特徴とする慣性計測装置。
【請求項14】
請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
前記センサーユニットは、
少なくとも1つの前記慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーが設けられるセンサー基板と、
前記センサー基板を収容するケースと、
を含むことを特徴とする慣性計測装置。
【請求項15】
請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の慣性計測装置において、
前記センサーユニットは、
少なくとも1つの前記慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーと少なくとも1つの角速度センサーが設けられるセンサー基板と、
前記センサー基板を収容するケースと、
を含むことを特徴とする慣性計測装置。
【請求項16】
請求項
14又は15に記載の慣性計測装置において、
前記ケースは、側壁を有し、
前記加速度センサーは、
加速度センサー素子と、
ベース部と蓋部を有し、前記加速度センサー素子を収容するパッケージと、
を含み、
前記蓋部は導電材料からなり、且つ接地され、
前記蓋部と前記側壁が対向するように配置されることを特徴とする慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造装置や計測装置などの精密化が進み、生産工程の効率化や歩留向上のために振動計測を行う重要性が増しているため、装置の振動計測や環境振動計測の簡素化が望まれている。例えば特許文献1には、振動検出ユニットが、振動センサーを用いて振動を検出し、検出により得られた振動データを無線により送信し、振動モニターが、送信された振動データを受信して、表示部に表示する振動監視装置が開示されている。この振動監視装置によれば、装置の振動や環境振動を振動検出ユニットにより検出し、検出された振動データを、振動検出ユニットとは別体に設けられた振動モニターの表示部に表示できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加速度センサーや角速度センサーなどの慣性センサーを有する慣性計測装置を用いれば、上述のような装置の状態監視や環境状態の監視などを実現できる。しかしながら慣性計測装置では、慣性センサーの検出精度が劣化してしまうと、高精度な計測を実現できなくなるという課題がある。一方、慣性センサーの検出情報に対して行われる処理の内容や、検出情報に基づき表示される表示情報の内容は、慣性計測装置を使用するユーザーに応じて様々であり、慣性計測装置の拡張性に対する要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニットと、前記慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部及び前記検出情報に基づく表示を行う表示部の少なくとも一方が設けられる基板と、前記センサーユニットと前記基板とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材と、を含む慣性計測装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施形態の慣性計測装置の構成例を示す斜視図。
【
図2】本実施形態の慣性計測装置の他の構成例を示す斜視図。
【
図9】モード切り替えスイッチ、リセットスイッチ、計測開始スイッチの説明図。
【
図13】センサー側のコネクターと基板側のコネクターの接続の説明図。
【
図14】慣性計測装置の動作を説明する状態遷移図。
【
図15】センサーユニットの第1構成例の分解斜視図。
【
図18】加速度センサー素子を用いた加速度検出器の正面図。
【
図19】センサーユニットの第2構成例の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲の記載内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0008】
1.慣性計測装置
図1は本実施形態の慣性計測装置10の構成例を示す斜視図である。IMU(Inertial Measurement Unit)である慣性計測装置10は、センサーユニット20を含む。また慣性計測装置10は、固定部材11、12、13、基板40、ベース150、保護板160を含むことができる。
図1では慣性計測装置10から慣性計測装置10の取り付け面2に向かう方向を方向DR1とし、DR1に直交する方向を方向DR2としている。方向DR1は取り付け面2に直交する方向であり、例えばセンサーユニット20の主面に直交する方向である。主面はセンサーユニット20の上面又は底面であり、例えば側面に直交する面である。方向DR3は方向DR1及び方向DR2に直交する方向であり、方向DR4、DR5、DR6は、各々、方向DR1、DR2、DR3の反対方向である。方向DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6は、各々、第1方向、第2方向、第3方向、第4方向、第5方向、第6方向である。
【0009】
センサーユニット20は、少なくとも1つの慣性センサーを含む。慣性センサーは、物理量情報を検出する物理量センサーである。具体的には
図15~
図20で後述するように、センサーユニット20は、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーを含む。或いはセンサーユニット20は、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーと、少なくとも1つの角速度センサーを含む。角速度センサーは例えばジャイロセンサーである。なお慣性センサーは、加速度センサーや角速度センサーには限定されず、何らかの検出手法により慣性に関する情報を検出できるセンサーであればよく、加速度や角速度と等価な物理量を検出できる物理量センサーであってもよい。例えば速度や角加速度などの物理量を検出できる物理量センサーであってもよい。またセンサーユニット20はケース24を含む。例えばセンサーユニット20は、後述の
図15~
図20に示すように、少なくとも1つの慣性センサーが設けられるセンサー基板210と、センサー基板210を収容するケース24を含む。ケース24は、金属等の導電部材で形成されており、その内部の収容空間にセンサー基板210が設けられる。
【0010】
基板40には、処理部50及び表示部60の少なくとも一方が設けられる。
図1では処理部50及び表示部60の両方が基板40に設けられている。なお例えば処理部50だけを基板40に設けたり、表示部60だけを基板40に設けてもよい。基板40は、回路基板であり、例えば金属配線が形成されるプリント基板である。基板40は例えばリジッド基板である。
【0011】
処理部50は、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う。処理部50は、処理回路であり、例えばMPU、CPUなどのプロセッサーにより実現できる。或いは処理部50は、ゲートアレイなどの自動配置配線によるASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現してもよい。例えば処理部50は、後述するようにコネクター等を介してセンサーユニット20の慣性センサーと電気的に接続されており、コネクター等を介して慣性センサーの検出情報が処理部50に入力される。検出情報は例えば加速度情報、角速度情報又はこれらの情報に基づく情報である。そして処理部50は、慣性センサーの検出情報に基づいて、種々の処理を行う。例えば処理部50は検出情報の加工処理を行う。例えば処理部50は、表示部60や後述の
図2の表示部70の表示情報として適切な情報になるように検出情報の加工処理を行う。また処理部50は、検出情報の解析処理を行う。例えば処理部50は、慣性センサーからの検出情報に基づいて、計測対象の振動、傾き又は姿勢等の解析処理を行う。例えば処理部50は、解析処理として、FFT解析(Fast Fourier Transform Analysis)を行い、振動情報等の周波数成分を解析する。
【0012】
図1の表示部60や
図2の表示部70は、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく表示を行う。例えば慣性計測装置10が、処理部50と表示部60、70を有する場合には、処理部50が慣性センサーの検出情報に基づく処理を行い、表示部60、70は、処理部50の処理結果に基づく表示を行う。例えば処理部50による検出情報の処理結果に基づく表示情報が、表示部60、70に表示される。例えば処理部50が検出情報の加工処理を行った場合には、表示部60、70は、加工処理後の検出情報に対応する表示情報を表示する。また処理部50が検出情報の解析処理を行った場合には、表示部60、70は、解析結果に対応する表示情報を表示する。例えば
図1では、表示器である表示部60は、発光素子群62、64を有する。発光素子群62、64の発光素子は、電気信号を光信号に変換する素子であり、例えば発光ダイオード(LED)などの半導体素子により実現できる。或いは発光素子は半導体素子以外の素子により実現されるものであってもよい。また
図2では、表示モジュールである表示部70は、表示パネル72を有している。表示パネル72は例えば有機ELパネル又は液晶パネルなどである。
【0013】
また基板40には、モード切り替えスイッチ80、リセットスイッチ82、計測開始スイッチ84が設けられている。また基板40には、無線通信部90やアンテナ部92が設けられている。これらのスイッチや無線通信部90等の詳細については後述する。
【0014】
また基板40には、インターフェース部100が設けられている。インターフェース部100は、外部との間で有線で通信するものである。例えば、インターフェース部100により、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)、GPIO(General-Purpose Input/Output)、或いはSPI(Serial Peripheral Interface)などの通信インターフェースが実現される。UARTは調歩同期式のシリアル通信インターフェースである。GPIOは、実行時にユーザーによってその動作が制御可能な汎用の通信インターフェースである。SPIはシリアルクロック信号線、シリアルデータ信号線などの3本又は4本の信号線で通信するインターフェースである。また基板40には、J-TAGなどの通信インターフェースを実現するインターフェース部101も設けられている。
【0015】
また基板40には、メモリー102、103、104が設けられている。メモリー102は、例えば不揮発性メモリーであり、例えばデータの電気的な消去が可能なEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)や、FAMOS(Floating gate Avalanche injection MOS)などを用いたOTP(One Time Programmable)のメモリーなどにより実現される。メモリー103、104は、例えばデータを一時的に記憶するSRAMである。また基板40には、電源インターフェース106が設けられており、電源インターフェース106を介して外部電源が慣性計測装置10に供給される。
【0016】
また慣性計測装置10は、ベース150を含む。ベース150は、慣性計測装置10を取り付け面2に取り付けるための部材である。例えばセンサーユニット20は、ベース150と基板40との間に設けられ、ベース150は、少なくとも1つの固定部材である固定部材11、12、13によりセンサーユニット20に固定される。例えばベース150は、センサーユニット20と取り付け面2との間に設けられており、取り付け面2は、例えば製造装置や計測装置などの装置の面や、装置が設置される床面などである。ベース150は、取り付け面2側の面である底面に窪み部154を有する。このような窪み部154を設けることで、慣性計測装置10を両面テープにより取り付け面2に取り付けるような使用態様の場合に、当該両面テープを剥がす作業を容易化できる。そしてベース150の上面に接するようにセンサーユニット20が設けられる。
【0017】
保護板160は、基板40の保護用の部材である。基板40は、センサーユニット20と保護板160との間に設けられており、これにより、基板40に実装される処理部50、表示部60、無線通信部90等の部品を、保護板160を用いて保護できるようになる。第1保護板である保護板160は、例えば透明又は半透明の板状の部材であり、例えばアクリル等の樹脂板により実現できる。なお保護板160は、アクリル以外の材質により実現されるものであってもよく、例えばABSやPETによる樹脂板であってもよく、樹脂以外の材質により実現されるものであってもよい。
【0018】
また慣性計測装置10は、センサーユニット20と基板40とを着脱可能に固定する少なくとも固定部材を含む。具体的には
図1では慣性計測装置10は、少なくとも1つの固定部材として、固定部材11、12、13を含む。なお
図1では3つの固定部材11、12、13が設けられているが、固定部材の個数は2個以下であってもよいし、4個以上であってもよい。そして
図1では、固定部材11、12、13として柱状部材が設けられている。即ち固定部材11、12、13は方向DR1を長辺方向とする柱状部材であり、後述するように柱状部材は、センサーユニット20、基板40等の穴部を貫通するように設けられる。
【0019】
図2に慣性計測装置10の他の構成例を示す。
図2では
図1の構成に加えて、基板48が更に設けられている。そして基板48には、表示パネル72を有する表示部70が設けられる。有機ELパネル又は液晶パネルである表示パネル72は、センサーユニット20の検出情報に基づく表示を行う。例えば第1基板である基板40に設けられた処理部50が、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づいて、装置や床面等の計測対象の振動等の解析処理を行う。そして第2基板である基板48に設けられた表示部70が、解析処理の結果情報を表示する。例えば表示部70は、計測対象の振動のFFT等の解析の結果情報を表示する。例えば振動のピーク周波数やピーク値についての情報を表示する。
【0020】
また
図2では、保護板160に加えて、保護板170が更に設けられている。保護板170は例えば基板48用の保護部材である。例えば基板48は保護板160と保護板170との間に設けられており、これにより、基板48に実装される表示部70等を、保護板170を用いて保護できるようになる。第2保護板である保護板170は、例えば透明又は半透明の板状の部材であり、例えばアクリル等の樹脂板により実現できる。なお第2保護板である保護板170は、第1保護板である保護板160と同様に、アクリル以外の材質により実現してもよいし、樹脂以外の材質により実現してもよい。このように
図2では基板48は、保護板160と保護板170との間に設けられ、基板40は、センサーユニット20と保護板160との間に設けられる。
【0021】
また保護板170には窓部174が設けられており、この窓部174の位置に、基板48に実装された表示部70が配置される。これによりユーザーは、表示部70に表示される情報を窓部174を介して見ることが可能になる。
【0022】
図3は慣性計測装置10の分解斜視図である。
図3に示すようにセンサーユニット20には複数の穴部21、22、23が設けられており、基板40にも複数の穴部41、42、43が設けられている。そして柱状部材である固定部材11、12、13が、基板40に設けられる複数の穴部41、42、43、及び、センサーユニット20に設けられる複数の穴部21、22、23に嵌合することで、センサーユニット20と基板40とが着脱可能に固定される。具体的には固定部材11、12、13は、基板40の穴部41、42、43、及び、センサーユニット20の穴部21、22、23を貫通するように設けられる。またベース150にも穴部151、152、153が設けられており、ベース150は、柱状部材である固定部材11、12、13が、ベース150に設けられる穴部151、152、153に嵌合することで、センサーユニット20に固定される。また保護板160にも複数の穴部161、162、163が設けられ、保護板170にも複数の穴部171、172、173が設けられる。そして固定部材11、12、13が穴部161、162、163、穴部171、172、173に嵌合することで、保護板160、170が着脱可能に固定される。
【0023】
例えば柱状部材である固定部材11、12、13はネジ部材である。即ち固定部材11、12、13は、外周にネジが切られているオネジである。そしてベース150の穴部151、152、153の内周にもネジが切られており、メネジとなっている。これによりネジ部材である固定部材11、12、13の先端部を、ベース150の穴部151、152、153にネジ止めできるようになり、ベース150に対するセンサーユニット20、基板40、保護板160、170等の固定が可能になる。なおセンサーユニット20の穴部21、22、23や、保護板160の穴部161、162、163や、保護板170の穴部171、172、173の内周ではネジは切られていないが、これらの穴部にもネジを切る変形実施も可能である。
【0024】
また
図3に示すように、基板40の穴部41、42、43に対応する位置にはスペーサー14、15、16が設けられる。また保護板160の穴部161、162、163に対応する位置にはスペーサー17、18、19が設けられる。そして固定時において固定部材11、12、13は、これらのスペーサー14、15、16、17、18、19の穴部を貫通する。このようなスペーサー14、15、16、17、18、19を設けることで、基板40と保護板160との間や、保護板160と保護板170との間に隙間を設けることが可能になる。
【0025】
なおスペーサー14、15、16、17、18、19の穴部の内周にネジを切ってメネジになるようにする変形実施も可能である。また
図3に示すように基板48は、支持部44を用いて基板40に支持されて取り付け可能になっている。そして保護板160には、スリット穴164が設けられ、支持部44がスリット穴164を貫通するように取り付けることで、基板40と基板48の間に、保護板160が配置されるようになる。
【0026】
図4は慣性計測装置10の側面図であり、
図5は底面図である。
図4に示すように、ベース150と基板40との間にセンサーユニット20が設けられる。またセンサーユニット20と保護板160との間に基板40が設けられ、保護板160と保護板170との間に基板48が設けられる。そして
図3で説明したように、これらのベース150、センサーユニット20、基板40、保護板160、基板48、保護板170の各部材に設けられた穴部に嵌合するように柱状部材である固定部材11、12、13が設けられることで、これらの部材を着脱可能に固定できるようになる。
【0027】
また
図4、
図5に示すようにベース150は、取り付け面2側である底面に固定部156、157を有する。固定部156、157は磁石である。即ち磁性体である。固定部156、157は、ベース150の底面に例えばネジにより取り付けられている。これにより固定部156、157をベース150に着脱自在に取り付けることができる。この固定部156、157は例えば立方体形状になっており、固定部156、157の底面が取り付け面2に接地する。このような磁石である固定部156、157をベース150の底面に設けることで、例えば装置の金属面等に対して慣性計測装置10を磁石の磁力により容易に取り付けることが可能になる。
【0028】
図6は保護板160の平面図である。
図6に示すように保護板160には、柱状部材である固定部材11、12、13が貫通するための穴部161、162、163が設けられている。また基板48を支持するための支持部44が貫通するためのスリット穴164が設けられている。
図6では保護板160は透明な板状部材になっている。
【0029】
図7は保護板170の平面図である。
図7に示すように保護板170には、固定部材11、12、13が貫通するための穴部171、172、173が設けられている。
図3に示すように、これらの穴部171、172、173の上方に、ネジ部材である固定部材11、12、13のネジ頭が位置するようになる。また保護板170には、下方の表示部70をユーザーが見ることができるように、窓部174が設けられている。また保護板170には、下方の表示部60の発光素子群62、64をユーザーが見ることができるように、窓部175、176が設けられている。
図7では保護板170は、例えば青などの所定色に着色された半透明の板状部材になっている。また保護板170には、後述するスイッチの機能の説明用の文字や、発光素子群62、64の表示情報の内容を知らせるための文字が描かれている。
【0030】
図8は表示部70の平面図である。表示部70は表示パネル72を有している。そして表示パネル72の駆動信号を伝達するための信号線が、下方の基板40から支持部44及び基板48を介して表示部70の接続端子に電気的に接続される。この接続端子は例えば
図8の紙面において表示パネル72の右側に設けられる。
【0031】
以上のように本実施形態の慣性計測装置10は、少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニット20と、慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部50及び検出情報に基づく表示を行う表示部60の少なくとも一方が設けられる基板40と、センサーユニット20と基板40とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材11、12、13を含む。
【0032】
このような本実施形態の慣性計測装置10によれば、センサーユニット20の慣性センサーの検出状態に基づく処理を、基板40に設けられた処理部50により実行したり、或いは当該検出情報に基づく表示を、基板40に設けられた表示部60により行うことが可能になる。なお
図1では発光素子群62、64を有する表示部60を基板40に設けているが、
図2のように表示パネル72を有する表示部70を基板40に設けてもよい。
【0033】
そして本実施形態では、センサーユニット20と基板40とが、
図3に示すように固定部材11、12、13を用いて着脱可能に固定される。例えばセンサーユニット20と基板40とが着脱自在に固定される。これにより、例えば慣性計測装置10に組み込むセンサーユニット20の種類や基板40の種類を自在に変更できるようになる。例えば加速度センサーを有するセンサーユニット20を慣性計測装置10に組み込んだり、加速度センサー及び角速度センサーの両方を有するセンサーユニット20を慣性計測装置10に組み込むことなどが可能になる。或いは、処理部50だけが設けられた基板40を慣性計測装置10に組み込んだり、表示部60だけが設けられた基板40を組み込んだり、処理部50及び表示部60の両方が設けられた基板40を組み込むことなどが可能になる。これにより慣性計測装置10を使用する様々なユーザーの要望に応えることができ、慣性計測装置10の拡張性を向上できる。また慣性計測装置10は、センサーユニット20と基板40とが固定部材11、12、13によりしっかりと固定された状態で取り付け面2に取り付け可能になる。従って、共振等に起因する望ましくない振動等が慣性計測装置10に伝わって、慣性計測装置10の計測に悪影響を及ぼしてしまう事態も抑制できる。この結果、計測精度の劣化を抑制しながら、拡張性を向上できる慣性計測装置10の提供が可能になる。
【0034】
例えば、これまでは、センサーユニット20自体を慣性計測装置10として用いており、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報を、後述する
図15~
図20のコネクター26から出力していた。例えば慣性センサーが検出した加速度情報や角速度情報を検出情報としてそのまま出力していた。しかしながら、慣性センサーの検出情報は、その扱いが難しく、専門の知識等が必要になるため、ユーザーにとっての利便性が欠けるという課題があった。この場合に、センサーユニット20のコネクター26にPC(パーソナルコンピューター)を接続し、PCを使用して検出情報の解析処理等の各種処理を行ったり、解析結果を表示部に表示する手法も考えられる。しかしながら、この手法では、センサーユニット20にPCを接続して各種の作業を行う必要があるため、作業が煩雑化したり、計測システムが大規模化してしまうという問題がある。
【0035】
これに対して本実施形態では、センサーユニット20と基板40とが固定部材11、12、13により固定されることで慣性計測装置10が構成されている。従って、基板40に設けられた処理部50を用いて、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報の解析処理等の処理を行ったり、基板40に設けられた表示部60を用いて、当該検出情報に基づく表示を行うことが可能になる。例えば慣性計測装置10にPCを接続して検出情報に基づく処理を行ったり、検出情報に基づく表示を行わなくても済むようになるため、ユーザーの利便性を向上できる。即ち、慣性計測装置10を、計測対象に取り付けるだけで、検出情報に基づく処理を行ったり、検出情報に基づく表示を行うことが可能になる。例えば計測対象が、製造装置や計測装置などの装置や、当該装置が設置される床面である場合には、装置の面や床面である取り付け面2に慣性計測装置10を取り付ける。そして装置や床面の振動を解析する処理を処理部50により実行して、処理結果の情報を無線通信部90やインターフェース部100を介して外部に出力したり、解析結果を表示部60に表示することが可能になる。従って、可搬性が良く、低コストで、小規模なシステムで、計測対象の状態監視を行うことが可能になる。
【0036】
また例えば加速度情報のみを必要とするユーザーに対しては、慣性センサーとして加速度センサーが設けられたセンサーユニット20と、基板40とが、固定部材11、12、13により固定された慣性計測装置10を提供する。また加速度情報及び角速度情報の両方を必要とするユーザーに対しては、慣性センサーとして加速度センサー及び角速度センサーが設けられたセンサーユニット20と、基板40とが、固定部材11、12、13により固定された慣性計測装置10を提供する。また表示パネル72を有する表示部70を望むユーザーに対しては、
図2に示すように、センサーユニット20と、基板40と、表示部70が設けられた基板48とが、固定部材11、12、13により固定された慣性計測装置10を提供する。このようにすれば、ユーザーの各種の要望に合わせた慣性計測装置10を提供できるようになり、慣性計測装置10の拡張性を増すことができる。またセンサーユニット20と基板40とが固定部材11、12、13によりしっかりと固定された慣性計測装置10を提供できるため、共振等の望ましくない振動等が原因で、慣性計測装置10の計測結果の精度が劣化してしまう事態も抑制できるという利点がある。
【0037】
なお
図1、
図2では、処理部50及び表示部60の両方が基板40に設けられているが、基板40には、処理部50及び表示部60の少なくとも一方が設けられていればよい。例えば基板40に処理部50を設けない場合には、例えばセンサーユニット20に設けられる後述の処理部212を用いて、検出情報に基づく処理を行えばよい。或いは基板40の上方の基板48に処理部50を設けてもよい。また基板40に表示部60を設けずに、基板48に表示部60を設けてもよい。或いは慣性計測装置10の表示部として、発光素子を用いた表示部60を設けないようにしてもよい。また表示パネル72を有する表示部70を、基板40に設けるようにしてもよい。
【0038】
また本実施形態では
図3に示すように、慣性計測装置10が、固定部材11、12、13として、複数の柱状部材を含む。そして複数の柱状部材である固定部材11、12、13が、基板40に設けられる複数の穴部41、42、43、及びセンサーユニット20に設けられる複数の穴部21、22、23に嵌合することで、センサーユニット20と基板40とが着脱可能に固定される。このようにすれば、各種の組み合わせのセンサーユニット20と基板40とを自在に取り付けたり、取り外したりすることが可能になり、センサーユニット20と基板40の着脱可能な固定を実現できる。例えばセンサーユニット20を異なる種類のセンサーユニットに差し替えて、その穴部21、22、23に固定部材11、12、13を挿入することで、センサーユニット20の種類の取り替えが可能になる。また基板40を異なる種類の基板に差し替えて、その穴部41、42、43に固定部材11、12、13を挿入することで、基板40の種類の取り替えが可能になる。従って、様々な種類のセンサーユニット20、基板40をオプション部品としてユーザーに提供できるようになり、慣性計測装置10の拡張性を大幅に向上できる。
【0039】
また複数の柱状部材である固定部材11、12、13は例えばネジ部材となっている。例えば外周にネジが切られたオネジになっている。このように固定部材11、12、13としてネジ部材を用いれば、ネジ部材を用いたネジによる固定が可能になるため、センサーユニット20、基板40等をしっかりと安定して固定できるようになる。これにより、共振等による望ましくない振動等が原因で、慣性計測装置10の計測結果の精度が劣化してしまう事態を更に抑制できる。またセンサーユニット20、基板40等の取り付け作業も容易になり、作業の効率化等を図れるようになる。
【0040】
また慣性計測装置10は、慣性計測装置10を取り付け面2に取り付けるためのベース150を含む。そしてセンサーユニット20は、ベース150と基板40との間に設けられ、ベース150は、少なくとも1つの固定部材11、12、13によりセンサーユニット20に固定される。例えばベース150は、取り付け面2に取り付けるための基台となる部材であり、ベース150の底面等が取り付け面2に接地することで、慣性計測装置10が取り付け面2に取り付けられる。取り付け面2は、例えば製造装置、計測装置等の装置の面や、これらの装置が設置される床面などであり、計測対象の面である。そしてセンサーユニット20は、基板40とベース150とに挟まれるように固定部材11、12、13により固定される。このような固定により、共振等による振動等が原因でセンサーユニット20の慣性センサーの検出精度が劣化してしまう事態を抑制できる。また例えばセンサーユニット20の底面が、取り付け面2に取り付けるのに好ましくない形状である場合にも、センサーユニット20の底面の代わりにベース150の底面が取り付け面2に取り付けられることで、慣性計測装置10の安定した取り付けが可能になる。例えばセンサーユニット20の形状や種類に依存しない安定した取り付けが可能になり、取り付けのガタによる誤検出等を防止できる。
【0041】
また
図4、
図5に示すように、ベース150は、取り付け面2側の面に、磁石である固定部156、157を有する。即ちベース150の底面に、慣性計測装置10を取り付け面2に固定するための固定部156、157が設けられており、これらの固定部156、157が磁石になっている。例えば固定部156、157は、立方体形状の磁石となっている。このようにすれば、固定部156、157の底面が、取り付け面2である装置の金属面等に、磁石の磁力により吸着するようになる。従って、固定部156、157の底面を取り付け面2に接触させるだけで、慣性計測装置10が取り付け面2に磁石により固定されて設置されるようになり、ユーザーの取り付け作業が容易になり、作業効率を向上できる。
【0042】
なお
図4、
図5では固定部156、157の個数が2個である場合の例であるが、固定部の個数はこれに限定されず、例えば3個以上であってもよい。またベース150自体又はベース150の一部を磁石にしてもよい。
【0043】
また
図4、
図5に示すようにベース150は、取り付け面2側の面に窪み部154を有する。即ちベース150の取り付け面2側の面である底面には、方向DR1の逆方向である方向DR4側に窪んでいる窪み部154を有する。このような窪み部154を設けることで、慣性計測装置10を両面テープにより取り付け面2に取り付けるような使用態様の場合に、当該両面テープを剥がす作業を容易化できる。即ち本実施形態では、固定部156、157を用いずに、両面テープを用いて慣性計測装置10を取り付け面2に設置できるようになっている。具体的には、ベース150の底面に両面テープの一方の面を接着し、両面テープの他方の面を取り付け面2に接着させる。こうすることで、簡素な作業で慣性計測装置10を取り付け面2に設置することができ、例えば取り付け面2が金属面ではない場合にも設置可能になる。この場合に、計測が終了して、慣性計測装置10を取り付け面2から取り外した後、ベース150の底面から両面テープを剥がす作業が必要になる。この点、ベース150の底面に窪み部154を設ければ、作業者であるユーザーがこの窪み部154に指等を挿入することで、ベース150の底面から両面テープを容易に剥がすことが可能になる。なお慣性計測装置10は、磁石や両面テープのみならず、ネジによっても取り付け可能になっている。
【0044】
また
図1、
図2に示すように、基板40には、慣性センサーの検出情報に基づく情報を無線により送信する無線通信部90が設けられている。例えば無線通信部90である無線通信ICが基板40に設けられる。そして、慣性センサーの検出情報に基づく情報が、無線通信部90により外部に送信される。例えば処理部50が、慣性センサーの検出情報に基づく解析処理等の処理を行った場合に、この処理結果の情報が無線通信部90により外部に送信される。或いは慣性センサーの検出情報自体を無線通信部90により外部に送信してもよい。このようにすれば、例えば慣性計測装置10と外部装置とを有線で接続しなくても、慣性センサーの検出情報に基づく情報を外部装置に無線で送信できるようになる。例えば慣性計測装置10を取り付け面2に取り付けたままの状態で、慣性センサーで検出された検出情報に基づく情報を、無線通信部90を用いて外部装置に送信できるようになるため、利便性の向上等を図れる。
【0045】
また基板40には、外部との間で有線で通信するためのインターフェース部100が設けられている。例えばインターフェース部100は、UART、GPIO又はSPIなどの通信インターフェース形式で、外部との間で通信を行う。例えばインターフェース部100は、慣性センサーの検出情報に基づく情報を外部装置に送信する。このようなインターフェース部100を設ければ、通信インターフェースについてのユーザーの様々な要望に応えることが可能になる。例えばUARTをRS232Cに変換して種々の装置に対して慣性計測装置10を接続したり、UARTをイーサネット(登録商標)に変換したり、SPIを用いてSD(登録商標)のカードスロット装置に接続することなどが可能になり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0046】
また基板40には、慣性計測装置10のモード切り替えを行うためのモード切り替えスイッチ80、慣性計測装置10のリセットを行うためのリセットスイッチ82、及び慣性計測装置10の計測を開始するための計測開始スイッチ84の少なくとも1つが設けられる。
図1、
図2ではこれらの全てのスイッチが設けられているが、本実施形態ではこれらのスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチが設けられていればよい。このような各種のスイッチを設ければ、ユーザーがこれらの各スイッチを操作することで、慣性計測装置10が種々の動作を行うようになり、計測作業の簡素化や効率化を図れるようになる。例えばユーザーがモード切り替えスイッチ80を操作することで、慣性計測装置10の各種のモード切り替えが行われるようになり、具体的には表示部60、70の表示モードの切り替えが行われるようになる。またユーザーがリセットスイッチ82を操作することで、慣性計測装置10のリセット動作が行われるようになる。またユーザーが計測開始スイッチ84を操作することで、慣性計測装置10の計測を開始する。なお計測開始スイッチ84は計測終了スイッチとしても機能し、例えばユーザーが計測開始前に計測開始スイッチ84を押すと、状態監視モードに移行して計測が開始し、計測開始スイッチ84を再度押すと、状態監視モードが終了する。また後述するように計測開始スイッチ84はティーチスイッチとしても機能する。
【0047】
また慣性計測装置10は保護板160を含み、基板40は、センサーユニット20と保護板160との間に設けられる。例えば保護板160は、スペーサー14、15、16により形成された隙間空間を介して、基板40の方向DR4側である上方に配置される。このようにすれば、保護板160による防塵機能を実現できる。また保護板160が保護部材となって、基板40上の処理部50、表示部60、無線通信部90等の部品に対して、望ましくない衝撃が加わるなどの事態を防止できる。また例えば
図1では、ユーザーは、保護板160の上面に手の平が接するように慣性計測装置10を手で持って、慣性計測装置10を取り付け面2に取り付けることが可能になる。このように、保護板160が設けられることで、ユーザーの手による慣性計測装置10の保持が容易になり、取り付け作業の容易化や効率化を実現できる。
【0048】
また慣性計測装置10は
図2に示すように、基板として、第1基板である基板40と、第2基板である基板48を含む。そして第1基板である基板40には処理部50が設けられ、第2基板である基板48には、表示パネル72を有する表示部70が設けられる。このようにすれば、例えばセンサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく処理を、基板40に設けられた処理部50により実行し、その処理結果の情報を、基板48に設けられた表示部70の表示パネル72に表示できるようになる。即ち検出情報に基づく情報を表示パネル72に表示できるようになる。表示パネル72は、有機ELパネルや液晶パネルにより実現されるため、発光素子を用いる場合に比べて、より詳細で高度な情報表示が可能になる。例えば計測値についての数字や文字を表示したり、表示モードについての、より精細で高度な切り替え処理を実現できるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。なお表示パネル72を有する表示部70を基板40に設ける変形実施も可能である。
【0049】
また慣性計測装置10は、第1保護板である保護板160と、第2保護板である保護板170を含む。そして基板40は、センサーユニット20と保護板160との間に設けられ、基板48は、保護板160と保護板170との間に設けられる。例えば
図3に示すように、保護板170は、保護板160の穴部161、162、163に設けられたスペーサー17、18、19により形成された隙間空間を介して、保護板160の方向DR4側である上方に配置され、この隙間空間に基板48が配置される。このようにすれば、保護板160により、基板40に設けられた部品を保護できるようになる。例えば基板40に設けられた処理部50、無線通信部90、表示部60等の部品を保護できるようになる。また保護板170により、基板48に設けられた部品を保護できるようになる。例えば基板48に設けられた表示部70等の部品を保護できるようになる。これにより、例えばユーザーが触れることで、慣性計測装置10の部品が破損等してしまう事態を効果的に防止できるようになる。
【0050】
また基板40には、発光素子群62、64を有する表示部60が設けられる。即ち、LEDなどの発光素子群62、64により実現される表示部60が設けられる。このようにすれば、発光素子群62、64の発光素子の発光による表示動作により、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく情報の表示を実現できるようになる。例えば計測結果が判定基準を満たしたか否かなどの情報については、発光素子の発光によっても十分に伝達できる。そして発光素子は表示パネル72に比べて低コストであるため、慣性計測装置10の低コスト化等を実現できるようになる。
【0051】
2.スイッチ
本実施形態では、ユーザーは、その底面が取り付け面2に接触するように慣性計測装置10を把持し、両面テープや磁石やネジなどを使用して取り付けて、慣性計測装置10による計測を行う。この場合に、慣性計測装置10による計測時において、慣性計測装置10のモード設定や計測開始指示などの操作を、ユーザーが簡素に行えることが望ましい。そこで本実施形態では
図9に示すように、慣性計測装置10に、モード切り替えスイッチ80、リセットスイッチ82、計測開始スイッチ84などの各種のスイッチを設けている。モード切り替えスイッチ80は、慣性計測装置10のモード切り替えを行うためのスイッチであり、具体的には表示部70の表示モードを切り替えるためのスイッチである。例えば表示情報のモードを切り替えるためのスイッチである。リセットスイッチ82は、慣性計測装置10のリセットを行うためのスイッチである。リセットスイッチ82が押されることで慣性計測装置10の初期化が行われる。計測開始スイッチ84は、慣性計測装置10の計測を開始するためのスイッチである。計測開始スイッチ84は、慣性計測装置10の計測を終了するためのスイッチとしても機能する。また計測開始スイッチ84は、例えば長押しすることにより、慣性計測の計測基準情報をメモリーに記憶させる指示を行うためのティーチスイッチとしても機能する。またモード切り替えスイッチ80も、長押しすることにより、計測のログデータを保存するためのスイッチとして機能する。なおスライドスイッチ86は、無線通信や通信インターフェースの選択用のスイッチである。
【0052】
そして表示部70は、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく表示を行う。例えば
図9では、計測された振動が、環境振動基準であるVC(Vibration Criteria)におけるVC-Bを満たしていることが表示部70に表示されている。また計測された振動変位の情報が表示されている。そして本実施形態では、モード切り替えスイッチ80によって表示部70の表示モードが切り替わる。例えば
図10では、表示部70には、VC規格での判定結果が表示されている。例えば計測された振動がVC-Bを満たしているという判定結果が表示されている。即ち
図10の第1表示モードでは、第1判定基準での判定結果が表示されている。一方、
図11では、表示部70には、ユーザーが設定した判定基準での計測結果が表示されている。例えば計測された振動が、ユーザーが設定したしきい値に対して何%になったかを示す判定結果が表示されている。即ち
図11の第2表示モードでは、第2判定基準での判定結果が表示されている。例えばモード切り替えスイッチ80を押すことで、
図10の第1表示モードになったり、
図11の第2表示モードになる。
【0053】
またモード切り替えスイッチ80によって、慣性センサーの検出情報に基づき表示される情報の単位が切り替わる。即ち、モード切り替えスイッチ80によって、単位についての表示モードが切り替わる。例えば
図10では、振動変位の単位であるμmの単位で表示されている。具体的には、振動変位のピーク周波数と、そのピーク周波数での振動変位が表示されている。そしてモード切り替えスイッチ80を押すことで、振動速度の単位であるmm/sの単位での表示になったり、振動加速度の単位であるGalの単位での表示になる。具体的にはモード切り替えスイッチ80を押すことで、振動速度のピーク周波数と、そのピーク周波数での振動速度が表示されたり、振動加速度のピーク周波数と、そのピーク周波数での振動加速度が表示される。一例としては、例えば初めはVCでの判定結果が表示され、モード切り替えスイッチ80を押す毎に、振動加速度及びそのピーク周波数の表示、振動速度及びそのピーク周波数の表示、振動変位及びそのピーク周波数の表示、ユーザーが設定したしきい値に対する計測値のパーセント表示というように、表示モードが順次に切り替わる。
【0054】
なお環境振動基準であるVCでは、VC-A、VC-B、VC-C、VC-D、VC-E等が定められており、これらのいずれを満たすかを示すことで、ユーザーは、環境振動等がどのような振動レベルであるかを容易に把握できるようになる。またユーザーが設定したしきい値は、例えばユーザーによる設定により、例えば不揮発性メモリーである
図1のメモリー102に記憶される。或いはしきい値を後述するティーチのスイッチにより設定してもよい。
【0055】
また
図9に示すようにモード切り替えスイッチ80は可動部81を有する。この可動部81は例えばプッシュボタンにより実現される。そして慣性計測装置10から取り付け面2に向かう方向をDR1とし、方向DR1に直交する方向をDR2としたとする。方向DR1は第1方向であり、方向DR2は第2方向である。方向DR2は、例えばセンサーユニット20の上面である主面や、基板40の上面である主面に沿った方向であり、センサーユニット20や基板40の例えば短辺の方向である。この場合に可動部81は方向DR2において可動する。即ち可動部81であるプッシュボタンは
図9のA1に示す方向に沿って可動し、押すことができる。そしてモード切り替えスイッチ80の可動部81の可動により、表示部70の表示モードの切り替えが指示される。即ち可動部81であるプッシュボタンを押すことで、
図10、
図11で説明した表示モードの切り替えが行われる。
【0056】
またモード切り替えスイッチ80の可動部81は、非押下状態においては、方向DR1での平面視においてセンサーユニット20の辺から突出している。例えば
図9において、辺SD1は基板40の第1短辺であり、辺SD2は、辺SD1に対向する第2短辺である。また辺SD3は基板40の第1長辺であり、辺SD4は、辺SD3に対向する第2長辺である。そしてモード切り替えスイッチ80は基板40の長辺である辺SD3に配置される。リセットスイッチ82、計測開始スイッチ84も辺SD3に配置される。即ちモード切り替えスイッチ80、リセットスイッチ82、計測開始スイッチ84は辺SD3に沿って並んで配置される。そしてモード切り替えスイッチ80の可動部81は、非押下状態においては、平面視において、基板40の辺SD3から突出しており、基板40の辺SD3に対応するセンサーユニット20の辺からも突出している。即ち可動部81であるプッシュボタンは、押されていない状態において、辺SD3から突出している。このようにすれば、例えばユーザーが、その上面に手の平が接するように慣性計測装置10を把持した場合に、例えば手の指を用いて、可動部81を押す操作が可能になる。従って、ユーザーは、慣性計測装置10を持ちながら、手の指でモード切り替えスイッチ80の可動部81であるプッシュボタンを押すことが可能になり、表示部70の表示モードの切り替え操作を容易に行えるようになる。例えばユーザーは、慣性計測装置10の下面を取り付け面2に取り付けて、手の指でモード切り替えスイッチ80を操作できるようになるため、ユーザーの利便性を向上できる。
【0057】
なおリセットスイッチ82も可動部83を有しており、
図9のA2に示す方向に沿って押すことができるが、この可動部83は、非押下状態において、基板40の辺SD3から突出しておらず、辺SD3に対応するセンサーユニット20の辺や保護板160の辺からも突出していない。即ち、リセットスイッチ82の可動部83が押されると、慣性計測装置10がリセットされて初期化されてしまうため、可動部83については辺SD3から非突出にする。このようにすることで、ユーザーが誤ってリセット操作をしてしまうという誤操作を防止できるようになる。
【0058】
また計測開始スイッチ84も、方向DR2おいて可動する可動部85を有しており、計測開始スイッチ84の可動部85の可動により、慣性計測装置10の計測開始が指示される。即ち可動部85であるプッシュボタンは
図9のA3に示す方向に沿って可動し、押すことができる。そして可動部85であるプッシュボタンを押すことで、慣性計測装置10の計測が開始する。そして計測開始後に、可動部85であるプッシュボタンを、再度、押すと、計測が終了する。即ち計測開始スイッチ84は計測終了スイッチとしても機能する。
【0059】
また計測開始スイッチ84の可動部85も、非押下状態においては、基板40の辺SD3から突出しており、辺SD3に対応するセンサーユニット20の辺から平面視において突出している。即ち可動部85であるプッシュボタンは、押されていない状態において、辺SD3から突出している。このようにすれば、例えばユーザーが、その上面に手の平が接するように慣性計測装置10を持った場合に、例えば手の指を用いて、可動部85を押す操作が可能になる。従って、ユーザーは、慣性計測装置10を持ちながら、手の指で計測開始スイッチ84の可動部85であるプッシュボタンを押すことが可能になり、計測開始の操作を容易に行えるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0060】
また本実施形態では、計測開始スイッチ84は、慣性計測の計測基準情報をメモリー102に記憶させる指示を行うためのスイッチであるティーチスイッチとしても機能する。即ち、計測開始スイッチ84は、計測基準情報を慣性計測装置10に学習させるティーチスイッチとして機能する。具体的には例えばユーザーが計測開始スイッチ84を長押しすることで、計測開始スイッチ84がティーチスイッチとして機能するようになる。そして計測開始スイッチ84がティーチスイッチとして機能する場合に、このティーチスイッチは方向DR2において可動する可動部85を有し、ティーチスイッチの可動部85の可動により、計測基準情報のメモリー102への記憶が指示される。具体的には、計測開始スイッチ84の長押しが行われると、慣性計測装置10がティーチモードである学習モードに移行する。そして所定の学習期間の間、慣性計測装置10が学習用の計測を行い、この学習期間で計測された計測値の平均値等に基づいて、計測基準情報となるしきい値が求められる。そして、このしきい値が計測基準情報として、不揮発性メモリーであるメモリー102に記憶される。そして慣性計測装置10の実際の計測時においては、このしきい値を計測基準情報とした判定処理が行われて、判定結果が表示部70に表示される。一例としては例えば
図11に示すような表示が行われる。
【0061】
以上のように本実施形態の慣性計測装置10は、少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニット20と、慣性センサーの検出情報に基づく表示を行う表示部70と、モード切り替えスイッチ80を含む。そしてモード切り替えスイッチ80によって表示部70の表示モードが切り替わる。例えば
図10、
図11で説明したような表示モードの切り替えが行われる。例えば表示部70の表示情報のモード切り替えが行われる。
【0062】
このような構成の慣性計測装置10によれば、センサーユニットの慣性センサーの検出情報に基づく表示を、慣性計測装置10が備える表示部70により行うことができる。例えば慣性計測装置10を、計測対象に取り付けるだけで、検出情報に基づく情報を表示部70により表示できるようになる。従って、例えば慣性計測装置10にPCを接続して、PCの表示部を用いて検出情報に基づく表示を行わなくても済むようになるため、計測結果の確認作業の簡素化を図れ、ユーザーの利便性を向上できる。そして慣性計測装置10に設けられたモード切り替えスイッチ80をユーザーが操作すると、表示部70の表示モードが切り替わる。具体的には
図10、
図11で説明したように、モード切り替えスイッチ80をユーザーが操作すると、例えば異なる判定基準での計測の判定結果が表示部70に表示されたり、表示部70に表示される情報の単位が切り替わるなどの表示モードの切り替えが行われるようになる。従って、モード切り替えスイッチ80を操作するという簡素な操作で、表示部70の表示モードを様々に切り替えることができ、計測結果の表示態様に対する多様な要望に応えることが可能になり、ユーザーの利便性を更に向上できる。
【0063】
なお
図9で説明した構成の慣性計測装置10においては、モード切り替えスイッチ80が基板40に設けられる必要は必ずしもなく、例えば基板40以外の基板にモード切り替えスイッチ80を設けてもよい。例えば処理部50等が設けられる基板40ではなく、表示部70が設けられる基板48にモード切り替えスイッチ80を設けてもよい。或いは例えばセンサーユニット20の上面にモード切り替えスイッチ80を設置するなどの種々の変形実施が可能である。
【0064】
また
図9に示すように、モード切り替えスイッチ80は、慣性計測装置10から取り付け面2に向かう方向DR1に直交する方向DR2において可動する可動部81を有する。そしてモード切り替えスイッチ80の可動部81の可動により、表示部70の表示モードの切り替えが指示される。このようにすれば、ユーザーは、例えばその上面に手の平が接するように慣性計測装置10を把持し、慣性計測装置10の上面に平行な方向である方向DR2において可動部81を可動させることで、表示部70の表示モードの切り替えを指示できるようになる。従って、ユーザーは、簡素な操作で表示モードの切り替えを指示して、自身が所望する表示モードで、慣性センサーの検出情報に基づく情報を表示部70に表示させることが可能になる。
【0065】
またモード切り替えスイッチ80の可動部81は、非押下状態においては、方向DR1での平面視においてセンサーユニット20の辺から突出している。このようにすれば、ユーザーが例えばその上面に手の平が接するように慣性計測装置10を把持したときに、モード切り替えスイッチ80の可動部81が、非押下状態において突出した状態になっている。このため、ユーザーが、慣性計測装置10を把持しながら、突出した可動部81を例えば手の指を用いて押すことで、表示部70の表示モードが切り替わるようになる。従って、非押下状態においてセンサーユニット20の上面に平行な方向に突出している可動部81を押すだけという簡素な操作で、表示部70の表示モードが切り替わるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0066】
また慣性計測装置10は、慣性計測装置10の計測を開始するための計測開始スイッチ84を含む。このような計測開始スイッチ84を設ければ、PC等により計測開始のコマンドを発行するといような処理は不要になる。そしてユーザーが計測の開始を所望するときには、計測開始スイッチ84を押すという簡素な操作で、慣性計測装置10の計測を開始できるようになる。
【0067】
また計測開始スイッチ84は、取り付け面2に向かう方向DR1に直交する方向DR2において可動する可動部85を有する。そして計測開始スイッチ84の可動部85の可動により、慣性計測装置10の計測開始が指示される。このようにすれば、ユーザーは、例えばその上面に手の平が接するように慣性計測装置10を把持し、上面に平行な方向である方向DR2において可動部85を可動させることで、慣性計測装置10の計測開始を指示できるようになる。従って、ユーザーは、自身が所望するタイミングにおいて、簡素な操作で慣性計測装置10の計測の開始を指示できるようになる。
【0068】
また慣性計測装置10は、メモリー102と、慣性計測の計測基準情報をメモリー102に記憶させる指示を行うためのティーチスイッチを含む。
図9では例えば計測開始スイッチ84がティーチスイッチとして兼用され、計測開始スイッチ84が長押しされると、学習モードになり、慣性計測の計測基準情報であるしきい値がメモリー102に記憶される。そして、例えばこのしきい値を判定基準とする計測の判定処理が処理部50により行われたり、或いはこのしきい値を判定基準とする計測の判定結果が表示部70に表示されるようになる。このようにすれば、計測対象となる装置の状況や環境状況に応じた計測基準情報を慣性計測装置10に学習させて、当該計測基準情報を用いた計測を実現できるようになる。
【0069】
また計測開始スイッチ84と兼用されるティーチスイッチは、方向DR2において可動する可動部85を有する。そしてティーチスイッチの可動部85の可動により、計測基準情報のメモリー102への記憶が指示される。このようにすれば、ユーザーは、例えばその上面に手の平が接するように慣性計測装置10を把持し、上面に平行な方向である方向DR2において可動部85を可動させることで、計測基準情報のメモリー102への記憶を指示できるようになる。従って、ユーザーは、自身が慣性計測装置10に学習させたいと所望する期間において、判断基準情報を慣性計測装置10に学習させることが可能になる。
【0070】
また慣性計測装置10は、モード切り替えスイッチ80が設けられる基板40を含む。例えば処理部50又は表示部60などが設けられる基板40に対して、モード切り替えスイッチ80が設けられる。そして例えばセンサーユニット20の上面に平行に配置された基板40に対して、モード切り替えスイッチ80が実装される。これによりモード切り替えスイッチ80を慣性計測装置10に対してコンパクトな実装形態で実装することが可能になる。特にモード切り替えスイッチ80の可動部81の可動方向を、基板40の面に平行な方向にすることで、モード切り替えスイッチ80のコンパクトな実装の実現が可能になる。
【0071】
そして
図1、
図2等で説明したように、慣性計測装置10は、センサーユニット20と基板40とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材11、12、13を含む。即ち、慣性センサーを有するセンサーユニット20と、モード切り替えスイッチ80が設けられた基板40とが、固定部材11、12、13により着脱自在に固定される。このようにすれば、慣性計測装置10に組み込むセンサーユニット20の種類や基板40の種類を自在に変更できるようになり、慣性計測装置10の拡張性を向上できる。また慣性計測装置10は、センサーユニット20と基板40が固定部材11、12、13により固定された状態で取り付け面2に取り付け可能になるため、共振等に起因する望ましくない振動等が慣性計測装置10に伝わって、計測に悪影響を及ぼしてしまう事態も抑制できる。
【0072】
また慣性計測装置10は、第1基板である基板40と、第2基板である基板48を含み、モード切り替えスイッチ80は基板40に設けられ、表示部70は基板48に設けられる。そして基板40はセンサーユニット20と基板48との間に設けられる。このようにすれば、基板40に設けられたモード切り替えスイッチ80の操作が行われると、基板48に設けられた表示部70の表示モードが切り替わるようになる。そして、モード切り替えスイッチ80は、センサーユニット20と基板48との間に設けられた基板40に設けられるため、例えば慣性計測装置10の高さ方向における中央付近にモード切り替えスイッチ80が配置されるようになり、モード切り替えスイッチ80の操作性を向上できる。一方、表示部70は、基板40の上方向である方向DR4側に配置された基板48に設けられるため、ユーザーが見やすい位置に表示部70を配置できるようになる。
【0073】
また表示部70は、検出情報に基づく判定処理の判定結果として、第1表示モードでは、第1判定基準における判定結果を表示し、第2表示モードでは、第2判定基準における判定結果を表示する。一例としては、第1表示モードでは、表示部70は
図10のような判定結果を表示し、第2表示モードでは、表示部70は
図11のような判定結果を表示する。このようにすれば、第1判定基準における判定結果が表示される第1表示モードと、第2判定基準における判定結果が表示される第2表示モードとを、モード切り替えスイッチ80により切り替えることが可能になる。従って、ユーザーがモード切り替えスイッチ80を操作することで、異なる判定基準での計測の判定結果が表示部70に表示されるようになり、様々な判定基準での判定結果をユーザーに提示できるようになる。
【0074】
この場合に第1判定基準はVC(Vibration Criteria)の判定基準であり、第2判定基準はユーザーが設定した判定基準である。例えば第1表示モードでは、
図10に示すように、第1判定基準であるVCの判定基準における判定結果が表示される。例えば慣性計測装置10により計測された振動が、環境振動基準の指標であるVC-A、VC-B、VC-C、VC-D、VC-E等のいずれを満たしているかが表示される。一方、第2表示モードでは、
図11に示すように、ユーザーが設定した判定基準における判定結果が表示される。例えばユーザーが設定した判定基準に対して、慣性計測装置10の計測結果がどの程度であるのかが表示される。例えばユーザーが設定した判定基準がしきい値である場合に、計測値が、しきい値に対してどの程度の割合であるのかが表示される。このようにすれば、VCの判定基準における判定結果が表示される第1表示モードと、ユーザーが設定した判定基準における判定結果が表示される第2表示モードとを、モード切り替えスイッチ80により切り替えることが可能になる。なお発光素子群62、64により構成される表示部60を用いる場合には、
図7から明らかなように、発光素子群62を用いて、VC-A、VC-B、VC-C、VC-D、VC-E等のいずれを満たしているかが表示される。また発光素子群64を用いて、例えばピーク値が、L(ロー)、M(ミドル)、H(ハイ)のいずれであるかが表示される。即ちL、M、Hの位置に対応する発光素子が発光することで、ピーク値がローレベル、中間レベル、ハイレベルのいずれであるかが表示される。なお
図7の「A」はアラーム状態を示し、「A」の位置に対応する発光素子が発光することで、計測値がしきい値を超えるなどのアラーム状態になったことがユーザーに知らされる。
【0075】
またモード切り替えスイッチ80によって、検出情報に基づき表示される情報の単位が切り替わる。例えば振動の計測の場合には、
図10のように、モード切り替えスイッチ80の操作により、振動変位の単位(μm)、振動速度の単位(mm/s)、振動加速度の単位(Gal)というように、表示される計測値の単位が切り替わる。このようにすれば、モード切り替えスイッチ80の操作により、様々な単位での計測値をユーザーに表示できるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0076】
また慣性計測装置10は、検出情報に基づく処理を行う処理部50を含む。そして処理部50は検出対象の振動情報の解析処理を行い、表示部70は解析処理の結果情報を表示する。なお表示部60も同様に解析処理の結果情報を表示する。例えば処理部50は、センサーユニット20の慣性センサーからの検出情報に基づいて、振動情報のFFT解析等の解析処理を行う。そして表示部70は、解析処理の結果情報として、例えば振動のピーク周波数や、ピーク周波数での振動変位、振動速度又は振動加速度などを表示する。このようにすれば、慣性センサーの検出情報がユーザーにとって扱いにくい情報である場合にも、この検出情報の解析処理を処理部50が行って、その解析処理の結果情報を表示部70が表示することで、ユーザーは、検出対象の振動状態がどのような状態であるのかを容易に把握できるようになる。
【0077】
3.無線通信部、アンテナ部
本実施形態の慣性計測装置10では、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく情報を無線により外部に送信するために無線通信部90と、無線通信部90に接続されるアンテナ部92を設けている。無線通信部90は、例えばブルートゥース(登録商標。以下、適宜、単にBTと記載する)などの近接無線通信を行うデバイスであり、例えば集積回路装置である無線通信ICなどにより実現される。なお無線通信部90が行う無線通信はBTには限定されず、ジグビー、ワイサンなどの近接無線通信であってもよいし、Wi-Fi(登録商標)の無線通信であってもよい。一方、後述の
図15~
図20で説明するようにセンサーユニット20は、慣性センサーが設けられるセンサー基板210と、センサー基板210を収容する導電体のケース24を含む。ケース24は、例えば容器220と蓋部222を含み、この容器220と蓋部222により形成される収容空間にセンサー基板210が収容される。
図15では、センサー基板210には、慣性センサーとして、加速度センサー30X、30Y、30Zが設けられている。加速度センサー30X、30Y、30Zは、各々、X軸、Y軸、Z軸の方向での加速度の情報を検出情報として検出する。
図19、
図20では、センサー基板210には、慣性センサーとして加速度センサー32と、角速度センサー34X、34Y、34Zが設けられている。加速度センサー32は、X軸、Y軸、Z軸の方向での加速度の情報を検出情報として検出する。角速度センサー34X、34Y、34Zは、各々、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りでの角速度の情報を検出情報として検出する。
【0078】
図15~
図20においてケース24は、金属等の導電体の材料で形成される。金属としては、アルミニウム、亜鉛、ステンレスなどを用いることができる。このように、慣性センサーが実装されるセンサー基板210を、導電体のケース24内に収容することで、外部からの電磁波等が慣性センサーに与える悪影響を低減できる。例えば導電体のケース24が設けられていないと、外部からの電磁波等により、慣性センサーの検出情報にドリフトが発生するなどの問題が生じるが、導電体のケース24の中に慣性センサーを設けることで、このような問題の発生を抑制できる。
【0079】
しかしながら、このような導電体のケース24が、アンテナ部92の近くにあると、アンテナ部92の感度が低下してしまうという問題が発生することが判明した。例えばアンテナ部92は基板に形成された金属配線によるインダクターにより実現されるが、例えば導電体のケース24の直上に、アンテナ部92の金属配線のインダクターが位置すると、アンテナ部92の感度が大幅に低下してしまう。
【0080】
そこで本実施形態では
図12に示すように、慣性計測装置10から取り付け面2に向かう方向をDR1としたときに、方向DR1での平面視において、センサーユニット20のケース24の辺から突出するようにアンテナ部92を設けている。例えば
図12において基板40は、対向する短辺である辺SD1、SD2と、対向する長辺である辺SD3、SD4を有する。辺SD1から辺SD2に向かう方向がDR3であり、DR3の反対方向がDR6である。辺SD3から辺SD4に向かう方向がDR2であり、DR2の反対方向がDR5である。そしてアンテナ部92は、基板40の短辺である辺SD1から突出しており、辺SD1に対応するセンサーユニット20の辺からも突出している。具体的には辺SD1から方向DR6側に突出するようにアンテナ部92が設けられている。
【0081】
このようにすれば、例えばセンサーユニット20の導電体のケース24の直上には、アンテナ部92が位置しないようになる。具体的には導電体のケース24の直上には、アンテナ部92の金属配線のインダクターが位置しないようになる。従って、導電体のケース24を原因とするアンテナ部92の感度の低下を抑制することが可能になる。即ち
図12において辺SD1の方向DR3側にアンテナ部92が設けられていると、アンテナ部92の直下の導電体のケース24の存在が原因となってアンテナ部92の感度が低下してしまう。一方、
図12のように辺SD1の方向DR6側にアンテナ部92を設けることで、アンテナ部92の直下には導電体のケース24は存在しないようになり、その分だけアンテナ部92の感度を向上できる。
【0082】
以上のように本実施形態の慣性計測装置10は、少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニット20と、慣性センサーの検出情報に基づく情報を無線により送信する無線通信部90と、無線通信部90に接続されるアンテナ部92を含む。このように無線通信部90とアンテナ部92を設けることで、慣性センサーの検出情報に基づく情報を無線により外部に送信することが可能になる。これにより、例えば慣性計測装置10を有線で外部装置に接続しなくても、検出情報に基づく情報を外部装置に送信できるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0083】
ここでセンサーユニット20は、慣性センサーと、慣性センサーが設けられるセンサー基板210と、センサー基板210を収容する導電体のケース24を含む。即ち
図15では、慣性センサーとして加速度センサー30X、30Y、30Zが設けられるセンサー基板210が、ケース24に収容される。
図19、
図20では、慣性センサーとして加速度センサー32、角速度センサー34X、34Y、34Zが設けられるセンサー基板210が、ケース24に収容される。このようにすれば、導電体のケース24内に慣性センサーが収容されるようになり、外部からの電磁波等により慣性センサーの検出情報の精度が劣化してしまうのを抑制できる。
【0084】
そして
図12に示すように本実施形態の慣性計測装置10では、取り付け面2へと向かう方向DR1の平面視において、アンテナ部92は、ケース24の辺から突出するように設けられる。即ちアンテナ部92は、基板40の辺SD1から突出しており、この辺SD1に対応する下方のケース24の辺からも突出している。このようにすれば、導電体のケース24を原因とするアンテナ部92の感度の低下を抑制できる。従って、慣性センサーを導電体のケース24内に収容することによる慣性センサーの検出精度の劣化の抑制と、アンテナ部92の感度の向上とを両立して実現できるようになる。
【0085】
なお
図12で説明した構成の慣性計測装置10においては、無線通信部90やアンテナ部92が基板40に設けられる必要は必ずしもなく、例えば基板40以外の基板に無線通信部90やアンテナ部92を設けてもよい。例えば処理部50等が設けられる基板40ではなく、表示部70が設けられる基板48に無線通信部90やアンテナ部92を設けてもよい。或いは例えばセンサーユニット20の上面に無線通信部90やアンテナ部92を設置するなどの種々の変形実施が可能である。
【0086】
また慣性計測装置10は、無線通信部90が設けられる基板40と、保護板160を含む。そして
図1、
図2で説明したように、基板40は、センサーユニット20と保護板160との間に設けられ、
図12に示すように、方向DR1での平面視において、アンテナ部92は、保護板160から非突出になっている。即ちアンテナ部92は、基板40の辺SD1やセンサーユニット20の対応する辺から方向DR6側に突出しているが、保護板160の対応する辺からは方向DR6側に突出していない。例えばアンテナ部92の下方には、センサーユニット20の導電体のケース24が存在しないが、アンテナ部92の上方には、アンテナ部92を覆うように保護板160が設けられる。このように平面視においてアンテナ部92を保護板160から非突出にして、アンテナ部92を覆うように保護板160を設ければ、保護板160が保護部材となって、アンテナ部92に対して望ましくない衝撃が加わるなどの事態を防止できる。例えばユーザーの手の指等がアンテナ部92に誤って触れてしまい、アンテナ部92が破損等してしまう事態の発生を抑制できる。従って、アンテナ部92を、平面視において導電体のケース24から突出させることで通信の感度を向上させながら、平面視において保護板160から非突出にすることで、アンテナ部92を外部の衝撃から保護することが可能になる。
【0087】
また慣性計測装置10は、無線通信部90が設けられる基板40を含み、この基板40の短辺である辺SD1から突出するように、アンテナ部92が設けられる。具体的には、処理部50等が設けられる基板40には、通信基板94が実装されており、この通信基板94に無線通信部90やアンテナ部92が設けられている。即ち通信基板94に対して、無線通信部90である無線通信ICが実装されると共に、通信基板94のうち基板40の辺SD1から突出する基板部分に対して、金属配線によるインダクターを形成することで、アンテナ部92が実現されている。なお無線通信部90が実装される基板部分とアンテナ部92が形成される基板部分を、一体の基板により実現してもよいし、別体の基板により実現してもよい。このように基板40の辺SD1から突出するようにアンテナ部92を設ければ、望ましくない衝撃がアンテナ部92に加わるリスクを低減できる。例えばユーザーが、その上面に手の平が接するように慣性計測装置10の2つの長辺を把持した場合に、ユーザーの手の指等がアンテナ部92に触れて、望ましくない衝撃がアンテナ部92に加わってしまう事態の発生を抑制できるようになる。
【0088】
また
図12に示すように無線通信部90は、基板40の短辺である辺SD1に設けられる。具体的には辺SD1の方向DR3側において辺SD1に沿って無線通信部90が配置される。そして、この無線通信部90に接続されるアンテナ部92が、辺SD1から方向DR6側に突出するように設けられる。このようにすれば、基板40の辺SD1に配置される無線通信部90に対して、ショートパスでアンテナ部92を電気的に接続すると共に、アンテナ部92を辺SD1から突出させて、アンテナ部92の感度を向上できるようになる。これにより基板40に対して、無線通信部90及びアンテナ部92をコンパクトな実装形態で実装しながら、アンテナ部92の感度の向上も実現できるようになる。
【0089】
また慣性計測装置10は、無線通信部90が設けられる基板40と、基板40に設けられ、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部50を含む。そして無線通信部90は、処理部50によって処理された情報を送信する。例えば処理部50が、慣性センサーの検出情報に対して加工処理を行った場合には、無線通信部90は、例えば加工処理後の検出情報を無線により外部に送信する。また処理部50が、慣性センサーの検出情報の解析処理を行った場合には、無線通信部90は、例えば解析処理の結果情報を外部に送信する。このようにすれば、慣性センサーの検出情報そのものではなく、当該検出情報に対して処理部50が所定の処理を行うことで得られた情報を、無線通信部90により外部に無線で送信できるようになる。従って、慣性計測装置10の外部装置は、慣性計測装置10の処理部50が行う処理を行わなくても済むようになり、慣性計測装置10を含む計測システムの処理負荷の軽減や低コスト化等を図れるようになる。
【0090】
また慣性センサーの検出情報は、その扱いが難しく、専門の知識等が必要になるため、ユーザーにとっての利便性が欠けるという問題があるが、慣性計測装置10が処理部50の処理後の情報を送信することで、ユーザーにとって扱い易い情報を送信できるようになり、ユーザーの利便性を向上できる。
【0091】
また
図12に示すように本実施形態の慣性計測装置10では、基板の辺SD1から突出するようにアンテナ部92が設けられ、処理部50は、無線通信部90と、辺SD1に対向する辺SD2との間に設けられる。辺SD1は第1短辺であり、辺SD2は第2短辺である。例えば基板40の辺SD1から辺SD2に向かう方向をDR3とし、方向DR3の反対方向をDR6としたときに、アンテナ部92は、基板40の辺SD1から突出するように、無線通信部90の方向DR6側に設けられる。そして無線通信部90は、アンテナ部92の方向DR3側に設けられ、処理部50は、無線通信部90の方向DR3側に設けられる。このようにすれば、アンテナ部92、無線通信部90、処理部50を、基板40の短辺である辺SD1から対向する辺SD2へと向かう方向に沿って、効率的に配置できるようになる。例えば基板40の長辺方向である辺SD3、SD4の方向に沿って、アンテナ部92、無線通信部90、処理部50の順で並べて配置できるようになり、基板40での回路部品の実装効率を向上できる。
【0092】
また慣性計測装置10は、外部との間で有線でデータを通信するためのインターフェース部100を含む。そしてインターフェース部100は、基板の第2短辺である辺SD2に配置される。具体的には辺SD2の方向DR6側において辺SD2に沿ってインターフェース部100が配置される。インターフェース部100は、例えばUART、GPI、或いはSPIなどの通信インターフェースを実現する回路である。このようなインターフェース部100を設ければ、広く用いられているUART、GPI、SPIなどの有線の通信インターフェースにより、慣性センサーの検出情報に基づく情報を外部装置に送信したり、外部装置からのコマンドを受け付けることなどが可能になる。そしてインターフェース部100を基板40の辺SD2に設けることで、アンテナ部92、無線通信部90、処理部50、インターフェース部100を、基板40の長辺方向に沿って、効率的に配置できるようになり、基板40での回路部品の実装効率を向上できる。
【0093】
なお
図12に示すように、基板40の長辺である辺SD3には、モード切り替えスイッチ80、リセットスイッチ82及び計測開始スイッチ84の少なくとも1つが設けられる。こうすることで、慣性計測装置10の短辺である辺SD1と辺SD2の間の領域を利用して、無線通信部90、処理部50、インターフェース部100を配置すると共に、基板40の長辺である辺SD3に沿った領域を利用して、モード切り替えスイッチ80やリセットスイッチ82や計測開始スイッチ84を配置できるようになり、効率的な実装のレイアウトを実現できる。また慣性計測装置10は、センサーユニット20と、無線通信部90等が設けられる基板40とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材11、12、13を含む。このようにすれば、前述したように、慣性計測装置10の拡張性を向上できると共に、共振等に起因する望ましくない振動等が慣性計測装置10に伝わって、計測に悪影響を及ぼしてしまう事態も抑制できるようになる。
【0094】
また
図13に示すように本実施形態の慣性計測装置10では、センサーユニット20は、基板40に対向する面にセンサー側のコネクター26を有する。即ちセンサーユニット20の上面にコネクター26を有する。また基板40は、センサーユニット20に対向する面に、センサー側のコネクター26に接続される基板側のコネクター46を有する。即ち基板40の下面にコネクター46を有し、この基板40のコネクター46が、センサーユニット20のコネクター26に電気的に接続される。具体的には
図1、
図2に示すように、センサーユニット20と基板40とが固定部材11、12、13により固定された状態において、センサーユニット20のコネクター26と基板40のコネクター46とが電気的に接続される。これにより、センサーユニット20の慣性センサーの検出情報を、これらのコネクター26、46を介して基板40に伝達することが可能になる。そして基板40に設けられた処理部50が、慣性センサーの検出情報に基づく処理を行ったり、基板40に設けられた表示部60が、慣性センサーの検出情報に基づく表示を行えるようになる。なおコネクター26は、例えば複数のピン端子により実現されるオス側のコネクターであり、コネクター46は、例えばオス側のコネクターが接続可能なメス側のコネクターである。
【0095】
図14は本実施形態の慣性計測装置10の動作を説明する状態遷移図である。慣性計測装置10は、電源が供給されて起動すると、まず初期化処理の状態に移行する。そしてスライドスイッチ86による選択により、BT(ブルートゥース(登録商標))の有効が検知されると、BTの設定を行い、設定が完了すると初期化処理の状態に戻る。BTが有効の場合には有線通信は無効になる。一方、スライドスイッチ86による選択により、ライト表示動作の移行が検知されると、ライト表示モードに移行する。ライト表示モードでは、インターフェース部100がGPIOの出力モードになり、慣性計測装置10を用いたパトライト(登録商標)等によるライト表示が可能になる。
【0096】
スライドスイッチ86によりBTの有効やライト表示モードへの移行が選択されていなかった場合には、待機動作への移行が検知されたとして、待機モードに移行する。待機モードにおいて、例えば計測開始スイッチ84が長押しされる操作が行われたり、コマンドの発行により、学習要求が行われると、学習モードに移行して、学習処理が行われる。学習モードでは、例えば表示部60の所定の発光素子が点滅したり、表示部70に例えば「LEARING」の文字が表示され、学習中であることがユーザーに知らされる。そして学習モードの学習期間において計測が行われて、学習期間での計測結果に基づいて、慣性計測の計測基準情報である計測のしきい値が求められる。そして、求められたしきい値が、不揮発性メモリーであるメモリー102に記憶される。学習処理が完了すると、待機モードに戻る。また待機モードにおいて、例えば外部装置からのコマンド発行等により、設定要求が行われると、慣性計測装置10についての各種の設定処理が行われ、設定が完了すると、待機モードに戻る。
【0097】
また待機モードにおいて、計測開始スイッチ84が押されて、状態監視開始要求が行われると、状態監視モードに移行する。状態監視モードでは、表示部60、表示部70において、計測結果についての表示が行われる。また、このときにモード切り替えスイッチ80が押されると、表示モードが切り替わる。また状態監視モードにおいて、例えば計測値がしきい値を超えると、アラーム状態に移行し、例えば表示部60のアラーム用の発光素子が点滅する。またアラーム状態に移行すると、ログデータの保存も行われる。状態監視モードやアラーム状態において、例えば計測開始スイッチ84が再度、押されるなどして、状態監視停止要求が行われると、待機モードに戻る。
【0098】
以上の本実施形態の慣性計測装置10では、ユーザーは、まず慣性計測装置10を装置又は床面に取り付けて、計測開始スイッチ84を押す。例えば慣性計測装置10の上面が手の平に接触するように慣性計測装置10を把持して、手の指等を用いて計測開始スイッチ84を押す。なお慣性計測装置10にしきい値を学習させる場合には、ユーザーは、計測開始スイッチ84を長押しして、計測のしきい値を学習させてから、計測開始スイッチ84を押す。そして計測開始スイッチ84を押した後、所与の計測時間を待つ。例えば計測時間は5~10秒の長さであり、計測時間の長さは設定可能である。そして計測時間が終了すると、表示部60の発光素子であるLEDによる表示や、表示部70での表示パネル72による表示により、計測結果がユーザーに知らされる。このときユーザーは、モード切り替えスイッチ80を押すことで、種々の表示モードに切り替えることができる。ユーザーは計測開始スイッチ84を再度、押すことで、状態監視モードを停止して、待機モードに移行させることができる。このように本実施形態の慣性計測装置10によれば、ユーザーは、簡素な操作で計測を行うことができる。そして慣性センサーの検出情報に基づく情報が表示部60、70に表示されるため、分かりやすい情報表示により計測結果を確認でき、利便性を向上できる。またモード切り替えスイッチ80を操作することで、種々の表示モードでの計測結果を確認できるようになる。また無線通信部90及びアンテナ部92が設けられているため、慣性センサーの検出情報に基づく情報を、無線による通信により外部装置に送信できる。この場合にアンテナ部92がセンサーユニット20のケース24の主面から突出するように設けられているため、高いアンテナ感度での無線通信が可能になる。
【0099】
4.センサーユニットの第1構成例
図15にセンサーユニット20の第1構成例を示す。
図15はセンサーユニット20の分解斜視図である。
図15のセンサーユニット20は、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーが設けられるセンサー基板210と、センサー基板210を収容するケース24を含む。
図15では、少なくとも1つの加速度センサーとして、X軸、Y軸、Z軸の方向での加速度を検出する加速度センサー30X、30Y、30Zが、センサー基板210に設けられている。加速度センサー30X、30Y、30Zは、各々、その主面がX軸、Y軸、Z軸に直交するようにセンサー基板210に実装されている。加速度センサー30X、30Y、30Zは例えば水晶振動子を用いた加速度センサーであり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の加速度センサーに比べて高精度に加速度を検出できる。これにより装置や床面の振動等を高精度に検出できるようになる。なお
図15では、3軸の加速度検出用に3つの加速度センサー30X、30Y、30Zがセンサー基板210に設けられているが、1軸の加速度検出用の1つの加速度センサーをセンサー基板210に設けたり、2軸の加速度検出用の2つの加速度センサーをセンサー基板210に設けるなどの種々の変形実施が可能である。
【0100】
またセンサー基板210には、ASICやマイクロコンピューターなどにより実現される処理部212が設けられている。例えば慣性計測装置10の処理部50が行う処理の一部又は全部を、このセンサーユニット20の処理部212が実行するようにしてもよい。また加速度センサー30X、30Y、30Zが設けられるセンサー基板210の主面である第1面の裏面である第2面には、複数のコネクター端子により構成されるコネクター26が設けられている。
図13で説明したように、このセンサーユニット20のコネクター26が、慣性計測装置10の基板40の裏面のコネクター46に接続される。
【0101】
ケース24は、金属等の導電材料で形成されており、容器220と蓋部222を有する。また、容器220の内部は、底壁232と側壁231とで囲まれた空間となっている。そして容器220と蓋部222で形成される収容空間にセンサー基板210が収容され、ネジ等の固定部材で容器220と蓋部222が固定されて密封される。センサー基板210と側壁231は直交してもよい。なお蓋部222とセンサー基板210との間には、緩衝材となるシール部材224が設けられる。
【0102】
図16にセンサーユニット20の第1構成例の概要を示す断面図を示す。加速度センサー30X、30Y、30Zは、それぞれ蓋部330を有する。加速度センサー30Xの蓋部330は、容器220の側壁231に対向するように配置されている。また、加速度センサー30Yの蓋部330も、容器220の紙面における奥側の側壁231に対向するように配置されている。これにより、側壁231からのノイズが蓋部330で吸収されるため、加速度センサー30X、30Yへのノイズ伝搬が軽減されるようになる。この点についての詳細については後述する。
【0103】
5.加速度センサー
ここで、加速度センサー30X、30Y、30Zの構成について、
図17及び
図18を参照して説明する。
図17は、加速度センサー素子400の斜視図である。
図18は、加速度センサー素子400を用いた加速度検出器300の正面図であり、断面図である。
【0104】
図17では、互いに直交する3つの軸として、x軸、y’軸、z’軸を図示している。例えば加速度センサー30X、30Y、30Zの基材として用いる圧電体材料である水晶の電気軸としてのx軸、機械軸としてのy軸、光学軸としてのz軸からなる直交座標系を想定する。この直交座標系において、x軸を回転軸として、z軸をy軸の-y方向へ+z側が回転するように回転角度φだけ傾けた軸をz’軸とする。回転角度φは、好ましくは、-5°≦φ≦15°である。またy軸をz軸の+z方向へ+y側が回転するように回転角度φだけ傾けた軸をy’軸とする。この場合に、x軸及びy’軸で規定される平面に沿って切り出されて平板状に加工され、該平面と直交するz’軸方向に所定の厚さtを有した水晶z板を、基材として用いた例を説明する。なお、z’軸は、加速度検出器300において、重力が作用する方向に沿っている軸としている。また水晶z板は正確には水晶z’板であるが水晶z板と記載する。
【0105】
まず
図17を参照して、加速度センサー素子400の構成について説明する。加速度センサー素子400は、基部410などを含む基板構造体401と、基板構造体401に接続されて物理量を検出する加速度検出素子470と、質量部480、482とを有する。
【0106】
加速度センサー素子400の基板構造体401は、基部410と、基部410に継手部412を介して連結している可動部414と、連結部440と、基部410に連結して設けられている第1支持部420、第2支持部430、第3支持部450及び第4支持部460と、を備えている。ここで、第3支持部450と第4支持部460とは、連結部440が配置されている側で連結されている。
【0107】
基板構造体401は、圧電材料である水晶の原石などから上述のように所定の角度で切り出された水晶z板の水晶基板を用いている。当該水晶基板をパターニングすることにより、基板構造体401としてこれらが一体に形成されている。パターニングとしては、例えば、フォトリソグラフィー技術、及びウェットエッチング技術を用いることができる。
【0108】
基部410は、継手部412を介して可動部414と接続され、可動部414を支持している。基部410は、可動部414と、可動部414の継手部412の位置する側とは反対側に位置する連結部440と、第1支持部420及び第2支持部430と、連結部440側で連結されている第3支持部450及び第4支持部460と、に接続されている。
【0109】
継手部412は、基部410と可動部414との間に設けられ、基部410及び可動部414と接続されている。継手部412のz’軸方向の長さである継手部412の厚さは、基部410の厚さ及び可動部414の厚さと比べて薄くなっており、x軸方向からの断面視で、くびれ状に形成されている。継手部412は、例えば、継手部412を含む基板構造体401を、いわゆるハーフエッチングすることによって厚みの薄い薄肉部を形成することで、設けることができる。継手部412は、可動部414が基部410に対して変位する際に、つまり回動する際に、中間ヒンジである支点として、x軸方向に沿った回転軸としての機能を有している。
【0110】
可動部414は、継手部412を介して基部410に接続されている。可動部414は、その形状が板状であり、z’軸方向に沿って互いに対向し表裏の関係である主面414a、414bを有している。可動部414は、主面414a、414bと交差する方向であるz’軸方向に加わる物理量である加速度に応じて、継手部412を支点として、つまり継手部412を回転軸として、z’軸方向に変位することができる。
【0111】
連結部440は、第3支持部450が設けられている+x方向側の基部410から、x軸方向に沿って可動部414を囲むように延在し、第4支持部460が設けられている-x方向側の基部410に接続して設けられている。
【0112】
第1支持部420及び第2支持部430は、加速度検出素子470を中心にして対称の構成で設けられている。同様に、第3支持部450及び第4支持部460は、加速度検出素子470を中心に対称の構成で設けられている。そして第1支持部420、第2支持部430、第3支持部450及び第4支持部460において、基板構造体401が被固定部に支持されるようになっている。被固定部は、
図18を参照して後述する加速度検出器300のパッケージ310である。
【0113】
加速度検出素子470は、基板構造体401の基部410と、可動部414とに接続して設けられている。換言すると、加速度検出素子470は、基板構造体401の基部410と、可動部414とに跨がるように設けられている。加速度検出素子470は、振動部としての振動梁部471a、471bと、第1基部472aと第2基部472bと、を有している。第1基部472aと第2基部472bが基部410に接続されている加速度検出素子470は、例えば、可動部414が物理量に応じて変位することで、振動梁部471a、471bに応力が生じ、振動梁部471a、471bに発生する物理量検出情報が変化する。換言すると、振動梁部471a、471bの振動周波数である共振周波数が変化する。なお、本実施形態において加速度検出素子470は、2本の振動梁部471a、471bと、第1基部472a及び第2基部472bと、を有する双音叉素子であり、双音叉振動素子である。なお、振動部としての振動梁部471a、471bは、振動腕、振動ビーム、柱状ビーム、ということもある。
【0114】
加速度検出素子470は、圧電材料である水晶の原石などから、上述した基板構造体401と同様に、所定の角度で切り出された水晶z板の水晶基板を用いている。加速度検出素子470は、当該水晶基板を、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によってパターニングすることにより形成されている。これにより、振動梁部471a、471b、及び第1基部472a、第2基部472bを、一体に形成することができる。
【0115】
なお、加速度検出素子470の材質は、前述の水晶基板に限定されるものではない。例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li2B4O7)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)等の圧電材料を用いることができる。また、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)などの圧電体皮膜を備えたシリコンなどの半導体材料を用いることができる。但し、基板構造体401と同様の材料を用いることが好ましい。加速度検出素子470には、例えば、不図示の引き出し電極や励振電極が設けられているが、説明は省略する。
【0116】
質量部480、482は、各々、可動部414の主面414aと、主面414aと表裏の関係で裏面となる主面414bと、に設けられている。より詳細には、質量部480、482は、不図示の質量接合材を介して主面414a及び主面414bに設けられている。質量部480、482の材質としては、例えば、銅(Cu)、金(Au)などの金属が挙げられる。
【0117】
また本実施形態では、加速度検出素子470は、振動部を振動梁部471a、471bの2つの柱状ビームにより構成した双音叉振動子を用いた構成を例示したが、これを1つの柱状ビームであるシングルビームにより構成することもできる。
【0118】
6.加速度検出器
次に
図18を参照して、上述した加速度センサー素子400を用いた加速度検出器300の構成について説明する。なお、ここで説明する加速度検出器300を、前述したセンサーユニット20の加速度センサー30X、30Y、30Zとして用いることができる。
【0119】
パッケージ310に加速度センサー素子400が収容されている。より詳細には、パッケージベース320と、蓋部330とが接続されて設けられた空間311に、加速度センサー素子400が収容されている。
【0120】
パッケージベース320は、凹部321を有し、当該凹部321内に加速度センサー素子400が設けられている。パッケージベース320の形状は、凹部321内に加速度センサー素子400を設けることができれば、特に限定されない。本実施形態においてパッケージベース320としては、例えば、セラミックスを用いている。しかし、これに限定されること無く、水晶、ガラス、シリコンなどの材料を用いることができる。
【0121】
パッケージベース320は、パッケージベース320の凹部321の内側の底面である内底面322から、蓋部330側に突出した段差部323を有する。段差部323は、例えば、凹部321の内壁に沿って設けられている。段差部323には、複数の内部端子340bが設けられている。
【0122】
内部端子340bは、加速度センサー素子400の第1支持部420、第2支持部430、第3支持部450、及び第4支持部460の各固定部に設けられた固定部接続端子79bと対向する位置、即ち固定部接続端子79bと平面視において重なる位置に設けられている。内部端子340bは、例えば、金属フィラーなどの導電性物質を含むシリコン樹脂系の導電性接着剤343を用いて、固定部接続端子79bと電気的に接続されている。このように、加速度センサー素子400は、パッケージベース320に実装され、パッケージ310内に収容される。
【0123】
パッケージベース320の内底面322と反対側の面である外底面324には、外部の部材に実装される際に用いられる外部端子344及びグランド端子345が設けられている。外部端子344は、図示しない内部配線を介して内部端子340bと電気的に接続されている。グランド端子345は、図示しない内部配線を介して蓋部330と電気的に接続されている。
【0124】
内部端子340b、外部端子344及びグランド端子345は、例えば、タングステン(W)等のメタライズ層に、ニッケル(Ni)、金(Au)などの皮膜をメッキなどの方法により積層した金属膜で構成されている。
【0125】
パッケージベース320には、パッケージ310の内部であるキャビティーを封止するための封止部350が、凹部321の底部に設けられている。封止部350は、パッケージベース320に形成された貫通孔325内に設けられている。貫通孔325は、外底面324から内底面322まで貫通している。
図18に示す例では、貫通孔325は、外底面324側の孔径が内底面322側の孔径より大きい段付きの形状を有している。封止部350は、貫通孔325に、例えば、金(Au)とゲルマニウム(Ge)合金、ハンダ等からなる封止材を配置し、加熱溶融後、固化させることで設けられる。封止部350は、パッケージ310の内部を気密に封止するために設けるものである。
【0126】
蓋部330は、パッケージベース320の凹部321を覆って設けられている。蓋部330の形状は、例えば、板状である。蓋部330としては、導電材料が好ましく、鉄(Fe)とニッケル(Ni)の合金、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。
【0127】
蓋部330は図示しない配線により、グランド端子345に電気的に接続されている。従って、蓋部330は接地されており、ノイズを吸収することができる。前述のとおり、加速度センサー30X、30Yの蓋部330は、容器220の側壁231に対向するように配置されている。これにより、側壁231からのノイズが蓋部330で吸収されるため、加速度センサー30X、30Yへのノイズ伝搬が軽減される。加速度センサー30X、30Yの蓋部330は、加速度センサー30X、30Yとの離間距離が小さい側の側壁231に対向するように配置されることが望ましい。蓋部330は、蓋部接合部材332を介して、パッケージベース320に接合されている。蓋部接合部材332としては、例えば、シームリング、低融点ガラス、無機系接着剤等を用いることができる。
【0128】
蓋部330をパッケージベース320に接合した後、パッケージ310の内部が減圧された状態、例えば真空度の高い状態で、貫通孔325内に封止材を配置し、加熱溶融後、固化させて封止部350を設けることによって、パッケージ310内を気密に封止することができる。パッケージ310の内部は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが充填されていてもよい。
【0129】
加速度検出器300において、外部端子344、内部端子340b、固定部接続端子79bなどを経由して、加速度センサー素子400の励振電極に駆動信号が与えられると、加速度センサー素子400の振動梁部471a、471bは、所定の周波数で振動する。即ち共振する。そして、加速度検出器300は、印加される加速度に応じて変化する加速度センサー素子400の共振周波数を出力信号として、出力することができる。
【0130】
7.センサーユニットの第2構成例
図19、
図20にセンサーユニット20の第2構成例を示す。
図19はセンサーユニット20の分解斜視図であり、
図20はセンサー基板210の平面図である。
図19、
図20のセンサーユニット20は、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーと、少なくとも1つの角速度センサーとが設けられるセンサー基板210と、センサー基板210を収容するケース24を含む。
図19、
図20では、少なくとも1つの加速度センサーとして、X軸、Y軸、Z軸の方向での加速度を検出する加速度センサー32が、センサー基板210に設けられている。加速度センサー32の内部には、X軸方向及びY軸方向での加速度を検出するセンサー素子と、Z軸方向での加速度を検出するセンサー素子が設けられている。これらのセンサー素子は例えばMEMSのセンサー素子である。なおセンサー基板210に、X軸、Y軸、Z軸の各軸に個別の加速度センサーを設けたり、X軸、Y軸、Z軸の2つの軸用又は1つの軸用の加速度センサーを設けるなどの変形実施が可能である。また
図19、
図20では、少なくとも1つの角速度センサーとして、X軸回り、Y軸回り、Z軸回りでの角速度を検出する角速度センサー34X、34Y、34Zが設けられている。角速度センサー34X、34Y、34Zは、各々、その主面がX軸、Y軸、Z軸に直交するようにセンサー基板210に実装されている。角速度センサー34X、34Y、34Zは、例えば水晶の振動子を用いて角速度を検出するジャイロセンサーである。このように加速度センサーのみならず角速度センサーをセンサー基板210に設けることで、振動等の検出のみならず、対象物の傾きや姿勢変化などを検出できるようになる。なお
図19、
図20では、3軸の角速度検出用に3つの角速度センサー34X、34Y、34Zがセンサー基板210に設けられているが、1軸の角速度検出用の1つの角速度センサーをセンサー基板210に設けたり、2軸の角速度検出用の2つの角速度センサーをセンサー基板210に設けるなどの種々の変形実施が可能である。
【0131】
また
図20に示すように、加速度センサー32等が設けられるセンサー基板210の主面である第1面には、複数のコネクター端子により構成されるコネクター26が設けられている。
図13で説明したように、このセンサーユニット20のコネクター26が、慣性計測装置10の基板40の裏面のコネクター46に接続される。またセンサー基板210の裏面である第2面には、ASICやマイクロコンピューターなどにより実現される不図示の処理部が設けられている。例えば慣性計測装置10の処理部50が行う処理の一部又は全部を、このセンサーユニット20の処理部が実行するようにしてもよい。
【0132】
ケース24は、金属等の導電材料で形成されており、容器220と蓋部222を有する。そして容器220と蓋部222で形成される収容空間にセンサー基板210が収容され、ネジ等の固定部材で容器220と蓋部222が固定されて密封される。なお蓋部222とセンサー基板210との間には、緩衝材となるシール部材224が設けられる。
【0133】
以上のように本実施形態の慣性計測装置は、少なくとも1つの慣性センサーを有するセンサーユニットと、慣性センサーの検出情報に基づく処理を行う処理部及び検出情報に基づく表示を行う表示部の少なくとも一方が設けられる基板と、センサーユニットと基板とを着脱可能に固定する少なくとも1つの固定部材とを含む。
【0134】
本実施形態によれば、センサーユニットの慣性センサーの検出状態に基づく処理を、基板に設けられた処理部により実行したり、或いは当該検出情報に基づく表示を、基板に設けられた表示部により行うことが可能になる。そしてセンサーユニットと基板とは、少なくとも1つの固定部材により着脱可能に固定されているため、慣性計測装置に組み込むセンサーユニットや基板の変更も可能になり、慣性計測装置の拡張性を向上できる。またセンサーユニットと基板が少なくとも1つの固定部材により固定されているため、計測精度の劣化も抑制できる。従って、計測精度の劣化を抑制しながら、拡張性を向上できる慣性計測装置の提供が可能になる。
【0135】
また本実施形態では、少なくとも1つの固定部材として、複数の柱状部材を含み、複数の柱状部材が、基板に設けられる複数の穴部、及びセンサーユニットに設けられる複数の穴部に嵌合することで、センサーユニットと基板とが着脱可能に固定されてもよい。
【0136】
このようにすれば、各種の組み合わせのセンサーユニットと基板とを自在に取り付けたり、取り外したりすることが可能になり、センサーユニットと基板の着脱可能な固定を実現できる。
【0137】
また本実施形態では、複数の柱状部材はネジ部材であってもよい。
【0138】
このようにすれば、ネジ部材を用いたネジによる固定が可能になるため、センサーユニットと基板を安定して固定できるようになる。
【0139】
また本実施形態では、慣性計測装置を取り付け面に取り付けるためのベースを含み、センサーユニットは、ベースと基板との間に設けられ、ベースは、少なくとも1つの固定部材によりセンサーユニットに固定されてもよい。
【0140】
このようにすれば、センサーユニットは、基板とベースとに挟まれるように固定部材により固定されるため、慣性センサーの検出精度が劣化してしまうなどの事態を抑制できる。
【0141】
また本実施形態では、ベースは、取り付け面側の面に、磁石である固定部を有してもよい。
【0142】
このようにすれば、固定部が取り付け面に磁石の磁力により吸着するようになるため、ユーザーの取り付け作業が容易になり、作業効率を向上できる。
【0143】
また本実施形態では、ベースは、取り付け面側の面に窪み部を有してもよい。
【0144】
このようにすれば、例えば慣性計測装置を両面テープにより取り付け面に取り付けるような使用態様等の場合に、当該両面テープを剥がす作業を容易化できる。
【0145】
また本実施形態では、基板には、慣性センサーの検出情報に基づく情報を無線により送信する無線通信部が設けられてもよい。
【0146】
このようにすれば、慣性センサーの検出情報に基づく情報を外部に無線で送信できるようになるため、利便性の向上等を図れる。
【0147】
また本実施形態では、基板には、外部との間で有線で通信するためのインターフェース部が設けられてもよい。
【0148】
このようにすれば、外部との間でインターフェース部を介して通信が可能になり、通信インターフェースについてのユーザーの様々な要望に応えることが可能になる。
【0149】
また本実施形態では、基板には、慣性計測装置のモード切り替えを行うためのモード切り替えスイッチ、慣性計測装置のリセットを行うためのリセットスイッチ、及び慣性計測装置の計測を開始するための計測開始スイッチの少なくとも1つが設けられてもよい。
【0150】
このような各種のスイッチを設ければ、ユーザーがこれらの各スイッチを操作することで、慣性計測装置が種々の動作を行うようになり、計測作業の簡素化や効率化を図れるようになる。
【0151】
また本実施形態では、保護板を含み、基板は、センサーユニットと保護板との間に設けられてもよい。
【0152】
このようにすれば、保護板による防塵機能を実現したり、或いは基板上の部品に対して、望ましくない衝撃が加わるなどの事態を防止できる。
【0153】
また本実施形態では、基板として第1基板と第2基板を含み、第1基板には、処理部が設けられ、第2基板には、表示パネルを有する表示部が設けられてもよい。
【0154】
このようにすれば、例えばセンサーユニットの慣性センサーの検出情報に基づく処理を、第1基板に設けられた処理部により実行し、その処理結果の情報を、第2基板に設けられた表示部の表示パネルに表示できるようになる。
【0155】
また本実施形態では、第1保護板と、第2保護板と、を含み、第1基板は、センサーユニットと第1保護板との間に設けられ、第2基板は、第1保護板と第2保護板との間に設けられてもよい。
【0156】
このようにすれば、第1保護板により、第1基板に設けられた部品を保護し、第2保護板により、第2基板に設けられた部品を保護できるようになる。
【0157】
また本実施形態では、第1基板には、発光素子群を有する表示部が設けられてもよい。
【0158】
このようにすれば、発光素子群の発光素子の発光による表示動作により、センサーユニットの慣性センサーの検出情報に基づく情報の表示を実現できるようになる。
【0159】
また本実施形態では、センサーユニットは、基板に対向する面にセンサー側のコネクターを有し、基板は、センサーユニットに対向する面に基板側のコネクターを有し、センサーユニットと基板とが固定部材により固定された状態において、センサー側のコネクターと基板側のコネクターは電気的に接続されてもよい。
【0160】
このようにすれば、センサーユニットと基板とが固定部材により固定された状態において、センサー側のコネクターと基板側のコネクターとが接続され、センサーユニットの慣性センサーの検出情報を、センサー側のコネクター及び基板側のコネクターを介して基板に伝達することが可能になる。
【0161】
また本実施形態では、センサーユニットは、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーが設けられるセンサー基板と、センサー基板を収容するケースと、を含んでもよい。
【0162】
このようにすれば、加速度センサーが設けられるセンサー基板とケースを有するセンサーユニットと、処理部及び表示部の少なくとも一方が設けられる基板とを、固定部材を用いて着脱可能に固定できるようになる。
【0163】
また本実施形態では、センサーユニットは、少なくとも1つの慣性センサーとして、少なくとも1つの加速度センサーと少なくとも1つの角速度センサーが設けられるセンサー基板と、センサー基板を収容するケースと、を含んでもよい。
【0164】
このようにすれば、加速度センサー及び角速度センサーが設けられるセンサー基板とケースを有するセンサーユニットと、処理部及び表示部の少なくとも一方が設けられる基板とを、固定部材を用いて着脱可能に固定できるようになる。
【0165】
また本実施形態では、ケースは、側壁を有し、加速度センサーは、加速度センサー素子と、ベース部と蓋部を有し、加速度センサー素子を収容するパッケージと、を含み、蓋部は導電材料からなり、且つ接地され、蓋部と側壁が対向するように配置されてもよい。
【0166】
このようにすれば、側壁からのノイズが蓋部で吸収されるため、加速度センサーへのノイズ伝搬が軽減されるようになる。
【0167】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また慣性計測装置の構成・動作等も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0168】
2…取り付け面、10…慣性計測装置、11、12、13…固定部材、
14、15、16、17、18、19…スペーサー、20…センサーユニット、
21、22、23…穴部、24…ケース、26…コネクター、
30X、30Y、30Z…加速度センサー、32…加速度センサー、
34X、34Y、34Z…角速度センサー、40…基板、
41、42、43…穴部、44…支持部、46…コネクター、48…基板、
50…処理部、60…表示部、62、64…発光素子群、70…表示部、
72…表示パネル、80…モード切り替えスイッチ、82…リセットスイッチ、
84…計測開始スイッチ、81、83、85…可動部、86…スライドスイッチ、
90…無線通信部、92…アンテナ部、94…通信基板、
100、101…インターフェース部、102、103、104…メモリー、
106…電源インターフェース、150…ベース、151、152、153…穴部、
154…窪み部、156、157…固定部、160…保護板、
161、162、163…穴部、164…スリット穴、170…保護板、
171、172、173…穴部、174、175、176…窓部、
210…センサー基板、212…処理部、220…容器、222…蓋部、
224…シール部材、231…側壁232…底壁、300…加速度検出器、
310…パッケージ、311…空間、320…パッケージベース、321…凹部、
322…内底面、323…段差部、324…外底面、325…貫通孔、330…蓋部、
332…蓋部接合部材、340b…内部端子、343…導電性接着剤、
344…外部端子、345…グランド端子、350…封止部、
400…加速度センサー素子、401…基板構造体、410…基部、412…継手部、
414…可動部、414a、414b…主面、420…第1支持部、
430…第2支持部、440…連結部、450…第3支持部、460…第4支持部、
470…加速度検出素子、471a、471b…振動梁部、472a…第1基部、
472b…第2基部、480、482…質量部
DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6…方向、
SD1、SD2、SD3、SD4…辺