(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】可塑化装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/209 20170101AFI20231212BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20231212BHJP
B29C 64/241 20170101ALI20231212BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231212BHJP
B29C 45/46 20060101ALI20231212BHJP
B29C 45/62 20060101ALI20231212BHJP
B29C 45/74 20060101ALI20231212BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231212BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231212BHJP
【FI】
B29C64/209
B29C64/106
B29C64/241
B29C64/393
B29C45/46
B29C45/62
B29C45/74
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2019215969
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】姉川 賢太
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-228303(JP,A)
【文献】米国特許第06146575(US,A)
【文献】国際公開第2007/105646(WO,A1)
【文献】特開2005-306028(JP,A)
【文献】特開2009-269182(JP,A)
【文献】特開2018-192625(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109016503(CN,A)
【文献】特開昭60-154027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B29C 45/00 - 45/84
B29C 48/00 - 48/96
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するローターと、
前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、
前記溝と前記バレルとの間に供給されたペレット状の材料を加熱する加熱部と、
前記駆動モーターおよび前記加熱部を制御して、前記溝と前記バレルとの間に供給された前記材料を可塑化して前記連通孔から流出させる制御部と、を備え、
前記ローターは、回転軸に沿った方向の長さが、前記回転軸に垂直な方向の長さよりも短く、
前記バレルは、前記回転軸に沿った方向において前記溝形成面に対向し、
前記加熱部は、第1加熱部と、
前記回転軸に垂直な方向において前記第1加熱部よりも前記連通孔の近くに配置された第2加熱部と、を有し、
前記バレルは、第1領域と、
前記回転軸に垂直な方向において前記第1領域よりも前記連通孔に近い第2領域と、を有し、
前記回転軸に垂直な方向において前記第1加熱部よりも前記連通孔から遠くに、前記バレルの周方向に沿って配置された冷媒流路と、
前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の内部へ冷媒を導入する入口部と、
前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の外部へ前記冷媒を排出する出口部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2領域の温度が前記第1領域の温度よりも高くなるように、前記第1加熱部および前記第2加熱部をそれぞれ個別に制御する、
可塑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部および前記第2加熱部は、前記バレルに設けられている、可塑化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部は、前記連通孔を挟んで一対配置され、
前記第2加熱部は、前記連通孔を挟んで一対配置され
、
前記第1加熱部及び前記第2加熱部は、前記溝形成面に沿った第1方向に延びる棒状のヒータである、可塑化装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の可塑化装置であって、
前記第1加熱部および前記第2加熱部は、前記ローターの周方向に沿って環状に配置されている、可塑化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記第1領域および前記第2領域の温度を測定する温度測定部を備え、
前記制御部は、前記温度測定部によって測定された温度に応じて、前記第1加熱部および前記第2加熱部を制御する、可塑化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記材料は、非晶性樹脂であって、
前記制御部は、前記加熱部を制御して、前記第1領域の温度を前記材料のガラス転移温度未満に調整し、前記第2領域の温度を前記ガラス転移温度以上に調整する、可塑化装置。
【請求項7】
駆動モーターと、
前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するローターと、
前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、
前記ローターの周方向に沿って環状に配置され、前記溝と前記バレルとの間に供給されたペレット状の材料を加熱する加熱部と、
前記駆動モーターおよび前記加熱部を制御して、前記溝と前記バレルとの間に供給された前記材料を可塑化して前記連通孔から流出させる制御部と、を備え、
前記ローターは、回転軸に沿った方向の長さが、前記回転軸に垂直な方向の長さよりも短く、
前記バレルは、前記回転軸に沿った方向において前記溝形成面に対向し、
前記バレルは、第1領域と、
前記回転軸に垂直な方向において前記第1領域よりも前記連通孔に近い第2領域を有し、
前記回転軸に垂直な方向において前記加熱部よりも前記連通孔から遠くに、前記バレルの周方向に沿って配置された冷媒流路と、
前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の内部へ冷媒を導入する入口部と、
前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の外部へ前記冷媒を排出する出口部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2領域の温度が前記第1領域の温度よりも高くなるように、前記加熱部を制御する、
可塑化装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の可塑化装置であって、
前記バレルは、前記連通孔から延びる複数の案内溝を有し、
前記第2領域は、前記案内溝の前記連通孔とは反対側の端部よりも内側に設けられる、可塑化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は可塑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、材料を可塑化して成形材料として送出する可塑化送出装置に関して、螺旋溝が形成されたローターと、ローターの端面と当接して中心に連通孔を有するバレルと、を備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置でペレット状の材料を可塑化する場合、ローターの外周部分における材料の流動性を、ローターの中心部における材料の流動性より低く保つことで、材料をローターの中心に向かって搬送する搬送力が得られる。ローターの中心部において可塑化された材料は、この搬送力によって連通孔から送出されるため、ローターの外周部分において材料の流動性を低く保てない場合、成形材料の送出量が不安定になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、回転方向に沿った溝が形成された溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記溝と前記バレルとの間に供給されたペレット状の材料を加熱する加熱部と、前記駆動モーターおよび前記加熱部を制御して、前記溝と前記バレルとの間に供給された前記材料を可塑化して前記連通孔から流出させる制御部と、を備える。前記加熱部は、第1加熱部と、前記第1加熱部よりも前記連通孔の近くに配置された第2加熱部と、を有し、前記バレルは、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔に近い第2領域と、を有する。前記制御部は、前記第2領域の温度が前記第1領域の温度よりも高くなるように、前記第1加熱部および前記第2加熱部をそれぞれ個別に制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】ローターの下面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図3】バレルのローター対向面側の構成を示す概略平面図である。
【
図4】
図1におけるバレルのIV-IV断面図である。
【
図5】第2実施形態におけるバレルの断面図である。
【
図6】第3実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図7】第4実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図である。
【
図8】第4実施形態におけるバレルの下面側の構成を示す概略斜視図である。
【
図9】第5実施形態としての射出成形装置の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。
図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向を両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。
図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。
【0008】
三次元造形装置100は、造形ユニット200と、ステージ300と、移動機構400と、制御部500とを、備える。造形ユニット200は、材料供給部20と、可塑化装置90と、ノズル61と、によって構成されている。三次元造形装置100は、制御部500の制御下で、材料供給部20から供給された材料を、可塑化装置90によって可塑化して造形材料を生成する。三次元造形装置100は、ノズル61からステージ300上の造形面310に向かって、生成された造形材料を吐出しつつ、移動機構400によってノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させ、造形面310上に造形材料が積層された三次元造形物を造形する。造形ユニット200の詳細な構成については後述する。
【0009】
移動機構400は、上述したとおり、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。本実施形態では、移動機構400は、ステージ300を支持しており、造形ユニット200に対してステージ300を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる。なお、造形面310に対するノズル61の相対的な位置の変化を、ノズル61の移動と呼ぶこともある。
【0010】
本実施形態における移動機構400は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ300をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部500に制御されて駆動する。なお、移動機構400は、ステージ300を移動することなく造形ユニット200を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。また、移動機構400は、ステージ300と造形ユニット200との両方を移動させることによって、ノズル61と造形面310との相対的な位置を変化させる構成であってもよい。
【0011】
制御部500は、コンピューターとして構成されており、1以上のプロセッサーと、メモリーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェースとを備える。プロセッサーは、メモリーに記憶された所定のプログラムを実行することによって、三次元造形物を造形するための造形処理を実現する。造形処理において、制御部500は、造形ユニット200と、移動機構400とを、適宜制御する。なお、制御部500の機能の一部または全部を、回路により実現するようにしてもよい。
【0012】
材料供給部20は、造形材料を生成するための、ペレット状の材料を収容する。材料供給部20は、例えば、材料を収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、内部に収容している材料を、連通路22を介して、可塑化装置90に供給する。本実施形態では、材料供給部20には、非晶性樹脂であるABS樹脂をペレット状に成形した材料が収容される。材料の詳細については後述する。
【0013】
可塑化装置90は、駆動モーター32と、ローター40と、バレル50と、を備える。可塑化装置90は、材料供給部20から供給された固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させ、流動性を有するペースト状の造形材料を生成し、生成した造形材料をノズル61に供給する。なお、「溶融」とは、熱可塑性を有する材料が融点以上の温度に加熱されて液状になることのみならず、熱可塑性を有する材料がガラス転移点以上の温度に加熱されることにより軟化し、流動性が発現する「可塑化」をも意味する。本実施形態のローター40は、「フラットスクリュー」や、「スクロール」とも呼ばれる。また、バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。更に、造形材料を、溶融材料や成形材料と呼ぶこともある。
【0014】
ローター40は、その中心軸RXに沿った高さが直径よりも小さい略円柱状を有する。本実施形態において、ローター40は、その中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0015】
ローター40は、ローターケース31内に収納されている。ローター40の上面側は駆動モーター32に連結されており、ローター40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、ローターケース31内において中心軸RXを中心に回転する。駆動モーター32は、制御部500によって制御され駆動する。
【0016】
ローター40の下面である溝形成面48には、溝42が形成されている。本実施形態では、溝42は、ローター40の回転方向に沿った溝である。上述した材料供給部20の連通路22は、ローター40の側面から溝42に連通する。
【0017】
バレル50は、ローター40の溝形成面48に対向している。具体的には、バレル50の上面であるローター対向面52と、溝形成面48とが、対向している。溝形成面48の溝42と、ローター対向面52との間には空間が形成される。この空間には、材料供給部20から材料が供給される。ローター40および溝42の具体的な構成については後述する。
【0018】
本実施形態では、バレル50には、加熱部70と、冷却部75と、が設けられている。加熱部70は第1加熱部71と第2加熱部72とを有し、ローター対向面52の下方に設けられている。加熱部70は、溝42とバレル50との間に供給された材料を加熱する。冷却部75は、冷媒流路76と、冷媒流路76の内部へ冷媒を導入する入口部77と、冷媒流路76に連通し冷媒流路76の外部へ冷媒を排出する出口部78と、冷媒循環装置79を有する。加熱部70および冷却部75の詳細については、後述する。
【0019】
ローター40の溝42に供給された材料は、溝42において溶融されながら、ローター40の回転によって溝42に沿って流動し、造形材料としてローター40の中央部45へと導かれる。中央部45に流入したペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介してノズル61に供給される。
【0020】
ノズル61は、バレル50の下部に設けられている。ノズル61は、ノズル流路68と、吐出口69とを、有する。ノズル流路68は、ノズル61内に設けられた流路であり、その一端がバレル50内の連通孔56に接続されている。吐出口69は、ノズル流路68の連通孔56に接続されていない端部に設けられた、流路断面が縮小された部分である。造形材料は、連通孔56からノズル流路68に流入し、吐出口69から吐出される。本実施形態では、吐出口69の開口形状は円形である。なお、吐出口69の開口形状は円形に限られず、例えば、正方形や、正方形以外の多角形であってもよい。
【0021】
図2は、ローター40の下面側の構成を示す概略斜視図である。
図2には、ローター40の中心軸RXの位置が一点鎖線で示されている。
【0022】
ローター40の溝形成面48の中央部45は、溝42の一端が接続されている凹部として構成されている。中央部45は、バレル50の連通孔56に対向する。本実施形態では、中央部45は、中心軸RXと交差する。
【0023】
ローター40の溝42は、いわゆるスクロール溝を構成する。溝42は、中央部45から、ローター40の外周に向かって弧を描くように渦状に延びている。溝42は、例えば、インボリュート曲線状や螺旋状に延びるように構成されてもよい。溝形成面48には、溝42の側壁部を構成し、各溝42に沿って延びている凸条部43が設けられている。
【0024】
溝42は、ローター40の側面に形成された材料流入口44まで連続している。この材料流入口44は、材料供給部20の連通路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。
【0025】
図2には、3つの溝42と、3つの凸条部43と、を有するローター40の例が示されている。ローター40に設けられる溝42や凸条部43の数は、3つには限定されない。ローター40には、1つの溝42のみが設けられていてもよいし、2以上の複数の溝42が設けられていてもよい。また、溝42の数に合わせて任意の数の凸条部43が設けられてもよい。
【0026】
図2には、材料流入口44が3箇所に形成されているローター40の例が図示されている。ローター40に設けられる材料流入口44の数は、3箇所に限定されない。ローター40には、材料流入口44が1箇所にのみ設けられていてもよいし、2箇所以上の複数の箇所に設けられていてもよい。
【0027】
図3は、バレル50のローター対向面52側の構成を示す概略平面図である。ローター対向面52の中心には、造形材料をノズル61に供給するための連通孔56が形成されている。ローター対向面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。複数の案内溝54は、ローター40の中央部45に流入した造形材料を連通孔56に導く機能を有する。なお、造形材料を効率良く連通孔56へと到達させるためには、バレル50に案内溝54が形成されていると好ましいが、案内溝54が形成されていなくてもよい。
【0028】
図3に示すように、バレル50は、第1領域RG1と第2領域RG2とを有する。第2領域RG2は、第1領域RG1よりも、連通孔56に近い領域を指す。
図3において、バレル50の、破線よりも外側、かつ、ローター対向面52の外縁より内側の領域が第1領域RG1であり、破線よりも内側の領域が第2領域RG2である。すなわち、
図3における破線は、第1領域RG1と第2領域RG2との境界を示している。本実施形態では、ローター対向面52の半径の半分の半径を有する円の内側が第2領域RG2であり、その円の外側が第1領域RG1である。なお、境界の位置は上記に限られず、第2領域RG2が第1領域RG1よりも連通孔56に近い領域となる位置であれば、他の位置であってもよい。
【0029】
ローター40の材料流入口44に材料が供給された場合、材料は溝42に誘導されて、溝42内において加熱されながら中央部45に向かって移動する。材料は、中央部45に近づくほど、溶融し、流動性が高まっていき、造形材料へと転化する。中央部45に集められた造形材料は、中央部45で生じる内圧により連通孔56からノズル61に流出する。
【0030】
図4は、
図1におけるバレル50のIV-IV断面図である。
図4には、連通孔56と、加熱部70と、冷却部75とが、示されている。また、
図4には、上述の第1領域RG1および第2領域RG2が図示されている。
【0031】
上述したように、加熱部70は、第1加熱部71と第2加熱部72とを有する。第2加熱部72は、第1加熱部71よりも、連通孔56の近くに配置されている。具体的には、連通孔56に交差するXY平面に沿った方向における、第2加熱部72と連通孔56の中心との最短距離が、第1加熱部71と連通孔56の中心との最短距離よりも短い。
【0032】
本実施形態では、第1加熱部71として、連通孔56を挟んで一対のヒーターが配置され、第2加熱部72として、第1加熱部71とは別に、連通孔56を挟んで一対のヒーターが配置されている。本実施形態では、第1加熱部71および第2加熱部72として棒状のヒーターが配置されている。すなわち、第1加熱部71と第2加熱部72とは、それぞれ棒状のヒーターを2本ずつ有している。各ヒーターは、長手方向をY方向に沿って配置され、それぞれ略等しい長さを有している。第1加熱部71と第2加熱部72とは、制御部500によって、それぞれ個別に制御される。
【0033】
図4には、冷却部75のうち、冷媒流路76と、入口部77と、出口部78とが、示されている。冷媒流路76は、第1加熱部71よりも連通孔56から遠くに、バレル50の周方向に沿って配置されている。具体的には、連通孔56に交差するXY平面に沿った方向における、冷媒流路76と連通孔56の中心との最短距離が、第1加熱部71と連通孔56の中心との最短距離よりも遠い。本実施形態では、バレル50の周方向に沿った冷媒流路76が、連通孔56に交差するXY平面に沿った方向において、第1加熱部71とローター対向面52の外縁との間に配置されている。
【0034】
冷媒流路76には、入口部77から冷媒が導入される。入口部77から導入された冷媒は、冷媒流路76内を流れ、出口部78から外部へと排出される。本実施形態では、入口部77および出口部78には、
図1に示すように、冷媒循環装置79が接続されている。冷媒循環装置79はポンプを備え、冷媒を出口部78から入口部77へと循環させる。冷媒循環装置79は制御部500によって制御される。
【0035】
制御部500は、第2領域RG2の温度が、第1領域RG1の温度よりも高くなるように、第1加熱部71および第2加熱部72を制御する。また、本実施形態では、制御部500は、第1加熱部71および第2加熱部72を制御するとともに、冷媒循環装置79を制御することによって、冷媒流路76内に冷媒を流通させる。これによって、バレル50のうち、連通孔56から第1加熱部71より遠い部分が、冷媒によって冷却される。すなわち、冷媒流路76が設けられない場合と比べ、バレル50の外周部分の温度をより低く保つことができる。このように加熱部70および冷却部75が制御されることによって、第1領域RG1における材料の流動性が、第2領域RG2における材料の流動性よりも低く保たれる。すなわち、バレル50の外周部分において、材料の流動性が低く保たれる。
【0036】
本実施形態では、制御部500は、加熱部70を制御して、第1領域RG1の温度を、材料であるABS樹脂のガラス転移温度Tg未満に調整し、第2領域RG2の温度を、ガラス転移温度Tg以上に調整する。本実施形態では、具体的には、ABS樹脂材料のガラス転移温度は111℃であり、第1加熱部71は210℃に、第2加熱部72は60℃に、それぞれ制御される。また、制御部500は、冷媒循環装置79を制御して、冷媒流路76の入口部77および出口部78における冷媒の温度をそれぞれ15℃とするように調整する。上述したように、ABS樹脂は非晶性樹脂であるため、第1領域RG1および第2領域RG2の温度を、ガラス転移温度Tgを基準として制御することで、各領域における材料の流動性を適切に制御できる。なお、ガラス転移温度のことを、ガラス転移点と呼ぶこともある。
【0037】
以上で説明した本実施形態の可塑化装置90によれば、制御部500は、第1領域よりも連通孔56に近い第2領域RG2の温度が、第1領域RG1の温度よりも高くなるように、第1加熱部71と、第1加熱部71よりも連通孔56の近くに配置された第2加熱部72とを、それぞれ個別に制御する。これによって、第1領域RG1における材料の流動性が、第2領域RG2における材料の流動性よりも低く保たれる。そのため、連通孔56から送出される造形材料の送出量が安定する。
【0038】
また、本実施形態では、第1加熱部71および第2加熱部72は、バレル50に設けられている。そのため、第1加熱部71および第2加熱部72を、回転するローター40に設ける場合に比べて、簡易な構成で造形材料の送出量を安定させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、第1加熱部71は、連通孔56を挟んで一対配置され、第2加熱部72は、連通孔56を挟んで一対配置されている。これによって、第1加熱部71と第2加熱部72とによって、バレル50を、連通孔56を挟んで対称に加熱できる。そのため、簡易な制御によって、第2領域RG2の温度を第1領域RG1の温度よりも高くすることができる。
【0040】
また、本実施形態では、可塑化装置90は、第1加熱部71よりも連通孔56から遠くに、バレル50の周方向に沿って設けられた冷媒流路76と、入口部77と、出口部78とを、有する。そのため、冷媒流路76内に冷媒を流すことによって、バレル50の外周部分において、材料の流動性をより低く保つことができる。
【0041】
また、本実施形態では、制御部500は、加熱部70を制御して、第1領域RG1の温度を、非晶性樹脂であるABS樹脂材料のガラス転移温度Tg未満に調整し、第2領域RG2の温度をガラス転移温度Tg以上に調整する。そのため、材料として非晶性樹脂を用いる場合に、より効果的に、第1領域RG1における材料の流動性を低く保ち、第2領域RG2における材料の流動性を高くすることができる。
【0042】
ここで、上述した三次元造形装置100において用いられる三次元造形物の材料について説明する。三次元造形装置100では、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。ここで、「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0043】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化装置90において、当該材料が可塑化することによって、造形材料が生成される。
【0044】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料をペレット状に成形した材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0045】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。この場合、上記の熱可塑性樹脂材料と添加剤等とを混合してペレット状に成形した材料を、熱可塑性を有する材料として用いることができる。熱可塑性を有する材料は、可塑化装置90において、ローター40の回転と加熱部70の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。なお、材料を完全に溶融した状態で吐出させるため、ノズル61の周囲にヒーターを設けてもよい。
【0046】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料と造形材料の生成の際に溶融する成分とを混合して、ペレット状に成形した材料が、可塑化装置90に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0047】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、造形面310に吐出された造形材料は焼結によって硬化されてもよい。
【0048】
材料供給部20に材料として投入される金属材料やセラミック材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合し、ペレット状に成形した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化装置90において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0049】
金属材料やセラミック材料に、例えば、以下のような溶剤を添加してペレット状に形成した材料を用いることもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0050】
その他に、金属材料やセラミック材料に、例えば、以下のようなバインダーを添加してペレット状に形成した材料を用いることもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂あるいはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)あるいはその他の熱可塑性樹脂。
【0051】
B.第2実施形態:
図5は、第2実施形態における可塑化装置90bに設けられたバレル50bの断面図である。
図5には、
図4に示した第1実施形態のバレル50の断面図と同様に、連通孔56と、加熱部70bと、冷却部75と、第1領域RG1と、第2領域RG2とが、示されている。また、可塑化装置90bは、第1実施形態と同様に、三次元造形装置100に備えられている。なお、可塑化装置90bのうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0052】
加熱部70bは、第1加熱部71bと第2加熱部72bとを有する。本実施形態では第1加熱部71bと第2加熱部72bとは、ともに、ローター40の周方向に沿って環状に配置されている。本実施形態では、具体的には、第1加熱部71bと第2加熱部72bとは、環状に形成された窒化アルミニウムヒーターである。他の実施形態では、第1加熱部71bと第2加熱部72bとは、例えば、窒化ケイ素等の他のセラミックスを用いたヒーターであってもよいし、電熱線を環状に形成したヒーターであってもよい。
【0053】
以上で説明した第2実施形態の可塑化装置90bによっても、第1領域RG1における材料の流動性が、第2領域RG2における材料の流動性よりも低く保たれる。特に、本実施形態では、第1加熱部71および第2加熱部72が、ローター40の周方向に沿って環状に配置されている。そのため、簡易な制御によって、バレル50の外周部分における材料の流動性を低く保つことができる。
【0054】
C.第3実施形態:
図6は、第3実施形態における三次元造形装置100cの概略構成を示す説明図である。第3実施形態の、造形ユニット200cに備えられた可塑化装置90cは、第1実施形態とは異なり、温度測定部81を備える。なお、可塑化装置90cおよび三次元造形装置100cのうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0055】
温度測定部81は、第1領域RG1および第2領域RG2の温度を測定する。本実施形態では、温度測定部81は、第1領域RG1の温度を測定する熱電対と、第2領域RG2の温度を測定する熱電対と、を有している。他の実施形態では、例えば、温度測定部81は、第1領域RG1の温度と第2領域RG2の温度を測定する放射温度計等の非接触式センサーを備えていてもよい。
【0056】
本実施形態では、制御部500は、温度測定部81によって測定された温度に応じて、第1加熱部71および第2加熱部72を制御する。制御部500は、例えば、第1領域RG1の温度が材料のガラス転移温度Tgよりも高い場合、第2加熱部72の出力を下げ、第2領域RG2の温度が目標温度よりも低い場合、第1加熱部71の出力を上げてもよい。この場合、目標温度を、ガラス転移温度Tgを上回る任意の温度として定めることができる。他の場合、測定された温度に応じて第1加熱部71や第2加熱部72を制御する際の基準となる値を、予め温度分布等から定めておいてもよい。
【0057】
以上で説明した第2実施形態の可塑化装置90bによっても、第1領域RG1における材料の流動性が、第2領域RG2における材料の流動性よりも低く保たれる。特に、本実施形態では、温度測定部81によって測定された温度に応じて、第1領域RG1および第2領域RG2の温度を、より精度良く調整することができる。
【0058】
D.第4実施形態:
図7は、第4実施形態における三次元造形装置100dの概略構成を示す説明図である。
図8は、バレル50dの下面側の構成を示す概略斜視図である。
図7および
図8に示すように、第4実施形態の可塑化装置90dは、ローター40の周方向に沿って環状に配置された加熱部70dを備える。本実施形態の加熱部70dは、第1実施形態とは異なり、第1加熱部71および第2加熱部72を有していない。
【0059】
加熱部70dは、環状に形成された1個の窒化アルミニウムヒーターである。本実施形態では、加熱部70dは、ノズル61を囲むように、バレル50dの下面に配置されている。加熱部70dは、ケースに収容されていてもよく、例えば、加熱部70dの下面や外周が、断熱材で覆われていてもよい。他の実施形態では、加熱部70dは、バレル50dの内部に埋め込まれていてもよい。また、加熱部70dは、例えば、窒化ケイ素等の他のセラミックスを用いたヒーターであってもよいし、電熱線を環状に形成したヒーターであってもよい。
【0060】
本実施形態においても、制御部500は、第2領域RG2の温度が、第1領域RG1の温度よりも高くなるように、加熱部70dを制御する。また、制御部500は、加熱部70dを制御するとともに、冷媒循環装置79を制御することによって、バレル50dに配置された冷媒流路76内に冷媒を流通させる。なお、冷媒流路76は、加熱部70dよりも連通孔56から遠くに、バレル50dの周方向に沿って配置されている。すなわち、本実施形態では、バレル50dの周方向に沿った冷媒流路76が、連通孔56に交差するXY平面に沿った方向において、加熱部70dとローター対向面52の外縁との間に配置されている。
【0061】
本実施形態においても、材料として、ペレット状に形成されたABS樹脂材料が用いられる。制御部500は、加熱部70を制御して、第1領域RG1の温度を、材料であるABS樹脂のガラス転移温度Tg未満に調整し、第2領域RG2の温度を、ガラス転移温度Tg以上に調整する。具体的には、ABS樹脂材料のガラス転移温度は111℃であり、加熱部70dは250℃に制御される。また、制御部500は、第1実施形態と同様に、冷媒循環装置79を制御して、冷媒流路76の入口部77および出口部78における冷媒の温度をそれぞれ15℃とするように調整する。
【0062】
以上で説明した本実施形態の可塑化装置90dによれば、制御部500は、第1領域よりも連通孔56に近い第2領域RG2の温度が、第1領域RG1の温度よりも高くなるように、ローター40の周方向に沿って環状に配置された加熱部70dを制御する。これによって、第1領域RG1における材料の流動性が、第2領域RG2における材料の流動性よりも低く保たれる。そのため、連通孔56から送出される造形材料の送出量を安定させることができる。
【0063】
また、本実施形態では、可塑化装置90は、第1加熱部71よりも連通孔56から遠くに、バレル50の周方向に沿って設けられた冷媒流路76と、入口部77と、出口部78とを、有する。そのため、冷媒流路76内に冷媒を流すことによって、バレル50の外周部分において、材料の流動性をより低く保つことができる。
【0064】
また、本実施形態では、制御部500は、加熱部70を制御して、第1領域RG1の温度を、非晶性樹脂であるABS樹脂材料のガラス転移温度Tg未満に調整し、第2領域RG2の温度をガラス転移温度Tg以上に調整する。そのため、材料として非晶性樹脂を用いる場合に、より効果的に、第1領域RG1における材料の流動性を低く保ち、第2領域RG2における材料の流動性を高くすることができる。
【0065】
E.第5実施形態:
図9は、本開示の第5実施形態としての射出成形装置800の概略構成を示す説明図である。本実施形態の射出成形装置800は、可塑化装置90と、ノズル61と、射出制御機構810と、金型部830と、型締装置840とを、備えている。可塑化装置90の構成は、特に説明しない限り、第1実施形態と同じである。
【0066】
可塑化装置90は、第1実施形態で説明したように、ローター40と、バレル50とを有している。本実施形態のバレル50の連通孔56には、後述する射出シリンダー811が接続されている。可塑化装置90は、制御部850の制御下で、ローター40の溝42に供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の溶融材料を生成して連通孔56から射出制御機構810へと導く。
【0067】
本実施形態のバレル50は、第1実施形態と同様に、第1加熱部71および第2加熱部72を備える。また、本実施形態のバレル50は、第1実施形態と同様に、冷却部75を備える。なお、
図9では、構成の理解を容易にするために、冷却部75のうち、冷媒流路76以外の構成の図示を省略している。
【0068】
射出制御機構810は、射出シリンダー811と、プランジャー812と、プランジャー駆動部813とを備えている。射出制御機構810は、射出シリンダー811内の溶融材料を後述するキャビティーCvに射出する機能を有している。射出制御機構810は、制御部850の制御下で、ノズル61からの溶融材料の射出量を制御する。射出シリンダー811は、バレル50の連通孔56に接続された略円筒状の部材であり、内部にプランジャー812を備えている。プランジャー812は、射出シリンダー811の内部を摺動し、射出シリンダー811内の溶融材料を、可塑化装置90に接続されたノズル61に圧送する。プランジャー812は、モーターによって構成されるプランジャー駆動部813によって駆動される。
【0069】
金型部830は、可動金型831と固定金型832とを備えている。可動金型831と固定金型832とは、互いに対面して設けられ、その間に成形品の形状に応じた空間であるキャビティーCvを有している。キャビティーCvには、溶融材料が射出制御機構810によって圧送されてノズル61を介して射出される。
【0070】
型締装置840は、金型駆動部841を備えており、可動金型831と固定金型832との開閉を行う機能を有している。型締装置840は、制御部850の制御下で、金型駆動部841を駆動して可動金型831を移動させて金型部830を開閉させる。
【0071】
以上で説明した本実施形態の射出成形装置800は、上述したとおり、第1実施形態と同じ構成の可塑化装置90を備えている。そのため、連通孔56から送出される造形材料の送出量を安定させることができる。
【0072】
F.他の実施形態:
(F-1)上記実施形態において、第1加熱部71および第2加熱部72は、バレル50に設けられている。これに対して、例えば、第1加熱部71または第2加熱部72のいずれか一方がローター40に設けられていてもよい。また、第1加熱部71および第2加熱部72の両方が、ローター40に設けられていてもよい。また、第4実施形態における加熱部70dについても、同様に、ローター40に設けられていてもよい。
【0073】
(F-2)上記実施形態において、第1加熱部71および第2加熱部72は、棒状や環状のヒーターでなくてもよい。例えば、平板状のヒーターであってもよいし、ローター40の周方向に沿った弧状の部分を有するヒーターであってもよい。また、それらのヒーターが一対ずつ設けられていてもよい。
【0074】
(F-3)上記実施形態において、冷却部75は、冷媒循環装置79を備えている。これに対して、冷却部75は、冷媒循環装置79を備えていなくてもよい。例えば、冷却部75は、冷媒循環装置79を有することなく、冷媒流路76に冷媒を供給する冷媒供給部と、入口部77に連通するチューブと、出口部78に連通するチューブと、を備えていてもよい。この場合、冷媒供給部から、入口部77に連通するチューブを介して冷媒流路76へと冷媒を連続的に供給するとともに、冷媒流路76内の冷媒を出口部78に連通するチューブから外部へと連続的に排出してもよい。
【0075】
(F-4)上記実施形態において、可塑化装置90は、冷却部75を備えている。これに対して、可塑化装置90は冷却部75を備えていなくてもよい。
【0076】
(F-5)上記実施形態において、制御部500は、加熱部70を制御して、第1領域RG1の温度を材料のガラス転移温度未満に調整し、第2領域RG2の温度をガラス転移温度以上に調整している。これに対して、第2領域RG2の温度を第1領域RG1の温度よりも高くするように調整するのであれば、第1領域RG1の温度や第2領域RG2の温度を、ガラス転移温度を基準として調整しなくてもよい。例えば、融点を有する材料を用いる場合、第1領域RG1の温度を融点未満に調整し、第2領域RG2の温度を融点以上に調整してもよい。
【0077】
G.他の形態:
本開示は、上述の各実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態によって実現することができる。例えば、本開示は以下の形態として実現可能である。以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する上記の各実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中において必須であると説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0078】
(1)本開示の第1の形態によれば、可塑化装置が提供される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記溝と前記バレルとの間に供給されたペレット状の材料を加熱する加熱部と、前記駆動モーターおよび前記加熱部を制御して、前記溝と前記バレルとの間に供給された前記材料を可塑化して前記連通孔から流出させる制御部と、を備える。前記加熱部は、第1加熱部と、前記第1加熱部よりも前記連通孔の近くに配置された第2加熱部と、を有し、前記バレルは、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔に近い第2領域と、を有する。前記制御部は、前記第2領域の温度が前記第1領域の温度よりも高くなるように、前記第1加熱部および前記第2加熱部をそれぞれ個別に制御する。
このような形態によれば、第1領域における材料の流動性が、第2領域における材料の流動性よりも低く保たれる。そのため、連通孔から送出される造形材料の送出量が安定する。
【0079】
(2)上記形態の可塑化装置において、前記第1加熱部および前記第2加熱部は、前記バレルに設けられていてもよい。このような形態によれば、第1加熱部および第2加熱部を、回転するローターに設ける場合に比べて、簡易な構成で造形材料の送出量を安定させることができる。
【0080】
(3)上記形態の可塑化装置において、前記第1加熱部は、前記連通孔を挟んで一対配置され、前記第2加熱部は、前記連通孔を挟んで一対配置されていてもよい。このような形態によれば、第1加熱部と第2加熱部とによって、バレルを、連通孔を挟んで対称に加熱できる。そのため、簡易な制御によって、第2領域の温度を第1領域の温度よりも高くすることができる。
【0081】
(4)上記形態の可塑化装置において、前記第1加熱部および前記第2加熱部は、前記ローターの周方向に沿って環状に配置されていてもよい。このような形態によれば、簡易な制御によって、バレルの外周部分における材料の流動性を低く保つことができる。
【0082】
(5)上記形態の可塑化装置において、前記第1領域および前記第2領域の温度を測定する温度測定部を備え、前記制御部は、前記温度測定部によって測定された温度に応じて、前記第1加熱部および前記第2加熱部を制御してもよい。このような形態によれば、温度測定部によって測定された温度に応じて、第1領域および第2領域の温度を、より精度良く調整することができる。
【0083】
(6)上記形態の可塑化装置において、前記第1加熱部よりも前記連通孔から遠くに、前記バレルの周方向に沿って配置された冷媒流路と、前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の内部へ冷媒を導入する入口部と、前記冷媒流路に連通し前記冷媒流路の外部へ前記冷媒を排出する出口部と、を有していてもよい。このような形態によれば、冷媒流路内に冷媒を流すことによって、バレルの外周部分において、材料の流動性をより低く保つことができる。
【0084】
(7)上記形態の可塑化装置において、前記材料は、非晶性樹脂であって、前記制御部は、前記加熱部を制御して、前記第1領域の温度を前記材料のガラス転移温度未満に調整し、前記第2領域の温度を前記ガラス転移温度以上に調整してもよい。このような形態によれば、材料として非晶性樹脂を用いる場合に、より効果的に、第1領域における材料の流動性を低く保ち、第2領域における材料の流動性を高くすることができる。
【0085】
(8)本開示の第1の形態によれば、可塑化装置が開示される。この可塑化装置は、駆動モーターと、前記駆動モーターによって回転し、溝が形成された溝形成面を有するローターと、前記溝形成面に対向し、連通孔を有するバレルと、前記ローターの周方向に沿って環状に配置され、前記溝と前記バレルとの間に供給されたペレット状の材料を加熱する加熱部と、前記駆動モーターおよび前記加熱部を制御して、前記溝と前記バレルとの間に供給された前記材料を可塑化して前記連通孔から流出させる制御部と、を備える。前記バレルは、第1領域と、前記第1領域よりも前記連通孔に近い第2領域を有し、前記制御部は、前記第2領域の温度が前記第1領域の温度よりも高くなるように、前記加熱部を制御する。
このような形態によれば、第1領域における材料の流動性が、第2領域における材料の流動性よりも低く保たれる。そのため、連通孔から送出される造形材料の送出量が安定する。
【0086】
本開示は、上述した可塑化装置に限らず、種々の態様で実現可能である。例えば、材料の可塑化方法や、可塑化装置の制御方法、三次元造形装置や射出成形装置等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0087】
20…材料供給部、22…連通路、31…ローターケース、32…駆動モーター、40…ローター、42…溝、43…凸条部、44…材料流入口、45…中央部、48…溝形成面、50…バレル、50b…バレル、50d…バレル、52…ローター対向面、54…案内溝、56…連通孔、61…ノズル、68…ノズル流路、69…吐出口、70,70b,70d…加熱部、71,71b…第1加熱部、72,72b…第2加熱部、75…冷却部、76…冷媒流路、77…入口部、78…出口部、79…冷媒循環装置、81…温度測定部、90,90b,90c,90d…可塑化装置、100,100c,100d…三次元造形装置、200…造形ユニット、300…ステージ、310…造形面、400…移動機構、500…制御部、800…射出成形装置、810…射出制御機構、811…射出シリンダー、812…プランジャー、813…プランジャー駆動部、830…金型部、831…可動金型、832…固定金型、840…型締装置、841…金型駆動部、850…制御部