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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】無溶剤型接着剤組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20231212BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20231212BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231212BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20231212BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J7/30
B32B27/00 D
B32B27/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019226783
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021095481
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野田 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104874(JP,A)
【文献】特開2018-199251(JP,A)
【文献】特開2002-249745(JP,A)
【文献】特開2013-043936(JP,A)
【文献】特開2008-303274(JP,A)
【文献】特開平08-060131(JP,A)
【文献】特開2005-089734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119821(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/06
B32B 27/00
B32B 27/40
C09J 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含む2液硬化型の無溶剤型接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分が、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基を有する化合物との反応生成物(A)、及び、末端に2級若しくは3級の水酸基を有し、数平均分子量が1,000以上10,000以下のポリオール(B)を含み、
前記ポリオール(B)が、ポリエステルポリオールであり、
前記反応生成物(A)の含有量が、前記ポリオール成分の全質量に対して10~60質量%である無溶剤型接着剤組成物。
【請求項2】
前記1級水酸基を有するポリエステルポリオールを構成する多価カルボン酸が、アジピン酸と芳香族ジカルボン酸とを含む、請求項1に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項3】
前記芳香族ジカルボン酸の含有量が、前記1級水酸基を有するポリエステルポリオールの全質量に対して25~40質量%である、請求項2に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート成分が、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項5】
前記反応生成物(A)の含有量が、前記ポリオール成分の全質量に対して25~45質量%である、請求項1~4いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、及び金属蒸着フィルムを複数積層して、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装用積層体を製造する際に好適に用いられる、優れた接着機能を有する無溶剤型接着剤組成物に関する。さらに、本発明は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の包装材料として、アルミニウム箔等の金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン等のプラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化したものが用いられている。これらのプラスチックフィルムと金属箔あるいは金属蒸着フィルムを貼り合わせる接着剤としては、芳香族多価カルボン酸無水物を反応させたポリオール及び有機イソシアネート化合物からなるものが知られている。
【0003】
また、従来、このような金属箔あるいは金属蒸着フィルムを含むラミネート複合フィルムに使用される溶剤型ラミネート接着剤としては、主剤としてポリオール化合物、硬化剤としてポリイソシアネート化合物を含有する2液硬化型接着剤が好適に用いられており、金属箔あるいは金属蒸着フィルムとの密着性を付与する目的で、ポリオール化合物の分子末端への酸基の導入(例えば特許文献1)や、添加剤としてリン酸、シランカップリング剤を併用する方法が広く知られている。
【0004】
一方、近年、法規制の強化及び環境保全又は安全性への配慮から、溶剤を含まない接着剤の要望が高まっており、金属箔と各種プラスチックフィルム間の接着に使用されるラミネート接着剤の無溶剤化が検討されている。
【0005】
しかしながら、無溶剤型接着剤は、溶剤型接着剤と比較して硬化反応速度が格段に速くなることから、例えば金属蒸着フィルムへの密着性向上を目的として主剤に酸基を導入すると、酸基のウレタン化触媒効果により、硬化がさらに促進され、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が激しく、作業性が悪化する問題が発生している。
【0006】
上記課題に対して、特許文献1では、酸無水物によって酸変性されたポリオールが有する末端水酸基を2級及び3級に限定し、立体障害の影響によって反応性を抑制することで作業性を改善させた2液硬化型無溶剤型接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-89734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の接着剤組成物を用いた積層体は、金属密着性や耐熱性が低いためヒートシール部を折り曲げると浮きが発生するという課題がある。
したがって、本発明の目的は、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が抑制されるため作業性に優れ、且つヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる無溶剤型接着剤組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、該接着剤組成物を用いたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の実施形態は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含む2液硬化型の無溶剤型接着剤組成物であって、
前記ポリオール成分が、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基を有する化合物との反応生成物(A)、及び、末端に2級若しくは3級の水酸基を有し、数平均分子量が1,000以上10,000以下のポリオール(B)を含み、
前記反応生成物(A)の含有量が、前記ポリオール成分の全質量に対して10~60質量%である無溶剤型接着剤組成物に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記1級水酸基を有するポリエステルポリオールを構成する多価カルボン酸が、アジピン酸と芳香族ジカルボン酸とを含む、上記無溶剤型接着剤組成物に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、前記芳香族ジカルボン酸の含有量が、前記1級水酸基を有するポリエステルポリオールの全質量に対して25~40質量%である、上記無溶剤型接着剤組成物に関する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、前記ポリイソシアネート成分が、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体を含む、上記無溶剤型接着剤組成物に関する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、前記反応生成物(A)の含有量が、前記ポリオール成分の全質量に対して25~45質量%である、上記無溶剤型接着剤組成物に関する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、上記無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、主剤と硬化剤とを配合した後の粘度上昇が抑制されるため作業性に優れ、且つヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる無溶剤型接着剤組成物を提供することができる。また、本発明により、該接着剤組成物を用いたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性に優れる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔無溶剤型接着剤組成物〕
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基を有する化合物との反応生成物(A)、及び、末端に2級若しくは3級の水酸基を有し、数平均分子量が1,000以上10,000以下のポリオール(B)を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含有し、反応生成物(A)の含有量が、ポリオール成分の全量に対して10~60質量%であることを特徴とする。
1級水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基を有する化合物との反応生成物(A)は酸価を有し、基材表面との親和性を向上させる。また、反応生成物(A)と末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリオール(B)とは、立体障害によりポリイソシアネート成分との反応性が異なる。詳細には、ポリイソシアネート成分は、反応生成物(A)と優先的に反応し、立体障害の大きいポリオール(B)との反応は遅れて進行する。
したがって、本発明の接着剤組成物は、硬化後に硬さの異なるセグメントが偏在するポリウレタン樹脂を与えることができ、当該接着剤を用いた積層体は、ヒートシール部分を折り曲げることによる浮き発生を抑制することができる。
さらに、立体障害が大きく反応速度が比較的遅いポリオール(B)を含むことにより、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合・配合した後の粘度上昇が抑制され、ポットライフを長くする効果を発揮する。
これにより、本発明の無溶剤型接着剤組成物を用いた積層体は、食品、医薬品、化粧品、洗剤、雑貨等の様々な用途における包装材として利用することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0018】
〔ポリオール成分〕
本発明に用いられるポリオール成分は、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと酸無水物基を有する化合物との反応生成物(A)、及び、末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリオール(B)を含む。
【0019】
〔反応生成物(A)〕
反応生成物(A)に使用される1級水酸基を有するポリエステルポリオールは、公知の1級水酸基を有するポリエステルポリオールであれば特に制限されず、従来公知のものから選択可能であり、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
(1級水酸基を有するポリエステルポリオール)
1級水酸基を有するポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、両末端に1級水酸基を有する多価アルコールと、を反応させて得られるポリエステルポリオール;カプロラクトン、ポリバレロラクトン、又はポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
中でも反応性の観点から、前記ポリエステルポリオールとして好ましくは、多価カルボン酸と両末端が1級の水酸基を有するグリコールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを含むものである。
【0021】
前記多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸のような非環状脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸;これら脂肪族又は芳香族ジカルボン酸の無水物あるいはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸類;が挙げられる。
中でも反応性の観点から、前記多価カルボン酸は、好ましくは非環状脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを含み、より好ましくはアジピン酸と芳香族ジカルボン酸とを含み、さらに好ましくはアジピン酸とイソフタル酸とを含むものである。
【0022】
芳香族ジカルボン酸の含有量は、1級水酸基を有するポリエステルポリオール全質量に対して、好ましくは25~40質量%である。25質量%以上であると、熱耐性に優れヒートシール処理の熱に追従し浮きがさらに抑制されるためより好ましい。40質量%以下であると、芳香族骨格による剛直性が高くなりすぎず、折り曲げの基材伸びに追従し浮きがさらに抑制されるためより好ましい。
【0023】
両末端に1級水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、ジオールや3官能以上のポリオールが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3,3‘-ジメチロールヘプタン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサンのような脂肪族ジオール;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオキシエチレングリコールのようなエーテルグリコール;前記脂肪族ジオールと、エチレンオキシド、テトラヒドロフランのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルジオール;前記脂肪族ジオールと、ラクタノイド、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFのようなビスフェノールにエチレンオキサイド等を付加して得られるビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物;が挙げられる。
【0024】
前記3官能以上のポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような脂肪族ポリオール;前記脂肪族ポリオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルのような種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られる変性ポリエーテルポリオール;前記脂肪族ポリオールと、ε-カプロラクトンのような種々のラクトン類との重縮合反応によって得られるラクトン系ポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0025】
中でも反応性の観点から、前記多価アルコールは、好ましくは脂肪族ジオールを含み、より好ましくはエチレングリコール又はジエチレングリコールを含むものである。
【0026】
(酸無水物基を有する化合物)
酸無水物基を有する化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられ、好ましくは無水トリメリット酸である。
反応生成物(A)を得る際に使用する酸無水物基を有する化合物の量は、1級水酸基を有するポリエステルポリオール100質量部に対して、好ましくは0.2~1.0質量部、より好ましくは0.4~0.7質量部である。0.4質量部以上であると、反応生成物(A)と基材表面との親和性が向上し、優れたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性を発揮するためより好ましい。0.7質量部以下であると、反応生成物(A)の酸価が高くなりすぎずポットライフに優れるためより好ましい。
【0027】
反応生成物(A)の酸価は、好ましくは1~20mgKOH/g、より好ましくは2~10mgKOH/g、さらに好ましくは3~8mgKOH/gである。酸価が3mgKOH/g以上であると、反応生成物(A)と基材表面との親和性が向上し、優れたヒートシール部の折り曲げ浮き耐性を発揮するためより好ましい。8mgKOH/g以下であると、反応生成物(A)のポットライフに優れるためより好ましい。
【0028】
反応生成物(A)の水酸基価は、好ましくは30~80mgKOH/g、より好ましくは40~60mgKOH/gである。
【0029】
反応生成物(A)の数平均分子量は、好ましくは1,000~10,000であり、より好ましくは1,500~5,000である。数平均分子量が1,000以上であると、樹脂の凝集力が増し、優れた接着強度を示すため好ましい。数平均分子量が10,000以下であると、硬化剤と混合した後の粘度上昇が緩やかになり、塗工性が悪化しないため好ましい。
【0030】
〔末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリオール(B)〕
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、ポットライフの観点から、末端に2級若しくは3級の水酸基を有し、数平均分子量が1,000以上10,000以下のポリオール(B)を含む。ポリオール(B)は、末端に2級若しくは3級の水酸基を有しており、数平均分子量が1,000以上10,000以下であれば特に制限されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ポリウレタンポリオール、ひまし油又はそれらの混合物が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用してもよい。中でも、経時で接着性能が劣化しにくいという観点から、好ましくはポリエステルポリオールを含むものである。
【0031】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールとしては、例えば、多価カルボン酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、少なくとも一方の末端に2級若しくは3級の水酸基を有する多価アルコールを含む多価アルコールと、を反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、前述の1級水酸基を有するポリエステルポリオールの製造に用いられる多価カルボン酸と同様のものが挙げられる。
中でも反応性の観点から、多価カルボン酸として好ましくは非環状脂肪族ジカルボン酸を含むものである。
【0032】
少なくとも一方の末端に2級若しくは3級の水酸基を有する多価アルコールとして、好ましくは少なくとも一方の末端に2級若しくは3級の水酸基を有するグリコールが挙げられる。
2級の水酸基を有するグリコールとしては、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。
3級の水酸基を有するグリコールとしては、3-メチル-1,3-ブチレングリコール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0033】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールを構成する多価アルコールは、上述の少なくとも一方の末端に2級若しくは3級の水酸基を有する多価アルコール以外に、両末端に1級水酸基を有する多価アルコールを含んでもよい。また、少なくとも一方の末端に2級若しくは3級の水酸基を有する多価アルコールが、1級の水酸基を有していてもよい。
多価アルコールが1級の水酸基を有していたとしても場合、反応速度が速い1級の水酸基は、上述の多価カルボン酸と優先的に反応するため、2級若しくは3級の水酸基が残存するポリエステルポリオールを得ることができる。
【0034】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールは、エージング時間及び硬化性の観点から、末端に2級水酸基を有していることが好ましい。末端が2級水酸基であると、反応速度が必要以上に遅くならず、エージング時間が適正範囲内となり、且つ、硬化不良を起こし難くなるため好ましい。
【0035】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールは、酸無水物基を有する化合物によって酸変性されていてもよい。酸無水物基を有する化合物は、前述の反応生成物(A)における酸無水物基を有する化合物を援用することができる。
【0036】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールの数平均分子量は、1,000~10,000であり、好ましくは3,000~7,000であり、より好ましくは4,000~6,000である。数平均分子量が1,000以上であると、ポリオールの凝集力が増し、優れた接着強度を示すためより好ましい。数平均分子量が10,000以下であると、硬化剤と混合した後の粘度上昇が緩やかになり、塗工性が悪化しないためより好ましい。
【0037】
末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールの酸価は、特に制限されないが、好ましくは0~20mgKOH/g、より好ましくは0~10mgKOH/gである。末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリエステルポリオールの水酸基価は、特に制限されないが、好ましくは50~250mgKOH/g、より好ましくは80~220mgKOH/g、さらに好ましくは100~200mgKOH/gである。
【0038】
〔その他のポリオール〕
ポリオール成分は、前述の(A)及び(B)以外のポリオールを含んでもよい。特に、塗工性の観点から、低粘度のポリオールを希釈剤として含むことが好ましく、より好ましくは、メチルプロパンジオール及び低分子量ポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0039】
〔ポリイソシアネート成分〕
本発明の無溶剤型接着剤組成物はポリイソシアネート成分を含む。ポリイソシアネート成分としては、芳香族ポリイソシアネート又は脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、芳香族ポリイソシアネート又はその誘導体が好適に用いられる。これらポリイソシアネート成分は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4'-トルエンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物のような芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’ ’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0041】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート、1,3-キシリレンジイソシアネート又は1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
ポリイソシアネート成分は、前述の芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートから誘導される誘導体であってもよい。当該誘導体としては、例えば、芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応生成物が挙げられる。
公知のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3'-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールのような分子量200未満の低分子ポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールのようなポリオール;が挙げられ、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族又は脂肪族のポリイソシアネートと公知のポリオールとの反応時におけるイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは2以上である。
【0043】
ポリイソシアネート成分として好ましくは、ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物であり、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応生成物である。ポリイソシアネート成分が芳香族骨格を含むことにより熱耐性が向上し、ヒートシール部折り曲げによる浮き発生を抑制することができるため好ましい。
ポリプロピレングリコールの数平均分子量は、好ましくは200~3,000である。
【0044】
〔接着剤組成物の製造〕
本発明の無溶剤型接着剤組成物は、前述の反応生成物(A)及びポリオール(B)を含むポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを必須とし、必要に応じて希釈剤とを含むものであり、上記成分を秤量しヘラ等を用いてよく撹拌することで製造することができる。接着剤組成物の全成分中のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは0.8~2.0であり、より好ましくは1.0~1.5である。
【0045】
反応生成物(A)の含有量は、ポリオール成分の全量に対して10~60質量%であり、より好ましくは15~55質量%であり、特に好ましくは25~45質量%である。10質量%以上であると、ヒートシール部分折り曲げによる浮き発生を抑制することができ、60質量%以下であると、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを混合・配合した後の粘度上昇を抑えてポットライフを長くすることができる。また、25質量%以上であると、ヒートシール部分折り曲げによる浮きを特に抑制できるため好ましく、45質量%以下であると、ポットライフをさらに長くすることができるため好ましい。
【0046】
ポリイソシアネート成分の含有量は、接着性能の観点から、全ポリオール成分100質量部に対して、好ましくは40~120質量部であり、より好ましくは70~90質量部である。
【0047】
無溶剤型接着剤組成物の粘度は、常温(25℃)~120℃、好ましくは常温~80℃において、100~10,000mPa・s、より好ましくは1,000~5,000mPa・sである。100mPa・s以上であると接着剤の初期凝集力が優れる。10,000mPa・s以下であると塗工外観が優れる。
【0048】
(シランカップリング剤)
接着剤組成物は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらは、各々単独で、又は2種以上を任意に組み合わせて使用できる。
シランカップリング剤の含有量は、全ポリオール成分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.2~3質量部である。上記範囲とすることで、金属箔に対する接着強度を向上することができる。
【0049】
(リン酸又はリン酸誘導体)
接着剤組成物は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させる観点から、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸のようなリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸のような縮合リン酸類;が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、例えば、上述のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化したものが挙げられる。該アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリンのような脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノールのような芳香族アルコール;が挙げられる。
リン酸又はその誘導体の含有量は、接着剤組成物の固形分全量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、特に好ましくは0.05~1質量%である。
【0050】
(その他の添加剤)
接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒が挙げられる。
【0051】
〔積層体〕
本発明の積層体は、上述の無溶剤型接着剤組成物からなる接着剤層が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層されたものであり、具体的には、無溶剤接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせ、両シート状基材の間に位置する前記接着剤層を硬化したものである。
シート状基材は特に制限されず、例えば、従来公知のプラスチックフィルム、紙、金属箔等が挙げられ、2つのシート状基材は同種のものでも異種のものでもよい。
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチックが挙げられる。シート状基材は、蒸着層等のバリア膜を備えていてもよく、該蒸着層としては、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
【0052】
第1のシート状基材は、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムとしては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)、ポリエチレンナフタレート(以下、PEN)、ポリ乳酸(以下、PLA)のようなポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(以下、PE)、ポリプロピレン(以下、PP)のようなポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(以下、MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下の厚さを有するものである。
【0053】
第2のシート状基材が積層体の最外層となる場合、第2のシート状基材はシーラント基材であることが好ましい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(以下、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLDPE)や高密度ポリエチレン(以下、HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に制限されず、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは20~70μmである。また、シーラント基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
第2のシート状基材が、積層体の中間層となる場合、第2のシート状基材としては、前述のプラスチックフィルム、紙、金属箔等を好適に用いることができる。
【0054】
シート状基材は、基材上に印刷層を有していてもよい。
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0055】
積層体を製造する方法としては、従来公知の方法が挙げられ、例えば、ラミネーターを用いて接着剤を一方のシート状基材の片面に塗布して未硬化の接着剤層を形成した後、塗布面と他方のシート状基材と貼り合わせ、次いで、常温若しくは加温下で接着剤層を硬化する方法が挙げられる。接着剤組成物の乾燥後塗布量は、好ましくは1~4g/m2程度であり、積層体の厚みは、好ましくは10μm以上である。
【0056】
本発明の積層体の構成の一例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
2軸延伸ポリプロピレン(以下、OPP)/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレン(以下、CPP)、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/OPP/接着剤層/CPP、
NY/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/NY/接着剤層/CPP
NY/印刷層/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/CPP、
印刷層/PET/接着剤層/CPP
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
透明蒸着PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/NY/接着剤層/CPP
【実施例
【0057】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に指定がない場合は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0058】
〔数平均分子量(Mn)の測定方法〕
数平均分子量(Mn)は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて測定した。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0059】
〔酸価(AV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0060】
〔水酸基価(OHV)の測定方法〕
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mLを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mLとした溶液)を正確に5mL加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(mL)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0061】
〔NCO含有率(質量%)の測定方法〕
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0062】
〔反応生成物(A)の合成〕
(合成例1)反応生成物(A-1)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール40部、ジエチレングリコール240部、イソフタル酸200部、アジピン酸200部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価が53mgKOH/g、数平均分子量2,000の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-1)を得た。
【0063】
(合成例2)反応生成物(A-2)
反応生成物(A-1)と同様にして、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.3部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価3.8mgKOH/g、水酸基価54mgKOH/g、数平均分子量約2,000の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-2)を得た。
【0064】
(合成例3)反応生成物(A-3)
反応生成物(A-1)と同様にして、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.8部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価7.2mgKOH/g、水酸基価51mgKOH/g、数平均分子量約2,000の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-3)を得た。
【0065】
(合成例4)反応生成物(A-4)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール50部、ジエチレングリコール150部、1,4-ブタンジオール80部、イソフタル酸140部、アジピン酸260部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価5.1mgKOH/g、水酸基価58mgKOH/g、数平均分子量約1,800の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-4)を得た。
【0066】
(合成例5)反応生成物(A-5)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール60部、ジエチレングリコール140部、1,4-ブタンジオール100部、テレフタル酸180部、アジピン酸250部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価5.1mgKOH/g、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量約1,900の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-5)を得た。
【0067】
(合成例6)反応生成物(A-6)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール50部、ジエチレングリコール100部、1,4-ブタンジオール100部、イソフタル酸110部、テレフタル酸140部、アジピン酸120部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価49mgKOH/g、数平均分子量約2,100の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-6)を得た。
【0068】
(合成例7)反応生成物(A-7)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール40部、ジエチレングリコール80部、1,4-ブタンジオール100部、イソフタル酸120部、テレフタル酸140部、アジピン酸100部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温し、3時間反応させて、酸価5.0mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g、数平均分子量約2,200の、1級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物(A-7)を得た。
【0069】
得られた反応生成物(A)を表1に示す。
【表1】
【0070】
〔末端に2級若しくは3級の水酸基を有するポリオール(B)の合成〕
(合成例8)ポリオール(B1-1)
テレフタル酸110部、アジピン酸250部、ジエチレングリコール200部、ネオペンチルグリコール75部、プロピレングリコール200部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら200℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、数平均分子量約5,800の、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールであるポリオール(B1-1)を得た。
【0071】
(合成例9)ポリオール(B1-2)
テレフタル酸100部、アジピン酸200部、ジエチレングリコール250部、ネオペンチルグリコール50部、プロピレングリコール300部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら200℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価150mgKOH/g、数平均分子量約4,200の、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールであるポリオール(B1-2)を得た。
【0072】
(合成例10)ポリオール(B1-3)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを300部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコールを200部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオールを300部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを150部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、水酸基価150mgKOH/g、数平均分子量約5,000の、末端に2級水酸基を有するポリエーテルポリウレタン樹脂であるポリオール(B1-3)を得た。
【0073】
(合成例11)ポリオール(B1-4)
テレフタル酸60部、アジピン酸200部、1,6-ヘキサンジオール100部、1,3-ブタンジオール150部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら200℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.5mgKOH/gの、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールを得た。
次いで、得られたポリエステルポリオールを別に用意したフラスコに100部仕込み、0.5部の無水トリメリット酸を加えた。その後、窒素気流下で攪拌しながら150℃まで昇温して、3時間反応させ、酸価4.5mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/g、数平均分子量約4,800の、2級水酸基を有するポリエステルポリオールと無水トリメリット酸との反応生成物であるポリオール(B1-4)を得た。
【0074】
(合成例12)ポリオール(B2-1)
テレフタル酸110部、アジピン酸250部、ジエチレングリコール100部、3-メチル-1,3-ブチレングリコール200部、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール200部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら200℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、数平均分子量約5,800の、末端に3級水酸基を有するポリエステルポリオールであるポリオール(B2-1)を得た。
【0075】
得られたポリオール(B)を表2に示す。
【表2】
【0076】
表2中の略称を以下に示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0077】
〔ポリイソシアネート成分の製造〕
(合成例13)ポリイソシアネート(C-1)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール150部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール60部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール50部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート450部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が20.5質量%の、ポリプロピレングリコールから誘導される構造を有する芳香族ポリイソシアネートであるポリイソシアネート(C-1)を得た。
【0078】
(合成例14)ポリイソシアネート(C-2)
2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(製品名:ルプラネートMI、BASF製)300部、ポリメリックMDI(製品名:ルプラネートM20S、BASF製)300部を、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃で均一に混合して、芳香族ポリイソシアネートであるポリイソシアネート(C-2)を得た。
【0079】
(合成例15)ポリイソシアネート(C-3)
キシリレンジイソシアネートのビウレット体50部と、イソシアネート基の一部をイソブタノールで反応させたヘキサメチレンジイソシアネートの三量体450部とを、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃で均一に混合することにより、脂肪族ポリイソシアネートであるポリイソシアネート(C-3)を得た。
【0080】
〔無溶剤型接着剤組成物の製造〕
[実施例1](接着剤組成物(D-1))
フラスコ内に、反応生成物(A-1)30部、ポリオール(B1-1)60部を仕込み、さらに、希釈剤として数平均分子量約400のポリプロピレングリコール5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール5部を仕込み、80℃で30分攪拌した。得られた混合物を室温に冷ました後、当該混合物100部、ポリイソシアネート(C-1)60部、及びポリイソシアネート(C-2)20部を混合して、無溶剤型の接着剤組成物(D-1)を得た。
【0081】
[実施例2~16、比較例1~6](接着剤組成物(D-2~D-22))
表3記載の材料及び配合量を用いた以外は、実施例1と同様の操作により、無溶剤型の接着剤組成物(D-2~D-22)を得た。
【0082】
〔無溶剤接着剤組成物の評価〕
得られた無溶剤型接着剤組成物について以下の評価を実施した。結果を表3に示す。
【0083】
〔ポットライフ〕
得られた無溶剤型接着剤組成物について、配合直後及び配合後40℃30分間保管後の粘度をそれぞれ、東亜工業株式会社製のコーンプレート粘度計CV-1Sを用いて測定した。測定時の温度は40℃とした。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
A:保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍未満である(良好)
B:保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍以上3倍未満である(使用可能)
C:保管後の粘度が、配合直後の粘度の3倍以上4倍未満である(使用不可)
D:保管後の粘度が、配合直後の粘度の4倍以上5倍未満である(不良)
【0084】
〔積層体の作製〕
印刷インキ(東洋インキ(株)製、リオアルファR631白)を、酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)にて、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「エステルフィルムE5102」、以下、PET)上に、希釈した印刷インキを、版深35μmのベタ版を備えたグラビア校正機を用いて、印刷速度50m/minで印刷した後、50℃で乾燥した。印刷層の厚みは0.5~1μmの範囲内とした。
次いで、得られた積層体の印刷層上に、無溶剤テストコーターを用いて、無溶剤型接着剤組成物を、温度60℃、塗工速度200m/分、固形分塗布量2.0g/m2にて塗布した。
次いで、常温環境下にてラミネーターを用いて、厚み12μmアルミ蒸着フィルム(麗光社製「ダイアラスターH27」、以下、VM-PET)のアルミ蒸着面と、上記得られた積層体の接着剤塗布面とを貼り合わせた。
次いで、得られた積層体のVM-PET側のPET上に、先程と同様にして、無溶剤型接着剤組成物を塗布し、塗布面を、常温環境下にてラミネーターを用いて、厚み100μmの表面コロナ放電処理をした直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製「TUX-FCD」、以下、LLDPE)と貼り合せた後、40℃で2日間保温して接着剤を硬化させて、PET/印刷層/接着剤層/VM-PET/接着剤層/LLDPEの構成である積層体を得た。
【0085】
〔ヒートシール部の折り曲げによる浮き耐性)
得られた積層体を、幅6cm長さ10cmのサイズに切り取り、LLDPE面を重ねるように折り曲げて、幅6cm長さ5cmのサイズとした。
次いで、折り目から3cmの範囲(幅6cm長さ3cm)について、ヒートシール処理(180℃、2.0kg/m2、1.0秒)を行った後、10秒程度室温下で放冷した。
次いで、ヒートシールされた部分を半分に折り曲げ、折り曲げた箇所を机の角で5往復強く扱き、折り目を軽く広げたときに谷部に白線が生じていないかを目視で確認した。その外観から、以下の基準で判断した。
A:白線無し、又は、折り目の1/30未満の白線が発生(良好)
B:折り目の1/30以上、1/3未満に白線が発生(使用可能)
C:折り目の1/3以上に白線が発生(使用不可)
D:折り目周辺に広く白線が発生(不良)
【0086】
【表3】
【0087】
評価結果から、本発明の無溶剤型接着剤組成物は、優れたポットライフと、ヒートシール部分折り曲げ時の浮き抑制効果を示した。
特に、芳香族ポリイソシアネート成分を用い、ポリオール成分の全質量に対する反応生成物(A)の含有量が25~45質量%であり、無溶剤型接着剤組成物中の全成分中のNCOモル数/OHモル数の比が1.0~1.5であり、1級水酸基を有するポリエステルポリオールに対する酸無水物基を有する化合物の使用量が0.4~0.7質量%であるD-1、3、11、12、14~16は、優れたポットライフと浮き耐性とを両立した。
一方、D-2は反応生成物(A)の含有量が上記範囲より少ないため浮き耐性が若干低下し、D-4は上記範囲より多いためポットライフが若干悪化した。D-6は無溶剤型接着剤組成物中の全成分中のNCOモル数/OHモル数の比が上記範囲より少ないため浮き耐性が若干低下し、D-7は上記範囲より多いためポットライフが若干悪化した。D-8は1級水酸基を有するポリエステルポリオールに対する酸無水物基を有する化合物の含有量が上記範囲より少ないため浮き耐性が若干低下し、D-9は上記範囲より多いためポットライフが若干悪化した。D-5は脂肪族ポリイソシアネートが耐熱性を満たすことができず、浮き耐性が低下した。D-10は反応生成物(A)中の芳香族ジカルボン酸量が少ないため耐熱性と共に浮き耐性が若干低下し、D-12,D-13は芳香族ジカルボン酸量が多いため高粘度となり、ポットライフが若干悪化した。D-15はポリオール(B)にエステルを含まないことで耐熱性と共に浮き耐性が若干低下した。
上記により、本発明の接着剤組成物は、酸変性された末端1級ポリエステルポリオールを含有させることでヒートシール部を折り曲げた時に生じやすい浮きへの耐性を示し、且つ、酸変性によって懸念される反応性の上昇を、2級もしくは3級ポリエステルポリオールを併用することで抑制し、折り曲げ浮き耐性とポットライフを両立した。