(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-11
(45)【発行日】2023-12-19
(54)【発明の名称】ロータリ式加工設備の異常診断装置及び異常診断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20231212BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20231212BHJP
【FI】
G01M99/00 A
H02P29/024
(21)【出願番号】P 2019227284
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩道 行正
(72)【発明者】
【氏名】藤井 博史
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-095346(JP,A)
【文献】特開2004-256248(JP,A)
【文献】特開平10-307080(JP,A)
【文献】特開2009-068950(JP,A)
【文献】特開2011-138463(JP,A)
【文献】特開2003-081387(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025634(WO,A1)
【文献】米国特許第06009733(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045,99/00
H02P 4/00,25/08-25/098
H02P 29/00-31/00
B21D 47/00-55/00
B65B 7/00-7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物をロータリ搬送しながら加工するロータリ式加工設備の異常診断装置であって、
ロータリ式加工設備を駆動するモータの回転を一定速度にフィードバック制御するモータ制御部と、前記モータ制御部から抽出されるトルク値に基づいて異常診断を行う異常診断部とを備え、
前記異常診断部は、
前記トルク値の高周波成分から求められる特定の周波数スペクトルに基づいて回転駆動系の異常判定を行
い、
前記トルク値の低周波成分のトルク変動によって加工系の異常判定を行うものであり、
前記加工系の異常判定は、前記トルク値の低周波成分からロータリ搬送一回転分の仕事量を求め、前記仕事量の変動によって異常判定を行うものであることを特徴とするロータリ式加工設備の異常診断装置。
【請求項2】
前記仕事量は、メカロストルクを差し引いた加工トルクから求められることを特徴とする請求項
1に記載されたロータリ式加工設備の異常診断装置。
【請求項3】
前記加工系の異常判定は、前記トルク値の時系列変化をロータリ搬送の一回転中の位置別にモニタし、各位置におけるトルク値の変化状況によって異常判定を行うことを特徴とする請求項
1または2に記載されたロータリ式加工設備の異常診断装置。
【請求項4】
加工対象物をロータリ搬送しながら加工するロータリ式加工設備の異常診断方法であって、
ロータリ式加工設備を駆動するモータの回転を一定速度にフィードバック制御するモータ制御部からトルク値の時系列変化を抽出する工程と、
前記トルク値の高周波成分から求められる特定の周波数スペクトルに基づいて回転駆動系の異常判定を行う工程と、
前記トルク値の低周波成分のトルク変動によって加工系の異常判定を行う工程を有
し、
前記加工系の異常判定は、前記トルク値の低周波成分からロータリ搬送一回転分の仕事量を求め、前記仕事量の変動によって異常判定を行うことを特徴とするロータリ式加工設備の異常診断方法。
【請求項5】
前記仕事量は、メカロストルクを差し引いた加工トルクから求めることを特徴とする請求項4記載のロータリ式加工設備の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ式加工設備の異常診断装置及び異常診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シーマー、キャッパー、ラベラー、プリンター、充填機など、内容物入りの容器を製造する際には、各種のロータリ式加工設備が用いられる。これらのロータリ式加工設備は、加工対象物を保持するターレットを中心軸周りに回転させて、加工対象物をロータリ搬送しながら加工を行う。ターレットを含めた加工設備の回転駆動には、一般に電動モータが用いられており、回転速度を一定にするフィードバック制御が行われている。
【0003】
このようなロータリ式加工設備は、加工によって得られる製品の品質を継続的に維持するために、ロータリ式加工設備が正常に稼働しているか否かを診断することが求められている。一般に、回転式の機械設備の診断では、モータによって回転駆動される機械設備から発生する音や振動を分析して、その機械設備内の軸受や軸受関連部材の異常を診断することが行われている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のように加工設備から発生する音や振動を分析する異常診断では、実際に異常がかなり進行した状況を診断することになるので、その間の加工によって製品不良が発生している場合がある。本発明は、製品不良が発生するような振動等が発生する前に、異常発生の予兆を見出すことで、製品不良の発生を未然に抑止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
【0007】
加工対象物をロータリ搬送しながら加工するロータリ式加工設備の異常診断装置であって、ロータリ式加工設備を駆動するモータの回転を一定速度にフィードバック制御するモータ制御部と、前記モータ制御部から抽出されるトルク値に基づいて異常診断を行う異常診断部とを備え、前記異常診断部は、前記トルク値の高周波成分から求められる特定の周波数スペクトルに基づいて回転駆動系の異常判定を行い、前記トルク値の低周波成分のトルク変動によって加工系の異常判定を行うものであり、前記加工系の異常判定は、前記トルク値の低周波成分からロータリ搬送一回転分の仕事量を求め、前記仕事量の変動によって異常判定を行うものであることを特徴とするロータリ式加工設備の異常診断装置。
【0008】
加工対象物をロータリ搬送しながら加工するロータリ式加工設備の異常診断方法であって、ロータリ式加工設備を駆動するモータの回転を一定速度にフィードバック制御するモータ制御部からトルク値の時系列変化を抽出する工程と、前記トルク値の高周波成分から求められる特定の周波数スペクトルに基づいて回転駆動系の異常判定を行う工程と、前記トルク値の低周波成分のトルク変動によって加工系の異常判定を行う工程を有し、前記加工系の異常判定は、前記トルク値の低周波成分からロータリ搬送一回転分の仕事量を求め、前記仕事量の変動によって異常判定を行うことを特徴とするロータリ式加工設備の異常診断方法。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明は、ロータリ式の加工設備の異常診断を行うに際して、ロータリ式加工設備を駆動するモータの回転を一定速度にフィードバック制御するモータ制御部から抽出されるトルク値により異常判定を行うことで、製品不良が発生するような振動等が発生する前に、異常発生の予兆を見出すことができ、製品不良の発生を未然に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るロータリ式加工設備の異常診断装置のシステム構成を示すブロック図。
【
図4】位置別トルク異常判定部を示したブロック図。
【
図5】位置別トルク異常判定部の動作を説明する説明図。
【
図6】回転駆動系異常判定部の処理フロー例を示した説明図。
【
図7】加工系異常判定部の処理フロー例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1に示すように、ロータリ式の加工設備1は、一般に減速機2を介してモータ(電動機)3にて駆動されている。この際、モータ3は、モータ制御部10にて、回転速度を一定にフィードバック制御されている。
【0013】
モータ制御部10は、モータ3の回転速度を速度検出器(例えば、パルスジェネレータなど)11にて検出し、この検出速度が設定された速度指令値と一致するように、トルク基準でフィードバック制御を行うものである。
図1には、その一例を示しており、前述した速度検出器11に加えて、速度制御部(ASR)12、トルク制御部(ATR)13、電力変換部14を備えている。
【0014】
図1に示したモータ制御部10では、速度検出器11によって検出された検出速度(実速度)を速度指令値と比較した差分値に基づいて、速度制御部12の速度制御演算処理が行われ、その演算結果に基づいて、モータ3の速度を速度指令値に一致させるためのトルク指令値が速度制御部12から出力される。トルク制御部13では、速度制御部12から出力されるトルク指令値に基づいて、モータ3の駆動トルクを制御するための制御信号が出力される。電力変換部14は、トルク制御部13から出力される制御信号に応じて、モータ3に必要な電力を供給する。
【0015】
このようなモータ制御部10は、モータ3に加わる負荷が時系列的に変化すると、その負荷に応じて駆動トルクを変化させるようにトルク指令値がトルク制御部に出力されることになる。このため、このトルク指令値をモニタリングすることで、モータ3に加わっている負荷状況を把握することができる。
【0016】
本発明の実施形態に係る異常診断装置(異常診断方法)は、前述したモータ制御部10から抽出されるトルク値(トルク指令値をモニタリングした値)に基づいて異常診断を行う異常診断部20を備えている。以下に示す異常診断部20の一例には、前述したトルク値に加えて、加工設備1或いは減速機2の機械振動を検出する振動計15の測定信号、加工設備1に設けた位置センサ1P(
図2参照)から出力される原点位置信号、速度指令値に基づく速度信号、速度検出器11の検出速度を積分して得た動作位置信号が、それぞれ時系列信号として入力される。
【0017】
図2には、ロータリ式加工設備の一例を示している。ここでは、内容物が充填された缶W1のフランジ口に缶蓋W2を合わせて巻締め加工を施すことで製品W3を得るシーマを例に示している。しかしながら、本発明の実施形態は特にこれに限定されるものではない。
図2の例では、加工設備1は、加工ターレット1A、蓋供給ターレット1B、搬送ターレット1Cを備えており、これらのターレットが前述したモータ3によって回転駆動される。
【0018】
このような加工設備1において、加工ターレット1Aは、加工対象物を搬送しながら加工するためのポケットを複数(図示の例ではn箇所)備えている。異常診断部20は、このポケットの位置を、加工ターレット1Aに設けた原点位置Pを検出する位置センサ1Pの出力などによって、ロータリ搬送の一回転中の特定の位置として認識することができる。具体的には、原点位置Pに直近の回転方向逆側のポケット位置が「1」の位置であり、その回転方向逆側に並ぶ加工ターレット1A一回転分のポケット位置が、それぞれ「2」,「3」,「4」,…「n-2」,「n-1」,「n」の位置になる。
【0019】
図3は、前述した異常診断部20の構成例を示している。異常診断部20は、振動計15の測定信号又はモータ制御部10から抽出されるトルク値の高周波成分から回転駆動系の異常判定を行う第1判定部21と、前述したトルク値の低周波成分から加工系の異常判定を行う第2判定部22とを備えている。ここで言う回転駆動系の異常とは、加工設備1又は減速機2を回転駆動するための回転軸、軸受け、伝動系(歯車など)などに生じる異常であり、加工系の異常とは、加工設備1の加工処理を行う部位(例えば、加工ターレット1A)の異常である。
【0020】
第1判定部21では、機械振動異常判定部23の判定結果とトルク振動異常判定部24の判定結果の一方又は両方に基づいて異常判定を行い、異常が判定された場合には、回転駆動系異常警告部21Pで回転駆動系に異常があることを警告する。
【0021】
ここでの機械振動異常判定部23は、振動計15の測定信号をハイパスフィルター23Aに通して、高周波成分を得て、この高周波成分自体又はこれをFFT解析器23Bで高速フーリエ変換して得た周波数スペクトルによって、機械振動の異常判定を行う。
【0022】
また、トルク振動異常判定部24は、モータ制御部10から抽出したトルク値をハイパスフィルター24Aに通して、高周波成分を得て、この高周波成分自体又はこれをFFT解析器24Bで高速フーリエ変換して得た周波数スペクトルによって、トルク振動(トルク指令値の電流振動)の異常判定を行う。
【0023】
第2判定部22では、前述したトルク値をローパスフィルタ30に通して得た低周波成分から、メカロストルクを差し引いた加工トルクによって、異常判定が行われる。メカロストルクは、加工を行っていない状態で設備を回転させた時(無負荷稼働時)に要するトルクであり、これは一般に回転速度に比例して大きくなる。メカロス算出部29は、予め加工施設1の無負荷稼働を行って得た1次回帰式に速度指令値から得られる速度信号を入力することで、メカロストルクを算出する。
【0024】
この第2判定部22は、加工トルクの比較的大きなトルク変動によって異常を判定するトルク変動異常判定部25の判定結果、加工トルクから求められる仕事量の異常を判定する仕事量異常判定部26の判定結果、加工トルクから位置別トルクを求めて異常を判定する位置別トルク異常判定部27の判定結果のいずれか又はそれらの組み合わせによって異常判定を行い、異常が判定された場合には、加工系異常警告部22Pで加工系に異常があることを警告する。
【0025】
ここで、トルク変動異常判定部25は、加工トルクの時系列変化によって異常を判定するものである。仕事量計算部28は、加工トルクと速度信号から求められるモータ回転数の積から、加工設備1における加工処理を行う部位(例えば、加工ターレット1A)のロータリ搬送1回転分の仕事量を求める。仕事量は加工設備1の正常時には各回転で略一定になるが、何らかの異常が生じた場合には、仕事量が回転毎に変動することになる。仕事量異常判定部26は、この変動量が設定範囲を超えるか否かによって異常判定を行う。
【0026】
位置別トルク異常判定部27は、
図2に示したような、加工設備1におけるロータリ搬送一回転中の特定の位置「1」,「2」,「3」,「4」,…「n-2」,「n-1」,「n」別に、加工トルクの時系列変化を振り分けてモニタし、各位置における加工トルクの変化状況によって異常判定を行う。位置別トルク異常判定部27は、
図4に示すように、加工トルク振り分け部27Aと異常判定部27Bとを備えている。
【0027】
加工トルク振り分け部27Aは、加工設備1におけるロータリ搬送一回転中の特定の位置「1」,「2」,「3」,「4」,…「n-2」,「n-1」,「n」別に、加工トルクの時系列変化を振り分ける。加工トルク振り分け部27Aには、速度検出器11の積分信号である動作位置信号と、位置センサ1Pの出力である原点位置信号が入力され、加工トルクの時系列変化情報を位置毎に振り分けて、位置別の加工トルクの時系列変化を出力する。異常判定部27Bは、位置別の加工トルクの時系列情報を基準値と比較して、特定位置別の加工トルクが基準値を超えた場合に異常信号を出力する。
【0028】
図5は、位置別トルク異常判定部27の動作例を示している。加工トルク振り分け部27Aに入力される加工トルクは、図示のようは時系列変化を示すが、ロータリ搬送の一回転(R1,R2,…)の中でも周期的な上下変動がある。このため、これをそのまま用いても正確な異常判定を行うことは難しい。
【0029】
加工トルク振り分け部27Aに入力される加工トルクの時系列情報は、位置センサ1Pの出力である原点位置信号の入力タイミングで区切ることで、ロータリ搬送の一回転(R1,R2,…)毎の時系列情報に分けることができ、更に、原点位置信号の入力タイミングに、速度検出器11の積分信号である動作位置信号を組み合わせることで、ロータリ搬送一回転中の位置「1」,「2」,「3」,「4」,…「n-2」,「n-1」,「n」別に、加工トルクの時系列変化情報を振り分けることができる。
【0030】
図5に示した例は、位置「1」における加工トルクの変化状況を示している。ここでは、位置「1」における加工トルクが、加工ターレット1AのR1回転目、R2回転目、R3回転目、R4回転目で徐々に上昇しており、R4回転目で基準値を超える例が示されている。図示の例では、位置「1」の加工トルクの時系列変化を示しているが、位置別トルク異常判定部27は、全ての位置「1」,「2」,「3」,「4」,…「n-2」,「n-1」,「n」別に、加工トルクの時系列変化をモニタすることができる。
【0031】
このような位置別の加工トルクの時系列変化は、正常稼働時には略フラットな変化になるが、何らかの要因で加工設備1に負荷が加わった場合には上昇することになる。このため、この時系列変化をモニタすることで、加工設備1に異常な負荷が加わったか否かを診断することができる。この際、位置毎の加工トルクの変化をモニタしているので、異常が起きた場合には、その位置を把握することができる。
【0032】
前述した第1判定部21による回転駆動系の異常判定処理は、例えば、
図6に示したようなフロー例にて行うことができる。この例では、先ず、機械振動異常判定部23にて、機械振動に異常があるか否かの判断がなされ(ステップS01)、ここで、異常がある場合には(ステップS01:YES)、既に大きな異常があると判断できるので即座に稼働停止の指示が出される(ステップS02)。
【0033】
そして、機械振動異常判定部23にて、機械振動に異常が無いと判断された場合(ステップS01:NO)、表面的な異常は無いものの、今後異常に繋がるような不具合が存在する場合がある。トルク振動異常判定部24は、このような不具合を見つけて異常の予知を行う機能がある。機械振動異常判定部23にて異常が無く(ステップS01:NO)、トルク振動異常判定部24でも異常が無い場合には(ステップS03:NO)、正常状態が維持されているとして、正常運転継続の指示が出される(ステップS04)。
【0034】
これに対して、トルク振動異常判定部24にて、異常ありと判断された場合には(ステップS03:YES)、今後異常が発生する可能性が高いと言えるので、FFT解析器24Bの解析結果から得られる周波数スペクトルによって、異常の原因究明を行う。回転駆動系の異常は、原因毎に異なる周波数を示すので、高いスペクトル幅の周波数を特定することで、異常の原因を把握することができる。
【0035】
そして、前述した第2判定部22による加工系の異常判定処理は、
図7に示したようなフロー例にて行うことができる。この例では、先ず、トルク変動異常判定部25にて、加工トルクに大きなトルク変動が生じる異常があるか否かの判断がなされ(ステップS11)、ここで、異常がある場合には(ステップS11:YES)、即座に稼働停止の指示が出される(ステップS12)。
【0036】
そして、トルク変動異常判定部25にて、加工トルクが大きく変動する異常が無いと判断された場合(ステップS11:NO)、現状のトルク変動に大きな異常は無いものの、異常に繋がるような不具合が存在する場合がある。仕事量異常判定部26は、このような隠れた異常の予知を行う機能がある。トルク変動異常判定部25にて異常が無く(ステップS11:NO)、仕事量異常判定部26でも異常が無い場合には(ステップS13:NO)、正常状態が維持されているとして、正常運転継続の指示が出される(ステップS14)。
【0037】
これに対して、仕事量異常判定部26にて、仕事量の変動範囲が設定範囲を超えていて異常ありと判断された場合には(ステップS13:YES)、各回転の仕事量の変動が何らかの加工異常によって生じていると考えられるので、前述した位置別トルク異常判定部27の判定結果に基づいて、位置毎の加工トルクの異常から、異常の原因を把握する。
【0038】
このようなロータリ式加工設備の異常診断装置(異常診断方法)は、モータ制御部10から抽出されるトルク値(加工トルク)によって、異常判定を行うので、加工設備1に大きな不具合が発生する前の予兆をトルク値の変動で把握することができ、製品の不良が発生する前に、異常の原因を除去することで、製品不良を未然に防止することができる。
【0039】
そして、トルク値の高周波成分をFFT解析して得た周波数スペクトルに基づいて異常判定を行うことで、加工設備1の回転駆動系の異常判定とその異常の原因究明を行うことができ、トルク値の低周波成分のトルク変動によって異常判定を行うことで、加工設備1の加工系の異常判定とその異常の位置特定を行うことができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。前述した実施形態では、振動計15を備える例を示しているが、他の実施形態では、振動計15を省いてトルク値のみで異常判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0041】
1:加工設備,1A:加工ターレット,1B:蓋供給ターレット,
1C:搬送ターレット,1P:位置センサ,
2:減速機,3:モータ,
10:モータ制御部,11:速度検出器,12:速度制御部,
13:トルク制御部,14:電力変換部,
20:異常診断部,21:第1判定部,22:第2判定部,
21P:回転駆動系異常警告部,22P:加工系異常警告部
23:機械振動異常判定部,24:トルク振動異常判定部,
23A,24A:ハイパスフィルタ,23B,24B:FFT解析器
25:トルク変動異常判定部,26:仕事量異常判定部,
27:位置別トルク異常判定部,28:仕事量計算部,
29:メカロス算出部,30:ローパスフィルタ,
27A:加工トルク振り分け部,27B:異常判定部,
P:原点位置,W1:缶,W2:缶蓋,W3:製品